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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】導光板、および、表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240805BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240805BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240805BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240805BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/32
G02B5/18
B60K35/23
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021058962
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155632
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 圭司
(72)【発明者】
【氏名】笠澄 研一
(72)【発明者】
【氏名】長久 幸広
(72)【発明者】
【氏名】葛原 聡
(72)【発明者】
【氏名】南 和博
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184920(JP,A)
【文献】特開平05-072959(JP,A)
【文献】特表2019-510995(JP,A)
【文献】特開平05-201272(JP,A)
【文献】特表2019-522230(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 5/32
G02B 5/18
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二以上の回折セルを有する第一ホログラム素子と、
単一の回折セルを有する第二ホログラム素子とを備え
前記第一ホログラム素子が有する干渉縞の間隔は、前記第二ホログラム素子が有する干渉縞の間隔より大きい
導光板。
【請求項2】
上面視において、前記第一ホログラム素子の面積は、前記第二ホログラム素子の面積より大きい
請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
上面視において、前記第一ホログラム素子が有する前記二以上の回折セルが有する干渉縞は、曲線状である
請求項1または2に記載の導光板。
【請求項4】
上面視において、前記第二ホログラム素子が有する前記単一の回折セルが有する干渉縞は、直線状である
請求項1~のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項5】
前記第一ホログラム素子は、レリーフ型ホログラム素子である
請求項1~のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項6】
前記第二ホログラム素子は、体積型ホログラム素子である
請求項1~のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項7】
前記第一ホログラム素子は、前記導光板の内部を伝搬してきた光を回折によって偏向することで前記導光板の外部へ出射させる位置に位置している
請求項1~のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項8】
前記第二ホログラム素子は、前記導光板の外部から内部へ入射した光を回折によって偏向することで前記導光板の内部で伝搬させる位置に位置している
請求項1~のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項9】
前記導光板は、
前記第一ホログラム素子である、出射側ホログラム素子と、
2つの前記第二ホログラム素子である、入射側ホログラム素子および偏向用ホログラム素子とを備え、
前記入射側ホログラム素子は、前記導光板の外部から内部へ入射した光を回折によって偏向することで前記導光板の内部で伝搬させる位置に位置していて、
前記偏向用ホログラム素子は、前記入射側ホログラム素子が偏向した光を回折によって偏向することで前記導光板の内部で伝搬させる位置に位置していて、
前記出射側ホログラム素子は、前記偏向用ホログラム素子が偏向した光を回折によって偏向することで前記導光板の外部へ出射させる位置に位置している
請求項1~のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の導光板と、
画像を示す光を生成して前記導光板に入射させる画像生成装置とを備える
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板、および、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示画像の広画角化を図り得る光学装置が開示されている(特許文献1参照)。上記光学装置は、導光板内に複数のホログラム素子を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-112746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、導光板を用いて表示される画像の品質が低下することがある。
【0005】
そこで、本発明は、表示される画像の品質の低下を抑制する導光板などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る導光板は、二以上の回折セルを有する第一ホログラム素子と、単一の回折セルを有する第二ホログラム素子とを備える導光板である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る導光板は、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る表示装置が設置される車両の一例を示す模式図である。
図2図2は、表示装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、実施の形態に係る導光板の構成を示す模式図である。
図4図4は、実施の形態に係るホログラム素子の作成方法の第一例を示す説明図である。
図5図5は、実施の形態に係るホログラム素子の作成方法の第二例を示す説明図である。
図6図6は、実施の形態に係る回折セルの説明図である。
図7図7は、実施の形態の変形例に係るホログラム素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本発明の基礎となった知見)
車両のウィンドシールド(一般にフロントガラスともよばれる)などの透明板に画像を投影し、透明板の向こう側の景色とともに当該画像を運転者などのユーザに視認させる表示装置がある。このような表示装置は、一般に、ヘッドアップディスプレイ装置ともよばれる。
【0010】
図1は、表示装置1が設置される車両の一例である車両5を示す模式図である。図2は、表示装置1の構成を示す模式図である。
【0011】
図1に示されるように、車両5は、表示装置1と、ウィンドシールド20とを備える。表示装置1は、例えば、ウィンドシールド20の下部に設置され、上方つまりウィンドシールド20に向けて、画像の表示に係る光(表示光ともいう)を出射する。表示装置1は、例えばダッシュボードの内部に設置される。表示装置1が出射する表示光の光路は確保されており、言い換えれば、出射された表示光は、遮られずにウィンドシールド20に到達する。表示装置1の構成について、より詳しく説明する。
【0012】
図2に示されるように、表示装置1は、導光板10と、画像生成装置17とを備える。
【0013】
画像生成装置17は、表示光を生成して導光板10に提供する装置である。画像生成装置17は、例えば、画像生成装置17が有する光源(不図示)から出射された光を、液晶などの画像形成素子に照射することで表示光を生成する。画像生成装置17は、生成した表示光を導光板10に向けて出射する。
【0014】
導光板10は、画像生成装置17が生成した表示光のビーム幅を拡大しながら偏向する板体である。ここで、ビーム幅とは、進行方向に対して垂直な方向における光束の幅を意味する。
【0015】
導光板10には、画像生成装置17が生成した表示光が入射される。入射された表示光は、導光板10内で導光され、導光板10の外部に光L3として出射される。光L3は、ウィンドシールド20により反射されて光L5となり、ユーザUの眼に入射する。導光板10は、光L3がウィンドシールド20に向けて出射される位置および姿勢で設置されている。
【0016】
導光板10による表示光のビーム幅の拡大と偏向とは、導光板10が有する複数の回折素子を用いてなされる。そのため、導光板10が有する複数の回折素子それぞれは、表示光を適切な方向に回折する回折特性を有し、また、適切な寸法を有している。
【0017】
ユーザUは、表示光である光L5が目に入射したことにより、画像生成装置17が生成した画像を視認する。ユーザUは、表示光である光L5によって視認する画像を、ウィンドシールド20の向こう側に位置する虚像14として認識する。
【0018】
導光板10が有する上記の機能は、凹面鏡などの光学部材によっても実現され得る。ただし、凹面鏡などの光学部材によって実現する場合よりも、導光板10を用いるほうが、表示装置1の寸法を小さくすることができる利点がある。表示装置1は、車両5の例えばダッシュボード内部に設置されるので、寸法を小さくすることで、設置の自由度がより高くなる利点がある。
【0019】
しかしながら、導光板10を用いて表示される画像の品質が低下することがある。具体的には、導光板10が有する複数の回折素子の回折特性または寸法が適切でない場合、導光板10の回折性能が低下し、その結果、表示装置1によって表示される画像の品質が低下することがある。
【0020】
そこで、本発明は、表示される画像の品質の低下を抑制する導光板などを提供することを目的とする。
【0021】
本発明の一態様に係る導光板は、二以上の回折セルを有する第一ホログラム素子と、単一の回折セルを有する第二ホログラム素子とを備える導光板である。
【0022】
上記態様によれば、導光板は、二以上の回折セルを有するホログラム素子(第一ホログラム素子)と、単一の回折セルを有するホログラム素子(第二ホログラム素子)とを用いて、導光する光の光路のずれが表示画像に与える影響を小さく抑えながら、入射した光を適切に偏向し、かつ、ビーム幅を適切に拡大する。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【0023】
また、前記第一ホログラム素子が有する干渉縞の間隔は、前記第二ホログラム素子が有する干渉縞の間隔より大きくてもよい。
【0024】
上記態様によれば、導光板は、第一ホログラム素子が有する干渉縞の間隔が比較的大きいので、第一ホログラム素子が有する回折セルの境界に生ずる干渉縞のずれに起因する画像の品質の低下を小さくすることができる。画像の品質の低下は、干渉縞の間隔に対する干渉縞のずれ幅の比率によって評価されるので、第一ホログラム素子の干渉縞の間隔が大きいほど画像の品質の低下が小さいことによる。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下をより一層抑制することができる。
【0025】
また、上面視において、前記第一ホログラム素子の面積は、前記第二ホログラム素子の面積より大きくてもよい。
【0026】
上記態様によれば、導光板は、第一ホログラム素子の上面視における面積が比較的大きいので、第一ホログラム素子による回折によって、導光する光のビーム幅をより大きくすることができる。そして、導光板から出射された光のビーム幅が大きいので、表示画像をより大きくユーザに視認させることができる。よって、導光板は、表示画像をより大きく視認されるようにしながら、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【0027】
また、上面視において、前記第一ホログラム素子が有する前記二以上の回折セルが有する干渉縞は、曲線状であってもよい。
【0028】
上記態様によれば、導光板は、第一ホログラム素子の上面視において干渉縞が曲線状であるので、導光する光のビーム形状(つまり、光の進行方向に対して垂直な光束の断面における形状)をひずませる。導光板から出射された光は、ウィンドシールドによって反射される際にウィンドシールドの面形状に基づいて、そのビーム形状にひずみが生ずる。そこで、ウィンドシールドによる反射によって生ずるビーム形状のひずみを打ち消すひずみを、第一ホログラム素子の曲線状の干渉縞で生じさせるようにすることで、表示画像のひずみを抑制することができる。これは、第一ホログラム素子が二以上の回折セルを有していることから、さまざまなパターンを有する干渉縞を容易に第一ホログラム素子に形成することができることに基づく。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下をより一層抑制することができる。
【0029】
また、上面視において、前記第二ホログラム素子が有する前記単一の回折セルが有する干渉縞は、直線状であってもよい。
【0030】
上記態様によれば、導光板の第二ホログラム素子の上面視において干渉縞が直線状であるので、導光する光のビーム形状をひずませることなく、光を導光することができる。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下をより一層抑制することができる。
【0031】
また、前記第一ホログラム素子は、レリーフ型ホログラム素子であってもよい。
【0032】
上記態様によれば、導光板の第一ホログラム素子がレリーフ型ホログラム素子によって、より容易に実現され得る。
【0033】
また、前記第二ホログラム素子は、体積型ホログラム素子であってもよい。
【0034】
上記態様によれば、導光板の第二ホログラム素子が体積型ホログラム素子によって、より容易に実現され得る。
【0035】
また、前記第一ホログラム素子は、前記導光板の内部を伝搬してきた光を回折によって偏向することで前記導光板の外部へ出射させる位置に位置していてもよい。
【0036】
上記態様によれば、導光板の第一ホログラム素子が、導光板の内部を伝搬してきた光を回折によって偏向することで導光板の外部へ出射させる。よって、導光板は、第一ホログラム素子による回折により、導光板の外部へ光を出射させることができる。
【0037】
また、前記第二ホログラム素子は、前記導光板の外部から内部へ入射した光を回折によって偏向することで前記導光板の内部で伝搬させる位置に位置していてもよい。
【0038】
上記態様によれば、導光板の第二ホログラム素子は、導光板の外部から内部へ入射した光を回折によって偏向することで導光板の内部で伝搬させる。よって、導光板は、第二ホログラム素子による回折により、導光板の内部に光を伝搬させることができる。
【0039】
また、前記導光板は、前記第一ホログラム素子である、出射側ホログラム素子と、2つの前記第二ホログラム素子である、入射側ホログラム素子および偏向用ホログラム素子とを備え、前記入射側ホログラム素子は、前記導光板の外部から内部へ入射した光を回折によって偏向することで前記導光板の内部で伝搬させる位置に位置していて、前記偏向用ホログラム素子は、前記入射側ホログラム素子が偏向した光を回折によって偏向することで前記導光板の内部で伝搬させる位置に位置していて、前記出射側ホログラム素子は、前記偏向用ホログラム素子が偏向した光を回折によって偏向することで前記導光板の外部へ出射させる位置に位置していてもよい。
【0040】
上記態様によれば、導光板は、1個の第一ホログラム素子を出射側ホログラム素子として用い、また、2個の第二ホログラム素子を入射側ホログラム素子および偏向用ホログラム素子として用いて、より適切に、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【0041】
また、本発明の一態様に係る表示装置は、上記の導光板と、画像を示す光を生成して前記導光板に入射させる画像生成装置とを備える表示装置である。
【0042】
上記態様によれば、表示装置は、導光板を用いて、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【0043】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0044】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0045】
(実施の形態)
本実施の形態において、表示される画像の品質の低下を抑制する導光板および表示装置について説明する。本実施の形態の導光板および表示装置は、車両のウィンドシールドに、画像を投影することで表示する表示装置である。以降の説明において、図に示されるXYZ軸を用いて説明することがある。
【0046】
図3は、本実施の形態に係る導光板10の構成を示す模式図である。図3の(a)は、導光板10を上面視した場合、つまり、Z軸プラス方向から見た構成を示す図である。図3の(b)は、導光板10を側面視した場合、つまり、Y軸マイナス方向から見た場合の構成を示す図である。図3の(c)は、導光板10を側面視した場合、つまり、X軸プラス方向から見た場合の構成を示す図である。
【0047】
図3に示されるように、導光板10は、透明部材15を有し、透明部材15の内部にホログラム素子11、12および13(ホログラム素子11等ともいう)を有する。導光板10は、入射された光L1を導光板10内部で全反射によって導光し、また、ホログラム素子11、12および13による回折によって偏向された光を、導光板10の外部に光L3として出射する。透明部材15は、ガラスまたは樹脂などで構成されている。
【0048】
導光板10に入射される光L1は、Y軸プラス方向およびZ軸プラス方向に進行する光である。光L1は、画像生成装置17が生成した表示光であることが想定される。導光板10は、表示装置1の使用状態(つまり、表示装置1が図2に示されるように設置された状態)において、図3に示されるような適切な角度で光L1が入射される位置および姿勢で設置されている。
【0049】
ホログラム素子11は、導光板10の内部に配置されている回折素子である。ホログラム素子11は、導光板10の外部から内部へ入射した光L1を、回折によって偏向することで、導光板10の内部で伝搬させる。ホログラム素子11は、上面視において直線状の干渉縞が形成されており、干渉縞による回折によって光L1を偏向し、光L12とする。光L12は、X軸マイナス方向へ進行する光である。光L12は、透明部材15と空気との界面で全反射を繰り返すことで導光板10内部をX軸マイナス方向へ伝搬する。
【0050】
ホログラム素子11に形成されている干渉縞は、光L12が透明部材15と空気との界面で全反射をするように光L1を偏向させる干渉縞である。上記干渉縞は、具体的には、界面への光L12の入射角が臨界角より大きい状態を保つように、光L1を偏向させる。
【0051】
ホログラム素子12は、導光板10の内部に配置されている回折素子である。ホログラム素子12は、ホログラム素子11によって偏向された光L12を、回折によって偏向することで、導光板10の内部で伝搬させる。ホログラム素子12は、上面視において直線状の干渉縞が形成されており、干渉縞による回折によって光L12を偏向し、光L23とする。光L23は、Y軸プラス方向へ進行する光である。光L23は、透明部材15と空気との界面で全反射を繰り返すことで導光板10内部をY軸プラス方向へ伝搬する。
【0052】
ホログラム素子12に形成されている干渉縞は、光L23が透明部材15と空気との界面で全反射をするように光L12を偏向させる干渉縞である。上記干渉縞は、具体的には、界面への光L23の入射角が臨界角より大きい状態を保つように、光L12を偏向させる。
【0053】
ホログラム素子13は、導光板10の内部に配置されている回折素子である。ホログラム素子13は、ホログラム素子12によって偏向された光L23を、回折によって偏向することで、導光板10の外部へ出射させる。ホログラム素子13は、上面視において直線状の干渉縞が形成されており、干渉縞による回折によって光L23を偏向し、光L3とする。光L3は、Y軸プラス方向およびZ軸プラス方向へ進行する光である。
【0054】
ホログラム素子13に形成されている干渉縞は、光L3が透明部材15と空気との界面で、全反射せずに、光L3が導光板10から出射するように光L23を偏向させる干渉縞である。上記干渉縞は、具体的には、界面への光L3の入射角が臨界角より小さい状態を保つように、光L23を偏向させる。
【0055】
なお、ホログラム素子13が有する干渉縞は、上面視において曲線状であってもよい(下記変形例を参照)。
【0056】
ホログラム素子11を入射側ホログラム素子ともいう。ホログラム素子12を偏向用ホログラム素子ともいう。ホログラム素子13を出射側ホログラム素子ともいう。
【0057】
導光板10は、表示装置1の使用状態で、出射する光L3がウィンドシールド20に向かう位置および姿勢で設置されている。光L3は、導光板10から出射された後にウィンドシールド20による反射を経てユーザUの眼に入射する。
【0058】
ホログラム素子11等が有する回折セルの特徴を説明する。回折セルとは、同一の回折特性を有する領域である。一の回折セル内では、所定のパターンを有する干渉縞が形成されており、ホログラム素子11等は、形成されている干渉縞によって光を回折させる。ホログラム素子11等は、単一の回折セルを有する場合と、二以上の回折セルを有する場合とがある。ホログラム素子11等が複数の回折セルを有する場合、隣接する回折セルの境界では、干渉縞のパターンのずれが生ずることがある。干渉縞のパターンのずれは、回折する光の光路のずれを生じさせ、その結果、その光によって表示される画像(表示画像ともいう)の劣化を引き起こす。
【0059】
まず、ホログラム素子11が有する回折セルの個数について以下の特徴を有する。
【0060】
すなわち、ホログラム素子11は、単一の回折セルを有するホログラム素子(第二ホログラム素子に相当)である。また、ホログラム素子12は、単一の回折セルを有するホログラム素子(第二ホログラム素子に相当)である。また、ホログラム素子13は、二以上の回折セルを有するホログラム素子(第一ホログラム素子に相当)である。
【0061】
これにより、導光板10は、導光する光の光路のずれが表示画像に与える影響を小さくしながら、導光する光を適切に偏向し、導光する光のビーム幅を適切に拡大することができる。
【0062】
また、ホログラム素子11等は、干渉縞の間隔について以下の特徴を有していてもよい。
【0063】
すなわち、ホログラム素子13が有する干渉縞の間隔は、ホログラム素子11が有する干渉縞の間隔より大きいという特徴を有していてもよい。また、ホログラム素子13が有する干渉縞の間隔は、ホログラム素子12が有する干渉縞の間隔より大きいという特徴を有していてもよい。
【0064】
ホログラム素子13が有する干渉縞の間隔を、ホログラム素子11または12が有する干渉縞の間隔より大きくすることで、ホログラム素子11および12の回折角(回折の前後における光の進行方向のなす角)を、ホログラム素子13の回折角より大きくすることができる。これにより、導光板10は、図3に示される光路で適切に光を導光することができる。
【0065】
また、ホログラム素子11等は、上面視(Z軸プラス側から見た場合)における面積について以下の特徴を有していてもよい。
【0066】
すなわち、上面視において、ホログラム素子13の面積は、ホログラム素子11の面積より大きいという特徴を有していてもよい。また、上面視において、ホログラム素子13の面積は、ホログラム素子12の面積より大きいという特徴を有していてもよい。
【0067】
これにより、ホログラム素子13が出射する光のビーム幅をより大きくすることができ、表示画像の寸法をより大きくし、表示画像をより大きくユーザUに視認させることができる。
【0068】
また、ホログラム素子11等は、種別について以下の特徴を有していてもよい。
【0069】
すなわち、ホログラム素子11または12は、レリーフ型ホログラム素子であるという特徴を有していてもよい。これにより、ホログラム素子11または12の金型による成型が可能であり、量産の実現に寄与し得る。
【0070】
また、ホログラム素子13は、体積型ホログラム素子であるという特徴を有していてもよい。これにより、ホログラム素子13の大型化または大面積化が可能である。
【0071】
以降において、ホログラム素子の作成方法と、作成されるホログラムが有する回折セルの特徴とについて説明する。ホログラム素子の作成方法には、例として、(1)一括露光を用いる方法と、(2)分割露光を用いる方法とがある。
【0072】
(1)一括露光を用いる方法
図4は、本実施の形態に係るホログラム素子の作成方法の第一例を示す説明図である。図4に示される方法は、一括露光を用いる方法の例である。
【0073】
一括露光を用いる方法では、レーザ光源31から出射された光がレンズ32を経て偏光ビームスプリッタ33に至る。偏光ビームスプリッタ33を透過した光は曲面ミラー34により反射されて感光部材36に至る。また、偏光ビームスプリッタ33により反射された光は、平面ミラー35により反射されて感光部材36に至る。感光部材36には、曲面ミラー34により反射された光と、平面ミラー35により反射された光との干渉により生じた干渉縞が記録される。このように干渉縞が記録された感光部材36がホログラム素子となる。
【0074】
一括露光を用いる方法では、レーザ光源31による一度の発光によって、感光部材36の全面に光が照射されるので、感光部材36の全面に単一の回折セルが形成される。そのため、一括露光を用いる方法によって生成されたホログラム素子は、単一の回折セルを有する。一括露光を用いる方法では、分割露光を用いる場合に生じ得る、回折セルの境界における干渉縞のずれ(後述)が生じないという特徴がある。
【0075】
また、一括露光を用いる方法では、感光部材36の中央部から離れるほど、照射される光の強度が低下するので、作成可能なホログラム素子の寸法が所定の大きさに制限される。
【0076】
そのため、一括露光による方法は、寸法が比較的小さく、単一の回折を有するホログラム素子の作成に適している。
【0077】
(2)分割露光を用いる方法
図5は、本実施の形態に係るホログラム素子の作成方法の第二例を示す説明図である。図5に示される方法は、分割露光を用いる方法の例である。
【0078】
分割露光を用いる方法では、感光部材47を分割した複数の領域ごとに順次に干渉縞が形成される。複数の領域のうちから選択される一の対象領域48には、一度の発光で干渉縞が形成される。感光部材47の全面が順次に対象領域48として選択されて干渉縞が形成されることで、結果的に感光部材47の全面に干渉縞が形成される。
【0079】
コンピュータ45は、感光部材47が有する複数の領域のうちから一の対象領域48を選択する。コンピュータ45は、選択した対象領域48に形成すべき干渉縞のパターンを示す画像を反射型液晶素子であるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)素子44に形成する。また、コンピュータ45は、LCOS素子44により反射された光と、平面ミラー46により反射された光とが対象領域48に照射されるように感光部材47を平行移動させる。
【0080】
レーザ光源41から出射された光がレンズ42を経て偏光ビームスプリッタ43に至る。偏光ビームスプリッタ43を透過した光は、LCOS素子44により反射されて感光部材47の対象領域48に至る。LCOS素子44には、対象領域48に形成すべき干渉縞のパターンを示す画像がコンピュータ45により形成されている。LCOS素子44により反射された光には、干渉縞のパターンを示す画像が含まれている。また、偏光ビームスプリッタ43により反射された光は、平面ミラー46により反射されて感光部材47の対象領域48に至る。
【0081】
対象領域48には、LCOS素子44により反射された光と、平面ミラー46により反射された光との干渉により生じた干渉縞が記録される。一の対象領域48に干渉縞を記録する上記の処理を、感光部材47のうちの複数の領域のすべてに順次に行うことで、感光部材47の全面に複数の回折セルが形成される。このように干渉縞が記録された感光部材47がホログラム素子となる。
【0082】
分割露光を用いる方法では、一度の発光で感光する領域が比較的小さいので、その感光する領域内の位置ごとの、照射される光の強度は実質的に均一である。そのため、分割露光による方法は、作成可能なホログラム素子の寸法の制限がなく、寸法が比較的大きなホログラム素子の作成に適している。
【0083】
また、分割露光を用いる方法では、コンピュータ45によりLCOS素子44に形成された画像に応じたパターンの干渉縞が形成されるので、干渉縞のパターンの自由度が高いという特徴がある。
【0084】
また、分割露光を用いる方法では、感光部材47の全面に複数の回折セルが形成されるので、回折セルの境界において干渉縞のずれが生ずる。干渉縞のずれは、回折する光の光路のずれを生じさせ、その結果、当該光に基づく表示画像の劣化を引き起こす。
【0085】
以降において、回折セル間の干渉縞のずれについて説明する。
【0086】
図6は、本実施の形態に係る回折セルの説明図である。図6に示される回折セルは、図3の破線枠VIを拡大して示すものである。
【0087】
図6には、2つの回折セルC1およびC2を含む複数の回折セルを有するホログラム素子が示されている。複数の回折セルC1およびC2は、例えば、分割露光によって形成された回折セルである。
【0088】
回折セルC1およびC2は、それぞれ、矩形形状を有する。ただし、回折セルの形状は、これに限定されない。
【0089】
図6に示されるように、回折セルC1の干渉縞を構成する線の1つである線51と、回折セルC2の干渉縞を構成する線の1つである線52とは、略平行であるが同一直線状にはない。言い換えれば、線51と線52とは、幅ΔDのずれを有する。
【0090】
干渉縞のずれは、そのような干渉縞を形成する意図に基づく設計などによって生じたものではなく、ホログラム素子の作成時における各機器の微小な位置の違いなどによって、意図に反して生じたものである。
【0091】
干渉縞のずれの大きさは、例えば、干渉縞の間隔Dに対する幅ΔDの比率によって評価される。具体的には、以下の(式1)に示される評価指標Eが大きいほど、干渉縞のずれが大きく、また、そのずれの結果として生じ得る表示画像の劣化が大きいことを示す。
【0092】
評価指標E=ΔD/D (式1)
【0093】
よって、干渉縞の間隔Dが同じである複数のホログラム素子においては、幅ΔDが大きいほど、評価指標Eが大きい。また、複数のホログラム素子における幅ΔDが同じである場合、干渉縞の間隔Dが大きいほど、評価指標Eが小さい。
【0094】
表示装置1が有するホログラム素子11等についていえば、ホログラム素子13の干渉縞の間隔Dが、ホログラム素子11または12の干渉縞の間隔Dより大きいので、ホログラム素子13における干渉縞のずれの、評価指標Eへの寄与が小さく、つまり、画像の劣化への影響が小さく抑えられる。
【0095】
以上のことから、表示装置1が有するホログラム素子11等についていえば、ホログラム素子11および12は、一括露光による方法で作成されるのに適しているといえる。言い換えれば、ホログラム素子11および12は、一括露光による方法で作成されたものであり得る。
【0096】
その理由は、第一に、ホログラム素子11および12がホログラム素子13よりも、小さな寸法を有するからである。
【0097】
また、その理由は、第二に、ホログラム素子11および12を仮に分割露光を用いる方法で生成するとすれば、回折セル間での干渉縞のずれの影響による表示画像の劣化が大きくなるからである。ホログラム素子11および12は、間隔Dが比較的小さいので、回折セル間での干渉縞のずれの評価指標Eが大きくなることによる。
【0098】
また、ホログラム素子13は、分割露光による方法で作成されるのに適しているといえる。言い換えれば、ホログラム素子13は、分割露光による方法で作成されたものであり得る。
【0099】
その理由は、第一に、ホログラム素子13がホログラム素子11および12よりも、大きな寸法を有するからである。
【0100】
また、その理由は、第二に、ホログラム素子13の干渉縞の間隔がホログラム素子11および12の干渉縞の間隔より大きいので、隣接する回折セル間の干渉縞のずれの、表示画像の劣化への影響が小さく抑えられるからである。
【0101】
(実施の形態の変形例)
本変形例において、ホログラム素子13が有する干渉縞の形状の別の例を説明する。
【0102】
具体的には、上記実施の形態のホログラム素子13が有する二以上の回折セルが有する干渉縞が、上面視において曲線状である例として、ホログラム素子13Aを説明する。
【0103】
図7は、実施の形態に係るホログラム素子13Aを示す模式図である。図7に示されるように、ホログラム素子13Aが有する回折セルが有する干渉縞は、上面視において曲線状である。
【0104】
ホログラム素子13Aが有する曲線状の干渉縞により回折された光L3Aは、その回折によって、ビーム形状にひずみが生ずる。このように回折された光L3Aは、ウィンドシールド20に向けて進行する。一方、一般にウィンドシールド20の面は、平面はなく曲面であるので、光L3Aが反射されるときに再びビーム形状にひずみが生ずる。
【0105】
そこで、ホログラム素子13Aが有する干渉縞を、ウィンドシールド20により反射されるときに生ずるひずみを打ち消すようなひずみをビーム形状に生じさせる干渉縞とすることで、表示画像のひずみを抑制することができる。
【0106】
なお、ホログラム素子13Aが有する干渉縞が曲線状である場合、ホログラム素子11および12が有する干渉縞の形状が曲線状である必要はない。そのため、ホログラム素子11または12が有する単一の回折セルが有する干渉縞は、直線状であってよい。ウィンドシールド20が生じさせるビーム形状のひずみを打ち消すひずみをホログラム素子13Aが生じさせるようにすれば、ホログラム素子11および12が有する干渉縞によって上記ひずみを打ち消す必要はないからである。
【0107】
以上のように、上記実施の形態または変形例における導光板は、二以上の回折セルを有するホログラム素子(第一ホログラム素子)と、単一の回折セルを有するホログラム素子(第二ホログラム素子)とを用いて、導光する光の光路のずれが表示画像に与える影響を小さく抑えながら、入射した光を適切に偏向し、かつ、ビーム幅を適切に拡大する。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【0108】
また、導光板は、第一ホログラム素子が有する干渉縞の間隔が比較的大きいので、第一ホログラム素子が有する回折セルの境界に生ずる干渉縞のずれに起因する画像の品質の低下を小さくすることができる。画像の品質の低下は、干渉縞の間隔に対する干渉縞のずれ幅の比率によって評価されるので、第一ホログラム素子の干渉縞の間隔が大きいほど画像の品質の低下が小さいことによる。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下をより一層抑制することができる。
【0109】
また、導光板は、第一ホログラム素子の上面視における面積が比較的大きいので、第一ホログラム素子による回折によって、導光する光のビーム幅をより大きくすることができる。そして、導光板から出射された光のビーム幅が大きいので、表示画像をより大きくユーザに視認させることができる。よって、導光板は、表示画像をより大きく視認されるようにしながら、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【0110】
また、導光板は、第一ホログラム素子の上面視において干渉縞が曲線状であるので、導光する光のビーム形状をひずませる。導光板から出射された光は、ウィンドシールドによって反射される際にウィンドシールドの面形状に基づいて、そのビーム形状にひずみが生ずる。そこで、ウィンドシールドによる反射によって生ずるビーム形状のひずみを打ち消すひずみを、第一ホログラム素子の曲線状の干渉縞で生じさせるようにすることで、表示画像のひずみを抑制することができる。これは、第一ホログラム素子が二以上の回折セルを有していることから、さまざまなパターンを有する干渉縞を容易に第一ホログラム素子に形成することができることに基づく。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下をより一層抑制することができる。
【0111】
また、導光板の第二ホログラム素子の上面視において干渉縞が直線状であるので、導光する光のビーム形状をひずませることなく、光を導光することができる。よって、導光板は、表示される画像の品質の低下をより一層抑制することができる。
【0112】
また、導光板の第一ホログラム素子がレリーフ型ホログラム素子によって、より容易に実現され得る。
【0113】
また、導光板の第二ホログラム素子が体積型ホログラム素子によって、より容易に実現され得る。
【0114】
また、導光板の第一ホログラム素子が、導光板の内部を伝搬してきた光を回折によって偏向することで導光板の外部へ出射させる。よって、導光板は、第一ホログラム素子による回折により、導光板の外部へ光を出射させることができる。
【0115】
また、導光板の第二ホログラム素子は、導光板の外部から内部へ入射した光を回折によって偏向することで導光板の内部で伝搬させる。よって、導光板は、第二ホログラム素子による回折により、導光板の内部に光を伝搬させることができる。
【0116】
また、導光板は、1個の第一ホログラム素子を出射側ホログラム素子として用い、また、2個の第二ホログラム素子を入射側ホログラム素子および偏向用ホログラム素子として用いて、より適切に、表示される画像の品質の低下を抑制することができる。
【0117】
以上、一つまたは複数の態様に係る導光板などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、車両のヘッドアップディスプレイ装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 表示装置
5 車両
10 導光板
11、12、13、13A ホログラム素子
14 虚像
15 透明部材
17 画像生成装置
20 ウィンドシールド
31、41 レーザ光源
32、42 レンズ
33、43 偏光ビームスプリッタ
34 曲面ミラー
35、46 平面ミラー
36、47 感光部材
44 LCOS素子
45 コンピュータ
48 対象領域
51、52 線
C1、C2 回折セル
L1、L12、L23、L3、L3A、L5 光
U ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7