(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】計画回路基板静電容量を使用して確立された電極対及び共通基準接地を使用してカテーテルとの組織接触を評価すること
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019143567
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0287137(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0312713(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0051959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置
の製造方法であって、
前記装置が、
医療用プローブに結合された電極対間に選択された周波数を有する電流を流すように構成されている、電流源と、
前記電流に応答して前記電極対のうちの少なくとも1つの電極上に形成されている接地に対するシングルエンド電圧を測定するように、かつ前記測定されたシングルエンド電圧に基づいて、前記電極対のうちの前記少なくとも1つの電極と組織との間の物理的接触を評価するように構成されている、電子回路と、
前記電流源及び前記電子回路を含
む、
回路基板と、を備え、
前記装置の製造方法が、
前記電流源の前記選択された周波数において、前記電流源と
前記接地との間に
(i)前記電流源と最も近い接地線との間の幾何学的距離、及び、(ii)前記回路基板上の、前記接地が配置された層と前記電流源が配置された層の間に配置された、誘電体層の厚さ及び/又は組成物によって決定される事前定義された静電容量を生成
することと、
を含み、
前記事前定義された静電容量によって前記接地が前記電流源の基準接地として確立され、
前記電極対及び前記電流源が、前記事前定義された静電容量によって確立された前記基準接地を共通の基準接地として参照し、
前記共通の基準接地が、前記シングルエンド電圧の測定のための基準
として参照される、装置
の製造方法。
【請求項2】
前記電極対が、前記医療用プローブの第1の区分の両端部に固定されており、付加的な電流源を含み、前記付加的な電流源が、前記第1の区分とは異なる、前記医療用プローブの第2の区分の両端部に結合された付加的な電極対の間で電流を流すように構成されており、前記付加的な電極の各々が、前記付加的な電極のうちの少なくとも1つと前記組織との間の物理的接触を評価するように、前記電子回路に電気的に結合されている、請求項1に記載の装置
の製造方法。
【請求項3】
前記評価された物理的接触に基づいて、前記組織と、(i)前記電極対のうちの少なくとも1つの電極との間又は(ii)前記付加的な電極対のうちの少なくとも1つの電極との間に物理的接触があるかどうかの指標を出力するように構成されているプロセッサを備える、請求項2に記載の装置
の製造方法。
【請求項4】
前記第1の区分及び前記第2の区分が、互いに重ならない、請求項2に記載の装置
の製造方法。
【請求項5】
前記電子回路は、前記測定されたシングルエンド電圧が事前定義された閾値を上回るとき、前記電極対のうちの前記少なくとも1つの電極が前記組織と物理的に接触していることを示す指標を出力するように、かつ、前記測定されたシングルエンド電圧が前記事前定義された閾値を下回るとき、前記電極対のうちの前記少なくとも1つの電極が前記組織と物理的に接触していないことを示す指標を出力するように構成されている、請求項1に記載の装置
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、侵襲的医療用デバイスに関し、具体的にはカテーテルと組織との間の接触を評価するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓組織のアブレーションなどの様々な医療処置において、医師は、医療処置を組織に実施するとき、医療用プローブと組織との間の物理的接触の程度を知る必要がある。近接及び接触を判定するための様々な技術が、当該技術分野において既知である。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2016/0143686号は、体内表面に隣接する体液中に配設された電極カテーテルと内部本体表面との間の距離を判定する方法を記載しており、本方法は、交流電圧又は交流を印加することと、電極カテーテル上の少なくとも1つの電極対間のインピーダンスを判定することと、判定されたインピーダンスに少なくとも部分的に基づいて電極カテーテルと内部本体表面との間の距離を判定することと、を含む。
【0004】
米国特許出願公開第2016/0287137号には、アブレーションエネルギの送達前に電極-組織接触を評価するための方法及びシステムが記載されている。本方法は、所与の電極に対する低周波数における最大インピーダンスの大きさと、全ての電極にわたる低周波数における必要最小限のインピーダンスの大きさとの差を判定することを含む。本方法は、所与の電極に対する高周波数における最大インピーダンスの大きさと、全ての電極にわたる高周波数における必要最小限のインピーダンスの大きさとの差を判定することと、所与の電極に対する高周波数における最大インピーダンス位相と、全ての電極にわたる高周波数における必要最小限のインピーダンス位相との差を判定することと、更に含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の一実施形態は、電流源と、電子回路と、回路基板と、を含む、装置を提供する。電流源は、医療用プローブに結合された電極対間に選択された周波数を有する電流を流すように構成されている。電子回路は、電流に応答して対の電極のうちの少なくとも1つ上に形成されている接地に対するシングルエンド電圧を測定するように、かつ、測定された電圧に基づいて、少なくとも1つの電極と組織との間の物理的接触を評価するように構成されている。回路基板は、電流源及び電子回路を含み、選択された周波数において、電流源と接地との間に事前定義された静電容量を生成し、そのためシングルエンド電圧の測定のための基準を形成するレイアウトを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、電子回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)を含む。他の実施形態では、対の電極は、医療用プローブの第1の区分の両端部に固定されており、付加的な電流源を含み、付加的な電流源は、第1の区分とは異なる、医療用プローブの第2の区分の両端部に結合された付加的な電極対の間で電流を流すように構成されており、付加的な電極の各々は、付加的な電極のうちの少なくとも1つと組織との間の物理的接触を評価するように、電子回路に電気的に結合されている。更に他の実施形態では、装置は、プロセッサを含み、プロセッサは、評価された物理的接触に基づいて、組織と、(i)電極及び(ii)付加的な電極のうちの少なくとも1つとの間に物理的接触があるかどうかを出力するように構成されている。
【0007】
実施形態において、第1及び第2の区分は、互いに重ならない。別の実施形態では、電子回路は、測定された電圧が事前定義された閾値を上回るとき、電極のうちの少なくとも1つが組織と物理的に接触していることを示すように、かつ、測定された電圧が事前定義された閾値を下回るとき、電極のうちの少なくとも1つが組織と物理的に接触していないことを示すように構成されている。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、医療用プローブに結合された電極対間に選択された周波数を有する電流を、電流源から流すことを含む方法が付加的に提供される。電子回路を使用して、シングルエンド電圧が、電流に応答して対の電極のうちの少なくとも1つ上に形成される接地に対して測定され、測定された電圧に基づいて、電極のうちの少なくとも1つと組織との間の物理的接触が評価される。電流源及び電子回路を含む回路基板は、選択された周波数において、電流源と接地との間に事前定義された静電容量を生成し、そのためシングルエンド電圧の測定のための基準を形成するレイアウトを含む。
【0009】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による、患者の心臓の組織を切除するためのシステムを絵で表した概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、カテーテルと組織と間の接触を評価するためのモジュールを絵で表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概論
本明細書においてカテーテルとも称される医療用プローブは、心臓組織の高周波(RF)アブレーションなどの様々な医療処置において使用される。アブレーション処置を実施するとき、プローブ遠位先端部のアブレーション電極と標的組織との間の物理的接触を確実にして、組織内に所望の損傷を形成し、患者を危険な状態にし得る副産物の血栓の形成を防止することが重要である。
【0012】
以下に記載される本発明の実施形態は、例えば、患者の心臓の電位(EP)マッピングの実施において、並びに/又は患者の心臓へのアブレーション及び/若しくはカテーテル遠位先端部と標的組織との間の物理的接触を伴う任意の他の処置において、カテーテル遠位先端部の所与の区分と標的組織との間の物理的接触を評価するための改善された技術を提供する。
【0013】
遠位先端部は、所与の区分に沿って遠位先端部に結合された1つ又は2つ以上の電極対を典型的に備える。いくつかの実施形態では、各電極対は、それぞれの電流源に結合され、対の電極間に選択された周波数を有する電流を流すように構成されている。各対の電極は、互いに電気的に絶縁され、そのため電流は、組織又は血液などのいくつかの導電性材料が両方の電極と接触しているときにのみ電極間を流れることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、電流源は、回路基板(CB)上に取り付けられる。CBは、各電極と接地との間のシングルエンド電圧を測定するように構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)などの電子回路を更に備える。電極上の電圧(すなわち、電極を流れる電流の真の既知関数である電圧)の有意な測定を可能にするために、電極及び電流源は、共通基準接地を参照するべきである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、電極及び電流源の共通基準接地は、それらが取り付けられるCBのレイアウトを使用して確立される。この目的のために、CBレイアウトは、電流源の選択された周波数で、電流源と接地との間に事前定義された静電容量を有するように設計される。
【0016】
所与の電極対に属する、所与の電極に関して、単極電圧が、それぞれの電流源によって対を通って流れる電流に応答して電極上で発生する。レイアウトの事前定義された静電容量は、浮遊しているのではなく、電流源を接地に参照し、それによって、接地電位に対する単極電圧の有意な測定を可能にする。
【0017】
共通基準接地が確立された状態で、測定された単極電圧は、電極対と物理的に接触している組織又は血液のそれぞれのインピーダンスを示す。血液は組織よりも良好な電気伝導性を有するため、インピーダンス、したがって電極間で測定される電圧は、血液単独よりも組織と接触しているときにより高くなる。いくつかの実施形態では、測定された単極電圧に基づいて、ASICは、心臓組織と遠位先端部の所与の区分との間に物理的接触があるかどうかを評価するように構成されている。
【0018】
開示された技術は、アブレーション処置における患者の安全性を改善するが、アブレーションに限定されるわけではなく、例えば、EPマッピング及び他の処置で使用することができる。更に、開示された技術は、カテーテルのインピーダンスに基づく位置追跡システムと組織近接インジケータ(TPI)を統合することによって、機能性を高め、アブレーションカテーテルのコストを低減させる。
【0019】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、患者の心臓40の組織を切除するためのシステム10を絵で表した概略図である。いくつかの実施形態では、システム10は、患者14の心臓40のマッピング構築を支持し、アブレーション処置の間、心臓40内で医療ツールをナビゲートするために構築されたマッピングを使用する。
【0020】
ここで挿入
図25を参照する。いくつかの実施形態では、システム10は、遠位先端部13を有するカテーテル12などの医療用プローブを備える。いくつかの実施形態では、遠位先端部13は、遠位先端部の所与の区分のそれぞれの端部に結合された電極対52及び54などの複数のデバイスを備える。いくつかの実施形態では、電極52及び54は、遠位先端部13において様々な役割を有し得る。例えば、電極52及び電極54は、インピーダンスに基づく位置センサ、及び/又は電位(EP)感知電極、並びに/若しくはアブレーション電極として機能し得る。この構成では、カテーテル12の遠位先端部13は、心臓40の組織33をマッピング及び/又はアブレーションするために使用され得る。
【0021】
マッピング位相中、医師16は、挿入点30を介してカテーテル12を患者14の脈管構造内に挿入し、次いで、カテーテル先端部を心臓40にナビゲートすることができる。続いて、カテーテル12は、組織を切除する前に心臓40の組織33をマッピングするために使用される。
【0022】
本発明の文脈において、及び特許請求の範囲において、「電気インピーダンス」という用語は、簡潔にするために単に「インピーダンス」とも称される。
【0023】
いくつかの実施形態では、操作コンソール18は、心臓40の組織33上にカテーテル12によって印加されるRFアブレーション信号を生成するように構成された、高周波(RF)発生器22を備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、コンソール18は、カテーテル12からの信号を受信し、かつ本明細書に記載のシステム10の他の構成要素を制御することに好適である、前方端部及びインターフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ20を備える。プロセッサ20は、ソフトウェア内にプログラムされて、システムによって使用される機能を実行することができ、プロセッサはソフトウェアのためのデータをメモリ21内に記憶する。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール18にダウンロードされてもよく、又は光学的記憶媒体、磁気的記憶媒体、若しくは電子的記憶媒体などの、非一時的有形媒体上で提供されてもよい。代替的に、プロセッサ20の機能の一部又は全ては、専用の構成要素又はプログラマブルデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、システム10は、カテーテル12を患者14の心臓40内のアブレーション場所にナビゲートする目的で、遠位先端部13の位置を追跡するために典型的に使用されるインピーダンスに基づくアクティブ現在場所(ACL)システムを更に備える。
【0026】
一実施形態において、遠位先端13の位置は、ユーザディスプレイ34に表示される心臓40の画像42上に示される。いくつかの実施形態では、画像42は、コンピュータ断層撮影(CT)システムなどの解剖学的撮像システム又は任意の他の好適な撮像技術を使用して取得される。
【0027】
いくつかの実施形態では、ACLシステムは、例えば、患者14の皮膚に付着するパッチ29を介して患者14の身体に結合される複数の電極28を備える。
図1の例では、システム10は、6つの電極を含み、これらのうち、電極28a、28b、及び28cは、患者14の前側(例えば、胸部)に結合され、電極28d、28e、及び28fは、患者14の後側に結合される。別の実施形態では、システム10は、任意の好適な配置で患者の皮膚に結合された、任意の好適な数の電極を含むことができる。
【0028】
パッチ29の電極28は、ケーブル32を介してプロセッサ20に典型的に接続され、電極28から、及び他のセンサから、インピーダンス値などの情報を受信するように構成されている。この情報に基づいて、プロセッサ20は、心臓40内の遠位先端部13の位置を推定するように構成されている。
【0029】
ディスプレイ34は、典型的には、関連する情報を医師16に表示することによって、マッピング及び/又はアブレーション手順の実施を円滑にするように構成されている。例えば、プロセッサ20は、インピーダンスに基づく位置追跡システムの座標系と(画像42を取得した)CTシステムの座標系との間に登録することができ、そのため、画像42内に遠位先端部13の場所及び配向を表示する。
【0030】
上述したように、電極28は典型的には、インピーダンスに基づく追跡技術、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号及び米国特許出願公開第2015/0141798号に記載の技術を使用して、患者14の身体内のカテーテル12を誘導するために使用される。このような技術は、遠位先端13と電極28a~28fのそれぞれとの間で測定された異なるインピーダンスに応答して遠位先端13の場所及び配向を推定することを伴う。上述したように、遠位先端13の推定場所を、ディスプレイ34上に好適なアイコンとして医師に表示することができる。この指標に基づいて、医師16は、カテーテル12の遠位先端部13を心臓40内の1つ又は2つ以上の標的場所にナビゲートし、続いて、標的場所のうちの1つ又は2つ以上において組織を切除することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、典型的には、既知の振幅の電気信号を遠位先端13に印加することにより、いつでも遠位先端13の場所及び配向が推定され、結果として得られる電圧降下及び/又は電流が電極28の各対で測定される。代替的な実施形態では、電気信号は、電極28によって印加されてもよく、結果として得られる電気値は、遠位先端部13の1つ又は2つ以上のセンサによって測定される。
【0032】
いくつかの実施形態では、これらの印加された電気信号は、各々がカテーテルに対して異なる位置に位置付けられている電極28に、遠位先端部13と電極28の各々の電極との間に異なる量の電気的に妨害する組織(したがって、異なるインピーダンス度)に起因する、異なるそれぞれの電気値を呈させる。
【0033】
いくつかの実施形態では、これらの測定された電気値は、ケーブル32を介してプロセッサ20に送信され、このプロセッサ20は、これらの値を使用して、(位置が既知である)電極28に対する遠位先端13の相対的な場所及び配向を推定する。代替的に、カテーテルの遠位先端と電極との間に電圧勾配が生成されることがあり、これらの電極を通って流れる、結果として得られた電流を測定し、遠位先端13の場所及び配向を推定するために使用してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書で「マッピング」と称されるキャリブレーション手順において、プロセッサ20は、1組のデータ点を構築するように構成され、各々が遠位先端部13によって調査されたそれぞれの位置で測定された位置及び電気値を含む。一実施形態において、マッピングは完了すると、測定された電気値を心臓40における位置測定値に変換するために、遠位先端13及び/又は電極28によって取得された電気値に(例えば切除中に)適用される。
【0035】
患者14の選択された呼吸動作(例えば、全吸気動作後、全呼気動作後、又は吸入動作と呼気動作との中間)のために、別個のマッピングが構築されてもよいことに留意されたい。
【0036】
ここで再び挿入
図25を参照する。組織33を切除する前に、遠位先端部13のアブレーション電極を組織33と物理的に接触させることが重要である。いくつかの実施形態では、システム10は、電極52及び54に電流を流すように構成されている。電流に応答して、電極間で電圧が発生し、電圧値は、電極が組織又は血液と接触しているかどうかに依存する。ASICは、電極52及び電極54のうちの少なくとも1つに関して、本明細書において単極電圧とも称される、シングルエンド電圧を測定し、遠位先端部13の所与の区分と組織33との間の物理的接触を示す。組織接触感知に関連するシステム10の構成に関する更なる詳細は、以下の
図2に記載される。
【0037】
挿入
図25に示されるように、遠位先端部13は、組織33と物理的に接触している。この位置において、電流は、組織33を介して電極52と54との間の電気経路15を通って流れる。両方の電極が組織と物理的に接触しているとき、この電圧は、本明細書においてZ-組織とも称される、組織の電気インピーダンスを示す。
【0038】
同様に、遠位先端部13(すなわち、電極のうちの少なくとも1つ)が組織33と物理的に接触していないとき、電流は、血液43を介して電極52及び54間を流れる。この位置において、(接地に対して)電極52及び54のうちの少なくとも1つの単極電圧は、本明細書ではZ-血液とも称される血液の電気インピーダンスを示し、これは、組織33の電気インピーダンスよりも典型的に著しく小さい。いくつかの実施形態では、以下の
図2に示されるように、プロセッサ20又は任意の他の処理デバイスは、単極電圧を測定し、測定された電圧に基づいて、遠位先端部13及び組織33のそれぞれの電極(例えば、電極52又は54)間の区分に物理的接触があるかどうかを評価するように構成されている。
【0039】
1つ又は2つ以上の電極対を使用してプローブと組織との間の接触を評価するためのモジュール
図2は、本発明の一実施形態による、遠位先端部23と組織33との間の接触を評価するためのモジュール44を絵で表した概略図である。遠位先端部23は、例えば、上記の
図1に示されるカテーテル12の遠位先端部13に置き換えることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、モジュール44は、電気配線64及びカテーテルを通って延びるリード線65を介して、遠位先端部23の電極52、54、56、及び58に電気的に結合された回路基板(CB)66を備える。いくつかの実施形態では、CB66は、電流源55を備え、これは、遠位先端部23の電極52及び電極54、配線64、並びにリード線65を介して、選択された周波数(例えば、6.3kHz)を有する交流電流を流すように構成されている。上記
図1に記載されるように、電流は、電極52及び54間を、それらの間を電気的に接続する経路15などの任意の電気経路を通って流れる。本実施例では、電流は、血液43を通って、又は組織33を通って流れることができ、その各々は、異なるインピーダンスを有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、電流源55は、CB66のレイアウトを介して接地62に電気的に接続される。設計により、CB66のレイアウトは、電流源と接地62との間に、選択された電流源55の周波数において、事前定義された静電容量を生成することに留意されたい。この静電容量は、コンデンサ71として概略的に示されている。この構成では、電流源55は浮遊していない。むしろ、電流源55によって生成された交流の選択された周波数において、事前定義された静電容量は、電流源55の基準接地として接地62を確立するように構成されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、電流源55は、電極52及び54間に一定の電流を生成するように構成され、そのため電流値は、電極間のインピーダンスに依存しない。このため、電極52及び54、並びに接地62の間の各電極間に、それぞれのシングルエンド電圧が形成される。電極52及び54の各々の電圧は、電極52及び54間のインピーダンスを示し、したがって、電極52及び54が組織33又は血液43と接触しているかどうかを示すことに留意されたい。
【0043】
いくつかの実施形態では、モジュール44は、CB66上に実装されており、かつ電極52及び54に電気的に結合されている、特定用途向け集積回路(ASIC)60を更に備える。
図2の例において、CB66は、配線68を含み、これは、配線64及びリード線65を介して、ASIC60と電極52及び54の間の各電極とを電気的に接続する。他の実施形態では、モジュール44は、ASIC60に加えて、又はその代わりに、任意の好適な相互接続構成を使用して電極52及び54に電気的に結合される、任意の他の好適な電子回路を備え得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、ASIC60は、本明細書で説明された機能を実行するようにソフトウェア内でプログラムされる、汎用プロセッサなどの任意の好適なICデバイスを備え得る。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードされてもよく、又は、それは、代替的に若しくは付加的に、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、ASIC60は、ソース電流55の電流に応答して、電極52及び54のうちの少なくとも1つ上に形成される接地に対するシングルエンド電圧を測定するように構成されている。上記のように、測定された電圧は、電極52及び54間の電気経路のインピーダンスを示す。
図1の例において、電極間の電気経路は、組織33、血液43、又はこれらの組み合わせを通過してもよい。このように、測定された電圧に基づいて、ASIC60は、組織33と遠位先端部13の1つ又は2つ以上のそれぞれの電極との間の物理的接触を評価するように構成されている。なお、
図2の構成において、CB66のレイアウトは、シングルエンド電圧の測定のための基準接地を形成するように設計されることに留意されたい。
【0046】
いくつかの実施形態では、例えば、接地62に対して電極54上に形成されたシングルエンド電圧は、遠位先端部13が電極52及び54間に位置付けられた区分内の組織33と物理的に接触しているかどうかの指標を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、遠位先端部13は、遠位先端部13に沿った別の区分の端部に位置付けられた、電極56及び電極58などの付加的な電極対を備えてもよい。典型的には、必ずしもそうではないが、電極56と電極58との間の区分は、電極52及び54間に位置付けられた区分と重ならない。これらの実施形態では、電流源55と同様の電流源57は、電極56及び58に結合され、交流電流を流すように構成されている。典型的には、必ずしもそうではないが、電流源55及び57の両方(又は3対以上の電極の場合における全ての電流センサ)は、同じ周波数を有する。電流に応答して、電極56及び電極58のうちの少なくとも1つ上に形成される接地62に対するシングルエンド電圧は、上述のように、ASIC60によって測定される。
【0048】
一実施形態では、CB66のレイアウトは、選択された周波数において、コンデンサ73として概略的に示される電流源57と接地62との間に事前定義された静電容量値を提供するように設計される。
【0049】
別の実施形態では、電流源57は、電流源55の選択された周波数とは異なる所与の周波数を有する電流を流すように構成されてもよい。この実施形態では、CB66のレイアウトは、所与の周波数において、電流源57と接地62との間に所与の静電容量を生成するように構成されている。所与の静電容量は、事前定義された静電容量とは異なり、所与の周波数に対応するシングルエンド電圧の測定のために共通の基準接地を形成するように構成されていることに留意されたい。この実施形態では、上記技術を使用して、ASIC60は、組織33と、電極56と電極58との間に位置付けられた遠位先端部23の区分との間の物理的接触を評価するように構成されている。
【0050】
遠位先端部13に沿って、上述のようにそれぞれの電子回路に結合された電極52及び54などの付加的な電極対を分配することによって、モジュール44は、それぞれの対及び組織33の各々の間の物理的接触を検出するように構成されている。様々な実施形態では、任意の好適な数の電極対を使用することができる。
【0051】
様々な実施形態では、CB66のレイアウトは、電流源55と電流源57及び接地62との間に所望の静電容量71及び73)を有するように様々な方法で設計することができる。所望の静電容量は、典型的には、約50pFである。このような静電容量は、例えば、(i)各電流源と最も近い接地線との間の幾何学的距離、(ii)接地層と電流源が作製される銅層との間で分離する誘電体層の厚さ及び/又は組成物などのパラメータを制御することによって達成することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ASIC60は、少なくとも事前定義された閾値を保持し、測定された単極電圧と事前定義された閾値との間の比較によって、組織33と、電極52、54、56、及び58の間の各電極との間の物理的接触を評価するように構成されている。所与の電極について、単極電圧の値が事前定義された閾値よりも大きい場合、ASIC60は、組織33と所与の電極との間の物理的接触の指標を出力し得る。同様に、単極電圧の値が事前定義された閾値以下である場合、ASIC60は、所与の電極と血液43との間の物理的接触の指標を出力し得る。
【0053】
付加的に又は代替的に、プロセッサ20は、事前定義された閾値を保持するように構成され、電極52、54、56、及び58の間の各電極上のASIC60によって測定された単極電圧の値に基づいて、電極の各々と組織33との間に物理的接触があるかどうかの指標を出力するように構成されている。
【0054】
本発明の文脈において、及び特許請求の範囲において、「電子回路」という用語は、電流に応答して対内の電極のうちの少なくとも1つ上に形成される接地62に対するシングルエンド電圧を測定し、測定された電圧に基づいて、それぞれの電極及び組織33のうちの少なくとも1つの間の物理的接触を評価するように構成された任意のデバイスを指す。一実施形態では、電圧測定及び物理的接触の評価は、
図2のASIC60又は
図1のプロセッサ20などの、単一のデバイスを使用して実行され得る。別の実施形態では、電圧測定は、例えば、ASIC60などの1つのデバイスを使用して実行されてもよく、物理的接触の評価は、別のデバイスを使用して、例えば、ASIC60からの電圧測定値を受信するプロセッサ20によって、実行され得る。この実施形態では、「電子回路」という用語は、ASIC60とプロセッサ20との組み合わせを指すことに留意されたい。代替的な実施形態では、システム10は、電極からの電圧を測定するため、及び測定された電圧に基づいて物理的接触を評価するための任意の他の好適な構成を含んでもよい。
【0055】
一実施形態では、プロセッサ20は、例えば、画像42において、心臓40の画像上に重ねられた遠位先端部13を表示するように更に構成され、そのため電極のいくつかは、組織33と物理的に接触し、残りの電極は、単に血液43と物理的に接触し得る。
【0056】
本明細書に記載される実施形態は、主として心臓のアブレーション及びEPマッピング手順を対象にするが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、他の用途でも使用することができる。
【0057】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に図示及び説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
医療用プローブに結合された電極対間に選択された周波数を有する電流を流すように構成されている、電流源と、
前記電流に応答して前記対の前記電極のうちの少なくとも1つ上に形成されている接地に対するシングルエンド電圧を測定するように、かつ前記測定された電圧に基づいて、前記電極のうちの前記少なくとも1つと組織との間の物理的接触を評価するように構成されている、電子回路と、
回路基板であって、前記電流源及び前記電子回路を含み、かつ、前記選択された周波数において、前記電流源と接地との間に事前定義された静電容量を生成し、そのため前記シングルエンド電圧の測定のための基準を形成するレイアウトを含む、回路基板と、を備える、装置。
(2) 前記電子回路が、特定用途向け集積回路(ASIC)を含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記対の前記電極が、前記医療用プローブの第1の区分の両端部に固定されており、付加的な電流源を含み、前記付加的な電流源が、前記第1の区分とは異なる、前記医療用プローブの第2の区分の両端部に結合された付加的な電極対の間で前記電流を流すように構成されており、前記付加的な電極の各々が、前記付加的な電極のうちの少なくとも1つと組織との間の物理的接触を評価するように、前記電子回路に電気的に結合されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記評価された物理的接触に基づいて、前記組織と、(i)前記電極及び(ii)前記付加的な電極のうちの少なくとも1つとの間に物理的接触があるかどうかを出力するように構成されているプロセッサを備える、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記第1の区分及び前記第2の区分が、互いに重ならない、実施態様3に記載の装置。
【0059】
(6) 前記電子回路は、前記測定された電圧が事前定義された閾値を上回るとき、前記電極のうちの前記少なくとも1つが前記組織と物理的に接触していることを示すように、かつ、前記測定された電圧が前記事前定義された閾値を下回るとき、前記電極のうちの前記少なくとも1つが前記組織と物理的に接触していないことを示すように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 方法であって、
医療用プローブに結合された電極対間に選択された周波数を有する電流を、電流源から流すことと、
電子回路を使用して、前記電流に応答して前記対の前記電極のうちの少なくとも1つの上に形成されている接地に対するシングルエンド電圧を測定し、かつ、前記測定された電圧に基づいて、前記電極のうちの前記少なくとも1つと組織との間の物理的接触を評価することと、を含み、
前記電流源及び前記電子回路を含む回路基板が、前記選択された周波数において、前記電流源と前記接地との間に事前定義された静電容量を生成し、そのため、前記シングルエンド電圧の測定のための基準を形成するレイアウトを含む、方法。
(8) 前記電子回路が、特定用途向け集積回路(ASIC)を含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記対の前記電極が、前記医療用プローブの第1の区分の両端部に固定されており、付加的な電流源から、前記第1の区分とは異なる、前記医療用プローブの第2の区分の両端部に結合された付加的な電極対の間で前記電流を流すことを含み、前記付加的な電極の各々が、前記付加的な電極のうちの少なくとも1つと組織との間の物理的接触を評価するために、前記電子回路に電気的に結合されている、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記評価された物理的接触に基づいて、前記組織と、(i)前記電極及び(ii)前記付加的な電極のうちの少なくとも1つとの間に物理的接触があるかどうかを出力することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0060】
(11) 前記第1の区分及び前記第2の区分が、互いに重ならない、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記物理的接触を評価することは、前記測定された電圧が事前定義された閾値を上回るとき、前記電極の前記少なくとも1つが前記組織と物理的に接触していることを示すことと、前記測定された電圧が前記事前定義された閾値を下回るとき、前記電極の前記少なくとも1つが前記組織と物理的に接触していないことを示すことと、を含む、実施態様7に記載の方法。
(13) 医療用プローブと組織との間の物理的接触を評価するための装置を製造するための方法であって、
回路基板において、選択された周波数において、電流源と接地との間に事前定義された静電容量を生成し、そのためシングルエンド電圧の測定のための基準を形成するレイアウトを形成することと、
前記回路基板上に、(i)医療用プローブに結合された電極対間に前記選択された周波数を有する電流を流すための前記電流源と、(ii)前記電流に応答して、前記対内の前記電極のうちの少なくとも1つ上に形成されている前記接地に対する前記シングルエンド電圧を測定するための電子回路と、を取り付けることと、を含む、方法。
(14) 前記電子回路を取り付けることが、特定用途向け集積回路(ASIC)を取り付けることを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記対の前記電極が、前記医療用プローブの第1の区分の両端部に固定されており、前記第1の区分とは異なる、前記医療用プローブの第2の区分の両端部に結合された付加的な電極対の間で前記電流を流すために、前記回路基板上に付加的な電流源を取り付けることと、前記付加的な電極の各々を、前記電子回路に電気的に結合することと、を含む、実施態様13に記載の方法。
【0061】
(16) 前記評価された物理的接触に基づいて、前記組織と、(i)前記電極及び(ii)前記付加的な電極のうちの少なくとも1つとの間に物理的接触があるかどうかを出力するためのプロセッサを、前記電子回路に電気的に結合することを含む、実施態様15に記載の方法。