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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】機器コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20240805BHJP
   H01R 13/533 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01R13/46 301B
H01R13/533 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022146280
(22)【出願日】2022-09-14
(65)【公開番号】P2024041451
(43)【公開日】2024-03-27
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】東谷 昌伸
(72)【発明者】
【氏名】西原 真吾
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-192359(JP,A)
【文献】特開2022-002194(JP,A)
【文献】特開2001-248413(JP,A)
【文献】特開2015-082466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手機器に嵌合される機器コネクタであって、
前記相手機器に対向する一対の端子部と、
該一対の端子部を収容する合成樹脂製のハウジング体と、を備え、
前記各端子部は、前記相手機器に嵌合される機器側端子と、電線に接続される電線側端子と、前記機器側端子および前記電線側端子を接続するとともに柔軟性を有する接続導体と、を有し、
前記接続導体は、余長部を有して前記機器側端子側に向かって延びて形成され、
前記ハウジング体は、前記一対の端子部を収容するハウジング部と、該ハウジング部の内部に位置して前記接続導体同士を絶縁する絶縁壁と、を有し、
前記絶縁壁は、前記ハウジング部に比してモース硬度が低い材料を含んで構成されていることを特徴とする機器コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジング部は、ガラスを含む樹脂から構成され、
前記絶縁壁は、タルクを含む樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の機器コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジング部は、
前記相手機器に対する嵌合方向を軸とする筒状に形成されるとともに前記相手機器から離れた側に開口を有するハウジングと、
該ハウジングに支持されて前記開口を覆うカバーと、を有し、
前記絶縁壁は、前記ハウジングおよび前記カバーに対して別体に設けられて、前記カバーに支持されていることを特徴とする請求項1に記載の機器コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジング部は、
前記相手機器に対する嵌合方向を軸とする筒状に形成されるとともに前記相手機器から離れた側に開口を有するハウジングと、
該ハウジングに支持されて前記開口を覆うカバーと、を有し、
前記絶縁壁は、前記ハウジングおよび前記カバーに対して別体に設けられて、前記ハウジングに支持されていることを特徴とする請求項1または3に記載の機器コネクタ。
【請求項5】
前記絶縁壁は、一対の対向板と、該一対の対向板の間に設けられて前記一対の対向板を固定する固定部と、を有し、
前記カバーは、前記開口を覆う板状のカバー本体と、該カバー本体から前記相手機器に向かって板状に突出する立設板と、を有し、
前記絶縁壁は、前記一対の対向板の間に前記立設板が圧入されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の機器コネクタ。
【請求項6】
前記立設板は、前記相手機器側の端縁を切り欠いて形成されて、
前記一対の対向板の間に前記立設板が圧入された状態で、前記固定部を挿入させる切欠きを有していることを特徴とする請求項5に記載の機器コネクタ。
【請求項7】
前記絶縁壁は、一対の対向板と、該一対の対向板の間に設けられて前記一対の対向板を固定する固定部と、を有し、
前記ハウジングは、筒状に形成されたハウジング本体と、該ハウジング本体の内部を仕切って前記一対の端子部同士を絶縁するハウジング壁部を有し、
前記絶縁壁は、前記一対の対向板の間に前記ハウジング壁部が挿入されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の機器コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された電子機器として、例えばハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されたインバータやモータ等の機器筐体に取り付けられる機器用コネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された機器用コネクタは、一対の端子部と、一対の端子部を保持するハウジングと、を備える。
【0004】
各端子部は、電線の端末に接続された電線側端子と、機器に接続される機器側端子と、電線側端子および機器側端子を電気的に接続する筒状の接続導体と、を備える。機器側端子は機器の筐体に向かって前方に延びて形成され、電線側端子は電線に接続されて下方に延びて形成されている。接続導体は、機器側端子の後端に接続されて後方に延びて形成されている。接続導体は、軸方向の中央部に膨出部を設けた丸形編組線から構成されているとともに、軸方向に伸縮し易い特性を有して構成されている。
【0005】
このような従来の機器用コネクタは、例えば熱環境や通電に伴う電線の発熱に起因してハウジングが熱膨張(収縮)し、これに伴って、各端子部が軸方向(相手端子との嵌合方向)に押し引きされた場合に、接続導体が軸方向に伸縮しつつ距離変化を吸収し、機器側端子に対して軸方向に押し引きする力が付与されることを回避して、相手端子との嵌合状態が維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-82466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の機器用コネクタは、一対の端子部同士の絶縁を目的として、ハウジングの内部を仕切る仕切り壁を設けられる場合がある。この仕切り壁を含むハウジングはガラス繊維を含んだガラス繊維入り合成樹脂で構成されていることが一般的である。
【0008】
しかしながら、ガラス繊維入り合成樹脂は硬度が比較的高いことから、例えば車両の振動等に伴って、接続導体と仕切り壁(絶縁壁)とが接触した場合、接続導体が摩耗して摩耗粉が発生する虞がある。また、接続導体と仕切り壁とを接触しない程度に離間させた場合には、従来の機器用コネクタが離間方向に大型化してしまう。
【0009】
本発明は、接続導体の絶縁壁への摺動による摩耗粉発生の抑制を図った機器コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明に係る機器コネクタは、相手機器に嵌合される機器コネクタであって、前記相手機器に対向する一対の端子部と、該一対の端子部を収容する合成樹脂製のハウジング体と、を備え、前記各端子部は、前記相手機器に嵌合される機器側端子と、電線に接続される電線側端子と、前記機器側端子および前記電線側端子を接続するとともに柔軟性を有する接続導体と、を有し、前記接続導体は、余長部を有して前記機器側端子側に向かって延びて形成され、前記ハウジング体は、前記一対の端子部を収容するハウジング部と、該ハウジング部の内部に位置して前記接続導体同士を絶縁する絶縁壁と、を有し、前記絶縁壁は、前記ハウジング部に比してモース硬度が低い材料を含んで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続導体の絶縁壁への摺動による摩耗粉発生の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る機器コネクタを示す斜視図である。
図2】前記機器コネクタの縦断面図である。
図3】前記機器コネクタを構成する絶縁壁を示す斜視図である。
図4】前記機器コネクタを構成するハウジングを示す斜視図である。
図5】前記機器コネクタを構成するリアカバー(カバー)に樹脂壁が組み付けられた状態を示す斜視図である。
図6】前記リアカバーに前記樹脂壁を組み付ける様子を示す斜視図である。
図7】前記樹脂壁を正面から見た図である。
図8】前記機器コネクタの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を図1~7に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る機器コネクタ10を示す斜視図である。図2は前記機器コネクタ10の縦断面図である。図1、2に示すように、本実施形態に係る機器コネクタ10は、自動車等に配索されるワイヤハーネス1を構成するものであって、不図示の相手機器に嵌合可能に構成されている。
【0014】
ワイヤハーネス1は、図1、2に示すように、一対の端子部2、2を有するL字型の機器コネクタ10と、一対の端子部2、2に接続されるとともに機器コネクタ10から引き出される一対の電線11、11と、を備える。
【0015】
以下では、図2に示すように、機器コネクタ10と相手機器とが嵌合する嵌合方向を「前後方向X」と記し、「前後方向X」に直交する一方を「左右方向Y」と記し、「前後方向X」に直交する他方を「上下方向Z」と記す場合がある。また、「前後方向X」のうち、機器コネクタ10が相手機器に近付く方向を「前方X1」と記し、これとは反対方向を「後方X2」と記す場合がある。
【0016】
機器コネクタ10は、図1、2に示すように、相手機器に嵌合する一対の端子部2、2と、該一対の端子部2、2を支持する合成樹脂製のハウジング体3と、一対の電線11、11を一括で外装するシールド体12と、相手機器の筐体(以下では相手筐体と記す場合がある)に締結される導電性のシェル部材9と、を備える。
【0017】
一対の端子部2、2は、図2に示すように、左右方向Yに並んで設けられている。各端子部2は、図2に示すように、相手機器に嵌合される機器側端子21と、各電線11に接続される電線側端子22と、編組導体から構成されて機器側端子21および電線側端子22を接続する接続導体23と、を備えてL字型に構成されている。
【0018】
機器側端子21は、図2に示すように、機器側端子本体21Aと、該機器側端子本体21Aの前方X1に連続して相手機器に嵌合する筒状の相手接続部21Bと、機器側端子本体21Aの後方X2に連続して接続導体23の第1延在部23Aを加締め接続する機器側導体加締め部21Cと、を備える。相手接続部21Bおよび機器側導体加締め部21Cは、同軸上にあり、前後方向Xに延在して設けられている。このような機器側端子21は、相手接続部21Bが機器側導体加締め部21Cの前方X1に位置する格好で、相手接続部21Bが後述するハウジング部4の端子支持部材7に支持されるように構成されている。
【0019】
また、機器側端子21は、車両の振動等により、相手機器を介して相手接続部21Bに外力が作用したとしても、接続導体23の余長部23Cが変形して当該外力を吸収することにより、相手機器との嵌合状態が維持されるようになっている。
【0020】
電線側端子22は、図2に示すように、電線側端子本体22Aと、該電線側端子本体22Aの上端に連続して設けられて接続導体23の第2延在部23Bを加締め接続する電線側導体加締め部22Bと、電線側端子本体22Aの下端に連続して各電線11を加締め接続する電線接続部22Cと、を備える。電線側端子本体22Aは、電線側導体加締め部22Bの下方Z2に延びる第1部分221と、電線接続部22Cの上方Z1に延びる第2部分222と、第1部分221および第2部分222に連続するとともに前後方向Xに延在する第3部分223と、を一体に備える。この電線側端子22は、電線側導体加締め部22Bの前方X1に、電線接続部22Cが位置するように構成されている。このような電線側端子22は、電線側導体加締め部22Bが、電線接続部22Cの上方Z1かつ後方X2に位置する格好で、後述するハウジング40の端子挿通部43に挿通されて支持される。
【0021】
接続導体23は、図2に示すように、前後方向Xに延在する第1延在部23Aと、上下方向Zに延在する第2延在部23Bと、第1延在部23Aおよび第2延在部23Bに連続するとともに下方Z2に湾曲する余長部23Cと、を備えて構成されている。第1延在部23Aにおける(接続導体23の)一端部は、相手機器に向かって延びた状態で機器側端子21の機器側導体加締め部21Cに加締め接続されている。第2延在部23Bおける(接続導体23の)他端部は、上方Z1に向かって延びた状態で電線側端子22の電線側導体加締め部22Bに加締め接続されている。このような接続導体23は、余長部23Cが、後述する絶縁壁5と近接する位置(接触可能な位置)に設けられている。
【0022】
ハウジング体3は、図2に示すように、一対の端子部2、2を収容するハウジング部4と、該ハウジング部4の内部に位置して一対の端子部2、2の各接続導体23同士を絶縁する絶縁壁5と、を備える。
【0023】
ここで、ハウジング部4を構成する(後述の)ハウジング40、リアカバー6(カバー)、端子支持部材7およびフロント部材8は、それぞれがガラス繊維を含んだガラス繊維入り強化樹脂(ガラスを含む樹脂)により構成され、絶縁壁5はタルクを含んだタルク入り強化樹脂(タルクを含む樹脂)により構成されている。即ち、ハウジング体3は、絶縁壁5のみがタルク入り強化樹脂で構成されている。
【0024】
本実施形態において、絶縁壁5を構成するタルク入り強化樹脂は、科学名:ポリフェニレンサルファイド、含有量(%):30-55、科学名:炭酸カルシウム、含有量(%):含有量(%)35-45、科学名:ウォラストナイト(ケイ酸カルシウム、含有量(%):10-25、科学名:結晶質シリカ、含有量(%):0.2未満を含んで構成されている。
【0025】
また、ガラス繊維入り強化樹脂に含まれたガラスはモース硬度が5.5前後であり、タルク入り強化樹脂に含まれたタルクはモース硬度が1であり、タルク入り強化樹脂は、ガラス繊維入り強化樹脂に比して金属への攻撃性が低い。このように本実施形態では、モース硬度が低い材料としてタルクが用いられている。また、タルク入り強化樹脂は表面平滑性が高く、金属への攻撃性が充分に抑制されるようになっている。
【0026】
ハウジング部4は、図2、3に示すように、前後方向Xに延在する筒状のハウジング40と、該ハウジング40の後端に支持されるリアカバー6(カバー)と、一対の端子部2、2をハウジング40に支持させる端子支持部材7(図2に示す)と、ハウジング40の前端に支持されるフロント部材8(図2に示す)と、を備える。図3において、端子支持部材7およびフロント部材8は省略されている。
【0027】
ハウジング40は、図4に示すように、前後方向Xに延在する筒状のハウジング本体41と、該ハウジング本体41の下方Z2に位置して一対の電線11、11をそれぞれ挿通させる一対の電線挿通部42、42と、該一対の電線挿通部42、42およびハウジング本体41の間に位置して各電線側端子22を挿通させる端子挿通部43と、該端子挿通部43の左右方向Yの両側に設けられて後述するシェル部材9にボルト締結されるハウジング側締結部44と、を備える。
【0028】
ハウジング本体41は、図4に示すように、左右方向Yに長い楕円形状に形成されているとともに、前方X1に開口する前方開口部4Fおよび後方X2に開口する後方開口部4B(開口)を有する筒状部45と、該筒状部45の外面に凸状に形成されて後述するリアカバー6の係止部63に係止される4個の係止受け部46(図4では2個のみ示す)と、該筒状部45の内部を左右方向Yに仕切る隔壁47(ハウジング壁部)と、4個(複数)のリブ48と、を備える。
【0029】
筒状部45は、図4に示すように、上壁45Aと、該上壁45Aに対向する下壁45Bと、上壁45Aおよび下壁45Bに連続して左右方向Yに対向する一対の側壁45C、45Cと、を備える。
【0030】
隔壁47は、図4に示すように、筒状部45の上壁45Aおよび下壁45Bに連続して構成されている。この隔壁47は、後述する絶縁壁5の一対の対向板51、51の間に挿入可能な厚みを有して構成されているとともに、隔壁47の後端部分47Bが絶縁壁5の一対の対向板51、51の間に挿入されるようになっている。
【0031】
4個(複数)のリブ48は、図4に示すように、筒状部45の下壁45Bから上方Z1に突出しかつ前後方向Xに延在する凸状に形成されている。4個のリブ48は、隔壁47の左右方向Yの両側に2個ずつ設けられている。
【0032】
リアカバー6は、図5、6に示すように、ハウジング本体41の後方開口部4Bを覆う板状のリアカバー本体61(カバー本体)と、該リアカバー本体61から前方X1に突出して筒状部45に挿入される筒状の被挿入部62と、ハウジング本体41の係止受け部46を係止する4個の係止部63と、絶縁壁5を圧入させる被圧入構造6Aと、を備える。
【0033】
4個の係止部63は、図5、6に示すように、リアカバー本体61の左右方向Yの各端縁において、上下方向Zに離間して設けられている。各係止部63は、リアカバー本体61の左右方向Yの各端縁から前方X1に向かって延びて形成されているとともに、筒状部45の各係止受け部46を係止可能なU字状に形成されている。
【0034】
被圧入構造6Aは、図6に示すように、リアカバー本体61から前方X1に立設して設けられて後述する絶縁壁5の一対の対向板51、51の間に圧入される板状の被圧入部64(立設板)と、該被圧入部64に形成されて絶縁壁5の固定部52を挿入させる切欠き65と、該被圧入部64の左右方向Yの両側に設けられて絶縁壁5の各対向板51を案内する一対の枠状部66A、66Bと、を備える。
【0035】
被圧入部64は、後述する絶縁壁5の一対の対向板51、51の間隔より僅かに大きい厚みを有して、一対の対向板51、51の間に圧入されるように構成されている。この被圧入部64の前端64Fは、図6に示すように、後述する一対の枠状部66A、66Bの前端より後方X2に位置している。
【0036】
切欠き65は、被圧入部64の上下方向Zの中央部において、被圧入部64の前端64Fを矩形状に切り欠いて形成されている。切欠き65の上下寸法は、絶縁壁5の固定部52の上下方向Zの寸法より僅かに大きい寸法となるように形成され、切欠き65の内部に固定部52が挿入されるように構成されている。
【0037】
一対の枠状部66A、66Bは、それぞれ、コ字型に形成されているとともに、前後方向Xに延在して上下方向Zに対向する一対の第1端面660、660と、該一対の第1端面660、660の各後端に連続して上下方向Zに延在する第2端面661と、を有している。また、一対の枠状部66A、66Bは、左右方向Yに離間して設けられ、互いの間に、ハウジング40の隔壁47が挿入されるように構成されている。また、一対の枠状部66A、66Bは、絶縁壁5が被圧入構造6Aに圧入される際に、絶縁壁5の一対の対向板51、51の各端面が各一対の第1端面660、660に近接され、一対の対向板51、51を後方X2に案内するように構成されている。
【0038】
端子支持部材7は、図2に示すように、各端子部2の機器側端子21を挿通させる一対の円筒部71、71と、該一対の円筒部71、71の後端を支持する支持板部72と、を備える。また、図2に示すように、各円筒部71に各端子部2の機器側端子21が挿通された状態で、各円筒部71の前端は、各機器側端子21の前端より前方X1に位置している。即ち、各円筒部71に各端子部2の機器側端子21が挿通された状態で、各機器側端子21は、各円筒部71の内部に位置し外部に露出していない。
【0039】
フロント部材8は、図2に示すように、端子支持部材7の支持板部72の前方X1に対向されるフロント板状部81と、該フロント板状部81を貫通して端子支持部材7の一対の円筒部71、71を挿通させる一対の挿通孔82、82(図2では1個の挿通孔82のみ示す)と、フロント板状部81の外周縁に連続する筒状に形成されてハウジング本体41の前端部に支持されるフロント筒状部83と、を備える。
【0040】
また、図2に示すように、フロント部材8がハウジング本体41に支持された状態で、端子支持部材7の各円筒部71は、フロント板状部81の一対の挿通孔82、82に挿通されて外部に露出して設けられている。
【0041】
シェル部材9は、図2、3に示すように、矩形板状に形成されてリアカバー6の後方X2に対向するシェル壁部91と、該シェル壁部91の周縁から前方X1に立設するシェル周壁92と、該シェル周壁92の前端から左右方向Yに延出されて相手筐体に締結される一対のシェル側締結部93(図3に示す)と、を備え、前方X1および下方Z2に開口するように構成されている。各シェル側締結部93は相手筐体に重なってボルト締結されるように構成されている。
【0042】
また、シェル部材9には、シェル壁部91から前方X1に突出する一対の螺子部(不図示)が設けられている。各螺子部は、前方X1に立設する柱状に形成されているとともに内部に雌螺子が切られて構成されている。各螺子部は、ハウジング40のハウジング側締結部44および後述するシールド体12のシールド側締結部122の後方X2に設けられ、ハウジング側締結部44およびシールド側締結部122にボルトが挿通した状態で、ボルト締結されるように構成されている。
【0043】
絶縁壁5は、図7に示すように、矩形板状に形成されて左右方向Yに対向する一対の対向板51、51と、該一対の対向板51、51を互いに固定する固定部52と、を一体に備える。
【0044】
一対の対向板51、51の離間距離、即ち固定部52の左右方向Yの寸法は、ハウジング40の隔壁47の後端部分47Bが挿入可能な寸法であるとともに、リアカバー6の被圧入部64が圧入される程度の寸法に形成されている。
【0045】
固定部52は、図7に示すように、一対の固定部材52A、52Aを有して構成されている。一対の固定部材52A、52Aは、上下方向Zに離間して設けられている。各固定部材52Aは前後方向Xに延在して設けられている。
【0046】
シールド体12は、図1に示すように、導電性のシールド部材12Aと、一対の電線11、11を一括で覆う筒状の編組導体12Bと、該編組導体12Bの上端部を加締めて編組導体12Bをシールド部材12Aに固定する加締めリング12Cと、一対の電線11、11それぞれに装着されて、シールド部材12Aを各電線11の所定位置に位置決める位置決め部材12Dと、を備える。
【0047】
シールド部材12Aは、図2に示すように、ハウジング40に設けられた一対の電線挿通部42、42を挿通させる筒状のシェル本体120と、該シェル本体120の前端縁に連続するとともに上方Z1に延出される延出片121と、該延出片121の左右方向Yの両側に設けられてハウジング側締結部44に重なってボルトが挿通されるシールド側締結部122と、を備える。
【0048】
このようなシールド体12は、シールド部材12Aと各電線11の編組導体12Bとが電気的に接続された状態で、シールド部材12Aは、シェル部材9を介して、相手筐体に電気的に接続される。これにより、制御信号等を伝送する各電線11から外部に漏洩する電気的なノイズ、または外部から流入される電気的なノイズを遮蔽するシールド回路が構成される。
【0049】
このような機器コネクタ10において、ハウジング40に、絶縁壁5およびリアカバー6を組み付ける手順について、図6を参照して説明する。まず、ハウジング40、絶縁壁5およびリアカバー6を、それぞれ、射出成形で成形する。ハウジング40、絶縁壁5およびリアカバー6は別体成形される。また、ハウジング40およびリアカバー6は、ガラス繊維を含んだガラス繊維入り強化樹脂を用いて成形し、絶縁壁5はタルクを含んだタルク入り強化樹脂を用いて成形する。
【0050】
続いて、絶縁壁5をリアカバー6に組み付ける場合には、図6に示すように、絶縁壁5の各対向板51、51をリアカバー6の各枠状部66A、66Bに近付けて、各対向板51、51の各端面を各第1端面660に近接させるとともに、一対の対向板51、51間に被圧入部64が圧入される。
【0051】
圧入が進んで、切欠き65の内部に絶縁壁5の固定部52が挿入され、一対の枠状部66A、66Bの内部に一対の対向板51、51それぞれが位置付けられる。このようにして、絶縁壁5がリアカバー6に組み付けられる(支持される)。
【0052】
また、機器側端子21、電線側端子22および接続導体23が互いに接続され、所定位置に収容された状態で、図6に示すように、リアカバー6のリアカバー本体61がハウジング40の後方開口部4Bに対向する向きで、リアカバー6に組み付けられた絶縁壁5をハウジング40の隔壁47に近付ける。絶縁壁5の一対の対向板51、51間および一対の枠状部66A、66B間に、隔壁47の後端部分47Bが挿入される。このようにして、絶縁壁5はハウジング40に支持される。
【0053】
これと略同時に、リアカバー6の各係止部63が、ハウジング40の係止受け部46を係止する。このようにして、ハウジング40への絶縁壁5およびリアカバー6の組み付けが完了する。ハウジング40への絶縁壁5およびリアカバー6の組み付けが完了した組付け状態で、絶縁壁5は、リアカバー6およびハウジング40の両者に支持されている。また、組付け状態で、各接続導体23の余長部23Cは、絶縁壁5の左右方向Yの両側において、絶縁壁5に近接した位置に(接触可能な位置に)設けられている。
【0054】
上述した実施形態によれば、絶縁壁5は、ハウジング部4に比してモース硬度が低い材料であるトルクを含んで構成されている。即ち、絶縁壁5は、トルクを含んで構成されていることにより、金属への攻撃性が低減される。これにより、自動車の振動等により接続導体23が絶縁壁5に摺動した際における摩耗粉発生の抑制を図ることができる。また、絶縁壁5がトルクを含んで構成されていることにより、接続導体23と絶縁壁5とを接近させることができるから、機器コネクタ10において一対の端子部2、2が並ぶ方向(左右方向Y)の大型化の抑制を図ることができる。
【0055】
また、ハウジング部4は、ガラス繊維入り強化樹脂(ガラスを含む樹脂)から構成され、絶縁壁5は、タルク入り強化樹脂(タルクを含む樹脂)から構成されている。即ち、タルクを含む樹脂は表面平滑性が高く、より一層、摩耗粉発生の抑制を図ることができる。また、高価なタルクを絶縁壁5にのみ用いることにより、材料費の抑制を図ることができる。
【0056】
また、ハウジング部4は、相手機器に対する前後方向X(嵌合方向)を軸とする筒状に形成されるとともに後方X2(相手機器から離れた側)に後方開口部4B(開口)を有するハウジング40と、該ハウジング40に支持されて後方開口部4Bを覆うリアカバー6(カバー)と、を有し、絶縁壁5は、ハウジング40およびリアカバー6に対して別体に設けられて、リアカバー6に支持されている。これによれば、良好な組立て作業性を確保しつつ、接続導体23が絶縁壁5に摺動した際における摩耗粉発生の抑制を図ることができる。
【0057】
また、絶縁壁5は、ハウジング40およびリアカバー6に対して別体に設けられて、ハウジング40に支持されている。絶縁壁5が、ハウジング40およびリアカバー6の両者に支持されている場合には、両者により、絶縁壁5が前後方向Xに挟まって支持される。これによれば、絶縁壁5は安定した状態で両者に支持される。
【0058】
また、絶縁壁5は、一対の対向板51、51と、該一対の対向板51、51の間に設けられて一対の対向板51、51を固定する固定部52と、を有し、リアカバー6(カバー)は、後方開口部4B(開口)を覆う板状のリアカバー本体61(カバー本体)と、該リアカバー本体61から相手機器に向かって板状に突出する被圧入部64(立設板)と、を有し、絶縁壁5は、一対の対向板51、51の間に被圧入部64が圧入されるように構成されている。これによれば、がたつきを抑制しつつ、作業性よく絶縁壁5をリアカバー6に組み付けることができる。
【0059】
また、被圧入部64(立設板)は、相手機器側の端縁を切り欠いて形成されて、一対の対向板51、51の間に被圧入部64が圧入された状態で、固定部52を挿入させる切欠き65を有している。これによれば、自動車の振動等が生じても、絶縁壁5のリアカバー6に対する位置ずれを抑制することができる。
【0060】
また、絶縁壁5は、一対の対向板51、51と、該一対の対向板51、51の間に設けられて一対の対向板51、51を固定する固定部52と、を有し、ハウジング40は、筒状に形成されたハウジング本体41と、該ハウジング本体41の内部を仕切って一対の端子部2、2同士を絶縁する隔壁47(ハウジング壁部)を有し、絶縁壁5は、一対の対向板51,51の間に隔壁47が挿入されるように構成されている。これによれば、前後方向Xにおいて、より一層、絶縁壁5の位置ずれを抑制することができる。
【0061】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0062】
前記実施形態では、リアカバー6は、絶縁壁5を圧入させる被圧入構造6Aを備え、絶縁壁5は、圧入により、リアカバー6の被圧入構造6Aに固定されているが、本発明はこれに限定されるものではない、絶縁壁5は、リアカバー6に接着剤を用いて固定されていてもよい。この場合には、被圧入構造6Aに加えさらに絶縁壁5を接着固定してもよいし、被圧入構造6Aとは別の固定構造を有して、絶縁壁5をリアカバー6に接着固定してもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、絶縁壁5は、ハウジング40およびリアカバー6の両方に支持されているが本発明はこれに限定されるものではない。絶縁壁は、リアカバー6のみに支持されていてもよいし、ハウジング40のみに支持されていてもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、絶縁壁5は、ハウジング40およびリアカバー6とは別体に構成されているが本発明はこれに限定されるものではない。絶縁壁15は、図8に示すように、リアカバーに二次成形されたものであり、絶縁壁15が一体に成形されたリアカバー16が構成されていてもよい。即ち、機器コネクタの製造方法は、リアカバー6(カバー)を成形する一次成形工程と、絶縁壁15とリアカバー6とを一体に成形する二次成形工程と、を含むものであってもよい。
【0065】
或いは、絶縁壁は、ハウジング40に二次成形されたものであり、絶縁壁5およびハウジング40が一体に成形されていてもよい。即ち、機器コネクタの製造方法は、ハウジング40を成形する一次成形工程と、絶縁壁とハウジング40とを一体に成形する二次成形工程と、を含むものであってもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、機器コネクタ10は、一対の端子部2、2と、ハウジング部4および樹脂壁5を含むハウジング体3と、一対の電線11、11を一括で外装するシールド体12と、導電性のシェル部材9と、を備えて構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。機器コネクタは、一対の端子部2、2と、ハウジング部4および樹脂壁5を含むハウジング体3と、を備えて構成されていればよい。シールド体12およびシェル部材9は省略してもよく、絶縁壁は、ハウジング部に比してモース硬度が低い材料を含んで構成されていればよい。
【0067】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
10 機器コネクタ
2、2 一対の端子部
21 機器側端子
22 電線側端子
23 接続導体
23C 余長部
3 ハウジング体
4 ハウジング部
40 ハウジング
41 ハウジング本体
47 隔壁(ハウジング壁部)
4B 後方開口部(開口)
5 絶縁壁
51、51 一対の対向板
52 固定部
6 リアカバー(カバー)
61 リアカバー本体(カバー本体)
64 被圧入部(立設板)
65 切欠き
X 前後方向(嵌合方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8