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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】切削加工機
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240805BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20240805BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20240805BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
A61C13/00 Z
A61C13/08 Z
B23Q11/10 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020024196
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021126746
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆介
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-022938(JP,A)
【文献】実開平06-072612(JP,U)
【文献】特開平10-118882(JP,A)
【文献】特開2007-007790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q11/00
B01D27/00-27/12
B01D29/00-29/48
B01D39/00-41/04
A61C13/00-13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工空間と、前記加工空間よりも下方に位置する収容空間と、前記加工空間と前記収容空間とを連通する連通口と、が内部に形成されているケース本体と、
前記加工空間に配置され、被加工物を保持する保持部と、
前記加工空間に配置され、前記被加工物を切削加工するための加工ツールを把持する把持部と、
前記加工空間にクーラント液を吐出する液体吐出部と、
前記収容空間に着脱可能に配置され、前記液体吐出部から吐出された前記クーラント液を、前記連通口を介して回収する貯留タンクと、を備え、
前記貯留タンクは、
上方に向けて開口しかつ前記クーラント液が貯留される貯留ケースと、
前記貯留ケース内の前記クーラント液を前記液体吐出部に供給する供給口と、
前記貯留ケース内に配置され、前記供給口と連通する第1フィルタと、
前記貯留ケースに着脱可能に設けられ、前記貯留ケースに装着されたときに前記第1フィルタより上方に位置する第2フィルタと、を備え、
前記第2フィルタの濾過精度は、前記第1フィルタの濾過精度よりも低く設定され、
前記第2フィルタが前記貯留ケースに装着されているとき、前記第1フィルタは、前記第2フィルタで濾過された前記クーラント液を濾過し、
前記被加工物は、第1の材料から構成される第1被加工物と、第2の材料から構成される第2被加工物とを含み、
前記第1被加工物は、人工歯を作製するときに用いられ、
前記第2被加工物は、人工歯を支持する支持台を作製するときに用いられ、
前記第2フィルタは、前記第1被加工物を切削加工するときには前記貯留ケースに装着されず、かつ、前記第2被加工物を切削加工するときには前記貯留ケースに装着される、切削加工機。
【請求項2】
前記第1の材料は、セラミックス材料であり、
前記第2の材料は、チタンあるいはチタン合金である、請求項に記載の切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミックス材料や樹脂材料から構成された被加工物を所望の形状に切削加工する切削加工機が知られている。切削加工機は、例えば、内部に加工空間を有するケース本体と、上記加工空間に配置され、被加工物を保持する保持部と、上記加工空間に配置され、上記被加工物に対して切削や研磨等の加工を施す加工ツールを把持する把持部と、を備えている。
【0003】
特許文献1には、加工ツールおよび被加工物に対してクーラント液(切削液)を吐出する液体吐出部と、クーラント液を貯留する貯留タンクと、をさらに備えた、いわゆるウェット方式の切削加工機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-135519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェット方式の切削加工機では、切削加工時に吐出されるクーラント液は、貯留タンクに回収され、再利用される。ここで、貯留タンクに回収されるクーラント液には、切削加工時に生じた被加工物の切削粉が混ざっている。このため、貯留タンクにはクーラント液を濾過するフィルタが設けられている。被加工物の切削加工時間が長くなるほど、貯留タンクに流れ込む切削粉の量は増えていき、やがてフィルタに目詰まりが生じてしまう。フィルタに目詰まりが生じてしまうと、クーラント液を再利用することができなくなる(液体吐出部に供給されるクーラント液が減少する)ため、フィルタを交換する必要がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯留タンクに設けられたフィルタの目詰まりの発生を抑制することができる切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、被加工物を切削加工するときに、切削加工の方法によって比較的小さな切削粉が生じる場合と比較的大きな切削粉が生じる場合とがあることに着目した。そして、大きさが大きく異なる切削粉が混在した状態で貯留タンク内に設けられたフィルタ付近に堆積すると、フィルタに目詰まりが発生しやすいことに気がついた。
【0008】
本発明に係る切削加工機は、加工空間と、前記加工空間よりも下方に位置する収容空間と、前記加工空間と前記収容空間とを連通する連通口と、が内部に形成されているケース本体と、前記加工空間に配置され、被加工物を保持する保持部と、前記加工空間に配置され、前記被加工物を切削加工するための加工ツールを把持する把持部と、前記加工空間にクーラント液を吐出する液体吐出部と、前記収容空間に着脱可能に配置され、前記液体吐出部から吐出された前記クーラント液を、前記連通口を介して回収する貯留タンクと、を備えている。前記貯留タンクは、上方に向けて開口しかつ前記クーラント液が貯留される貯留ケースと、前記貯留ケース内の前記クーラント液を前記液体吐出部に供給する供給口と、前記貯留ケース内に配置され、前記供給口と連通する第1フィルタと、前記貯留ケースに着脱可能に設けられ、前記貯留ケースに装着されたときに前記第1フィルタより上方に位置する第2フィルタと、を備えている。前記第2フィルタの濾過精度は、前記第1フィルタの濾過精度よりも低く設定されている。前記第2フィルタが前記貯留ケースに装着されているとき、前記第1フィルタは、前記第2フィルタで濾過された前記クーラント液を濾過する。
【0009】
本発明の切削加工機によると、加工空間から収容空間に流れ込むクーラント液は、まず第2フィルタで濾過される。ここで、第2フィルタの濾過精度は、第1フィルタの濾過精度より低く設定されているため、第2フィルタでは比較的大きな切削粉をクーラント液から分離することができる。また、第2フィルタの濾過精度が比較的低いことから、クーラント液は第2フィルタを良好に通過することができる。即ち、第2フィルタはクーラント液の流れを妨げない。その後、第2フィルタで濾過されたクーラント液は第1フィルタで濾過される。このとき、第2フィルタで分離されずにクーラント液に混ざっていた切削粉は第1フィルにおいて分離される。これにより、液体吐出部には供給口から濾過されたクーラント液が供給されることになる。このように、加工空間から流れ込むクーラント液を濾過精度の異なる第2フィルタおよび第1フィルタで濾過することにより、大きさが大きく異なる切削粉がクーラント液に混在した状態で第1フィルタにおいて濾過されなくなるため、第1フィルタの目詰まりが抑制される。なお、第2フィルタは貯留ケースに着脱可能に設けられているため、第2フィルタにおいてある程度の量の切削粉が分離されたときには第2フィルタを貯留ケースから取り外して切削粉を廃棄することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貯留タンクに設けられたフィルタの目詰まりの発生を抑制することができる切削加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る切削加工機の斜視図である。
図2図1の切削加工機のフロント上カバーを開いた状態の正面図である。
図3図1の切削加工機のフロント上カバーを閉じた状態の断面図である。
図4】一実施形態に係るアダプタに取り付けられた被加工物の斜視図である。
図5】一実施形態に係るツールマガジンおよびクランプの斜視図である。
図6】一実施形態に係るツールマガジンおよびクランプの正面図である。
図7】一実施形態に係る貯留タンクの斜視図である。
図8】一実施形態に係る貯留タンクの斜視図であり、上蓋が取り外された状態を示す図である。
図9】一実施形態に係る第2フィルタを保持するフィルタホルダーの分解斜視図である。
図10】一実施形態に係る第2フィルタを保持するフィルタホルダーの斜視図である。
図11】一実施形態に係る第2フィルタを保持するフィルタホルダーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、切削加工機10の斜視図である。図2は、切削加工機10のフロント上カバー20を開いた状態の正面図である。図3は、切削加工機10のフロント上カバー20を閉じた状態の断面図である。以下の説明では、切削加工機10を正面から見たときに、切削加工機10から遠ざかる方を前方、切削加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、切削加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0014】
切削加工機10は、XYZ直交座標系に配置されている。ここでは、X軸は前後方向に延びる軸である。図3に示すように、本実施形態では、X軸が水平方向からθだけ傾いている。ただし、X軸は、水平方向と同じ方向に延びていてもよい。Y軸は左右方向に延びる軸である。Z軸は上下方向に延びる軸である。図3に示すように、本実施形態では、Z軸が鉛直方向からθだけ傾いている。ただし、Z軸は、鉛直方向と同じ方向に延びていてもよい。また、符号θ、θ、θは、それぞれX軸周り、Y軸周り、Z軸周りの回転方向を示している。なお、これらの方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、切削加工機10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0015】
切削加工機10は、被加工物5(図4参照)を切削および研磨する装置である。切削加工機10は、被加工物5を加工して、歯科用の成形品、例えば、クラウン、インレー、アンレー、ベニア等の歯冠補綴物や、人工歯、義歯床、人工歯を支持する支持台(インプラント用のアバットメント)等を作製する装置である。被加工物5は、ここではブロック状(例えば立方体状や直方体状)である。ただし、被加工物5は、他の形状、例えば円板状等であってもよい。被加工物5は、例えば、第1の材料から構成される第1被加工物と、第2の材料から構成される第2被加工物を含む。第1の材料は、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、ハイブリッドレジン等のレジン(樹脂材料)や、ガラスセラミックス、ジルコニア等のセラミックス材料、ワックス、石膏等で構成されている。ジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。第1の材料は、歯冠補綴物、人工歯、義歯床を作製するときに用いられる。第2の材料は、例えば、チタン、チタン合金等の金属材料で構成されている。第2の材料は、支持台を作製するときに用いられる。ただし、被加工物5の形状や材料は特に限定されない。第1被加工物は主として研磨により加工されるため、第1被加工物を加工するときに生じる切削粉は比較的小さい(例えば平均粒子径は10μm~20μm程度。例えば10μm。)。一方、第2被加工物は主として切削により加工されるため、第2被加工物を加工するときに生じる切削粉は比較的大きい(例えば平均粒子径は200μm~300μm程度。例えば270μm。)。なお、本明細書における平均粒子径は、レーザ回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径である。
【0016】
図4に示すように、本実施形態では、被加工物5がアダプタ8(ホルダーともいう)に取り付けられている。被加工物5は、アダプタ8に取り付けられた状態で、切削加工機10に収容される。被加工物5は、アダプタ8に保持された状態で切削加工される。アダプタ8は、板状部材8Aと連結ピン8Bとを備えている。板状部材8Aは、被加工物5に取り付けられている。連結ピン8Bは、板状部材8Aから突出している。連結ピン8Bは、後述するクランプ50(図6参照)の挿入孔50A(図6参照)に挿入される。
【0017】
切削加工機10は、切削加工時にクーラント液が使用可能なように構成されている、所謂、ウェット方式の切削加工機である。なお、「クーラント液」は、水溶性であってもよいし、不水溶性であってもよい。「クーラント液」は、水そのものであってもよいし、水に、冷却効果を高めるための添加剤等が添加されたものであってもよい。例えば、水を主体(質量割合で最も多くを占める成分。)として、鉱油や油脂類等の不水溶性成分と、界面活性剤と、を含んでいてもよい。
【0018】
図1図3に示すように、切削加工機10は、箱状に形成されている。切削加工機10は、ケース本体12と、フロント上カバー20と、フロント下カバー25と、を備えている。ケース本体12は、切削加工機10の筐体である。ケース本体12は中空状である。ケース本体12は、底壁13と、左壁14と、右壁15と、後壁16と、上壁17と、前壁18(図2参照)と、第1区画底壁13S(図2参照)と、区画右壁15S(図2参照)と、第1区画後壁16S(図3参照)と、区画上壁17S(図3参照)と、第2区画底壁27(図3参照)と、第2区画後壁28(図3参照)と、を有している。左壁14は、底壁13の左端から上方に向かって延びている。右壁15は、底壁13の右端から上方に向かって延びている。後壁16は、底壁13の後端から上方に向かって延びている。後壁16の左端は左壁14の後端に接続され、後壁16の右端は右壁15の後端に接続されている。前壁18は、第1区画底壁13Sの前端から上方に向かって延びている。前壁18の左端は左壁14の前端に接続され、前壁18の右端は右壁15の前端に接続されている。前壁18の上端は、上壁17の前端に接続されている。上壁17は、左壁14、右壁15、後壁16、前壁18のそれぞれの上端に接続されている。
【0019】
図3に示すように、第1区画底壁13Sは、底壁13よりも上方に配置されている。第1区画底壁13Sは、前方から後方に向かって漸次下方に傾斜している。第1区画底壁13Sの後方には、蓋体13Lが配置されている。蓋体13Lは、クーラント液が上下方向に通過可能なように、メッシュ状に構成されている。区画右壁15Sは、左壁14より右方かつ右壁15より左方に配置されている。区画右壁15Sは、第1区画底壁13Sから上方に延びている。第1区画後壁16Sは、後壁16より前方かつ前壁18より後方に配置されている。第1区画後壁16Sは、第1区画底壁13Sと左壁14と区画右壁15Sと区画上壁17Sとに接続されている。区画上壁17Sは、第1区画底壁13Sよりも上方かつ上壁17よりも下方に配置されている。
【0020】
図3に示すように、第2区画底壁27は、第1区画底壁13Sよりも下方かつ底壁13よりも上方に配置されている。第2区画底壁27は、底壁13と平行に延びている。第2区画底壁27には、上下方向に貫通した排液口27Hが形成されている。排液口27Hは常時開放されている。排液口27Hには、例えば開放と閉鎖とを切り替え可能な弁体等は配置されていない。第2区画後壁28は、後壁16よりも前方かつ前壁18より後方に配置されている。第2区画後壁28は、第1区画後壁16Sよりも下方に配置されている。第2区画後壁28は、後壁16と平行に延びている。第2区画後壁28は、底壁13から上方に向かって延びている。第2区画後壁28の上端は第2区画底壁27に接続されている。
【0021】
図2に示すように、ケース本体12は、側面(ここでは前壁18)に開口18Oを有している。開口18Oは、左壁14、第1区画底壁13S、区画右壁15S、区画上壁17Sによって形成されている。ケース本体12の内部は、区画右壁15Sで左右に区画されている。ケース本体12の左方には、左壁14、第1区画底壁13S、区画右壁15S、区画上壁17S、第1区画後壁16S、フロント上カバー20によって囲まれた加工空間19が形成されている。加工空間19は、被加工物5の切削加工が行われる空間である。ケース本体12の右方には、区画右壁15S、第1区画底壁13S、右壁15、区画上壁17S、第1区画後壁16S、前壁18によって囲まれた第1収容空間A1が形成されている。また、加工空間19の下方には、左壁14、底壁13、右壁15、第2区画底壁27、第2区画後壁28、フロント下カバー25によって囲まれた第2収容空間A2が形成されている。第2収容空間A2は、収容空間の一例である。第2収容空間A2は、第2区画底壁27に形成された排液口27Hを通じて、加工空間19と常時連通されている。排液口27Hは、加工空間19と第2収容空間A2とを連通する連通口の一例である。
【0022】
図3に示すように、フロント上カバー20は、支持アーム22に支持されている。支持アーム22の一端は、ケース本体12に取り付けられている。フロント上カバー20は、支持アーム22の支軸(図示せず)を中心として上下方向に移動することで、開口18O(図2参照)を開閉自在に覆う。これにより、ケース本体12の開口18Oは開かれた状態と閉じられた状態とに切り換えられる。切削加工機10への被加工物5の収容や取り出し、切削加工機10の保守等を行う際、ユーザは、フロント上カバー20を上方に移動させて、開口18Oを開く。これにより、加工空間19が外部と連通する。一方、切削加工を行う際、ユーザは、フロント上カバー20を下方に移動させて、開口18Oを閉じる。これにより、加工空間19が外部から隔離される。
【0023】
図2に示すように、フロント上カバー20には、窓21が設けられている。窓21は、正面視において、ケース本体12の開口18Oよりも小さい。窓21は、例えば、透明のアクリル板やガラス板等によって形成されている。ユーザは、フロント上カバー20が閉じられた状態、例えば切削加工時においても、窓21を通じて加工空間19を視認することができる。
【0024】
フロント下カバー25は、左壁14および右壁15に取り付けられた支持部材(図示せず)に沿って前後方向にスライド自在に設けられている。フロント下カバー25が前後方向に移動することで、第2収容空間A2が開かれた状態と閉じられた状態とに切り換えられる。クーラント液の入った貯留タンク70(図2参照)を着脱する際、ユーザは、フロント下カバー25を前方に移動させる。一方、切削加工を行う際、ユーザは、フロント下カバー25を後方にスライドさせる。これにより、第2収容空間A2が閉じられる。切削加工時に第2収容空間A2を閉じておくことで、ユーザが切削加工の途中で誤って貯留タンク70を取り外してしまうことが抑制される。
【0025】
図2に示すように、切削加工機10は、キャリッジ38と、ツールマガジン40と、クランプ50と、移動機構58と、貯留タンク70と、制御部90(図3参照)と、を備えている。キャリッジ38は、加工空間19よりも上方に配置されている。キャリッジ38には、スピンドル30と、液体吐出ノズル36と、が搭載されている。スピンドル30は、区画上壁17Sを貫通している。ツールマガジン40とクランプ50は、加工空間19に配置されている。移動機構58は、第1収容空間A1に配置されている。貯留タンク70は、第2収容空間A2に着脱可能に配置されている。
【0026】
図2に示すように、キャリッジ38は、Z軸方向およびY軸方向に移動自在に設けられている。キャリッジ38は、第1キャリッジ38Aと第2キャリッジ38Bとを備えている。第1キャリッジ38Aは、Y軸方向に延びる一対の第1ガイドシャフト39Aに支持されている。第1キャリッジ38Aは、第1駆動機構(図示せず)によって、第1ガイドシャフト39Aに沿ってY軸方向に移動可能なように構成されている。第1ガイドシャフト39Aの左端は、左壁14に接続されている。第1ガイドシャフト39Aの右端は、区画右壁15Sを貫通して右壁15に接続されている。第2キャリッジ38Bは、Z軸方向に延びる一対の第2ガイドシャフト39Bに支持されている。第2キャリッジ38Bは、第2駆動機構(図示せず)によって、第2ガイドシャフト39Bに沿ってZ軸方向に移動可能なように構成されている。第2ガイドシャフト39Bは、第1キャリッジ38Aに設けられている。このため、第1キャリッジ38AがY軸方向に移動すると、第2キャリッジ38Bも同様にY軸方向に移動する。第1駆動機構および第2駆動機構は、制御部90に電気的に接続されており、制御部90によって制御される。
【0027】
図2に示すように、スピンドル30は、第2キャリッジ38Bに設けられている。スピンドル30は、キャリッジ38の移動に伴ってXYZ直交座標系において移動する。より詳細には、スピンドル30は、第2キャリッジ38Bの移動に伴ってZ軸方向に移動し、第1キャリッジ38Aの移動に伴ってY軸方向に移動する。スピンドル30は、加工ツール6(ミリングバーともいう)を回転可能に支持する。スピンドル30は、加工ツール6を回転させて被加工物5を切削加工する。スピンドル30は、把持部32(例えばコレットチャック)と、回転部34と、シール部35と、を備えている。シール部35は、円柱状に形成されている。シール部35は、上下方向に延びている。シール部35の下端には、回転部34が設けられている。回転部34は、シール部35に対して相対的に回転する。
【0028】
図2に示すように、回転部34の下端には、把持部32が設けられている。把持部32は、回転部34と共に回転する。把持部32は、加工ツール6の上端部を支持(把持)するものである。回転部34は、把持部32に支持された加工ツール6を回転させるものである。回転部34には、第1モータ(図示せず)が接続されている。第1モータは、制御部90に電気的に接続されており、制御部90によって制御される。第1モータが駆動することで、回転部34はZ軸周りθに回転する。そして、回転部34の回転に伴い、把持部32に把持された加工ツール6が、Z軸周りθに回転する。
【0029】
図2に示すように、液体吐出ノズル36は、スピンドル30に設けられている。液体吐出ノズル36は、スピンドル30の回転部34の側方に配置されている。液体吐出ノズル36は、スピンドル30と同様に、キャリッジ38の移動に伴ってXYZ直交座標系において移動する。本実施形態において、液体吐出ノズル36は、回転部34の前後左右に合計4つ配置されている。ただし、液体吐出ノズル36の配置位置や個数は特に限定されない。液体吐出ノズル36の吐出口は、クランプ50および加工ツール6よりも上方に配置されている。図2等に矢印で示すように、液体吐出ノズル36は、加工ツール6によって被加工物5が加工されているときに、加工空間19にクーラント液を吐出する。液体吐出ノズル36は、典型的には、加工ツール6および/または被加工物5に向かってクーラント液を吐出する。液体吐出ノズル36は、液体吐出部の一例である。液体吐出ノズル36は、液体供給路36S(図3参照)を介して、貯留タンク70の供給口70S(図7も参照)に接続されている。なお、液体供給路36Sの構成は特に限定されないが、例えば、樹脂製の変形容易なチューブである。また、液体供給路36Sの途中には、送液ポンプ37が配置されている。送液ポンプ37は、貯留タンク70内のクーラント液を液体吐出ノズル36に供給する。送液ポンプ37は、制御部90によって制御される。液体供給路36Sは、液体吐出ノズル36と送液ポンプ37とを接続する第1供給路36SAと、送液ポンプ37と供給口70Sとを接続する第2供給路36SBとを含む。第1供給路36SAは、第1区画後壁16Sを貫通し、スピンドル30を介して液体吐出ノズル36に接続されている。第2供給路36SBは、第2区画後壁28を貫通する。第2供給路36SBは、供給口70Sと接続可能に構成されている。
【0030】
移動機構58は、ツールマガジン40をX軸方向に移動させる機構である。図2に示すように、移動機構58は、ツールマガジン40の右方に配置されている。移動機構58は、Y軸方向に延びる軸58Aを備えている。軸58Aは、区画右壁15Sを貫通している。軸58Aの一部(右側部分)は、第2収容空間A2に配置され、軸58Aの他の一部(左側部分)は、加工空間19に配置されている。軸58Aの左端部分には、クランプ50とツールマガジン40とが設けられている。移動機構58は、第3駆動機構(図示せず)によって、X軸方向に移動可能に構成されている。第3駆動機構は、制御部90に電気的に接続されており、制御部90によって制御される。
【0031】
図5は、ツールマガジン40およびクランプ50の斜視図である。図6は、ツールマガジン40およびクランプ50の正面図である。ツールマガジン40は、複数の加工ツール6を収容することが可能なものである。ツールマガジン40は、クランプ50と移動機構58との間に設けられている。ツールマガジン40は、移動機構58がX軸方向に移動することによって、X軸方向に移動する。ツールマガジン40は、加工ツール6を収容する第1部分40Aと、第1部分40Aより後方に配置され、軸58Aに接続された第2部分40Bと、第2部分40Bより後方に配置された第3部分40Cとを備えている。ツールマガジン40の第1部分40Aには、加工ツール6を収容する複数(ここでは6個)の孔部42が形成されている。加工ツール6は、その上部が露出された状態で孔部42に挿入される。加工ツール6を交換する際には、スピンドル30の把持部32によって把持されている加工ツール6を孔部42に戻す。そして、次に使用する加工ツール6の上方の位置までスピンドル30を移動させ、把持部32よりも下方に位置する加工ツール6の上端を把持部32が支持する。
【0032】
図6に示すように、軸58Aの内部には、クランプ50を回転可能に支持する回転軸44が設けられている。回転軸44は左右方向に延びており、クランプ50および移動機構58に連結している。回転軸44には、第2モータ(図示せず)が設けられている。第2モータは、制御部90に電気的に接続されており、制御部90によって制御される。回転軸44は、第2モータによって、Y軸回りθに回転可能に構成されている。回転軸44がY軸回りθに回転することによって、クランプ50はY軸回りθに回転する。回転軸44は、軸58Aに対して独立して回転可能に構成されている。すなわち、回転軸44がY軸回りθに回転しても、軸58AはY軸回りθに回転しない。
【0033】
図5に示すように、クランプ50は、アダプタ8を着脱自在に保持する部材である。クランプ50は、ここではアダプタ8を介して被加工物5を保持する。クランプ50は、保持部の一例である。本実施形態では、クランプ50がアダプタ8を介して被加工物5を保持した状態で、被加工物5に対して切削加工が行われる。ただし、クランプ50は、被加工物5を直接保持するように構成されていてもよい。クランプ50には、複数の挿入孔50A(図6参照)が形成されている。ここでは、3つの挿入孔50Aが前後方向に並んでいる。挿入孔50Aには、アダプタ8の連結ピン8B(図4参照)が挿入される。挿入孔50Aに挿入された連結ピン8Bは、ネジ50Bによってクランプ50に固定される。クランプ50は、ツールマガジン40と共に移動可能に構成されている。ツールマガジン40およびクランプ50は、移動機構58によってX軸方向に移動可能に構成されている。なお、クランプ50がY軸回りθに回転しても、ツールマガジン40はY軸回りθに回転しない。
【0034】
制御部90は、例えばコンピュータである。制御部90は、例えば、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラム等を格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、各種データ等を格納するメモリ等の記録媒体と、を備えていてもよい。制御部90は、例えばROM内に保存されたプログラムを使用して、切削加工に関する制御行うように構成されていてもよい。制御部90は、ここではケース本体12の後方に配置されている。ただし、制御部90の一部または全部は、ケース本体12の外部に設けられていてもよい。
【0035】
貯留タンク70は、液体吐出ノズル36から吐出されたクーラント液を回収する。ここで、液体吐出ノズル36から吐出されたクーラント液は加工空間19から排液口27Hを通過して第2収容空間A2に流れ込む。即ち、貯留タンク70は、排液口27Hを介してクーラント液を回収する。図3に示すように、貯留タンク70は、第2収容空間A2の所定の位置に着脱可能に配置されている。貯留タンク70は、排液口27Hの下方に配置されている。貯留タンク70は、貯留ケース72と、供給口70Sと、第1フィルタ74と、第2フィルタ76(図8参照)と、フィルタホルダー80とを備えている。
【0036】
貯留ケース72は、液体吐出ノズル36から吐出されたクーラント液を回収する容器である。また、貯留ケース72は、液体吐出ノズル36から吐出されるクーラント液を貯留する容器である。図3に示すように、貯留ケース72は、上方に向けて開口する開口部72Sを有している。貯留ケース72は、箱型状に形成されている。貯留タンク70が第2収容空間A2に配置されているとき、平面視で貯留ケース72の開口部72Sの一部と排液口27Hとは重なる。
【0037】
図7に示すように、貯留ケース72の後部には、供給口70Sが設けられている。図3に示すように、供給口70Sは、第1フィルタ74の上端74Tより下方に位置している。供給口70Sは、前後方向に延びる。供給口70Sは、液体供給路36Sの第2供給路36SBに接続される。供給口70Sは、貯留ケース72内のクーラント液を液体吐出ノズル36に供給する。
【0038】
図3に示すように、第1フィルタ74は、貯留ケース72内に着脱可能に配置されている。第1フィルタ74は、通常クーラント液に浸かっている。第1フィルタ74は、貯留ケース72内のクーラント液を濾過する。第1フィルタ74は、クーラント液の中から切削粉等を取り除く。即ち、第1フィルタ74は、クーラント液に混ざっている切削粉等を分離する。例えば、貯留ケース72に第2フィルタ76が取り付けられているときには、第1フィルタ74は、第2フィルタ76で濾過されたクーラント液を濾過する。また、貯留ケース72に第2フィルタ76が取り付けられていないときには、第1フィルタ74は、加工空間19から貯留ケース72に回収されたクーラント液を濾過する。第1フィルタ74は、供給口70Sと連通している。貯留ケース72内のクーラント液は、第1フィルタ74を通過して供給口70Sに流れる。第1フィルタ74は、例えば、円筒形状に形成されている。第1フィルタ74は、例えば、セルロース繊維から形成されている。
【0039】
図3に示すように、貯留ケース72の開口部72Sには、蓋73が載せ置かれている。蓋73は、フィルタホルダー80と干渉しないように配置されている。蓋73は、断面視において、前方から後方に向かって傾斜している前方部73Fと、後方から前方に向かって傾斜している後方部73Rと、を有している。蓋73の前後方向の中央部分には、上方に開口した回収口73Sが形成されている。液体吐出ノズル36から吐出されたクーラント液は、排液口27Hおよび蓋73の回収口73Sを介して貯留ケース72内に流れ込む。蓋73は、フィルタホルダー80の有無に関わらず、貯留ケース72の開口部72Sに載せ置かれる。
【0040】
図8に示すように、フィルタホルダー80は、貯留ケース72に着脱可能に設けられている。図7に示すように、フィルタホルダー80は、蓋73の下方に配置される。フィルタホルダー80は、第2フィルタ76を保持する。図9に示すように、フィルタホルダー80は、第1部材81と、第2部材82と、抑制部材83とを備えている。
【0041】
図9に示すように、第1部材81は、底壁81Aと、底壁81Aの前端から上方に延びる前壁81Bと、底壁81Aの後端から上方に延びる後壁81Cと、底壁81Aの右端から上方に延びる右壁81Dと、底壁81Aの左端から上方に延びる左壁81Eと、を備えている。底壁81Aの外形は矩形状である。底壁81Aには、三角形状の第1開口81Sが複数形成されている。ここでは、底壁81Aには、8個の第1開口81Sが形成されている。なお、第1開口81Sの個数は特に限定されない。前壁81Bおよび後壁81Cの上下方向の長さは、右壁81Dおよび左壁81Eの上下方向の長さより短い。前壁81Bおよび後壁81Cの上部には、第2部材82の延伸部82Mを支持する支持部81Mが形成されている。前壁81Bの支持部81Mは、前方に延びる。後壁81Cの支持部81Mは、後方に延びる。右壁81Dおよび左壁81Eの上部には、貯留ケース72の上縁に係止する係止部81Lが形成されている。右壁81Dの係止部81Lは、右方に延びる。左壁81Eの係止部81Lは、左方に延びる。
【0042】
第2部材82は、第1部材81に着脱可能に設けられている。第2部材82は、第1部材81の上に配置される。図10に示すように、第2部材82は、例えば、ネジ85によって第1部材81に固定されている。図9に示すように、第2部材82は、底壁82Aと、底壁82Aの前端から上方に延びる前壁82Bと、底壁82Aの後端から上方に延びる後壁82Cと、底壁82Aの右端から上方に延びる右壁82Dと、底壁82Aの左端から上方に延びる左壁82Eと、を備えている。底壁82Aの外形は矩形状である。底壁82Aには、矩形状の第2開口82Sが複数形成されている。ここでは、底壁82Aには、2個の第2開口82Sが形成されている。図11に示すように、平面視で、1個の第2開口82Sは、4個の第1開口81Sと重なる。なお、第2開口82Sの個数は特に限定されない。図9に示すように、前壁82Bおよび後壁82Cの上下方向の長さは、右壁82Dおよび左壁82Eの上下方向の長さと同じである。前壁82Bおよび後壁82Cの上部には、第1部材81の支持部81Mに載置される延伸部82Mが形成されている。前壁82Bの延伸部82Mは、前方に延びる。後壁82Cの延伸部82Mは、後方に延びる。
【0043】
図9に示すように、抑制部材83は、第2フィルタ76と第2部材82との間に配置されている。抑制部材83は、第2フィルタ76の移動を抑制する部材である。抑制部材83は、第1部材81と第2部材82とに挟み込まれることによって、第2フィルタ76の移動を抑制する。抑制部材83は、シート状に形成されている。抑制部材83は、例えば、ゴム材料から形成されている。抑制部材83には、矩形状の第3開口83Sが複数形成されている。ここでは、抑制部材83には、2個の第3開口83Sが形成されている。第3開口83Sは、第2開口82Sと同形状である。平面視で、第3開口83Sは、第2開口82Sと重なるように形成されている。即ち、図11に示すように、抑制部材83自体は、平面視で、第1開口81Sおよび第2開口82Sとは重ならない。なお、抑制部材83は、第2フィルタ76と第1部材81との間に配置されていてもよい。
【0044】
第2フィルタ76は、貯留ケース72に着脱可能に設けられている。ここでは、フィルタホルダー80を貯留ケース72に着脱することによって、第2フィルタ76も着脱される。第2フィルタ76は、例えば、チタンやチタン合金等の金属材料で構成された第2被加工物を切削加工して、支持台を作製するときに貯留ケース72に装着される。また、第2フィルタ76は、例えば、ガラスセラミックス等の樹脂材料で構成された第1被加工物を切削加工して、人工歯を作製するときには貯留ケース72に装着されない。第2フィルタ76は、第1部材81と第2部材82とに挟み込まれて保持されている。第2フィルタ76は、貯留ケース72に装着されたときに第1フィルタ74より上方に位置する。第2フィルタ76は、貯留ケース72に装着されたときに、平面視で第1フィルタ74と重なる。図11に示すように、第2フィルタ76がフィルタホルダー80に保持されているとき、平面視で第1開口81Sの全体は第2フィルタ76と重なる。即ち、第1開口81Sを通過するクーラント液は、必ず第2フィルタ76によって濾過される。第2フィルタ76は、シート状に形成されている。第2フィルタ76は、例えば、樹脂材料(例えばナイロン等のポリアミド合成樹脂)から形成されている。第2フィルタ76の濾過精度は、第1フィルタ74の濾過精度よりも低く設定されている。ここで、「濾過精度が低い」には、目が粗いこと、濾過能力が低いこと、濾過粒度が大きいことが含まれる。例えば、第2フィルタ76の濾過精度は50μm~80μm(例えば70μm)程度であり、第1フィルタ74の濾過精度は1μm~10μm(例えば3μm)程度である。第2フィルタ76において、比較的大きな切削粉をクーラント液から分離することで、第1フィルタ74の濾過精度の低下を抑制することができる。また、第2フィルタ76が貯留ケース72から取り外すことができるため、第2フィルタ76に分離された切削粉が堆積しても、容易に切削粉を除去することができ、第2フィルタ76の濾過精度の回復を図ることができる。また、第2被加工物を切削加工するときにのみ第2フィルタ76を使用することによって、第2被加工物の切削粉を第1被加工物から分離させた状態で回収することができ、その後の廃棄を容易に行うことができる。
【0045】
以上のように、本実施形態の切削加工機10によると、加工空間19から第2収容空間A2に流れ込むクーラント液は、まず第2フィルタ76で濾過される。ここで、第2フィルタ76の濾過精度は、第1フィルタ74の濾過精度より低く設定されているため、第2フィルタ76では比較的大きな切削粉をクーラント液から分離することができる。また、第2フィルタ76の濾過精度が比較的低いことから、クーラント液は第2フィルタを良好に通過することができる。即ち、第2フィルタ76はクーラント液の流れを妨げない。その後、第2フィルタ76で濾過されたクーラント液は第1フィルタ74で濾過される。このとき、第2フィルタ76で分離されずにクーラント液に混ざっていた比較的小さな切削粉は第1フィルタ74において分離される。これにより、液体吐出ノズル36には供給口70Sから濾過されたクーラント液が供給されることになる。このように、加工空間19から流れ込むクーラント液を濾過精度の異なる第2フィルタ76および第1フィルタ74で濾過することにより、大きさが大きく異なる切削粉がクーラント液に混在した状態で第1フィルタ74において濾過されなくなるため、第1フィルタ74の目詰まりが抑制される。なお、第2フィルタ76は貯留ケース72に着脱可能に設けられているため、第2フィルタ76においてある程度の量の切削粉が分離されたときには第2フィルタ76を貯留ケース72から取り外して切削粉を廃棄することができる。
【0046】
本実施形態の切削加工機10では、フィルタホルダー80は、第1開口81Sが形成された第1部材81と、第1部材81に着脱可能に設けられ、平面視で第1開口81Sと重なる第2開口82Sが形成された第2部材82と、を有している。第2フィルタ76は、第1部材81と第2部材82とに挟まれて保持されている。これにより、第2フィルタ76を確実に保持するとともに第2フィルタ76を容易に交換することができる。
【0047】
本実施形態の切削加工機10では、第2フィルタ76は、樹脂材料から形成され、第1開口81Sは、三角形状に形成されている。第2フィルタ76は樹脂材料から形成されているため、第2フィルタ76のうち第1開口81Sと重なる部分に比較的大きな切削粉がある程度堆積すると第2フィルタ76はたわむことがある。しかしながら、第1開口81Sは三角形状に形成されているため、矩形状に形成されている場合と比較して、第2フィルタ76のうち第1開口81Sと重なる部分を第1部材81および第2部材82でより確実に支持することができる。即ち、第2フィルタ76のうち第1開口81Sと重なる部分のたわみを抑制することができる。これにより、第2フィルタ76の破損(破れ)を抑制し、クーラント液に混ざっている比較的大きな切削粉(例えばチタンからなる切削粉)が第2フィルタ76から漏れ出すことを抑制することができる。
【0048】
本実施形態の切削加工機10では、フィルタホルダー80は、第2フィルタ76と第2部材82との間に位置し、かつ、第2フィルタ76の移動を抑制する抑制部材83を備えている。これにより、第2フィルタ76が第1部材お81よび第2部材82に対して移動すること(ずれること)をより確実に抑制することができる。
【0049】
本実施形態の切削加工機10では、第2フィルタ76は、第1被加工物を切削加工するときには貯留ケース72に装着されず、かつ、第2被加工物を切削加工するときには貯留ケース72に装着される。このように、切削加工する被加工物5の種類に応じて第2フィルタ76を使用することで、第1フィルタ74の目詰まりを抑制することができる。
【0050】
本実施形態の切削加工機10では、第1被加工物は、人工歯を作製するときに用いられ、第2被加工物は、人工歯を支持する支持台を作製するときに用いられる。人工歯を作製するときに生じる切削粉は比較的小さいのに対して、支持台を作製するときに生じる切削粉は比較的大きい。このため、支持台を作製するときには第2フィルタ76を用いることによって、第1フィルタ74の周辺に比較的小さな切削粉と比較的大きな切削粉とが混在して堆積することが抑制される。これにより、第1フィルタ74の目詰まりを抑制することができる。
【0051】
本実施形態の切削加工機10では、第1の材料は、セラミックス材料であり、第2の材料は、チタンあるいはチタン合金である。これにより、比較的比重の大きなチタン等が第1フィルタ74の周辺に堆積することを抑制することができるため、第1フィルタ74の目詰まりを抑制することができる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0053】
上述した実施形態では、第1部材81の第1開口81Sが三角形状に形成され、第2部材82の第2開口82Sが矩形状に形成されていたが、これに限定されない。例えば、第1部材81の第1開口81Sが矩形状に形成され、第2部材82の第2開口82Sが三角形状に形成されていてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、第2フィルタ75は、樹脂材料から形成されていたが、金属材料から形成されていてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、第2フィルタ76は、樹脂材料で構成された第1被加工物を切削加工して、人工歯を作製するときには貯留ケース72に装着されなかったが、人工歯を作製するときにも貯留ケース72に装着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 切削加工機
12 ケース本体
19 加工空間
27H 排液口(連通口)
32 把持部
36 液体吐出ノズル(液体吐出部)
50 クランプ(保持部)
70 貯留タンク
72 貯留ケース
74 第1フィルタ
76 第2フィルタ
80 フィルタホルダー
81 第1部材
81S 第1開口
82 第2部材
82S 第2開口
83 抑制部材
A2 第2収容空間(収容空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11