(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】半導体装置および機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240805BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N25/70
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2019212300
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】高田 佳明
(72)【発明者】
【氏名】池田 一
(72)【発明者】
【氏名】太田 径介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 洋一郎
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169754(WO,A1)
【文献】特開2010-225818(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043343(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0131333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0020835(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0366769(US,A1)
【文献】特開2010-219355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0296075(US,A1)
【文献】米国特許第10334191(US,B1)
【文献】特開2016-021479(JP,A)
【文献】特開2013-175494(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221261(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配された複数の画素と、遮光部と、を有し、表面および裏面を有する半導体層を備える半導体装置であって、
前記複数の画素のうちの1つの画素は、前記半導体層の中に設けられた複数のフォトダイオードを含み、
前記半導体層の前記裏面における前記1つの画素の受光領域を、行方向および列方向のそれぞれにおいて3等分して得られる9つの区画は、第1区画と、第2区画、第3区画、第4区画、第5区画、第6区画、第7区画、第8区画および第9区画を含む8つの区画と、を含み、前記第1区画は、前記第2区画と前記第3区画の間かつ前記第4区画と前記第5区画との間に位置し、
前記裏面に垂直な方向において前記第1区画に重なる位置に、前記複数のフォトダイオードのうちの或るフォトダイオードに含まれる第1光電変換部が配され、
前記裏面に垂直な方向において前記第2区画に重なる位置に、前記或るフォトダイオードとは別のフォトダイオードに含まれる第2光電変換部が配され、
前記裏面に垂直な方向において前記第3区画に重なる位置に、前記或るフォトダイオードとは別のフォトダイオードに含まれる第3光電変換部が配され、
前記半導体層の表面の上には、各々が前記半導体層と共にMIS構造を成す複数の電極が設けられており、
前記複数の電極は、前記第1光電変換部で生じた電荷を前記半導体層の中に設けられた電荷保持部へ転送するための第1転送電極と、前記第2光電変換部で生じた電荷を前記電荷保持部へ転送するための第2転送電極と、を含み、
前記複数の電極の少なくとも1つの電極は、前記裏面に垂直な方向において、前記8つの区画の少なくとも1つの区画に重なり、
前記複数の電極のうち、前記1つの画素に対応づけられた電極の少なくとも1つの電極と前記MIS構造を構成する前記半導体層の素子領域は、前記表面に垂直な方向において、前記遮光部に重なる領域に設けられ
、前記電荷保持部は前記第1転送電極と前記第2転送電極との間に配されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数の電極の少なくとも1つの電極は、前記裏面に垂直な方向において、前記第1区画に重なる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体層の前記表面の側にはSTI構造を有する素子分離部が設けられており、
前記複数の電極の少なくとも1つの電極は、前記裏面に垂直な方向において、前記8つの区画の少なくとも1つの区画に重なり、かつ、前記表面に垂直な方向において前記素子分離部に重なる、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1転送電極は、前記裏面に垂直な方向において、前記第1区画に重なる、請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1転送電極は、前記裏面に垂直な方向において、前記8つの区画の少なくとも1つの区画に重なる、請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電荷保持部に接続されたコンタクトプラグが、前記裏面に垂直な方向において、前記第1区画に重なる、請求項
1乃至
5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数の電極は、前記電荷保持部へ接続された、MIS型のキャパシタを構成するキャパシタ電極を含み、前記キャパシタ電極は、前記裏面に垂直な方向において、前記8つの区画の少なくとも2つの区画に重なる、請求項
1乃至
6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の電極は、前記第2光電変換部で生じた電荷を前記半導体層の中に設けられた電荷排出部へ転送するための第3転送電極を含み、前記第3転送電極が、前記裏面に垂直な方向において、前記8つの区画の少なくとも1つの区画に重なる、請求項
1乃至
7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2転送電極および前記第3転送電極が、前記裏面に垂直な方向において、前記第4区画に重なる、請求項
8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記電荷排出部に接続されたコンタクトプラグが、前記表面に垂直な方向において、前記半導体層の前記表面のうちの前記受光領域に重ならない領域に接触する、請求項
8または
9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記複数の電極は、前記第3光電変換部で生じた電荷を前記電荷保持部へ転送するための第4転送電極を含み、前記電荷保持部に接続されたコンタクトプラグが、前記第3転送電極と前記第4転送電極との間に位置する、請求項
8乃至
10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記電荷保持部および前記電荷排出部の少なくとも一方が、前記1つの画素とは別の画素に共有されている、請求項
8に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記電荷保持部に接続されたコンタクトプラグが、前記第1転送電極と前記第2転送電極との間に位置する、請求項
1乃至
12のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記表面からの距離がD以上かつ3×D未満である範囲には、前記裏面に垂直な方向において前記8つの区画に重なるように第1導電型の第1半導体領域が配され、
前記表面からの距離がD未満である範囲には、前記表面に垂直な方向における前記第1半導体領域と前記表面との間に第2導電型の第2半導体領域が配され、
前記表面に垂直な方向における前記第1半導体領域と前記表面との間に前記第1導電型の第3半導体領域が配され、
前記表面と前記裏面との距離がTであり、D=T/4である、請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1半導体領域は、前記裏面に垂直な方向において前記第4区画に重なる第1部分と、前記裏面に垂直な方向において前記第2区画に重なる第2部分と、前記裏面に垂直な方向において前記第5
区画に重なる第3部分と、を含み、前記第1部分の不純物濃度が前記第2部分の不純物濃度よりも高く、前記第3部分の不純物濃度が前記第2部分の不純物濃度よりも低い、請求
項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第2半導体領域が前記第1半導体領域を囲む、請求項
14または
15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記裏面の上には複数のマイクロレンズが設けられており、前記複数のマイクロレンズの1つのマイクロレンズが、前記裏面に垂直な方向において、前記9つの区画のうちの少なくとも4つの区画に重なる、請求項1乃至
16のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記複数のフォトダイオードは、入れ子構造を有する第1フォトダイオードおよび第2フォトダイオードを含み、前記第1フォトダイオードが前記第1光電変換部を含み、前記第2フォトダイオードが前記第2光電変換部および前記第3光電変換部を含む、請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記複数の電極の1つは、前記第1フォトダイオードの電荷に基づく信号および前記第2フォトダイオードの電荷に基づく信号を生成する増幅トランジスタのゲート電極である、請求項
18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記電極は、前記表面に垂直な方向において、前記素子領域と、前記素子領域に隣り合う、前記素子領域とは異なる導電型の半導体領域と、に重なることを特徴とする請求項1乃至請
求項19のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記複数の電極のうち少なくとも2つの電極と前記MIS構造を構成する、少なくとも2つの前記素子領域は、前記表面に垂直な方向において、前記遮光部に重なる領域に設けられることを特徴とする請求項1乃
至請求項
20のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記少なくとも2つの前記素子領域を含む前記MIS構造同士の間には、前記素子領域同士を分離する分離領域が配され、
前記表面に垂直な方向において、前記分離領域が前記遮光部に重なる領域に設けられることを特徴とする請求項
21記載の半導体装置。
【請求項23】
請求項1乃至
22のいずれか1項に記載の半導体装置を備える機器であって、
前記半導体装置に対応した光学装置、
前記半導体装置を制御する制御装置、
前記半導体装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記半導体装置で得られた情報を表示する表示装置、
前記半導体装置で得られた情報を記憶する記憶装置、および、
前記半導体装置で得られた情報に基づいて動作する機械装置、の少なくともいずれかを更に備えることを特徴とする機器。
【請求項24】
請求項1乃至
22のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置を移動させるための機械装置と、を備える輸送機器。
【請求項25】
前記半導体装置で得られた情報を用いて前記輸送機器の運転支援および/または自動運転を行う、請求項
24に記載の輸送機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの画素に複数のフォトダイオードを設け、それぞれのフォトダイオードで生じた電荷に基づいて、ダイナミックレンジの拡大や焦点検出、測距、奥行き情報の取得を行う技術がある。
【0003】
特許文献1には、入れ子になった複数のフォトダイオード(サブピクセル)を有する画素を備えたイメージセンサおよびその画素回路(FIG.3)が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、特許文献1に記載された画素回路に類似した回路(Figure 1)が開示され、画素内の回路および低ゲインキャパシターは深いダイオードの一部の上方に配置されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2019/0131333号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】“Pixel with nested photo diodes and 120 dB single exposure dynamic range”,Manuel Innocent,2019 International Image Sensor Workshop P13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1では、回路の構成要素をどのように配置するかについて、検討が不足している。回路の構成要素の配置によっては、画素に入射した光や、光によって生じた電荷によって、回路の動作が不安定になったり、画素から出力される信号の精度が低下したりする。そのため、画素特性が低下するという課題がある。
【0008】
そこで本発明は、半導体装置において良好な画素特性を得る上で有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、行列状に配された複数の画素を有し、表面および裏面を有する半導体層を備える半導体装置であって、
前記複数の画素のうちの1つの画素は、前記半導体層の中に設けられた複数のフォトダイオードを含み、
前記半導体層の前記裏面における前記1つの画素の受光領域を、行方向および列方向のそれぞれにおいて3等分して得られる9つの区画は、第1区画と、第2区画、第3区画、第4区画、第5区画、第6区画、第7区画、第8区画および第9区画を含む8つの区画と、を含み、前記第1区画は、前記第2区画と前記第3区画の間かつ前記第4区画と前記第5区画との間に位置し、
前記裏面に垂直な方向において前記第1区画に重なる位置に、前記複数のフォトダイオードのうちの或るフォトダイオードに含まれる第1光電変換部が配され、
前記裏面に垂直な方向において前記第2区画に重なる位置に、前記或るフォトダイオードとは別のフォトダイオードに含まれる第2光電変換部が配され、
前記裏面に垂直な方向において前記第3区画に重なる位置に、前記或るフォトダイオードとは別のフォトダイオードに含まれる第3光電変換部が配され、
前記半導体層の表面の上には、各々が前記半導体層と共にMIS構造を成す複数の電極が設けられており、
前記複数の電極の少なくとも1つの電極は、前記裏面に垂直な方向において、前記8つの区画の少なくとも1つの区画に重なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体装置において良好な画素特性を得る上で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図16】半導体装置を備えた機器の一例を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。なお、共通の名称を付した要素については、その要素に付された符号によって区別して表現することができるが、第1要素、第2要素、第N要素というように名称の前に序数を付して表現することもできる。
【0013】
図1(a)、(b)は半導体装置930が有する行列状に配された複数の画素のうち、主に2行×2列の4画素を含む区域の平面図を示している。
図1(c)は
図1(a)のS-S’線における半導体装置930の断面図を示している。
【0014】
図1(c)に示す様に、半導体装置930は、表面FSおよび裏面BSを有する半導体層10を備える。裏面BSは表面FSの反対側の面であり、裏面BSと表面FSは互いに略平行である。
図1(a)は裏面BSにおける平面図であり、
図1(b)は表面FSにおける平面図である。半導体装置930は、裏面BSに受光領域11を有する、裏面照射型の半導体装置である。表面FSおよび/または裏面BSに平行な方向をX方向およびY方向とし、表面FSおよび/または裏面BSに垂直な方向をZ方向とする。X方向が行方向および列方向の一方であり、Y方向が行方向および列方向の他方である。本例では、X方向が行方向であり、Y方向が列方向であるが、X方向が列方向であり、Y方向が行方向であってもよい。画素行は、行方向(X方向)に並んだ画素で構成され、画素列は列方向(Y方向)に並んだ画素で構成される。複数の画素行がY方向(列方向)に並び、複数の画素列がX方向(行方向)に並ぶ。複数の画素の信号の読み出しは、画素行を列方向に走査して行われ、読み出された信号は、各画素列に対応する複数の列回路によって処理されうる。
【0015】
X方向およびY方向は互いに交差し、典型的には互いに直交し、本例では、X方向とY方向とZ方向とが互いに直交する。画素が正方格子状に配列される場合には行方向と列方向が互いに直交するが、行方向と列方向は互いに直交しなくてもよい。画素の配列は、正方格子に限らず、斜方格子、菱形格子、中心矩形格子、二等辺三角格子、六角格子、正三角格子、矩形格子、原始矩形格子、平行体格子、あるいは、歪斜格子であってもよい。
【0016】
Z方向に関して、以下の説明において、単に「AとBが重なる」という場合には、AとBとがZ方向において重なることを意味するものとする。半導体層10の厚さTは、半導体層10のZ方向の寸法であり、表面FSと裏面BSとの間の距離で定義される。半導体層10の厚さTは、例えば1~10μm、典型的には2~5μmである。表面FSに平行で、半導体層10の表面FSから距離T/4に位置する仮想的な平面を平面FQとする。裏面BSに平行で、半導体層10の裏面BSから距離T/4に位置する仮想的な平面を平面BQとする。平面FQと裏面BSとの間の距離はT×3/4であり、平面BQと表面FSとの間の距離はT×3/4である。表面FSおよび裏面BSに平行で、平面BQと平面FQの間の仮想的な平面を平面HPとする。平面HPの典型的な位置は、表面FSおよび裏面BSから等距離である。つまり、典型的な平面HPと表面FSとの間の距離はT/2であり、典型的な平面HPと裏面BSとの間の距離はT/2である。
【0017】
複数の画素のうちの少なくとも1つの画素(本例では画素PRと画素PGと画素PBの各々)は、半導体層10の中に設けられた複数のフォトダイオードPD1、PD2を含む。フォトダイオードPD1およびフォトダイオードPD2は、入れ子構造を有しうる。すわなち、フォトダオードPD2がフォトダイオードPD1を囲む構造を有しうる。ここでは、1つの画素が含むフォトダイオードの数は2つであるが、1つの画素が含むフォトダイオードの数が3つ以上であってもよく、2つ以上のフォトダイオードが1つのフォトダイオードPD1を囲むような入れ子構造を有していてもよい。その場合、1つのフォトダイオードPD1が2つのフォトダイオードに挟まれた構造を有していてもよい。
【0018】
ここで1つの画素PGを例に、1つの画素の受光領域11について説明する。半導体層10の裏面BSにおける1つの画素の受光領域11を、行方向(X方向)および列方向(Y方向)のそれぞれにおいて3等分することで、9つの区画B1~B9を得ることができる。9つの区画とは、区画B1と、区画B2、区画B3、区画B4、区画B5、区画B6、区画B7、区画B8および区画B9を含む8つの区画とに大別される。を含み、ここで、区画B1は、区画B2と区画B3の間かつ区画B4と区画B5との間に位置する。また、区画B1は、区画B6と区画B7の間かつ区画B8と区画B9との間に位置する。本例では、区画B2は区画B6と区画B9の間に位置し、区画B3は区画B8と区画B7の間に位置し、区画B4は区画B6と区画B8の間に位置し、区画B5は区画B7と区画B9の間に位置している。このように、区画B1は、9つの区画B1~B9の中央に位置する区画であることから中央区画と称することができ、8つの区画B2~B9は区画B1の周辺に位置することから周辺区画と称することができる。区画B1を8つの区画B2~B9が囲んでいることから、区画B2~B9からなる8つの区画を外側区画と称し、区画B1を内側区画と称することもできる。
【0019】
フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれは光電変換部を有する。
図1(c)には、フォトダイオードPD1を構成する光電変換部が存在しうる範囲を二点鎖線で囲んで示し、フォトダイオードPD2を構成する光電変換部が存在しうる範囲を一点鎖線で囲んで示している。
図1(a)には、
図1(c)における平面HPにおいて存在する光電変換部を、裏面BSに重ねて表示しており、
図1(b)には、
図1(c)における平面HPにおいて存在する光電変換部を、表面FSに重ねて表示している。なお、
図1(a)、(b)において、二点鎖線が一点鎖線を囲む場合には、フォトダイオードPD2を構成する光電変換部が存在しうる範囲は、一点鎖線と二点鎖線との間の部分である。
【0020】
以下の説明において、フォトダイオードPD1、PD2の光電変換部を画素内における位置によって区別する。裏面BSに垂直な方向Zにおいて区画B1に重なる位置に、複数のフォトダイオードのうちのフォトダイオードPD2に含まれる光電変換部が配される。裏面BSに垂直な方向Zにおいて区画B2に重なる位置に、複数のフォトダイオードのうちのフォトダイオードPD2とは別のフォトダイオード(フォトダイオードPD1)に含まれる光電変換部が配される。裏面BSに垂直な方向Zにおいて区画B3に重なる位置に、複数のフォトダイオードのうちのフォトダイオードPD2とは別のフォトダイオード(フォトダイオードPD1)に含まれる光電変換部が配される。他の区画B4~B9も同様に、裏面BSに垂直な方向Zにおいて区画B4~B9に重なる位置に、複数のフォトダイオードのうちのフォトダイオードPD2とは別のフォトダイオード(フォトダイオードPD1)に含まれる光電変換部が配される。このように、少なくとも、フォトダイオードPD2の光電変換部に対応する区画B1の両側の区画に、フォトダイオードPD2とは別のフォトダイオード(フォトダイオードPD1)に対応する光電変換部が位置することが重要である。本例では、外側区画である区画B2~B9の各々に重なる複数の光電変換部は単一のフォトダイオードPD1に含まれる。すなわち、フォトダイオードPD2が区画B1に重なる光電変換部を含み、フォトダイオードPD1が区画B2に重なる光電変換部および区画B3に重なる光電変換部を含む。しかし、外側区画である区画B2~B9の各々に重なる複数の光電変換部のうちの或る一部の光電変換部と、他の一部の光電変換部が別々のフォトダイオードに含まれてもよい。例えば、区画B6、B2、B9に重なる光電変換部を含むフォトダイオードと、区画B8、B3、B7に重なる光電変換部を含むフォトダイオードと、が別々であってもよい。また、1つの区画に、別々のフォトダイオードに含まれる複数の光電変換部が重なってもよい。例えば、区画B5のうちの区画B9側の半分に重なる光電変換部と、区画B5のうちの区画B7側の半分に重なる光電変換部と、が分離されていてもよい。
【0021】
半導体層10の表面FSの上には、各々が半導体層10と共にMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造を成す複数の電極25が設けられている。電極25はMIS構造のMetalに該当し、典型的にはポリシリコンで構成されるが、金属で構成されてもよいし、シリサイドのような金属化合物で構成されてもよい。MIS構造は、MIS-FET(Field-Effect-Transistor)のゲートとして用いることができる他、MIS型のキャパシタとして用いることもできる。トランジスタのMIS型ゲートを成す電極25をゲート電極と称し、MIS型のキャパシタを成す電極25を容量電極と称することができる。トランジスタには電荷を転送する転送トランジスタや、スイッチングを行うスイッチトランジスタ、増幅を行う増幅トランジスタなどの種類がある。転送トランジスタのゲート電極としての電極25を転送電極と称する。電極25の一部は配線や抵抗として用いることもできる。MIS構造のInsulatorは例えば1~10nm程度の厚さの酸化シリコン膜であるが、酸化ハフニウム膜などのような金属酸化物膜であってもよい。MIS構造のInsulatorとしての酸化シリコン膜は、酸素およびシリコンよりも少ない量(例えば10原子%未満)の窒素を含有していてもよい。トランジスタのMIS型ゲートを成す絶縁体をゲート絶縁膜と称する。
【0022】
半導体層10の表面FSは素子領域12および素子領域13を含む。素子領域12、13は、MIS構造の半導体領域を含む他、ソースやドレイン、ウェルを含む。素子領域12、13を活性領域と称することもできる。MIS構造のSemiconductorは半導体層10で構成される。半導体層10の表面FSの側には絶縁体分離構造を有する素子分離部23が設けられている。素子分離部23は素子領域12と素子領域13との間に位置する。素子分離部23は素子領域12、13を画定する。絶縁体分離構造としては、STI(Shallow-Trench-Isolation)構造や、LOCOS(Local-Oxiidation-Of-Silicon)構造があるが、STI構造が好適である。STI構造を有する素子分離部23の深さは、例えば電極25の厚さHの1/2倍以上であり、10倍以下であり、好ましくは5倍以下であり、より好ましくは2倍以下でありうる。素子分離部23の深さは、例えば50~500nmである。電極25の厚さHは、例えば、50~250nmである。また、半導体層10の内部には、PN接合分離構造をゆする素子分離部を設けることもできる。なお、絶縁体分離構造を有する素子分離部23を設けずに、PN接合分離構造を有する素子分離部のみによって素子分離を行ってもよい。
【0023】
複数の電極25の少なくとも1つの電極は、裏面BSに垂直な方向Zにおいて、8つの区画B2~B9の少なくとも1つの区画に重なる。このように電極25を8つの区画B2~B9の少なくとも1つの区画に重ねて配置することで、良好な画素特性を得ることができる。
【0024】
仮に、1つの画素に対応した電極25の全てを区画B1に重なるように配置すると、入射した光や、入射した光によって生じた電荷によって、電極25を含むMIS構造の動作が不安定になる。区画B1に重なる部分では、区画B2~B9に重なる部分に比べて、次のような理由から、光や電荷の影響を受けやすい。まず、区画B1は画素の中央に位置することから区画B2~B9に比べて入射光量が多く、さらに、周辺の区画B2~B9に入射した光が拡散すると区画B1に重なる部分に入りやすい。区画B1に重なるフォトダイオードPD2は体積が小さいため、フォトダイオードPD2の電荷はフォトダイオードPD2からあふれ出しやすい。しかも、区画B2~B9に重なる光電変換部からあふれ出た電荷は、隣の画素よりも、同一画素内の、区画B1に重なる部分に流れ込みやすい。
【0025】
また、仮に、1つの画素に対応した電極25の全てを9つの区画B1~B9のいずれにも重ならないように配置すると、複数の画素の各々の受光領域の間隔が広くなる。画素数を維持しようとすると、受光領域を狭くする必要があり光利用効率が低下するし、受光領域の面積を維持しようとすると、画素数が減少したり、装置が大型化したりする。
【0026】
そこで、複数の電極25の少なくとも一部を区画B2~B9に重なるように配置することで、区画B1に重なる電極25を無くするか、削減することができ、かつ、区画B2~B9に重なる領域を有効活用することができる。そのため、良好な画素特性を得ることができる。例えば、
図1(c)では、電極25の1つである電極254が、区画B2~B9のいずれか(例えば区画B4)に重なる。
【0027】
複数の電極25の少なくとも1つの電極は、裏面BSに垂直な方向Zにおいて、区画B1に重なってもよい。区画B1に重なる電極25は、複数の電極25の中でもとりわけフォトダイオードPD2との関連が密接な素子でありうる。例えば、フォトダイオードPD2をソースとするトランジスタのゲート電極は、区画B1に重なることが好ましい。例えば、
図1(c)では、電極25の1つである電極251が、区画B1に重なる。
【0028】
複数の電極25のうち、1つの画素に対応づけられた電極25の少なくとも1つの電極は、表面FSに垂直な方向において、半導体層10の表面FSのうち1つの画素の受光領域11に重ならない領域(非重複領域)に設けられてもよい。1つの画素の受光領域11に重ならない非重複領域とは、他の画素の受光領域11に重なる領域であってもよいし、画素間の遮光領域であってもよい。例えば、
図1(c)では、電極25の1つである電極250が、区画B1~B9のいずれにも重ならない。電極250は、例えば、フォトダイオードPD1の電荷に基づく信号およびフォトダイオードPD2の電荷に基づく信号を生成する増幅トランジスタのゲート電極である。
【0029】
複数の電極25の少なくとも1つの電極は、裏面BSに垂直な方向Zにおいて、8つの区画B2~B9の少なくとも1つの区画に重なり、かつ、表面FSに垂直な方向Zにおいて絶縁体分離構造を有する素子分離部23に重なってもよい。素子分離部23に重なる電極25は、素子分離部23によってチャネル幅を正確に制御することが望ましいトランジスタのゲート電極でありうる。チャネル幅を正確に制御することが求められるトランジスタは、例えば信号を増幅する増幅トランジスタである。例えば、
図1(c)では、電極25の1つである電極250が、素子分離部23に重なる。
【0030】
複数の電極25の少なくとも1つの電極は、裏面BSに垂直な方向Zにおいて、素子分離部23に重ならなくてよい。素子分離部23はノイズ源になりうる。そのため、素子分離部23に重ならない電極25は、ノイズとなる電荷が混入することを抑制することが望ましいトランジスタのゲート電極でありうる。ノイズとなる電荷が混入することを抑制することが望ましいトランジスタは、例えば電荷を転送する転送トランジスタである。そこで、転送トランジスタには、絶縁体分離構造を有する素子分離部23を用いずに、PN接合分離構造を有する素子分離部を用いることが好ましい。例えば、
図1(c)では、電極25の1つである電極251、252は、素子分離部23に重ならない。
【0031】
表面FSの上には、半導体層10あるいは電極25に接触する複数のコンタクトプラグ24が設けられている。コンタクトプラグ24は絶縁膜PMDに設けられたコンタクトホールの中に配されている。コンタクトプラグ24は、タングステン等の金属からなる導電部と、導電部と絶縁膜PMDとの間に配された、チタン等の金属や窒化チタン等の金属化合物からなるバリアメタル部と、を含みうる。コンタクトプラグ24のバリアメタル部が絶縁膜PMDや半導体層10に接触しうる。複数のコンタクトプラグ24の一部は、内側区画である区画B1に重なるように配置することができる。複数のコンタクトプラグ24の他の一部は、外側区画である8つの区画B2~B9の少なくともいずれかに重なるように配置することができる。複数のコンタクトプラグ24の他の一部は、遮光領域に重なるように配置することができる。
【0032】
絶縁膜PMDの上には、コンタクトプラグ24に接続する配線層M1が設けられている。この配線層M1は例えばシングルダマシン構造を有する銅配線層でありうる。配線層M1の上には、ビアプラグを介して配線層M1に接続する配線層M2が設けられている。配線層M2の上には、ビアプラグを介して配線層M2に接続する配線層M3が設けられている。この配線層M2、M3は例えばデュアルダマシン構造を有する銅配線層でありうる。配線層M1、M2、M3はアルミニウム配線層であってもよい。配線層M1、M2、M3の間には層間絶縁膜ILDが設けられている。
【0033】
半導体装置930は基板SUBを備えうる。配線層M1、M2、M3と層間絶縁膜ILDを含む多層配線構造には基板SUBが接合されている。基板SUBはトランジスタのような能動素子を有しない単なる支持基板でもよいし、集積回路を構成するトランジスタを含む集積回路基板であってもよい。基板SUBが集積回路基板である場合には、配線層M1~M3のいずれかと基板SUBとは、バンプや、配線層同士の金属結合、貫通電極などの方法によって電気的な相互接続が成される。
【0034】
図1(a)の左上の画素PRは赤色光を光電変換するための赤画素であり、
図1(c)に示す様に、赤色のカラーフィルタCFRを含む。
図1(a)の左下の画素PGと右上の画素は緑色光を光電変換するための緑画素であり、
図1(c)に示す様に、緑色のカラーフィルタCFGを含む。
図1(a)の右下の画素PBは青色光を光電変換するための青画素であり、
図1(c)に示す様に、青色のカラーフィルタCFBを含む。このように、半導体装置930は、半導体層10の裏面BS上には、カラーフィルタCFR、CFG、CFBがベイヤー配列されてなるカラーフィルタアレイを備えうる。各々のカラーフィルタCFR,CFG,CFBは、それらが対応する画素の受光領域11の9つの区画のうち、裏面BSに垂直なZ方向において、少なくとも4つの区画に重なる。本例では、画素領域の中央部を例示しており、各々のカラーフィルタCFR,CFG,CFBは9つの区画の全てに重なる。画素領域の周辺部では斜め入射光を受光領域11に受光させるために、各々のカラーフィルタCFR,CFG,CFBは受光領域11の中心からずれていてもよい。その場合には、例えば、カラーフィルタCFR,CFG,CFBは区画B1,B3、B5,B7の4つの区画のみに重なり、区画B2、B4,B6、B8,B9には重ならない場合もありうる。各々のカラーフィルタCFR,CFG,CFBは、それらが対応する画素の受光領域11のうち、少なくとも区画B1には重なることが好ましい。カラーフィルタアレイにより、カラー画像を取得可能な半導体装置930が提供されるが、モノクロ画像を取得する場合には、カラーフィルタアレイは省略可能である。
【0035】
半導体装置930は、半導体層10の裏面BSの上に、カラーフィルタアレイを介して、複数のマイクロレンズMLR、MLG、MLBが2次元状に配列されてなるマイクロレンズアレイを備えうる。マイクロレンズMLRは画素PRに対応し、マイクロレンズMLGは画素PGに対応し、マイクロレンズMLBは画素PBに対応する。各々のマイクロレンズMLR、MLG、MLBは、それらが対応する画素の受光領域11の9つの区画のうち、裏面BSに垂直なZ方向において、少なくとも4つの区画に重なる。本例では、画素領域の中央部を例示しており、各々のマイクロレンズMLR、MLG、MLBは9つの区画の全てに重なる。画素領域の周辺部では斜め入射光を受光領域11に受光させるために、各々のマイクロレンズMLR、MLG、MLBは受光領域11の中心からずれていてもよい。その場合には、例えば、マイクロレンズMLR、MLG、MLBは区画B1,B3,B5,B7の4つの区画のみに重なり、区画B2、B4,B6、B8,B9には重ならない場合もありうる。各々のマイクロレンズMLR、MLG、MLBは、それらが対応する画素の受光領域11のうち、少なくとも区画B1には重なることが好ましい。各画素の受光領域11が十分に広い場合、マイクロレンズアレイは省略可能である。
【0036】
半導体装置930は、半導体層10の裏面BS上に設けられた、遮光部22を備えうる。遮光部22は
図1(a)に示す様に、各画素PR、PG、PBにおいて裏面BSの受光領域11を画定するように格子状の形状を有しうる。裏面BSのうち、遮光部22に重なる領域は受光領域11の外側に位置する遮光領域である。本例では、画素PGの受光領域11と画素PGに隣接する画素PRの受光領域11との間に遮光領域が位置し、画素PGの受光領域11と画素PGに隣接する画素PRの受光領域11との間に遮光領域が位置することになる。遮光部22は裏面BS上での光学的なクロストーク(あるいは混色)を低減する。本例では、遮光部22はカラーフィルタCFR、CFG、CFBの間に設けられているが、カラーフィルタアレイと半導体層10との間に遮光部22を配置することもできる。遮光部22は省略可能であり、その場合には、裏面BSにおいて、例えば画素PGの受光領域11は、画素PGに隣接する画素PRの受光領域11と連続し、画素PGに隣接する画素PBの受光領域11とも連続することになる。
【0037】
遮光部22の下において、半導体層10には、裏面BSに連続した側面を有する溝DTが設けられている。溝DTの側面は受光領域11に含まれない。溝DTは半導体層10内での光学的なクロストークや、電気的なクロストークを低減する。溝DTの裏面BSからの深さは半導体層100の厚さTの1/4以上であることが好ましい。すなわち、溝DTは平面BQを通ることが好ましい。溝DTの裏面BSからの深さは半導体層100の厚さTの1/2以上であることがより好ましい。すなわち、溝DTは平面HPを通ることが好ましい。溝DTは素子領域12に重なりうる。また、溝DTは素子領域13に重なりうる。溝DTの裏面BSからの深さは半導体層100の厚さTの3/4以上であってもよいし、溝DTは半導体層100を貫通してもよい。しかしながら、溝DTが素子領域12、13に配された素子(トランジスタ)に与えうるダメージやノイズを低減する上では、溝DTの裏面BSからの深さは半導体層100の厚さTの3/4未満であることが好ましい。すなわち、溝DTは平面FQを通らずに、溝DTの底と表面FSとの間に平面FQが位置することが好ましい。このようにすることで、表面FSに設けられた素子への溝DTの影響を低減できる。なお、溝DTは省略可能であり、その場合には裏面BSは複数の画素に渡って連続することになる。裏面BS上には、裏面BSを覆うように誘電体膜21が設けられている。本例では、誘電体膜21が溝DTの中に延在して、溝DTの側面も覆っている。誘電体膜21を溝DTの中に設けずに、誘電体膜21が溝DTの入り口を塞ぐように配置してもよい。その場合、溝DTの中には空洞が存在してもよい。誘電体膜21は単層膜あるいは複層膜でありうる。誘電体膜21に含まれる層は、酸化シリコン層や窒化シリコン層などのシリコン化合物層および/または酸化アルミニウム層や酸化ハフニウム層、酸化タンタル層、酸化チタン層などの金属酸化物層でありうる。酸化アルミニウム層や酸化ハフニウム層は裏面BS近傍で生じるノイズ電荷を裏面BS近傍に固定する上で有用である。酸化タンタル層や酸化チタン層は裏面BSの光の反射を防止する上で有用である。ここでは裏面BS側の構成を例示したが、これに限ったものではない。
【0038】
図2は1つの画素PGから信号を読み出すための画素回路300の一例を示す回路図である。1つの画素PGは複数のフォトダイオードPD1、PD2,PD3を含みうる。この画素回路300は、フォトダイオードPD1およびフォトダイオードPD3がフォトダイオードPD2よりも感度が高い場合に好適である。しかしながら、フォトダイオードPD1およびフォトダイオードPD3は、フォトダイオードPD2よりも感度が低くてもよい。フォトダイオードPD1には転送ゲート304が接続され、フォトダイオードPD2には転送ゲート306が接続され、フォトダイオードPD3には転送ゲート310が接続されている。転送ゲート304は、フォトダイオードPD1の光電変換部で生じた電荷を半導体層10の中に設けられた電荷保持部FDへ転送するための転送電極TX1を含む。転送ゲート306は、フォトダイオードPD2の光電変換部で生じた電荷を半導体層10の中に設けられた電荷保持部FDへ転送するための転送電極TX2を含む。転送ゲート310は、フォトダイオードPD3の光電変換部で生じた電荷を半導体層10の中に設けられた電荷保持部FDへ転送するための転送電極TX3を含む。
図1(c)において説明した複数の電極25は、これらの転送電極TX1、TX2、TX3を含む。
図1(c)において説明した電極254は例えば転送電極TX1であり、
図1(c)において説明した電極251は例えば転送電極TX2である。画素回路300は、転送ゲート304、306、310をゲート、フォトダイオードPD1、PD2、PD3をソース、電荷保持部FDをドレインとする3つのトランジスタを含むと考えることができる。転送ゲート304、306、310の半導体領域(チャネル領域)および/または電荷保持部FDは、
図1(b)における素子領域12に設けられうる。そして、転送電極TX1、TX2、TX3は素子分離部23に重ならないように配置されうる。このことは、半導体層10のうちの素子分離部23の近傍で生じうるノイズ電荷が電荷保持部FDに混入ることでS/Nが低下することを抑制できる点で有利である。
【0039】
フォトダイオードPD1には転送ゲート302が接続され、フォトダイオードPD3には転送ゲート308が接続されている。転送ゲート302は、フォトダイオードPD1の光電変換部で生じた電荷を半導体層10の中に設けられた電荷排出部CD1へ転送するための転送電極AB1を含む。転送ゲート308は、フォトダイオードPD2の光電変換部で生じた電荷を半導体層10の中に設けられた電荷排出部CD3へ転送するための転送電極AB3を含む。電荷排出部CD1,CD3には、固定電位である電源電位VDDが供給される。画素回路300は、転送ゲート302、308をゲート、フォトダイオードPD1、PD3をソース、電荷排出部CD1、CD3をドレインとする2つのトランジスタを含むと考えることができる。転送ゲート302、308の半導体領域(チャネル領域)および/または電荷排出部CD1、CD3は、
図1(b)における素子領域12に設けられうる。
【0040】
フォトダイオードPD2には転送ゲート305が接続されている。転送ゲート305は、フォトダイオードPD2の光電変換部で生じた電荷を半導体層10の中に設けられた電荷排出部CD2へ転送するための転送電極AB2を含む。画素回路300は、転送ゲート305をゲート、フォトダイオードPD2をソース、電荷排出部CD2をドレインとする1つのトランジスタを含むと考えることができる。転送ゲート305の半導体領域(チャネル領域)や電荷排出部CD2は、
図1(b)における素子領域12に設けられうる。
【0041】
電荷保持部FDは信号電荷が多数キャリアとなるような導電型(例えば電子が多数キャリアとなるようなn型)を有する半導体領域である。電荷保持部FDは、信号電荷が少数キャリアとなるような導電型(例えばp型)の半導体領域とPN接合を成して、PN接合型のキャパシタCFDを形成している。電荷保持部FDは増幅トランジスタ316のゲート電極SFに接続されている。電荷保持部FDおよび増幅トランジスタ316のゲート電極SFを含むノードを検出ノードと称する。そのため、電荷保持部FDを電荷検出部と称することもできる。検出ノードの電位は浮遊電位であり、検出ノードの電位は、検出ノードの電荷と、検出ノードの静電容量に基づいて定まる。増幅トランジスタ316はソースフォロワ回路を構成しており、増幅トランジスタ316のドレインには固定電位である電源電位VDDが供給される。増幅トランジスタ316のソースにはスイッチングを行う選択トランジスタ318を介して信号出力線322が接続され、信号出力線322を介して画素信号PIXが出力される。増幅トランジスタ316は、フォトダイオードPD1の電荷に基づく信号およびフォトダイオードPD2の電荷に基づく信号を生成する。また、増幅トランジスタ316は、フォトダイオードPD3の電荷に基づく信号を生成する。選択トランジスタ318のONとOFFは選択トランジスタ318のゲート電極SELに供給される選択信号によって制御される。
図1(c)において説明した複数の電極25は、これらゲート電極SFおよびゲート電極SELを含む。増幅トランジスタ316および/または選択トランジスタ318の半導体領域(チャネル領域やソース・ドレイン領域)は、
図1(b)における素子領域13に設けられうる。増幅トランジスタ316のゲート電極SFや、選択トランジスタ318のゲート電極SELは、
図1(b)、(c)における素子分離部23に重なりうる。そのため、電荷保持部FDと増幅トランジスタ316および/または選択トランジスタ318の半導体領域との間には素子分離部23が位置しうる。
図1(c)において説明した電極250は例えばゲート電極SFである。増幅トランジスタ316のチャネル幅を素子分離部23で規定することは、増幅トランジスタ316の特性のバラツキを低減する上で有利である。
【0042】
電荷保持部FDおよびゲート電極SFには、スイッチングを行う制御トランジスタ314を介して、MIS型のキャパシタCINC1および/またはキャパシタCINC2が接続されている。MIS型のキャパシタCINC1の一方の電極をキャパシタ電極CEL1と称する。MIS型のキャパシタCINC2の一方の電極をキャパシタ電極CEL2と称する。
図1(c)において説明した複数の電極25は、電荷保持部FDへ接続された、MIS型のキャパシタCINC1、CINC2を構成するキャパシタ電極CEL1、CEL2を含みうる。制御トランジスタ314の電荷保持部FDの側の端子がソースおよびドレインの一方の端子である。制御トランジスタ314のソースおよびドレインの他方の端子にMIS型のキャパシタCINC1の一方の端子が接続されており、キャパシタCINC1の他方の端子がキャパシタ電極CEL1である。キャパシタCINC1を用いる期間には、キャパシタ電極CEL1には固定電位が供給されうる。キャパシタCINC1を用いる期間と用いない期間とで、キャパシタ電極CEL1に供給される電位が異なっていてもよい。キャパシタ電極CEL1には、ゲート電極CTRLおよび/またはゲート電極RESと同じ電位が印加されてもよい。キャパシタ電極CEL1はゲート電極CTRLまたはゲート電極RESと一体であってもよい。制御トランジスタ314のソースおよびドレインの他方の端子にMIS型のキャパシタCINC2のキャパシタ電極CEL2が接続されており、キャパシタCINC2の他方の端子には固定電位が供給されている。本例ではキャパシタCINC2の他方の端子に接地電位VSSが供給されているが、電源電位VDDが供給されてもよいし、電源電位VDDと接地電位VSSとの間の中間電位が供給されてもよい。制御トランジスタ314のソースおよびドレインの他方の端子には、スイッチングを行うリセットトランジスタ312のソースおよびドレインの一方の端子が接続されている。リセットトランジスタ312のソースおよびドレインの他方の端子には固定電位である電源電位VDDが供給される。1(c)において説明した複数の電極25は、制御トランジスタ314のゲート電極CTRLおよびリセットトランジスタ312のゲート電極RSTを含む。リセットトランジスタ312および/または制御トランジスタ314の半導体領域(チャネル領域やソース・ドレイン領域)は、
図1(b)における素子領域13に設けられうる。リセットトランジスタ312のゲート電極RESや、制御トランジスタ314のゲート電極CTRLは、
図1(b)、(c)における素子分離部23に重なりうる。そのため、電荷保持部FDとリセットトランジスタ312および/または制御トランジスタ314の半導体領域との間には素子分離部23が位置しうる。
【0043】
制御トランジスタ314をONにすると、キャパシタCINC1および/またはキャパシタCINC2が制御トランジスタ314を介してキャパシタCFDに接続される。そうすると、キャパシタCFDに対して、キャパシタCINC1および/またはキャパシタCINC2が並列接続されることになる。そうすると、検出ノードの容量が、キャパシタCFDの容量と、キャパシタCINC1および/またはキャパシタCINC2の容量との和に増加する。つまり、制御トランジスタ314をONにすると、検出ノードの容量Cが増加する。検出ノードの容量Cが増加すると、ΔV=ΔQ/Cで表されるように、検出ノードの電荷量Qあたりの検出ノードの電位Vの変位量が減少する。これにより、電荷量Qが多い場合に、検出ノードのゲインを低くして、画素信号PIXを出力できる。電荷量Qが多い場合とは、明るいシーンを撮影した場合や、高感度のフォトダイオードPD1で生成された電荷が転送ゲート304で転送された場合である。一方で、電荷量Qが小さい場合には、制御トランジスタ314をOFFにすると、検出ノードの容量Cが減少する。検出ノードの容量Cが減少すると、ΔV=ΔQ/Cで表されるように、検出ノードの電荷量Qあたりの検出ノードの電位Vの変位量が増加する。これにより、電荷量Qが少ない場合に、検出ノードのゲインを高めて、画素信号PIXを出力できる。電荷量Qが少ない場合とは、暗いシーンを撮影した場合や、低感度のフォトダイオードPD2で生成された電荷が転送ゲート306で転送された場合である。信号出力線322には不図示の列回路が接続されている。列回路はCSD回路、アナログアンプおよび/またはADコンバータを含みうる。フォトダイオードPD1の電荷に基づいて出力された画素信号PIXと、フォトダイオードPD2の電荷に基づいて出力された画素信号PIXは、その信号レベルが合成(加算)されうる。信号レベルの加算の仕方は、画素信号PIXがアナログ信号の状態で行われてもよいし、画素信号PIXをADコンバータでデジタル信号に変換した後に、デジタル信号の状態で論理演算されてもよい。このように、信号レベルを合成することで、ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0044】
画素回路300において、キャパシタCINC1とキャパシタCINC2は同等の機能を有しうるため、画素回路300には、キャパシタCINC1およびキャパシタCINC2のいずれか一方のみを設けてもよい。
【0045】
図2において、破線で囲んだ部分Vに位置する構成要素は省略可能である。すなわち、画素回路300において転送ゲート305および電荷排出部CD2は無くてもよい。
【0046】
また、
図2において、破線で囲んだ部分Wに位置する構成要素は省略可能である。すなわち、画素回路300においてフォトダイオードPD3、転送ゲート310、転送ゲート308および電荷排出部CD3は無くてもよい。
【0047】
以下、
図1、
図2を用いて説明した実施形態に適用可能な、より具体的な実施形態1~9を説明する。以下で説明する半導体装置930はCMOSイメージセンサでありうる。CMOSイメージセンサは画素の微細化や多画素化が進んでおり、車載カメラ用途のイメージセンサについても同様である。特に複数のフォトダイオードを有する車載カメラ用イメージセンサでは、フォトダイオードが複数あることに加え、画素トランジスタも通常のCMOSイメージセンサと比較して多くなる傾向がある。ゆえに、画素面積縮小の工夫は重要である。本実施形態は、上述の問題点を鑑みてなされたものであり、入れ子型の複数のフォトダイオードを有するCMOSイメージセンサにおいて、画素面積の増大を抑制する画素構造を提供する。
【0048】
<実施形態1>
図3、
図4、
図5用いて実施形態1を説明する。実施形態1においては、
図2の破線で囲んだ部分Vに位置する構成要素と破線で囲んだ部分Wに位置する構成要素は半導体装置930に含まれなくてよい。
図3は実施形態1における画素の平面図である。
図3の上側の図には、表面FS側の構成要素が示されており、
図3の下側の図には、平面HPの構成要素が示されている。表面FS側および平面HP側において、裏面BSの受光領域11の9つの区画B1~B9を重ねて記載している。また、表面FS側および平面HP側において、表面FSのうちの、裏面BSの受光領域11(区画B1~B9)に重ならない領域である、非重複領域B0を重ねて記載している。非重複領域B0は、裏面BSにいて遮光部22で遮光された遮光領域もしくは区画B1~B9を有する画素とは別の画素の受光領域に重なる。
【0049】
平面HPでは、内側区画である区画B1に重なるフォトダイオードPD2を含む内側のフォトダイオードPD2が中心に配置され、内側のフォトダイオードPD2を取り囲むように外側のフォトダイオードPD1が配置されている。外側のフォトダイオードPD1は外側区画である区画B2~B9に重なる。内側のフォトダイオードPD2と外側のフォトダイオードPD1の間には分離領域ISOが配置されている。分離領域ISOが、内側のフォトダイオードPD2と外側のフォトダイオードPD1を電気的および/または光学的に分離している。
【0050】
一方、表面FS側では、同様に外側のフォトダイオードPD1が内側のフォトダイオードPD2を取り囲むように配置されている。内側のフォトダイオードPD2は、転送電極TX2を含む転送ゲートを介して電荷保持部FDへ接続されている。外側のフォトダイオードPD1はそれぞれ転送電極TX1を含む転送ゲートを介して電荷保持部FDへ接続されている。外側のフォトダイオードPD1はブルーミング防止のための、転送電極AB1を含む転送ゲート302を介して電荷排出部CD1に接続される。電荷排出部CD1には電源電圧VDDを供給するコンタクトプラグPDDが接続されている。ゲート電極RESを含むリセットトランジスタ312の一端には、電源電位VDDを供給するコンタクトプラグPDDに接続されている。リセットトランジスタ312の他端は制御トランジスタ314の一端と共有されている。制御トランジスタ314の他端はコンタクトプラグPFDおよび不図示の配線を介して、電荷保持部FDに接続される。増幅トランジスタ316のゲート電極SFも電荷保持部FDに接続される。増幅トランジスタ316のドレインは電源電位VDDを供給するコンタクトプラグPDDに接続に接続され、増幅トランジスタ316のソースは、ゲート電極SELを有する選択トランジスタ318の一端に接続される。選択トランジスタ318の他端は出力用のコンタクトプラグOUTに接続さ、コンタクトプラグOUTは、信号出力線322に接続される。
【0051】
外側のフォトダイオードPD1と内側のフォトダイオードPD2は光に対する感度が異なり、本実施形態では外側のフォトダイオードPD1の方が、感度が高い。これは外側のフォトダイオードPD1の面積および/または体積を内側のフォトダイオードPD2の面積および/または体積よりも大きくしているからである。このほか、マイクロレンズアレイやカラーフィルタアレイの配置や形状を最適化することによって、内側のフォトダイオードPD2より多くの光を外側のフォトダイオードPD1に導くことでも実現される。この、外側のフォトダイオードPD1と内側のフォトダイオードPD2の感度の違い、および、制御トランジスタ314の制御によるゲインの増減を組み合わせることにより、高ダイナミックレンジな読み出しが可能となる。
【0052】
なお、
図3ではフォトダイオードは多角形をしているが、円形やドーナツ型など異なる形状でも構わない。また、画素トランジスタのサイズや向き、単位画素内での配置や相互の位置関係、ソース-ドレイン端子の共有の仕方などは一例であり、これに限られない。
【0053】
図3から理解されるように、転送電極TX2は、裏面BSに垂直なZ方向において、区画B2に重なる。転送電極TX1は、裏面BSに垂直なZ方向において、8つの区画B2~B9の少なくとも1つの区画に重なり、本例では区画B4に重なる。転送電極AB1は、裏面BSに垂直なZ方向において、8つの区画B2~B9の少なくとも1つの区画に重なり、本例では区画B4に重なる。このように、転送電極TX1および転送電極AB1の双方が8つの区画B2~B9の少なくとも同じ区画(本例では区画B4)に重なる。これにより、フォトダイオードPD1から電荷保持部FDへの転送電極TX1による転送と、フォトダイオードPD1から電荷排出部CD1への転送電極AB1による転送の効率とが高まる。電荷保持部FDに接続されたコンタクトプラグPFDが、裏面BSに垂直なZ方向において、区画B1に重なる。電荷保持部FDに接続されたコンタクトプラグPFDが、転送電極TX1と転送電極TX2との間に位置する。これにより、フォトダイオードPD1から電荷保持部FDへの転送電極TX1による転送と、フォトダイオードPD2から電荷保持部FDへの転送電極TX2による転送の効率とが高まる。
【0054】
キャパシタ電極CEL1は、裏面BSに垂直な方向において、8つの区画B2~B9の少なくとも2つの区画に重なり、本例では区画B2と区画B6の2つの区画に重なる。ただし、キャパシタ電極CEL1のうち、8つの区画B2~B9に重なる部分は、キャパシタ電極CEL1の半分未満であり、キャパシタ電極CEL1の大部分は非重複領域B0に重なる。ここで、本例におけるキャパシタ電極CEL1は、
図1におけるゲート電極CTRLと一体化しており、
図2において示したキャパシタ電極CEL1とゲート電極CTIRLを、
図3においては一体化した電極CTRL&CEL1として記載している。ゲート電極RES,ゲート電極SF,ゲート電極SELの8つの区画B2~B9に重なる部分は、ゲート電極RES,ゲート電極SF,ゲート電極SELの半分未満である。ゲート電極RES,ゲート電極SF,ゲート電極SELの大部分は非重複領域B0に重なる。コンタクトプラグPDD、コンタクトプラグPFDおよびコンタクトプラグOUTは非重複領域B0に重なる。
【0055】
図4(a)は
図3のA-A’線における断面模式図を示しており、
図4(b)は
図3のB-B’線における断面模式図を示している。
図5は
図3のA-C-D-E-F-G-H線における断面模式図を示している。
図4、
図5において、半導体層10内でハッチングを付していない領域は第1導電型(本例ではn型)の半導体領域である。
図4、
図5において、半導体層10内でハッチングを付していない領域の一部は第2導電型(本例ではp型)の半導体領域である。
図4(a)に示されるように、外側のフォトダイオードPD1と内側のフォトダイオードPD2とは平面HPから半導体層10の内部のある深さまで分離領域ISOにより電気的・光学的に分離されている。分離領域ISOは電荷保持部FDの導電型(本例ではn型)とは反対の導電型(本例ではp型)を有する半導体領域および/または絶縁体領域で構成されうる。分離領域ISOを構成しうる絶縁体領域は上述した溝DTの中に配置されうる。
【0056】
一方、
図4(a)および
図4(b)に示されるように、半導体層10の中には、裏面BSに垂直なZ方向において8つの区画B2~B9に重なるようにn型の半導体領域CB1が配されている。半導体領域CB1は、少なくとも表面FSからの距離がD以上かつ3×D未満である範囲に配されている。ここで、距離Dとは
図1(c)で示した半導体層10の厚さT(表面FSと裏面BSとの距離)を用いて、D=T/4で表される。平面FQと表面FSとの距離はT/4であるから、表面FSからの距離がD未満である範囲とは、平面FQと表面FSの間の範囲であり、表面FSからの距離がD以上である範囲とは、平面FQと裏面BSの間の範囲である。同様に、表面FSからの距離が3×D未満である範囲とは、平面BQと表面FSの間の範囲であり、表面FSからの距離が3×D以上である範囲とは、平面BQと裏面BSの間の範囲である。したがって、表面FSからの距離がD以上かつ3×D未満である範囲とは、平面FQと平面BQの間の範囲である。半導体領域CB1は、少なくとも平面FQと平面BQの間の範囲に配置されており、本例では、平面FQと表面FSの間の範囲にも配置されており、平面BQと裏面BSの間の範囲にも配置されている。半導体層10の中には、裏面BSに垂直なZ方向において8つの区画B2~B9の少なくとも1つの区画(本例では区画B4)に重なるようにn型の半導体領域CA1が配されている。半導体領域CA1は、少なくとも表面FSからの距離がD未満である範囲に設けられている。このn型の半導体領域CB1,CA1はフォトダイオードPD1のカソードであり、光電変換部として機能しうる。半導体領域CA1は半導体領域CB1よりも不純物濃度が濃いため、半導体領域CA1は、半導体領域CB1で生じた電荷を収集する電荷収集部として機能する。半導体領域CB1で生じた電荷は、半導体領域CA1に収集され、半導体領域CA1から電荷保持部FDへ転送される。電荷収集部に収集された電荷は、電荷収集部に蓄積されることから、半導体領域CA1を電荷蓄積部と称することもできる。なお、半導体領域CB1は、表面FSからの距離がD未満である範囲にも配されており、半導体領域CB1は半導体領域CA1に連続している。また、半導体領域CB1は、表面FSからの距離が3×D以上である範囲にも配されている。また、半導体領域CB1は、非重複領域B0に重なる。半導体領域CB1を非重複領域B0にまで広げて配置することで、フォトダイオードPD1のカソードの体積が増える。そうすると、フォトダイオードPD1のPN接合面の面積が大きくなり、フォトダイオードPD1の接合容量が増大する。これにより、フォトダイオードPD1に蓄積できる最大の電荷量(飽和電荷量)が増大する。フォトダイオードPD1の飽和電荷量を増大させることは、フォトダイオードPD1の電荷に基づく信号とフォトダイオードPD2の電荷に基づく信号を合成した場合に、合成して得られる信号のダイナミックレンジを拡大する上で有利である。フォトダイオードPD1の飽和電荷量を増大させることは、フォトダイオードPD2よりもフォトダイオードPD1の感度が高い場合に比べて、フォトダイオードPD2よりもフォトダイオードPD1の感度が低い場合の方が、ダイナミックレンジの拡大に有利である。
【0057】
ここで、距離D(μm)とは
図1(c)で示した半導体層10の厚さT(表面FSと裏面BSとの距離)を用いて、D=T/4で表される。平面HPと表面FSとの距離は、以上T/2であるから、表面FSからの距離がD以上である範囲とは、平面HPと裏面BSの間の範囲である。表面FSからの距離がD/2未満である範囲とは、平面FQと表面FSの間の範囲である。表面FSからの距離がD/2以上かつD未満である範囲とは、平面FQと平面HPの間の範囲である。
【0058】
同様に、半導体層10の中には、裏面BSに垂直なZ方向において区画B1に重なるようにn型の半導体領域CB2が配されている。半導体領域CB2は、少なくとも表面FSからの距離がD以上かつ3×D未満である範囲に配されている。半導体層10の中には、裏面BSに垂直なZ方向において区画B1に重なるようにn型の半導体領域CA2が配されている。半導体領域CA2は、少なくとも表面FSからの距離がD未満である範囲に設けられている。このn型の半導体領域CB2,CA2はフォトダイオードPD2のカソードであり、光電変換部として機能しうる。半導体領域CA2は半導体領域CB2よりも不純物濃度が濃いため、半導体領域CA2は、半導体領域CB2で生じた電荷を収集する電荷収集部として機能する。すなわち、半導体領域CB2で生じた電荷は、半導体領域CA2に収集され、半導体領域CA2から電荷保持部FDへ転送される。電荷収集部に収集された電荷は、電荷収集部に蓄積されることから、半導体領域CA2を電荷蓄積部と称することもできる。なお、半導体領域CB2は、表面FSからの距離がD(μm)未満である範囲にも配されており、半導体領域CB2は半導体領域CA2に連続している。また、半導体領域CB2は、表面FSからの距離が3×D以上である範囲にも配されている。
【0059】
半導体層10の中には、表面FSに垂直なZ方向における半導体領域CB1と表面FSとの間にp型の半導体領域WLが配されている。半導体領域WLは、少なくとも、表面FSからの距離がD未満である範囲に設けられている。すなわち、半導体領域WLは、少なくとも平面FQと表面FSの間の範囲に配置されている。半導体領域WLは、
図1における素子分離部23の底よりも浅い範囲と、素子分離部23の底よりも深い範囲の両方には配置されている。素子分離部23の深さを電極25の厚さH(
図1(c)参照)で近似することができる。したがって、半導体領域WLは、表面FSからの距離が厚さHに等しい距離S未満である範囲と、表面FSからの距離が厚さHに等しい距離S以上である範囲と、に設けられている。半導体領域WLは、裏面BSに垂直なZ方向において8つの区画B2~B9の少なくとも1つの区画に重なるように配置される。本例では、半導体領域WLは裏面BSに垂直なZ方向において8つの区画B2~B9の全てに重なる。ただし、本例では、半導体領域WLは裏面BSに垂直なZ方向において8つの区画B2~B9の各々の一部のみに重なる。半導体領域WLは裏面BSに垂直なZ方向において非重複領域B0に重なる。半導体領域WLは表面FSと平面FQとの間において、半導体領域CA1を囲む。半導体領域WLは表面FSと平面FQとの間において、半導体領域CB1を囲む。また、半導体領域WLは表面FSと平面FQとの間において、フォトダイオードPD2のカソードであるn型の半導体領域を囲む。
【0060】
このp型の半導体領域WLは、半導体領域CB1および半導体領域CA1とPN接合をなす、フォトダイオードPD2のアノードであり、光電変換部として機能しうる。半導体領域WLには固定電位が供給される。半導体領域WLに供給される固定電位は、例えば
図2に示すような接地電位VSSである。また、p型の半導体領域WLは、電荷保持部FDや電荷排出部CD1、増幅トランジスタ316のドレインSFDや選択トランジスタ318のソースSLSと、半導体領域CB1および半導体領域CA1との間の障壁として機能しうる。また、p型の半導体領域WLは電極25の下においてチャネルを形成する領域としても機能しうる。
【0061】
半導体領域CA1と表面FSとの間には、表面FSの近傍で発生するノイズ電荷が半導体領域CA1へ混入することを抑制するために、p型の半導体領域WLよりも不純物濃度が濃いp型の半導体領域である表面不純物領域(不図示)が設けられうる。同様に、半導体領域CB1と表面FSとの間には、表面FSの近傍で発生するノイズ電荷が半導体領域CB1へ混入することを抑制するために、p型の半導体領域WLよりも不純物濃度が濃いp型の半導体領域である表面不純物領域(不図示)が設けられうる。これらの表面不純物領域の深さは、
図1で示した素子分離部23より浅くてよい。すなわち、表面FSとn型の不純物領域CA1との間の距離および/または表面FSとn型の不純物領域CA1との間の距離は、素子分離部23の深さよりも小さいことが好ましい。したがって、表面FSとn型の不純物領域CA1との間の距離および/または表面FSとn型の不純物領域CA1との間の距離は、電極25の厚さHに等しい距離Sよりも小さくてよい。
【0062】
半導体層10の中には、表面FSに垂直なZ方向における半導体領域WLと表面FSとの間にn型の半導体領域が配されている。半導体領域WLと表面FSとの間のn型の半導体領域は、電荷保持部FDや電荷排出部CD1である。また、半導体領域WLと表面FSとの間のn型の半導体領域は、n型の半導体領域は、画素トランジスタのソースやドレインである。画素トランジスタのソースやドレインとは、例えば増幅トランジスタ316のドレインSFD、増幅トランジスタ316および選択トランジスタ318が共有するソース・ドレインSD、選択トランジスタ318のソースSLSである。
【0063】
図3および
図4(b)から理解されるように、ゲート電極RESとゲート電極CTRLとゲート電極SELの内の少なくとも2つ(本例では3つ)は列方向(Y方向)に沿って並んでいる。また、ゲート電極RESとゲート電極CTRLとゲート電極SELの3つが、一直線上に並んでいる。ゲート電極RESとゲート電極CTRLとゲート電極SELの夫々には、画素行に含まれる複数の画素に共通接続された行配線が接続される。ゲート電極RESとゲート電極CTRLとゲート電極SELを列方向に沿って、および/または一直線上に並べることで、画素回路300の動作の精度が向上する。ゲート電極RESに接続された行配線とゲート電極CTRLに接続された行配線とゲート電極SELに接続された行配線との間隔を広くできるため、行配線間のクロストークを低減できるからである。同様の理由から、転送電極TX1と転送電極TX2と転送電極AB1の少なくとも2つ(本例では3つ)は列方向(Y方向)に沿って並んでいる。また、転送電極TX1と転送電極TX2と転送電極AB1の3つが、一直線上に並んでいる。
【0064】
図3、
図4からも分かるように、p型の半導体領域WLは、Z方向において外側のフォトダイオードPD1のn型の半導体領域CB1の一部と重なるように形成される。前述のように画素トランジスタは半導体領域WLの内部に形成される。つまり、画素トランジスタは、平面HPにおいて外側のフォトダイオードPD1のn型の半導体領域CB1が占める領域と平面視で重なるように配置されている。このような配置により、画素トランジスタを外側のフォトダイオードPD1の外側(非重複領域B0)のみに配置する場合と比較して、単位画素面積を小さくできる。そのため、チップ面積の増大や画素数の減少を抑制することができる。なお、すべての画素トランジスタが、平面HPにおいて外側のフォトダイオードPD1のn型の半導体領域CB1と平面視で重なるように配置されているが、前述の効果を得るには画素トランジスタのうち少なくとも一部がn型の半導体領域CB1に重なればよい。
【0065】
図5(a)、(b)は、図のA-C-D-E-F-G-H断面における外側のフォトダイオードPD1の不純物濃度分布例である。
図5(a)ではn型の半導体領域CB1の不純物濃度を、n型の半導体領域CB1の部分ごとに濃度N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8で示している。
図5(b)ではn型の半導体領域CB1の不純物濃度を、n型の半導体領域CB1の部分ごとに濃度N11、N12、N13、N14、N15、N16、N17、N8で示している。ここで、不純物濃度はN1<N2<N3<N4<N5<N6<N7<N8の関係になる。そのため、n型の半導体領域CB1のポテンシャルの深さは、N1<N2<N3<N4<N5<N6<N7<N8の関係になる。電子にとってのポテンシャルの高さもN1<N2<N3<N4<N5<N6<N7<N8の関係になる。また、不純物濃度はN11<N12<N13<N14<N15<N16<N17<N18の関係になる。そのため、n型の半導体領域CB1のポテンシャルの深さは、N11<N12<N13<N14<N15<N16<N17<N18の関係になる。電子にとってのポテンシャルの高さもN11<N12<N13<N14<N15<N16<N17<N18の関係になる。
【0066】
なお、
図5(a)と
図5(b)の関係を組み合わせてもよい。例えば、区画B2、B3に重なる部分は、N3<N4’<N4<N4”<N5を満たす、N4’<N4<N4”の濃度範囲を持ってもよい。そして、N4’≦N11<N13<N16<N4”を満たすように、区画B2、B3に重なる部分の濃度を設定してもよい。
【0067】
図5(a)について説明する。
図5(a)の例では、平面FQと平面BQの間の範囲における半導体領域CB1の不純物濃度に特徴があるので、この範囲を主に説明する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B4に重なる濃度N6の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B2に重なる濃度N4の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B3に重なる濃度N4の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B5に重なる濃度N2の部分を有する。濃度N6の不純物濃度が濃度N4の部分の不純物濃度よりも高い。濃度N2の部分の不純物濃度が濃度N4の部分の不純物濃度よりも低い。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B6に重なる濃度N5の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B8に重なる濃度N5の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B7に重なる濃度N3の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B9に重なる濃度N3の部分を有する。濃度N5の不純物濃度が濃度N3の部分の不純物濃度よりも高い。
【0068】
図5(b)について説明する。
図5(b)の例では、平面FQと表面FSの間の範囲における半導体領域CB1の不純物濃度に特徴があるので、この範囲を主に説明する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B4に重なる濃度N18の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B2に重なる濃度N16の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B3に重なる濃度N16の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B5に重なる濃度N14の部分を有する。濃度N18の部分の不純物濃度が濃度N16の部分の不純物濃度よりも高い。濃度N14の部分の不純物濃度が濃度N16の部分の不純物濃度よりも低い。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B6に重なる濃度N17の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B8に重なる濃度N17の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B7に重なる濃度N15の部分を有する。半導体領域CB1は、裏面BSに垂直なZ方向において区画B9に重なる濃度N15の部分を有する。濃度N17の不純物濃度が濃度N15の部分の不純物濃度よりも高い。
【0069】
外側のフォトダイオードPD1の電荷収集部である半導体領域CA1に対して遠い部分から順に、不純物濃度を高くし、ポテンシャルを深くしていくことで効率的に電荷を収集することができる。そのため、飽和電荷量向上や感度向上の効果が期待できる。なお、不純物濃度分布は外側のフォトダイオードPD1の半導体領域CA1に対して遠い部分から近い部分に向かって順次高くなっていけばよい。また、ポテンシャル分布は外側のフォトダイオードPD1の半導体領域CA1に対して遠い部分から近い部分に向かって順次深くなっていけばよい。そのため、不純物濃度分布の形成の仕方は
図5のような形態に限定されない。また、
図5では不純物濃度分布を段階的に変化させているが、同様の理由で漸次的に変化させてもよい。
【0070】
<実施形態2>
図6を用いて実施形態2を説明する。実施形態2において実施形態1と同様であってよい点については説明を省略する。
【0071】
実施形態2は、キャパシタ電極の配置が実施形態1とは異なる。実施形態1では
図2で示したキャパシタCINC1を用いたが、実施形態2では、
図2で示したキャパシタCINC2を用いている。キャパシタ電極CEL2は、ゲート電極CTRLを含む制御トランジスタ314の端子に接続されたコンタクトプラグPCELを介してキャパシタ電極CEL2に接続されている。実施形態2のキャパシタ電極CEL2は実施形態1のキャパシタ電極CEL1に比べて面積を大きくしており、キャパシタCINC2の容量が大きくなっている。これにより、ダイナミックレンジ拡大の効果が増大する。高輝度方向のダイナミックレンジを拡大するためには、キャパシタCINC1またはキャパシタCINC2の電極CEL1またはCEL2の面積を大きくし、キャパシタCINC1またはキャパシタCINC2容量を増大させることが有効である。しかし、実施形態1においてこれを行おうとすると、キャパシタ電極CEL1と一体化されたゲート電極CTRLの面積を大きくする必要がある。そのため、ゲート電極CTRLに接続され、制御トランジスタ314のオン/オフを制御する信号を伝送する制御線の負荷が増大する。ゆえに、ゲート電極CTRLの面積を大きくしていくと、次第に制御線を駆動することが困難になる。一方、実施形態2の構成では、ゲート電極CTRLを有する制御トランジスタ314はスイッチとして作用すればよい。そして、キャパシタCINC2の容量を増大するにはキャパシタ電極CEL2の面積を大きくすればよい。つまり、ゲート電極CTRLを有する制御トランジスタ314に接続された制御線の負荷増大を伴わずにキャパシタCINC2の容量を大きくすることが容易である。そのため、高輝度方向のダイナミックレンジ拡大を図る上でのメリットとなる。大面積のキャパシタ電極CEL2は5つの区画B8、B3、B7、B5、B9に重なる。キャパシタ電極CEL2の大部分は非重複領域B0に重なる。本例では、キャパシタ電極CEL2を区画B8、B3に重なる部分を含むキャパシタ電極CEL2と、区画B5、B9に重なる部分を含むキャパシタ電極CEL2とに分割しているが、これらを一体化してもよい。
【0072】
<実施形態3>
図7、
図9を用いて実施形態3を説明する。
図9(a)は
図7のA-G線における断面図である。実施形態3において実施形態2と同様であってよい点については説明を省略する。実施形態3は、1つのフォトダイオードPD1に転送電極TX1を2つ設けている点で実施形態2と異なる。電荷保持部FDは区画B4に重なる。2つの転送電極TX1の一方の転送電極TX1は区画B4および/または区画B6に重なる。2つの転送電極TX1の他方の転送電極TX1は区画B4および/または区画B8に重なる。
図9(a)に示す様に、フォトダイオードPD1の電荷収集部となる半導体領域CA1は区画B6と区画B8の各々に重なるように、2か所に設けられている。区画B6に重なる半導体領域CA1と、区画B8に重なる半導体領域CA1と、の間に半導体領域WLおよび電荷保持部FDが設けられている。区画B6に重なる半導体領域CA1には区画B5、B9、B2、B6、B4に重なる光電変換部で生じた電荷が主に収集される。区画B8に重なる半導体領域CA1には区画B5、B7、B9、B2、B8、B4に重なる光電変換部で生じた電荷が主に収集される。このように、電荷収集部となる半導体領域CA1を複数に分けて設けることにより、電荷収集効率を向上することができる。電荷保持部FDに接続されたコンタクトプラグPFDが、2つの転送電極TX1の一方の転送電極TX1と他方の転送電極TX1との間に位置する。このように、転送電極TX1を2つ設けることで、フォトダイオードPD1から電荷保持部FDへの電荷の転送効率が向上する。また、1つのフォトダイオードPD1に転送電極AB1および電荷排出部CD1の組を2つ設けている点でも実施形態2と異なる。このようにすることで、フォトダイオードPD1からの電荷のブルーミングを抑制できる。
【0073】
<実施形態4>
図8を用いて実施形態4を説明する。実施形態4においては、半導体装置930は
図2の破線で囲んだ部分Wに位置する構成要素を含むが、
図2の破線で囲んだ部分Vに位置する構成要素は半導体装置930に含まれなくてよい。
図9(b)は
図8のA-F線における断面図である。実施形態4において実施形態3と同様であってよい点については説明を省略する。実施形態4は、フォトダイオードPD2の両側にフォトダイオードPD1とフォトダイオードPD3を設けている。換言すると、フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD3との間にフォトダイオードPD2が位置する。フォトダイオードPD1は区画B6、B2、B9、B5に重なる光電変換部を有し、フォトダイオードPD3は区画B8、B3、B7、B5に重なる光電変換部を有する。フォトダイードPD1とフォトダイオードPD2とを互いに分離するため、区画B5に重なる位置において、フォトダイードPD1の光電変換部とフォトダイオードPD1の光電変換部との間には分離領域ISOが設けられている。このように、フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD3を設けることで、フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD3とで瞳分割を精度良く行うことができる。そのため、フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD3の出力の違いに基づく位相差検出、焦点検出、測距、奥行き情報の取得などを精度良く行うことができる。
【0074】
フォトダイオードPD1には転送電極TX1を含む転送ゲート304(
図2参照)が接続され、フォトダイオードPD3には転送電極TX3を含む転送ゲート310(
図2参照)が接続される。転送電極TX1は区画B4および/または区画B6に重なり、転送電極TX3は区画B4および/または区画B8に重なる。
図9(b)に示す様に、フォトダイオードPD1の電荷収集部となる半導体領域CA1は区画B6に重なり、フォトダイオードPD3の電荷収集部となる半導体領域CA3は区画B8に重なる。フォトダイオードPD1の光電変換部となる半導体領域CB1は区画B5、B9、B2、B6に重なる。フォトダイオードPD3の光電変換部となる半導体領域CB3は区画B5、B7、B3、B8に重なる。電荷保持部FDに接続されたコンタクトプラグPFDが、転送電極TX1と転送電極TX3との間に位置する。
【0075】
<実施形態5>
図10、
図11を用いて実施形態5を説明する。
図11は
図10のA-F線における断面図である。実施形態5において実施形態2と同様であってよい点については説明を省略する。
【0076】
実施形態5は、キャパシタ電極CELおよびP型のウェルWELの配置が実施形態2とは異なる。本例では、大面積のキャパシタ電極CEL2は5つの区画B8、B3、B7、B5、B9に重なる。区画B8、B3、B7、B5、B9の各々の過半がキャパシタ電極CEL2に重なる。そのため、実施形態2よりもさらに高輝度方向へのダイナミックレンジを拡大できる。
図11に示す様に、キャパシタ電極CEL2の下には半導体領域WLが配されている。そのため、区画B8、B3、B7、B5、B9の各々の過半が半導体領域WLに重なる。また、本例では、電荷排出部CD1が区画B5に重なる。また、転送電極AB1は区画B4および/または区画B6に重なる。また、ゲート電極RES、CTRL、SF、SELの各々の過半が区画B2または区画B6に重なる。
【0077】
<実施形態6>
図12を用いて実施形態6を説明する。実施形態6においては、半導体装置930は
図2の破線で囲んだ部分Wに位置する構成要素を含むが、
図2の破線で囲んだ部分Vに位置する構成要素は半導体装置930に含まれなくてよい。実施形態6において実施形態2と同様であってよい点については説明を省略する。実施形態6では、フォトダイオードPD2の両側にフォトダイオードPD1が位置し、フォトダイオードPD2の両側にフォトダイオードPD3が位置する。フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD2の間にフォトダイオードPD3が位置する。フォトダイードPD1とフォトダイオードPD2とを互いに分離するため、区画B5に重なる位置において、フォトダイードPD1の光電変換部とフォトダイオードPD1の光電変換部との間には分離領域ISOが設けられている。フォトダイオードPD1、PD3は区画B2~B6、B2、B9、B5に重なる光電変換部を有する。フォトダイオードPD1の2つの電荷収集部は非重複領域B0に配され、フォトダイオードPD3の2つ電荷収集部は区画B6、B8にそれぞれ配される。転送電極AB1に接続された電荷排出部CD1と転送電極AB3に接続された電荷排出部CD3は共通になっている。電荷保持部FDおよびコンタクトプラグPFDは区画B4に重なる。2つの転送電極TX3は区画B4に重なる。転送電極TX1は非重複領域B0に重なる。2つの転送電極AB1の一方は区画B6および/または非重複領域B0に重なり、2つの転送電極AB1の他方は区画B8および/または非重複領域B0に重なる。
【0078】
<実施形態7>
図13、15(b)を用いて実施形態7を説明する。実施形態7においては、半導体装置930は
図2の破線で囲んだ部分Wに位置する構成要素を含むが、
図2の破線で囲んだ部分Vに位置する構成要素は半導体装置930に含まれなくてよい。
図15(b)は、
図13のJ-J’線における断面図である。実施形態7において実施形態6と同様であってよい点については説明を省略する。実施形態7は、複数の画素PX1~PX4で電荷保持部FDおよび/または電荷排出部CD1を共有している点で、他の実施形態と異なる。
【0079】
図13には、各々がフォトダイオードPD1、フォトダイオードPD2、フォトダイオードPD3を有する4つの画素PX1、PX2、PX3、PX4を示している。フォトダイオードPD3はフォトダイオードPD2に比べて面積が大きく、高感度であり、飽和しやすい。しかし飽和後のシグナルがフォトダイオードPD2に流入すると、低感度のフォトダイオードPD2は面積が小さいため、すぐに飽和してしまう。そのため、フォトダイオードPD2が実効的に作用しない。フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD3には、転送電極AB1と転送電極AB3が、2個ずつ設けられている。フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD3は、
図12の電荷排出部CD1&CD3と離間して配置しており、転送電極AB1、転送電極AB3の電位により、導通から非導通までの間で、そのポテンシャル障壁を制御できる。転送電極AB1または転送電極AB3をONにしてフォトダイオードPD1またはフォトダイオードPD3を電荷排出部CD1&CD3と半導通状態(ポテンシャル障壁が中間の状態)にする。半導通状態では、フォトダイオードPD1、フォトダイオードPD3の中にある電荷は、一定量を超えると電荷排出部CD1&CD3へリークする。これにより、フォトダイオードPD1、フォトダイオードPD3の電荷が飽和状態に達しても、隣接画素へリークすることを抑制できる。このように、フォトダイオードの間の飽和後リークが無いように制御することができる。
【0080】
図14には、4画素分を記載している。
図14では、上の2つの画素PX1、PX2を並進対称に配置したものが上の2つの画素PX3、PX4であるが、上の2つの画素PX1、PX2をミラー対象に配置してもよい。電荷排出部CD1&CD3は、画素PX2と画素PX3とで共有されている。電荷保持部FDは、画素PX1と画素PX2とで共有されている。電荷保持部FDは、画素PX3と画素PX4とで共有されている。ゲート電極SEL,SF,RES,CTRLを有する画素トランジスタは、画素PX2と画素PX3とで共有されていてもよいし、画素PX3と画素PX4とで共有されていてもよい。
【0081】
電荷排出部CD1&CD3を設けると、その分、フォトダイオードPD1,PD2、PD3の面積が減る可能性がある。しかし、電荷排出部CD1&CD3を複数の画素で共有すると、フォトダイオードPD1,PD2、PD3の面積の減少を抑制できる。ここでは、フォトダイオードPD3および電荷排出部CD3を設けたが、フォトダイオードPD3および電荷排出部CD3を省略して、複数の画素で電荷排出部CD1を共有してもよい。フローティングディフュージョンの共有単位と、電荷排出部CD1&CD3領域の共有単位が異なる。この配置にすることで、電荷排出部CD1&CD3領域が画素に占める割合を低減することができる他、配線も共有できるため、配線数を減らし、配線間カップリング容量を減らすことができる。電荷保持部FDを複数の画素で共有すると、信号読み出しが遅くなるため、電荷保持部FDを複数の画素で共有せずに、電荷排出部CD1を複数の画素で共有してもよい。
【0082】
転送電極AB1と転送電極AB3は、フォトダイオードPD1、フォトダイオードPD3に対して、1個ずつでも良い。リークはフォトダイオードが飽和してから起こるので、リーク経路として成立する箇所が一か所あれば良い。その意味で、左右の対称性が必要でない場合等では、当該のゲートは1個でも良い。
【0083】
<実施形態8>
図13、15(b)を用いて実施形態8を説明する。
図15(b)は、
図13のK-K’線における断面図である。実施形態8において実施形態7と同様であってよい点については説明を省略する。実施形態8は、電荷排出部CD2を設けている点で、他の実施形態と異なる。実施形態8においては、半導体装置930は
図2の破線で囲んだ部分Wに位置する構成要素と、
図2の破線で囲んだ部分Vに位置する構成要素とを含む。
【0084】
図1に示す様にマイクロレンズを用いる場合、垂直入射の光は画素中心に集まるため、フォトダイオードPD1よりもフォトダイオードPD2の感度が高くなりうる。より高い感度のフォトダイオードPD2が飽和した後、隣接画素へ電荷がリークしないようにすることが好ましい。そこで、飽和後のリーク経路として、フォトダイオードPD2に、電荷排出部CD2を設けている。フォトダイオードPD2が飽和した後に、フォトダイオードPD1、フォトダイオードPD3へリークする電荷を減少させることができる。
【0085】
<実施形態9>
実施形態9は実施形態1~8のいずれにも適用可能である。
図16(a)は本実施形態の半導体装置930を備えた機器9191を説明する模式図である。半導体装置930を備える機器9191について詳細に説明する。半導体装置930は、上述のように、半導体層10を有する半導体デバイス910のほかに、半導体デバイス910を収容するパッケージ920を含むことができる。パッケージ920は、半導体デバイス910が固定された基体と、半導体デバイス910に対向するガラスなどの蓋体と、を含むことができる。パッケージ920は、さらに、基体に設けられた端子と半導体デバイス910に設けられた端子とを接続するボンディングワイヤやバンプなどの接合部材を含むことができる。
【0086】
機器9191は、光学装置940、制御装置950、処理装置960、表示装置970、記憶装置980、機械装置990の少なくともいずれかを備えることができる。光学装置940は、半導体装置930に対応する。光学装置940は、例えばレンズやシャッター、ミラーである。制御装置950は、半導体装置930を制御する。制御装置950は、例えばASICなどの半導体装置である。
【0087】
処理装置960は、半導体装置930から出力された信号を処理する。処理装置960は、AFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成するための、CPUやASICなどの半導体装置である。表示装置970は、半導体装置930で得られた情報(画像)を表示する、EL表示装置や液晶表示装置である。記憶装置980は、半導体装置930で得られた情報(画像)を記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスである。記憶装置980は、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリである。
【0088】
機械装置990は、モーターやエンジンなどの可動部あるいは推進部を有する。機器9191では、半導体装置930から出力された信号を表示装置970に表示したり、機器9191が備える通信装置(不図示)によって外部に送信したりする。そのために、機器9191は、半導体装置930が有する記憶回路や演算回路とは別に、記憶装置980や処理装置960をさらに備えることが好ましい。機械装置990は、半導体装置930から出力され信号に基づいて制御されてもよい。
【0089】
また、機器9191は、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器に適する。カメラにおける機械装置990はズーミングや合焦、シャッター動作のために光学装置940の部品を駆動することができる。あるいは、カメラにおける機械装置990は防振動作のために半導体装置930を移動することができる。
【0090】
また、機器9191は、車両や船舶、飛行体などの輸送機器であり得る。輸送機器における機械装置990は移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器9191は、半導体装置930を輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置960は、半導体装置930で得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置990を操作するための処理を行うことができる。あるいは、機器9191は内視鏡などの医療機器や、測距センサなどの計測機器、電子顕微鏡のような分析機器、複写機などの事務機器であってもよい。
【0091】
上述した実施形態によれば、良好な画素特性を得ることが可能となる。従って、半導体装置の価値を高めることができる。ここでいう価値を高めることには、機能の追加、性能の向上、特性の向上、信頼性の向上、製造歩留まりの向上、環境負荷の低減、コストダウン、小型化、軽量化の少なくともいずれかが該当する。
【0092】
従って、本実施形態に係る半導体装置930を機器9191に用いれば、機器の価値をも向上することができる。例えば、半導体装置930を輸送機器に搭載して、輸送機器の外部の撮影や外部環境の測定を行う際に優れた性能を得ることができる。よって、輸送機器の製造、販売を行う上で、本実施形態に係る半導体装置を輸送機器へ搭載することを決定することは、輸送機器自体の性能を高める上で有利である。特に、半導体装置で得られた情報を用いて輸送機器の運転支援および/または自動運転を行う輸送機器に半導体装置930は好適である。
【0093】
図16(a)、
図16(b)は、本実施形態における車載カメラに関する撮像システムのブロック図である。撮像システム8は、上述した実施形態の半導体装置を用いた撮像部80を有する。撮像システム8は、撮像部80により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部801と、撮像システム8より取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差算出部802を有する。また、撮像システム8は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離計測部803と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部804とを有する。ここで、視差算出部802、距離計測部803は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部804はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0094】
撮像システム8は車両情報取得装置810と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム8には、衝突判定部804での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU820が接続されている。また、撮像システム8は、衝突判定部804での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置830とも接続されている。例えば、衝突判定部804の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU820はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置830は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。撮像システム8は上述のように車両を制御する動作の制御を行う制御手段として機能する。
【0095】
本実施形態では車両の周囲、例えば前方または後方を撮像システム8で撮像する。
図16(b)は、車両前方(撮像範囲850)を撮像する場合の撮像システムを示している。撮像制御手段としての車両情報取得装置810が、上述の第1~第7実施形態に記載した動作を行うように撮像システム8ないしは撮像部80に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0096】
上述では、他の車両と衝突しないように制御する運転支援の例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。また、半導体装置930はドライブレコーダーにも適用可能である。さらに、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機、人工衛星、産業用ロボットおよび民生用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)、監視システム等、広く物体認識または生体認識を利用する機器に適用することができる。
【0097】
本発明は、上述の実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0098】
以上、説明した実施形態は、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。なお、本明細書の開示内容は、本明細書に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略しても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【符号の説明】
【0099】
10 半導体層
FS 表面
BS 裏面
11 受光領域
B1~B9 区画
PG 画素
PD1 フォトダイオード
PD2 フォトダイオード
25 電極