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特許7531979能動騒音低減装置、移動体装置、及び、能動騒音低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】能動騒音低減装置、移動体装置、及び、能動騒音低減方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240805BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G10K11/178 120
B60R11/02 S
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021003086
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108195
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】谷 充博
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119800(JP,A)
【文献】国際公開第2020/205864(WO,A1)
【文献】特開2007-016886(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084186(WO,A1)
【文献】特開2020-184070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体装置に取り付けられた第一参照信号源によって出力される、前記移動体装置内の空間における第一騒音と相関を有する第一参照信号が入力される第一参照信号入力部と、
前記第一参照信号入力部に入力される前記第一参照信号に第一適応フィルタを適用することにより、前記第一騒音を低減するための第一キャンセル音の出力に用いられる第一キャンセル信号を生成する第一適応フィルタ部と、
前記第一適応フィルタの係数を更新する第一フィルタ係数更新部と、
前記第一適応フィルタ部に関連する第一パラメータに基づいて、前記第一キャンセル音に基づく第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第一フィルタ係数更新部が通常状態で前記第一適応フィルタの係数を更新しているときに、前記第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を、前記通常状態よりも前記第一騒音を低減する効果が弱まる制限状態にし、
前記第一フィルタ係数更新部が制限状態であるときに、前記第一の騒音制御が安定状態であると判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を前記通常状態に復帰させ
前記安定状態から前記不安定状態への遷移、及び、前記不安定状態から前記安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生したと判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を前記制限状態に固定する
能動騒音低減装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一パラメータが一定期間以上第一閾値を超える場合に、前記第一の騒音制御が不安定状態であると判定する
請求項1に記載の能動騒音低減装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一パラメータが一定期間の間に所定回数以上第一閾値を超える場合に、前記第一の騒音制御が不安定状態であると判定する
請求項1に記載の能動騒音低減装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一パラメータが一定期間以上第二閾値未満となる場合に、前記第一の騒音制御が安定状態であると判定する
請求項1に記載の能動騒音低減装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一パラメータが一定期間の間に所定回数以上第二閾値未満となる場合に、前記第一の騒音制御が安定状態であると判定する
請求項1に記載の能動騒音低減装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記移動体装置の状態を示す状態信号をさらに取得し、
前記第一フィルタ係数更新部が制限状態であるときに、取得された前記状態信号が示す前記移動体装置の状態が所定状態に変化したことを示すと、前記第一フィルタ係数更新部を前記通常状態に復帰させる
請求項1~のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項7】
前記所定状態は、前記移動体装置の窓が閉じた状態である
請求項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項8】
前記所定状態は、前記空間における温度が所定の範囲内の状態である
請求項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項9】
前記第一パラメータは、前記第一適応フィルタの係数を含む
請求項1~のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項10】
前記第一パラメータは、前記第一適応フィルタの係数の更新量を含む
請求項1~のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項11】
前記第一パラメータは、前記第一キャンセル信号の振幅を含む
請求項1~10のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項12】
前記制限状態の前記第一フィルタ係数更新部は、前記通常状態であるときよりも小さいステップサイズパラメータを用いて前記第一適応フィルタの係数を更新する
請求項1~11のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項13】
前記制限状態の前記第一フィルタ係数更新部は、前記第一適応フィルタの係数の更新を停止する
請求項1~11のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項14】
前記制限状態の前記第一フィルタ係数更新部は、前記第一適応フィルタ部からの前記第一キャンセル信号の出力を停止する
請求項1~11のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項15】
前記第一フィルタ係数更新部は、Filtered-X LMS(Least-Mean-Square)アルゴリズムに基づいて、前記第一適応フィルタの係数を更新し、
前記能動騒音低減装置は、さらに、
前記移動体装置に取り付けられた第二参照信号源によって出力される、前記移動体装置内の空間における第二騒音と相関を有する第二参照信号が入力される第二参照信号入力部と、
前記第二参照信号入力部に入力される前記第二参照信号に基づいて特定される周波数を有する基準信号に第二適応フィルタを適用することにより、前記第二騒音を低減するための第二キャンセル音の出力に用いられる第二キャンセル信号を生成する第二適応フィルタ部と、
SAN(Single-frequency Adaptive Notch filter)アルゴリズムに基づいて、前記第二適応フィルタの係数を更新する第二フィルタ係数更新部とを備え、
前記制御部は、さらに、前記第二適応フィルタ部に関連する第二パラメータに基づいて、前記第二キャンセル音に基づく第二の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定し、
前記第二フィルタ係数更新部が通常状態で前記第二適応フィルタの係数を更新しているときに、前記第二の騒音制御が不安定状態であると判定すると、前記第二フィルタ係数更新部を、前記通常状態よりも前記第二騒音を低減する効果が弱まる制限状態にし、
前記第二フィルタ係数更新部が制限状態であるときに、前記第二の騒音制御が安定状態であると判定すると、前記第二フィルタ係数更新部を前記通常状態に復帰させる
請求項1~14のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記第一フィルタ係数更新部が前記通常状態であるときに、前記第二の騒音制御が不安定状態であると判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を前記制限状態にし、
前記第二フィルタ係数更新部が前記通常状態であるときに、前記第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、前記第二フィルタ係数更新部を前記制限状態にする
請求項15に記載の能動騒音低減装置。
【請求項17】
前記移動体装置は、車両であり、
前記第一騒音は、ロードノイズであり、
前記第二騒音は、前記車両のエンジン音に基づく騒音である
請求項15または16に記載の能動騒音低減装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の能動騒音低減装置と、
前記第一参照信号源とを備える
移動体装置。
【請求項19】
能動騒音低減装置によって実行される能動騒音低減方法であって、
前記能動騒音低減装置は、
移動体装置に取り付けられた第一参照信号源によって出力される、前記移動体装置内の空間における第一騒音と相関を有する第一参照信号に第一適応フィルタを適用することにより、前記第一騒音を低減するための第一キャンセル音の出力に用いられる第一キャンセル信号を生成する第一適応フィルタ部と、
前記第一適応フィルタの係数を更新する第一フィルタ係数更新部とを備え、
前記能動騒音低減方法は、
前記第一適応フィルタ部に関連する第一パラメータに基づいて、前記第一キャンセル音に基づく第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する判定ステップと、
制御ステップとを含み、
前記制御ステップにおいては、
前記第一フィルタ係数更新部が通常状態で前記第一適応フィルタの係数を更新しているときに、前記第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を、前記通常状態よりも前記第一騒音を低減する効果が弱まる制限状態にし、
前記第一フィルタ係数更新部が制限状態であるときに、前記第一の騒音制御が安定状態であると判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を前記通常状態に復帰させ、
前記安定状態から前記不安定状態への遷移、及び、前記不安定状態から前記安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生したと判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を前記制限状態に固定する
能動騒音低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、騒音にキャンセル音を干渉させることでこの騒音を能動的に低減する能動騒音低減装置、これを備える移動体装置、及び能動騒音低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音と相関を有する参照信号と、所定空間内の騒音及びキャンセル音が干渉した残留音に基づく誤差信号とを用いてキャンセル音源から騒音を打ち消すためのキャンセル音を出力することにより、騒音を能動的に低減する能動騒音低減装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。能動騒音低減装置は、誤差信号の二乗和が最小になるように、適応フィルタを用いてキャンセル音を出力するためのキャンセル信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/006846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、能動騒音低減装置においては、所定空間内の音響伝達特性の変動などにより適切に騒音を低減できず、キャンセル音が異音となってしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、キャンセル音が異音となってしまうことを抑制することができる能動騒音低減装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る能動騒音低減装置は、移動体装置に取り付けられた第一参照信号源によって出力される、前記移動体装置内の空間における第一騒音と相関を有する第一参照信号が入力される第一参照信号入力部と、前記第一参照信号入力部に入力される前記第一参照信号に第一適応フィルタを適用することにより、前記第一騒音を低減するための第一キャンセル音の出力に用いられる第一キャンセル信号を生成する第一適応フィルタ部と、前記第一適応フィルタの係数を更新する第一フィルタ係数更新部と、前記第一適応フィルタ部に関連する第一パラメータに基づいて、前記第一キャンセル音に基づく第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する制御部とを備え、前記制御部は、前記第一フィルタ係数更新部が通常状態で前記第一適応フィルタの係数を更新しているときに、前記第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を、前記通常状態よりも前記第一騒音を低減する効果が弱まる制限状態にし、前記第一フィルタ係数更新部が制限状態であるときに、前記第一の騒音制御が安定状態であると判定すると、前記第一フィルタ係数更新部を前記通常状態に復帰させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の能動騒音低減装置は、キャンセル音が異音となってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1に係る車両を上方から見た模式図である。
図2図2は、実施の形態1に係る能動騒音低減装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1に係る能動騒音低減装置の通常動作のフローチャートである。
図4図4は、実施の形態1に係る能動騒音低減装置の制限動作のフローチャートである。
図5図5は、実施の形態1に係る能動騒音低減装置の復帰動作の例1のフローチャートである。
図6図6は、実施の形態1に係る能動騒音低減装置の復帰動作の例2のフローチャートである。
図7図7は、実施の形態1に係る能動騒音低減装置を制限動作に固定する処理のフローチャートである。
図8図8は、実施の形態1に係る能動騒音低減装置の具体的な動作例を示す図である。
図9図9は、実施の形態2に係る車両を上方から見た模式図である。
図10図10は、実施の形態2に係る能動騒音低減装置の機能構成を示すブロック図である。
図11図11は、信号処理部の動作の概要を示す図である。
図12図12は、信号処理部の機能ブロック図である。
図13図13は、信号処理部の通常動作のフローチャートである。
図14図14は、実施の形態2に係る能動騒音低減装置の制限動作の例1のフローチャートである。
図15図15は、実施の形態2に係る能動騒音低減装置の制限動作の例2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0011】
(実施の形態1)
[車両の構成]
以下、実施の形態1に係る車両、及び、当該車両に搭載される能動騒音低減装置について説明する。まず、実施の形態1に係る車両について説明する。図1は、実施の形態1に係る車両を上方から見た模式図である。
【0012】
車両50は、移動体装置の一例であって、実施の形態1に係る能動騒音低減装置10と、第一参照信号源51と、キャンセル音源52と、誤差信号源53と、車両本体54と、車両制御部55とを備える。車両50は、具体的には、自動車であるが、特に限定されない。
【0013】
第一参照信号源51は、車両50の車室内の空間56における騒音と相関を有する参照信号を出力するトランスデューサである。実施の形態1では、第一参照信号源51は、加速度センサであり、空間56外に配置される。具体的には、第一参照信号源51は、左前輪付近のサブフレーム(または、左前輪のタイヤハウス)に取り付けられる。なお、第一参照信号源51の取り付け位置は、特に限定されない。第一参照信号源51が加速度センサである場合、能動騒音低減装置10は、空間56における騒音に含まれるロードノイズの成分(第一騒音の一例)を低減することができる。ロードノイズは伝播経路が複雑であるため、複数箇所に加速度センサを配置する構成が有用である。なお、第一参照信号源51は、マイクロフォンであってもよい。
【0014】
キャンセル音源52は、第一キャンセル信号を用いて第一キャンセル音を空間56に出力する。実施の形態1では、キャンセル音源52は、スピーカであるが、車両50の一部の構造体(例えば、サンルーフなど)がアクチュエータ等の駆動機構によって加振されることにより、キャンセル音が出力されてもよい。また、能動騒音低減装置10において、複数のキャンセル音源52が使用されてもよく、キャンセル音源52の取り付け位置は特に限定されない。
【0015】
誤差信号源53は、空間56において騒音と第一キャンセル音とが干渉することによって得られる残留音を検出し、残留音に基づく誤差信号を出力する。誤差信号源53は、マイクロフォン等のトランスデューサであり、ヘッドライナー等、空間56内に設置されることが望ましい。なお、車両50は、誤差信号源53を複数備えてもよい。
【0016】
車両本体54は、車両50のシャーシ及びボディなどによって構成される構造体である。車両本体54は、キャンセル音源52及び誤差信号源53が配置される空間56(車室内空間)を形成する。
【0017】
車両制御部55は、車両50の運転手の操作等に基づいて、車両50を制御(駆動)する。また、車両制御部55は、車両50の状態を示す車両状態信号を能動騒音低減装置10へ出力する。車両制御部55は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)であり、具体的には、プロセッサ、マイクロコンピュータまたは専用回路などによって実現される。車両制御部55は、プロセッサ、マイクロコンピュータ、及び専用回路のうちの2つ以上の組み合わせによって実現されてもよい。
【0018】
[能動騒音低減装置の構成]
次に、能動騒音低減装置10の構成について説明する。図2は、能動騒音低減装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0019】
図2に示されるように、能動騒音低減装置10は、第一参照信号入力端子11と、キャンセル信号出力端子12と、誤差信号入力端子13と、車両状態信号入力端子14と、第一適応フィルタ部15と、第一模擬音響伝達特性フィルタ部16と、第一フィルタ係数更新部17と、第一記憶部18と、制御部19とを備える。第一適応フィルタ部15、第一模擬音響伝達特性フィルタ部16、第一フィルタ係数更新部17、及び、制御部19は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサまたはマイクロコンピュータがソフトウェアを実行することによって実現される。第一適応フィルタ部15、第一模擬音響伝達特性フィルタ部16、第一フィルタ係数更新部17、及び、制御部19は、回路などのハードウェアによって実現されてもよい。また、第一適応フィルタ部15、第一模擬音響伝達特性フィルタ部16、第一フィルタ係数更新部17、及び、制御部19は、一部がソフトウェアによって実現され、他の一部がハードウェアによって実現されてもよい。
【0020】
[通常動作]
上述のように、能動騒音低減装置10は、騒音低減動作を行う。まず、能動騒音低減装置10の通常動作について図2に加えて図3を参照しながら説明する。図3は、能動騒音低減装置10の通常動作のフローチャートである。
【0021】
まず、第一参照信号源51から第一参照信号入力端子11に、騒音N0と相関を有する第一参照信号が入力される(S11)。第一参照信号入力端子11は、第一参照信号入力部の一例であって、具体的には、金属等により形成される端子である。
【0022】
第一参照信号入力端子11に入力された参照信号は、第一適応フィルタ部15及び第一模擬音響伝達特性フィルタ部16に出力される。第一適応フィルタ部15は、第一参照信号入力端子11に入力される第一参照信号に第一適応フィルタを適用(畳み込み)することにより、第一キャンセル信号を生成する(S12)。第一適応フィルタ部15は、いわゆるFIRフィルタまたはIIRフィルタによって実現される。第一適応フィルタ部15は、生成した第一キャンセル信号をキャンセル信号出力端子12に出力する。第一キャンセル信号は、騒音N0を低減するための第一キャンセル音N1の出力に用いられ、キャンセル信号出力端子12に出力される(S13)。
【0023】
キャンセル信号出力端子12は、キャンセル信号出力部の一例であって、金属等により形成される端子である。キャンセル信号出力端子12には、第一適応フィルタ部15によって生成された第一キャンセル信号が出力される。
【0024】
キャンセル信号出力端子12には、キャンセル音源52が接続される。このため、キャンセル音源52にはキャンセル信号出力端子12を介して第一キャンセル信号が出力される。キャンセル音源52は、第一キャンセル信号に基づいて第一キャンセル音N1を出力する。
【0025】
誤差信号源53は、第一キャンセル信号に対応してキャンセル音源52から発生される第一キャンセル音N1と騒音N0との干渉による残留音を検出し、残留音に対応する誤差信号を出力する。この結果、誤差信号入力端子13には、誤差信号が入力される(S14)。誤差信号入力端子13は、誤差信号入力部の一例であって、金属等により形成される端子である。
【0026】
次に、第一模擬音響伝達特性フィルタ部16は、キャンセル信号出力端子12から誤差信号入力端子13までの音響伝達特性を模擬した模擬伝達特性で第一参照信号を補正した第一濾波参照信号を生成する(S15)。言い換えれば、模擬伝達特性は、キャンセル音源52の位置から誤差信号源53の位置までの音響伝達特性(つまり、空間56における音響伝達特性)を模擬したものである。模擬伝達特性は、例えば、あらかじめ空間56において実測され、第一記憶部18に記憶される。なお、模擬伝達特性は、あらかじめ定めた値を使用しないアルゴリズムによって定められてもよい。
【0027】
第一記憶部18は、模擬伝達特性が記憶される記憶装置である。第一記憶部18には、後述する適応フィルタの係数なども記憶される。第一記憶部18は、具体的には、半導体メモリなどによって実現される。なお、第一適応フィルタ部15、第一模擬音響伝達特性フィルタ部16、第一フィルタ係数更新部17、及び、制御部19がDSPなどのプロセッサによって実現される場合、第一記憶部18には、プロセッサによって実行される制御プログラムも記憶される。第一記憶部18には、第一適応フィルタ部15、第一模擬音響伝達特性フィルタ部16、第一フィルタ係数更新部17、及び、制御部19が行う信号処理に用いられるその他のパラメータが記憶されてもよい。
【0028】
第一フィルタ係数更新部17は、誤差信号と、生成された第一濾波参照信号とに基づいて、第一適応フィルタの係数Wを逐次更新する(S16)。
【0029】
第一フィルタ係数更新部17は、具体的には、LMS(Least Mean Square)法を用いて、誤差信号の二乗和が最小になるように第一適応フィルタの係数Wを算出し、算出した第一適応フィルタの係数を第一適応フィルタ部15に出力する。また、第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数を逐次更新する。誤差信号のベクトルをe、第一濾波参照信号のベクトルをRと表現すると、第一適応フィルタの係数Wは、以下の(式1)で表現される。なお、nは自然数であり、サンプリング周期Tsでn番目のサンプルを表す。μはスカラ量であり、1サンプリング当たりの適応フィルタの係数Wの更新量を決定するステップサイズパラメータである。
【0030】
【数1】
【0031】
なお、第一フィルタ係数更新部17は、LMS法以外の方法で適応フィルタの係数Wを更新してもよい。
【0032】
[制限動作]
次に、能動騒音低減装置10の制限動作について説明する。車両50の窓が開けられたり、車両50内の空間56の温度が変化したりすると、車両50内の空間56における音響伝達特性が変化する。そうすると、空間56における音響伝達特性と、第一記憶部18に記憶されている模擬伝達特性とに差異が生じるため騒音制御が不安定になり、第一キャンセル音N1が異音となってしまう可能性がある。
【0033】
そこで、制御部19は、通常動作中に騒音制御が不安定であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を通常状態よりも騒音N0を低減する効果が弱まる制限状態にする制限動作を行う。以下、このような制限動作について図4を参照しながら説明する。図4は、能動騒音低減装置10の制限動作のフローチャートである。
【0034】
能動騒音低減装置10が通常動作を行っており、第一フィルタ係数更新部17が通常状態で第一適応フィルタの係数Wを更新しているときに(S21)、制御部19は、第一適応フィルタ部15に関連する第一パラメータを取得する(S22)。制御部19は、取得した第一パラメータに基づいて、第一キャンセル音N1に基づく第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したか否かを判定する(S23)。
【0035】
第一パラメータは、例えば、第一適応フィルタの係数Wであるが、第一適応フィルタの係数Wの更新量の絶対値|ΔW|であってもよい。ΔWは、より具体的には、(式1)第二項により算出される。また、第一パラメータは、第一適応フィルタ部15が出力する第一キャンセル信号の振幅であってもよい。また、制御部19は、第一パラメータとして、第一適応フィルタの係数W、第一適応フィルタの係数の更新量の絶対値|ΔW|、及び、第一キャンセル信号のレベルのうち2つ以上を併用してもよい。つまり、第一パラメータには、第一適応フィルタの係数W、第一適応フィルタの係数Wの更新量の絶対値|ΔW|、及び、第一キャンセル信号のレベルの少なくとも1つが含まれればよい。
【0036】
第一パラメータは、第一の騒音制御が不安定になると値が大きくなると考えられる。そこで、制御部19は、例えば、第一フィルタ係数更新部17が通常状態であるときに、第一パラメータが一定期間以上連続して第一閾値を超えたままになると、第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したと判定する。この場合の一定期間、及び、第一閾値は、経験的または実験的に適宜定められる。また、制御部19は、第一パラメータが一定期間の間に所定回数以上第一閾値を超えた場合に、第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したと判定してもよい。この場合の一定期間、第一閾値、及び、所定回数は経験的または実験的に適宜定められる。
【0037】
第一の騒音制御が安定状態のままであると判定されると(S23でNo)、通常状態が継続される(S21)。一方、第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したと判定されると(S23でYes)、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にする(S24)。言い換えれば、第一フィルタ係数更新部17は、制御部19からの指令に基づいて、制限状態となる。
【0038】
上述のように、制限状態は、通常状態よりも騒音N0を低減する効果が弱まる状態(あるいは、効果が弱まると推定される状態)である。例えば、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、通常状態であるときよりも小さいステップサイズパラメータμを用いて第一適応フィルタの係数Wを更新する。なお、第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wを0に初期化した上で、小さいステップサイズパラメータμを用いて第一適応フィルタの係数Wを更新してもよい。ステップサイズパラメータμは、値が大き過ぎると適応フィルタが発散しやすくなり、値が小さ過ぎると第一フィルタ係数更新部17の適応フィルタの係数Wの更新が間に合わず、騒音N0を低減する効果が低下する。
【0039】
また、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wの更新を停止してもよい。制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、具体的には、上記(式1)でステップサイズパラメータμを0とし、同じ第一適応フィルタの係数Wを第一適応フィルタ部15に出力し続ける。第一適応フィルタの係数Wの更新の停止は、W(n+1)=W(n)として、Wを書き換えないことによっても実現できる。なお、第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wを0に初期化した上で、第一適応フィルタの係数Wの更新を停止してもよい。
【0040】
また、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタ部15からの第一キャンセル信号の出力を停止してもよい。例えば、第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wを0に固定する(つまり、第一キャンセル信号の振幅を0とする)ことにより、第一キャンセル音N1の出力を停止する。また、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wを0に初期化してもよい。
【0041】
また、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wに1未満のリーク係数αを乗じてもよい。加えて、第一適応フィルタの係数Wの更新の停止し、例えばW(n+1)=αW(n)とすることで、第一キャンセル信号をフェードアウトすることができる。
【0042】
このように、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17が通常状態で第一適応フィルタの係数Wを更新しているときに、第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を、通常動作よりも第一騒音を低減する効果が弱まる制限状態にする。これにより、第一の騒音制御が行われているときに第一キャンセル音N1が異音となってしまうことが抑制される。
【0043】
[復帰動作の例1]
一般的には、制限動作から通常動作への復帰は、車両50のイグニッション電源がオフされ再度オンされた場合など、能動騒音制御装置10がリセットされたときに行われる。つまり、一般的な能動騒音低減装置は、当該能動騒音低減装置への電力供給が再開されたときに制限動作から通常動作に復帰する。これに対し、能動騒音低減装置10は、車両50のイグニッション電源がオフされなくても復帰することができる。以下、このような復帰動作の例1について図5を参照しながら説明する。図5は、能動騒音低減装置10の復帰動作の例1のフローチャートである。
【0044】
能動騒音低減装置10が制限動作を行っており、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに(S31)、制御部19は、第一適応フィルタ部15に関連する第一パラメータを取得する(S32)。制御部19は、取得した第一パラメータに基づいて、第一の騒音制御が不安定状態から安定状態に変化したか否かを判定する(S33)。
【0045】
上述のように、第一パラメータは、例えば、第一適応フィルタの係数Wであるが、第一適応フィルタの係数Wの更新量の絶対値|ΔW|であってもよいし、第一キャンセル信号のレベルであってもよい。また、制御部19は、第一パラメータとして、第一適応フィルタの係数W、第一適応フィルタの係数の更新量の絶対値|ΔW|、及び、第一キャンセル信号のレベルのうち2つ以上を併用してもよい。
【0046】
第一パラメータは、第一の騒音制御が安定すると値が小さくなると考えられる。そこで、制御部19は、例えば、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに、第一パラメータが一定期間以上連続して第二閾値未満のままになると、第一の騒音制御が不安定状態から安定状態に変化したと判定する。この場合の一定期間、及び、第二閾値は、経験的または実験的に適宜定められる。第二閾値は、第一閾値と同一であってもよいし、異なってもよい。また、制御部19は、第一パラメータが一定期間の間に所定回数以上第二閾値未満となった場合に、第一の騒音制御が不安定状態から安定状態に変化したと判定してもよい。この場合の一定期間、第二閾値、及び、所定回数は経験的または実験的に適宜定められる。第二閾値は、第一閾値と同一であってもよいし、異なってもよい。
【0047】
第一の騒音制御が不安定状態のままであると判定されると(S33でNo)、制限動作(制限状態)が継続される(S31)。一方、第一の騒音制御が不安定状態から安定状態に変化したと判定されると(S33でYes)、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させる(S34)。言い換えれば、第一フィルタ係数更新部17は、制御部19からの指令に基づいて、通常状態に復帰する。
【0048】
このように、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに、第一の騒音制御が安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させる。これにより、能動騒音低減装置10は、イグニッション電源がオフ及びオンされなくても、音響伝達特性の変化が改善されたと推定されるタイミングで通常動作を再開することができる。
【0049】
[復帰動作の例2]
また、能動騒音低減装置10は、車両50の状態を示す情報に基づいて、制限動作から通常動作に復帰することもできる。以下、このような復帰動作の例2について図6を参照しながら説明する。図6は、能動騒音低減装置10の復帰動作の例2のフローチャートである。なお、能動騒音低減装置10は、復帰動作の例1及び例2を併用してもよいし、復帰動作の例1及び例2のいずれかのみを行ってもよい。
【0050】
能動騒音低減装置10が制限動作を行っており、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに(S41)、制御部19は、車両50の状態を示す車両状態信号を車両状態信号入力端子14から取得する(S42)。なお、車両状態信号入力端子14には、車両50が備える車両制御部55によって車両状態信号が入力される。制御部19は、取得した車両状態信号に基づいて、車両50の状態が所定状態に変化したか否かを判定する(S43)。
【0051】
車両状態信号は、例えば、車両50が備える窓の開閉状態を示す信号であり、所定状態は、例えば、車両50が備える窓が閉じた状態である。この場合、制御部19は、取得した車両状態信号に基づいて、車両50の窓が開いた状態から閉じた状態に変化したか否かを判定する。上述のように、車両50の窓が開いた状態においては、車両50内の空間56における音響伝達特性と、第一記憶部18に記憶されている模擬伝達特性とに差異が生じるが、車両50の窓が閉じた状態においては、音響伝達特性と模擬伝達特性との差異が小さくなり、通常動作によって騒音N0を効果的に低減できると考えられる。
【0052】
また、車両状態信号は、車両50内の温度を示す信号であってもよい。この場合、所定状態は、例えば、空間56における温度が所定の範囲内の状態である。この場合、制御部19は、取得した車両状態信号に基づいて、空間56における温度が所定の範囲外の状態から所定の範囲内に変化したか否かを判定する。第一記憶部18に記憶されている模擬伝達特性は、空間56における温度が所定の範囲内であることを想定して定められており、空間56における温度が所定の範囲内であれば、音響伝達特性と模擬伝達特性との差異が小さくなり、通常動作によって騒音N0を効果的に低減できると考えられる。所定の範囲は、例えば、20℃~25℃の範囲などである。
【0053】
車両50の状態が所定状態に変化していない(非所定状態のままである)と判定されると(S43でNo)、制限動作(制限状態)が継続される(S41)。一方、車両50の状態が所定状態に変化したと判定されると(S43でYes)、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させる(S44)。言い換えれば、第一フィルタ係数更新部17は、制御部19からの指令に基づいて、通常状態に復帰する。
【0054】
このように、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに、取得された車両状態信号が示す車両50の状態が所定状態に変化したことを示すと、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させる。これにより、能動騒音低減装置10は、イグニッション電源がオフ及びオンされなくても、音響伝達特性の変化が改善されたと推定されるタイミングで通常動作を再開することができる。
【0055】
[復帰動作の例3]
能動騒音低減装置10は、上記復帰動作の例1と例2とを組み合わせた復帰動作を行ってもよい。つまり、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときには、第一の騒音制御が安定状態であると判定した場合、及び、取得された車両状態信号が示す車両50の状態が所定状態に変化したことを示す場合の両方の場合に、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させてもよい。
【0056】
[制限動作に固定する処理]
不安定状態から安定状態への遷移、及び、安定状態から不安定状態への遷移が頻繁に繰り返される場合、能動騒音低減装置10は制限動作に固定され、イグニッション電源がオフ及びオンされない限り通常動作に復帰しないように構成されてもよい。図7は、能動騒音低減装置10を制限動作に固定する処理のフローチャートである。
【0057】
制御部19は、制限動作と通常動作の切り替えが許容されている状態で(S51)、安定状態から不安定状態への遷移、及び、不安定状態から安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生したか否かを判定する(S52)。この場合の一定期間、及び、所定回数は、経験的または実験的に適宜定められる。
【0058】
安定状態から不安定状態への遷移、及び、不安定状態から安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生していないと判定されると(S52でNo)、制限動作と通常動作の切り替えが許容される(S51)。
【0059】
一方、安定状態から不安定状態への遷移、及び、不安定状態から安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生したと判定されると(S52でYes)、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17を制限状態に固定することで、能動騒音低減装置10を制限動作に固定する(S53)。
【0060】
このように、制御部19は、安定状態から不安定状態への遷移、及び、不安定状態から安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生したと判定すると、第一フィルタ係数更新部17を制限状態に固定する。これにより、能動騒音低減装置10は、音響伝達特性の変化が改善されないときに制限動作を継続的に行うため、第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0061】
なお、上述のように、能動騒音低減装置10は制限動作に固定されると、基本的にはイグニッション電源がオフ及びオンされない限り通常動作に復帰しない。しかしながら、車両状態信号が示す車両50の状態が所定状態に変化したタイミングで、能動騒音低減装置10は、通常動作に復帰してもよい。
【0062】
[具体的な動作例]
以下、第一パラメータの変化をグラフ化することで、通常動作及び制限動作が切り替えられるときの具体的な動作例について説明する。図8は、能動騒音低減装置10の具体的な動作例を示す図である。図8における縦軸は、第一パラメータを示し、具体的には、第一適応フィルタの係数Wの更新量の絶対値|ΔW|を示している。図8における横軸は時間である。
【0063】
能動騒音低減装置10は、当初、通常動作を行っている。通常動作中において、騒音N0が定常的な騒音である場合、適応初期は理想的な係数Wとの誤差が大きいため|ΔW|は大きくなるが、誤差が小さくなるにつれて|ΔW|は0に収束していく。実際は騒音N0は常に変化するため、|ΔW|は一定の範囲で増減を繰り返す。第一キャンセル音N1に基づく第一の騒音制御が不安定になると、|ΔW|は、加速的に大きくなり閾値を超える。なお、図8に示される閾値は、上述の第一閾値及び第二閾値に相当する。
【0064】
制御部19は、|ΔW|が一定期間Taの間に所定回数以上閾値を超えた場合に、第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したと判定し、判定が確定したタイミングt1において、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にする。つまり、能動騒音低減装置10は、制限動作を行う。図8の例では、一定期間Taは、|ΔW|が一度閾値を超えたタイミングを起点とする期間であり、所定回数は3回である。
【0065】
図8の例では、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wの更新を停止した上で,第一適応フィルタの係数Wに0より大きく1より小さいLeak係数を乗算する、もしくは、キャンセル音をフェードアウトさせたる。このため、|ΔW|は0となる。
【0066】
制御部19は、|ΔW|が一定期間Tbの間連続して閾値未満となった場合に、第一の騒音制御が不安定状態から安定状態に変化したと判定し、判定が確定したタイミングt2において、第一フィルタ係数更新部17を通常状態にする。つまり、能動騒音低減装置10は、通常動作を行う。図8の例では、一定期間Tbは、|ΔW|が閾値未満となったタイミングを起点とする期間である。
【0067】
その後、能動騒音低減装置10は、タイミングt3で通常動作から制限動作に遷移し、タイミングt4で制限動作から通常動作に遷移し、タイミングt5で通常動作から制限動作に遷移する。つまり、制御部19は、タイミングt1、t3、t5において安定状態から不安定状態に遷移したと判定し、タイミングt2、t4において不安定状態から安定状態に遷移したと判定する。
【0068】
制御部19は、安定状態から不安定状態への遷移、及び、不安定状態から安定状態への遷移が一定期間Tcの間に所定回数以上発生したと判定し、判定が確定したタイミングt5において、第一フィルタ係数更新部17を制限状態に固定する。つまり、能動騒音低減装置10は、タイミングt5以降には制限動作を行う。図8の例では、一定期間Tcは、最初に制限動作が行われた(つまり、最初に不安定状態と判定された)タイミングt1を起点とする期間であり、所定回数は5回である。
【0069】
タイミングt5において、第一フィルタ係数更新部17を制限状態に固定されるため、タイミングt5から一定期間Tbが経過しても、第一フィルタ係数更新部17は通常状態に復帰しない。その後、制御部19は、タイミングt6において車両状態信号に基づいて、車両50の窓が開いた状態から閉じた状態に変化したと判定し、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させる。つまり、能動騒音低減装置10は通常動作に復帰する。
【0070】
[効果等]
以上説明したように、能動騒音低減装置10は、車両50に取り付けられた第一参照信号源51によって出力される、車両50内の空間56における第一騒音と相関を有する第一参照信号が入力される第一参照信号入力端子11と、第一参照信号入力端子11に入力される第一参照信号に第一適応フィルタを適用することにより、第一騒音を低減するための第一キャンセル音N1の出力に用いられる第一キャンセル信号を生成する第一適応フィルタ部15と、第一適応フィルタの係数を更新する第一フィルタ係数更新部17と、第一適応フィルタ部15に関連する第一パラメータに基づいて、第一キャンセル音N1に基づく第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する制御部19とを備える。制御部19は、第一フィルタ係数更新部17が通常状態で第一適応フィルタの係数を更新しているときに、第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を、通常状態よりも第一騒音を低減する効果が弱まる制限状態にし、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに、第一の騒音制御が安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させる。
【0071】
このような能動騒音低減装置10は、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にすることで第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制しつつ、第一の騒音制御が安定したときに第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させることができる。
【0072】
また、例えば、制御部19は、第一パラメータが一定期間以上第一閾値を超える場合に、第一の騒音制御が不安定状態であると判定する。
【0073】
このような能動騒音低減装置10は、第一パラメータが継続して第一閾値を超えることを不安定状態と判定するための要件とすることができる。
【0074】
また、例えば、制御部19は、第一パラメータが一定期間の間に所定回数以上第一閾値を超える場合に、第一の騒音制御が不安定状態であると判定する。
【0075】
このような能動騒音低減装置10は、第一パラメータが頻繁に第一閾値を超えることを不安定状態と判定するための要件とすることができる。
【0076】
また、例えば、制御部19は、第一パラメータが一定期間以上第二閾値未満となる場合に、第一の騒音制御が安定状態であると判定する。
【0077】
このような能動騒音低減装置10は、第一パラメータが継続して第二閾値未満となることを安定状態と判定するための要件とすることができる。
【0078】
また、例えば、制御部19は、第一パラメータが一定期間の間に所定回数以上第二閾値未満となる場合に、第一の騒音制御が安定状態であると判定する。
【0079】
このような能動騒音低減装置10は、第一パラメータが頻繁に第二閾値未満となることを安定状態と判定するための要件とすることができる。
【0080】
また、例えば、制御部19は、安定状態から不安定状態への遷移、及び、不安定状態から安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生したと判定すると、第一フィルタ係数更新部17を制限状態に固定する。
【0081】
このような能動騒音低減装置10は、第一の騒音制御の状態が落ち着かないときに第一フィルタ係数更新部17を制限状態に固定することで、第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0082】
また、例えば、制御部19は、車両50の状態を示す車両状態信号をさらに取得し、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに、取得された車両状態信号が示す車両50の状態が所定状態に変化したことを示すと、第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させる。
【0083】
このような能動騒音低減装置10は、車両50の状態が空間56における音響伝達特性の変化が改善されるような状態になったときに第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させることができる。
【0084】
また、例えば、所定状態は、車両50の窓が閉じた状態である。
【0085】
このような能動騒音低減装置10は、車両50の窓が閉じた状態になったときに第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させることができる。
【0086】
また、例えば、所定状態は、空間56における温度が所定の範囲内の状態である。
【0087】
このような能動騒音低減装置10は、空間56における温度が所定の範囲内の状態になったときに第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させることができる。
【0088】
また、例えば、第一パラメータは、第一適応フィルタの係数Wを含む。
【0089】
このような能動騒音低減装置10は、第一適応フィルタの係数Wに基づいて、第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定することができる。
【0090】
また、例えば、第一パラメータは、第一適応フィルタの係数Wの更新量を含む。
【0091】
このような能動騒音低減装置10は、第一適応フィルタの係数Wの更新量に基づいて、第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定することができる。
【0092】
また、例えば、第一パラメータは、第一キャンセル信号の振幅を含む。
【0093】
このような能動騒音低減装置10は、第一キャンセル信号の振幅に基づいて、第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定することができる。
【0094】
また、例えば、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、通常状態であるときよりも小さいステップサイズパラメータを用いて第一適応フィルタの係数Wを更新する。
【0095】
このような能動騒音低減装置10は、ステップサイズパラメータの値を小さくすることで、第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0096】
また、例えば、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタの係数Wの更新を停止する。
【0097】
このような能動騒音低減装置10は、第一適応フィルタの係数Wの更新を停止することで、第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0098】
また、例えば、制限状態の第一フィルタ係数更新部17は、第一適応フィルタ部15からの第一キャンセル信号の出力を停止する。
【0099】
このような能動騒音低減装置10は、第一キャンセル信号の出力を停止することで、第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0100】
また、車両50は、能動騒音低減装置10と、第一参照信号源51とを備える。
【0101】
このような車両50は、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にすることで第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制しつつ、第一の騒音制御が安定したときに第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させることができる。
【0102】
また、能動騒音低減装置10によって実行される能動騒音低減方法は、第一適応フィルタ部15に関連する第一パラメータに基づいて、第一キャンセル音N1に基づく第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する判定ステップと、制御ステップとを含む。制御ステップにおいては、第一フィルタ係数更新部17が通常状態で第一適応フィルタの係数を更新しているときに、第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を、通常状態よりも第一騒音を低減する効果が弱まる制限状態にし、第一フィルタ係数更新部17が制限状態であるときに、第一の騒音制御が安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を前記通常状態に復帰させる。
【0103】
このような能動騒音低減方法は、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にすることで第一キャンセル音N1が異音となってしまうことを抑制しつつ、第一の騒音制御が安定したときに第一フィルタ係数更新部17を通常状態に復帰させることができる。
【0104】
(実施の形態2)
[車両の構成]
以下、実施の形態2に係る車両、及び、当該車両に搭載される能動騒音低減装置について説明する。まず、実施の形態2に係る車両について説明する。図9は、実施の形態2に係る車両を上方から見た模式図である。
【0105】
図9及び図10に示される車両50aは、車両50が備える構成要素に加えて、エンジン57と、エンジン制御部58とを備える。
【0106】
エンジン57は、車両50aの動力源であって、かつ、空間56の騒音源となる駆動装置である。エンジン57は、例えば、空間56とは別の空間内に配置される。
【0107】
エンジン制御部58は、車両50aの運転手のアクセル操作等に基づいて、エンジン57を制御(駆動)する。また、エンジン制御部58は、エンジン57の回転数(周波数)に応じたパルス信号(エンジンパルス信号)を第二参照信号として出力する。エンジン制御部58は、第二参照信号源の一例である。パルス信号の周波数は、例えば、エンジン57の回転数(周波数)に比例する。パルス信号は、具体的には、いわゆるタコパルスなどである。なお、第二参照信号は、騒音と相関を有するのであればどのような態様であってもよい。
【0108】
[能動騒音低減装置の構成]
また、車両50aは、能動騒音低減装置10aを備える。図10は、能動騒音低減装置10aの機能構成を示すブロック図である。
【0109】
能動騒音低減装置10aは、能動騒音低減装置10が備える構成要素に加えて、第二参照信号入力端子21と、信号処理部20と、加算部30とを備える。
【0110】
第二参照信号入力端子21は、第二参照信号入力部の一例であって、エンジン制御部58によって出力される、第二参照信号が入力される。第二参照信号入力端子21は、具体的には、金属等により形成される端子である。
【0111】
信号処理部20は、エンジン57の音に基づく騒音(以下、第二騒音とも記載される)を低減するための信号処理を行う。第二騒音は、例えば、エンジン57の音に基づくこもり音である。第二騒音は、瞬間的には単一周波数の正弦波に近い音である。そこで、信号処理部20は、エンジン57を制御するエンジン制御部58からエンジン57の周波数を示す第二参照信号を取得し、キャンセル音源52から第二騒音を打ち消すための第二キャンセル音を出力する。第二キャンセル音の生成には、適応フィルタが用いられ、誤差信号源53によって取得される残留音が小さくなるように第二キャンセル音が生成される。図11は、信号処理部20の動作の概要を示す図である。
【0112】
図11に示されるように、キャンセル音源52の位置(以下、出音位置とも記載される)から誤差信号源53の位置(以下、集音位置とも記載される)までの伝達特性はc、第二キャンセル音を出力するための第二キャンセル信号はoutの記号で表現される。この場合、誤差信号源53の位置(集音位置)に到達する第二キャンセル音はc*outと表現される。なお、「*」は、畳み込み演算子を意味し、cは伝達特性のインパルス応答を表し、Cは周波数領域での模擬伝達特性を表す。
【0113】
誤差信号源53の位置における第二騒音Nは、振幅をR、角周波数をω、位相をθとすると、下記の(式2)で表現され、c*outは、下記の(式3-1)、(式3-2)で表される。能動騒音低減装置10aは、(式3-1)、(式3-2)における第一のフィルタ係数A及び第二のフィルタ係数Bを、例えば、LMS法によって算出することで、第二騒音Nを打ち消すための第二キャンセル音を出力することができる。
【0114】
【数2】
【0115】
このように、第二騒音Nと逆位相の第二キャンセル音が出力されることにより、誤差信号源53の位置において聞こえる騒音は小さくなっていく。
【0116】
[信号処理部の詳細構成及び信号処理部の通常動作]
次に、信号処理部20の詳細構成及び信号処理部20の通常動作について説明する。図9図11に加えて図12及び図13を参照しながら説明する。図12は、信号処理部20の機能ブロック図である。図13は、信号処理部20の通常動作のフローチャートである。
【0117】
図12に示されるように、信号処理部20は、基準信号生成部22と、第二適応フィルタ部23と、補正部24と、第二フィルタ係数更新部25と、第二記憶部26とを備える。基準信号生成部22、第二適応フィルタ部23、補正部24、及び、第二フィルタ係数更新部25は、例えば、DSP等のプロセッサまたはマイクロコンピュータがソフトウェアを実行することによって実現される。以下、図13のフローチャートに示されるステップごとに、関連する構成要素を詳細に説明する。
【0118】
[基準信号の生成]
まず、基準信号生成部22は、第二参照信号入力端子21に入力された参照信号に基づいて基準信号を生成する(図13のS61)。基準信号生成部22は、より詳細には、第二参照信号入力端子21に入力された第二参照信号に基づいて第二騒音の瞬間的な周波数を特定し、特定した周波数を有する基準信号を生成する。基準信号生成部22は、具体的には、周波数検出部22aと、正弦波生成部22bと、余弦波生成部22cとを有する。
【0119】
周波数検出部22aは、パルス信号の周波数を検出し、検出した周波数を正弦波生成部22b、余弦波生成部22c、及び、補正部24に出力する。周波数検出部22aは、言い換えれば、第二騒音の瞬間的な周波数を特定する。
【0120】
正弦波生成部22bは、周波数検出部22aによって検出された周波数の正弦波を、第一基準信号として出力する。第一基準信号は、基準信号の一例であり、周波数検出部22aによって検出された周波数がfの場合には、sin(2πft)=sin(ωt)で表現される信号である。つまり、第一基準信号は、周波数検出部22aによって特定された周波数(第二騒音と同じ周波数)を有する。第一基準信号は、第二適応フィルタ部23が備える第一フィルタ23a、及び、補正部24が備える第一補正信号生成部24bに出力される。
【0121】
余弦波生成部22cは、周波数検出部22aによって検出された周波数の余弦波を、第二基準信号として出力する。第二基準信号は、基準信号の一例であり、周波数検出部22aによって検出された周波数がfの場合には、cos(2πft)=cos(ωt)で表現される信号である。つまり、第二基準信号は、周波数検出部22aによって特定された周波数(第二騒音と同じ周波数)を有する。第二基準信号は、第二適応フィルタ部23が備える第二フィルタ23b、及び、補正部24が備える第二補正信号生成部24cに出力される。
【0122】
[第二キャンセル信号の生成]
第二適応フィルタ部23は、基準信号生成部22によって生成された基準信号に第二適応フィルタの係数を適用(乗算)することにより、第二キャンセル信号を生成する(図13のS62)。言い換えれば、第二適応フィルタ部23は、第二参照信号入力端子21に入力された第二参照信号であって、かつ、基準信号に変換された第二参照信号に第二適応フィルタの係数を適用する。第二キャンセル信号は、第二騒音を低減するための第二キャンセル音の出力に用いられ、加算部30に出力される。第二適応フィルタ部23は、第一フィルタ23aと、第二フィルタ23bと、加算部23cとを備える。第二適応フィルタ部23は、いわゆる適応ノッチフィルタである。
【0123】
第一フィルタ23aは、正弦波生成部22bから出力される第一基準信号に第一のフィルタ係数を乗算する。乗算される第一のフィルタ係数は、上記(式3-1)及び(式3-2)のAに対応するフィルタ係数であり、第二フィルタ係数更新部25が備える第一更新部25aによって逐次更新される。第一のフィルタ係数が乗算された第一基準信号は、加算部23cに出力される。
【0124】
第二フィルタ23bは、余弦波生成部22cから出力される第二基準信号に第二のフィルタ係数を乗算する。乗算される第二のフィルタ係数は、上記(式3-1)及び(式3-2)のBに対応するフィルタ係数であり、第二フィルタ係数更新部25が備える第二更新部25bによって逐次更新される。第二のフィルタ係数が乗算された第二基準信号は、加算部23cに出力される。
【0125】
加算部23cは、第一フィルタ23aから出力される第一のフィルタ係数が乗算された第一基準信号と、第二フィルタ23bから出力される第二のフィルタ係数が乗算された第二基準信号とを加算する。加算部23cは、第一のフィルタ係数が乗算された第一基準信号と第二のフィルタ係数が乗算された第二基準信号との加算によって得られる第二キャンセル信号を加算部30に出力する。
【0126】
[基準信号の補正]
補正部24は、第二記憶部26に記憶された模擬伝達特性を基準信号に適用した補正後基準信号を生成する。つまり、補正部24は、基準信号を補正した補正後基準信号を生成する(図13のS63)。補正部24は、制御部24aと、第一補正信号生成部24bと、第二補正信号生成部24cとを備える。
【0127】
模擬伝達特性は、具体的には、周波数ごとのゲイン及び位相(位相遅れ)である。模擬伝達特性は、例えば、あらかじめ空間56において周波数ごとに実測され、第二記憶部26に記憶される。つまり、第二記憶部26には、周波数と、当該周波数の信号を補正するためのゲイン及び位相が記憶される。
【0128】
制御部24aは、周波数検出部22aによって出力された周波数を取得し、取得した周波数に対応するゲイン及び位相を第二記憶部26から読み出す。また、制御部24aは、読み出したゲイン、及び、読み出した位相を出力する。
【0129】
第一補正信号生成部24bは、制御部24aによって出力されたゲイン及び位相に基づいて第一基準信号を補正した第一補正後基準信号を生成する。第一補正後基準信号は、補正後基準信号の一例である。制御部24aによって出力されたゲインをα、位相をφαとすると、第一補正後基準信号は、α・sin(ωt+φα)と表現される。生成された第一補正後基準信号は、第二フィルタ係数更新部25が備える第一更新部25aに出力される。
【0130】
第二補正信号生成部24cは、制御部24aによって出力されたゲイン及び位相に基づいて第二基準信号を補正した第二補正後基準信号を生成する。第二補正後基準信号は、補正後基準信号の一例である。制御部24aによって出力されたゲインをβ、位相をφβとすると、第二補正後基準信号は、β・cos(ωt+φβ)と表現される。生成された第二補正後基準信号は、第二フィルタ係数更新部25が備える第二更新部25bに出力される。
【0131】
第二記憶部26は、模擬伝達特性が記憶される記憶装置である。第二記憶部26には、第二適応フィルタの係数なども記憶される。第二記憶部26は、具体的には、半導体メモリなどによって実現される。なお、信号処理部20がDSPなどのプロセッサによって実現される場合、第二記憶部26には、プロセッサによって実行される制御プログラムも記憶される。第二記憶部26には、信号処理部20が行う信号処理に用いられるその他のパラメータが記憶されてもよい。
【0132】
[フィルタ係数の更新]
第二フィルタ係数更新部25は、誤差信号入力端子13に入力された誤差信号及び生成された補正後基準信号に基づいて、第二適応フィルタの係数(第一のフィルタ係数及び第二のフィルタ係数)を逐次更新する(図13のS64)。
【0133】
第二フィルタ係数更新部25は、具体的には、第一更新部25aと、第二更新部25bとを備える。
【0134】
第一更新部25aは、第一補正信号生成部24bから取得した第一補正後基準信号、及び、誤差信号源53から取得した誤差信号に基づいて、第一のフィルタ係数を算出する。第一更新部25aは、具体的には、LMS法を用いて、誤差信号が最小になるように第一のフィルタ係数を算出し、算出した第一のフィルタ係数を第一フィルタ23aに出力する。また、第一更新部25aは、第一のフィルタ係数を逐次更新する。第一補正後基準信号をr、誤差信号をeと表現すると、第一のフィルタ係数A(上記(式3-1)及び(式3-2)のAに相当)は、以下の(式4)で表現される。なお、nは自然数であり、何回目の更新をしているかにあたる変数(言い換えれば、更新回数を示す変数)である。つまり、A(n)はn回目の更新における状態を示す。μはスカラ量であり、1サンプリング当たりのフィルタ係数の更新量を決定するステップサイズパラメータである。
【0135】
【数3】
【0136】
第二更新部25bは、第二補正信号生成部24cから取得した第二補正後基準信号、及び、誤差信号源53から取得した誤差信号に基づいて、第二のフィルタ係数を算出する。第二更新部25bは、具体的には、LMS法を用いて、誤差信号が最小になるように第二のフィルタ係数を算出し、算出した第二のフィルタ係数を第二フィルタ23bに出力する。また、第二更新部25bは、第二のフィルタ係数を逐次更新する。第二補正後基準信号をr、誤差信号をeと表現すると、第二のフィルタ係数B(上記(式3-1)及び(式3-2)のBに相当)は、以下の(式5)で表現される。
【0137】
【数4】
【0138】
[能動騒音低減装置の通常動作]
実施の形態1で説明したように、第一適応フィルタ部15は、第一参照信号入力端子11に入力される第一参照信号に第一適応フィルタを適用することにより、第一キャンセル信号を生成する。第一キャンセル信号は、第一騒音(ロードノイズ)を低減するための第一キャンセル音を出力するための信号である。ここで、第一キャンセル音に基づく第一の騒音制御は、Filtered-X LMSアルゴリズムに基づく騒音制御であり、第一フィルタ係数更新部17は、Filtered-X LMSアルゴリズムに基づいて、第一適応フィルタの係数Wを更新する。
【0139】
また、実施の形態2で説明したように、第二適応フィルタ部23は、基準信号生成部22によって生成された基準信号に第二適応フィルタの係数を適用することにより、第二キャンセル信号を生成する。第二キャンセル信号は、第二騒音(エンジン57の音に基づくこもり音)を低減するための第二キャンセル音を出力するための信号である。ここで、第二キャンセル音に基づく第二の騒音制御は、SAN(Single-frequency Adaptive Notch filter)アルゴリズムに基づく騒音制御であり、第二フィルタ係数更新部25は、SANアルゴリズムに基づいて、第二適応フィルタの係数を更新する。
【0140】
なお、第一適応フィルタ部15および第二適応フィルタ部23は、LMS法やSANアルゴリズム以外の方法で適応フィルタの係数W、A、Bを更新してもよい。
【0141】
能動騒音低減装置10aが備える加算部30は、第一適応フィルタ部15から出力される第一キャンセル信号、及び、第二適応フィルタ部23から出力される第二キャンセル信号を加算し、加算後のキャンセル信号をキャンセル信号出力端子12に出力する。加算部30は、例えば、DSP等のプロセッサによって実現されるが、マイクロコンピュータまたはオペアンプなどを用いた加算回路によって実現されてもよい。
【0142】
このように加算部30からキャンセル信号出力端子12に加算後のキャンセル信号が出力されれば、第一キャンセル音及び第二キャンセル音が合成されたキャンセル音がキャンセル音源52から出力される。これにより、能動騒音低減装置10aは、空間56における第一騒音及び第二騒音の両方を低減することができる。
【0143】
なお、能動騒音低減装置10aにおいては、第一の騒音制御及び第二の騒音制御により1つのキャンセル音源52が共用されたが、第一キャンセル信号が出力されるキャンセル音源と、第二キャンセル信号が出力されるキャンセル音源とは別であってもよい。
【0144】
[能動騒音低減装置の制限動作]
ここで、能動騒音低減装置10と同様に、能動騒音低減装置10aにおいても、制御部19は、第一キャンセル音に基づく第一の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定することができる。また、能動騒音低減装置10aにおいては、制御部19は、信号処理部20を対象に第二キャンセル音に基づく第二の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定することができる。制御部19は、具体的には、第二適応フィルタ部23に関連する第二パラメータに基づいて、第二の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定することができる。
【0145】
第二パラメータは、例えば、第二適応フィルタの係数(上記第一のフィルタ係数A及び第二のフィルタ係数B)であるが、第二適応フィルタの係数の更新量の絶対値、係数Rまたは、第二適応フィルタ部23が出力する第二キャンセル信号のレベルであってもよい。また、制御部19は、第二パラメータとして、第二適応フィルタの係数、第二適応フィルタの係数の更新量の絶対値係数R、及び、第二キャンセル信号のレベルのうち2つ以上を併用してもよい。つまり、第二パラメータには、第二適応フィルタの係数、第二適応フィルタの係数の更新量の絶対値、係数R、及び、第二キャンセル信号のレベルの少なくとも1つが含まれればよい。第二パラメータに基づく、第二の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する方法については、実施の形態1と同様である。
【0146】
また、制御部19は、判定結果に基づいて、第二フィルタ係数更新部25の通常状態及び制限状態を切り替えることができる。制御部19は、例えば、第二フィルタ係数更新部25が通常状態で第二適応フィルタの係数を更新しているときに、第二の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第二フィルタ係数更新部25を、通常状態よりも第二騒音を低減する効果が弱まる制限状態にする。
【0147】
制限状態は、通常状態よりも第二騒音を低減する効果が弱まる状態(あるいは、効果が弱まると推定される状態)である。例えば、制限状態の第二フィルタ係数更新部25は、通常状態であるときよりも小さいステップサイズパラメータμを用いて第二適応フィルタの係数を更新する。制限状態の第二フィルタ係数更新部25は、第二適応フィルタの係数の更新を停止してもよいし、第二適応フィルタ部23からの第二キャンセル信号の出力を停止してもよいし、第二適応フィルタの係数を0に初期化してもよい。また、制限状態の第二フィルタ係数更新部25は、係数Rに上限を設定してもよい。また、制限状態の第二フィルタ係数更新部25は、第二適応フィルタの係数A、Bに1未満のリーク係数を乗じてもよい。
【0148】
また、制御部19は、第二フィルタ係数更新部25が制限状態であるときに、第二の騒音制御が安定状態であると判定すると、第二フィルタ係数更新部25を通常状態に復帰させる。制御部19は、第二フィルタ係数更新部25が制限状態であるときに、取得された車両状態信号が示す車両50aの状態が所定状態に変化したことを示すと、第二フィルタ係数更新部25を通常状態に復帰させることもできる。
【0149】
また、制御部19は、安定状態から不安定状態への遷移、及び、不安定状態から安定状態への遷移が一定期間の間に所定回数以上発生したと判定すると、第二フィルタ係数更新部25を制限状態に固定することもできる。
【0150】
[能動騒音低減装置の制限動作の具体例]
このように制御部19は、第一の騒音制御が不安定状態であるか否かの判定と、第二の騒音制御が不安定状態であるか否かの判定とを個別に行うことができる。ここで、制御部19は、第一の騒音制御及び第二の騒音制御の一方の騒音制御に対する判定結果に基づいて、他方の騒音制御を行うフィルタ係数更新部の状態を変更してもよい。図14は、能動騒音低減装置10aの制限動作の例1のフローチャートである。
【0151】
能動騒音低減装置10aが通常動作を行っており、第一フィルタ係数更新部17が通常状態で第一適応フィルタの係数Wを更新し、かつ、第二フィルタ係数更新部25が通常状態で第二適応フィルタの係数を更新しているときに(S71)、制御部19は、第一適応フィルタ部15に関連する第一パラメータを取得する(S72)。制御部19は、取得した第一パラメータに基づいて、第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したか否かを判定する(S73)。
【0152】
第一の騒音制御が安定状態のままであると判定されると(S73でNo)、通常状態が継続される(S71)。一方、第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したと判定されると(S73でYes)、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にし(S74)、さらに、第二フィルタ係数更新部25を制限状態にする(S75)。
【0153】
このように、制御部19は、第二フィルタ係数更新部25が通常状態であるときに、第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第二フィルタ係数更新部25を制限状態にする。このような能動騒音低減装置10aは、第一キャンセル音に基づく第一の騒音制御が不安定になったときに第二キャンセル音が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0154】
また、図15は、能動騒音低減装置10aの制限動作の例2のフローチャートである。
【0155】
能動騒音低減装置10aが通常動作を行っており、第一フィルタ係数更新部17が通常状態で第一適応フィルタの係数Wを更新し、かつ、第二フィルタ係数更新部25が通常状態で第二適応フィルタの係数A、Bを更新しているときに(S81)、制御部19は、第二適応フィルタ部23に関連する第二パラメータを取得する(S82)。制御部19は、取得した第二パラメータに基づいて、第二の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したか否かを判定する(S83)。
【0156】
第二の騒音制御が安定状態のままであると判定されると(S83でNo)、通常状態が継続される(S81)。一方、第一の騒音制御が安定状態から不安定状態に変化したと判定されると(S83でYes)、制御部19は、第二フィルタ係数更新部25を制限状態にし(S84)、さらに、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にする(S85)。
【0157】
このように、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17が通常状態であるときに、第二の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にする。このような能動騒音低減装置10aは、第二キャンセル音に基づく第二の騒音制御が不安定になったときに第一キャンセル音が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0158】
なお、図示されないが、能動騒音低減装置10aにおいては、制限状態の第一フィルタ係数更新部17が通常状態に復帰する場合には、第一の騒音制御及び第二の騒音制御の両方が安定状態と判定されることが要件とされてもよい。同様に、制限状態の第二フィルタ係数更新部25が通常状態に復帰する場合には、第一の騒音制御及び第二の騒音制御の両方が安定状態と判定されることが要件とされてもよい。
【0159】
[効果等]
以上説明したように、能動騒音低減装置10aは、車両50aに取り付けられたエンジン制御部58によって出力される、前記移動体装置内の空間における第二騒音と相関を有する第二参照信号が入力される第二参照信号入力端子21と、第二参照信号入力端子21に入力される第二参照信号に基づいて特定される周波数を有する基準信号に第二適応フィルタを適用することにより、第二騒音を低減するための第二キャンセル音の出力に用いられる第二キャンセル信号を生成する第二適応フィルタ部23と、SANアルゴリズムに基づいて、第二適応フィルタの係数を更新する第二フィルタ係数更新部25とを備える。制御部19は、第二適応フィルタ部23に関連する第二パラメータに基づいて、第二キャンセル音に基づく第二の騒音制御が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する。制御部19は、第二フィルタ係数更新部25が通常状態で第二適応フィルタの係数を更新しているときに、第二の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第二フィルタ係数更新部25を、通常状態よりも第二騒音を低減する効果が弱まる制限状態にし、第二フィルタ係数更新部25が制限状態であるときに、第二の騒音制御が安定状態であると判定すると、第二フィルタ係数更新部を25通常状態に復帰させる。なお、第一フィルタ係数更新部17は、Filtered-X LMSアルゴリズムに基づいて、第一適応フィルタの係数を更新する。
【0160】
このような能動騒音低減装置10aは、第二フィルタ係数更新部25を制限状態にすることで第二キャンセル音が異音となってしまうことを抑制しつつ、第二の騒音制御が安定したときに第二フィルタ係数更新部25を通常状態に復帰させることができる。
【0161】
また、制御部19は、第一フィルタ係数更新部17が通常状態であるときに、第二の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第一フィルタ係数更新部17を制限状態にし、第二フィルタ係数更新部25が通常状態であるときに、第一の騒音制御が不安定状態であると判定すると、第二フィルタ係数更新部25を制限状態にする。
【0162】
このような能動騒音低減装置10aは、第一キャンセル音に基づく第一の騒音制御が不安定になったときに第二キャンセル音が異音となってしまうことを抑制することができる。また、能動騒音低減装置10aは、第二キャンセル音に基づく第二の騒音制御が不安定になったときに第一キャンセル音が異音となってしまうことを抑制することができる。
【0163】
また、第一騒音は、ロードノイズであり、第二騒音は、車両50aのエンジン音に基づく騒音である。
【0164】
このような能動騒音低減装置10aは、ロードノイズ及びエンジン音に基づく騒音の両方を低減することができる。
【0165】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態1及び2について説明したが、本開示は、上記実施の形態1~2に限定されるものではない。
【0166】
例えば、上記実施の形態1では、主としてロードノイズを対象とした能動騒音低減装置について説明され、上記実施の形態2では、ロードノイズ及びこもり音を対象とした能動騒音低減装置について説明された。しかしながら、本開示によって想定される発明には、主としてこもり音を対象とした能動騒音低減装置も含まれる。主としてこもり音を対象とした能動騒音低減装置は、例えば、実施の形態2に係る能動騒音低減装置からロードノイズを低減するための構成要素を除いた構成を有する。
【0167】
また、上記実施の形態1及び2に係る能動騒音低減装置は、車両以外の移動体装置に搭載されてもよい。移動体装置は、例えば、航空機または船舶であってもよい。また、本開示は、このような車両以外の移動体装置として実現されてもよい。
【0168】
また、上記実施の形態1及び2に係る能動騒音低減装置の構成は、一例である。例えば、能動騒音低減装置は、D/A変換器、フィルタ、電力増幅器、または、A/D変換器などの構成要素を含んでもよい。
【0169】
また、上記実施の形態1及び2では、第一参照信号入力部、誤差信号入力部、キャンセル信号出力部は互いに異なる端子として説明されたが、単一の端子であってもよい。例えば、第一参照信号源、誤差信号源、及び、キャンセル音源などのデバイスを数珠繋ぎに接続できるデジタル通信規格によれば、単一の端子によって参照信号入力部、誤差信号入力部、及び、キャンセル信号出力部を実現することが可能である。
【0170】
また、上記実施の形態1及び2に係る能動騒音低減装置が行う処理は、一例である。例えば、上記実施の形態で説明されたデジタル信号処理の一部がアナログ信号処理によって実現されてもよい。
【0171】
また、例えば、上記実施の形態1及び2において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0172】
また、上記実施の形態1及び2において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0173】
また、上記実施の形態1及び2において、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0174】
また、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0175】
また、本開示の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0176】
例えば、本開示は、能動騒音低減装置(コンピュータまたはDSP)が実行する能動騒音低減方法として実現されてもよいし、上記能動騒音低減方法をコンピュータまたはDSPに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、本開示は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。また、本開示は、移動体装置(例えば、車両)または能動騒音低減システムとして実現されてもよい。このような移動体装置または能動騒音低減システムは、例えば、上記実施の形態に係る能動騒音低減装置と、第一参照信号源とを備える。
【0177】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本開示の能動騒音低減装置は、例えば、車室内の騒音を低減することができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0179】
10、10a 能動騒音低減装置
11 第一参照信号入力端子
12 キャンセル信号出力端子
13 誤差信号入力端子
14 車両状態信号入力端子
15 第一適応フィルタ部
16 第一模擬音響伝達特性フィルタ部
17 第一フィルタ係数更新部
18 第一記憶部
19、24a 制御部
20 信号処理部
21 第二参照信号入力端子
22 基準信号生成部
22a 周波数検出部
22b 正弦波生成部
22c 余弦波生成部
23 第二適応フィルタ部
23a 第一フィルタ
23b 第二フィルタ
23c、30 加算部
24 補正部
24b 第一補正信号生成部
24c 第二補正信号生成部
25 第二フィルタ係数更新部
25a 第一更新部
25b 第二更新部
26 第二記憶部
50、50a 車両
51 第一参照信号源
52 キャンセル音源
53 誤差信号源
54 車両本体
55 車両制御部
56 空間
57 エンジン
58 エンジン制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15