(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】粒子容器及び粒子充填装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240805BHJP
G01N 15/00 20240101ALI20240805BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20240805BHJP
G01N 21/11 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
G01N15/00 A
G01N21/03 Z
G01N21/11
(21)【出願番号】P 2019230524
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018243764
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 尚史
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-515155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 15/00
G01N 21/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子を測定可能に収容する測定領域を形成する測定部を有する粒子容器であって、
前記測定部は、対向する複数のプレートと、前記対向する複数のプレートの間に配置される側面部と、を有し、
前記対向する複数のプレートの少なくとも一方での、前記複数の粒子を測定する測定方向の厚みが、中央部に比べて前記中央部を囲む周辺部がより薄いことにより、前記測定方向における前記測定領域の幅が変化可能であることを特徴とする粒子容器。
【請求項2】
複数の粒子を測定可能に収容する測定領域を形成する測定部を有する粒子容器であって、
前記測定部は、対向する複数のプレートと、前記対向する複数のプレートの間に配置される側面部と、を有し、
前記対向する複数のプレートの少なくとも一方での、前記複数の粒子を測定する測定方向に直交する面内において、中央部を囲む溝が設けられていることにより、前記測定方向における前記測定領域の幅が変化可能であることを特徴とする粒子容器。
【請求項3】
前記測定方向における前記測定領域の幅は、前記粒子の直径の1倍以上、且つ、2倍未満に変化可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子容器。
【請求項4】
前記対向する複数のプレートの間に、前記測定方向における前記測定領域の幅を規定するスペーサを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粒子容器。
【請求項5】
前記スペーサは、硬質材からなり尖鋭部を有することを特徴とする請求項4に記載の粒子容器。
【請求項6】
前記複数の粒子を収容し、前記測定領域と連通する収容領域を形成する収容部を有し、前記測定方向における前記収容領域の幅は、前記粒子の直径の2倍以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粒子容器。
【請求項7】
前記収容部は、液体試料を前記複数の粒子に変換する液滴生成部を有することを特徴とする請求項6に記載の粒子容器。
【請求項8】
前記複数の粒子は、液滴であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の粒子容器。
【請求項9】
前記粒子容器は、前記複数のプレートに直交する方向で光を照射し、前記光を照射された前記複数の粒子をカメラによって観察するための粒子容器であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の粒子容器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の粒子容器の、前記測定方向における前記測定領域の幅を変化させる幅変化部を有することを特徴とする粒子充填装置。
【請求項11】
請求項10に記載の粒子充填装置であって、
前記幅変化部によって、前記測定領域の幅を、前記粒子の直径の1倍以上、且つ、2倍未満に変化させること、を特徴とする粒子充填装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の粒子充填装置であって、
前記幅変化部は、前記測定方向に直交する面内の中央部と周辺部のうち、周辺部のみを加圧又は周辺部のみの圧力を開放することを特徴とする粒子充填装置。
【請求項13】
請求項5又は6に記載の粒子容器の、前記収容領域内に収容された前記複数の粒子を、前記測定領域へ移動させる移動部と、
請求項5又は6に記載の粒子容器の、前記測定方向における前記測定領域の幅を変化させる幅変化部と、を有することを特徴とする粒子充填装置。
【請求項14】
請求項
13に記載の粒子充填装置であって、
前記移動部による前記複数の粒子の移動と、前記幅変化部による前記測定領域の幅の変化と、を順に行い、
前記幅変化部によって、前記測定領域の幅を、前記粒子の直径の1倍以上、且つ、2倍未満に変化させること、を特徴とする粒子充填装置。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか1項に記載の粒子充填装置と、
前記粒子容器の前記測定領域内に収容された前記複数の粒子を測定する測定装置と、を有することを特徴とする測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子容器及び粒子充填装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
観察(測定)対象のDNAやタンパク質などが含まれた試料(粒子)をカートリッジ(粒子容器)内にて加熱し反応させ、蛍光観察(蛍光測定)等を実施し評価する検査(測定)装置が利用されている。
【0003】
特許文献1には、上下二枚の平面板で囲まれたカートリッジ内に試料を入れ、カートリッジを熱源に押し当てることで試料を加熱させたのち、試料を光学系で観察する検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、液滴化した試料(粒子)を蛍光観察(蛍光測定)することが記載されているが、観察(測定)時の上下面間のギャップ(幅)が規定されていない。その為、測定時に液滴が重なり、測定できない試料がでてしまう課題が考えられる。
【0006】
その課題を解決するために、上下面間の幅を粒子の直径相当に規定することで、粒子が測定方向において重なることを防止することが考えられる。しかし、当該幅が狭いため、複数の粒子を充填するのに時間がかかってしまうという課題が新たに発生する。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、複数の粒子を測定可能に収容する測定領域を形成する測定部を有する粒子容器において、当該測定領域に複数の粒子を充填する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、複数の粒子を測定可能に収容する測定領域を形成する測定部を有する粒子容器であって、前記測定部は、対向する複数のプレートと、前記対向する複数のプレートの間に配置される側面部と、を有し、前記測定部は、前記対向する複数のプレートの少なくとも一方における前記測定方向の厚みが、前記測定方向に直交する面内で異なることにより、前記複数の粒子を測定する測定方向における前記測定領域の幅が変化可能であることを特徴とする粒子容器を採用する。
【0009】
また、本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、複数の粒子を測定可能に収容する測定領域を形成する測定部を有する粒子容器であって、前記測定部は、対向する複数のプレートと、前記対向する複数のプレートの間に配置される側面部と、を有し、前記測定部は、前記側面部が、前記測定方向において可撓性を有することにより、前記複数の粒子を測定する測定方向における前記測定領域の幅が変化可能であることを特徴とする粒子容器を採用する。
【発明の効果】
【0010】
複数の粒子を測定可能に収容する測定領域を形成する測定部を有する粒子容器において、当該測定領域に複数の粒子を充填する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るカートリッジ(粒子容器)の外観を示す(a)斜視図、(b)断面図。
【
図2】測定領域のギャップ(幅)が変化する様子を示す断面図。
【
図3】上プレート形態の1例における測定領域の幅が変化する様子を示す断面図。
【
図4】本実施形態に係る球状試料(微粒子)を充填等する測定システムを示す全体図。
【
図5】本実施形態に係る移動部の種類と動作を示す断面図。
【
図6】本実施形態が解決しようとする課題を説明する(a)断面図、(b)断面図、(c)拡大断面図及び拡大上面図、(d)拡大断面図及び拡大上面図。
【
図7】本実施形態に係る幅変化部の種類と動作を示す(a)断面図、(b)断面図、(c)斜視図、(d)断面図。
【
図8】本実施形態に係る移動部と幅変化部の動作の1例を示す断面図。
【
図9】本実施形態に係る幅変化部の動作例とその動作を実現するための幅変化部の形態を示す断面図。
【
図10】本実施形態に係る幅変化部の動作例とその動作を実現するための粒子容器の形態を示す断面図。
【
図11】幅変化後に規定される球状試料の直径程度について説明した(a)拡大断面図及び拡大上面図、(b)拡大断面図及び拡大上面図、(c)拡大断面図。
【
図12】第2の実施形態に係る粒子容器の形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下の構成を採用する。
【0013】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状およびそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。よって、この発明の範囲を、以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0014】
本発明は、カートリッジ(粒子容器)内の予備エリア(収容領域)に球状試料(粒子)を配置し、粒子を、ギャップ(測定方向における幅)が粒子の直径相当に規定された観察エリア(測定領域)内に充填させるための粒子容器に関する。
【0015】
また、本発明は、上記粒子容器において短時間で粒子を測定領域内に充填される粒子充填装置(を有する測定システム)に関する。
【0016】
本発明の粒子容器と、本発明の粒子充填装置(を有する測定システム)の一例として、それぞれ
図1、
図4を用いて説明する。
【0017】
(粒子容器の構成)
まず、粒子容器100の構成について
図1を用いて説明する。
【0018】
001は観察対象である複数の粒子である。002は、粒子001を観察する際に粒子001が配置される(粒子001を測定可能に収容する)測定領域である。
【0019】
測定領域002は、対向する複数のプレートとしての、上プレート003と下プレート004に挟まれており、外力によってギャップが変化する(変化可能な)構造となっている。008は、上プレート003と下プレート004の間に配置される側面部である。少なくとも、上プレート003、下プレート004、側面部008により、測定領域002を形成する測定部が構成される。
【0020】
005は、測定領域002に隣接し、測定領域002と連通する、粒子001が保管(収容)される収容領域である。収容領域005は、最大高さ(測定方向における幅の最大値)が、少なくとも測定領域002の最大高さよりも高い(大きい)ことを特徴としている。少なくとも、下プレート004、後述する接合部009、後述する開口設置プレート030により、収容領域005が形成する収容部が構成される。複数の粒子001を測定する測定方向における収容領域005の幅は、当該粒子001の直径の2倍以上であればよい。収容部は、後述する液滴生成部007を有する。
【0021】
009は、収容領域005と、上プレート003または下プレート004の間に配置される接合部である。006は、液体試料を収容領域005に入れるための試料投入口である。007は、液体試料を粒子001に変換するための液滴生成部である。030は、試料投入口006、後述する開口012が設置される開口設置プレートである。
【0022】
(収容領域について)
収容領域005には、複数の粒子001が保管(収容)される。
【0023】
まず、この収容領域005に、観察(測定)対象となる粒子へ変化する液体試料が、試料投入口006から投入される。なお、コンタミネーション(試料汚染)を防止する為、この試料投入口006に蓋をつけることができるようにするのが好ましい。
【0024】
投入された液体試料は、液滴生成部007によって、粒子001である、複数の微細な液滴へと変化する。この液滴生成部007には、多孔質ガラス膜や微細な孔が開けられたマイクロチャネルなどの乳化膜や、液滴を生成するためのマイクロ流路などが利用できる。なお、液滴生成の際には、液体試料や連続相を流動させる必要がある。その為、
図4に示すように、ポンプ015(
図4参照)がつながる開口012を収容領域005に設置することが望ましい。
【0025】
また、あらかじめ試料を液滴化したものや樹脂ビーズのような対象を粒子容器100に投入する場合には、液滴生成部007を設ける必要はない。
【0026】
収容領域005において、粒子001を加熱し、PCR反応などを生じさせる場合には、熱源と接触する収容領域005の壁面を、熱伝導率の高い構造にするのが好ましい。たとえば、熱源が収容領域005の下側に設置される場合には、収容領域005の床板は金属板や薄い樹脂板を採用することが考えられる。
【0027】
粒子001を加熱することで連続相等から気泡が発生することがある。この気泡は粒子001の観察の妨げとなるため、測定領域002に入れないようにすることが望ましい。その為、収容領域005の高さは少なくとも測定領域002の最大高さよりも高くし、収容領域で発生した気泡が収容領域内で保持されるようにすることが望ましい。
【0028】
また、発生した気泡を集めて確保しておく空気だまりを収容領域005に作成することも、気泡を測定領域002へ侵入させないために有効な手法である。
【0029】
(測定領域について)
測定領域002は、上プレート003と下プレート004に挟まれた構造となっている。これらプレート003,004の間に側面部008が設けられることで、測定領域を形成する容器(測定部)の形態をなしている。側面部008は、ギャップ(上プレート003と下プレート004の間の、測定方向における幅)を規定する。
【0030】
なお、収容領域005と隣接しており、収容領域005内に保管された粒子001を測定領域002内に取り込むことが可能となっている。上プレート003と下プレート004間のギャップは、外力によって変化可能な機構となっている。この機構について
図2を用いて説明する。
【0031】
図2(a)は、複数の粒子001が充填された測定領域002を形成する測定部の断面図を示したものである。
【0032】
図2(b)、
図2(c)は、
図2(a)に外力を加えたときの様子を示した断面図である。
図2(b)は、上プレート003が可撓性を有し、上プレート003が変形することによって、測定領域002のギャップが狭められた様子である。
図2(c)は、側面部が可撓性を有し、側面部008が変形することによって、測定領域002のギャップが狭められた様子である。
【0033】
これらの変形は弾性変形であり、外力に対し、想定通りの変形を実現させるために、上プレート003、下プレート004、側面部008の構造と材質が考えられている。なお、外力がかからない状況においては、測定領域002のギャップが、
図2(a)のように一定の状態で自立できるように、上プレート003や側面部008の構造と材質を考えることも必要である。
【0034】
図2(d)は、上プレート003と他の構造体を接続する、側面部008と接合部009が、柔らかい素材であり、上プレート003と下プレート004の間である、測定領域002内に、上プレート003の高さを規定する、クッション材からなる第1のスペーサ010が設置されている形態である。
【0035】
図2(e)は、
図2(d)に外力が加わった場合の形態であり、第1のスペーサ010が変形することでギャップが変形している。このクッション材010には、ゴム材料が好ましいが、連続相との相性を考慮する必要がある。特に、フッ素ゴムの場合は、様々な連続相に対応できる。
【0036】
これら構造において、外力によってギャップを所望の高さにするために、硬質材からなる第2のスペーサ011を設けることが有効である。この第2のスペーサ011は、上プレート003と下プレート004の間である、測定領域002内に設けられ、外力によって変形せず、連続相によって劣化しない材料を選択する。なお、
図2(f)では、スペーサが下プレート004に設置された様子が記載されているが、スペーサを上プレート003に設置しても良い。
【0037】
なお、第2のスペーサ011の形状は、
図2(f)のように尖らせた構造(尖鋭部)を有することが望ましい。先鋭部により、ギャップが狭められるときに、粒子001が第2のスペーサ011から逃れやすくなり、粒子001が押しつぶされるのを防ぐことができるからである。
【0038】
粒子001は、測定領域002において蛍光観察(蛍光測定)に代表される光学計測の対象となる。その為、上プレート003および下プレート004のうちの少なくとも一つは、光学的に透過率の高い部材であることが求められる。たとえば、ガラスや石英、アクリルやポリカーボネートに代表される樹脂材が挙げられる。特に、外力によって変形させる場合は、樹脂材が好ましい。
【0039】
図2(b)のように、上プレート003が変形する場合、変形後の測定領域002内のギャップが一定である面積が広い方が好ましい。上プレート003の形状を工夫することで、変形後の測定領域002内のギャップが一定である面積を広くすることができる。たとえば、
図3(a)のように、上プレート003における測定方向の厚みを、上プレート003の面内(測定方向に直交する面内)で異ならせる。具体的には、上プレート003の周辺部を、上プレート003の中央部に比べ厚みを薄くする。または、
図3(b)のように、上プレート003の周囲に溝を掘る(形成する)ことで、意図的に変形させる箇所を設ける。厚みを異ならせる箇所(厚みを薄くする箇所や、溝を形成する箇所)は、上プレート003ではなく、下プレート004のみに設けても良いし、
図3(c)、
図3(d)のように、上プレート003と下プレート004の両方に設けても良い。
【0040】
図3(c)、
図3(d)のように、上プレート003と下プレート004の両方に厚みを異ならせる箇所を設ける場合には、これらプレートに荷重をかける手段としては、これらプレートのそれぞれに対して(後述する)幅変化部を用いるとよい。また、一方のプレートに対しては(後述する)幅変化部を用いて、他方のプレートに対しては(後述する)幅変化部以外の手段を用いてもよい。幅変化部以外の手段としては、プレートに接する、厚みを有する部材などが考えられる。当該部材により、一方のプレートに(後述する)幅変化部により荷重をかけた際に、当該厚みを有する部材からの反作用により、他方のプレートにも荷重をかけられる。これにより、幅変化部を複数用いる必要がなくなるので、荷重をかける手段が簡略化され、粒子充填装置の製造コストや保守・運用コストの削減効果が得られる。上プレート003と下プレート004の厚みは、これらにかかる荷重に適した厚みにすればよく、これらの厚みは同じ厚みにしてもよいし、異なる厚みにしてもよい。
【0041】
このような上プレート003に外力を与えると、測定領域002の中央部のギャップがほぼ一定にできる。
【0042】
(粒子充填装置)
粒子充填装置(を有する測定システム200)の構成について、
図4を用いて説明する。
【0043】
013は、粒子容器をセットし固定する設置台である。014は、粒子容器内の球体試料の温度を変化させる温度調整部である。015は、試料投入部に入れられた液体試料を液滴生成部007にて液滴に変換させるために使用されるポンプである。016は、収容領域005内に配置された、粒子001を測定領域002の方向に移動させるための移動部である。
【0044】
017は、測定領域002内のギャップを変化させる(変化可能な)幅変化部である。018は、測定領域002内に配置された、粒子001を観察するためのカメラである。019は、カメラ018で粒子001を観察(測定)する際に使用される、粒子001に光を照射させる光源である。これらは、システム制御部020にて駆動される。
【0045】
まず、粒子容器を設置台013に固定する。次に、粒子容器内を連続相となる液体でみたす。なお、この連続相は、事前に粒子容器内に満たしておいてもかまわない。
【0046】
次に、試料投入口006から測定対象となる液体試料を投入する。液体試料を投入後、開口012にポンプ015を接続しポンプ015を駆動させることで、液滴生成部007から微細な液滴となった粒子001が生成され、収容領域005内に保管される。
【0047】
このポンプ015には、通常の流体ポンプ015以外にも、開口012にシリンジを取り付けることによってシリンジポンプなども利用できる。なお、液滴生成部007がマイクロ流路の場合、無拍動ポンプを使用することでサイズのバラつきが少ない液滴が生成できる。
【0048】
粒子001は、温度調整部014によって加熱することができる。たとえば、60℃と90℃の温度サイクルを粒子001に与えることで、PCR反応実施することができる。温度調整部014には、ペルチェ素子に代表される温度調整が可能なデバイスを使用することが好ましい。
【0049】
なお、
図4には、温度調整部014が、収容領域005の床板の位置に設置されているが、温度調整部014を測定領域002部に設置することも可能である。この形態は、温度を変化させたときの粒子001の状況を観察するのに適している。
【0050】
また、収容領域005部と測定領域002部に温度調整部014別途を用意しても良いし、その用途によって適した温度調整部014を選択しても良い。たとえば、収容領域005ではPCR反応を実施し、測定領域002にて融解温度計測を実施する場合には、観察部の温度調整部014は収容領域005に比べて、温度制御性の良いものを選択するのが好ましい。
【0051】
粒子充填装置は、少なくとも幅変化部017を有し、幅変化部017に加え、移動部016を有してもよい。粒子001は、移動部016によって測定領域002の方に移動し、幅変化部017によって測定領域002のギャップが変化する。この工程の詳細については後述する。
【0052】
測定領域002に配置された粒子001には、光源019から光が照射され、カメラ018にて撮像される。なお、光源019から照射される光は用途によって異なり、外観撮像用の白色光や蛍光観察(蛍光測定)用の紫外光などが選択できる。
【0053】
図4では、カメラ018と光源019が上プレート003側に設置されているが、これに限定されないし、光源019とカメラ018を複数用意してもよい。
【0054】
これらの制御はシステム制御部020によって制御され、液体試料投入から一連の処理が自動で実施できるようになっている。
【0055】
(移動部)
移動部016について、
図5を用いて説明する。
【0056】
図5(a)、(b)、(c)は、移動部016に粒子容器を傾斜させるデバイスを選択した例である。
図5(b)は、連続相に対し粒子001の比重が大きいときの例で
図5(c)は比重が小さいときの例であり、重力によって粒子001を測定領域002の方へ移動することができる。なお、温度調整部014による加熱によって粒子容器内に気泡が発生する場合がある。
【0057】
この気泡は粒子001のカメラ018での観察時に邪魔になる為、測定領域002内に残らないようにするのが好ましい。その為、移動部016の駆動時に気泡を対処するのが好ましい。
【0058】
たとえば、粒子001の比重が大きい場合には、
図5(b)のように収容領域005の方を高くすることで気泡を収容領域005の方に移動させることができる。
【0059】
また、粒子001の比重が小さい場合には、一旦、
図5(b)のように傾斜することで、気泡を収容領域005内に移動させ、開口012や試料投入口006のようなくぼみに気泡をトラップさせるのが好ましい。そして、そののち、
図5(c)の状態にして、粒子001を測定領域002に移動させるのが好ましい。なお、確実に気泡を収容領域005に集めるために、粒子容器に衝撃や振動を与えて測定領域002内の気泡に対し移動を促すことも効果的である。
【0060】
図5(d)は、移動部016に磁石021を収容領域005と測定領域002の間を移動させるデバイスを選択した例である。これは、磁力によって粒子001を動かす形態であり、磁力によって移動する粒子001を採用する必要がある。たとえば液滴では液体試料にあらかじめ微細な磁性粒子を混入するのが効果的である。
【0061】
また、これ以外にも移動部016に回転デバイスを採用し、設置台013を回転させることで、遠心力によって粒子001を測定領域002方面に移動させることも効果的である。なお、粒子001の比重が大きい場合、気泡の動きと粒子001の動きは逆になるため、測定領域002内の気泡は収容領域005の方に移動するという利点もある。
【0062】
(幅変化部)
図7を用いてギャップ変化について説明する前に、まず、本件が解決する課題について、
図6を用いて説明する。
【0063】
測定領域002のギャップが、粒子001の直径に対して大きい場合、この粒子001は、測定領域002内を移動しやすく、速く充填できるメリットがある(
図6(a))。
【0064】
しかし、測定領域002内にて粒子001が重なることがあり、カメラ018で観察できない試料が発生する(
図6(c))。この課題は、ギャップを粒子001の直径相当に規定し粒子001は1層に配置することで解決できる(
図6(d))。
【0065】
しかし、狭いギャップに粒子001を充填することは、粒子001や連続相のつまり等が発生するため、短時間に充填することが困難となってしまう(
図6(b))。
【0066】
その解決の為に、幅変化部017が機能する。まず、
図6(a)のようにギャップが広い状況において、移動部016を駆動させて、短時間で粒子001を測定領域002内に移動させる。
【0067】
移動後の測定領域002内の様子を、
図7(a)に示す。幅変化部017に、1軸アクチュエータを用いて上プレート003を押し付ける方向に荷重をかけギャップを狭くする。これにより、粒子001を1層に配置することができる。このときの1軸アクチュエータには、リニアステージ等が使用できるが、ギャップを変化できるのであれば、1軸アクチュエータに限定されない。
【0068】
なお、上プレート003との接触部を、
図7(c)、(d)のように中央部をくりぬいた形状にすることも効果的である。この形状の場合、周辺部のみ遮蔽されるため、上プレート003側から光照射やカメラ撮影ができるという効果がある。
【0069】
また、粒子001を測定領域002内に入れてからギャップを狭めるのではなく、ギャップを広げることによって粒子001を測定領域002内に引き入れることも有効である。
【0070】
図8(a)のように、あらかじめ測定領域002のギャップが狭められた状況を用意する。
図8(b)、(c)に示すように、移動部016を駆動させ、粒子001を測定領域002の方に移動させたのち、ギャップ制御部を駆動させ、ギャップを広げる。そして、これにより、測定領域002入口付近に集まった粒子001を測定領域002内に引き入れることができる。この手法は、短時間に測定領域002内に粒子001を充填するのみならず、加熱時に収容領域005にて発生する気泡を測定領域002に入れない効果もある。
【0071】
粒子001が液滴の場合、ギャップ変化時に静電気が発生し合一してしまう懸念がある。特にカートジッリ筐体が樹脂の場合に起こりやすい。この問題を解決するために粒子容器、もしくは設置台013、ギャップ駆動部の粒子容器接触部、もしくはそれらすべてをアースにつなぐことが有効である。
【0072】
また、円滑に液滴を1層配列するために、幅変化部017の制御方法を工夫することも有効である。
図7の例のように、粒子001を測定領域002に充填してからギャップを変化させる場合には、
図9(a)に示すように測定領域002の最下部方面からギャップを狭めていくことで、粒子001を測定領域002内で詰まらせることなく1層に配置できる。
【0073】
また、ギャップを広げる際に粒子001を引き入れる場合には、
図9(b)に示すように、収容領域005付近からギャップを広げることで、円滑に粒子001が測定領域002内に引き入れやすくなる。
【0074】
これらの制御を実施する方法として、幅変化部017を複数のアクチュエータを用意し、測定領域002の収容領域005付近と奥側を、それぞれ異なる加圧ができるようにする手法がある(
図9(c))。また、上プレート003の接触部形状を、上プレート003の奥側の方に突き出た形状にし、加圧時に奥側から徐々に収容領域005の方向に加圧していくことも有効である(
図9(d))。
【0075】
以上は、幅変化部017が収容領域005の上プレート003(の周辺部)を、直接加圧し変形させる例であるが、幅変化部017はこれに限定する必要はない。たとえば、粒子容器内をあらかじめ陰圧、または陽圧状態に設定し、幅変化部017が粒子容器内の圧力を解放させることで、測定領域002のギャップを変化させることも可能である。
【0076】
たとえば、収容領域005に粒子001を保管し、ポンプ015等で加圧、もしくは陰圧にすることで上プレート003を変化させ、栓した粒子容器は、ギャップが変化した状態で維持される。この粒子容器は、内部が陽圧状態のときは、
図10(a)、陰圧状態のときは、
図10(b)のようになっている。この粒子容器には、収容領域005とつながった空域A024と、空域A024と収容領域005内を塞ぐ開放栓023を備えている。そして、幅変化部017が、この開放栓023を開放することで、粒子容器内の圧力状態が緩和され、上プレート003の形状が元に戻り、ギャップが変化する。
【0077】
開放栓023の開放の様子を、
図10(c)に示す。空域A024は粒子容器に空いた淵のある開口012と、開口012を塞ぐように設置された、上下に駆動可能な栓からなる。この栓には、開放栓023を開放する為の突起部025と、平常時に突起部025が開放栓023を開放しないように突起物の移動を止めるストッパー026からなる。栓には、シール部材が設置され、開放栓023が開放された場合でも、粒子容器外に連続相が漏れないようになっている。
【0078】
ギャップ制御部は、ストッパー026を解除し、開放栓023を開放するデバイスであれば何でも利用でき、たとえば直動モータなどが利用できる。
【0079】
(変化後のギャップ高さ)
変化後のギャップ高さとしては、粒子001の直径程度(直径の1倍以上)に規定することが望ましい。たとえば、
図11(a)に示す通り、ギャップが直径の1.66倍の場合には、粒子001が積層しても、カメラ018の方向からは、最低でも直径の半分の領域が観察(測定)できる。この程度の粒子001が観察(測定)できれば、蛍光観察(蛍光測定)は可能である。
【0080】
また、粒子001の直径が大きく、且つ、カメラ018の倍率が大きい場合は、これより少ない領域しか観察できなくとも蛍光観察が可能となる。たとえば
図11(b)に示すように、ギャップが直径の1.83倍をこえても、粒子001の中央部が直径の10%の領域を撮像できる。ギャップが直径の2倍以上になると、粒子001が積層した場合、粒子001の中央部を撮像できないので、ギャップが直径の2倍未満が好ましい。
【0081】
また、粒子001の外観を観察したい場合には、上側と下側の粒子001の輪郭が観察できる必要がある。その為、カメラ018の被写界深度をDOF1としたとき、
図11(c)に示すように、ギャップを直径+DOF1以内に抑える必要がある。
【0082】
粒子容器に入っている全ての粒子001が、同じサイズであるとは限らない。ここで、記述する粒子001の直径については、粒子容器内に入っている全粒子001のサイズ分布の中央95%の粒子001のうち、最も大きい直径の値を基準にするのが好ましい。
【0083】
以上のように、目的によって直径程度を規定することで、粒子001から目的に沿った情報をカメラ018で取得することが可能となる。
【0084】
[実施形態1]
以下、第1の実施形態の粒子容器、粒子充填装置(を有する測定システム)の構成について説明する。図中、同一の構成要素には原則として同一の符号を付して、説明を省略する。
【0085】
図1は、本実施形態の粒子容器の構成を示す模式図である。本粒子容器は、液滴生成部007以外をすべてポリカーボネートで構成されている。射出成型で制作した部材やシート部材を、接着や接合技術を用いて組み立てている。本実施例では、収容領域005の床板と下プレート004を同じ1枚のシート部材を採用し、それ以外の筐体を射出成型で制作している。なお、熱が伝わりやすくするために厚みが0.2mmのシートを採用している。
【0086】
液滴生成部007には、フォトプロセスで制作されたシリコン製の多孔膜を用いている。多孔膜には、多数の同形状の貫通孔が開けられており、表面は疎水処理を施している。多孔膜は、試料投入口006を塞ぐように設置し接着する。多孔膜を接着した部材とシート部材は、接合によって接着され、容器の形態となっている。
【0087】
試料投入口006と開口012には、各種コネクタに接続できるようにネジが切られており、ポンプ015との接続や蓋による密封が可能となっている。
【0088】
多孔膜の孔形状は、穴を通過する試料が液滴になる際、直径が100μm程度になるように調整されている。なお、収容領域005の高さ、測定領域002の高さは、それぞれ500μm、400μmになるように設計されている。
【0089】
図4は、本実施形態の粒子001充填システムの構成を示す模式図である。
【0090】
設置台013は、金属製のプレートを用いており前述の粒子容器が固定できるようになっている。設置台013には、回転軸022がついており、設置台013を傾けることができる。設置台013に固定された粒子容器には、連続相としてオイルが満たされている。
【0091】
粒子容器を設置後に開口012にシリンジを設置し、そのシリンジをポンプ015であるシリンジポンプに接続する。水溶性の液体試料を試料投入口006に入れたのちシリンジポンプを稼働させることによって、液体試料が液滴生成部007を通過し、収容領域005内に液滴試料が多数生成される。液滴試料の生成後、シリンジを取り外し、開口012、および試料投入口006に蓋をし、密封する。
【0092】
なお、シリンジを蓋として利用してもかまわない。また、これらシリンジの設置やポンプ015への接続、着脱や液体試料の投入、蓋をする行為を自動化することも効果的である。密封後、温度調整部014であるペルチェ素子を駆動させ、液滴を加熱する。なお、PCR反応を実施する際は、60℃と90℃の温度サイクルを複数回実施させる。
【0093】
加熱処理後に、移動部016である直動モータを駆動させ、設置台013を傾斜させる。なお、本件では、液体試料の比重はオイルよりも大きいものを採用しているため、設置台013の駆動により、液滴が測定領域002の方に移動する。なお、液滴試料の直径が100μmに対し測定領域002のギャップが400μmと広いため、短期間で移動できる。
【0094】
液滴試料が測定領域002に充填されたのち、幅変化部017である直動モータを駆動させ上プレート003を変形させることで、測定領域002のギャップを狭める。なお、幅変化部017の上プレート003との設置部の形状には、
図7(c)、(d)に示すような中央部が開けた構造を選択した。なお、この開けた範囲が観察範囲となり、この領域のギャップが液滴直径の1.66倍である266mm以下になるよう、ギャップ駆動部を制御している。この制御により、観察範囲内の液滴は1層に配列される。
【0095】
液滴の1層配列後に、光源019から紫外線を照射し、カメラ018にて蛍光観察を実施することで、観察範囲内の液滴試料がすべて観察できる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態では、測定領域002のギャップが変化する粒子容器内に観察対象の複数の粒子001を注入し、測定領域002内に粒子001を充填後、ギャップを試料の直径相当に変化させる。それにより、短時間に粒子001を1層に充填することができる。
【0097】
[実施形態2]
以下、第2の実施形態の粒子容器、およびギャップ制御部の動作について説明する。図中、同一の構成要素には原則として同一の符号を付して、説明を省略する。また、粒子容器、およびギャップ制御部の動作以外のシステムについては実施例1と同様のものを採用しているため説明を省略する。
【0098】
図12は本実施形態の粒子容器の構成を示す模式図である。上プレート003の中央部に、粒子容器内に向けて、液滴の直径程度のくぼみが多数形成されている。移動部016により、測定領域002内に複数の液滴が移動されたのち、幅変化部017により上プレート003が変形され、くぼみに液滴が入り込んで固定される。
【0099】
なお、ギャップ変化後の測定領域002内のギャップは、上プレート003の凸部と下プレート004の距離が液滴の直径よりも小さくするのが好ましい。そうすることで、個々の液滴の動きはくぼみによって固定され、カメラ018による観察時に各液滴を定義することが容易になる。
【0100】
以上のカートジッリとシステムを採用することで、本実施形態では、粒子001を短時間で測定領域002に1層に充填でき、且つ、個々の粒子001の動きを固定することができる。
【符号の説明】
【0101】
002 観察エリア(測定領域)
003 上プレート(測定部)
004 下プレート(測定部)
008 側面部(測定部)
100 カートリッジ(粒子容器)