(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】回転台、及び風力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
F03D7/04 K
(21)【出願番号】P 2018216439
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-11-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】520320022
【氏名又は名称】津田 訓範
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 訓範
(72)【発明者】
【氏名】古藤 芳久
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198580(WO,A1)
【文献】特開2015-161172(JP,A)
【文献】特公平7-62471(JP,B2)
【文献】特許第4749504(JP,B1)
【文献】特開2017-25713(JP,A)
【文献】特開2001-50149(JP,A)
【文献】特開2006-307653(JP,A)
【文献】特開平3-222872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板、下板、上板に固定された外輪、及び下板に固定された内輪を備え、風力発電装置を回転可能に支持するためのベアリング部と、
風力発電装置の近傍の風向及び風速を計測可能なように設置された風向風速計から送信される、風力発電装置の近傍の風向及び風速に関する情報に基づいて、ベアリング部の外輪の回転角度を決定する制御装置と、
制御装置により決定された回転角度に基づいて、ベアリング部の外輪を回転させるモータ部と、
ベアリング部が向いている方向を検出し、検出した方向に関する情報を制御装置に送信するセンサ部と
、
ベアリング部の回転軸と略平行な回転軸を有するスリップリング部と
を備え、
制御装置が、風向風速計から送信される風向及び/又は風速に関する情報に基づいて、ベアリング部の外輪の回転速度を決定し、
モータ部が、制御装置により決定された回転速度に基づいてベアリング部の外輪を回転させ、
制御装置が、風向風速計から送信される風向に関する情報と、センサ部から送信される前記方向に関する情報とに基づいて、ベアリング部の外輪の回転方向を決定し、
モータ部が、制御装置により決定された回転方向に沿ってベアリング部の外輪を回転させ
、
風力発電装置により発電された電力を、スリップリング部を介して外部に出力することが可能な、
回転台。
【請求項2】
制御装置及びモータ部が、上板と下板の間において、ベアリング部の回転軸を挟んで略対向するように配置されている、
請求項1に記載の回転台。
【請求項3】
ベアリング部の上板と連動して回転する支持板と、
支持板と連結され、ベアリング部の上板と連動して回転するフランジと
を備え、
フランジは、風力発電装置と連結され、風力発電装置を支持するものである、
請求項1又は2に記載の回転台。
【請求項4】
センサ部が、デジタルコンパスを含む、
請求項1~3のいずれかに記載の回転台。
【請求項5】
スリップリング部が、スリップリング部の径方向に並べて配置された複数の導体リング、及び、スリップリング部の側面において導体リングと電気的に接続される複数のブラシを有
し、
ブラシが、1mm以上の幅を有する、
請求項
1~4のいずれかに記載の回転台。
【請求項6】
スリップリング部の上部に、風力発電装置により発電された電力を入力するための複数の入力用端子が備えられており、
複数のブラシが、入力用端子に入力された電力を外部へ出力するための端子と電気的に接続される外部出力用ブラシ、及び、入力用端子に入力された電力を回転台の電源へ出力するための端子と電気的に接続される電源出力用ブラシを含む、
請求項
5に記載の回転台。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の回転台と、
回転台によって回転可能に支持される風力発電装置と、を備え、
風力発電装置が、風洞を有するものである、
風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転台、及び風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から、クリーンエネルギーを利用した発電装置への関心が高まってきている。このような発電装置の一つとして、風力発電装置が挙げられる。風力発電装置は、風速により羽根車を回転させ、羽根車の回転によって得られる回転エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。
【0003】
風力発電装置の発電量は、風速の3乗に比例するといわれており、発電量や発電効率を向上させるために、種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、風洞を有する風力発電装置を複数備えた風力発電装置の集合体が記載されている。特許文献1に記載の集合体は、風力発電装置を支持する支柱が軸受けを介して回転可能なように設けられており、風洞の外周面が受ける風速によって支柱が回転することにより、風力発電装置の吸気口が風の吹いてくる方向に向かうように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている風力発電装置の集合体は、風の吹いてくる方向に風力発電装置の吸気口を向けることが可能なように設計されているが、あくまで、風洞の外周面が受ける風速を利用して吸気口の向きを変えるものであるため、高い精度で吸気口の向きを制御することができず、風の吹いてくる方向と風力発電装置の吸気口の向きとの間に多少のズレが生じてしまっていた。その結果、風洞の内壁に衝突した風によって風洞の内部に乱気流が生じて、風の増速効果を十分に得ることができなかった。また、風洞を備えない風力発電装置に適用することは難しかった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題の一つは、風洞の有無に関わらず、高い精度において、風力発電装置を風が吹いてくる方向に向けることが可能な、回転台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、以下の通りである。
【0008】
[1]風力発電装置を回転可能に支持するためのベアリング部と、風力発電装置の近傍の風向及び風速を計測可能なように設置された風向風速計から送信される、風力発電装置の近傍の風向及び風速に関する情報に基づいて、回転角度を決定する制御装置と、制御装置により決定された回転角度に基づいて、ベアリング部を回転させるモータ部と、を備える回転台。
【0009】
[2]制御装置が、さらに、風向風速計から送信される風向及び/又は風速に関する情報に基づいて、ベアリング部の回転速度を決定し、モータ部が、制御装置により決定された回転速度に基づいてベアリング部を回転させる、上記[1]に記載の回転台。
【0010】
[3]さらに、ベアリング部が向いている方向を検出し、検出した方向に関する情報を制御装置に送信するセンサ部を備え、制御装置が、風向風速計から送信される風向に関する情報と、センサ部から送信される前記方向に関する情報との比較に基づいて、ベアリング部の回転方向を決定し、モータ部が、制御装置により決定された回転方向に沿ってベアリング部を回転させる、上記[1]又は[2]に記載の回転台。
【0011】
[4]さらに、ベアリング部の回転軸と略平行な回転軸を有するスリップリング部を備え、風力発電装置により発電された電力を、スリップリング部を介して外部に出力することが可能な、上記[1]~[3]のいずれかに記載の回転台。
【0012】
[5]スリップリング部が、スリップリング部の径方向に並べて配置された複数の導体リング、及び、スリップリング部の側面において導体リングと電気的に接続される複数のブラシを有する、上記[4]に記載の回転台。
【0013】
[6]スリップリング部の上部に、風力発電装置により発電された電力を入力するための複数の入力用端子が備えられており、複数のブラシが、入力用端子に入力された電力を外部へ出力するための端子と電気的に接続される外部出力用ブラシ、及び、入力用端子に入力された電力を回転台の電源へ出力するための端子と電気的に接続される電源出力用ブラシを含む、上記[5]に記載の回転台。
【0014】
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の回転台と、回転台によって回転可能に支持される風力発電装置と、を備え、風力発電装置が、風洞を有するものである、風力発電システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる回転台によれば、風力発電装置の近傍の風向及び風速を計測可能なように設置された風向風速計から送信される、風力発電装置の近傍の風向及び風速に関する情報に基づいて、回転台の回転角度を制御することにより、風洞の有無に関わらず、高い精度において、風力発電装置を風が吹いてくる方向に向けることができる。その結果として、風力発電装置の発電量および発電効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる、回転台の一例を示す上面図である。
【
図2】
図1に示すX-X線に沿って切断した場合における、回転台の一例を示す部分断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる、回転台の一例を示す部分断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる、回転台の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明するが、本発明は図面及び実施の形態に限定されるものではない。また、本発明は、以下に記載する好ましい数値や構成に限定されるものではない。
【0018】
[回転台]
以下、回転台について、詳細に説明をする。
図1は、本発明の実施の形態にかかる、回転台の一例を示す上面図である。また、
図2は、
図1に示すX-X線に沿って切断した場合における、回転台の一例を示す部分断面図である。
図1及び
図2に示す回転台1は、ベアリング部2、モータ部3、制御装置4、スリップリング部5、支持板6、フランジ7、及びカバー8を備えている。
【0019】
ベアリング部2は、回転軸Lを有する二重構造型のボールベアリングである。二重構造型であるため、ベアリング部2に作用するモーメントに強く、回転台1の耐久性や安全性を向上させることができる。
【0020】
ベアリング部2は、内輪2a、外輪2b、複数の上部転動体2c、複数の下部転動体2d、下板2e、及び上板2fを備えている。上部転動体2c及び下部転動体2dは、回転軸Lに沿って回転し、内輪2aに対して外輪2bが回転可能なように設けられている。内輪2aは、下板2eに固定されているが、上板2fには固定されていない。外輪2bは、上板2fとは固定されているが、下板2eには固定されていない。よって、外輪2bの回転に伴って上板2fは回転するが、内輪2a及び下板2eは回転しない。
【0021】
図1では、ベアリング部2はフランジ7に隠されているので図示されていないが、ベアリング部2を上面視した場合、その形状は、中心孔9が中心に位置する略ドーナツ状である。なお、図1において、回転軸Lは、中心孔9の略中心を通る軸である。
【0022】
なお、ベアリング部2として、上記のような二重構造型のボールベアリングに代えて、例えば、ローラーベアリング、テーパーローラーベアリング、又はニードルベアリング等の公知のベアリングを用いても良い。
【0023】
モータ部3は、外輪2bを回転させるための動力を外輪2bに伝達できるように設けられている。モータ部3に用いられるモータの種類としては、特に制限はされず、例えば、ブラシモータ、ブラシレスモータ、ステッピングモータ等を用いることができる。これらの中でも、耐久性が高く、効率的に高トルクの出力が可能という観点から、ブラシレスモータを用いることが好ましい。
【0024】
モータ部3の動作は、後述の制御装置4によって制御される。モータ部3は、例えば、制御装置4が決定した回転角度、回転速度、回転方向等に基づいて、動作することが好ましい。
【0025】
制御装置4は、風力発電装置の近傍の風向及び風速を計測可能なように設置された風向風速計から、風力発電装置の近傍の風向及び風速に関する情報を受信する。制御装置4と風向風速計とは、有線で接続されていても良いし、無線で接続されていても良い。
【0026】
風向風速計は、風力発電装置の近傍の風向及び風速を計測可能なものであれば、特に制限はされず、風車形式等の従来公知のものを用いることができる。駆動系を持たないためにメンテナンスの手間が掛からないという観点からは、超音波式の風向風速計を用いることが好ましい。
【0027】
風向風速計が設置される風力発電装置の近傍とは、特に制限はされないが、例えば、風力発電装置の羽根車から半径3m以内の位置であることが好ましく、半径2m以内の位置であることがより好ましい。また、風力発電装置が風洞を備えている場合、風向風速計を設置する場所は、風洞の吸気口から半径3m以内の位置であることが好ましく、半径2m以内の位置であることがより好ましい。上記のような位置の風向及び風速を計測することにより、風力発電装置の向きをより適切な方向へと向けることが可能になり、結果として、風力発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0028】
制御装置4は、受信した風向及び風速に関する情報に基づいて、回転台1の回転角度(外輪2bの回転角度)を決定する。制御装置4は、例えば、回転台1に支持される風力発電装置の羽根車が風向に略正対するよう、回転角度を決定することが好ましい。このような構成により、風力発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0029】
また、制御装置4は、風速が所定の閾値を超えるほど大きくて、風力発電装置への負担が過大になる場合、例えば、回転台1に支持される風力発電装置の羽根車が風向に略正対しないように、回転角度を決定することが好ましい。このような構成により、風力発電装置が故障する可能性を低下させ、また、安全性を向上させることができる。なお、上記所定の閾値は、風力発電装置の大きさや重量、耐久性等によって、適宜設定することができるが、例えば、風速30m/sとすることが好ましく、風速20m/sとすることがより好ましい。
【0030】
なお、上記所定の閾値よりもさらに風速が大きくなった場合(例えば、風速40m/s以上、好ましくは風速60m/s以上)、風力発電装置が受ける非常に強い横風などによって、風力発電装置が破壊されることを防ぐため、吸気口の向き等を、ゆっくりと風が吹いてくる方向に向けるよう制御することが好ましい。
【0031】
制御装置4は、受信した風向及び風速に関する情報に基づいて、回転台1の回転速度(外輪2bの回転速度)を決定することが好ましい。例えば、風速が小さい場合は、より迅速に羽根車を風向と略正対させて、発電効率を向上させることが好ましい。また、風速が大きい場合は、風力発電装置や回転台が風によって受ける負担を軽減し、故障の発生率を低下させるため、回転速度を遅くすることが好ましい。
【0032】
なお、回転台1は、さらに、ベアリング部2が向いている方向を検出し、検出した方向に関する情報を制御装置4に送信可能なセンサ部(図示せず)を備えていることが好ましい。センサ部としては、特に制限はされないが、例えば、風力発電装置から送られる電力(電流)による磁気の影響を受けずに、正確な方向を検出できるという観点から、デジタルコンパスが好ましい。
【0033】
制御装置4は、風向風速計から送信された風向及び風速に関する情報と、センサ部から送信された方向に関する情報との比較に基づいて、回転台1の回転方向(外輪2bの回転方向)及び回転角度を決定することが好ましい。このような構成により、右回り又は左回りのどちらがより適切であるかを判断し、より迅速に羽根車を風向と略正対させて、発電効率を向上させることができる。
【0034】
なお、回転台1は、さらに、モータ部3及び制御装置4に電力を供給するための電源回路(図示せず)及びバッテリ(図示せず)を備えていることが好ましい。バッテリは、後述のスリップリング部5を介して送電される、風力発電装置によって発電された電力を蓄電可能なように構成されていることが好ましい。
【0035】
スリップリング部5は、回転台1及び回転台1に支持される風力発電装置の回転に伴う不具合を生じさせることなく、風力発電装置により発電された電力を、スリップリング部5を介して外部に出力可能なように設けられている。スリップリング部5としては、従来公知のスリップリングを用いることができるが、例えば、
図1に示すようなSR型のスリップリングであることが好ましい。
【0036】
スリップリング部5は、例えば、ベアリング部2の回転軸Lと略平行な回転軸を有し、好ましくは回転軸Lと略同一な回転軸を有する。また、スリップリング部5は、スリップリング部5の径方向(スリップリング部5の回転軸に沿う方向)に沿って配置された複数の導体リング、及び、スリップリング部の側面において導体リングと電気的に接続される複数のブラシを有する構造であることが好ましい。
【0037】
スリップリング部5の上部には、風力発電装置から送電される電力を入力するための1以上の入力端子が備えられている。各導体リングは、例えば、それぞれに対応する入力端子と電気的に接続されており、それぞれが単独で360度回転可能な構造である。
【0038】
導体リングの側面には、1以上のブラシが設けられており、導体リングとブラシとは電気的に接続されている。導体リングが回転する場合、ブラシは回転をしないが、導体リングとブラシとの電気的接続は保たれる。また、ブラシは、電力を外部へと出力するための外部出力用端子と電気的に接続されている。このような構造により、入力端子側が回転状態にあっても、風力発電装置から入力端子に接続される送電ケーブルが絡まる等の不具合を生じることなく、外部へ正常に電力を出力することが容易になる。
【0039】
ブラシの幅(スリップリング部5の径方向における長さ)としては、特に制限はされないが、例えば、導体リングの回転による通電への影響を低下させ、また、導体リング及びブラシの接点の摩耗を低減させるという観点からは、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。一方で、例えば、省スペース性の観点からは、ブラシの幅は、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。
【0040】
また、スリップリング部5は、最終的に外部出力用端子へと電力を出力する入力端子(外部出力用入力端子)に加えて、回転台1の電源(電源回路及びバッテリ)に電力を出力するための電源出力用入力端子を備えていることが好ましい。電源出力用入力端子と電気的に接続される導体リングは、該導体リングと接するブラシを介して、回転台1の電源と電気的に接続されることが好ましい。このような構成により、風力発電装置によって発電される電力によって、回転台1を回転させることが可能になる。
【0041】
支持板6は、ベアリング部2の上板2fと連動して回転するように設けられている。支持板6の形状や数は、特に制限されず、支持する風力発電装置の大きさや重量等に応じて、適宜設定すれば良い。
図1及び
図2に示される支持板6は、所定の厚みを有する長方形状であり、90度ずつの角度で合計4枚が備えられている。支持板6を備えることで、回転台1の安定性を向上させることができる。
【0042】
フランジ7は、ボルト等によって支持板6と連結され、ベアリング部2の上板2fと連動して回転するように設けられている。また、フランジ7は、ボルト等によって風力発電装置と連結され、風力発電装置を支持する。フランジ7の形状等は、特に制限されず、支持する風力発電装置の大きさや重量、形状等に応じて、適宜設定すれば良い。
【0043】
カバー8は、モータ部3、制御装置4、電源回路及びバッテリ等を風雨等から守るために設けられている。カバー8及びその内部に備えられる部材は、外輪2bの回転に伴って回転せず、定位置を保つ。カバー8の材料としては、特に制限はされないが、例えば、強度や耐候性に優れるという観点からは、繊維強化プラスチックやアクリル樹脂、ポリカーボネート等が好ましい。また、耐候性の観点から、紫外線吸収剤やカーボンブラック等を添加した材料であることも好ましい。
【0044】
図3は、本発明の実施の形態にかかる、回転台の一例を示す部分断面図である。
図3は、具体的には、
図1及び
図2に示す回転台の変形例であり、スリップリング部5へと三相交流入力がされる様子を示している。
【0045】
図3の回転台1において、風力発電装置とスリップリング部5とは、三相三線式で接続されている。U相は、1番上に位置する導体リングを介して、R相として外部へ出力される。V相は、上から2番目に位置する導体リングを介して、S相として外部へ出力される。W相は、上から3番目の導体リングを介して、T相として外部へ出力される。三相交流で送電することにより、送電中における電気損失を低減させることができる。
【0046】
なお、
図3の回転台1を構成するその他の部材は、
図1及び
図2に示す回転台1と比べて形状や大きさ等が異なるものものあるが、それらの役割は同一である。すなわち、
図3に示す回転台1において、
図1及び
図2に示される回転台1と同一の符号番号を付されている部材は、
図1及び
図2を用いて説明した内容を必要な範囲で採用することができる。
【0047】
図4は、本発明の実施の形態にかかる、回転台の構成の一例を示すブロック図である。Aの矢印は、風力発電装置から送られる直流の電力であり、スリップリング部5を介して、電源回路43へと送られ、バッテリ(図示せず)に蓄電される。バッテリは、CPU41a(制御装置)、モータードライバ32、及びブラシレスモータ31と電気的に接続されており、バッテリに蓄電された電力が、これらの部材の電力源となる。なお、Bの矢印は、風力発電装置から送られる三相交流の電力であり、Cの矢印で示されるように、スリップリング部5を介して、回転台1の外部へと送電される。
【0048】
CPU41aは、回転台1が支持する風力発電装置の近傍に設置された風向風速計10から、該風力発電装置の近傍の風向及び風速に関する情報を受信する。また、CPU41aは、デジタルコンパス42から、回転台1(べアリング部)が向いている方向に関する情報を受信する。CPU41aは、上記の風向及び風速に関する情報、回転台1が向いている方向に関する情報、並びに、風向及び風速に関する情報と回転台1が向いている方向に関する情報との比較に基づいて、回転台1の回転角度、回転速度、及び回転方向を決定する。
【0049】
回転台1は、複数台を通信接続して使用できるように構成しても良い。このように構成する場合、例えば、1台の風向風速計10からの情報に基づいて、通信接続された全ての回転台の回転角度等を制御することが好ましい。具体的には、風向風速計10からの情報を受信するように構成された1台のCPU41aによって、回転台1の回転速度等を決定し、決定された情報を、該CPU41aからCPU41bへ、続いてCPU41cへというように、後に続く回転台のCPUへと順番に送信することが好ましい。なお、通信接続は、無線接続であっても有線接続であっても良い。
【0050】
また、この場合、CPU41cからCPU41bへ、続いてCPU41bからCPU41aへというように、下流のCPUから上流のCPUへも動作情報等の送信が可能であることが好ましい。例えば、CPU41aが、下流に接続された回転台の台数を記憶しておくことで、下流の回転台からの通信が途絶えた時に、アラートを出すこと等が可能になる。また、例えば、CPU41aは、下流の回転台から動作異常を示す情報を受信した場合に、アラートを出すように構成しても良い。なお、上記の例では、複数台の回転台を直列的に通信接続していたが、例えば、CPU41aとCPU41b、CPU41aとCPU41cというように、1つのCPUと、他の複数のCPUとをそれぞれ並列的に通信接続するように構成しても良い。
【0051】
CPU41aにより決定された回転台1の回転角度、回転速度、及び回転方向に関する情報は、モータードライバ32へ送信される。モータードライバ32は、受信したこれらの情報に基づいて、ブラシレスモータ31を駆動させる。ブラシレスモータ31が駆動することにより、回転台が回転することになる。
【0052】
[風力発電システム]
本発明にかかる回転台によって支持される風力発電装置は、特に制限はされないが、例えば、風力発電装置を現在の風向と略正対させたときに得られる発電効率の向上効果が大きいという観点から、水平軸型であることが好ましく、さらに、風洞を備えるものであることが好ましい。
【0053】
風洞を備える水平軸型の風力発電装置を、上述したような回転台によって回転可能に支持することにより、例えば、風速が小さい場合に、風洞の吸気口を瞬時に風が吹いてくる方向へと向けて発電効率を向上させることができる。また、例えば、風速が大きくて風力発電装置の羽根車へ与える負担が大きくなりすぎるような場合は、風洞の吸気口を風が吹いてくる方向へは向けないように制御し、風力発電装置の故障率を低下させることができる。また、例えば、風速が非常に大きくて、風洞が受ける非常に強い横風などによって風力発電装置が倒壊する恐れがある場合は、吸気口の向きを、ゆっくりと風が吹いてくる方向に向けるよう制御することで、風力発電装置が倒壊する可能性を低下させることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 回転台
2 ベアリング部
2a 内輪
2b 外輪
2c 上部転動体
2d 下部転動体
2e 下板
2f 上板
3 モータ部
4 制御装置
5 スリップリング部
6 支持板
7 フランジ
8 カバー
9 中心孔
10 風向風速計
31 ブラシレスモータ
32 モータードライバ
41a CPU
41b CPU
41c CPU
42 デジタルコンパス
43 電源回路