(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】多極電極アセンブリを使用したECG信号のマッピング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20240805BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B5/287 200
A61B5/367 100
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019237790
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・デビッド・スクワイアーズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0242667(US,A1)
【文献】米国特許第04660571(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者身体内へ挿入するための挿入チューブと、
前記挿入チューブの遠位端に取り付けられてフレキシブルプリント回路基板(PCB)を備える少なくともアームと、
前記PCBの外面に形成され、内部組織に接触するように構成された少なくとも基準電極と、
前記PCBの前記外面に形成され、前記内部組織に接触するように構成され、解剖学的信号を検出するように前記基準電極を取り囲む複数の電極と、を備え、
前記解剖学的信号が前記基準電極に対して相対的に測定された場合に、前記複数の電極が前記患者身体内の前記解剖学的信号の大きさ及び方向を示す電気信号を提供するように、
前記複数の電極と、前記基準電極とは、多極構成で複数の双極子を形成する医療用プローブ。
【請求項2】
前記複数の電極は前記基準電極の周りに、前記基準電極の重心が前記複数の電極の中の任意の対の電極間を接続する直線上に位置しない幾何学的構造の形状で配置されている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記解剖学的信号は、心電図(ECG)信号を含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記複数の電極のうちの1つ以上に電気的に接続され、前記電気信号を前記患者身体の外部にあるシステムに伝達するように構成されている、電気導体を備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
前記複数の電極のうちの1つ以上に電気的に接続され、前記電気信号を前記患者身体の外部にあるシステムに伝達するように構成されている、1つ以上の無線通信デバイスを備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
前記電気信号は、前記解剖学的信号の伝搬速度を示す、請求項1に記載のプローブ。
【請求項7】
医療用プローブと、プロセッサとを備えるシステムの作動方法であって、
前記プロセッサが、前記医療用プローブから電気信号を受信することであって、前記医療用プローブは、(a)挿入チューブの遠位端に取り付けられてフレキシブルプリント回路基板(PCB)を備える少なくともアームと、(b)前記PCBの外面に形成された少なくとも基準電極と、(c)前記PCBの前記外面に形成され、前記基準電極を取り囲んで、身体組織内の解剖学的信号を検出する複数の電極とを含み、
前記解剖学的信号は、前記基準電極に対して相対的に測定された場合に、前記複数の電極が患者身体の前記身体組織内の前記解剖学的信号の方向を示す電気信号を提供するように、前記複数の電極と、前記基準電極とは、多極構成で複数の双極子を形成する、ことと、
前記プロセッサが、前記電気信号に基づいて、前記解剖学的信号の方向及び伝搬速度のうちの少なくとも1つを推定することと、を含む方法。
【請求項8】
前記複数の電極は前記基準電極の周りに、前記基準電極の重心が前記複数の電極の中の任意の対の電極間を接続する直線上に位置しない幾何学的構造の形状で配置されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記解剖学的信号は、心電図(ECG)信号を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
医療用プローブを製造する方法であって、
患者身体内へ挿入するための挿入チューブの遠位端にフレキシブルプリント回路基板(PCB)を備える少なくともアームを取り付けることと、
前記PCBの外面に少なくとも基準電極を形成させることと、
前記基準電極の重心が複数の電極の中の任意の対の電極間を接続する直線上に位置しない幾何学的構造の形状に配置され、かつ前記基準電極を取り囲んで、患者の身体組織内の解剖学的信号を検出する前記複数の電極を前記PCBの外面に形成させることと、
前記解剖学的信号が前記基準電極に対して相対的に測定された場合に、前記複数の電極が患者身体の前記身体組織内の解剖学的信号の方向を示す電気信号を提供するように、前記複数の電極と、前記基準電極とは、多極構成で複数の双極子を形成する、ことと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記基準電極及び前記複数の電極を、電気導体を介して前記身体組織の外部にあるシステムに接続することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基準電極及び前記複数の電極を、前記アームに結合された1つ以上の無線通信デバイスに接続することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
医療用プローブであって、
患者身体内へ挿入するための挿入チューブ、
前記挿入チューブの遠位端に取り付けられてフレキシブルプリント回路基板(PCB)を備える少なくともアーム、
前記PCBの外面に形成され、内部組織に接触するように構成された基準電極、及び、
前記PCBの前記外面に形成され、前記患者身体内の
解剖学的信号を検出するように構成されている複数の電極を備え、前記解剖学的信号が前記基準電極に対して相対的に測定された場合に、前記複数の電極が前記患者身体内の前記解剖学的信号の大きさ及び方向を示す電気信号を提供するように、
前記複数の電極と、前記基準電極とは、多極構成で複数の双極子を形成する医療用プローブと、
前記電気信号に基づいて、前記解剖学的信号の方向及び伝搬速度のうちの少なくとも1つを推定するように構成されたプロセッサと、
を備える、システム。
【請求項14】
前記複数の電極は前記基準電極を取り囲んでいる、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療用デバイスに関し、具体的には患者身体内において解剖学的信号をマッピングする方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心電図(ECG)信号などの解剖学的信号を測定するための様々な方法が当該技術分野において既知である。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2009/0221897号は、ヒト又は動物の身体の表面における電気的変数を測定するためのセンサについて記載している。センサは、幾何学的に規則的な配置の3つ以上の電極と、電極を一緒に保持するように配置された支持部材とを備える。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0010583号は、センサの座標系における患者の姿勢分類の手法について記載している。患者に対して実質的に固定された形態で設けられたセンサから画定されたベクトルが取得され、画定されたベクトルはセンサの座標系で記述され、センサが患者に対して設けられている向きには関係しない。検出されたベクトルはセンサの座標系を使用して記述され、センサから取得される。検出されたベクトル及び画定されたベクトルは、センサが患者に対して設けられている向きに関係なく、患者の姿勢状態を分類するために使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の一実施形態は、患者身体内に挿入するための挿入チューブと、挿入チューブの遠位端に取り付けられた少なくともアームと、アームに結合された少なくとも基準電極と、アームに結合され、基準電極を取り囲む複数の電極であって、基準電極に対して相対的に測定された場合に、患者身体内の解剖学的信号を示す、身体組織の電気信号を検出するように構成されている、複数の電極と、を含む医療用プローブを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、電極は基準電極の周りに不均一な形状で配置されている。他の実施形態では、解剖学的信号は、心電図(ECG)信号を含む。更に他の実施形態では、医療用プローブは電気導体を含み、電気導体は、電極のうちの1つ以上に電気的に接続され、電気信号を患者身体の外部にあるシステムに伝達するように構成されている。
【0007】
一実施形態では、医療用プローブは1つ以上の無線通信デバイスを含み、無線通信デバイスは、電極のうちの1つ以上に電気的に接続されており、電気信号を患者身体の外部にあるシステムに伝達するように構成されている。別の実施形態では、アームは、フレキシブルプリント回路基板(PCB)を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、電気信号は解剖学的信号の方向を示す。他の実施形態では、電気信号は解剖学的信号の伝搬速度を示す。
【0009】
本発明の一実施形態によると、医療用プローブから電気信号を受信することを含む方法が付加的に提供され、医療用プローブは、(a)挿入チューブの遠位端に取り付けられた少なくともアームと、(b)アームに結合された少なくとも基準電極と、(c)アームに結合され、基準電極を取り囲み、電気信号を生成する複数の電極とを含む。電気信号は、基準電極に対して相対的に測定された場合に、患者身体内の解剖学的信号の方向を示す。電気信号に基づいて、解剖学的信号の方向及び伝搬速度のうちの少なくとも1つが推定される。
【0010】
本発明の一実施形態によると、医療用プローブを製造する方法が付加的に提供され、この方法は、挿入チューブの遠位端に少なくともアームを取り付けることを含む。アームには少なくとも基準電極が結合されている。不均一な形状に配置され、かつ基準電極を取り囲む複数の電極がアームに結合されている。
【0011】
本発明の一実施形態によると、基準電極と、患者身体内に挿入するための挿入チューブを含む医療用プローブと、挿入チューブの遠位端に取り付けられた少なくともアームと、アームに結合され、患者身体内の電気信号を検出するように構成されている複数の電極であって、電気信号は、基準電極に対して相対的に測定された場合に、患者身体内の解剖学的信号を示す、複数の電極と、を含むシステムが更に提供される。システムは、電気信号に基づいて、解剖学的信号の方向及び伝搬速度のうちの少なくとも1つを推定するように構成されたプロセッサを更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、基準電極は、患者身体の皮膚に結合された身体表面電極を含む。他の実施形態では、基準電極は、基準信号を有する仮想電極を含み、プロセッサは、患者身体の皮膚に結合された少なくとも2つの身体表面電極から受信された追加電気信号に基づいて、基準信号を計算するように構成されている。
【0013】
一実施形態では、基準信号は、身体表面電極のうちの少なくとも2つの追加電気信号を平均化することによって計算される。別の実施形態では、基準電極はアームに結合され、複数の電極が基準電極を取り囲んでいる。
【0014】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテル追跡システムの概略的描画図である。
【
図2】本発明の実施形態による、患者の心臓内の解剖学的信号の波面の方向及び伝搬速度を測定するために使用できる電極アセンブリのいくつかの構成の概略的描画図である。
【
図3A】本発明の実施形態による、患者の心臓内の解剖学的信号の波面の方向及び伝搬速度を測定するために使用できる電極アセンブリのいくつかの構成の概略的描画図である。
【
図3B】本発明の実施形態による、患者の心臓内の解剖学的信号の波面の方向及び伝搬速度を測定するために使用できる電極アセンブリのいくつかの構成の概略的描画図である。
【
図3C】本発明の実施形態による、患者の心臓内の解剖学的信号の波面の方向及び伝搬速度を測定するために使用できる電極アセンブリのいくつかの構成の概略的描画図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概論
以下に記載される本発明の実施形態は、心電図(ECG)信号などの患者身体内の解剖学的信号によって引き起こされる波面の方向及び伝搬速度を推定するための改善された方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、ECG信号によって引き起こされる波面の方向及び伝搬速度を推定するシステムは、挿入チューブに結合された遠位端アセンブリを有する低侵襲プローブと、プロセッサとを備える。遠位端アセンブリは、アームとも称される複数のスパインを備え、各スパインは、フレキシブルプリント回路基板(PCB)から作製されたストリップを備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、各スパインは、患者組織に面する回路基板の側に結合された複数の電極アセンブリを備え、PCBは、電極アセンブリと、プローブを通って患者身体の外部にあるシステムに至る導電要素、例えばトレース又は配線との間に電気的接続性を提供する導体を備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、各電極アセンブリは、不均一な形状に配置された複数の電極を備える。電極は、電極アセンブリの別の電極に対して相対的に測定された場合に、患者の心臓内のECG信号の方向及び倍率を示す、身体組織の電気信号を検出するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、電極のうちの少なくとも1つは基準電極を備え、アセンブリの他の電極は、基準電極を取り囲み、均一又は不均一な形状で配置されていてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、プローブは、典型的には、(例えば、シースを使用して)折り畳まれた位置において患者身体内に挿入され、患者の心臓腔などの標的位置に到達した時点で伸張される。伸張された位置では、スパインは体腔の形状に適合するように伸張され、それにより、スパインに結合された電極が内部体腔表面の組織と接触し、検出されたECG信号を示す電気信号を生成する。これら電気信号はプロセッサに提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、電極を多極構成で配置することにより形成される複数の双極子を備える。多極配置は、患者の心臓内の任意の方向におけるECG信号を検出するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、電気信号に基づいて、ECG信号の方向及び伝搬速度を推定するように構成されている。プロセッサは、ECG信号によって生成された電界を伝播する波面の方向及び速度を推定するように、あらゆる双極子のベクトル成分を計算すること、並びに双極子間のベクトル加算及び/又はベクトル減算を計算することなど、様々な方法を使用するように構成されている。
【0023】
開示される技術は、不整脈及び他の心臓病を診断及び治療するための、患者の心臓におけるECGマッピングの精度及び感度を改善する。その上、開示される技術はまた、患者器官内の他の解剖学的信号の正確なマッピングのために使用されてもよい。
【0024】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテル追跡システム20の概略絵画図である。システム20は、本実施例では心カテーテル22であるプローブと、制御コンソール24と、を含む。本明細書に記載する実施形態では、カテーテル22は、例えば、心不整脈などの心機能障害を診断するための心電信号のマッピング、及び/又は、例えば、上述のマッピングに基づく、心臓26内の組織のアブレーションなど、任意の好適な治療及び/又は診断目的に使用されてもよい。
【0025】
コンソール24は、カテーテル22から信号を受信するための、及び本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド回路及びインタフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータの汎用プロセッサであるプロセッサ39を備える。プロセッサ39は、システムによって使用される機能を実行するようにソフトウェア内にプログラムされてもよく、プロセッサはソフトウェア用のデータをメモリ38内に格納する。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードされてもよく、又は光学的記憶媒体、磁気的記憶媒体、若しくは電子的記憶媒体などの、非一時的な有形媒体で提供されてもよい。代替として、プロセッサ39の機能の一部又は全ては、専用の構成要素又はプログラマブルデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0026】
オペレータ30(介入する心臓専門医など)は、テーブル29に横たわる患者28の脈管系を通して、カテーテル22を挿入する。カテーテル22は、挿入チューブ(図示せず)と、本明細書では「スプライン」又は「アーム」とも称される複数のスパインを備える遠位端アセンブリ40(挿入
図52に示され、以下で詳細に記載される)を備える。オペレータ30は、
図1の挿入
図37に示すように、カテーテルの近位端付近にあるマニピュレータ32を用いてカテーテル22を操作することによって、カテーテル22のアセンブリ40を心臓26の標的領域の近傍で動かす。カテーテル22の近位端は、プロセッサ39のインタフェース回路に接続されて、プロセッサ39と電気信号を交換する。
【0027】
心臓腔内における遠位端アセンブリの位置は、一般的に、カテーテル追跡システム20の磁気位置検知によって測定される。この場合、コンソール24は駆動回路34を備え、この駆動回路34は、テーブル29に横たわる患者28の体外における既知の位置、例えば患者の胴体の下に位置する磁界発生器36を駆動する。
【0028】
遠位端アセンブリ40は典型的には、それぞれが1つ以上の磁界センサ及び/又は1つ以上のアブレーション若しくはマッピング電極を備える複数のスパイン、並びに/又は、他のデバイスを備える(例えば、以下の挿入
図52、並びに
図2、
図3A、
図3B及び
図3Cに示すように)。遠位端アセンブリを心内組織、例えば、心臓内面と接触させた場合、マッピング電極は、検出された電位に応答して、本明細書では電気信号とも称される電位勾配信号を発生させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、位置センサは、検出された外部磁場に応答して位置信号を発生させ、それにより、プロセッサ39が心臓腔内の位置の関数として電位をマッピングすることが可能になる。いくつかの実施形態では、以下の
図2で詳細に記載されるように、検出された電気信号は、心臓26内の心電図(ECG)信号などの解剖学的信号によって引き起こされる波面の方向及び伝搬速度を示す。
【0030】
アセンブリ40内の複数の磁気位置センサ及びマッピング電極は、カテーテル近位端においてプロセッサ39のインタフェース回路に接続されている。オペレータ30は、ユーザディスプレイ31上の心臓26の画像33で、アセンブリ40の位置を見ることができる。
【0031】
この位置検出方法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムにおいて実現されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、それらの開示は全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
他の実施形態では、磁気位置センサの代わりに、遠位端アセンブリ40は、高度電流局在化(ACL:advanced current localization)センサ、又は任意の他の好適な位置センサなどの1つ以上のインピーダンス位置センサを備えてもよく、システム20は、それぞれの位置追跡モジュールを備えてもよい。代替的実施形態では、システム20は、いかなる位置追跡モジュールも備えず、遠位端アセンブリ40は、いかなる位置追跡センサも備えない。
【0033】
患者の心臓内のECG信号を検出するためのバスケットカテーテル
ここで挿入
図52を参照する。いくつかの実施形態では、各スパイン42は、遠位端アセンブリ40の遠位先端部に位置するキャップ44に結合される。いくつかの実施形態では、カテーテル22はシャフト46を更に備え、シャフト46は、アセンブリ40の折り畳まれた位置と伸張された位置との間の移行に使用される。例えば、カテーテル22を心臓26内に挿入した後に、シャフト46は、遠位端アセンブリ40をシース(図示せず)から引き出して、アセンブリ40を伸張された位置に至らせるように構成されている。同様に、医療処置を完了した後、典型的にはカテーテル22を患者身体から後退させる前に、シャフト46は、遠位端アセンブリ40をシースの中に後退させて折り畳まれた位置にするように構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、複数の電極アセンブリ50が、フレキシブルプリント回路基板(PCB)48の外面上に形成されているので、遠位端アセンブリ40の伸張位置では、電極アセンブリ50は心臓26の組織と接触する。センサなどの他の構成要素は、類似の方法でスパインに結合されてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、電気回路トレース(図示せず)が、スパイン42のPCB48内に形成され、各トレースは、各電極アセンブリ50の少なくとも1つの電極に接続されている。いくつかの実施形態では、電気回路トレースは、カテーテル22を通って延びる好適な配線又は他の種類の電気導体に接続されて、コンソール24と電極アセンブリ50との間で信号を交換する。
【0036】
ここで挿入
図54を参照する。いくつかの実施形態では、各電極アセンブリ50は、少なくとも3つの電極を備える。挿入
図54の例では、アセンブリ50は、スパイン52に結合された基準電極と、やはり対応するスパインに結合され基準電極を取り囲む3つの電極とを備え、3つの電極は、基準電極に対して相対的に測定された場合に、心臓26内のECG信号によって引き起こされる、前述した波面の方向及び伝搬速度を示す、身体組織の電気信号を検出するように構成されている。電極アセンブリ50の構造及び動作に関する追加の実施形態は、以下の
図2、
図3A、
図3B、及び
図3Cに詳細に記載されている。加えて又は代替として、電極アセンブリ50の電極は、患者身体内を移動する任意の他の解剖学的信号の方向及び速度を示す電気信号を検出するように構成されている。
【0037】
他の実施形態では、遠位端アセンブリ40は、電極アセンブリ50の電極のうちの1つ以上に電気的に接続された1つ以上の無線通信デバイス(図示せず)を備えてもよい。1つ以上の無線通信デバイスは、電気信号をコンソール24に、又は患者身体の外部にある任意の他のシステムに伝達するように構成されている。
【0038】
患者の心臓内で伝搬するECG信号の速度及び方向の検出
図2は、本発明の一実施形態による、心臓26内のECG信号によって引き起こされる波面の方向及び伝搬速度を測定するように構成された電極アセンブリ300の概略描画図である。電極アセンブリ300は、例えば、上記の
図1の電極アセンブリ50を置き換えてもよく、ECG信号又は患者28の身体内の任意の他の信号を検出するように構成されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリ300は、スパイン42のPCB48に結合された又は埋設された、3つの電極301、302及び303、並びに基準電極304を備える。電極301~303は、基準電極304を取り囲み、基準電極304の周りに均一な又は不均一な形状で配置されていてもよい。
【0040】
一実施形態では、電極301、302、303、及び304は、それぞれの重心(COG)が「A」、「B」、「C」、及び「D」と示され、基準電極304と電極301、302、及び303の各々との間の3つの双極子として配置され、それぞれ、ベクトルDA、DB、及びDCとして示されている。この構成では、ベクトルDAは、基準電極304と電極302との間の双極子を示し、ベクトルDBは、基準電極304と電極301との間の双極子を示し、ベクトルDCは、基準電極304と電極303との間の双極子を示す。
【0041】
心臓26の3つのそれぞれのECG信号によって引き起こされる波面の3つの例が
図2に示され、本明細書では波面「1」、「2」、及び「3」と称される。波面「1」、「2」、及び「3」の伝搬は、心臓26の組織に沿った電界を伝播し、典型的には、これらの例示的な波面のうちの1つのみが一度に存在することが理解されるであろう。
【0042】
ある時間間隔において、所与の双極子の電極によって検出される電圧の変化は、波面伝搬速度を示すことに留意されたい。2つ以上の双極子からの情報を組み合わせたものは、波面伝搬方向の決定を可能にし、この方向は例えばデカルト座標系で定義される。
【0043】
図2の例では、基準電極304のCOGは、電極アセンブリ300のCOG(図示せず)と整列される。加えて、電極301~303は類似した形状を共有し、その形状は基準電極304の形状とは異なる。いくつかの実施形態では、電極301~303の形状は、基準電極304の周りの円周方向の有効範囲を最大化させる一方で、更に各双極子が、等しい表面積の2つの電極から構成されるように表面積を合致させるように選択されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、電極301~304は、規則的又は非規則的であってもよい任意の好適な幾何学的構造で配置されてもよい。用語「非規則的」及び「不規則」は、電極301、302、303、及び304のCOGが同じ幾何学的平面上に存在しない構造を指し得る。上述のように、非規則的な幾何学的配置により、波面「1」、「2」、若しくは「3」の方向、又は任意の他の方向など任意の方向に移動する波面を検出することが可能になる。
【0045】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、心臓26内のECG信号によって引き起こされた波面の方向及び速度を示す、電極301~304によって生成された電気信号(例えば、基準電極304に対する各電極301~303の電圧)を受信するように構成されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、波面「1」に応答して、波面「1」に実質的に平行であって逆方向を向いたベクトルDBによって表される双極子は、第1の時間、t1、において、全ての双極子の中でも、最も大きな負の電圧値を検出する。ベクトルDA及びDCによって表される双極子は、その後の第2の時間、t2、において、正の電圧値を検出することになる。
【0047】
例示的な実施形態では、波面「2」に応答して、ベクトルDBによって表される双極子は、第1の時間、t1、において、負の電圧値を検出することになる。ベクトルDAによって表される双極子は、その後の第2の時間t1+δにおいて、同様の負の電圧値を検出することになる。最後に、波面「2」に実質的に平行であるベクトルDCによって表される双極子は、その後の第3の時間、t2、において、正の電圧値を検出することになる。ベクトルDBによって表される双極子及びベクトルDAによって表される双極子が、最初に電圧変化(δ)を検出した時間の間のタイミング差を使用して、波面の方向「2」を決定することができる。例えば、δの値がより大きい場合は、波面「1」により近い波面に対応し、δがゼロの場合は、ベクトルDCに対して逆平行な波面に対応し、δの値が負の場合は、ベクトルDAに逆平行であることに、より近い波面に対応するであろう。
【0048】
一実施形態では、波面「3」に応答して、ベクトルDCによって表される双極子は、第1の時間t1において、負の電圧値を検出することになる。波面「3」に実質的に直交するベクトルDCによって表される双極子は、その後の第2の時間、t2、において、負の電圧値を検出することになる。続いて、第3の時間、t3、において、ベクトルDAによって表される双極子は、正の電圧値を検出することになる。
【0049】
いくつかの実施形態では、これら電気信号に基づいて、プロセッサ39は、心臓26内のECG信号によって引き起こされる波面の方向及び速度を推定するように構成されている。検出された電圧値の変化は波面の速度を示し、前述の双極子のうちの2つ以上からの信号の組み合わせに基づいて、プロセッサ39は、心臓26のECG信号によって引き起こされた波面の方向及び速度を計算してもよい。
【0050】
他の実施形態では、電極301、302、303、及び304は、任意の他の好適な種類の非規則的な幾何学的配置を有してもよい。例えば、電極301、302、及び303のうちの少なくとも2つは、互いに異なる固有の幾何学的形状及び/又はサイズ及び/又は幾何学的方向を有してもよい。加えて又は代替として、前述の双極子のCOG間の距離は互いに異なっていてもよい。
図2の例では、ベクトルDA及びDBは、例えば、異なるそれぞれの長さを有してもよい。
【0051】
他の実施形態では、電極アセンブリ300は、任意の好適な不規則な幾何学的構造に配置された任意の他の好適な数の電極を備えてもよい。これら実施形態では、電極アセンブリは、任意の好適な対称形状又は非対称形状を有してもよい。例えば、電極アセンブリの形状は、丸くなくてもよく、又は更には円形でなくてもよい。所定方向におけるECG信号を検出するように電極アセンブリの感度を増加させるために、上述の非規則的な配置のうちの少なくとも1つを使用してもよいことに留意されたい。
【0052】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、前述のような非規則的な構造を有する電極アセンブリの各々の較正データ(例えば、ファイル内に格納された)を保持してもよい。プロセッサ39は、較正データに基づき、波面の方向及び伝搬速度の計算において、形状の不規則性を補正するように構成される。
【0053】
図3Aは、本発明の別の実施形態による、心臓26内の解剖学的信号によって引き起こされる波面の方向及び伝搬速度を測定するように構成された電極アセンブリ200の概略描画図である。電極アセンブリ200は、例えば、上記の
図1の電極アセンブリ50を置き換えてもよく、ECG信号又は患者28の身体内の任意の他の信号によって引き起こされた波面を検出するように構成されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリ200は、スパイン42のPCB48に結合された又は埋設された、3つの電極201、202及び203、並びに基準電極204を備える。電極201~203は、基準電極204を取り囲み、基準電極204の周りに均一又は不均一な形状で配置されていてもよい。上記
図2に記載されるように、電極201、202、及び203、並びに基準電極204は、3つの双極子として、すなわち、基準電極204と電極201との間の第1の双極子、基準電極204と電極202との間の第2の双極子、及び基準電極204と電極203との間の第3の双極子として配置されている。
図3Aの例では、基準電極204のCOGは、電極アセンブリ200(図示せず)のCOGと整列され、電極201~204の形状及び表面積は同様である。
【0055】
本発明との関連では、及び特許請求の範囲では、用語「不均一な」「非規則的な」及び「非周期的な」は交換可能に用いられ、上記の
図2に、
図3A、
図3B、及び
図3Cに記載される幾何学的配置のいずれか、並びに/又は、基準電極204のCOGが電極201~203の中の任意の対の電極間を接続する直線上に位置しない幾何学的構造を指す。
【0056】
その上、丸形電極アセンブリの一例では、電極アセンブリ200の構成とは対照的に、基準電極のCOGは電極アセンブリのCOGと整合していなくてもよい。加えて又は代替として、電極201~204のうちの少なくとも1つが、他の電極と比較して異なるサイズ、形状、及び/又は表面積を有してもよく、例えば、電極204が電極201~203よりも大きくてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、電極201~203は、基準電極204に対して相対的に測定された場合に、上記の
図2に記載されるように、心臓26内のECG信号によって引き起こされる波面の方向及び速度を示す、身体組織の電気信号を検出するように構成されている。
【0058】
いくつかの実施形態では、電極201~203、及び204は、上記の
図1及び
図2に記載されるように、カテーテル22の電気トレース及び配線を介して、又は無線デバイスを介して、プロセッサ39に電気的に接続されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、前述の電極アセンブリ200の双極子によって生成された電気信号を受信し、電気信号に基づいて、心臓26内を伝搬する波面の方向及び速度を推定するように構成されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、電極201~203の各々によって測定された電圧を基準電極204に対して比較する。比較に基づいて、プロセッサ39は、ECG信号によって引き起こされた伝搬波面の方向及び速度を推定してもよい。例えば、電極201と202との間を接続する仮想線(図示せず)に直交する波面「1」に応答して、電圧変化は、最初に、電極201及び204を備える双極子によって、並びに電極202及び204を備える双極子によって、その後、電極203及び204を備える双極子によって検出される。上記の
図2に記載されるように、これらの検出された電圧のタイミング及び値に基づいて、プロセッサ39は、心臓26内のECG信号によって引き起こされる波面「1」の方向及び伝搬速度を推定してもよい。波面の方向及び速度の推定又は決定を可能にする技術は、「TECHNIQUES FOR AUTOMATED LOCAL ACTIVATION TIME ANNOTATION AND CONDUCTION VELOCITY ESTIMATION IN CARDIAC MAPPING」と題する、C.D.Cantwella,C.H.Roney,F.S.Ng,J.H.Siggers,S.J.Sherwina,N.S.Petersが、Biology and Medicine,April 2015に発行した文献の5~10ページ、とりわけ7ページに掲載されており、この文献は参照として組み込まれ、その複写が本明細書に付属書類として添付されている。
【0061】
図3Bは、本発明の別の実施形態による、心臓26内を伝搬する波面の方向及び伝搬速度を測定するように構成された電極アセンブリ100の概略描画図である。電極アセンブリ100は、例えば、上記
図1の電極アセンブリ50を置き換えてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリ100は3つの電極102、104、及び106を備え、その各々の形状は楔形であり、他の2つの電極から既定距離だけ離れて置かれている。いくつかの実施形態では、電極102、104、及び106は、電極アセンブリ100が丸い形状を有するように幾何学的に配置されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、電極102、104、及び106は、(
図1に記載されるように)スパイン42のPCB48に結合され、上記の
図1に記載されるように、上述の電気トレース及び配線を介して、又は無線デバイスを介してプロセッサ39に電気的に接続されている。
【0064】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリ100は3つの電極を備え、上記の
図2及び
図3Aの、それぞれの電極アセンブリ300及び200とは異なり、基準電極を備えていない。
【0065】
一実施形態では、それぞれのCOGが「A」、「B」、及び「C」と示されている電極102、104、及び106は、これら電極の間の各対、A-B、A-C、及びB-Cの3つの双極子として配置されている。いくつかの実施形態では、前述の波面「1」、「2」、又は「3」などの任意の波面に応答して、ベクトル「AB」は、電極102及び104を備える双極子A-Bによって検出された電圧を示す。同様に、ベクトル「BC」は、電極104及び106を備える双極子B-Cによって検出された電圧を示し、ベクトル「AC」は、電極102及び106を備える双極子A-Cによって検出された電圧を示す。
【0066】
いくつかの実施形態では、ベクトルABに直交する波面「1」に応答して、電極102及び104は同じ信号を検出し、したがって、ベクトルABによって表される双極子によって、第1の時間、t1、において検出される電圧はおよそゼロである。続いて、ベクトルAC及びBCによって表される他の2つの双極子は、その後の時間、t2、において同様の(例えば、正の)電圧値を検出する。いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、双極子A-B、A-C、及びB-Cによって検出されたタイミング及び電圧に基づいて、波面「1」の方向及び速度を推定するように構成されている。
【0067】
例示的な実施形態では、波面「2」に応答して、波面「2」にほぼ平行であって同じ方向を有するベクトルACによって表される双極子は、第1の時間、t1、において正の電圧値を検出し、波面「2」にほぼ直交するベクトルBCによって表される双極子は、その後の第2の時間、t2、において正の電圧値を検出することになる。
【0068】
別の例示的な実施形態では、波面「3」に応答して、波面「3」に実質的に平行であって反対方向を向いたベクトルABによって表される双極子は、時間t1において負の電圧値を検出することになる。上述の実施形態及び定義に基づいて、ベクトルBCによって表される双極子は、時間t1において正の電圧値を検出することになる。続いて、その後の第3の時間、t3、において、ベクトルACによって表される双極子は、負の電圧値を検出することになる。
【0069】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、上記の
図2に記載されるような、3つの双極子から受信された検出された電圧のタイミングに基づいて、任意の波面の方向及び速度を推定するように構成されている。波面の方向及び速度の推定は、ベクトル加算、ベクトル減算、又はその両方を使用して実行されてもよい。代替として、方向及び速度を推定するための任意の他の好適な計算方法を使用することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、電極102、104及び106は、規則的又は非規則的あってもよい任意の好適な幾何学的構造で配置されてもよい。用語「非規則的」及び「不規則」は、電極102、104及び106のCOGが同じ幾何学的平面上に存在しない構造を指し得る。上述のように、非規則的な幾何学的配置、波面「1」、「2」、若しくは「3」の方向、又は任意の他の方向など任意の方向に移動する波面を検出することが可能になる。
【0071】
他の実施形態では、電極102、104、及び106は、任意の他の好適な種類の非規則的な幾何学的配置を有してもよい。例えば、電極102、104、及び106のうちの少なくとも2つは、互いに異なる固有の幾何学的形状及び/又はサイズ及び/又は幾何学的方向を有してもよい。加えて又は代替として、前述の双極子のCOG間の距離は互いに異なっていてもよい。
図3Bの例では、ベクトルAB及びBCは、例えば、異なるそれぞれの長さを有してもよい。
【0072】
図3Bの実施例では、電極102、104、及び106の各々は、電極アセンブリ100の丸い形状の総面積のほぼ3分の1を含む領域を覆っている。別の実施形態では、2つの電極(例えば、電極102及び104)は各々が電極アセンブリ100の領域のほぼ40%を覆ってもよく、第3の電極(例えば、電極106)は、電極アセンブリ100の領域のほぼ20%を覆ってもよい。「ほぼ」という用語は、電極アセンブリ100の領域の割当てを含む電極102、104、及び106の中の任意の対の電極間の空間ゆえに使用されることに留意されたい。
【0073】
他の実施形態では、電極アセンブリは、任意の好適な不規則な幾何学的構造に配置された任意の他の好適な数の電極を備えてもよい。これら実施形態では、電極アセンブリは、任意の好適な対称形状又は非対称形状を有してもよい。例えば、電極アセンブリ100の形状は、丸くなくてもよく、又は更には円形でなくてもよい。所定方向におけるECG信号を検出するように電極アセンブリの感度を増加させるために、上述の非規則的な配置のうちの少なくとも1つを使用してもよいことに留意されたい。
【0074】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、前述のような非規則的な構造を有する電極アセンブリの各々の較正データ(例えば、ファイル内に格納された)を保持してもよい。プロセッサ39は、較正データに基づき、ECG信号によって、又は患者28の任意の他の信号によって引き起こされた波面の方向及び伝搬速度の計算において、形状の不規則性を補正するように構成される。
【0075】
図3Cは、本発明の一実施形態による、心臓26内のECG信号によって引き起こされる波面の方向及び伝搬速度を測定するように構成された電極アセンブリ400の概略描画図である。電極アセンブリ400は、例えば、上記の
図1の電極アセンブリ50を置き換えてもよく、上述のECG信号又は患者28の身体内の任意の他の信号を検出するように構成されている。
【0076】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリ400は、スパイン42のPCB48に結合された又は埋設された、3つの電極401、402及び403を備える。電極401~403は、例えば、上記の
図3Bに記載されるように、均一又は不均一な幾何学的形状で配置されていてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、心臓26内のECG信号によって引き起こされる波面の方向及び伝搬速度を示す電気信号を電極401~403から受信するように構成されている。いくつかの実施形態では、電気信号は基準電極を基準にして測定されてもよく、基準電極は、本明細書では、共通電極、例えば仮想電極とも称され、
図3Cには示されていない。
【0078】
いくつかの実施形態では、仮想電極は、パッチ又は任意の他の好適な結合技術を使用して、患者28の皮膚に結合された2つ以上の身体表面電極から計算されてもよい。仮想電極のこのような例の1つは、ウィルソン結合電極(WCT)である。
【0079】
代替的実施形態では、双極子は、2つ以上の物理的電極、例えば電極401~403のいずれかと、仮想電極との間に形成されてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、これら電気信号、及び、例えば上記の
図2で説明された技術に基づいて、プロセッサ39は、心臓26内のECG信号によって引き起こされる波面(例えば、上記の
図2の波面「1」)の方向及び速度を推定するように構成されている。
【0081】
代替実施形態では、電極401~403は、3つの双極子(図示せず)として、すなわち、電極401と電極402との間の第1の双極子、電極402と403との間の第2の双極子、及び電極403と401との間の第3の双極子として配置されてもよい。これら双極子の各々は、上記の
図3Bに記載されている技術を使用して、検出された電圧値を示す、身体組織の電気信号を検出するように構成されている。
【0082】
電極アセンブリ50、100、200、300、及び400の構成は、例示的なプローブ、又はこれら電極アセンブリのいずれかが内部に組み込まれて使用され得る別のデバイスを実現するために、例として提供されている。代替として、例えば、任意の好適な数の電極及び/又は基準電極を、それらの間に任意の好適な距離を設けて使用し、異なる形状及びサイズの電極アセンブリ、並びに、それぞれの電極アセンブリ内の異なる形状及びサイズの個々の電極又は電極群を適用して、任意の他の好適な構成を使用することもできる。更には、各電極は、任意の種類の結合手法を使用して、プロセッサ又はコントローラなどの任意の好適な種類のデバイスに結合されてもよく、電極によって検出された信号は、任意の好適な通信手法を使用してデバイスに伝達されてもよい。
【0083】
本明細書に記載される実施形態は、主として、患者の心臓内の解剖学的信号の方向及び伝搬速度を検出することに対処するが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、患者の任意の他の臓器内での又は患者の皮膚上での解剖学的信号の方向及び伝搬速度を検出するなどの他の用途にも使用することができる。
【0084】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上文に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0085】
〔実施の態様〕
(1) 患者身体内へ挿入するための挿入チューブと、
前記挿入チューブの遠位端に取り付けられた少なくともアームと、
前記アームに結合され、内部組織に接触するように構成された少なくとも基準電極と、
前記アームに結合され、解剖学的信号を検出するように前記基準電極を取り囲む複数の電極であって、前記解剖学的信号は、前記基準電極に対して相対的に測定された場合に、前記患者身体内の前記解剖学的信号の大きさ及び方向を示す、複数の電極と、を備える医療用プローブ。
(2) 前記電極は前記基準電極の周りに不均一な形状で配置されている、実施態様1に記載のプローブ。
(3) 前記解剖学的信号は、心電図(ECG)信号を含む、実施態様1に記載のプローブ。
(4) 前記電極のうちの1つ以上に電気的に接続され、前記電気信号を前記患者身体の外部にあるシステムに伝達するように構成されている、電気導体を備える、実施態様1に記載のプローブ。
(5) 前記電極のうちの1つ以上に電気的に接続され、前記電気信号を前記患者身体の外部にあるシステムに伝達するように構成されている、1つ以上の無線通信デバイスを備える、実施態様1に記載のプローブ。
【0086】
(6) 前記アームは、フレキシブルプリント回路基板(PCB)を含む、実施態様1に記載のプローブ。
(7) 前記電気信号は、前記解剖学的信号の方向を示す、実施態様1に記載のプローブ。
(8) 前記電気信号は、前記解剖学的信号の伝搬速度を示す、実施態様1に記載のプローブ。
(9) 方法であって、
医療用プローブから電気信号を受信することであって、前記医療用プローブは、(a)挿入チューブの遠位端に取り付けられた少なくともアームと、(b)前記アームに結合された少なくとも基準電極と、(c)前記アームに結合され、前記基準電極を取り囲んで、身体組織内の解剖学的信号を検出する複数の電極とを含み、
前記電気信号は、前記基準電極に対して相対的に測定された場合に、患者身体の前記身体組織内の解剖学的信号の方向を示す、ことと、
前記電気信号に基づいて、前記解剖学的信号の方向及び伝搬速度のうちの少なくとも1つを推定することと、を含む方法。
(10) 前記電極は前記基準電極の周りに不均一な形状で配置されている、実施態様9に記載の方法。
【0087】
(11) 前記解剖学的信号は、心電図(ECG)信号を含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 医療用プローブを製造する方法であって、
挿入チューブの遠位端に少なくともアームを取り付けることと、
前記アームに少なくとも基準電極を結合させることと、
不均一な形状に配置され、かつ前記基準電極を取り囲む複数の電極を前記アームに結合させることと、を含む、方法。
(13) 前記基準電極及び前記複数の電極を、電気導体を介して前記患者身体の外部にあるシステムに接続することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記基準電極及び前記複数の電極を、前記アームに結合された1つ以上の無線通信デバイスに接続することを含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記アームは、フレキシブルプリント回路基板(PCB)を含む、実施態様12に記載の方法。
【0088】
(16) 基準電極と、
医療用プローブであって、
患者身体内へ挿入するための挿入チューブ、
前記挿入チューブの遠位端に取り付けられた少なくともアーム、及び、
前記アームに結合され、前記患者身体内の電気信号を検出するように構成されている複数の電極であって、前記電気信号は、前記基準電極に対して相対的に測定された場合に、前記患者身体内の解剖学的信号を示す、複数の電極、を備える医療用プローブと、
前記電気信号に基づいて、前記解剖学的信号の方向及び伝搬速度のうちの少なくとも1つを推定するように構成されたプロセッサと、
を備える、システム。
(17) 前記基準電極は、前記患者身体の皮膚に結合された身体表面電極を備える、実施態様16に記載のシステム。
(18) 前記基準電極は、基準信号を有する仮想電極を備え、前記プロセッサは、前記患者身体の皮膚に結合された少なくとも2つの身体表面電極から受信された追加電気信号に基づいて、前記基準信号を計算するように構成されている、実施態様16に記載のシステム。
(19) 前記プロセッサは、前記身体表面電極のうちの少なくとも2つの前記追加電気信号を平均化することによって、前記基準信号を計算するように構成されている、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記基準電極は前記アームに結合され、前記複数の電極は前記基準電極を取り囲んでいる、実施態様16に記載のシステム。