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特許7531954荷締め用バックル及び荷締め用バックルを備えた荷締めベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】荷締め用バックル及び荷締め用バックルを備えた荷締めベルト
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/16 20060101AFI20240805BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B65D63/16 B
F16B2/08 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024027939
(22)【出願日】2024-02-27
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524075847
【氏名又は名称】島田 桂治
(74)【代理人】
【識別番号】100181630
【弁理士】
【氏名又は名称】原 晶子
(72)【発明者】
【氏名】島田 桂治
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-229905(JP,A)
【文献】特開2014-169130(JP,A)
【文献】実開平07-009761(JP,U)
【文献】国際公開第2014/154947(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202017106369(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0320425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/00-63/18
A44B 11/00-11/28
B60P 7/06- 7/18
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状又は板状を有する一対の側枠と、前記側枠の長手方向一端部に前記一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト固定軸と、前記側枠の長手方向他端部に前記一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト係止軸とを有し、枠状に形成される本体と、
前記ベルト係止軸に対して近接又は離間可能に前記本体に取り付けられ、前記ベルト係止軸にベルトを押しつけるベルト押え具と、
ベルトが前記本体から抜けるのを防止する抜け止め具と、を備え、
前記一対の側枠のうちの一方の側枠は、前記ベルト係止軸と前記ベルト押え具とが接する面に沿う位置にベルトを挿入可能なベルト挿入口を有し、
前記抜け止め具は、前記ベルト挿入口を開閉可能に前記側枠に取り付けられ、一端に係合口を有するフックと、前記フックの他端を回動可能に固定するフック固定軸と、前記フックの前記係合口が係合可能なフック係止突起と、フック用弾性部材とを備え、
前記フック固定軸及び前記フック係止突起は、前記ベルト挿入口が形成されている前記側枠に、前記ベルト挿入口を挟んで互いに反対側に設けられ、
前記フック固定軸の軸方向は、前記ベルト係止軸の軸方向と同一方向であり、
前記フックは、前記フック固定軸の周方向に回動し、
前記フック用弾性部材は、前記フック固定軸において、前記フック固定軸の軸方向に前記フックを前記側枠側へ付勢する荷締め用バックル。
【請求項2】
請求項1に記載の荷締め用バックルと、
前記荷締め用バックルに取り付けられるベルトと、を備える荷締めベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷締め用バックル及び当該荷締め用バックルを備えた荷締めベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品等を梱包した段ボール箱などの荷物を複数段積み重ねて貨物自動車の荷台などに積む場合、平ボディの貨物自動車などの自動車の荷台に荷物を積む場合など、荷物の輸送時に荷崩れを生じさせないように荷物を支持体に固定する荷締めベルトが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1のような荷締めベルトは、帯状のベルトと、ベルトを留めるバックルとを備えている。一般に、荷締めベルトのバックルは、棒状又は板状を有する一対の側枠と、側枠の長手方向一端部に一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト固定軸と、側枠の長手方向他端部に一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト係止軸と、ベルト係止軸にベルトを押さえつけるベルト押え具とを備えている。ベルト押え具は、ベルト係止軸の周面に対して僅かに離間した位置に設けられるベルト押え部と、ベルト押え部をベルト係止軸からさらに離間する方向に移動させるレバー部とを備えている。
【0004】
このような荷締めベルトには、一本のベルトを輪のようにし、ベルトの両端部をバックルで留めることで荷物を固定する荷締めベルトと、二本のベルトを備え、各ベルトの一端は自動車の荷台などの支持体に固定され、各ベルトの他端をバックルで留めることで支持体に荷物を固定する荷締めベルトとがある。一本のベルトからなる荷締めベルトは、ベルトの一端がベルト固定軸に取り外し不能に取り付けられ、ベルトの他端をベルト係止軸に引っ掛けてベルト押え具でベルトをベルト係止軸に押さえつけることで荷物を固定する。二本のベルトからなる荷締めベルトは、二本のベルトの一端がそれぞれ支持体に固定され、そのうちの一のベルトの他端がベルト固定軸に取り外し不能に取り付けられている。そして、他のベルトの他端がベルト係止軸に引っ掛けられてベルト押え具でベルトをベルト係止軸に押さえつけることで荷物を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-019028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような荷締めベルトでは、ベルトをベルト係止軸に引っ掛ける際に、ベルトの開放されている先端をベルト係止軸とベルト押え具との間に差し込み、荷物を固定できる位置までベルトの先端を引っ張ってベルトの長さを調整してからベルト押え具でベルトを押さえつけなければならない。一般に、荷締めベルトは、汎用可能なように、長いベルトを有する傾向にある。そのため、荷物の量が少なく、荷物の固定に際してベルトの長さが短くてよい場合には、ベルトの長さが短くなるまでベルトの先端を引っ張り続ける必要があり、荷物の固定に時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、荷物の量に関わらず、荷物を短時間で固定することができる荷締め用バックル及び当該荷締め用バックルを備えた荷締めベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の荷締め用バックルは、棒状又は板状を有する一対の側枠と、側枠の長手方向一端部に一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト固定軸と、側枠の長手方向他端部に一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト係止軸とを有し、枠状に形成される本体と、ベルト係止軸に対して近接又は離間可能に本体に取り付けられ、ベルト係止軸にベルトを押しつけるベルト押え具と、ベルトが本体から抜けるのを防止する抜け止め具とを備える。一対の側枠のうちの一方の側枠は、ベルト係止軸とベルト押え具とが接する面に沿う位置にベルトを挿入可能なベルト挿入口を有する。抜け止め具は、ベルト挿入口を開閉可能に側枠に取り付けられる。
【0009】
好ましい実施形態の荷締め用バックルでは、抜け止め具は、フックと、フックを回動可能に固定するフック固定軸と、フックを係止するフック係止突起と、フック固定軸においてフックを側枠側へ付勢するフック用弾性部材とを備える。フック固定軸及びフック係止突起は、ベルト挿入口を挟んで側枠に設けられる。
【0010】
より好ましい実施形態の荷締め用バックルでは、フックは、引張強度41MPa以上である。
【0011】
別のより好ましい実施形態の荷締め用バックルでは、フックは、金属製である。
【0012】
また、本発明の荷締めベルトは、上記に記載の荷締め用バックルと、荷締め用バックルに取り付けられるベルトとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の荷締め用バックル及び荷締めベルトによれば、荷物の量に関わらず、荷物を短時間で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る荷締めベルトを示す斜視図である。
図2図1の荷締めベルトの荷締め用バックルの正面図である。
図3図1の荷締めベルトの荷締め用バックルの背面図である。
図4図1の荷締めベルトの荷締め用バックルの平面図である。
図5図1の荷締めベルトの荷締め用バックルの底面図である。
図6図1の荷締めベルトの荷締め用バックルの左側面図である。
図7図1の荷締めベルトの荷締め用バックルの右側面図である。
図8図1の荷締めベルトの荷締め用バックルの縦断面図である。
図9図1の荷締めベルトの斜視図で、フックを開いた状態を示す図である。
図10】実施例1の引張試験の結果を示すグラフである。
図11】実施例2の引張試験の結果を示すグラフである。
図12】実施例3の引張試験の結果を示すグラフである。
図13】比較例1の引張試験の結果を示すグラフである。
図14】比較例2の引張試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る荷締めベルト1について説明する。図1は、本実施形態に係る荷締めベルト1を示す斜視図である。以下では、図1に示すように、フック41が設けられる側を前側、ベルト2が延びる方向を左右方向として、前後方向及び左右方向を定義する。前後方向と左右方向に直交する方向を上下方向と定義する。
【0017】
図1に示すように、荷締めベルト1は、荷締め用バックル10と、荷締め用バックル10に取り付けられるベルト2とを備える。ベルト2は、既知の荷締め用ベルトに用いられるベルトと同様に、天然繊維又は化学繊維をより合わせた糸を任意の長さで帯状に編んで形成される。ベルト2は、一本のベルト2又は二本のベルト2により構成される。
【0018】
一本のベルト2で構成される場合、ベルト2は、一端が荷締め用バックル10の一方側の端部、図1では右側端部に、縫合、接着又は溶着することにより着脱不能に取り付けられている。ベルト2は、環状にして使用し、ベルト2の他端を、荷締め用バックル10の他方側の端部、図1では左側端部で留めることで荷物を固定する。
【0019】
二本のベルト2で構成される場合、各ベルト2の一方側の端部には、自動車の荷台などの支持体(不図示)に固定するための固定具(不図示)が取り付けられている。二本のベルト2のうちの一本のベルト2は、固定具を有しない他端が荷締め用バックル10の一方側の端部、図1では右側端部に、縫合、接着又は溶着することにより着脱不能に取り付けられている。各ベルト2の固定具を支持体に取り付け、荷締め用バックル10に取り付けられていない方のベルト2を、荷締め用バックル10の他方側の端部、図1では左側端部で留めることで荷物を支持体に固定する。
【0020】
以下では、ベルト2が一本の構成においても、ベルト2が二本の構成においても、荷締め用バックル10に着脱不能に取り付けられている端部をベルト2の固定端2aと呼び、荷締め用バックル10に取り付けられていない端部をベルト2のフリー端2bと呼ぶ。
【0021】
次に、図2図8も参照して、本実施形態に係る荷締め用バックル10について説明する。図2は、本実施形態の荷締めベルト1の荷締め用バックル10の正面図である。図3は、本実施形態の荷締めベルト1の荷締め用バックル10の背面図である。図4は、本実施形態の荷締めベルト1の荷締め用バックル10の平面図である。図5は、本実施形態の荷締めベルト1の荷締め用バックル10の底面図である。図6は、本実施形態の荷締めベルト1の荷締め用バックル10の左側面図である。図7は、本実施形態の荷締めベルト1の荷締め用バックル10の右側面図である。図8は、本実施形態の荷締めベルト1の荷締め用バックル10の縦断面図である。なお、縦断面図とは、左右方向に沿った鉛直面で切断した断面図である。
【0022】
荷締め用バックル10は、本体20と、ベルト押え具30と、抜け止め防止具40とを備える。
【0023】
本体20は、枠状を有する。具体的には、本体20は、一対の側枠21と、ベルト固定軸22と、ベルト係止軸23と、支持部材24とを備える。
【0024】
側枠21は、棒状又は板状を有する。本実施形態では、側枠21は、正面視任意形状の板状を有する。ベルト固定軸22は、側枠21の長手方向(左右方向)一端部、本実施形態では右側端部に、一対の側枠21に掛け渡して設けられる。ベルト固定軸22は、断面略円形状の棒状を有する。ベルト係止軸23は、側枠21の長手方向他端部、本実施形態では左側端部に、一対の側枠21に掛け渡して設けられる。ベルト係止軸23は、断面略トラック形状の棒状を有する。ベルト係止軸23のベルト押え具30と対向する面、すなわち右側の面は、ベルト2との摩擦力を高めるために、ベルト係止軸23の長手方向に沿って延び、断面が階段状となる複数の段231が形成されている。支持部材24は、側枠21の長手方向中央部に、一対の側枠21に掛け渡して設けられる。支持部材24は、断面矩形状の棒状を有する。
【0025】
ベルト固定軸22、ベルト係止軸23、及び、支持部材24は、ベルト2の幅方向(前後方向)長さと略同等の長さを有し、一対の側枠21と一体形成されている。本体20は、金属、樹脂など、既知の任意の荷締めベルトの荷締め用バックルの本体に使用されている素材により形成される。なお、本体20の形状は、上記形状に限られず、既知の任意の荷締めベルトの荷締め用バックルの本体と同様の形状とすることができる。
【0026】
一対の側枠21のうちの一方の側枠21、本実施形態では前方の側枠21は、ベルト2を挿入可能なベルト挿入口25を有する。ベルト挿入口25は、ベルト係止軸23とベルト押え具30とが接する面に沿う位置に形成される。具体的には、ベルト挿入口25は、ベルト係止軸23のベルト押え具30と対向する面(右面)に沿う位置に形成される。ベルト挿入口25は、ベルト2を挿入可能な幅(左右方向長さ)を有し、側枠21の短手方向(上下方向)全体に亘って設けられる。すなわち、ベルト挿入口25が設けられる側枠21は、2枚の板状部材を、左右方向にベルト2の厚みより僅かに大きい幅だけ離間して配置することで構成される。
【0027】
ベルト押え具30は、ベルト係止軸23にベルト2を押しつける器具である。ベルト押え具30は、操作部31と、本体部32と、押え具用軸33と、押え具用弾性部材34とを備える。
【0028】
操作部31は、ベルト2のフリー端2b(図1参照)を荷締め用バックル10に着脱する際にユーザが操作する部材である。本体部32は、ベルト2をベルト係止軸23に押しつける部材である。操作部31は、板状を有し、本体部32は、断面略トラック形状の棒状を有する。また、操作部31及び本体部32は、一体形成され、ベルト2の幅と略同等の幅(前後方向長さ)で、一対の側枠21の間に配置可能な幅を有する。本体部32のベルト係止軸23と対向する面、すなわち、左側の面には、ベルト2との摩擦力を高めるために、斜め格子状の溝321が形成されている。
【0029】
押え具用軸33は、ベルト押え具30を本体20に取り付ける部材である。押え具用軸33は、断面略円形状の棒状を有する。押え具用軸33は、一対の側枠21に形成されている貫通孔(不図示)に挿し通すことによって、一対の側枠21に掛け渡して設けられる。本体部32は、押え具用軸33を挿し通すための貫通孔(不図示)を有しており、貫通孔に押え具用軸33を挿し通すことで、本体20に対して回動可能に取り付けられる。このとき、本体部32及び押え具用軸33は、本体部23の一方の曲面、本実施形態では右側の曲面が、ベルト係止軸23に接するとともに、図8の二点鎖線で示すように本体部32が回動することで、本体部32の一方の曲面(右側の曲面)がベルト係止軸23から離れる位置に配置される。これにより、ベルト押え具30は、ベルト係止軸23に対して近接又は離間可能に本体20に取り付けられる。操作部31は、本体部32の上面に、鉛直面に対して傾斜して設けられる。
【0030】
押え具用弾性部材34は、ベルト押え具30を、ベルト2をベルト係止軸23へ押しつける方向に付勢する弾性部材である。本実施形態では、押え具用弾性部材34は、コイル部341とコイル部341の両端部から伸びる二本の直線部342とからなるトーションばねにより構成されている。本体部32には、押え具用弾性部材34を収容するための収容部322が形成されている。押え具用弾性部材34は、本体部32の収容部322に収容され、コイル部341の内部に押え具用軸33を挿し通すことで押え具用軸33に取り付けられる。このとき、直線部342は、一方が支持部材24の上面に接し、他方が操作部31の下面に接する。押え具用弾性部材34は、自然長で、本体部32がベルト係止軸23と接する状態に位置できるように構成されている。すなわち、押え具用弾性部材34は、本体部32が回動してベルト係止軸23から離れると、本体部32をベルト係止軸23に接する方向に付勢する。
【0031】
ベルト押え具30は、金属、樹脂など、既知の任意の荷締めベルトの荷締め用バックルのベルト押え具に使用されている素材により形成される。なお、ベルト押え具30は、上記形状に限られず、既知の任意の荷締めベルトの荷締め用バックルのベルト押え具と同様の形状とすることができる。
【0032】
抜け止め具40は、ベルト2が本体20から抜けるのを防止する器具である。抜け止め具40は、ベルト挿入口25を開閉可能に、ベルト挿入口25が形成されている側枠21に取り付けられる。
【0033】
本実施形態では、抜け止め具40は、フック41と、フック41を回動可能に固定するフック固定軸42と、フック41を係止するフック係止突起43と、フック用弾性部材44とを備える。
【0034】
フック固定軸42は、断面略円形状を有する棒状の軸本体421と、軸本体421の一端に設けられて軸本体421よりも周方向外側に突出するフランジ422とにより構成される。フック係止突起43は、断面略円形状を有する棒状の突起本体431と、突起本体431の一端に設けられて突起本体431よりも周方向外側に突出するフランジ432とにより構成される。フック固定軸42及びフック係止突起43は、ベルト挿入口25が形成されている側枠21にベルト挿入口25を挟んで設けられる。本実施形態では、フック固定軸42がベルト挿入口25の左側の側枠21に設けられ、フック係止突起43がベルト挿入口25の右側の側枠21に設けられる。このとき、フック固定軸42及びフック係止突起43は、フック41の長さ(左右方向長さ)だけ離間して配置される。
【0035】
フック固定軸42及びフック係止突起43は、側枠21と一体形成されてもよいし、側枠21と別体で形成されて、側枠21に対して接着、溶着などにより側枠21に取り付けられてもよい。また、フック固定軸42の軸本体421及びフック係止突起43の突起本体431のフランジ422,432が設けられていない端部に雄ねじが形成され、且つ、側枠21に雌ねじが形成され、互いのねじを嵌め合わせることによりフック固定軸42及びフック係止突起43が側枠21に取り付けられてもよい。フック固定軸42は、軸本体421にフック41を回動可能に取り付けるため、一体形成される場合はフランジ422が着脱可能に構成され、別体で形成される場合は軸本体421にフック41を係合させた後に側枠21に取り付けられる。
【0036】
フック41は、板状を有する。フック41は、一端にフック係止突起43に係合する係合口411を有し、他端にフック固定軸42を挿し通すための貫通孔412を有する。係合口411は、フック41の厚み方向(前後方向)にフック41を貫通し、フック41の幅方向(上下方向)において一方の端から中央付近まで開口して形成される。係合口411は、フック係止突起43の突起本体431に係合可能で、且つ、フック係止突起43のフランジ432よりも小さい幅(左右方向長さ)を有する。貫通孔412は、フック41の厚み方向(前後方向)にフック41を貫通して形成される。貫通孔412は、フック固定軸42の軸本体421を軸として回動可能にフック固定軸42の軸本体421を挿通可能で、且つ、フック固定軸42のフランジ422よりも小さい大きさを有する。係合口411及び貫通孔412は、フック固定軸42に貫通孔412を挿し通すことができ、且つ、フック係止突起43に係合口411が係合可能となる位置に形成されている。
【0037】
フック41は、フック固定軸42とフック係止突起43とを掛け渡すことができる長さを有する。また、フック41は、図2の二点鎖線で示すようにフック固定軸42を軸芯としてフック41を回動させたときに、ベルト挿入口25が開口する幅を有する。フック41は、側枠21と略同等の幅(上下方向長さ)及び側枠21と略同等の厚み(前後方向長さ)を有することが好ましい。すなわち、フック固定軸42は、フック固定軸42を軸芯としてフック41を回動させ、フック41の長手方向が上下方向に沿う位置に移動したときに、ベルト挿入口25が開放される位置に設けられる。
【0038】
フック41は、金属、樹脂などの任意の素材により形成される。フック41は、一般的な塩化ビニールの引張強度である引張強度41MPa以上の強度を有することが好ましく、特に塩化ビニールよりも引張強度が大きい金属製であることが好ましい。また、フック41には、フック41の開閉を容易にする把持部が一体形成されてもよい。
【0039】
フック用弾性部材44は、フック固定軸42においてフック41を側枠21側へ付勢する弾性部材である。本実施形態では、フック用弾性部材44は、コイルばねにより構成されている。フック用弾性部材44は、フック固定軸42の軸本体421の径よりも大きく、且つ、フック固定軸42のフランジ422の径よりも小さい径を有する。また、フック用弾性部材44は、フック固定軸42の軸本体421に取り付けられ、フック固定軸42のフランジ422に当接した状態で、フック用弾性部材44の付勢力でフック41を側枠21側へ押しつけることができる長さを有する。
【0040】
フック41は、以下のようにして本体20に取り付けられる。一般に、本体20にベルト押え具30を回動可能に取り付けるために、押え具用軸33は、本体部32を一対の側枠21の間に配置した状態で、一方の側枠21の貫通孔、本体部32の貫通孔、他方の側枠21の貫通孔に順に挿し通して、側枠21の外側(前側及び後側)から側枠21に対してリベット接合することで側枠21に取り付けられる。そのため、フック固定軸42において、フック41と側枠21との間には、押え具用軸33を側枠21に取り付けたリベット接合の厚み(前後方向長さ)に相当する厚みの座金45を介することが好ましい。すなわち、フック固定軸42は、軸本体421に、フランジ422に当接する側から、フック用弾性部材44、フック41、及び、座金45を順に挿し通してから、フック固定軸42の軸本体421の端部を側枠21に取り付ける。これにより、フック41が本体20に取り付けられる。
【0041】
次に、図9も参照して、荷締めベルト1及び荷締め用バックル10の使用について説明する。図9は、本実施形態の荷締めベルト1の斜視図で、フック41を開いた状態を示す図である。
【0042】
ユーザは、従来と同様に、固定する複数の荷物、又は、荷物と支持体に荷締めベルト1のベルト2を掛け渡し、ベルト2のフリー端2bを荷締め用バックル10まで持ってくる。このとき、ベルト2は、荷物がちょうど固定できる位置を荷締め用バックル10の付近に位置させる。ベルト2のフリー端2bを荷締め用バックル10に掛け止める際に、図9に示す位置にフック41を回動させてベルト挿入口25を開放する。そして、操作部31を操作して、ベルト押え具30の本体部32をベルト係止軸23から離間させた状態で、ベルト2をベルト挿入口25からベルト押え具30の本体部32とベルト係止軸23との間に挿入する。それから、ユーザは、荷物が荷物同士又は支持体にしっかりと固定できる長さにベルト2の長さを微調整して、操作部31から手を離す。
【0043】
ユーザが操作部31から手を離すと、押え具用弾性部材34の付勢力により、ベルト押え具30の本体部32は、ベルト係止軸23に近接する方向に移動する。そして、ベルト押え具30は、ベルト2をベルト係止軸23に押しつける。その後、ユーザは、図1に示す位置にフック41を回動させ、フック41の係合口411をフック係止突起43に係合させて、ベルト挿入口25を閉鎖する。
【実施例
【0044】
次に、上記実施形態に係る荷締めベルト1及び荷締め用バックル10について、実施例を挙げて具体的に説明する。
【0045】
本実施例では、上記実施形態の荷締めベルト1を用い、引張試験を行って荷締めベルト1の引張強度の評価を行う。ここでは、上記実施形態の荷締めベルト1に基づく実施例1~3と比較例1~2とに対して引張試験を行う。
【0046】
実施例1~3及び比較例1~2で使用する荷締めベルト1は、市販されている荷締めベルト(コーナン商事株式会社販売)に基づいて構成される。すなわち、ベルト2、荷締め用バックル10の本体20、及び、ベルト押え具30は、実施例1~3及び比較例1~2の全てで同一である。
【0047】
実施例1~3は、上記した市販の荷締めベルトに対して、上記実施形態で示すように、一方の側枠21にベルト挿入口25を形成し、その側枠21に抜け止め具40を取り付けた。抜け止め具40は、幅(上下方向長さ)13mm、厚み(前後方向長さ)3mmの板状のフック41である。実施例1~3のフック41は、以下のとおり素材が異なる。
実施例1のフック41の素材:引張強度418MPaのクロム
実施例2のフック41の素材:引張強度60MPaのアルミニウム
実施例3のフック41の素材:引張強度41MPaの塩化ビニール
【0048】
比較例1は、上記した市販されている荷締めベルトそのままで、ベルト挿入口25及び抜け止め具40が設けられていない。比較例2は、上記した市販されている荷締めベルトに対して、上記実施形態で示すように、一方の側枠21にベルト挿入口25を形成した荷締めベルトである。比較例2では、抜け止め具40は設けられていない。
【0049】
一般に、荷締めベルト1には、耐荷重80kgfが要求されている。荷締めベルト1において荷物を固定する際に生じる荷重は、荷物によってベルト2が引っ張られることによって荷締め用バックル10に掛かる引張荷重となる。ここでは、荷締めベルト1の左右方向にそれぞれ延びるベルト2を約20cmの長さで切断し、一方のベルト2を荷締め用バックル10のベルト固定軸22に着脱不能に取り付けると共に、他方のベルト2をベルト係止軸23とベルト押え具30とで挟んだ状態で、ベルト2を左右方向に最大100kgfまで引っ張って、引張試験を行う。
【0050】
引張試験の結果を図10図14に示す。図10は、実施例1の引張試験の結果を示すグラフである。図11は、実施例2の引張試験の結果を示すグラフである。図12は、実施例3の引張試験の結果を示すグラフである。図13は、比較例1の引張試験の結果を示すグラフである。図14は、比較例2の引張試験の結果を示すグラフである。実施例1~3及び比較例1は、引張試験を3回行った結果を一のグラフで示している。比較例2は、荷締め用バックル10の変形により3回目の試験が行えなかったため、引張試験を2回行った結果を一のグラフで示している。
【0051】
図13から分かるように、比較例1の市販の純正品の荷締めベルトでも引張力が大きくなるにつれて変位が生じている。この変位は、ベルト2がベルト係止軸23とベルト押え具30との間を滑っているために生じている。したがって、図13の比較例1において生じる変位は、現在販売されている製品において許容される変位である。この点を考慮して実施例1~3及び比較例2の試験結果を確認する。
【0052】
図14から分かるように、比較例2では、1回目は引張力67kgf以上、2回目は引張力55kgf以上の引張力を掛けることができずに変位が大きくなっている。これは、荷締め用バックル10が変形して、ベルト係止軸23とベルト押え具30との間でしっかりとベルト2を挟持できなくなったために生じている。この結果から、単に側枠21にベルト挿入口25を設けただけの構成では、ベルト挿入口25が形成されていない側の側枠21のベルト挿入口25と対向する位置に荷重が集中してしまい、側枠21が変形して、一般に荷締めベルトに要求されている耐荷重80kgfを満たさない強度となることが分かる。
【0053】
一方、図10及び図11から分かるように、実施例1及び実施例2では、3回の試験全てで引張力100kgfまで引っ張ることができている。また、変位も純正品である比較例1と変わらない値となっている。すなわち、ベルト挿入口25を形成した側枠21に、ベルト挿入口25を塞ぐ金属製の抜け止め具40を取り付けることで、比較例1の市販の純正品の荷締めベルトと同様の強度を有していることが分かる。
【0054】
また、図12から分かるように、実施例3では、1回目の試験で引張力100kgfまで引っ張ることができている。2回目の試験でも、一般に荷締めベルトに要求されている耐荷重80kgfまでは引っ張ることができている。実際に荷物を固定する際には80kgfという大きな荷重が掛かることはまれであるため、ベルト挿入口25を形成した側枠21に、ベルト挿入口25を塞ぐ実施例3で使用した塩化ビニールと同程度の引張強度を有する素材で形成された抜け止め具40を取り付けることでも、十分に使用に耐え得る荷締めベルト1となっていることが分かる。
【0055】
以上のように、本発明の荷締め用バックル10は、側枠21にベルト挿入口25が形成され、その側枠21にはベルト挿入口25を開閉可能に抜け止め具40が設けられている。一般に荷締めベルト1に取り付けられるベルト2は、多くの荷物でも固定できるように比較的長くなっている。本発明の荷締め用バックル10では、荷物が少量でベルト2が長く余る場合でも、ベルト2の途中部分をベルト挿入口25からベルト係止軸23とベルト押え具30との間に挿し込むことができる。従来は、ベルト2のフリー端2bをベルト係止軸23とベルト押え具30との間に挿し込み、ベルト係止軸23とベルト押え具30との間を通しながらベルト2の長さを調整していた。しかしながら、本発明では、荷物に合わせてベルト2の長さを調整した上でベルト係止軸23とベルト押え具30との間にベルト2を挿し込めるため、狭い空間を通しながらベルト2の長さを調整するよりも短い時間でベルト2の長さを調整でき、荷物を固定する時間を短縮することができる。また、ベルト挿入口25を設けていても、ベルト挿入口25を塞ぐ抜け止め具40が設けられているため、荷締め用バックル10の強度も十分である。特に、引張強度41MPa以上の素材で形成された抜け止め具40、より好ましくは金属製の抜け止め具40を用いることで、ベルト挿入口25が形成されていない荷締めベルト1と同程度の強度を有することができる。
【0056】
一方で、荷物が多く、ベルト2があまり余らない場合には、ベルト挿入口25を使用せずに、従来通りベルト2のフリー端2bをベルト係止軸23とベルト押え具30との間に挿し込む使い方もできる。ベルト2があまり余らない場合には、従来通りの使い方でもベルト2の長さを調整するのに時間はかからない。加えて、このような使い方をすると、抜け止め具40を利用してベルト挿入口25を開閉する手間を削減することができる。結果、本発明の荷締めベルト1は荷物の量に応じて二通りの方法で使用でき、荷物の量に限らず、短時間で荷物を固定することができる。
【0057】
また、実際の現場では、ユーザは手袋を付けたまま荷物を固定することがある。このとき、ベルト2のフリー端2bをベルト係止軸23とベルト押え具30との間に挿し込み難い場合があり、その場合にも、ベルト挿入口25からベルト係止軸23とベルト押え具30との間にベルト2を挿し込むことができ、短時間で効率よく荷物を固定することができる。
【0058】
また、本発明の荷締め用バックル10では、抜け止め具40はフック41で構成されている。フック41によるベルト挿入口25の開閉は、比較的シンプルな構造となるため、コストを抑えることができる。これにより、本発明の荷締めベルト1は、従来品とそれほど変わらない安価で販売することができる。
【0059】
また、本発明の荷締め用バックル10では、フック41を側枠21側へ付勢するフック用弾性部材44が設けられている。フック41の貫通孔412とフック固定軸42とのギャップが小さいと、フック41を回動させるのに力が必要になり、容易にベルト挿入口25を開閉することができない。逆に、フック41の貫通孔412とフック固定軸42とのギャップが大きいと、フック41がフック固定軸42に対して容易に移動してしまい、ベルト挿入口25を開放してベルト2を挿し込む際にフック41が勝手に動いてベルト挿入口25が閉じられてしまう。これを防止するためにフック41を把持してベルト2を挿し込もうとすると、ベルト2を挿し込み難い。しかしながら、本発明の荷締め用バックル10のようにフック用弾性部材44を備えることで、ユーザがフック41を開閉する際にはスムーズにフック41が動作し、ベルト挿入口25を開放しておきたいときは、フック41が動かずに保持することができる。結果、フック41を気にせずにベルト挿入口25からベルト係止軸23とベルト押え具30との間に楽にベルト2を挿し込むことができ、より短時間で荷物を固定することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、抜け止め具40は、フック41と、フック固定軸42と、フック係止突起43と、フック用弾性部材44とにより構成されているが、本発明は必ずしもこの構成でなくてもよい。例えば、抜け止め具40は、側枠21に対して摺動可能に取り付けられるスライダとして構成されてもよい。抜け止め具40をスライダとして構成する場合、ユーザがスライダから手を離すとベルト挿入口25を閉鎖する方向スライダを移動させるスライダ用弾性部材が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 荷締めベルト
2 ベルト
10 荷締め用バックル
20 本体
21 側枠
22 ベルト固定軸
23 ベルト係止軸
25 ベルト挿入口
30 ベルト押え具
40 抜け止め具
41 フック
42 フック固定軸
43 フック係止突起
44 フック用弾性部材

【要約】      (修正有)
【課題】荷物の量に関わらず、荷物を短時間で固定することができる荷締め用バックルを提供する。
【解決手段】荷締め用バックル10は、棒状又は板状を有する一対の側枠と、側枠の長手方向一端部に一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト固定軸と、側枠の長手方向他端部に一対の側枠に掛け渡して設けられるベルト係止軸とを有し、枠状に形成される本体20と、ベルト係止軸に対して近接又は離間可能に本体20に取り付けられ、ベルト係止軸ベルト2を押しつけるベルト押え具30と、ベルト2が本体20から抜けるのを防止する抜け止め具40とを備える。一対の側枠のうちの一方の側枠は、ベルト係止軸とベルト押え具30とが接する面に沿う位置にベルト2を挿入可能なベルト挿入口25を有する。抜け止め具40は、ベルト挿入口25を開閉可能に側枠に取り付けられる。
【選択図】図1
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図14