IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -蒸発加湿器 図1
  • -蒸発加湿器 図2
  • -蒸発加湿器 図3
  • -蒸発加湿器 図4
  • -蒸発加湿器 図5
  • -蒸発加湿器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】蒸発加湿器
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
F25D23/00 302E
F25D23/00 302G
F25D23/00 302F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022561967
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2021041388
(87)【国際公開番号】W WO2022102667
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020187444
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519149456
【氏名又は名称】株式会社ZERO FOOD
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木野 正人
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 茂
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-253400(JP,A)
【文献】特開平08-042960(JP,A)
【文献】特開2014-031905(JP,A)
【文献】特開2004-003778(JP,A)
【文献】特開2007-285565(JP,A)
【文献】特開2017-009274(JP,A)
【文献】特開平06-265254(JP,A)
【文献】特開2007-303708(JP,A)
【文献】特開平01-174875(JP,A)
【文献】実開昭60-118474(JP,U)
【文献】実開昭60-118473(JP,U)
【文献】特開昭58-193069(JP,A)
【文献】実開昭60-128241(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0096896(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温保管庫に配設される蒸発加湿器であって、
前記蒸発加湿器の筐体の内部空間に設けられた貯水槽と、
前記貯水槽における貯水の温度が前記恒温保管庫の庫内目標温度範囲より高く設定されている貯水目標温度範囲に含まれるように、前記貯水槽に対する供給水および前記貯水の少なくとも一方の温度を制御するための貯水温調器と、
前記貯水槽の貯水に接触した気流が前記恒温保管庫の内部に流入するように構成されている送風機構と、
前記恒温保管庫の温度が前記庫内目標温度範囲に調整されるように、前記送風機構により発生された前記気流の温度を制御する庫内温調器と、
を備える蒸発加湿器。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸発加湿器において、
前記貯水槽に貯留された水を攪拌するための撹拌装置を備えている
蒸発加湿器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸発加湿器において、
前記貯水槽にシャワー状またはミスト状の水を供給する水供給装置を備えている
蒸発加湿器。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸発加湿器において、
前記水供給装置による前記貯水槽に対する水の供給方向とは逆方向に、前記送風機構により発生された気流を案内する案内部材を備えている
蒸発加湿器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の蒸発加湿器において、
前記貯水槽の内側表面に親水性を有する親水層が設けられている
蒸発加湿器。
【請求項6】
請求項に記載の蒸発加湿器において、
前記水供給装置は、前記送風機構の動作が停止されている期間に前記貯水槽に対してシャワー状またはミスト状の水を供給する
蒸発加湿器。
【請求項7】
請求項に記載の蒸発加湿器において、
前記水供給装置は、前記送風機構から発生された前記気流が供給されている期間に間欠的にミスト状の前記水を供給する
蒸発加湿器。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の蒸発加湿器において、
前記貯水槽に貯留されている水が不凍剤を含んでいる
蒸発加湿器。
【請求項9】
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の蒸発加湿器において、
前記貯水槽の貯水に気泡を発生させる気泡発生装置を備えている
蒸発加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
恒温高湿度保管庫に使用する水の蒸発加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度管理が必要な温度管理対象物を(例えば、肉、魚および野菜等の食品)新鮮な状態で保管するために、恒温高湿度保管庫(以下、「保管庫」という場合がある)は用いられている。一般に食品は、低温で保管するほど、その鮮度を保持しやすくなるので、恒温高湿度保管庫内の温度を低温高湿にすることで、食品の鮮度は確保されている。
【0003】
食肉・魚介では、その7割乃至8割、青果では8割乃至9割以上を水分が占めている。保管庫を低温にして食品が氷点下まで冷却されると、その水分が凍結し、体積が膨張し、食品の細胞外液に大きな氷の結晶ができる。これにより食品の細胞膜が破壊され、その状態のまま食品は凍結される。解凍後はドリップの流出を招く。
【0004】
また、冷蔵中にエバポレータへの霜付き、除霜、除霜水の庫外への排水により庫内が乾燥する。乾燥により、特に青果および/または花卉の品質は損なわれる。畜肉の冷蔵による熟成においても、乾燥は畜肉の品質低下を招く。
【0005】
そこで、特許文献1には、砕氷熱交換器を含む冷気温湿度変更部が第1送風機構と第2送風機構との間に、第1送風機構および第2送風機構に隣接して配置されてなる保管庫用の蒸発器が開示されている。この冷気温湿度変更部は、砕氷部から供給された氷を有するので、基本気流は、この氷と接触し、0℃の気流となる。
【0006】
また、氷が融解し、融解した水分が気化することで、水蒸気が保管庫内に充満し、保管庫内は、その内部温度が0℃で、相対湿度100%程度の高湿度空間環境となる。したがって、当該保管庫内に収容された食品等は、約0℃かつ高湿度で管理することで、その品質を維持することができる。また特許文献以外にも加湿装置には、水噴霧加湿、超音波水加湿、ヒータ蒸気加湿、含水物への送風気化による加湿等がある。
【0007】
バブル加湿器は医療用として酸素吸入時に吸入酸素を水中に気泡で供給して吐出気体を加湿する目的で一般的に使用されている。
【0008】
特許文献2には水槽内に気泡発生装置が設けられ、水面から発生している加湿空気を隣接する環境試験室にダクトで供給する蒸発器について記載されている。
【0009】
特許文献3には水槽内の水を加熱装置で熱水にされることで気泡を発生させ、送風機構で水面から発生している加湿空気と送風を混合して外部に供給する加湿器について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許6453264号公報
【文献】特開2021-063805
【文献】実開平5-32929
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の蒸発器では、製氷機で製造された氷点下の砕氷は0℃に温められて氷表面に融解水を纏った状態である。上記氷表面に風が当たることで表面融解水が蒸発し、0℃の水蒸気を発生されて、保管庫内に送風される。しかし、特許文献1に記載の蒸発器は、例えば33平方m用のプレハブ保管庫では庫内が0℃、相対湿度100%になってから庫内を恒温飽和湿度に維持するために60Hz、単相100V、493Wの製氷機で1日に60kg~70kgの砕氷を消費する。
【0012】
しかし、前記蒸発器の中を通過する砕氷は、落下する距離と、時間とが極めて小さい。このため、落下砕氷の大部分がドレンを通して蒸発器外に排出されるため、製氷機で砕氷を製造するための消費電力量は大きく、その大部分が無駄に消費されることとなる。更に、製氷機で使用される水も大部分が無駄になる。これらの無駄を少なくする装置が求められている。
【0013】
また、水噴霧加湿の場合は、送風気流中に微小水滴が混入して庫内を水で汚染する。超音波水加湿は、水道水中のカルシウム塩等の析出があり庫内および/または周囲を汚染する。ヒータ蒸気加湿は100℃の水蒸気を混入させるため庫内の温度ムラが大きくなる上、冷風機への負担が大きくなる。更にスポンジに含水し送風気化する方法で高湿度まで加湿することは困難である。
【0014】
本発明は、保管庫用の蒸発加湿器であって、その消費電力および消費水量を低減し、庫内および/または周囲を汚染せず、庫内の温度ムラが少なく、庫内を高湿度まで加湿可能な新規な蒸発加湿器を提供することを目的とする。
【0015】
また、上記従来のバブル加湿器および/または特許文献2で開示されている加湿器は、気泡が水面で崩壊する時に、ボコボコおよび/またはシャーという雑音が発生する。また、水温が低い時に加湿能力が低くなる等の問題がある。例えば、仮に、雑音の発生を防ぎ低温でも加湿量が稼げる様に、バブル加湿器を、気泡を微小化したファインバブルに単に変更しただけでは閉鎖空間での加湿であるため、吐出空気(酸素)量が最大でも吸気量以上にはならず、吐出量が不足するという課題がある。
【0016】
恒温高湿度保管庫とは、一定の庫内温度を保ち、かつ庫内の空気が庫内温度の飽和水蒸気量かそれに近しい水蒸気量を含んだ状態で、相対湿度が80%~100%の状態で、食品等が保管される保管庫である。
【0017】
また、特許文献3に記載された加湿器についても雑音が発生する。更に熱水からの蒸気を混合して送風するため、蒸気を目標温度まで下げる必要が有り、恒温保管庫に用いることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の蒸発加湿器は、恒温保管庫に配設される蒸発加湿器であって、前記蒸発加湿器の筐体の内部空間に設けられた貯水槽と、前記貯水槽における貯水の温度が前記恒温保管庫の庫内目標温度範囲より高く設定されている貯水目標温度範囲に含まれるように、前記貯水槽に対する供給水および前記貯水の少なくとも一方の温度を制御するための貯水温調器と、前記貯水槽の貯水に接触した気流が前記恒温保管庫の内部に流入するように構成されている送風機構と、前記恒温保管庫の温度が前記庫内目標温度範囲に調整されるように、前記送風機構により発生された前記気流の温度を制御する庫内温調器と、前記貯水槽の貯水に気泡を発生させる気泡発生装置と、を備えている。
【0019】
本発明の蒸発加湿器によれば、貯水目標温度範囲に含まれるように温度が調節されている供給水および/または貯水に送風機構により発生された気流を接触させることにより、庫内目標温度範囲に含まれるような温度の水蒸気を発生させることができる。当該水蒸気を高湿度状態で含む空気が保管庫に導入され、保管庫温度が庫内目標温度範囲に含まれるように制御されうるとともに、高湿度に保持されうる。本蒸発加湿器自体がであっても良い。
【0020】
保管庫の庫内温度(保管庫の内部空間の温度)が庫内目標温度範囲の下限温度よりも低下して水蒸気が過飽和になった際、過飽和水蒸気が供給水および/または貯水に接触し、当該過飽和水蒸気の一部が凝縮して当該供給水および/または貯水の温度が僅かに上昇する。当該供給水および/または貯水の温度上昇に応じて水面付近の空気の温度が上昇するので、当該空気の相対湿度が僅かに低下し、当該水からの蒸発量が増えて再び当該水の付近の空気層の水蒸気が略飽和状態になる。
【0021】
また、送風機構で供給水および/または貯水に気流を接触させることに応じて庫内雰囲気が部分的および/または一時的に過飽和状態になった場合、当該雰囲気の水蒸気の一部が水に凝縮し供給水および/または貯水と混合する。これに応じて庫内湿度が低下した場合、供給水および/または貯水の一部が蒸発して庫内の雰囲気中に混合する。このような潜熱の吸収・放出により貯水槽における供給水および/または貯水の温度を安定させ、庫内目標温度範囲に含まれる温度の水蒸気が定常的に庫内に供給されることによって庫内温度が安定に制御されうる。
【0022】
前記構成の蒸発加湿器が、前記貯水槽に貯留された水を攪拌するための撹拌装置を備えていることが好ましい。
【0023】
当該構成の蒸発加湿器によれば、送風機構によって発生した気流が長時間にわたり貯水槽における貯水に接触させることにより、当該貯水の表面付近の部分が凍結し、徐々に氷が成長するために当該貯水から庫内雰囲気への蒸発量が減少する。しかるに、貯水槽における貯水が撹拌装置により撹拌されることで、当該貯水の凍結、ひいては当該蒸発量の減少が抑制または防止されうる。
【0024】
したがって、撹拌装置が設けられることで貯水温度が0℃付近であっても、当該貯水に不凍剤を含有させることなく、通常の水道水であっても庫内の温度・湿度の安定的な制御が可能となる。撹拌装置は、貯水を機械的に撹拌する構成であってもよく、貯水に水を流入または循環させることで貯水槽における水流を発生させる構成であってもよい。撹拌装置はその消費エネルギーの節約のため、間欠的に運転または駆動されてもよい。保管庫が0℃よりも十分に冷えすぎた場合の貯水の表面付近の部分の凍結の抑制または防止のため、貯水槽にヒータ(加熱装置)が設けられていてもよい。
【0025】
前記構成の蒸発加湿器が、前記貯水槽にシャワー状またはミスト状の水を供給する水供給装置を備えていることが好ましい。
【0026】
当該構成の蒸発加湿器によれば、水供給装置から貯水槽に供給されるシャワー状またはミスト状の形態の水または水滴に、送風機構により発生した気流に接触させることで、当該水の一部を水蒸気に気化させることができる。
【0027】
水滴から発生する水蒸気がその周囲の水滴の温度を下げることによって気化熱を賄うため、水滴が比較的小さい場合、当該気化熱により周囲の水滴が例えば0℃近くにまで冷却され、そこから発生する水蒸気の温度も0℃近くになる。一方、水滴が比較的大きい場合、貯水槽の貯水温度に近くなり、発生する水蒸気温度も当該貯水温度近傍となる。したがって、庫内目標温度に併せて水滴のサイズが制御されてもよい。また、発生する水蒸気を含む気流によって貯水温度が調整されることが、庫内温度を庫内目標温度範囲に含まれる温度に維持するために有効である。当該気流の温度が庫内目標温度範囲の下限温度よりも低ければ供給水の温度を上昇させ、当該気流の温度が庫内目標温度範囲の上限温度よりも高ければ供給水の温度を低下させるように当該供給水の温度が制御されてもよい。
【0028】
前記構成の蒸発加湿器が、前記水供給装置による前記貯水槽に対する水の供給方向とは逆方向に、前記送風機構により発生された気流を案内する案内部材を備えていることが好ましい。
【0029】
当該構成の蒸発加湿器によれば、供給水の貯留水への到達時間を延長させ(例えば、水滴の落下速度を低下させ)、当該水滴の風との接触時間を延長させることができる。この結果、当該供給水の蒸発量を増加させることができ、庫内湿度が目標湿度または目標湿度範囲に含まれる湿度により短時間で制御されうる。さらに、使用される水の量の低減が図られる。
【0030】
「水の供給方向とは逆方向」とは、水の速度ベクトルと気流の速度ベクトルのなす角が150°~180°であることを意味する。例えば、水滴を下方に落下させる形態で貯水槽に水が供給される場合、気流が上方に案内されて当該水滴に接触させてもよい。
【0031】
案内部材により少なくとも部分的に囲まれた空間に、気流の方向を水の供給方向に対して逆方向に調整するための放風弁および/または第2の送風機構が設置されていてもよい。
【0032】
前記構成の蒸発加湿器において、前記貯水槽の内側表面に親水性を有する親水層が設けられていることが好ましい。
【0033】
当該構成の蒸発加湿器によれば、貯水槽の内側表面付近の水および/または水滴が当たる壁面における親水層に水が付着し、その親水層に送風機構により発生された気流を接触させることで水蒸気を発生させることができる。例えば、貯水槽における貯水に気流が接触すると、当該気流の方向に沿って当該貯水が貯留槽の内側表面に向かって流れ、当該貯水槽の内側表面に濡れ広がる。このように貯水の内側表面に水が濡れ広がった状態で、送風機構により発生された気流を当該内側表面に接触させると、貯水槽の内側表面に親水層が設けられていない場合と比較して水蒸気の発生量の増加が図られる。水蒸気および空気混合気流のそれぞれ温度の計測結果に基づき、貯水温調器によって貯水の水温を、ひいては貯水槽内側表面温度が調節されることにより、庫内目標温度の水蒸気を得ることができる。
【0034】
当該親水層は、例えば、貯水の内側表面に酸化チタンなどの親水剤が塗布されることで実現される。
【0035】
前記構成の蒸発加湿器において、
前記水供給装置は、前記送風機構の動作が停止されている期間に前記貯水槽に対してシャワー状またはミスト状の水を供給することが好ましい。
【0036】
そして、貯水槽に対する水の供給が完了または停止された際(例えば、貯水槽に水位が所定位置に達した際)に、送風機構の動作を開始または再開させて気流を発生させ、親水層に付着した水に接触させることが好ましい。
【0037】
また、送風機構を連続的に動作させながら、貯水槽に対してミスト状またはシャワー状の水を水供給装置に間欠的に供給させてもよい。
【0038】
このような水の間欠的な供給により、当該水の供給停止期間において水滴由来の水蒸気を気流に蒸散させることができる。
【0039】
この場合、貯水槽に対してミスト状またはシャワー状の水を水供給装置に供給させ、当該水または水滴を親水層が形成されている貯水槽の内側表面に略均等に吸着保持させることが可能となる。
【0040】
例えば、0℃付近の低温状態にある保管庫の内部空間においては、気化潜熱が凝固潜熱よりも7倍以上も大きい。シャワー状またはミスト状に噴霧された水滴のサイズが極めて小さいため、当該水滴の一部が蒸発した際の気化熱量の分だけ水滴の温度が低下し、当該水滴が凍結して霧氷となる。霧氷は親水層が設けられているまたは形成されている貯水槽の内側表面および/または貯水水面に吸着保持されたうえで、貯水目標温度範囲に含まれている温度の貯水によって解凍される。さらに、水の供給期間において送風機構の動作、ひいては気流を停止させることで庫内への霧および/または霧氷の進入が抑制または防止されうる。
【0041】
低湿度環境において水滴が微小である場合、気化潜熱によって当該水滴の温度が0℃に低下しうるため、冷却の必要が無く、貯水温調器が貯留水以外にも直接水道水が使用できる。
【0042】
前記構成の蒸発加湿器において、
前記貯水槽に貯留されている水が不凍剤を含んでいることが好ましい。
【0043】
当該構成の蒸発加湿器によれば、貯水槽における貯水を液相状態に維持するが可能となり、氷の昇華よりも蒸発速度の向上が図られる。
【0044】
本発明の蒸発加湿器は、前記貯水槽の貯水に気泡を発生させる気泡発生装置を備えている
ことが好ましい。
【0045】
一般的な泡サイズのバブル加湿では、貯水槽に設けた空気噴出孔にエアポンプで空気を送入し、水中に気泡を発生させる。水中の気泡は周囲から水蒸気を取込み高湿度状態の空気となる。また、気泡が水面に出る時に泡が破裂し水面付近に微小な水滴を放散する。放散されて微小水滴は水面への送風により短時間で気化して水面の送風の相対湿度を上昇させ、高湿度の送風を庫内に送ることで庫内の湿度を短時間で上昇させることができる。
【0046】
本方式のファインバブル加湿の場合、ファインバブル発生の方法には、エジェクター方式、旋回流方式および/または加圧溶解方式などがあり、ファインバブルは、泡径が100μm以下のものを言い、吸気はエジェクターおよび/または旋回流では自然吸気となっている。
【0047】
上述の様に閉空間がファインバブルにより加湿された場合、吐出空気量が少なくなるため加湿器としての使用は困難であった。
【0048】
しかし、貯水槽の水面への送風加湿と組み合すことで互いの欠点を補うことができる。単なる水面への送風加湿だけでは、スチーム加湿、超音波加湿および/または噴霧加湿等の強制加湿では無い為、加湿速度が緩慢である。
【0049】
ファインバブルはファインバブル発生装置という小さな閉鎖空間内で作られるが、本組み合わせ方式では送風機構によって貯水槽水面からより大きな保管庫空間へ水蒸気混合空気が放出されるためファインバブルの吐出量で送風量が制限されることは無い。
【0050】
ファインバブルはその泡径が小さく数が多いため、気泡内での気液総接触面積が非常に大きい。このため、周囲の水から泡内部の空気への水の気化により高湿度の気泡が形成され、形成された気泡が水中および/または水面に放出される。特に、水への空気溶解が飽和に達した後は、水中で泡が消失せずに水面まで気泡が浮上し、高湿度の空気を水面に放出する。
【0051】
ファインバブルはその泡径が小さいため、浮力が小さく水の粘性抵抗によって水面への浮上時間が長い。従って、ファインバブルを形成した場合と通常の泡径の泡を形成した場合とを比較すると、より多くの水が気泡内で蒸発される。そのため、ファインバブルを形成した時に、水面から発生する空気は高湿度に加湿されている。また、各気泡は負に帯電しているため互いに反発して結合することなく上昇する。庫内温度および/または水温が低い場合は空気中の飽和水蒸気量が少ない為、ファインバブルの吐出量でも十分に急速な庫内の相対湿度の上昇が可能である。
【0052】
ファインバブルを水面に放出させることで、多数の微小気泡によって水面の表面張力を弱めると共に、泡が破裂する時に超音波を発し水面付近の水分子に運動エネルギーを供給することで水分子の気化を促進し、水面を送風機構で送風することで庫内空気を比較的早く加湿することができる。貯水槽水温を貯水目標温度とすることで放出された水蒸気は貯水槽の水温と同温度の水蒸気であり、水蒸気の比熱が空気の約3倍と大きいことで、特に庫内温度が高い場合は、空気中の飽和水蒸気分圧が大きくなるため庫内目標温度の湿潤空気が大きな熱容量を持つため恒温保管庫内温度の安定化に寄与する。また、庫内温度および/または水温が0℃付近であってもファインバブル含有水放出管からの送水による水流で凍結を防止することができる。
【発明の効果】
【0053】
以上、本発明によれば、保管庫のための蒸発加湿器であって、その消費電力および消費水量を低減させた新規な蒸発加湿器が提供される。また、水供給装置(噴霧器)から貯水槽に対して間欠的にシャワー状またはミスト状の水が供給または噴霧され、給水停止期間において貯水に送風機構により発生された気流を接触させる。噴霧および気流発生が交互に切り替えられ形態の間欠運転が実施されることで水滴により庫内が汚染されることが抑制または防止される。さらに、微小な水滴を噴霧するために給水時の音の発生が抑制または防止されうる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の実施形態における保管庫の概略構成を示す側平面断面図。
図2】本発明の実施形態における蒸発加湿器のブロック図。
図3】本発明の他の実施形態における保管庫の概略構成を示す側平面断面図。
図4】本発明のその他の実施形態における保管庫の概略構成を示す側平面断面図。
図5図4に示されている保管庫の蒸発加湿器を示す概略構成側平面断面図。
図6】本発明の実施形態におけるファインバブル発生装置と、放出菅と、を設けた蒸発加湿器の側平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態における恒温高湿度保管庫の概略構成を示す図である。
【0056】
図1に示されているように、本実施形態では、恒温高湿度保管庫10(以下、「保管庫」という場合がある)の内部空間に、庫内温度湿度センサ11および蒸発加湿器20が配置されている。庫内温度湿度センサ11は、保管庫10の庫内温度(内部空間の雰囲気温度)および庫内湿度(内部空間の雰囲気湿度)を計測するためのセンサである。また、保管庫10の内部空間には、肉、魚および野菜等の食品が保管物Sとして収容されている。
【0057】
庫内温度および庫内湿度またはこれらを表わす出力信号が庫内温度湿度センサ11から制御装置(コントローラ)27に対して送信される。そして、当該制御装置27により、計測庫内温度および計測庫内湿度に基づき、以下に説明する第1送風機構および第2送風機構等の動作が制御される。図2には、制御装置27を含むブロック図が示されている。
【0058】
図1に示されているように、本実施形態の蒸発加湿器20は、第1送風機構21と、第2送風機構22を設けてあり、第1送風機構21および第2送風機構22の間であって、蒸発加湿器20の筐体下部に配設された貯水槽23とを備えている。第1送風機構21および第2送風機構22のそれぞれは、例えば送風機構が軸流ファンの場合、電動モータ等の回転駆動装置と、当該回転駆動装置の出力軸に連結されて回転駆動される回転軸と、当該回転軸に対してその軸線方向とは垂直な方向に突出するように取り付けられている羽根と、により構成されている。軸流ファン以外にも、遠心ファン等その他の方式であっても良い。
【0059】
また、貯水槽23の第2送風機構22の側には庫内温調器24が配設され、貯水槽23と庫内温調器24とは、案内筒25(案内部材)により接続されている。さらに、貯水槽23内には撹拌機26が配設されている。また、貯水槽23には、当該貯水槽23内に水Wを供給するための水供給管231と、水Wの温度を貯水目標温度範囲に含まれている温度に保持するための貯水温調器232が配設されている。
【0060】
庫内温度によって貯水および/または供給水温度を調節して庫内温度を目標温度範囲に調整することができるため、蒸発加湿器自体が庫内温調器であっても良いため、庫内温調器24は必須の構成要素ではなく、目的に応じて適宜省略することができるが、当該庫内温調器24が配設されていることによって後述するような有利な効果が奏される。
【0061】
本実施形態では、最初に、水供給管231によって水Wが貯水槽23内に貯留され、貯水温調器232によって水Wが貯水目標温度に保持される。
【0062】
次いで、第1送風機構21によって、風が図中矢印で示すように、貯水温調器232により貯水目標温度範囲に含まれるように調整された貯水槽23に貯留された水Wに接触する気流が発生される。貯水目標温度範囲は、例えば、庫内目標温度範囲よりも2℃~5℃高い温度範囲に設定されている。貯水槽23において気流と接触した貯水から水蒸気が発生し、案内筒25を通って庫内温調器24に導入される。ここで水蒸気の温度が制御装置27による庫内温調器24の制御によって目標温度に冷却されて相対湿度が上昇し、当該水蒸気を飽和状態で含む空気が、図中矢印で示すように、第2送風機構22によって保管庫10に導入され、保管庫10内の温度を目標温度に設定することができるとともに、高湿度に保持することができる。したがって、保管庫10内に収容された食品等の保管物Sは、所定の目標温度かつ高湿度で管理され、その品質を維持することができる。
【0063】
保管庫10内の温度が温度調節器運転で目標温度よりも低下して水蒸気が過飽和になると、過飽和水蒸気が貯水槽23の水面に送風されて接触し、凝縮して貯水槽23の水Wの温度を僅かに上昇させる。水温が上昇すると水面付近温度も上昇して相対湿度が僅かに低下し、水面からの蒸発量が増えて再び水蒸気が飽和状態になる。したがって、保管庫10内の相対湿度は、当該温度における飽和湿度程度に保持される。
【0064】
また、第1送風機構21の動作により気流を発生させ、当該気流を貯水槽23の水W(貯水)に接触させることで保管庫10の内部空間の相対湿度が過飽和になった場合、過飽和状態になって顕出した水滴が貯水槽23の水Wに取り込まれ、保管庫10の内部空間の相対湿度が低下した場合、水Wが蒸発して保管庫10の庫内雰囲気に水蒸気として拡散する。この際の潜熱の吸収・放出により貯水槽23における貯水の温度を安定させ、目標貯水温度範囲に含まれる温度の水蒸気が常に供給されることで保管庫10内の温度を安定させることが可能になる。
【0065】
このように、本実施形態では、保管庫10内に供給する目標温度および飽和湿度の冷気を、貯水槽23に貯留した水Wにファン21によって送風して得るようにした蒸発加湿器20を用いているので、従来のような製氷機を用いた蒸発器に比較して消費水量および消費電力を低減することができる。
【0066】
本実施形態では、貯水槽23に撹拌機26を配設しているので、第1送風機構21によって発生された気流を、長時間にわたり貯水槽23における水Wに接触させても、その水面付近の部分が凍結することが抑制または防止されている。したがって、水面付近の部分の凍結による水Wの蒸発量の低減が抑制されうる。したがって、不凍剤が用いられることなく通常の水道水だけで庫内温度および庫内湿度の制御が可能となる。
【0067】
参考のために、気温と飽和水蒸気量との関係が表1に示されている。
【0068】
【表1】
【0069】
撹拌機26のような機械的撹拌に代えて、水中で水を噴射し水流を生じさせる水流発生機のような水圧的な攪拌を用いることもできる。また、ヒータを用いることもできる。撹拌は消費エネルギー節約のため間欠運転が望ましい。
【0070】
また、本実施形態においては、貯水槽23に貯留する水Wに不凍剤を加えることを排除するものでない。この場合、攪拌装置および/またはヒータ(加熱装置)等の装置が設けられていない場合でも、貯水槽23における水Wを液相状態に維持することが可能となり、氷からの昇華よりも蒸発速度の上昇が図られる。不凍剤は水温が0℃付近では塩化ナトリウムおよび/または塩化カルシウム等の塩類、水温が-5℃以下ではアルコールであることが望ましい。
【0071】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態において、貯水槽23の内側表面(例えば、貯水槽の内側表面の少なくとも貯水水位よりも高い部分)に親水層が形成されていてもよい。この場合、親水層が形成された貯水槽の内側表面に水を吸着保持させ、当該水に気流を接触させることで当該水由来の水蒸気を発生させることができる。
【0072】
貯水槽表面に親水層を形成するに際しては、陶板表面に酸化チタン層を焼成する等公知の親水剤を配合させる。
【0073】
(第2実施形態)
図3には、本発明の他の実施形態における恒温高湿度保管庫の概略構成図が示されている。
【0074】
本実施形態では、貯水槽23へ水Wを貯水するに際し、貯水槽23内に配設された水供給管231に代えて、案内筒25(案内部材)により全体的に(または部分的に)囲まれているまたは画定されている案内空間において、貯水槽23の上方に配設されている水供給装置31が用いられている点で第1実施形態と相違するが、その他の構成等については第1実施形態とほぼ同様である。
【0075】
本実施形態では、水供給装置31によりシャワー状またはミスト状の水が貯水槽23に放出または噴霧され、貯水槽23と水供給装置31との間に第1送風機構21によって気流が生成されることで、当該水に由来する水蒸気の発生量の増加が図られている。第1送風機構21の動作によって発生した気流は案内筒25により画定されている案内空間に沿って流れるので、当該気流が貯水槽23と水供給装置31との間に送られる。
【0076】
水滴から発生する水蒸気の温度は周囲の水滴の温度を低下させることによって気化潜熱を発生させる。このため、水滴径が小さい場合の水蒸気温度は気化潜熱により水滴水が冷却されて0℃に近くになり、そこから発生する水蒸気の温度も0℃近くになる。一方、水滴径が大きい場合は、貯水槽の貯水温度に近くなり、発生する水蒸気温度も当該貯水温度近傍となる。したがって、目標温度に併せて水滴径を決定する。
【0077】
水滴径が小さい場合とは、例えば水滴径が0.5mm~1mmの場合を意味し、水滴径が大きい場合とは、例えば水滴径が1mm~3mmの場合を意味する。当該水滴径は間欠照射レーザおよび超高速ビデオカメラを用いて測定されてもよい。また、気流速度および終端速度の表および/または近似式から水滴の空中滞留時間を十分に確保できるような気流速度から逆算することも可能である。気流速度は紙小片の移動速度計測で求めることができる。
【0078】
本実施形態においても、保管庫10内に供給する目標温度および飽和湿度の冷気を水供給装置31からシャワー状に放出された水に第1送風機構21によって送風して得た水滴を用い、この水滴を含む冷気を保管庫10内に送風するようにしている。したがって、目標温度および飽和湿度の冷気を保管庫10に供給することができ、従来のような製氷機を用いた蒸発器に比較して消費水量および消費電力を低減することができる。
【0079】
また、本実施形態では、第1送風機構21により発生された気流は案内筒25により画定されている案内空間を通って、貯水槽23と水供給装置31との間に送出されるので、当該気流は水滴の落下方向に対して逆方向に送出されることになる。したがって、上記逆向きの送風がない状態に比較して、水滴の落下速度を低下させ、当該水滴と気流との接触時間を延長することができる。この結果、水滴からの蒸発量を増加させることができ、庫内湿度がより短時間で目標湿度範囲に含まれるように制御されうる。さらに使用水量の低減が図られる。
【0080】
また、本実施形態では、水滴が鉛直方向または下方に落下し、第1送風機構21により発生された気流が上方に向かうので、当該水滴および当該気流の接触時間の延長が図られている。したがって、水滴に由来する蒸発量のさらなる増加が図られ、庫内湿度がより短時間で目標湿度範囲に含まれるように制御されうる。さらに、使用水量の低減が図られる。
【0081】
表2には、水滴が空中を自由落下する際の直径および終端速度が示されている。終端速度とは、水滴が空中を自然落下する際に空気抵抗によって落下速度が一定に維持される速度を意味する。
【0082】
表2における水滴径1.0mm~3.0mmは近畿大学環境工学科実験によるおおよその実測値であり、水滴径0.5mmの速度は近似式による計算値である。
【0083】
【表2】
【0084】
また、水供給装置31による水の供給が停止されて貯水槽23の水Wの水面に送風し、保管庫10内の相対湿度が飽和湿度よりも低い場合に水供給装置31からシャワー状の水を供給することが好ましい。この場合、発生した水滴に風が当たるようになるので、その一部が気化してその冷熱で凍結して水滴がシャーベット状になる。このため、シャーベット状の水滴は、貯水槽23に戻さずに図示しないドレンに排水することが望ましい。

【0085】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、攪拌装置および/またはヒータ(加熱装置または温調器)を用いることができ、不凍剤を用いることもできる。
【0086】
また、本実施形態では、鉛直に落下する水滴と対向する送風を形成する装置として第1送風機構21を用いているが、この第1送風機構21と協働して機能するような別の送風機構を配設することもできる。
【0087】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態においても、貯水槽23の内側表面に親水層が形成されていてもよい。この場合、親水層が形成された貯水槽23の内側表面に水を吸着保持させて、当該水に気流を接触させることで、当該水に由来する水蒸気の発生量の増加が図られる。
【0088】
本変形例においては、水供給装置31より貯水槽23に霧状の水(水滴)が噴霧されてもよい。例えば、0℃に近い低温の保管庫10の内部空間の雰囲気では、気化潜熱が凝固潜熱よりも7倍以上も大きい。噴霧された水滴は水滴径が極めて小さい。このため、飽和からの差分だけ蒸発した気化潜熱量の分だけ凍結して霧氷となる。霧氷は親水層において貯水槽23の内側表面に吸着保持され、貯水槽23の例えば下部に配置された貯水温調器232により解凍されて目標温度範囲に含まれている温度に制御される。
【0089】
このとき、第1送風機構21による親水層が形成されている貯水槽23の内側表面に接触する気流を停止させている間に、貯水槽23の内側表面にへの水または水滴の付着を完了させ、水の落下完了時に親水層への送風を行うことが好ましい。
【0090】
この場合、親水層に均一な厚みの水を保持することが可能となる。また、保管庫10内への霧および/または霧氷の進入が抑制または防止されうる。さらには、低湿度環境では気化潜熱で水滴温度が0℃になるため、冷却の必要が無く、貯水温調器232が省略されて水道水がそのまま用いられてもよい。
【0091】
また、親水層が形成されている貯水槽23の内側表面に連続送風しながら、シャワー状またはミスト状の水が貯水槽23の内側表面に向けて間欠的に噴霧されてもよい。間欠噴霧により噴霧停止期間において霧を気流に蒸散させることが出来る。
【0092】
噴霧された水滴径とは、例えば10μm~100μmの範囲に含まれるサイズを意味する。水滴径は、間欠照射レーザと超高速ビデオカメラによって測定したものである。
【0093】
(第3実施形態)
本実施形態では、第2実施形態で説明した蒸発加湿器20がオープン型の保管庫(オープンショーケース)に使用されている。
【0094】
図4には、オープン型保管庫40が示されている。保管庫40の外形は約90度で屈曲したコの字型の筐体41からなる。筐体41の下部は記載を省略しているが、一般には食品等の保管物を配置するようなケースから構成されている。筐体41内には冷風ダクト42が配設され、冷風ダクト42の内部空間には蒸発加湿器20が配設されている。
【0095】
図5に示されているように、蒸発加湿器20は、基本的には、第2実施形態の蒸発加湿器20と同様の態様を取るが、水供給装置31の代わりに貯水槽23からポンプ33で水Wを汲みだし、水供給装置31によりシャワー状またはミスト状の水が放出または供給される。このとき、第1送風機構21から冷風ダクト42に気流が送られるが、この風がシャワー状の水Wと衝突することによって水滴WSとなる。
【0096】
第2実施形態同様に、水滴WSから発生する水蒸気温度は周囲の水滴水温度を下げることによって気化潜熱を発生させるため、水滴径が小さい場合の水蒸気温度は気化潜熱により水滴水が冷却されて0℃に近くになり、そこから発生する水蒸気温度も0℃近くになる。一方、水滴径が大きい場合は、貯水槽の貯水温度に近くなり、発生する水蒸気温度も当該貯水温度近傍となる。
【0097】
したがって、目標温度に併せて貯水温度と水滴径を決定する。野菜用15℃オープン冷蔵ショーケースでは、庫外に水蒸気が漏れるため春および/または秋では庫内湿度が50%近くになり、冬季では更に乾燥し、多量の加湿が必要となるが目標温度よりも高い温度の水滴に送風することで庫内湿度を飽和湿度まで上昇させることができる。湿度センサで制御することで余分な水の庫内への流出を防止できる。
【0098】
本実施形態においても、保管庫40内に供給する庫内目標温度および飽和湿度の冷気を水供給装置31からシャワー状またはミスト状に放出された水に第1送風機構21によって送風して得た水滴を用い、この水滴を含む冷気を、冷風ダクト42を通じてその排気口42Aから排気し、下部に配置された保管物に当てて、当該保管物を所定の庫内目標温度かつ飽和湿度で管理し、その品質を維持することができる。したがって0℃付近で使用する場合は、従来のような製氷機を用いた蒸発器に比較して消費水量および消費電力を低減することができる。
【0099】
また、従来、不凍剤の使用は、気化したエタノールおよび/または塩分のエアロゾルの室内への拡散があるためオープンショーケースには用いることはできなかったが、本実施形態では、特に不凍剤を持ちなくても保管物の品質維持が可能であるので、本発明の蒸発加湿器は、上述したようなオープン型の保管庫にも適用することが可能となっている。
【0100】
さらに、本実施形態における保管庫は、飽和湿度であるため乾燥を防止でき、0℃では分解酵素活性が低下するため肉および/または野菜の保管に、表1に示されている通り、10℃では魚のATPの分解が最も遅い温度なので魚の保存に、-25℃では塩水の凝固温度である-23℃よりも低いため酵素活性が低下して冷凍品の保管に最適である。
【0101】
さらに、35℃付近が最も味蕾の感度が高い温度であることから40℃では食中毒菌の増殖が止まる温度であり、魚コラーゲン変質限界温度でもある。40℃の食前料理保管庫としても使用可能である。また、50℃~55℃では食中毒菌が死滅する温度であり、短時間では蛋白が変質しない限界温度で、しかもデンプンの糊化温度に近い為老化しない。
そのため、低温調理および/または糊化デンプンの保管にも使用できる。
【0102】
【表3】
【0103】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態および/またはその変形は、発明の範囲および/または要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0104】
例えば、当該貯水に気泡を発生させる気泡発生装置(ファインバブル発生装置などにより構成されている)が設けられていてもよい。水中の気泡は周囲から水蒸気を取込み高湿度状態の空気となる。また、気泡が水面に出る際に気泡が破裂し水面付近に微小な水滴を放散する。放散されて微小水滴は水に気流を接触させることにより短時間で気化して水面の送風の相対湿度を上昇させ、高湿度の送風を庫内に送ることで庫内の湿度を短時間で上昇させることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 恒温高湿度保管庫
11 庫内温度湿度センサ
20 蒸発加湿器
21 第1送風機構
22 第2送風機構
23 貯水槽
231 水供給管
232 貯水温調器
24 庫内温調器
25 案内筒
26 撹拌機
27 制御装置
31 水供給装置
50 マイクロバブル発生装置
51 給水管
52 吸気菅
53 マイクロバブル含有水排出菅
54 排水管
S 保管物
W 水
WS 水滴。

図1
図2
図3
図4
図5
図6