IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特許7531971正極スラリーおよびそれを用いたリチウム二次電池用正極
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】正極スラリーおよびそれを用いたリチウム二次電池用正極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20240805BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240805BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240805BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022577675
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2022006453
(87)【国際公開番号】W WO2022250323
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067112
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キュン・ウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・ジョ
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-123460(JP,A)
【文献】特開2012-243522(JP,A)
【文献】特表2020-521285(JP,A)
【文献】特表2020-518967(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1391
H01M 4/62
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤および導電材を含有し、25±1℃で5,000cps以上8,000cps未満の粘度を有する第1液と、第2正極活物質およびバインダーを含有する第2液とで構成され、
前記第1正極活物質は、正極スラリーに含有された全体正極活物質100重量部に対し2~25重量部で含有され、
前記正極添加剤の含有量は、正極スラリーに含有された固形分全体100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下であり、
前記第1液および第2液の混合時に25±1℃で8,000cps以上10,000cps未満の粘度を示すリチウム二次電池用正極スラリー:
[化学式1]
LiCo(1-q)
前記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【請求項2】
前記正極スラリーが、25±1℃での粘度が、8,500~9,700cpsである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項3】
正極添加剤は、空間群がP4/nmcである正方晶系構造を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項4】
第1液は、全体100重量部に対して、正極添加剤0.5~40重量部および導電材5~50重量部を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項5】
第2液は、全体100重量部に対してバインダー1~15重量部を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項6】
第1正極活物質は、正極スラリーに含有された全体正極活物質100重量部に対して0重量部で含有される、請求項5に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項7】
第1正極活物質および第2正極活物質は、それぞれ下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー:
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
前記化学式2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0≦y<0.95、0<z≦0.5、0<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【請求項8】
バインダーの重量平均分子量(Mw)が、10,000~1,000,000である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項9】
導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項10】
第1液および第2液は、それぞれN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)、ジメチルアセトアミド(N、N-dimethyl acetamide,DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、アセトニトリル(acetonitrile,ACN)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)、アセトン、エチルアセテートおよび蒸留水のうち1種以上の極性非プロトン性溶媒を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項11】
第1正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤および導電材を混合して第1液を製造する段階と、
第2正極活物質およびバインダーを混合して第2液を製造する段階と、
第1液および第2液を混合して正極スラリーを製造する段階と、を含み、
前記第1正極活物質は、正極スラリーに含有された全体正極活物質100重量部に対し2~25重量部で含有され、
前記正極添加剤の含有量は、正極スラリーに含有された固形分全体100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下であり、
前記第1液は、25±1℃での粘度が5,000cps以上8,000cps未満であり、
前記正極スラリーは、25±1℃での粘度が8,000cps以上10,000cps未満であるリチウム二次電池用正極スラリーの製造方法:
[化学式1]
LiCo(1-q)
前記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【請求項12】
第1液を製造する段階は、40℃以下の温度条件で行われる、請求項11に記載のリチウム二次電池用正極スラリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極スラリーおよびそれを用いて製造されるリチウム二次電池用正極に関するものである。
【0002】
本出願は、2021年5月25日付の韓国特許出願第10-2021-0067112号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と作動電位を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
最近では、電気自動車のような中大型デバイスの電源としてリチウム二次電池が用いられるに伴い、リチウム二次電池の高容量、高エネルギー密度、および低費用化がより一層要求されており、電極に使用される非可逆添加剤に対しても、より高い非可逆容量を有することが求められている。
【0005】
このような要求に応じて、従来LiCoOのような非可逆添加剤が開発された。しかしながら、上記非可逆添加剤は、構造的に不安定で、二次電池の充電が進行されるにつれて、下記のように多量の酸素ガス(O)を発生させることができ、正極に非可逆添加剤を高含有量で使用することは、リチウム二次電池の充放電効率と安全性の観点から限界がある:
【0006】
【化1】
【0007】
これより、低含有量の非可逆添加剤を用いてリチウム二次電池の非可逆性を改善しようとする努力が続いた。しかしながら、非可逆添加剤を低含有量、特に正極スラリー全重量に対して5重量%未満の少量で使用する場合、正極スラリー内の分散性の保障が難しくて、リチウム二次電池の電気的物性が低下するだけでなく、正極の製造過程で低粒度の非可逆添加剤が飛散して、損失量が増加するので、工程設計の自由度が低下する問題がある。
【0008】
したがって、非可逆添加剤を使用する場合、非可逆添加剤の正極スラリー内分散性が保障されて、リチウム二次電池の電気的物性を確保できる技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国特許公開第10-2019-0064423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これより、本発明の目的は、正極の製造時に顕著に少ない量の非可逆添加剤を損失なしで高い分散度で含有する正極スラリーおよびこれを用いて製造されるリチウム二次電池用正極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述のような問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
第1正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤および導電材を含有し、25±1℃で5,000cps以上8,000cps未満の粘度を有する第1液と、第2正極活物質およびバインダーを含有する第2液とで構成され、
上記第1液および第2液の混合時、25±1℃で8,000cps以上10,000cps未満の粘度を示すリチウム二次電池用正極スラリーを提供する:
【0012】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0013】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0014】
具体的に、上記正極スラリーが、25±1℃での粘度が8,500~9,700cpsであってもよい。
【0015】
また、上記正極添加剤は、空間群がP4/nmcである正方晶系構造(tetragonal structure)を有していてもよい。
【0016】
また、上記第1液は、全体100重量部に対して、正極添加剤0.5~40重量部および導電材5~50重量部を含んでもよく、第2液は、全体100重量部に対してバインダー1~15重量部を含んでもよい。
【0017】
また、上記第1正極活物質は、正極スラリーに含有された全体正極活物質100重量部に対して1~30重量部で含有されていてもよい。
【0018】
これと共に、上記第1正極活物質および第2正極活物質は、それぞれ下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物でありうる:
【0019】
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
【0020】
上記化学式2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0≦y<0.95、0<z≦0.5、0<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0021】
また、上記バインダーの重量平均分子量(Mw)が、10,000~1,000,000であってもよい。
【0022】
また、上記導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0023】
また、上記第1液および第2液は、それぞれN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)、ジメチルアセトアミド(N、N-dimethyl acetamide,DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、アセトニトリル(acetonitrile,ACN)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)、アセトン、エチルアセテートおよび蒸留水のうち1種以上の極性非プロトン性溶媒を含んでもよい。
【0024】
また、本発明は、一実施形態において、
第1正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤および導電材を混合して第1液を製造する段階と、
第2正極活物質およびバインダーを混合して第2液を製造する段階と、
第1液および第2液を混合して正極スラリーを製造する段階と、を含み、
上記第1液は、25±1℃での粘度が5,000cps以上8,000cps未満であり、
上記正極スラリーは、25±1℃での粘度が8,000cps以上10,000cps未満であるリチウム二次電池用正極スラリーの製造方法を提供する:
【0025】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0026】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0027】
ここで、上記第1液を製造する段階は、40℃以下の温度条件で行われ得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明によるリチウム二次電池用正極スラリーは、2液型組成物で構成され、かつ、上記2液型組成物に非可逆添加剤として使用される化学式1で示す正極添加剤を高い含有量で含有し、粘度が特定の範囲に調節された第1液を含むことによって、正極添加剤の分散性および作業性に優れているだけでなく、正極スラリーに含まれる正極添加剤の損失を最小化しつつ、副反応を抑制することができ、正極スラリーの状態安定性を向上させることができるので、これを用いて製造される電極の電気的物性に優れているという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有していてもよいところ、特定の実施例を詳細に説明しようとする。
【0030】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものでは、なく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物~代替物を含むものと理解すべきである。
【0031】
本発明において、「含む」または、「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品または、これらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたは、それ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品または、これらを組み合わせたものの存在または、付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0032】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部だけでなく、下部に配置される場合も含んでもよい。
【0033】
また、本発明において、「固形分」とは、本発明による第1液、第2液または正極スラリーの最初重量を基準としてこれらから溶媒を除去した後に残っている固状物質の重量百分率を意味する。例えば、1kgの正極スラリーから溶媒を除去して、残留する固体物質の重量が500gである場合、正極スラリーの固形分は50%である。
【0034】
また、本発明において、「Ah」は、リチウム二次電池の容量単位であり、「アンペアアワー」と言い、時間当たりの電流量を意味する。例えば、電池容量が「3000mAh」であれば、3000mAの電流で1時間の間放電させることができることを意味する。
【0035】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0036】
<リチウム二次電池用正極スラリー>
本発明は、一実施形態において、
第1正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤および導電材を含有し、25±1℃で5,000cps以上8,000cps未満の粘度を有する第1液と、第2正極活物質およびバインダーを含有する第2液とで構成され、
上記第1液および第2液の混合時、25±1℃で8,000cps以上10,000cps未満の粘度を示すリチウム二次電池用正極スラリーを提供する:
【0037】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0038】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0039】
本発明による正極スラリーは、リチウム二次電池に使用される正極を製造するための組成物であり、正極の製造に必要な正極活物質、正極添加剤、導電材およびバインダーを含有し、かつ、各成分が2種の混合物にそれぞれ分離されて存在し、その後、混合される形態を有していてもよい。このとき、上記混合物は、混合液、分散液および/または溶液の形態を有していてもよい。
【0040】
具体的に、上記正極スラリーは、第1正極活物質、化学式1で示す正極添加剤および導電材を含有する第1液と、第2正極活物質およびバインダーを含有する第2液でそれぞれ存在していてもよく、これを混合して使用することができる。上記正極スラリーは、一部の正極活物質と共に、5重量%未満の正極添加剤と導電材を高い含有量で溶媒にプレ分散した第1液を含むことによって、正極添加剤の分散性と作業性を改善する一方で、正極添加剤の損失と副反応を最小化して、製造されるリチウム二次電池用正極の電気的物性と信頼性を向上させることができる。
【0041】
このとき、上記第1液は、全体100重量部に対して、正極添加剤0.5~40重量部および導電材5~50重量部を含有していてもよい。より具体的に、上記第1液は、全体100重量部に対して、正極添加剤を0.5~35重量部、0.5~25重量部、0.5~20重量部、0.5~15重量部、0.5~10重量部、0.5~5重量部、1~5重量部、1~15重量部、5~15重量部、0.5~5重量部、9~15重量部、11~15重量部、15~30重量部または25~35重量部で含んでもよく、この場合、正極スラリーに含有される正極添加剤の含有量は、正極スラリー全体100重量部、具体的には、正極スラリーに含有された固形分全体100重量部に対して5重量部以下、より具体的には、0.01~5重量部、0.01~3重量部、0.01~2重量部、0.5~2重量部、1~2.5重量部、または0.05~0.9重量部であってもよい。
【0042】
また、上記第1液は、全体100重量部に対して導電材を5~40重量部、5~30重量部、5~20重量部、5~10重量部、10~20重量部、15~30重量部または20~30重量部で含有していてもよい。
【0043】
また、上記第2液は、全体10重量部に対して、バインダーを1~10重量部、1~5重量部、2~6重量部、5~15重量部、5~10重量部、3~8重量部または1~3重量部で含有していてもよい。
【0044】
また、第1液に含有される第1正極活物質は、正極スラリーに含有された全体正極活物質、すなわち第1正極活物質と第2正極活物質の全体100重量部に対して1~30重量部で含有されてもよい。より具体的に、上記第1正極活物質は、全体正極活物質100重量部に対して2~25重量部、2~20重量部、2~15重量部、2~10重量部、4~25重量部、5~20重量部、10~20重量部、3~8重量部、8~18重量部または17~26重量部で含有されてもよい。
【0045】
本発明は、第1液および第2液に含有された各成分の含有量を上述した範囲に制御することによって、正極スラリーの製造時、少量の正極添加剤が粉塵のような形態で失われたり、空気中の水分および/または酸素ガスと副反応を起こすのを防止することができ、同時に、正極スラリー内にさらに均一に分散することができる。
【0046】
一方、上記正極添加剤は、下記化学式1で示すリチウムコバルト酸化物でありうる:
【0047】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0048】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0049】
上記正極添加剤は、リチウムを過多含有し、初期充電時に負極での非可逆的な化学的物理的反応によって発生したリチウム消耗にリチウムを提供することができ、これによって、電池の充電容量が増加し、非可逆容量が減少して、寿命特性が改善されることができる。
【0050】
その中でも、上記化学式1で示す正極添加剤は、当業界で通常使用されるニッケル含有酸化物と比較してリチウムイオンの含有量が高いため、電池の初期活性化時に非可逆反応で失われたリチウムイオンを補充することができるので、電池の充放電容量を顕著に向上させることができる。また、当業界で通常使用される鉄および/またはマンガン含有酸化物と比較して電池の充放電時に遷移金属の溶出によって発生する副反応がないので、電池の安定性に優れているという利点がある。このような化学式1で示すリチウム金属酸化物としては、LiCoO、LiCo0.5Zn0.5、LiCo0.7Zn0.3などを含んでもよい。
【0051】
また、上記化学式1で示す正極添加剤は、正方晶系(tetragonal)結晶構造を有していてもよく、この中でも、コバルト元素と酸素元素とが成す歪んだ四面体構造を有するP4/nmcの空間群に含まれ得る。上記正極添加剤は、コバルト元素と酸素原子とが成す歪んだ四面体構造を有していて、構造的に不安定なので、40℃を超過する温度条件で空気中の水分や酸素と副反応を引き起こすことがある。しかしながら、本発明は、上記正極添加剤を正極スラリーの製造時、一部の正極活物質と正極添加剤をプレ分散した第1液を使用することによって、正極添加剤が空気中の水分や酸素と副反応を起こすのを防止できるという利点がある。
【0052】
また、上記第1液および第2液に含有された第1正極活物質と第2正極活物質は、可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な正極活物質であり、それぞれ下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物を主成分として含んでもよく、第1正極活物質および第2正極活物質に使用される各リチウム金属複合酸化物は、同一でも異なっていてもよい:
【0053】
[化学式2]
Li[NiCoMn ]O
【0054】
上記化学式2中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0≦y<0.95、0<z≦0.5、0<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0055】
上記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物は、リチウムとニッケルを含む複合金属酸化物であり、LiCoO、LiCo0.5Zn0.5、LiCo0.7Zn0.3、LiNiO、LiNi0.5Co0.5、LiNi0.6Co0.4、LiNi1/3Co1/3Al1/3、LiMnO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1、およびLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含んでもよい。
【0056】
一例として、上記正極活物質は、化学式2で示すリチウム金属複合酸化物であり、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.05Al0.05、またはLiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05をそれぞれ単独で使用したりまたは併用することができる。
【0057】
また、上記正極活物質の含有量は、正極合材層100重量部に対して85~95重量部であってもよく、具体的には、88~95重量部、90~95重量部、86~90重量部または92~95重量部であってもよい。
【0058】
これと共に、第1液に含有される導電材は、正極の電気的性能を向上させるために使用されるものであり、当業界で通常使用されるものを適用できるが、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上の炭素系物質を使用することができる。例えば、上記導電材は、アセチレンブラックおよびカーボンナノチューブが混合された形態で含まれ得る。
【0059】
また、上記導電材は、合材層100重量部に対して1~5重量部で含んでもよく、具体的には、1~4重量部、2~4重量部、1.5~5重量部、または1~3重量部で含んでもよい。
【0060】
また、上記バインダーは、正極活物質と、正極添加剤および導電材を互いに結着する役割を行い、このような機能を有するものであれば、特に限定されずに使用できる。具体的に、上記バインダーとしては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含んでもよい。一例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含んでもよい。
【0061】
これと共に、上記バインダーの重量平均分子量(Mw)は、10,000~1,000,000であってもよく、具体的には、100,000~500,000,500,000~1,000,000,300,000~700,000または400,000~600,000であってもよい。本発明は、バインダーの重量平均分子量(Mw)を上記のような範囲に制御することによって、第1液と正極スラリーの粘度を容易に制御することができる。
【0062】
また、上記第1液および第2液は、それぞれ溶媒をさらに含有していてもよい。上記溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)、ジメチルアセトアミド(N、N-dimethyl acetamide,DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、アセトニトリル(acetonitrile,ACN)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)、アセトン、エチルアセテートおよび蒸留水のうち1種以上の極性非プロトン性溶媒を含有していてもよく、第1液の溶媒と第2液の溶媒は、互いに同一でも異なっていてもよい。一例として、上記第1液と第2液は、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)を含有していてもよい。本発明は、第1液および第2液に上述した溶媒を含むことによって、第1液と第2液の粘度調節を容易にすることができると共に、正極の製造時に溶媒の迅速な揮発によって合材層のクラックが発生しないように、溶媒の揮発速度を適切に制御することができる。
【0063】
しかも、本発明の第1液と正極スラリーは、粘度が一定の範囲に調節されることができる。具体的に、上記第1液は、25±1℃で5,000cps以上8,000cps未満の粘度を有していてもよい。例えば、上記第1液は、25±1℃で5,500cps以上8,000cps未満、6,000cps以上8,000cps未満、6,500cps以上8,000cps未満、7,000cps以上8,000cps未満、5,000cps以上7,500cps未満、5,000cps以上7,000cps未満、5,000cps以上6,500cps未満、6,000cps以上7,500cps未満、または6,500cps以上7,500cps未満の粘度を有していてもよい。また、上記正極スラリーは、25±1℃で8,000cps以上9,000cps未満、8,000cps以上8,500cps未満、8,500cps以上10,000cps未満、9,000cps以上10,000cps未満、8,500cps以上9,700cps未満、8,500cps以上9,500cps未満、または9,000cps以上9,800cps未満の粘度を有していてもよい。
【0064】
本発明は、第1液と正極スラリーの粘度を上記範囲に制御することによって、少量の正極添加剤を正極スラリー内にさらに均一に分散させることができ、正極の製造時に正極集電体上にスラリーを均一に塗布および乾燥させることができ、製造される電池の電極抵抗を低減して電気的性能を向上させることができる。それだけでなく、第1液および/または正極スラリーの粘度が低すぎて、正極の製造時に正極合材層が不均一に形成されたり、正極合材層と集電体の接着力が低下するのを防止することができる。
【0065】
<リチウム二次電池用正極スラリーの製造方法>
また、本発明は、一実施形態において、上述したリチウム二次電池用正極スラリーの製造方法を提供する。
【0066】
本発明による正極スラリーの製造方法は、第1正極活物質、正極添加剤および導電材を含有する第1液と、第2正極活物質およびバインダーを含有する第2液を製造し、混合することによって行われる。具体的に、上記正極スラリーの製造方法は、第1正極活物質、下記化学式1で示す正極添加剤および導電材を混合して第1液を製造する段階と、第2正極活物質およびバインダーを混合して第2液を製造する段階と、上記第1液および第2液を混合して正極スラリーを製造する段階と、を含む:
【0067】
[化学式1]
LiCo(1-q)
【0068】
上記化学式1中、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0069】
ここで、上記第1液を製造する段階および第2液を製造する段階は、それぞれ第1正極活物質、正極添加剤および導電材を混合して第1液を製造し、および第2正極活物質とバインダーを混合して第2液を製造する段階であり、当業界でスラリーの製造時に使用される通常の条件下で行われ得る。例えば、上記第1液を製造する段階および第2液を製造する段階は、各成分をホモミキサー(homo mixer)に投入し、30~600分間1,000~5,000rpmで撹拌して行われてもよく、上記撹拌時に溶媒をさらに添加することで、25±1℃での粘度を制御することができる。一例として、第1液を製造する段階の場合、第1正極活物質、化学式1で示す正極添加剤および導電材をホモミキサーに投入し、3,000rpmで60分間混合しつつ、N-メチルピロリドン溶媒を注入して、25±1℃での粘度が7,500±300cpsである第1液を製造することができる。
【0070】
また、上記第1液を製造する段階は、構造的に不安定な正極添加剤が損傷するのを防止するために、特定の範囲を満たす温度条件下で行われ得る。具体的に、上記第1液を製造する段階は、40℃以下の温度条件で行われ得、より具体的には、10℃~40℃、10℃~35℃、10℃~30℃、10℃~25℃、10℃~20℃、15℃~40℃、20℃~40℃、15℃~35℃、または18℃~30℃の温度条件で行われ得る。
【0071】
また、このように製造された第1液は、一定の粘度範囲、具体的に、25±1℃で5,000cps以上8,000cps未満の粘度を満たすことができ、このとき、上記粘度は、第1液に含まれた正極添加剤の種類および/または含有量、固形分、溶媒の種類などによって調節できるが、これに限定されるものではない。例えば、上記第1液は、25±1℃で5,500cps以上8,000cps未満、6,000cps以上8,000cps未満、6,500cps以上8,000cps未満、7,000cps以上8,000cps未満、5,000cps以上7,500cps未満、5,000cps以上7,000cps未満、5,000cps以上6,500cps未満、6,000cps以上7,500cps未満、または6,500cps以上7,500cps未満の粘度を有していてもよい。
【0072】
また、正極スラリーを製造する段階は、あらかじめ準備した第1液と第2液を混合して正極スラリーを製造する段階であり、このときの混合は、当業界で通常適用される方法であれば、特に限定されずに行われ得るが、具体的には、第1液および第2液のうちいずれか一方の組成物に他方の組成物を添加して行われ得、場合によっては、ミキサーや反応器などに第1液と第2液を同時に添加することで行われ得る。
【0073】
これと共に、このように製造される正極スラリーは、第1液よりも高い粘度を有していてもよい。具体的に、上記正極スラリーは、25±1℃で8,000cps以上10,000cps未満の粘度を有していてもよい。例えば、上記正極スラリーは、25±1℃で8,000cps以上9,000cps未満、8,000cps以上8,500cps未満、8,500cps以上10,000cps未満、9,000cps以上10,000cps未満、8,500cps以上9,700cps未満、8,500cps以上9,500cps未満、または9,000cps以上9,800cps未満の粘度を有していてもよい。
【0074】
本発明は、正極スラリーの製造時に第1液と正極スラリーの粘度を上述した範囲にように制御することによって、少量の正極添加剤を正極スラリー内にさらに均一に分散させることができ、正極の製造時に正極集電体上にスラリーを均一に塗布および乾燥させることができ、製造される電池の電極抵抗を低減して、電気的性能を向上させることができる。それだけでなく、第1液および/または正極スラリーの粘度が低すぎて、正極の製造時に正極合材層が不均一に形成されたり、正極合材層と集電体の接着力が低下するのを防止することができる。
【0075】
<リチウム二次電池用正極>
これと共に、本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、
上述した本発明の正極スラリーを用いて製造される正極合材層と、を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0076】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、正極集電体上に本発明の正極スラリーを塗布、乾燥およびプレスして製造される正極合材層を含み、上記正極合材層は、正極活物質、化学式1で示す正極添加剤、導電材およびバインダーを含有する構成を有する。
【0077】
このとき、上記正極合材層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には、50μm~300μmであってもよく、より具体的には、100μm~200μm、80μm~150μm、120μm~170μm、150μm~300μm、200μm~300μm、または150μm~190μmであってもよい。
【0078】
また、上記正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものを使用することができる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0079】
<リチウム二次電池>
しかも、本発明は、一実施形態において、
上述した本発明による正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在する分離膜と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【0080】
本発明によるリチウム二次電池は、前述したような本発明の正極を具備し、初期充電時に利用可能電圧以下の低い電圧条件下で正極添加剤の脱リチウム化を高い割合で誘導することができるので、以後、充放電時に発生する酸素ガス量が顕著に少なく、これによって、リチウム二次電池の電気的性能および安全性に優れているという利点がある。
【0081】
このような本発明のリチウム二次電池は、正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在される分離膜と、を含む構造を有する。
【0082】
ここで、上記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じて正極と同じ導電材、有機バインダー高分子、添加剤などが選択的にさらに含まれ得る。
【0083】
また、上記負極活物質は、例えば、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure;炭素の6角形ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などの炭素および黒鉛材料や;LixFe(0≦x≦1)、LixWO(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’、Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、BiおよびBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを使用することができる。
【0084】
一例として、上記負極活物質は、黒鉛とケイ素(Si)含有粒子を共に含んでもよく、上記黒鉛としては、層状結晶構造を有する天然黒鉛と等方構造を有する人造黒鉛のうちいずれか一つ以上を含んでもよく、上記ケイ素(Si)含有粒子としては、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であり、ケイ素(Si)粒子、酸化ケイ素(SiO)粒子、または上記ケイ素(Si)粒子と酸化ケイ素(SiO)粒子が混合されたものを含んでもよい。
【0085】
この場合、上記負極活物質は、全体100重量部に対して黒鉛80~95重量部、およびケイ素(Si)含有粒子1~20重量部で含んでもよい。本発明は、負極活物質に含まれた黒鉛とケイ素(Si)含有粒子の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時にリチウム消耗量と非可逆容量損失を減らし、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0086】
これと共に、上記負極合材層は、負極活物質を集電体上に固着させるためにバインダーをさらに含んでもよい。例えば、上記負極合材層は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMMA)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのうちいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物をバインダーとして含んでもよい。
【0087】
このとき、上記バインダーの含有量は、負極合材層100重量部に対して0.5~5重量部であってもよく、具体的には、0.5~4重量部、または1~3重量部であってもよい。
【0088】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有していてもよく、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μmまたは140μm~160μmの平均厚さを有していてもよい。
【0089】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0090】
また、上記分離膜は、正極と負極の間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜は、当業界で通常使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ガラス繊維;またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用でき、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によってコートされた複合分離膜が使用されることもできる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。また、上記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは、平均5~300μmであってもよい。
【0091】
一方、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収納されるか、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型電池に収納されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0092】
また、本発明による上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなってもよく、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。
【0093】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0094】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合材などが使用できる。
【0095】
上記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNi、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0096】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用できる。
【0097】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含んでもよく、フルオロエチレンカーボネート(FEC:Fluoro-Ethylene Carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)などをさらに含んでもよい。
【0098】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0099】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0100】
<実施例1~4および比較例1~8正極スラリーの製造>
第1正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2、正極添加剤としてLiCo0.7Zn0.3、および導電材としてアセチレンブラックとカーボンナノチューブ(93~97:3~7の重量比)をそれぞれ準備し、下記表1および表2に示されたように秤量して、ホモミキサー(homo mixer)に投入した後、N-メチルピロリドン溶媒を注入し、3,000rpmで60分間混合して、第1液を製造した。
【0101】
これとは別に、ホモミキサー(homo mixer)に第2正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2、およびバインダーとしてPVDF(重量平均分子量(Mw):500,000±25,000)をそれぞれ準備し、下記表1および表2に示されたように秤量して、ホモミキサー(homo mixer)に投入した後、N-メチルピロリドン溶媒を注入し、3,000rpmで90分間混合して、第2液を製造した。
【0102】
第2液を準備すると、あらかじめ製造された第1液を投入し、30分間さらに混合して、正極スラリーを製造した。このとき、第1液と正極スラリーの25℃での粘度は、表1および表2に示されたように調節した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
<比較例9.正極スラリーの製造>
ホモミキサー(homo mixer)にN-メチルピロリドン溶媒を注入し、正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2 93重量部、正極添加剤としてLiCo0.7Zn0.3 3重量部、導電材としてアセチレンブラックとカーボンナノチューブ(93~97:3~7の重量比)2重量部、およびバインダーとしてPVDF(重量平均分子量(Mw):500,000±25,000)2重量部を秤量して投入した後、3,000rpmで60分間混合して、正極スラリーを製造した。このとき、製造された正極スラリーの25℃での粘度は、9,500cpsであった。
【0106】
<実験例>
実施例および比較例で製造された正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、正極を製造した。このとき、正極合材層の総厚さは、130μmであり、製造された正極の総厚さは、約200μmであった。
【0107】
また、負極活物質として天然黒鉛およびケイ素(SiOx、ただし、1≦x≦2)粒子と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を準備し、正極スラリーを製造する方式と同じ方式で負極スラリーを準備した。このとき、負極合材層の製造時に使用される黒鉛は、天然黒鉛(平均粒度:0.01~0.5μm)であり、ケイ素(SiOx)粒子は、0.9~1.1μmの平均粒度を有するものを使用した。準備した負極スラリーを銅集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、負極を製造した。このとき、負極合材層の総厚さは、150μmであり、製造された負極の総厚さは、約250μmであった。
【0108】
次に、製造された正極と負極の間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚さ:約16μm)を介在し、電解液としてE2DVCを注入して、フルセル(full cell)形態のセルを製作した。
【0109】
ここで、「E2DVC」とは、カーボネート系電解液の一種であり、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1(体積比)の混合物に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF、1.0M)およびビニレンカーボネート(VC、2重量%)を混合した溶液を意味する。
【0110】
本発明による正極添加剤の性能を評価するために、このように製造されたリチウム二次電池セルを用いて下記のような実験を行った。
【0111】
イ)充放電時に発生する酸素ガス量の測定
実施例および比較例の正極スラリーを用いて製造されたリチウム二次電池を対象に、55℃で3.6Vおよび1.0Cの条件で初期充電(formation)を行い、上記初期充電を行うことで、正極で発生するガスを脱気して、初期充電時に発生する酸素ガスの含有量を分析した。次に、45℃でそれぞれ0.3Cの条件で50回充放電を繰り返し行うことで、各充放電時に電解質の分解によって発生する酸素ガスの含有量を追加分析し、分析された結果は、下記表3に示した。
【0112】
ロ)初期抵抗の測定
実施例および比較例の正極スラリーを用いて製造されたリチウム二次電池を対象にSOC50%に調整した後、10秒間高速放電を行うことによって、二次電池の抵抗を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0113】
ハ)リチウム二次電池の充放電容量および保持率の評価
実施例および比較例の正極スラリーを用いて製造されたリチウム二次電池を対象に、25℃の温度で0.1Cの充電電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、終止電圧で電流密度が0.01Cとなるまで充電を行うことで活性化させた。以後、0.1Cの放電電流で終止電圧2.5Vまで放電させ、単位質量当たりの初期充放電容量を測定した。
【0114】
次に、45℃でそれぞれ0.3Cの条件で50回充放電を繰り返し行うことで、充放電時の容量を測定し、50回充放電を行った後、充放電容量保持率を算出した。その結果は、下記表3に示した。
【0115】
【表3】
【0116】
表3に示されたように、本発明による正極スラリーは、正極添加剤が製造時に正極添加剤の損失および/または副反応が抑制されるだけでなく、均一に分散するので、充放電時に発生する酸素ガス量が低く、高い容量および寿命を示すことが分かる。
【0117】
具体的に、実施例で製造された正極スラリーを使用した場合、リチウム二次電池は、初期充放電で80~110ml/gの酸素ガスを発生させるが、以後の充放電では、15ml/g未満で酸素ガスを発生させることが示された。これは、正極スラリーの製造時に正極添加剤が内部に均一に分散して、初期充放電時にスラリー内で非可逆反応が高い効率で進行されることを意味する。
【0118】
また、実施例で製造された正極スラリーは、内部に正極添加剤が均一に分散した形態を有し、103Ω以下の低い電極面抵抗を有することが確認された。
【0119】
また、実施例の正極スラリーを使用して電極を製造する場合、初期充放電容量および容量保持率がそれぞれ103mAh以上および90%以上の高い値を有することが確認された。これは、正極スラリーの製造時に粉末形態の正極添加剤が混合される過程で失われたり、空気中の水分および/または酸素と副反応が誘導されて活性が低下するのが防止されることを意味する。
【0120】
このような結果から、本発明によるリチウム二次電池用正極スラリーは、2液型組成物で構成され、かつ、非可逆添加剤として使用される化学式1で示す正極添加剤を高い含有量で含有し、粘度が特定の範囲に調節された第1液を含むことによって、正極添加剤の分散性および作業性に優れているだけでなく、正極スラリーに含まれる正極添加剤の損失を最小化しつつ、副反応を抑制することができ、正極スラリーの状態安定性を向上させることができるので、これを用いて製造される電極の電気的物性に優れているという利点がある。
【0121】
以上では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0122】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。