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特許7531976全固体電池の製造方法及びこれによる全固体電池
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  • 特許-全固体電池の製造方法及びこれによる全固体電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】全固体電池の製造方法及びこれによる全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240805BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240805BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240805BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240805BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/134
H01M10/052
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023506059
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 KR2022005133
(87)【国際公開番号】W WO2022216115
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0046816
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0043008
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジン・ハー
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・キム
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-040759(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004343(WO,A1)
【文献】特開2008-130450(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164723(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189821(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0165423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)正極と負極との間に固体電解質層が配置された電極組立体を準備する段階と、
(b)前記電極組立体を電池ケースに収容して全固体電池を組み立てる段階と、
(c)前記全固体電池を1次押圧する段階と、
(d)前記全固体電池を2次押圧する段階と、
を含み、
前記2次押圧する段階は、加熱及び押圧を同時に遂行し、
前記負極は負極合剤を含まない、全固体電池の製造方法。
【請求項2】
前記(d)段階の温度範囲は60℃~150℃である、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項3】
前記(d)段階は12時間以上~30時間以下の間で遂行する、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記(d)段階で、
前記全固体電池を押圧する押圧ジグは第1押圧ジグ及び第2押圧ジグを含む一対からなる定位ジグであり、
前記全固体電池を押圧するように前記第1押圧ジグと第2押圧ジグとの間隔を設定した状態で押圧及び加熱し、
前記全固体電池の厚さが初期厚さより減少すれば、前記第1押圧ジグと第2押圧ジグとの間隔を再設定して押圧及び加熱する過程を含む、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記負極と固体電解質層との境界の接触面は(d)段階以前より(d)段階以後に増加する、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項6】
前記段階(c)はCIP方法で押圧する過程である、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法によって製造された全固体電池を単位セルとして含む、電池モジュールの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年4月9日付の韓国許出願第10-2021-0046816号及び2022年4月6日付の韓国許出願第10-2022-0043008号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は全固体電池の製造方法及びこれによる全固体電池に関するものである。具体的には、リチウムデンドライトの形成を抑制することで、寿命特性が増加し、安全性が向上した全固体電池の製造方法及びこれによる全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
再充電が可能であり、高エネルギー密度を有するリチウム二次電池は、化石燃料の使用を画期的に減らすことができるのみならず、エネルギーの使用による副産物が発生しないので、環境に優しい特性を有する新エネルギー源として注目されている。
【0004】
リチウム二次電池は、ウェアラブル(wearable)デバイスまたはポータブル(portable)デバイスだけではなく、電気自動車のような高出力及び高エネルギー密度を有するデバイスのエネルギー源としても脚光を浴びている。このために、リチウム二次電池の作動電圧及びエネルギー密度を増加させるための多くの研究が遂行されている。
【0005】
リチウム二次電池の一種として電解液及び分離膜を含むリチウムイオン二次電池は火災及び爆発の危険が高い。これに対する解決策として、不燃性の固体を電解質として使用した全固体電池が提示されている。
【0006】
全固体電池は固体電解質を使うので、安全性が高いだけでなく、リチウムイオンの移動速度が速く、負極の厚さを減らすことによってエネルギー密度が増加する利点がある。
【0007】
特に、全固体電池のエネルギー密度を高める手段として、負極合剤を含まず、集電体のみから構成される負極形態が提案された。
【0008】
負極合剤がない負極集電体を含む全固体電池を充電すれば、リチウムイオンが正極から負極に移動し、負極集電体と固体電解質層とが接触する部分の負極集電体にリチウムが付着(plating)する。この状態の全固体電池を放電すれば、負極集電体に付着していたリチウムが脱離(stripping)して正極に移動する。
【0009】
全固体電池の充放電が繰り返されるのに伴い、負極集電体に付着したリチウムは次第に大きさが増加し、固体電解質層の隙間に沿ってリチウムデンドライトが成長することができる。このようなリチウムデンドライトは電池のショートまたは容量低下の原因になることがある。
【0010】
固体電解質層と負極集電体との接触面が少ない場合、リチウムが狭い面積にのみ付着するので、リチウムデンドライトの発生可能性が高くなる。したがって、負極集電体と固体電解質層との接触面を向上させるための技術が必要である。
【0011】
これに関連して、特許文献1は高出力及び優れたサイクル特性を得ることができる全固体電池の製造方法に関するものであり、具体的には、全固体電池を組み立てる第1工程、前記全固体電池を未充電状態で加熱する第2工程、及び前記全固体電池を未充電状態で冷却する第3工程を含み、前記第2工程は前記全固体電池を押圧しながら加熱する過程として遂行される。
【0012】
特許文献1の負極は黒鉛などの炭素質材料などを負極活物質として含んでいるので、負極活物質を含まない負極の表面に対してリチウムが付着及び脱離する場合、リチウムデンドライトの形成を抑制するための技術を認識することができていない。
【0013】
したがって、負極合剤がないアノードフリー(anode-free)負極を含む全固体電池のリチウムデンドライトの形成を抑制するための技術が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2019-40759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、固体電解質層と負極との界面接着面積を増やすことで、リチウムデンドライトの発生を最小化して寿命特性及び安全性が向上した全固体電池の製造方法及びこれによる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するための本発明による全固体電池の製造方法は、(a)正極と負極との間に固体電解質層が配置された電極組立体を準備する段階と、(b)前記電極組立体を電池ケースに収容して全固体電池を組み立てる段階と、(c)前記全固体電池を1次押圧する段階と、(d)前記全固体電池を2次押圧する段階とを含み、前記2次押圧する段階は、加熱及び押圧を同時に遂行する。
【0017】
前記(d)段階の温度範囲は60℃~150℃であり得る。
【0018】
前記(d)段階は12時間以上~30時間以下の間で遂行することができる。
【0019】
前記(d)段階で、前記全固体電池を押圧する押圧ジグは第1押圧ジグ及び第2押圧ジグを含む一対からなる定位ジグであり、前記全固体電池を押圧するように前記第1押圧ジグと第2押圧ジグとの間隔を設定した状態で押圧及び加熱し、前記全固体電池の厚さが初期厚さより減少すれば、前記第1押圧ジグと第2押圧ジグとの間隔を再設定して押圧及び加熱する過程を含むことができる。
【0020】
前記負極と固体電解質層との境界の接触面は(d)段階以前より(d)段階以後に増加することができる。
【0021】
前記段階(c)はCIP方法で押圧することができる。
【0022】
前記負極は負極合剤を含まなくてもよい。
【0023】
本発明は、前記全固体電池の製造方法によって製造された全固体電池及び前記全固体電池を単位セルとして含む電池モジュールを提供する。
【0024】
また、本発明は、前記技術的解決方法を多様に組み合わせた形態としても提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上で説明したように、本発明は全固体電池を押圧及び加熱する段階を含むので、固体電解質層と負極との界面接触を著しく向上させることができる。
【0026】
また、負極合剤を含まない負極を使うにもかかわらず、負極の表面で局部的にリチウム核が形成されることを防止することで、前記リチウム核がリチウムデンドライトに成長することを抑制することができる。
【0027】
このように、本発明は、長時間の寿命特性を確保し、安全性が向上した全固体電池の製造方法及びこれによる全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による全固体電池の製造方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただ、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0030】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0031】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0032】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0033】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、A及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0034】
図面に基づいて詳細な実施例と一緒に本発明を説明する。
【0035】
図1を参照すると、本発明は、正極合剤を含む正極、負極合剤を含まない負極、及び固体電解質層を含む電極組立体を用いて全固体電池を製造する方法であり、具体的には、(a)正極と負極との間に固体電解質層が配置された電極組立体を準備する段階、(b)前記電極組立体を電池ケースに収容して全固体電池を組み立てる段階、(c)前記全固体電池を1次押圧する段階、及び(d)前記全固体電池を2次押圧する段階を含み、前記2次押圧する段階は、加熱及び押圧を同時に遂行することができる。
【0036】
一般的に、負極合剤が形成された負極を含む全固体電池において、固体電解質層と負極合剤とが接触する領域にリチウムが挿入され、負極活物質内に移動することになる。負極合剤がなく負極集電体のみで構成される負極は、負極集電体と固体電解質層との間の接触が均一にならない場合、固体電解質層と接触した負極集電体の一部領域にのみリチウムが付着する。このように、負極集電体の一部でのみリチウムが成長する結果として、リチウムデンドライトが形成されることができる。
【0037】
このような問題を解決するために、本発明は、固体電解質層と負極との界面接触を増加させることができる全固体電池の製造方法を提示する。
【0038】
具体的には、全固体電池の半組立状態として、正極110と負極120との間に固体電解質層130が配置されるように電極組立体を準備する。正極110は正極集電体111に正極合剤112がコーティングされており、負極120は負極集電体のみで構成される形態として示されている。
【0039】
正極110は図面上で下側に突出する正極タブが正極リード113に結合された形態を有することができ、負極120は図面上で上側に突出するように負極タブが負極リード123に結合された形態を有することができる。
【0040】
電極組立体を電池ケース201に収容し、電池ケース201を密封することで、全固体電池101を組み立てることができる。電池ケース201は、金属層の外側に外部樹脂層が結合し、前記金属層の内側に内部接着層が結合したラミネートシートを成形したパウチ型電池ケースであり得る。
【0041】
電池ケース201を密封した状態で、正極リード113と負極リード123とは電池ケース201の外側に突出して電極端子として機能することができる。
【0042】
図1の(c)は全固体電池101を冷間静水圧プレス(CIP:Cold Isostatic Pressing)加工法で押圧するために全固体電池101をチャンバー140に入れた状態を示している。
【0043】
CIP加工法は、冷間等圧成形とも言い、成形体に対して全方向に同等な圧力を印加して押圧する方法である。CIP加工法は無限多軸的に押圧する方法であるので、他の成形法と比較すると、均質性に優れ、押圧力によって全固体電池が損傷する危険を低めることができる利点がある。
【0044】
前記CIP加工過程で全固体電池を1次押圧する段階を遂行することができる。選択的に、前記1次押圧段階は加熱過程と同時に遂行することができる。
【0045】
図1の(d)は、チャンバー140に収容して1次押圧した全固体電池101をチャンバー140から取り出し、一対の押圧ジグ150の間に配置し、その状態で加熱するために、温度の設定されたオーブン160内に配置した状態を示している。
【0046】
押圧ジグ150は全固体電池の両側面のそれぞれに配置される第1押圧ジグ及び第2押圧ジグから構成されることができる。前記押圧ジグ150はその自体が温度調節可能な形態を有することができ、押圧ジグ150で全固体電池101を押圧するとき、同時に加熱する形態を有することができる。もしくは、押圧ジグの間に配置された全固体電池を一定の温度に維持することができるオーブン内に配置することで、押圧及び加熱を同時に遂行するように構成することができる。
【0047】
このように、押圧及び加熱を同時に遂行する場合には、全固体電池に適用される総エネルギーが熱及び圧力によって増加するので、固体電解質層と負極との界面で粒子と粒子との接触、及び層と層との接触が増加することができる。
【0048】
また、本発明は、正極、固体電解質層及び負極を積層して電極組立体を製造し、前記電極組立体の電極と固体電解質層との界面に平行に圧力を印加する方法を用いる。前記固体電解質層及び負極は加熱によって変形し易い状態になることができるので、固体電解質層と負極との間の界面接触が改善することができる。
【0049】
押圧ジグ150は一定の圧力を持続的に印加する定圧ジグであるか、または、一対の押圧ジグの間の間隔を一定に設定することができる定位ジグであり得る。
【0050】
前記押圧ジグが定位ジグの場合、初期に設定された押圧ジグの間隔によって電極組立体及び全固体電池の体積が減少するので、時間が経過するのに伴って電極組立体及び全固体電池を押圧する力が減少する。よって、押圧ジグの位置を再設定する過程が必要であり得る。
【0051】
具体的には、前記(d)段階で、前記全固体電池を押圧する押圧ジグは第1押圧ジグ及び第2押圧ジグを含む一対のジグからなる定位ジグであり、前記全固体電池を押圧するように前記第1押圧ジグと第2押圧ジグとの間隔を設定した状態で押圧及び加熱し、前記全固体電池の厚さが初期厚さより減少すれば、前記第1押圧ジグと第2押圧ジグとの間隔を再設定して加熱及び押圧する過程を含むことができる。
【0052】
もしくは、前記押圧ジグが定圧ジグの場合、設定時間の間に全固体電池に一定の押圧力を印加することができるので、前記第1押圧ジグと第2押圧ジグとの間隔を再設定する過程が不必要である。
【0053】
このように、本発明は、1次押圧過程及び2次押圧過程を含み、前記2次押圧過程は加熱及び押圧を同時に遂行する過程を含むので、固体電解質層と負極との間の界面接触を一層向上させることができる。これにより、イオン抵抗の低い全固体電池を提供することができる。また、リチウムデンドライトの生成を抑制することで、寿命特性が向上した全固体電池を提供することができる。
【0054】
前記(c)段階で押圧と同時に加熱を遂行する場合、前記(c)段階及び(d)段階のそれぞれの押圧力及び温度は同一であってもよく、または互いに異なる押圧力及び温度に設定することができる。
【0055】
すなわち、前記(c)段階及び前記(d)段階はそれぞれ独立的に押圧力及び温度を設定することができる。
【0056】
一方、前記(c)段階及び(d)段階の押圧及び加熱の時間は前記(c)段階及び前記(d)段階で互いに異なるように設定することができる。
【0057】
例えば、全固体電池に高圧及び高温を早く印加する場合、全固体電池の構成成分が損傷することがある点、及び固体電解質層と負極との接触を向上させるための目的を考慮すると、前記(c)段階及び(d)段階の押圧及び加熱時間は12時間以上に設定することができる。詳細には、全固体電池の製造時間が非効率的に増加することを防止する必要があるので、前記(c)段階及び前記(d)段階の押圧力及び温度が適切に設定されることを前提として、押圧及び加熱時間は12時間以上~30時間以内に設定することができる。
【0058】
一具体例で、(c)段階及び(d)段階の押圧力は一定の大きさで印加することができる。もしくは、初期には低圧力で押圧し、段階的に押圧力を高めながら押圧することで、全固体電池の成分が損傷することを防止することができる。また、固体電解質層と負極との間の接触性向上効果が高くなることができる。
【0059】
また、このように(c)段階及び(d)段階の押圧力が段階的に増加するとき、加熱温度も段階的に増加することができる。
【0060】
一具体例で、前記(c)段階は加熱過程なしに押圧過程のみを遂行することができる。この際、前記(c)段階の押圧力及び/または押圧時間は(d)段階の押圧力及び/または押圧時間と同一であるか、または、異なるように設定することができる。
【0061】
本発明は、(c)段階の1次押圧及び(d)段階の2次押圧によって全固体電池を押圧し、前記2次押圧の際には加熱過程を一緒に遂行するので、前記負極と固体電解質層との境界の接触面は(d)段階以前より(d)段階以後に増加するようになる。よって、負極と固体電解質層との間の界面全体で均一に接触することができる。
【0062】
したがって、負極と固体電解質層との間にリチウムデンドライトが成長することを最小化することができる。
【0063】
前記正極は、例えば、正極集電体上に正極活物質を含む正極合剤を塗布してから乾燥することで製造され、前記正極合剤は、必要によって、バインダー、導電材、充填剤などを選択的にさらに含むことができる。
【0064】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、高い導電性を有するものであれば特に限定されなく、前記正極集電体としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。また、正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成することによって正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0065】
前記正極活物質は電気化学的反応を起こすことができる物質であり、下記の式1~3で表現される正極活物質のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0066】
LiCo1-x(1)
LiMn2-y(2)
LiFe1-zPO(3)
【0067】
前記式で、0.8≦a≦1.2;0≦x≦0.8;0≦y≦0.6、0≦z≦0.5であり、MはTi、Cd、Cu、Cr、Mo、Mg、Al、Ni、Mn、Nb、V及びZrからなる群から選択される1種以上である。
【0068】
すなわち、前記正極活物質は、式1で表示される層状構造のリチウム金属酸化物、式2で表示されるスピネル構造のリチウムマンガン系酸化物、及び式3で表示されるオリビン構造のリチウム含有リン酸化物からなる群から選択される1種または2種以上の物質を含むことができる。
【0069】
前記層状構造のリチウム金属酸化物は、その種類に制限されないが、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-マンガン酸化物、リチウムマンガン-ニッケル酸化物、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物、及びこれらに他の元素が置換またはドーピングされた物質からなる群から選択される1種または2種以上を含むことができる。
【0070】
前記リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物は、Li1+zNiMncCo1-(b+c+d)(2-e)(ここで、-0.5≦z≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0≦d≦0.2、0≦e≦0.2、b+c+d<1であり、MはAl、Mg、Cr、Ti、SiまたはYであり、AはF、PまたはClである)で表現することができる。
【0071】
前記スピネル構造のリチウムマンガン系酸化物もその種類に制限されないが、例えば、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物及びこれらに他の元素が置換またはドーピングされた物質からなる群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。
【0072】
また、前記オリビン構造のリチウム含有リン酸塩もその種類に制限されないが、例えば、リチウム鉄リン酸化物及びこれに他の元素が置換されたものを挙げることができる。
【0073】
前記他の元素は、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、及びドーピングされた物質からなる群から選択される1種または2種以上の元素からなる群から選択される少なくとも1種とすることができる。
【0074】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に役立つ成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全体の重量を基準にして1重量%乃至30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0075】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物の総重量に対して1重量%~30重量%添加される。このような導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさないながらも導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;エチレンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材、グラフェン及びカーボンナノチューブなどを使うことができる。
【0076】
前記充填剤は電極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、繊維状材料であれば特に限定されなく、前記充填剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0077】
前記負極は負極合剤を含まず、負極集電体のみで構成されることができる。
【0078】
前記負極集電体は、一般に3μm乃至500μmの厚さを有するように作られる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、前記負極集電体としては、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することによって負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を使用することができる。
【0079】
固体電解質層を構成する固体電解質は、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、及び高分子系固体電解質からなる群から選択されるいずれか1種であることができる。
【0080】
前記硫化物系固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、また、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、電子絶縁性を有することができる。硫化物系固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有することが好ましいが、目的又は場合によって、Li、S及びP以外の他の元素を含むことができる。
【0081】
具体的な硫化物系無機固体電解質として、例えば、LiPSCl、LiS-P、LiS-P-LiCl、LiS-P-HS、LiS-P-HS-LiCl、LiS-LiI-P、LiS-LiI-LiO-P、LiS-LiBr-P、LiS-LiO-P、LiS-LiPO-P、LiS-P-P、LiS-P-SiS、LiS-P-SiS-LiCl、LiS-P-SnS、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-P、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiS-SiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-P、LiS-SiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiSiO、LiS-SiS-LiPO、及びLi10GeP12などを使用することができる。
【0082】
前記硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法として、非晶質化法を使用することができる。前記非晶質化法として、例えば、メカニカルミリング法、溶液法又は溶融急冷法を挙げることができる。これは、常温(25℃)での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるためである。
【0083】
前記酸化物系固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
【0084】
前記酸化物系固体電解質として、例えば、LixaLayaTiO[xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7](LLT)、LixbLaybZrzbbb mbnb(Mbbは、Al、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In及びSnのうち少なくとも1種以上の元素であり、xbは、5≦xb≦10を充足し、ybは、1≦yb≦4を充足し、zbは、1≦zb≦4を充足し、mbは、0≦mb≦2を充足し、nbは、5≦nb≦20を充足する。)、Lixcyccc zcnc(Mccは、C、S、Al、Si、Ga、Ge、In及びSnのうち少なくとも1種以上の元素であり、xcは、0≦xc≦5を充足し、ycは、0≦yc≦1を充足し、zcは、0≦zc≦1を充足し、ncは、0≦nc≦6を充足する。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3-2xe)ee xeeeO(xeは、0以上0.1以下の数を示し、Meeは、2価の金属原子を示す。Deeは、ハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを示す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4-3/2w)(wは、w<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2-xhSiyh3-yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)などを挙げることができる。又は、前記酸化物系固体電解質として、Li、P及びOを含むリン化合物も使用することができ、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素に置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuなどから選ばれた少なくとも1種)などを挙げることができる。又は、前記酸化物系固体電解質として、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C及びGaなどから選ばれた少なくとも1種)なども使用することができる。
【0085】
前記高分子系固体電解質は、それぞれ独立的に溶媒化されたリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体高分子電解質であるか、有機溶媒及びリチウム塩を含有した有機電解液を高分子樹脂に含有させた高分子ゲル電解質であることができる。
【0086】
例えば、前記固体高分子電解質は、イオン伝導性材質であって、通常、全固体電池の固体電解質材料として使用される高分子材料であれば特に限定されない。前記固体高分子電解質は、例えば、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン誘導体、アルキレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、又はイオン性解離基を含む重合体などを含むことができる。又は、前記固体高分子電解質は、高分子樹脂であって、PEO(polyethyleneoxide)主鎖にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリシロキサン及び/又はホスファゼンなどの無定形高分子を共単量体で共重合させた分枝状共重合体、くし状高分子樹脂(comb-like polymer)及び架橋高分子樹脂などを含むことができる。
【0087】
前記高分子ゲル電解質は、リチウム塩を含む有機電解液及び高分子樹脂を含むものであって、前記有機電解液は、高分子樹脂の重量に対して60~400重量部含むことができる。高分子ゲル電解質に適用される高分子は、特定の成分に限定されないが、例えば、ポリビニルクロライド系(Polyvinylchloride、PVC)、ポリメチルメタクリレート(Poly(Methyl methacrylate)、PMMA)系、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN)、ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidene fluoride、PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン(poly(vinylidene fluoride-hexafluoropropylene:PVDF-HFP)などを含むことができる。
【0088】
前記固体電解質層は固体電解質粒子の結着力を確保するためにバインダーを含むことができる。前記バインダーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルクロライド(polyvinylchloride)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリプロピレンオキサイド(polypropylene oxide)、ポリホスファゼン(Polyphosphazene)、ポリシロキサン(Polysiloxane)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、ポリビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、ポリビニリデンカーボネート(polyvinylidene carbonate)、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)、ニトリルブタジエンゴム(nitrile-butadiene rubber)、及び水素化ニトリルブタジエンゴム(Hydrogenated nitrile butadiene rubber)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0089】
本発明は前記のような全固体電池の製造方法によって製造された全固体電池を単位セルとして含む電池モジュールを提供し、前記電池モジュールは、高温安全性、長いサイクル特性、及び高い容量特性が要求される中大型デバイスのエネルギー源として使うことができる。
【0090】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モーターによって動力を受けて作動する動力工具(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0091】
以下は、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がこれによって限定されるものではない。
【0092】
<実験例1>押圧ジグの圧力による固体電解質層のイオン抵抗変化
固体電解質層を製造するために、固体電解質としてアルジロダイト(LiPSCl)とバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンとを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌して固体電解質層スラリーを製造した。
【0093】
前記固体電解質層スラリーをポリエチレンテレフタレート離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することで、厚さが50μmの固体電解質層を製造した。
【0094】
前記固体電解質層をニッケル箔(Ni foil)の間に介在し、これをアルミニウムパウチで密封した後、押圧ジグで固定した。
【0095】
分析装置(BioLogic science instruments社のVMP3モデル)を使い、60℃で振幅(amplitude)10mV及び走査範囲(scan range)0.1MHz~500kHzの条件の下で電気化学的インピーダンスを測定した。
【0096】
このように測定した圧力によるイオン抵抗は下記の表1の通りである。
【0097】
【表1】
【0098】
前記表1を参照すると、ジグの圧力が印加されることにより、固体電解質層のイオン抵抗は小幅に減少する傾向を示すが、11MPaより強い圧力が印加されても測定されるイオン抵抗は一定であるので、それ以上改善されない。
【0099】
したがって、押圧力を印加することだけでは固体電解質層自体及び/または固体電解質層とニッケル箔(Ni foil)との間の接触が改善するのに限界があることが分かる。
【0100】
<実験例2>温度による固体電解質層のイオン抵抗変化
前記実験例1で製作された固体電解質層を押圧ジグに配置しなかった状態で熱処理しながら、前記実施例1と同様な装置及び条件でイオン抵抗変化を測定した。このように測定された温度によるイオン抵抗は下記の表2の通りである。
【0101】
【表2】
【0102】
前記表2を参照すると、固体電解質層に圧力を印加しなかった状態で熱処理のみ遂行する場合には、熱処理温度が増加してもイオン抵抗がほとんど減少しないことから、固体電解質層とニッケル箔(Ni foil)との界面での接触改善がほとんどないようである。これは、硫化物系固体電解質または酸化物系固体電解質が焼結(sintering)のような効果を得るためには300℃~400℃以上の温度で熱処理する必要がある点を考慮すると、当たり前の結果である。
【0103】
ただ、本発明の固体電解質層はバインダーを含んでいるので、180℃の高温で長時間熱処理する場合、固体電解質層内での構造変化またはバインダーの熱的安全性が低下してイオン抵抗が小幅に増加した。
【0104】
<実験例3>熱及び圧力による固体電解質層のイオン抵抗変化
前記実験例1で製造された固体電解質層を押圧ジグに配置し、熱処理を同時に遂行しながら、前記実施例1と同様な装置及び条件でイオン抵抗変化を測定した。このように測定されたイオン抵抗は下記の表3の通りである。
【0105】
下記の表3で、初期条件は常温(25℃)で押圧ジグに圧力を印加しなかった最初状態を意味する。
【0106】
【表3】
【0107】
前記表3を参照すると、熱及び圧力を印加しなかった初期状態を基準に、温度が40℃まで増加するまではイオン抵抗が約17%減少して初期に比べて約83%水準である。温度をさらに増加させて60℃以上に加熱しながら押圧する場合には、固体電解質層のイオン抵抗が著しく減少することを確認することができる。これは、前記実験例1及び実験例2では予想しにくい結果であり、初期に比べて約64%水準である。したがって、押圧と同時に60℃以上の温度に加熱する場合、イオン抵抗減少効果を大きく得ることができる。
【0108】
<実施例1>
全固体電池用正極を製造するために、正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1、固体電解質としてアルジロダイト(LiPSCl)、導電材としてファーネスブラック、及びバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンを77.5:19.5:1.5:1.5の重量比で準備し、アニソール(Anisole)に分散して撹拌することによって正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを14μmの厚さのアルミニウム集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、100℃で12時間真空乾燥することによって正極を製造した。
【0109】
固体電解質層を製造するために、固体電解質としてアルジロダイト(LiPSCl)とバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンとを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌して固体電解質層スラリーを製造した。前記固体電解質層スラリーをポリエチレンテレフタレート離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することで固体電解質層を製造した。
【0110】
コーティング層及びイオン伝導層を含む全固体電池用負極を製造するために、10μm厚さのニッケル集電体上にAgを30nmのサイズを有するようにスパッタリングすることで、Ag層からなるコーティング層を形成した。その後、前記Ag層上に、アセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとが97:3の重量比で混合されたスラリーをコーティングしてイオン伝導層を形成した後、乾燥することで、多層構造を有する負極を製造した。
【0111】
前記正極、固体電解質層、及び負極を順次積層して全固体電池を製造した。
【0112】
前記全固体電池を1次押圧するために、25℃でCIP加工法で圧力を印加した。このときに印加した圧力は500MPaである。
【0113】
前記全固体電池を2次押圧するために、前記全固体電池を押圧ジグに配置し、5.5MPaで押圧した状態で100℃のオーブンで1日間熱処理した。
【0114】
<実施例2>
前記実施例1で、前記全固体電池を押圧ジグに配置し、150℃のオーブンで12時間熱処理したことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0115】
<比較例1>
前記実施例1で、1次押圧段階のみ遂行し、2次押圧段階を遂行しないことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0116】
<比較例2>
前記実施例1で、2次押圧段階で全固体電池を押圧ジグに配置し、11MPaで押圧し、熱処理は遂行しなかったことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0117】
<比較例3>
前記実施例1で、2次押圧段階で全固体電池を押圧ジグに配置し、11MPaで2日間押圧し、熱処理は遂行しなかったことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0118】
<比較例4>
前記実施例1で、2次押圧段階で前記全固体電池を押圧ジグに配置せずに熱処理のみ遂行したことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0119】
<比較例5>
前記実施例1で、2次押圧段階で前記全固体電池を押圧ジグに配置せず、100℃のオーブンで2日間熱処理のみ遂行したことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0120】
<比較例6>
前記実施例1で、2次押圧段階で100℃のオーブンで3時間熱処理したことを除き、前記全固体電池を押圧ジグに配置し、5.5MPaで押圧した状態で、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0121】
<比較例7>
前記実施例1で、2次押圧段階で前記全固体電池を押圧ジグに配置し、11MPaで押圧した状態で100℃のオーブンで5時間熱処理したことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0122】
<比較例8>
前記実施例1で、2次押圧段階で前記全固体電池を押圧ジグに配置し、11MPaで押圧した状態で100℃のオーブンで10時間熱処理したことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0123】
<比較例9>
前記実施例1のように全固体電池を押圧して電極組立体に対して押圧力を印加せず、正極、固体電解質層、及び負極のそれぞれをロールプレスした後、電極組立体を製造したことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0124】
<実験例4>全固体電池評価
前記実施例1、実施例2及び比較例1~9で製造された全固体電池を60℃で4.25Vまで定電流-定電圧モードで0.05Cで充電し、3.0Vまで0.05Cで放電しながら初期充電容量及び初期放電容量を測定し、その結果を下記の表4に記載した。
【0125】
また、3.7V~4.2Vの範囲で0.1Cで寿命評価を遂行した。下記の表4には全固体電池の充放電の際にショートが発生したサイクル(cycle)回数及びそのときの容量維持率を記載した。
【0126】
【表4】
【0127】
前記表4を参照すると、2次押圧段階で熱及び圧力を同時に印加した実施例1及び実施例2の全固体電池の場合、圧力のみ印加した比較例2及び比較例3と加熱のみ遂行した比較例4及び比較例5とを比較すると、初期効率が優れる。
【0128】
また、電極組立体が形成された状態で押圧せず、半製品である電極及び固体電解質層をそれぞれ押圧した場合である比較例9の場合、電極と電解質膜との間の界面形成が円滑でなくて電池が正常に駆動しなかった。
【0129】
特に、負極合剤を含まず、充放電の際、リチウム付着(Li plating)及び脱離(stripping)メカニズムによって運用される全固体電池の場合、サイクルが遂行されるとき、リチウムデンドライトによって容量低下及びショートが発生するが、実施例1及び実施例2のように熱及び圧力によって全固体電池のイオン抵抗が改善した場合、寿命特性が著しく向上することが分かる。
【0130】
しかし、比較例6~比較例8のように加熱及び押圧を同時に遂行しても、加熱及び押圧の時間が12時間未満に短い場合にはイオン抵抗改善効果が大きくないので、寿命向上効果が著しく低いことが分かる。特に、比較例7及び比較例8のように、実施例1及び実施例2より押圧力が高くても加熱及び押圧の時間が短い場合には、容量維持率及びサイクル特性が劣悪であることが分かる。
【0131】
したがって、本発明による全固体電池の製造方法のように、2次押圧段階で加熱及び押圧を同時に12時間以上遂行する場合には、負極と固体電解質層との境界の接触面が増加して電池のイオン抵抗が改善する結果として、容量寿命特性が向上することが分かる。
【0132】
本発明が属する分野の通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
【符号の説明】
【0133】
101 全固体電池
110 正極
111 正極集電体
112 正極合剤
113 正極リード
120 負極
123 負極リード
130 固体電解質層
140 チャンバー
150 押圧ジグ
160 オーブン
201 電池ケース
図1