(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】車両用シートへのロッド取付け構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240805BHJP
B60N 2/36 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/36
(21)【出願番号】P 2021027038
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】戎本 和雄
(72)【発明者】
【氏名】富田 将治
(72)【発明者】
【氏名】森本 鉄平
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-136824(JP,U)
【文献】特開平08-238961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0130540(US,A1)
【文献】独国実用新案第202019107225(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00ー2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートにブラケットを用いて取付けられ、かつ長手方向に延びる中心線周りに回転可能に設定されたロッドと、
このロッドと前記ブラケットとの相互間に介装されるブッシュと、
を備えている、車両用シートへのロッド取付け構造であって、
前記ブッシュは、
前記ブラケットおよび前記車両用シートの双方に当接するようにしてこれらの相互間に挟まれた状態に設定されるブッシュがたつき抑制部と、
このブッシュがたつき抑制部とは前記長手方向に位置ずれして設けられ、かつ前記ロッドの長手方向断面視において、前記ロッドの外周面の半分を超える領域を囲むようにして前記ロッドを抱え込む一方、前記車両用シート寄りの部分は開口し、前記車両用シートには非当接の状態に設定されるロッド抱え込み部と、
を備えていることを特徴とする、車両用シートへのロッド取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に搭載される車両用シートに、所望のロッドを回転可能に取付ける場合に適用される車両用シートへのロッド取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートへのロッド取付け構造の一例として、特許文献1に記載の構造がある。
この構造は、車両に搭載された車両用シートとしてのリヤシートが、いわゆるトランクスルーを実現し得るように、シートバックを前倒し可能な構成とされている。シートバックは、通常時においては、起立姿勢でロックされ、かつこのロックを解除することによって前倒し姿勢に設定し、リヤシートの前側の車室領域と、リヤシートの後側領域であるトランクルームとを繋げることが可能である。
前記した車両用シートへのロッド取付け構造においては、リヤシートのシートバックを起立姿勢にロックするためのロック機構が、シートバックの左右両側に一対で設けられ、これら一対のロック機構は、ロッドを介して連結されていることにより、互いに連動するようにされている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
特許文献1においては、前記したロッドの詳細な取付け構造が省略されているが、前記したロッドは、実際には、適当なブラケットを用いてリヤシートの所定箇所に適切に取付けられている必要がある。この場合、ロッドは、その中心線周りに円滑に回転可能である必要がある。このため、ブラケットとロッドとの相互間には、ブッシュが介装される。
前記した構成を構築する場合、ブラケットに対してブッシュやロッドにがたつきがあると、いわゆるがたつき音が発生する。とくに、ブラケットが金属製である場合には、いわゆるメタルタッチによる大きな異音が発生する。したがって、このようなことを適切に防止することが望まれる。その一方、前記がたつきをなくすことを目的として、ブッシュをブラケットによって強く挟圧しただけでは、ロッドを円滑に回転させることが困難となる。これでは、シートバックのロック状態を解除する際の操作性が悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、車両用シートにブラケットおよびブッシュを介してロッドを取付ける場合において、ブッシュやロッドのがたつき防止、およびロッドの円滑な回転の両立を適切に図ることが可能な車両用シートへのロッド取付け構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両用シートへのロッド取付け構造は、車両用シートにブラケットを用いて取付けられ、かつ長手方向に延びる中心線周りに回転可能に設定されたロッドと、このロッドと前記ブラケットとの相互間に介装されるブッシュと、を備えている、
車両用シートへのロッド取付け構造であって、前記ブッシュは、前記ブラケットおよび前記車両用シートの双方に当接するようにしてこれらの相互間に挟まれた状態に設定されるブッシュがたつき抑制部と、このブッシュがたつき抑制部とは前記長手方向に位置ずれして設けられ、かつ前記ロッドの長手方向断面視において、前記ロッドの外周面の半分を超える領域を囲むようにして前記ロッドを抱え込む一方、前記車両用シート寄りの部分は開口し、前記車両用シートには非当接の状態に設定されるロッド抱え込み部と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ブッシュは、所定のブッシュがたつき抑制部の存在により、ブラケットおよび車両用シートに対するがたつきが抑制されているとともに、ロッドは、前記ブッシュの所定のロッド抱え込み部に抱え込まれており、ブッシュに対するがたつきが抑制されている。したがって、ブッシュおよびロッドの両者が、車両走行時などにおいて、ブラケットや車両用シートに対してがたつきを生じることも適切に抑制され、異音(がたつき音)が発生しないようにすることができる。
とくに、ロッド抱え込み部は、ブッシュがたつき抑制部とはロッドの長手方向に位置ずれした配置であるため、ロッド抱え込み部がロッドを抱え込む状態が、ブッシュがたつき抑制部の影響を受け難いものとなり、ロッドがその中心線周りに円滑に回転する状態を維持し得るものとすることができる。たとえば、ブッシュおよびロッドの取付けに際し、ブラケットによってブッシュがたつき抑制部が強く押圧され、大きく圧縮変形したとしても、ロッド抱え込み部は、その影響を受け難い部位とし、ロッドの回転の円滑性が大きく悪化しないようにすることが可能である。また、ロッド抱え込み部のうち、車両用シート寄りの部分は、車両用シートには非当接の状態に設定されるため、車両用シートに当接することに起因して変形し、ロッドの回転の円滑性が大きく低下することもない。
このように、本発明によれば、ブッシュやロッドのがたつきに起因する異音の発生の抑制と、ロッドの回転の円滑性の確保とを適切に両立することが可能である。
さらに、本発明によれば、ブッシュのロッド抱え込み部は、ロッドの外周面の半分を超える領域を囲むようにして前記ロッドを抱え込んでいるため、ロッドの確実な保持が可能である一方、車両用シート寄りの部分は開口した形態であるため、その開口部分を利用して、ロッド抱え込み部へのロッドの組み込み作業が容易となり、全体の組み付け作業性がよい。
また、ロッドに大きな荷重が作用するなどして、ロッドに大きな変形(撓み)を生じた場合には、ロッド抱え込み部の前記開口部分の存在により、前記変形を許容するといったことも可能である。これは、たとえばロッドの全長が長く、その変形量(振幅)が大きくなる虞がある場合において、適切な振動抑制機能を得る上で好ましい。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両用シートへのロッド取付け構造の一例を示す要部概略斜視図である。
【
図3】(a)は、
図2のIIIa-IIIa断面図であり、(b)は、
図2のIIIb-IIIb断面図である。
【
図4】(a)は、
図3に示されたブッシュの概略斜視図であり、(b)は、(a)の矢視IVbの概略正面図である。
【
図5】(a)は、
図3に示した構成との対比例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)に示す構成で用いられているブッシュの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1に示す車両用シートへのロッド取付け構造Aは、自動車などの車両の車室内に搭載される車両用シートとして、ベンチシートタイプのリヤシートSを備えており、このリヤシートSに、シートロック連動用のロッド1がブラケット2およびブッシュ3を用いて取付けられている。
【0014】
リヤシートSの基本的な構成は、従来既知のベンチシートタイプのものと同様であり、シートクッション4、シートバック5、およびシートバック用の左右一対のロック機構部6を備えている。
【0015】
シートバック5は、複数の金属製パイプ50aや補強用プレート50bなどを用いて構成された枠状のシートバックフレーム50、およびこのシートバックフレーム50に接合された金属製あるいは樹脂製などのシートバックパネル51を備えている。図面では簡略化されているが、シートバック5は、表皮材によって覆われたシートバックパッド52(
図1において、仮想線によって一部分のみを示す)なども備えており、前記したシートバックフレーム50は、シートバックパッド52の内部に埋設されている。
【0016】
また、シートバック5は、このシートバック5の基部(下部)に設けられた回転支軸59を中心として矢印Na方向に回転可能であり、
図1に示した起立姿勢と、この起立姿勢からシートクッション4上に重なるように回転させた前倒し姿勢とを任意に切り替え設定可能である。リヤシートSの車両後方側には、荷室のフロア部を構成するリヤフロアパネル90が設けられており、シートバック5を前倒し姿勢とすることにより、いわゆるトランクスルーが実現される。
【0017】
一対のロック機構部6は、シートバック5を所定の起立姿勢とした場合に、この起立姿勢を維持させておくための機構部であり、シートバック5の左右横幅方向の両端部に設けられている。各ロック機構部6は、シートバック5を起立姿勢としたときにストライカ7が進入するように設定された凹溝部60、およびこの凹溝部60にストライカ7が進入したときに、このストライカ7に係合し、シートバック5の固定維持を図るための係合部材(不図示)を備えている。ストライカ7は、たとえば車室の側壁部91から車室内側に突出する略U字状の部材である。
【0018】
ロッド1は、一対のロック機構部6を互いに連結し、これらを連動させるための部材であり、たとえば丸パイプ材などを用いて構成され、かつシートバック5の左右横幅方向に延びた状態に設定され、このロッド1の長手方向に延びる中心線C1周りに回転可能である。各ロック機構部6は、ロッド1の長手方向両端部付近に取付けられた操作レバー61を含んでいる。シートバック5が起立姿勢に設定され、かつストライカ7に前記係合部材が係合しているロック状態にあるときに、操作レバー61が矢印Nbで示す上向きに操作されると、前記ロック状態は解除されるようになっている。操作レバー61は、左右一対で設けられ、かつこれらは互いに共通する1本のロッド1を介して連結された構成にあるため、一対の操作レバー61のいずれか一方を上向きに操作すれば、他方も同様な動作を生じ、一対のロック機構部6の双方のロック状態が解除される。
【0019】
ブラケット2は、ロッド1をリヤシートSに取付けるための部材であり、たとえば金属製である。このブラケット2は、
図2および
図3によく表れているように、取付け対象保持部20、および上下一対のベース部21を備えている。取付け対象保持部20は、ロッド1およびブッシュ3を保持するための部位であり、その側面断面視形状は、横向きU字状であり、かつ先端側に断面半円弧状部20aを有している。
【0020】
上下一対のベース部21は、取付け対象保持部20の基端部に繋がった略平板状の部位であり、シートバックパネル51にボルト92を用いて固定されている。ただし、これに限定されず、溶接などの他の手段を用いて固定してもよい。また、ブラケット2の取付け対象はシートバックパネル51に限定されず、リヤシートSの他の部分を取付け対象とすることが可能である。
図1に示す構成においては、合計3つのブラケット2が用いられて、ロッド1の長手方向の両端部および略中央部が支持されているが、これに限定されず、ロッド1の少なくとも1箇所が支持されていればよい。
【0021】
ブッシュ3は、ロッド1の防振ならびに円滑な回転を図るべく、ブラケット2の取付け対象保持部20とロッド1との相互間に介装される部材であり、たとえば樹脂製である。このブッシュ3は、全体の基本形状が断面略C字状であり、
図4に示すように、ロッド抱え込み部3a、一対のブッシュがたつき抑制部3b、および一対のフランジ部3cを備えている。
【0022】
一対のフランジ部3cは、ブッシュ3の軸長方向(
図4(b)の車幅方向であり、本発明でいうロッドの「長手方向」の一例に相当する)の両端部に位置しており、
図2に示すように、ブッシュ3がブラケット2の取付け対象保持部20内に組み込まれた状態においては、これら一対のフランジ部3cの相互間に取付け対象保持部20が挟まれた配置とされる。このことにより、ブラケット2に対するブッシュ3の前記軸長方向の位置ずれは防止される。
【0023】
一対のブッシュがたつき抑制部3bは、ブッシュ3の軸長方向に互いに離間した配置に設けられている。各ブッシュがたつき抑制部3bは、
図3(b)によく表れているように、ブラケット2の断面半円弧状部20aとロッド1の外周面との相互間に介装される断面半円弧状部30、およびこの断面半円弧状部30の上部および下部からシートバックパネル51側に延び、かつこのシートバックパネル51に当接する上下一対の脚部31を備えている。ブッシュ3がブラケット2に組み込まれた状態においては、ブラケット2の断面半円弧状部20aとシートバックパネル51との相互間に、ブッシュがたつき抑制部3bが挟まれており、このことによりブッシュ3の固定が図られている。
【0024】
ブッシュ3の内面部には、ロッド1の外周面に部分的に当接する凸状部32が、ブッシュ3の軸長方向に延びて設けられている。ブッシュがたつき抑制部3bは、ロッド1の外周面に対し、凸状部32の位置においては当接しているものの、それ以外の部分はロッド1の外周面に対して当接せず、または当接面積が小さい構成とされている。したがって、ブッシュがたつき抑制部3bがロッド1の回転の円滑性を損なわないようにすることができる。
【0025】
ロッド抱え込み部3aは、ブッシュ3の軸長方向の略中央部に位置しており、
図4に示すように、スリット部94を介してブッシュがたつき抑制部3bとは区分された状態に設けられている。このロッド抱え込み部3aは、
図3によく表れているように、断面略C字状であり、ブラケット2の断面半円弧状部20aとロッド1の外周面との相互間に介装されて、ロッド1の外周面の半分を超える領域を囲むようにしてロッド1を抱え込んでいる。また、ロッド抱え込み部3aのうち、シートバックパネル51寄りの部分は、開口した構成とされている。より具体的は、ロッド抱え込み部3aのうち、シートバックパネル51寄りの上下一対の先端部33の相互間には、開口部34が形成されている。一対の先端部33は、シートバックパネル51に対して、非当接である。また、ロッド1の外周面もシートバックパネル51には非当接であり、それらの相互間には、適当な幅Laの隙間95が形成されている。
一対の先端部33の内側には、ロッド1の外周面に対して部分的に当接する追加の凸状
部32aが設けられている。このことにより、ロッド1の外周面とロッド抱え込み部3aとの接触面積は、小さくされている。
【0026】
次に、前記した車両用シートへのロッド取付け構造Aの作用について説明する。
【0027】
まず、ロッド1は、既述したとおり、ブッシュ3およびブラケット2を介してシートバックパネル51に取付けられているが、ブッシュ3は、ブッシュがたつき抑制部3bがブラケット2とシートバックパネル51との両者に当接するようにしてそれらの両者間に挟まれたかたちで固定されている。したがって、ブッシュ3が、ブラケット2やシートバックパネル51に対してがたつきを生じることはない。また、ロッド1は、ブッシュ3のロッド抱え込み部3aに抱え込まれており、ブッシュ3に対してがたつきを生じることもない。このようなことから、ブッシュ3およびロッド1の双方、またはいずれか一方が、車両走行時などにおいてがたつきを生じないようにし、ブラケット2やシートバックパネル51との衝突音(がたつき音)が発生することを適切に抑制することが可能である。
【0028】
一方、ロッド1は、ブッシュ3のロッド抱え込み部3aに抱え込まれているが、このロッド抱え込み部3aは、ブッシュがたつき抑制部3bとは、ブッシュ3の軸長方向(ロッド1の長手方向)に位置ずれしており、しかもスリット部94を介して区分されている。このため、ロッド抱え込み部3aの形状が、ブッシュがたつき抑制部3bの圧縮変形度合いなどの影響を受けて変形するといったことがない、または少ないものとなり、ロッド1をその中心線C1周りに円滑に回転する状態を適切に維持することができる。ロッド1の回転が円滑であると、操作レバー61を操作してシートバック5のロック状態を解除する際の操作性がよくなる。
【0029】
図5は、前記した本実施形態に係るロッド取付け構造Aとの対比例を示している(本実施形態に対応する構成要素には、本実施形態と同一の符号を付している)。
この対比例において用いられているブッシュ3Eは、
図3および
図4を参照して述べたロッド抱え込み部3aに相当する部位を具備していない。このブッシュ3Eは、断面半円弧状部30から上下一対の脚部31eが延びた構成を有し、かつこれらの脚部31eはシートバックパネル51に当接している。また、この脚部31eの途中箇所の内面部には、ロッド1の外周面に当接する凸状部32bが設けられており、脚部31eの途中箇所および基端部側において、ロッド1を抱え込んでいる。
【0030】
この対比例のブッシュ3Eにおいては、脚部31eの先端がシートバックパネル51に当接することによりブッシュ3Eのがたつきが抑制可能な部分と、ロッド1を回転可能に抱え込む部分とが、ブッシュ3Eの軸長方向の同一箇所に纏めて設けられており、それら2つの部分は、軸長方向において区分されたかたちには設けられていない。このため、この対比例においては、寸法誤差などに起因して、脚部31eがシートバックパネル51に対して本来の当接力よりも強い力で当接し、矢印Nc方向に変形すると、凸状部32bがロッド1の外周面に強い力Fで圧接する。すると、ロッド1の回転の円滑性が損なわれる。これを回避すべく、脚部31eの先端がシートバックパネル51に当接しないようにすると、脚部31eが安定せず、がたつく虞が生じる。
これに対し、本実施形態のロッド取付け構造Aによれば、対比例において発生する前記不具合を適切に解消することが可能である。
【0031】
さらに、本実施形態によれば、ブッシュ3のロッド抱え込み部3aが、ロッド1の外周面の半分を超える領域を囲む状態でロッド1を抱え込んでいるため、ロッド1の確実な保持が可能である。その一方、シートバックパネル51寄りの部分は、開口部34が形成されているため、ロッド抱え込み部3aへのロッド1の組み込み作業は、開口部34を利用して容易に行なうことが可能であり、その作業性がよい。
また、ロッド1に大きな撓み変形を生じさせるような大きな荷重が発生した場合には、ロッド抱え込み部3aの開口部34からロッド1の一部分をシートバックパネル51側に変形または変位させて、前記荷重をいなすことも可能である。ロッド1は、リヤシートSの左右横幅寸法と略同等の長寸法であるため、本来的には、振動を生じ易いが、本実施形態においては、優れた振動抑制機能を得ることが可能である。
【0032】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両用シートへのロッド取付け構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0033】
上述の実施形態においては、本発明が意図するロッドとして、シートロック連動用のロッドが適用対象とされているが、本発明はこれに限定されない。車両用シートにブラケットを用いて取付けられ、かつ長手方向に延びる中心線周りに回転可能に設定されるロッドであれば、種々のロッドを適用対象とすることが可能である。たとえば、操作レバーが一端部に取付けられ、かつ他端部に適当な動作部材が取付けられており、前記操作レバーを操作すると回転し、前記動作部材が所定の動作を行なうように構成されたロッドを適用対象とすることができる。
【0034】
ロッドは、シートバックにかぎらず、たとえばシートクッションにブラケットを介して取付けられていてもよい。本願発明でいう車両用シートは、ベンチシートタイプのリヤシートに限定されず、それ以外のタイプのリヤシート、およびリヤシート以外の車両用シート(フロントシートなど)であってもよい。
したがって、ロッドを車両用シートに取付けるためのブラケットは、車両用シートのうち、シートバックパネルとは異なる部位に取付けられていてもよい。
また、ブラケットの具体的な形状、材質、サイズ、および数などは限定されない。
【0035】
本発明におけるブッシュは、ブッシュがたつき抑制部、およびロッド抱え込み部をそれぞれ少なくとも1つ以上具備した構成であればよい。ブッシュがたつき抑制部は、ブラケットおよび車両用シート(シートバックパネルなど)の双方に当接するようにしてこれらの相互間に挟まれた状態に設定される部位である。ロッド抱え込み部は、ブッシュがたつき抑制部とはロッドの長手方向に位置ずれして設けられ、かつロッドの長手方向断面視において、ロッドの外周面の半分を超える領域を囲むようにして前記ロッドを抱え込む一方、車両用シート寄りの部分は開口し、車両用シートには非当接の状態に設定される部位である。
ロッド抱え込み部とブッシュがたつき抑制部との間には、上述の実施形態のように、スリットを設けることが好ましいものの、スリットが設けられていなくてもよい。ブッシュの各部の具体的な形状、材質、サイズなども限定されない。
【符号の説明】
【0036】
A 車両用シートへのロッド取付け構造
S リヤシート(車両用シート)
1 ロッド
2 ブラケット
3 ブッシュ
3a ロッド抱え込み部
3b ブッシュがたつき抑制部
51 シートバックパネル(車両用シートの)