(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】レーダ装置及びそのレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/42 20060101AFI20240805BHJP
H01Q 3/04 20060101ALI20240805BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01S13/42
H01Q3/04
H01Q3/26 Z
(21)【出願番号】P 2019230708
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-037354(JP,A)
【文献】特開平10-148674(JP,A)
【文献】特開平09-171076(JP,A)
【文献】特開昭56-061670(JP,A)
【文献】特開2018-200218(JP,A)
【文献】国際公開第2015/173891(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/027422(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107607949(CN,A)
【文献】豊見本 和馬 外1名,合成開口処理を用いた伝搬遅延測定,電子情報通信学会技術研究報告 SANE2016-21-SANE2016-3,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年07月14日,第116巻、第143号,p.27-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
H01Q 3/04, 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ビームで繰り返し送信される送信パルス、受信ビームで受信される前記送信パルスの反射の信号の少なくともいずれか一方のビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方を、前記送信パルスのPRI(Pulse repetition Interval)に相当する時間間隔で変化させるビーム制御部と、
前記ビーム制御部が前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方に与える変化と共通に、前記ビーム指向方向に対する振幅応答、位相応答の少なくともいずれか一方を変化させた参照信号を生成する参照信号生成部と、
前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方の制御を受けたときの前記受信
ビームで受信される前記送信パルスの反射の信号から繰り返し送信される前記送信パルスのそれぞれに対応する受信区間のCPI(Coherent Pulse Interval)信号を抽出するCPI信号抽出部と、
前記CPI信号のレンジセル毎に前記参照信号と相関処理をすることにより、目標方向を測角する測角部と
を具備するレーダ装置。
【請求項2】
前記ビーム制御部は、前記ビーム指向方向の変化を、アンテナの機械回転または電子走査の少なくともいずれか一方の手段により実現する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記ビーム制御部は、前記ビーム指向方向の変化を、機械回転によるアンテナの位相中心を回転中心からずらすことにより実現する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記ビーム制御部は、前記送信パルスの振幅または位相の少なくともいずれか一方を変化させる請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記参照信号生成部は、前記相関処理の結果から目標速度を算出し、前記目標速度から目標ドップラ成分を抽出し、前記目標ドップラ成分による前記PRI間の位相変化に基づいて前記参照信号を補正する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項6】
他装置から送信ビームで繰り返し送信される送信パルスがそれぞれ目標で反射された信号を自装置の受信ビームで受信して前記目標を検出する受信装置を備えるレーダ装置であって、
前記受信装置は、
前記送信パルスのPRI(Pulse repetition Interval)に相当する時間間隔で前記受信ビームのビーム指向方向に対する受信信号の振幅、位相の少なくともいずれか一方を変化させるビーム制御部と、
前記ビーム制御部が前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方に与える変化と共通に、前記ビーム指向方向に対する振幅応答、位相応答の少なくともいずれか一方を変化させた参照信号を生成する参照信号生成部と、
前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方の制御を受けたときの前記受信信号から繰り返し送信される前記送信パルスのそれぞれに対応する受信区間のCPI(Coherent Pulse Interval)信号を抽出するCPI信号抽出部と、
前記CPI信号のレンジセル毎に前記参照信号と相関処理をすることにより、目標方向を測角する測角部とを備えるレーダ装置。
【請求項7】
前記ビーム制御部は、前記ビーム指向方向の変化を、アンテナの機械回転または電子走査の少なくともいずれか一方の手段により実現する請求項6記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記ビーム制御部は、前記ビーム指向方向の位相変化を、機械回転によるアンテナの位相中心を回転中心からずらすことにより実現する請求項6記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記参照信号生成部は、前記相関処理の結果から目標速度を算出し、前記目標速度から目標ドップラ成分を抽出し、前記目標ドップラ成分による前記PRI間の位相変化に基づいて前記参照信号を補正する請求項6記載のレーダ装置。
【請求項10】
送信ビームで繰り返し送信される送信パルス、受信ビームで受信される前記送信パルスの反射の信号の少なくともいずれか一方のビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方を、前記送信パルスのPRI(Pulse repetition Interval)に相当する時間間隔で変化させ、
前記送信ビーム、受信ビームの少なくともいずれか一方を変化させる前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方と共通に、前記ビーム指向方向に対する振幅応答、位相応答の少なくともいずれか一方を変化させた参照信号を生成し、
前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方の制御を受けたときの前記受信
ビームで受信される前記送信パルスの反射の信号から繰り返し送信される前記送信パルスのそれぞれに対応する受信区間のCPI(Coherent Pulse Interval)信号を抽出し、
前記CPI信号のレンジセル毎に前記参照信号と相関処理をすることにより、目標方向を測角するレーダ装置のレーダ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダ装置及びそのレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置にあっては、高い角度精度を実現するアンテナの測角方式として、振幅モノパルス方式や位相モノパルス方式(非特許文献1)があるが、これらの方式ではスクイントしたΣ2ビームやΔビームを形成するための受信チャンネルが増えてしまい、コスト増となっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】モノパルス、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.260-264 (1996)
【文献】DBF(Digital Beam Forming)、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.289-291(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来のレーダ装置で採用するアンテナの測角方式としては、振幅モノパルスや位相モノパルス方式があるが、スクイントしたΣ2ビームやΔビームのための受信チャンネルが増えてしまうため、コストの面で問題となっている。
【0005】
本実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、少ない受信チャンネル数で角度精度の高い測角を実現することのできるレーダ装置及びそのレーダ信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態に係るレーダ装置は、ビーム制御部と、参照信号生成部と、CPI信号抽出部と、測角部とを備える。前記ビーム制御部は、送信ビームで繰り返し送信される送信パルス、受信ビームで受信される前記送信パルスの反射の信号の少なくともいずれか一方のビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方を、前記送信パルスのPRI(Pulse repetition Interval)に相当する時間間隔で変化させる。前記参照信号生成部は、前記ビーム制御部が前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方に与える変化と共通に、前記ビーム指向方向に対する振幅応答、位相応答の少なくともいずれか一方を変化させた参照信号を生成する。前記CPI信号抽出部は、前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方の制御を受けたときの前記受信ビームで受信される前記送信パルスの反射の信号から繰り返し送信される前記送信パルスのそれぞれに対応する受信区間のCPI(Coherent Pulse Interval)信号を抽出する。前記測角部は、前記CPI信号のレンジセル毎に前記参照信号と相関処理をすることにより、目標方向を測角する。すなわち、レーダ装置において、ビーム指向方向をPRI間で変えることで、Σビームの振幅/位相変調情報を参照信号として相関処理することにより、高精度な目標方向の測角が可能となる。
【0007】
また、他の実施形態に係るレーダ装置は、他装置から送信ビームで繰り返し送信される送信パルスがそれぞれ目標で反射された信号を自装置の受信ビームで受信して前記目標を検出する受信装置を備えるレーダ装置の場合、前記受信装置は、ビーム制御部と、参照信号生成部と、CPI信号抽出部と、測角部とを備える。前記ビーム制御部は、前記送信パルスのPRI(Pulse repetition Interval)に相当する時間間隔で前記受信ビームのビーム指向方向に対する受信信号の振幅、位相の少なくともいずれか一方を変化させる。前記参照信号生成部は、前記ビーム制御部が前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方に与える変化と共通に、前記ビーム指向方向に対する振幅応答、位相応答の少なくともいずれか一方を変化させた参照信号を生成する。前記CPI信号抽出部は、前記ビーム指向方向に対する振幅、位相の少なくともいずれか一方の制御を受けたときの前記受信ビームで受信される前記送信パルスの反射の信号から繰り返し送信される前記送信パルスのそれぞれに対応する受信区間のCPI(Coherent Pulse Interval)信号を抽出する。前記測角部は、前記CPI信号のレンジセル毎に前記参照信号と相関処理をすることにより、目標方向を測角する。すなわち、送信系統を持たないレーダ装置でも、ビーム指向方向をPRI間で変えることで、Σビームの振幅/位相変調情報を参照信号として相関処理することにより、高精度な目標方向の測角が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態において、ビーム指向方向制御と目標方向抽出処理を説明するための図。
【
図3】第1の実施形態において、ビーム指向方向を変化させる手法を示す図。
【
図4】第1の実施形態において、受信パルスの取得から振幅ピーク抽出及び角度抽出の処理の流れを説明するための波形図。
【
図5】第1の実施形態において、ビーム指向方向を変化させる他の手法を示す図。
【
図6】第1の実施形態において、送信パルスの変調効果を説明するための波形図。
【
図7】第2の実施形態に係るレーダ装置の送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図。
【
図8】第3の実施形態に係るレーダ装置として、受信装置のみのレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至
図6を参照して、第1の実施形態に係るレーダ装置を説明する。
図1乃至
図6は第1の実施形態に係るレーダ装置の構成、処理例を示しており、
図1はフェーズドアレイアンテナを用いた送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図、
図2はビーム指向方向制御と目標方向抽出処理を説明するための図、
図3はビーム指向方向を変化させる手法を示す図、
図4は受信パルスの取得から振幅ピーク抽出及び角度抽出の処理の流れを説明するための波形図、
図5はビーム指向方向を変化させる他の手法を示す図、
図6は送信パルスの変調効果を説明するための波形図である。
【0011】
まず、
図1において、送信系統では、送信信号生成器11で変調パルス等の送信信号を生成し、DA変換器12によりアナログ信号に変換し、周波数変換器13で高周波(RF)信号に変換し、フェーズドアレイの場合には、分配器14でN系統に分配する。各系統において、送信信号を移相器151~15Nで個別に位相制御を施し、高出力増幅器161~16Nで電力増幅し、サーキュレータ171~17Nを介して、アンテナ素子181~18Nによるアレイアンテナから送信する。各系統の移相器151~15Nは、それぞれ送信ビーム制御器19を通じて、送信ビーム制御信号によってPRI(Pulse Repetition Interval)毎に指示されるビーム指向方向に基づいて送信信号の位相を制御する。
【0012】
受信系統では、目標等からの反射信号をアンテナ素子181~18Nで捕捉し、サーキュレータ171~17Nにより送受分離して、低雑音増幅器201~20Nでノイズを低減して増幅し、移相器211~21Nで個別に位相制御を施した後、合成器22で各系統の受信信号を合成して、周波数変換器23でベースバンドに周波数変換し、AD変換器24でデジタル信号に変換する。
【0013】
各系統の移相器211~21Nは、それぞれ受信ビーム制御器27を通じて、受信ビーム制御信号によってPRI(Pulse Repetition Interval)毎に指示されるビーム指向方向に基づいて受信信号の位相を制御する。
【0014】
以上の送受信信号は、N(N≧1)ヒットの送信パルス(以下、Nパルス)の受信信号(PRI信号)によるCPI(Coherent Pulse Interval)信号と呼ばれる。以下、信号検出部25で目標検出処理を行う。
【0015】
上記目標検出処理では、例えばAD変換器19から出力されるNパルスの受信信号(PRI信号)からCPI信号を抽出し、CPI信号からレンジセル毎のslow-time軸の信号を抽出し、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理して周波数領域の信号に変換し、レンジセル毎にドップラ周波数軸でCFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報率)処理を行って目標が存在するレンジ-ドップラセルを検出する。測角処理部26は、検出されたレンジ-ドップラセルを測角処理して目標情報として出力する。
【0016】
上記構成において、第1の実施形態の測角処理について説明する。
【0017】
図1に示すレーダ装置において、送信系統で生成された送信信号が送信ビーム指向方向に応じた位相でアンテナ素子181~18Nから送信されると、受信系統では、アンテナ素子181~18Nで捕捉された目標からの反射信号を低雑音増幅した後、移相器211~21Nにより受信ビームの指向方向に応じた位相を設定し、合成器22で合成して、周波数変換器23でベースバンドに周波数変換し、AD変換器24によりデジタル信号に変換する。以上の信号取得は、
図2に示すように、PRI毎に指向方向(振幅)及び送信位相初期値を変えて、PRI毎のビーム指向方向に対する振幅と位相の参照信号を取得し、PRI毎の受信信号との相関処理により目標方向を抽出する。
【0018】
ここで、ビーム指向方向を変化させる手法には、
図3(a)に示す機械回転による方法と
図3(b)に示す電子走査による方法がある。いずれも、レーダ装置においては、PRI毎に指向方向を変化させていることに相当する。
図4(a)に示す角度毎(PRI毎)の受信信号は(1)式で表される。
【0019】
【数1】
(1)式では、角度θの関数で表現しているが、PRIの関数として置き換えることもできる。
【0020】
この信号は、
図4(b)に示すように、目標方向に応じて中心が角度軸でずれることになる。これを処理するために、まず、NパルスのPRI信号からなるCPI(Coherent Pulse Interval)範囲で折り返したものに置き換える(
図4(c))。
【0021】
次に相関処理するための参照信号は(2)式で与えられる(
図4(d))。
【0022】
【数2】
受信信号と参照信号の相関処理をするために、各々の信号を(3)式に示すようにfast-time軸のセル毎にslow-time軸でFFT処理する。
【0023】
【数3】
相関処理は、周波数軸における共役乗算(逆FFT)を用いて、(4)式となる。
【0024】
【数4】
この相関出力out(θ)のピーク値を抽出すれば、ビーム指向方向の中心である参照信号のピーク値を基準とした目標方向θを出力することができる(
図4(e))。
【0025】
以上は、
図3に示すように、機械回転または電子走査アンテナのビーム走査の場合について述べた。本手法は、ビーム指向方向に対して振幅または位相の少なくとも一方の変調成分があれば、(1)~(4)の相関処理により、目標方向を算出することができる。
【0026】
これを踏まえて、他の方式としては、
図5に示すように、機械回転アンテナで回転中心とアンテナの位相中心を偏心させる。この構成によれば、機械回転によりビーム指向方向の変化とともに、目標に対する位相も変化するため、より位相変調がかかり、相関処理のピーク値が顕著になる。
【0027】
ここで、(2)式の参照信号のみ表現すると(5)式となる。
【0028】
【数5】
また、
図6(a)、(b)に示すように、送信パルス毎に振幅または位相の少なくとも一方の変調を変えることで、受信パルスにおいて同様の変調効果が期待できる。
ここで、(2)式の参照信号のみ表現すると次式となる。
【0029】
【数6】
これらの参照信号を用いて、(1)~(4)の相関処理を実施すればよい。
【0030】
(第2の実施形態)
図7を参照して、第2の実施形態に係るレーダ装置を説明する。
【0031】
第1の実施形態では、目標速度によるドップラの影響を考慮しない場合である。目標速度が大きく、観測時間が長い場合には、ドップラによる位相変調の補正が必要となる。本実施形態では、その方式について述べる。
【0032】
図7は、第2の実施形態に係るレーダ装置の送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図である。
図7において、
図1と同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0033】
図7において、目標ドップラfdは、受信系統で、
図6の受信パルス1~NのCPI信号を用いて、信号検出し(25)、ドップラ抽出及び参照信号補正部28において、slow-time軸でFFT処理してドップラ抽出でピーク値を抽出することで算出する。このドップラ成分を用いて、(2)式の参照信号を補正する。
【0034】
【0035】
【数8】
受信信号と参照信号のドップラ成分による位相は、互いに打ち消し合うようにする。この参照信号を用いて、(3)、(4)の相関処理を行うことにより、ドップラ成分を補正して測角を行うことができる。
【0036】
(第3の実施形態)
図8を参照して、第3の実施形態に係るレーダ装置を説明する。
第1の実施形態及び第2の実施形態は、送信機能があるレーダ装置について述べた。本実施形態の測角手法は、受信装置のみのレーダ装置に適用できる。
【0037】
図8は受信装置のみのレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。
図8において、
図1と同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0038】
図8において、他のレーダ装置の送信パルスによる目標からの反射信号は、アンテナ素子181~18Nによるアレイアンテナで捕捉され、以後、第1の実施形態の受信系統と同様に、低雑音増幅(201~20N)、受信ビーム制御信号に基づく位相制御(211~21N、27)を受けて合成され(221~22N)、周波数変換(23)、AD変換(24)、信号検出(25)を受けて相関処理による測角され(26)、目標情報が検出される。すなわち、目標からの反射信号は第1の実施形態のレーダ装置のPRI毎の角度を、受信装置の各ビームの角度と置き換えれば、第1の実施形態と同様の方式を適用できる。
【0039】
図3に示す機械回転のビームと電子走査によるビームについても、受信装置に対してそのまま適用できる。
図5の偏心回転による位相変調についても同様である。
【0040】
以上のように、上記の実施形態に係るレーダ装置は、PRI毎にビーム指向方向を変えて、ビーム指向方向に対する振幅応答または位相応答の少なくともいずれか一方を変化させた信号を参照信号として、CPI内のレンジセル毎に参照信号と相関処理して測角する。これにより、少ない受信チャンネル数で角度精度の高い測角を実現することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11…送信信号生成器、12…DA変換器、13…周波数変換器、14…分配器、151~15N…移相器、161~16N…高出力増幅器、171~17N…サーキュレータ、181~18N…アンテナ素子、19…送信ビーム制御器、201~20N…低雑音増幅器、211~21N…移相器、22…合成器、23…周波数変換器、24…AD変換器、25…信号検出部、26…測角処理部、27…受信ビーム制御器、28…ドップラ抽出及び参照信号補正部。