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特許7532047溶解保持炉、投入システム及びインゴットの保持方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】溶解保持炉、投入システム及びインゴットの保持方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/18 20060101AFI20240805BHJP
   F27D 13/00 20060101ALI20240805BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240805BHJP
   F27D 3/06 20060101ALI20240805BHJP
   B22D 18/04 20060101ALI20240805BHJP
   B22D 18/06 20060101ALI20240805BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20240805BHJP
   B22D 17/28 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F27B3/18
F27D13/00 D
F27D21/00 N
F27D3/06 A
B22D18/04 U
B22D18/06 509W
B22D45/00 B
B22D17/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020039083
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021139586
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591203152
【氏名又は名称】株式会社豊栄商会
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】平井 孝
(72)【発明者】
【氏名】樹神 康之
(72)【発明者】
【氏名】水野 等
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-232482(JP,A)
【文献】特開平03-199324(JP,A)
【文献】実開昭60-190460(JP,U)
【文献】特開2002-160050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/18
F27D 13/00
F27D 21/00
F27D 3/06
B22D 18/04
B22D 18/06
B22D 45/00
B22D 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットを溶解し、溶解した金属を保持する溶解保持炉本体と、
前記溶解保持炉本体の上部に設けられ、長尺状の前記インゴットがその一端から投入される投入口と、前記投入口から投入された前記インゴットを前記溶解保持炉本体内に導き、かつ、導かれる当該インゴットを予熱する細長い投入路とを有するインゴット投入部と、
長尺状の前記インゴットの他端を保持し、前記インゴット投入部を介して前記保持したインゴットを当該インゴットの一端より徐々に前記溶解保持炉本体内に投入する投入装置と
を具備する溶解保持炉。
【請求項2】
請求項1に記載の溶解保持炉であって、
前記インゴットはその他端に開口目孔を有し、
前記投入装置は、前記開口目孔を使って前記インゴットを吊り下げるフックを有し、前記フックによって吊り下げた前記インゴットを、前記インゴット投入部を介して当該インゴットの一端より徐々に前記溶解保持炉本体内に投入する
溶解保持炉。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶解保持炉であって、
前記投入装置により前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達したことを検出する検出部を有し、
前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達するまで前記インゴットが第1の速度で下降し、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達した後は前記インゴットが前記第1の速度より遅い第2の速度で下降するように、前記投入装置を制御する
溶解保持炉。
【請求項4】
請求項3に記載の溶解保持炉であって、
前記検出部は、前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属と前記投入装置により前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットとの間の通電を検出することで、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達したことを検出する
溶解保持炉。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の溶解保持炉であって、
前記インゴット投入部は、少なくとも2つの前記投入口と、各前記投入口に対応する少なくとも2つの前記投入路とを有し、
一方の前記投入口より投入された前記インゴットが前記溶解保持炉本体内で溶解されているときは、他方の前記投入口より投入された前記インゴットは前記溶解保持炉本体内で溶解されずに予熱されるように、前記投入装置を制御する
溶解保持炉。
【請求項6】
請求項1からのうちいずれか1項に記載の溶解保持炉であって、
前記溶解保持炉本体内に設置され、前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属を加熱する1又は2以上の棒状のヒータ
を具備する溶解保持炉。
【請求項7】
請求項6に記載の溶解保持炉であって、
前記溶解保持炉本体は、上面に前記インゴット投入部が配置され、前記ヒータが設置され、前記インゴット投入部を介して投入されたインゴットを溶解した金属を保持する材料挿入室を有する
溶解保持炉。
【請求項8】
インゴットを溶解し、溶解した金属を保持する溶解保持炉本体にインゴットを投入する投入システムであって、
長尺状の前記インゴットの他端を保持し、前記溶解保持炉本体の上部に設けられ、長尺状の前記インゴットがその一端から投入される投入口と、前記投入口から投入された前記インゴットを前記溶解保持炉本体内に導き、かつ、導かれる当該インゴットを予熱する細長い投入路とを有するインゴット投入部を介して前記保持したインゴットを当該インゴットの一端より徐々に前記溶解保持炉本体内に投入する投入装置と、
前記投入装置により前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達したことを検出する検出部とを有し、
前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達するまで前記インゴットが第1の速度で下降し、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達した後は前記インゴットが前記第1の速度より遅い第2の速度で下降するように、前記投入装置を制御する
投入システム。
【請求項9】
請求項8に記載の投入システムであって、
前記他端に開口目孔を有する長尺状の複数の前記インゴットを、前記開口目孔を使って吊り下げて保持するストレージ棒をさらに具備し、
前記投入装置は、前記開口目孔を使って前記インゴットを吊り下げるフックを有し、前記フックを前記ストレージ棒の一端にアクセスさせて前記ストレージ棒より前記フックに前記インゴットを受け渡し、前記フックを降下して前記フックによって吊り下げた前記インゴットを、前記溶解保持炉本体内に投入する
投入システム。
【請求項10】
請求項に記載の投入システムであって、
前記他端に開口目孔を有する長尺状の複数の前記インゴットを、それぞれの前記開口目孔が上方で連通するように、立った状態で保持するコンテナより、複数の前記インゴットを、前記開口目孔を使って吊り下げて保持する移送用棒と、
前記コンテナに保持された複数の前記インゴットを、前記移送用棒によりそれぞれの前記開口目孔を使ってまとめて保持させ、前記移送用棒の一端を前記ストレージ棒の他端に連接させて前記移送用棒より前記ストレージ棒に複数の前記インゴットをまとめて受け渡す移送装置と
を具備する投入システム。
【請求項11】
インゴットを溶解し、溶解した金属を保持する溶解保持炉本体にインゴットを投入する請求項8に記載の投入システムに用いられるインゴット保持用のコンテナにインゴットを保持する方法であって、
前記他端に開口目孔を有する長尺状の複数の前記インゴットを、それぞれの前記開口目孔が上方で連通するように、立った状態で保持する
インゴットの保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルミニウムを原材料とするダイカストマシーンや低圧鋳造機、重力鋳造機に溶解したアルミニウムを供給するシステムに使われる溶解保持炉、投入システム及びインゴットの保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシーンに溶解したアルミニウムを供給するシステムに使われる溶解保持炉では、溶解したアルミニウムの温度を精密に管理することが要求される。
【0003】
特許文献1には、ダイカスト成形用金型に供給される金属を溶解する金属溶解炉に対して保持された長尺状のインゴットを、ダイカスト成形による溶融金属の消費量に応じて多段階的に投入して溶解させる技術が開示されている。さらに、本発明に関連する技術として、特許文献2及び3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-312255号公報
【文献】実開平4-1259290号公報
【文献】特公昭62-32391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミニウムなどの金属を溶解する前段階でインゴットを予熱して表面を乾燥させることが安全面から要求される。前記の開示技術では、実際には予熱炉が必要となるため、スペース効率が悪くなる。加えて、予熱炉から溶解保持炉への移送が必要であり、移送の際にインゴットの熱が奪われることから、エネルギ効率が悪くなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、スペース効率及びエネルギ効率を向上させることができる溶解保持炉を提供することにある。本発明の目的は、新規な投入システム及びインゴットの保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る溶解保持炉は、インゴットを溶解し、溶解した金属を保持する溶解保持炉本体と、前記溶解保持炉本体の上部に設けられ、長尺状の前記インゴットがその一端から投入される投入口と、前記投入口から投入された前記インゴットを前記溶解保持炉本体内に導き、かつ、導かれる当該インゴットを予熱する細長い投入路とを有するインゴット投入部とを具備する。
【0008】
本発明では、インゴット投入部によりインゴットを予熱することができるので、予熱炉を不要とすることが可能である。また、インゴット投入部で予熱したインゴットをそのまま溶解保持炉本体内に投入することができるので、予熱と投入との間の移送を不要とすることが可能となる。よって、本発明によりスペース効率及びエネルギ効率を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る溶解保持炉は、長尺状の前記インゴットの他端を保持し、前記インゴット投入部を介して前記保持したインゴットを当該インゴットの一端より徐々に前記溶解保持炉本体内に投入する投入装置を具備してもよい。
【0010】
本発明では、溶解保持炉本体内にインゴットの一端より徐々に投入しているので、溶解保持炉本体内で保持する溶融した金属の温度変動を極力抑えることができる。
【0011】
本発明に係る溶解保持炉は、前記インゴットはその他端に開口目孔を有し、前記投入装置は、前記開口目孔を使って前記インゴットを吊り下げるフックを有し、前記フックによって吊り下げた前記インゴットを、前記インゴット投入部を介して当該インゴットの一端より徐々に前記溶解保持炉本体内に投入してもよい。
【0012】
本発明では、フックにより開口目孔を使ってインゴットを吊り下げるようにして溶解保持炉本体内に投入しているので、インゴットの移送を簡単設備で行うことができ、かつ、インゴットの末端が湯面に入る直前に特別な制御を行わなくともインゴットがフックからスムーズに離間する。
【0013】
本発明に係る溶解保持炉は、前記投入装置により前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達したことを検出する検出部を有し、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達するまで前記インゴットが第1の速度で下降し、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達した後は前記インゴットが前記第1の速度より遅い第2の速度で下降するように、前記投入装置を制御してもよい。
【0014】
本発明では、生産性を向上させつつ、溶解保持炉本体内で保持する溶融した金属の温度変動を極力抑えることができる。
【0015】
本発明に係る溶解保持炉では、前記検出部は、前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属と前記投入装置により前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットとの間の通電を検出することで、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達したことを検出してもよい。
【0016】
本発明では、簡単な設備で確実にインゴットの下降速度制御を実現できる。
【0017】
本発明に係る溶解保持炉では、前記インゴット投入部は、少なくとも2つの前記投入口と、各前記投入口に対応する少なくとも2つの前記投入路とを有し、一方の前記投入口より投入された前記インゴットが前記溶解保持炉本体内で溶解されているときは、他方の前記投入口より投入された前記インゴットは前記溶解保持炉本体内で溶解されずに対応する前記投入路を含めた領域で予熱されるように、前記投入装置を制御する。
【0018】
本発明では、生産性を落とさずにインゴットの予熱を十分に行うことができる。
【0019】
本発明に係る溶解保持炉は、前記溶解保持炉本体の上部より前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属に向けて挿入され、前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属を加熱する1又は2以上の棒状のヒータを具備してもよい。
【0020】
本発明では、電気だけでも溶解が可能となる。
【0021】
本発明に係る溶解保持炉は、前記溶解保持炉本体は、上面に前記インゴット投入部が配置され、前記ヒータが設置され、前記インゴット投入部を介して投入されたインゴットを溶解した金属を保持する材料挿入室を有する。前記溶解保持炉本体は、加熱保持室や汲上室をさらに有してもよい。本発明に係る溶解保持炉は、前記ヒータの加熱力及び前記インゴット投入部を介して前記材料挿入室内に投入されるインゴットの投入速度を、前記材料挿入室内に保持された熔解した金属が所定の温度なるように制御する。
【0022】
これにより、他室に流れ込む溶湯の温度を過昇温させずに溶解能力を最大化することができる。
【0023】
一般的な温度制御、例えば材料挿入室と加熱室とを一体的に行う温度制御では、材料挿入室の熔解した金属である溶湯の温度だけを上昇させることはできず、また鋳造条件から定まる汲出し口の溶湯温度(通常700℃℃以下)により制約される。
【0024】
また材料挿入室の溶湯は、材料挿入により直接温度が低下するため溶解能力のネック部位となる。
【0025】
撹拌装置により材料挿入室の温度を急速に回復させる方法はあるものの鋳造条件により制約される汲出し口の温度以上に上昇させることはできない。
【0026】
以上により、一般的な浸漬溶解では、溶解保持炉全体のヒータの出力から計算される溶解能力に比べ、低い能力しか発揮できず、非効率である。
【0027】
溶解材料を浸漬する部分である材料挿入室の溶湯の温度を高くできれば溶解速度が速まり、同じ規模の溶解炉においても、溶解能力を向上させることができる。
【0028】
また、炉全体でのヒータの加熱力の制御ではなく、インゴット投入部の近傍に設置したヒータの加熱力と材料挿入速度とを総合的に制御して、材料挿入室の溶湯温度分布を一定に保持することにより、効率的に溶解能力を向上させる。
【0029】
上記ヒータにより加熱された高温な溶湯は比重差により材料挿入室の溶湯上部に集まる。
【0030】
溶湯上部の溶湯温度に応じて、材料挿入速度を適度に制御することにより、溶湯の上部でインゴットが高速溶解され、溶解された分だけ、下部の比較的低温な溶湯が隔壁の下部を通じて溶解室へ流入する。
【0031】
インゴットの溶解により低下した溶湯上部の温度は、ヒータの加熱制御にフィードバックされ、ヒータにより再び加熱上昇される。
【0032】
本発明に係る投入システムは、インゴットを溶解し、溶解した金属を保持する溶解保持炉本体にインゴットを投入する投入システムであって、長尺状の前記インゴットの他端を保持し、前記インゴット投入部を介して前記保持したインゴットを前記溶解保持炉本体内に投入する投入装置と、前記投入装置により前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達したことを検出する検出部とを有し、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達するまで前記インゴットが第1の速度で下降し、前記溶解保持炉本体内に投入されるインゴットの一端が前記溶解保持炉本体内に保持された溶解した金属の湯面に達した後は前記インゴットが前記第1の速度より遅い第2の速度で下降するように、前記投入装置を制御する。
【0033】
本発明では、生産性を向上させつつ、溶解保持炉本体内で保持する溶融した金属の温度変動を極力抑えることができる。
【0034】
本発明に係る投入システムは、インゴットを溶解し、溶解した金属を保持する溶解保持炉本体にインゴットを投入する投入システムであって、一端に開口目孔を有する長尺状の複数の前記インゴットを、前記開口目孔を使って吊り下げて保持するストレージ棒と、前記開口目孔を使って前記インゴットを吊り下げるフックを有し、前記フックを前記ストレージ棒の一端にアクセスさせて前記ストレージ棒より前記フックに前記インゴットを受け渡し、前記フックを降下して前記フックによって吊り下げた前記インゴットを、前記溶解保持炉本体内に投入する投入装置とを具備する。
【0035】
本発明では、簡単な設備でスムーズにインゴットを溶解保持炉本体内に投入することができる。
【0036】
本発明に係る投入システムは、一端に開口目孔を有する長尺状の複数の前記インゴットを、それぞれの前記開口目孔が上方で連通するように、立った状態で保持するコンテナより、複数の前記インゴットを、前記開口目孔を使って吊り下げて保持する移送用棒と、前記コンテナに保持された複数の前記インゴットを、前記移送用棒によりそれぞれの前記開口目孔を使ってまとめて保持させ、前記移送用棒の一端を前記ストレージ棒の他端に連接させて前記移送用棒より前記ストレージ棒に複数の前記インゴットをまとめて受け渡す移送装置とを具備してもよい。
【0037】
本発明では、簡単な設備でスムーズにインゴットをストレージ棒に受け渡すことができる。
【0038】
本発明に係るインゴットの保持方法は、インゴットを溶解し、溶解した金属を保持する溶解保持炉本体にインゴットを投入する投入システムに用いられるインゴット保持用のコンテナにインゴットを保持する方法であって、一端に開口目孔を有する長尺状の複数の前記インゴットを、それぞれの前記開口目孔が上方で連通するように、立った状態で保持する。
【0039】
本発明では、簡単な設備でスムーズにインゴットを次工程に受け渡すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態に係る溶解保持炉の構成を示す斜視図。
図2図1の正面の断面図。
図3図1の平面図。
図4】本発明の一実施形態に係る溶解保持炉で用いられるインゴットの形状を示す斜視図。
図5図4のインゴットの正面図。
図6図4のインゴットの左側面図。
図7図4のインゴットの右側面図。
図8】、図4のインゴットの平面図。
図9図4のインゴットの底面図。
図10図8中のA-A断面図。
図11図3中のA-A断面図。
図12】本発明の一実施形態に係る第1のインゴット投入部及び第2のインゴット投入部にインゴットを投入するための投入システムの構成を示す図。
図13図12の投入システムの平面図。
図14】本発明の一実施形態に係るインゴットの開口目孔と移送用棒との関係を示す図。
図15】本発明の一実施形態に係るコンテナを正面斜め方向から見た斜視図。
図16図15のコンテナを背面斜めから見た斜視図。
図17図15のコンテナの正面図。
図18】本発明の一実施形態に係る投入システムの移送用棒がコンテナよりインゴットを取り出す方法を説明するための側面図。
図19図18の正面図。
図20】本発明の一実施形態に係る投入システムにおける移送用棒とインゴットの開口目孔との関係示した正面図。
図21】本発明の一実施形態に係る第1の投入装置及び第2の投入装置の動作を制御する制御系の説明図。
図22】本発明の一実施形態に係る第1の投入装置の動作を示すフローチャート。
図23】本発明の一実施形態に係るコンテナにインゴットを積み込む方法を説明するための図。
図24】本発明に係るインゴットの形状の第2の例を示す斜視図。
図25図24のインゴットの正面図。
図26図24のインゴットの左側面図。
図27図24のインゴットの右側面図。
図28図24のインゴットの平面図。
図29図24のインゴットの底面図。
図30図28中のA-A断面図。
図31】本発明に係るインゴットの形状の第3の例を示す斜視図。
図32図31のインゴットの正面図。
図33図31のインゴットの左側面図。
図34図31のインゴットの右側面図。
図35図31のインゴットの平面図。
図36図31のインゴットの底面図。
図37図35中のA-A断面図。
図38】本発明に係るインゴットの形状の第4の例を示す斜視図。
図39図38のインゴットの正面図。
図40図38のインゴットの左側面図。
図41図38のインゴットの右側面図。
図42図38のインゴットの平面図。
図43図38のインゴットの底面図。
図44図42中のA-A断面図。
図45】本発明の他の実施形態に係る投入システムの構成を示す正面図。
図46】本発明の他の実施形態に係る移送用棒の説明図。
図47】本発明の他の実施形態に係る投入装置の動作を制御する制御系の説明図。
図48図47に示した制御系における第1の投入装置の動作を示すフローチャート。
図49】梱包時のインゴット30の向きを説明するための正面図。
図50】本発明の更に別の他の実施形態に係る移送用棒の説明図。
図51】本発明に係る投入口の形態の例を示す図(その1)。
図52】本発明に係る投入口の形態の例を示す図(その2)。
図53】本発明に係る投入口の形態の例を示す図(その3)。
図54】本発明に係る投入口の形態の例を示す図(その4)。
図55】本発明に係る投入口の形態の例を示す図(その5)。
図56】本発明に係る投入口の形態の例を示す図(その6)。
図57】本発明に係る投入路の開口部高さを説明するための断面図。
図58】本発明の他の実施形態に係る溶解保持炉の構成を示す斜視図。
図59図58の正面の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0042】
[溶解保持炉の構成とインゴットの形状]
図1は、本発明の一実施形態に係る溶解保持炉の構成を示す斜視図、図2図1の正面の断面図、図3図1の平面図である。
【0043】
溶解保持炉1は、溶解保持炉本体10と、インゴット投入部20とを有する。
【0044】
溶解保持炉本体10は、インゴットを溶解し、溶解した金属を保持するもので、材料挿入室11、加熱保持室12及び汲上室13の3つの室から構成される。
【0045】
材料挿入室11の上面にはインゴット投入部20が配置され、加熱保持室12の上面には蓋部材14が配置されている。汲上室13の上面は開口している。
【0046】
材料挿入室11は、インゴット投入部20より投入されたアルミニウムからなるインゴット30(図4等参照、後述する。)を溶解する。
【0047】
加熱保持室12は、材料挿入室11と同室状に連通し、材料挿入室11で溶解したアルミニウムを加熱しつつ保持する。
【0048】
汲上室13は、加熱保持室12と流路15を介して連通している。汲上室13の開口した上面側より典型的にはラドル(図示せず)により汲上室13の溶解したアルミニウムが汲み上げられ、ダイカストマシーン(図示せず)に供給される。
【0049】
この溶解保持炉1は、溶解保持炉本体10の上部より溶解保持炉本体10内に保持された溶解したアルミニウムに向けて挿入され、溶解保持炉本体10内に保持された溶解したアルミニウムを加熱する棒状の例えば電熱ヒータ19を備える。これにより、ガス炉を不要とすることが可能となり、簡単で安全な設備とすることができる。
【0050】
図4図10はこの溶解保持炉1で用いられるインゴットの形状を示す図である。図4はインゴットの斜視図である。図5はインゴットの正面図、図6はインゴットの左側面図、図7はインゴットの右側面図、図8はインゴットの平面図、図9はインゴットの底面図、図10はインゴットの図8中のA-A断面図である。
【0051】
インゴット30は、アルミニウムからなり、例えば長さ650mm、幅90mm、高さ44mm程度の長尺状の形状をなし、重さは5kg程度である。
【0052】
インゴット30は、一端に開口目孔31を有する。開口目孔31は、インゴット30の一端付近でインゴット30の平面側と底面側とを貫通する例えば楕円形状の貫通孔31aと、インゴット30の一端の図中左側面と貫通孔31aとを貫通する開口溝31bとを有する。開口溝31bの溝幅をY、貫通孔31aの開口溝31bの溝幅方向に対する直径をXとしたとき、XとYとの関係はX>Yである。例えばXは40mmに対してYは25mmである。開口目孔31は、形状や寸法は例示にすぎず、XとYとの関係がX>Yであればよい。
【0053】
本実施形態に係るインゴット30は、開口目孔31を有する領域以外は凹凸のない平らな平面により構成される。このような形状のインゴット30は、特に、ハンドリング時の吸着部の自由度が高く、金型が簡素で安価で寿命も長くなり、また空間部が無いため梱包密度が高くなる、という効果が得られる。
【0054】
なお、本実施形態では、開口目孔31を有する領域以外に拘束溝を有するインゴットを図示して説明している。
【0055】
[インゴット投入部の構成]
図11は溶解保持炉1の図3中のA-A断面図である。
【0056】
インゴット投入部20は、材料挿入室11の上面を覆う蓋部材16に配置されている。
【0057】
インゴット投入部20は、第1の投入口21a及び第2の投入口21bと、それぞれの第1の投入口21a及び第2の投入口21bに対応する第1の投入路22a及び第2の投入路22bとを有する。
【0058】
以下のとおり、第1の投入口21aと第1の投入路22aとからなるインゴット投入部を第1のインゴット投入部20a、第2の投入口21bと第2の投入路22bとからなるインゴット投入部を第2のインゴット投入部20bとする。
【0059】
第1のインゴット投入部20aは、長尺状のインゴット30がその一端から投入される上記の第1の投入口21aと、第1の投入口21aから投入されたインゴット30を溶解保持炉本体10内である材料挿入室11に導き、かつ、導かれる当該インゴット30を予熱する上記の第1の投入路22aとを有する。
【0060】
第2のインゴット投入部20bは、長尺状のインゴット30がその一端から投入される上記の第2の投入口21bと、第2の投入口21bから投入されたインゴット30を溶解保持炉本体10内である材料挿入室11に導き、かつ、導かれる当該インゴット30を予熱する上記の第2の投入路22bとを有する。
【0061】
第1のインゴット投入部20a及び第2のインゴット投入部20bは、後述する投入システム側からみて左右対称になるように配置されている。
【0062】
第1の投入口21a及び第2の投入口21bは、典型的には、面取りされ、円錐台形状の空間が形成されている。面取りし、円錐台形状の空間とすることで、インゴット30をスムーズに第1のインゴット投入部20a及び第2のインゴット投入部20bに導くことができる。
【0063】
第1の投入路22a及び第2の投入路22bには、それぞれ、1本のインゴット30が投入されても良いし、複数のインゴット30が同時に投入されても良い。
【0064】
第1の投入路22a及び第2の投入路22bの形状は、例えば以下のとおり決定する。
【0065】
必要溶解能力(鋳込み重量と鋳造サイクル)に合わせ、第1の投入路22a及び第2の投入路22bに同時に挿入するインゴット30の本数を設定する。
【0066】
1鋳造サイクル中に、吊下げたインゴット30の全量が溶解する程度の挿入速度で、必要溶解能力以上が確保できる吊下げ本数とする。
挿入室溶湯上部で溶解するために、同時に挿入するインゴット30の本数を増やすことにより、挿入速度を遅くする。
ただし、鋳造サイクルが短いダイカストでは上記の2倍以上の吊下げ本数となることが望ましい。例えば、ダイカストエンジンブロックの場合には8~12本、低圧鋳造シリンダヘッドの場合には3~4本、)小物部品の場合には1~2本程度とする。
【0067】
梱包時のインゴット30の向きを選択する。梱包時のインゴット30の向きとは、例えば図49に示すように、インゴット30の表裏をすべて同じ方向に向けて重ねる同方向方式(a)と、2つのインゴット30を相互に裏面が接するように重ねた一対のインゴット30を、複数重ねる相向え方式(b)とがあるが、2本以上吊下げる場合は相向え方向が望ましい
第1の投入口21a及び第2の投入口21b(第1の投入路22a及び第2の投入路22bも同様)の形状と大きさを挿入本数と溶解保持炉の形状から円筒形や角柱形等から選択する。挿入形態をできるだけ、第1の投入口21a及び第2の投入口21bに近づける。挿入形態に応じた、第1の投入口21a及び第2の投入口21bの形態を図51~56に例示する。
【0068】
ここで、第1の投入路22a及び第2の投入路22bの投入路の開口部高さは、図57に示すように、典型的には、湯面上限から、インゴット長さ+吊下げ具先端~蓋部上端の長さとするのが望ましい。
インゴット30と第1の投入口21a及び第2の投入口21b(第1の投入路22a及び第2の投入路22bも同様)のクリアランスは、典型的には、擦れ防止として10mm以上確保する。
従って、上下方向の高さが上記のように規定される長尺状のインゴット30の長さよりも高く、水平方向の径はインゴット30の最大幅を超えるが、インゴット30との間隙が僅かとなる大きさであり、細長い。
第1の投入口21a及び第2の投入口21b(第1の投入路22a及び第2の投入路22bも同様)の径は、インゴット30が壁面に接触することなくスムーズに入ればよい。第1の投入路22a及び第2の投入路22bを細長くすることで、インゴット30を予熱する空間を確保するとともに、予熱するためのエネルギを小さくでき、さらに溶解保持炉本体10内である材料挿入室11から外側への熱の放出を少なくできる。
【0069】
第1の投入路22a及び第2の投入路22bには、それぞれ第1の投入路22a内及び第2の投入路22b内でインゴット30を予熱するため、第1の投入路22a内及び第2の投入路22b内に高温排ガスを導入するための高温排ガス入力ポート23a及び高温排ガス入力ポート23bと、その高温排ガスを排出するための高温排ガス排出ポート24a及び高温排ガス排出ポート24bが設けられている。高温排ガス入力ポート23a及び高温排ガス入力ポート23bは、それぞれ高温排ガス排出ポート24a及び高温排ガス排出ポート24bより低い位置に設けられている。高温排ガス入力ポート23a及び高温排ガス入力ポート23bと高温排ガス排出ポート24a及び高温排ガス排出ポート24bとの間隔は、インゴット30より長いことが好ましい。高温排ガス入力ポート23a及び高温排ガス入力ポート23bは、典型的には、ガス燃焼や電気ヒータによる熱風発生装置や炉内溶湯を加熱するガスバーナーから高温排ガスが供給される。高温排ガスの温度は、例えば500℃~700℃である。
【0070】
本実施形態では、このように構成されたインゴット投入部20によりインゴット30を予熱することができるので、予熱炉を不要とすることが可能である。また、インゴット投入部20で予熱したインゴット30をそのまま溶解保持炉本体10内である材料挿入室11に投入することができる。
【0071】
[投入装置を含む投入システムの構成]
図12は第1のインゴット投入部20a及び第2のインゴット投入部20bにインゴット30を投入するための投入システムの構成を示す図である。図13図12の投入システムの平面図である。
【0072】
投入システム40は、第1のインゴット投入部20aに対応する第1の投入装置41a及び第1のストレージ棒42aと、第2のインゴット投入部20bに対応する第2の投入装置41b及び第2のストレージ棒42bと、移送用棒43と、移送装置44と、制御装置45とを有する。
【0073】
第1の投入装置41aは、インゴット30の他端を保持し、第1のインゴット投入部20aを介して保持したインゴット30を溶解保持炉本体10内である材料挿入室11に投入する。例えば、第1の投入装置41aは、インゴット30の開口目孔31を使ってインゴット30を吊り下げるフック46aと、フック46aを昇降する昇降装置47aとを有し、フック46aによって吊り下げたインゴット30を、第1のインゴット投入部20aを介して当該インゴット30の一端より徐々に溶解保持炉本体10内である材料挿入室11に投入する。第1のストレージ棒42aは、複数のインゴット30を、開口目孔31を使って吊り下げて保持し、その一端よりインゴット30を順次第1の投入装置41aに受け渡す。第1のストレージ棒42aは、第1の投入装置41aに向けて下方に傾いている。これにより、インゴット30は重力により第1の投入装置41a側に移動する。第1のストレージ棒42aの第1の投入装置41a側の先端付近には、切り出し用ストッパー装置420aが配置されている。切り出し用ストッパー装置420aは、交互に上下するストッパー421a、422aを有する。ストッパー421a、422aの間隔は、インゴット30の厚さよりも大きく、2枚のインゴット30の厚さよりも小さい。ストッパー421aが上に位置するときには、第1のストレージ棒42aのストッパー421aより外側(図中左側)に隣接するインゴット30がストッパー421a、422a間に移動する。ストッパー422aが上に位置するときには、ストッパー421a、422a間のインゴット30がフック46aに受け渡される。
【0074】
第2の投入装置41bは、インゴット30の他端を保持し、第2のインゴット投入部20bを介して保持したインゴット30を溶解保持炉本体10内である材料挿入室11に投入するもので上記の第1の投入装置41aと同様である。例えば、第2の投入装置41bは、インゴット30の開口目孔31を使ってインゴット30を吊り下げるフック46bと、フック46bを昇降する昇降装置47bとを有し、フック46bによって吊り下げたインゴット30を、第2のインゴット投入部20bを介して当該インゴット30の一端より徐々に溶解保持炉本体10内である材料挿入室11に投入する。第2のストレージ棒42bは、複数のインゴット30を、開口目孔31を使って吊り下げて保持し、その一端よりインゴット30を順次第2の投入装置41bに受け渡す。第2のストレージ棒42bも同様に第2の投入装置41bに向けて下方に傾いている。これにより、インゴット30は重力により第2の投入装置41b側に移動する。第2のストレージ棒42bの第2の投入装置41b側の先端付近には、切り出し用ストッパー装置420bが配置されている。切り出し用ストッパー装置420bは、交互に上下するストッパー421b、422bを有する。ストッパー421b、422bの間隔は、インゴット30の厚さよりも大きく、2枚のインゴット30の厚さよりも小さい。ストッパー421bが上に位置するときには、第2のストレージ棒42bのストッパー421bより外側(図中左側)に隣接するインゴット30がストッパー421b、422b間に移動する。ストッパー422bが上に位置するときには、ストッパー421b、422b間のインゴット30がフック46bに受け渡される。
【0075】
移送用棒43は、後述するコンテナ50より、複数の、例えばコンテナ50一列分のインゴット30を、それぞれの開口目孔31を使って吊り下げて保持する。
【0076】
移送装置44は、例えば移送用棒43の両端を支持する2本のチェーン44aと、チェーン44aを吊った状態で支持する支持棒44bと、支持棒44bに取り付けられる昇降・横行装置(図示せず)とを有する。専用の昇降・横行装置により自動化が可能である。昇降・横行装置に代え、小型クレーン等を用いて手動で取り出す部分自動化も可能である。移送装置44は、コンテナ50に保持された複数のインゴット30を、移送用棒43によりそれぞれの開口目孔31を使ってまとめて保持させ、移送用棒43の一端を第1のストレージ棒42a及び第2のストレージ棒42bの他端に連接させて、かつ、第1のストレージ棒42a及び第2のストレージ棒42bと同様に傾斜させて、移送用棒43より第1のストレージ棒42a及び第2のストレージ棒42bに複数のインゴット30をまとめて受け渡す。移送装置44は、1本の移送用棒43により複数のインゴット30を第1のストレージ棒42aに受け渡し、その後複数のインゴット30を第2のストレージ棒42bに受け渡す。以下、この動作を繰り返す。2本の移送用棒を使って並列的に受け渡すように構成してもよい。
【0077】
制御装置45は以上の投入システム40の動作を制御する。
【0078】
図14はインゴット30の開口目孔31と上記の移送用棒43との関係を示す図であり、移送用棒43の直径(太さ)は、開口目孔31の貫通孔31aの径よりも小さく、かつ、開口溝31bの幅より大きい関係にある。第1及び第2のストレージ棒42a、42bの径もインゴット30の開口目孔31に対してこれと同様の関係を有する。なお、図14(a)に示すように、移送用棒43並に第1及び第2のストレージ棒42a、42bは、断面円形であるが、他の形状であってもよい。例えば、図14(b)に示すように、移送用棒43並に第1及び第2のストレージ棒42a、42bを、I字形状としてもよい。
【0079】
[コンテナの構成]
図15はコンテナ50を正面斜め方向から見た斜視図、図16はコンテナ50を背面斜めから見た斜視図、図17はコンテナ50の正面図である。この実施形態においては、コンテナ50の正面側よりコンテナ50にインゴット30が供給され、コンテナ50の背面が溶解保持炉1と対向しているものとする。
【0080】
コンテナ50は、複数のインゴット30を、それぞれの開口目孔31が上方で連通するように、立った状態で保持する。
【0081】
コンテナ50は、矩形の保持床板51と、保持床板51の四隅にそれぞれ立設された支柱52と、支柱52間を掛け渡す梁部材53とを有する。コンテナ50の正面側は、梁部材53が掛け渡されておらず、この面側よりコンテナ50内にインゴット30が供給される。各支柱52の下端には、それぞれ床面を支持する脚部54が設けられている。保持床板51は、支柱52及び脚部54により床面より所定の間隔を有するように支持されている。保持床板51の裏面には、フォークリフト(図示せず)のフォークが挿入される一対のチャネル部材55が取り付けられている。チャネル部材55はフォークリフトによりコンテナ50を搬送するときに用いられる。
【0082】
コンテナ50の保持床板51上には、複数のインゴット30が平面からみて縦横に立った状態で保持されている。平面からみて正面―背面方向を第1の方向とすると、保持床板51上において、複数のインゴット30によって第1の方向に対して開口目孔31が上方で連通する、複数のインゴット30の列を構成する。例えば、コンテナ50には、12本のインゴット30によって一列が構成され、その列が7列あり、合計84本のインゴット30が立った状態で保持される。
【0083】
コンテナ50により保持されたインゴット30は、これらの外周がバンド又は金具56により拘束されている。バンド又は金具56はこのコンテナ50よりインゴットを取り出すときに緩められる。バンド又は金具56は繰り返して使用される。金具56としては、例えばハンドルロックやトグルクランプ等で最終拘束する回転バーゲート式や差し込みゲート式、あるいはチェンブロック等の巻取り式を用いることができる。
【0084】
図18は投入システム40の移送用棒43がコンテナ50よりインゴット30を取り出す方法を説明するための側面図である。図19はその正面図である。図20はその際の移送用棒43とインゴット30の開口目孔31との関係示した正面図である。この状態では、バンド又は金具56による拘束は解かれている。
【0085】
移送用棒43は移送装置44により昇降及び横行移動がされる。移送用棒43はコンテナ50の正面よりインゴット30の開口目孔31に挿入され(図18A)、さらに横行してその列のすべてのインゴットの30の開口目孔31に挿入される(図18B)。その後、移送用棒43は上昇し、一列分のインゴット30をコンテナ50より取り出す(図18C図19)。
【0086】
一列分のインゴット30を保持した移送用棒43は移送装置44により昇降及び横行移動がされ、移送用棒43の一端は第1のストレージ棒42a又は第2のストレージ棒42bの他端に連接され、移送用棒43より第1のストレージ棒42a又は第2のストレージ棒42bに一列分のインゴット30がまとめて受け渡される(図12図13参照)。
【0087】
本実施形態に係るコンテナ50を用いることで、簡単な設備でスムーズにインゴット30を移送用棒43に受け渡すことができる。
【0088】
また、コンテナ50によりインゴット30立った状態で保持、すなわち縦積みすることによりインゴット30のお梱包の解体/取り出しの装置が簡略化され、設備コストの削減や省スペース化が可能となる。上記の例では、コンテナ50より一列分のインゴット30をまとめて取り出しているが、1本ずつ、或いは2本ずつ以上を取り出すようにしてもよい。
【0089】
[投入装置の制御系]
図21は第1の投入装置41a及び第2の投入装置41bの動作を制御する制御系の説明図である。
【0090】
第1の投入装置41a及び第2の投入装置41bの動作を制御する制御系60は、上記の制御装置45と、上記の昇降装置47a、47bと、湯面検出センサ61と、在荷検知センサ62a、62bとを有する。
【0091】
湯面検出センサ61は、溶解保持炉本体10内に保持された溶解したアルミニウムの湯面を検出する。湯面検出センサ61は、例えば溶解保持炉本体10の外側上部に配置されレーザ距離センサにより構成され、溶解保持炉本体10の上部の湯面計測用の開口部10aを介して湯面を検出する。
【0092】
在荷検知センサ62aは、所定の位置で第1の投入装置41aのフック46aによりインゴット30が吊り下げられているか否かを検出する。在荷検知センサ62bは、第2の投入装置41bのフック46bによりインゴット30が吊り下げられているか否かを検出する。
【0093】
湯面検出センサ61と、在荷検知センサ62a、62bによる検出結果は制御装置45に入力される。
【0094】
図22のフローチャートに第1の投入装置41aの動作を示す。第2の投入装置41bの動作も同様であるので、説明を省略する。
【0095】
制御装置45は、在荷検知センサ62aがフック46aによりインゴット30が吊り下げられていることを検出すると(ステップ2201)、湯面検出センサ61による湯面の計測結果に基づき、湯面の高さから予熱下降位置である、インゴット30の下端が湯面となる位置を算出する(ステップ2202)。
【0096】
制御装置45は、インゴット30の下端が湯面となる位置まで、インゴット30を高速で下降させて停止させるように、昇降装置47aを制御する(ステップ2203)。
【0097】
制御装置45は、第2の投入装置41bによるインゴット30の湯面内への投入の終了を待ち、つまり第2の投入装置41bによるインゴット30の溶解が完了し(ステップ2204)、かつ、湯面検出センサ61による検出結果により湯面が満杯でなくなると(ステップ2205)、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解を開始する(ステップ2206)。
【0098】
ステップ2206において、制御装置45は、インゴット30の下端が湯面となる位置から、インゴット30を低速で下降させてインゴット30が徐々に溶解するように、昇降装置47aを制御する。下降速度は、ステップ2203での速度よりも低速であり、かつ、典型的には溶解能力に合致する一定の速度である。
【0099】
制御装置45は、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解が完了するまで、つまり昇降装置47aによる下降されたフック46aの位置が湯面の位置となるまで(ステップ2207)、湯面検出センサ61による検出結果に応じて湯面の満杯状態が維持するように第1の投入装置41aによるインゴットの下降・下降の停止を行うように、昇降装置47aを制御する(ステップ2208~2210、2206)。
【0100】
制御装置45は、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解が完了すると、第1の投入装置41aによるインゴットの下降が停止するように、昇降装置47aを制御し(ステップ2211)、さらにフック46aが高速で上昇し、上昇端で停止するように、昇降装置47aを制御する(ステップ2212)。
【0101】
本実施形態に係る制御系60では、溶解保持炉本体10内に投入されるインゴット30の一端が溶解保持炉本体10内の湯面に達するまでインゴット30が第1の速度である高速で下降し、溶解保持炉本体10内に投入されるインゴット30の一端が湯面に達した後はインゴット30が第1の速度より遅い第2の速度である低速で下降するように、昇降装置47a、47bを制御しているので、生産性を向上させつつ、溶解保持炉本体10内で保持する溶融したアルミニウムの温度変動を極力抑えることができる。
【0102】
制御装置45のもとで、ヒータ19の加熱力及びインゴット投入部20a、20bを介して材料挿入室11内に投入されるインゴット30の投入速度を、材料挿入室11内に保持された熔解した金属が所定の温度なるように制御してもよい。これにより、加熱保持室12及び汲上室13に流れ込む溶湯の温度を過昇温させずに溶解能力を最大化することができる。なお、高温排ガス入力ポート23a及び高温排ガス入力ポート23bを使ってインゴット30を予熱する際の高温排ガスの温度や流量も併せて同様に制御するようにしてもよい。
【0103】
本実施形態に係る制御系60では、少なくとも2つの投入装置である、第1の投入装置41a及び第2の投入装置41bによって、一方のインゴット投入部に投入されたインゴット30が溶解保持炉本体10内で溶解されているときは、他方のインゴット投入部に投入されたインゴット30は溶解保持炉本体10内で溶解されずに予熱するように制御しているので、生産性を落とさずにインゴット30の予熱を十分に行うことができる。
【0104】
[コンテナへの積み込み方法]
図23は上記のコンテナ50にインゴット30を積み込む方法を説明するための図である。
【0105】
インゴット成形装置(図示せず)により成形されたインゴット30は、順次、ベルトコンベア71により積み込み領域に搬送されてくる。積み込み領域では、ベルトコンベア71により搬送されるインゴット30がロボット72によりコンテナ50に積み込まれる。
【0106】
ロボット72は、吸着ハンド72aを有し、吸着ハンド72aによりベルトコンベア71上の複数のインゴット30をまとめて吸着してコンテナ50に搬送する。上記の実施形態では、コンテナ50には、12本のインゴット30によって一列が構成され、その列が7列あり、合計84本のインゴット30が立った状態で保持されるものであった。ロボット72は、7列分(開口目孔31が連通しない列)のインゴット30をまとめて吸着してコンテナ50に搬送する。これが段積む1段分となる。
【0107】
コンテナ50は、ロボット72によりインゴット30が積み込まれるときには、コンテナ50の側面開放部(梁部材53が掛け渡されていない面側)が上向きになり、かつ、ロボット72側を向くように、傾動している。傾動は例えばフォークリフト(図示せず)によりコンテナ50を保持して状態で行えばよく、或いは専用の収容部(図示せず)に収容して行えばよい。
【0108】
ロボット72は、傾動したコンテナ50に対して、吸着ハンド72aによりベルトコンベア71上の1段分のインゴット30をまとめて吸着してコンテナ50に積み置く。以下、ロボット72は、12段分のインゴット30を順次積み置く。
【0109】
最終段のインゴット30を積み込んだ後、作業者はこれらの外周をバンド又は金具56により拘束し、傾動するコンテナ50を水平に戻す。
【0110】
以上の積み込み方法により、縦積み型のコンテナ50にインゴット30を安全に効率よく積み込むことができる。
【0111】
[インゴットの他の例]
図24図30はインゴットの他の例を示す図である。図24はインゴットの斜視図である。図25はインゴットの正面図、図26はインゴットの左側面図、図27はインゴットの右側面図、図28はインゴットの平面図、図29はインゴットの底面図、図30はインゴットの図28中のA-A断面図である。
【0112】
上記の本実施形態に係るインゴット30は、開口目孔31を有する領域以外は凹凸のない平らな平面により構成されていた。これに対して、図24~30に示すインゴット30'は、その表面に、短尺方向に1本の溝32bが形成されている。溝32bは、搬送時等に複数のインゴット30'を積み上げたときの固定用のバンド又は金具56を係止するために用いられる。
【0113】
図31図37はインゴットのさらに他の例を示す図である。図31はインゴットの斜視図である。図32はインゴットの正面図、図33はインゴットの左側面図、図34はインゴットの右側面図、図35はインゴットの平面図、図36はインゴットの底面図、図37はインゴットの図35中のA-A断面図である。
【0114】
図31~37に示すインゴット30''は、その表面に、長尺方向に溝32aが形成され、さらに溝32aと交差する2本の溝32bが形成されている。インゴット30''の他端の図中右側面には、溝32aと連通する溝32cが形成されている。これらの溝32a、溝32b及び溝32cは、搬送時等に複数のインゴット30''を積み上げたときの固定用のバンド又は金具56を係止するために用いられる。
【0115】
図38図44はインゴットの他の例を示す図である。図38はインゴットの斜視図である。図39はインゴットの正面図、図40はインゴットの左側面図、図41はインゴットの右側面図、図42はインゴットの平面図、図43はインゴットの底面図、図44はインゴットの図42中のA-A断面図である。
【0116】
図38~44に示すインゴット30'''は、その表面に、長尺方向に溝32aが形成され、さらに溝32aと交差する3本の溝32bが形成されている。インゴット30'''の他端の図中右側面には、溝32aと連通する溝32cが形成されている。上記と同様に、これらの溝32a、溝32b及び溝32cは、搬送時等に複数のインゴット30'''を積み上げたときの固定用のバンド又は金具56を係止するために用いられる。
【0117】
[インゴット投入部の他の例]
上記の実施形態では、図11に示したように、第1の投入路22a及び第2の投入路22bには、それぞれ第1の投入路22a内及び第2の投入路22b内でインゴット30を予熱するため、第1の投入路22a内及び第2の投入路22b内に高温排ガスを導入するための高温排ガス入力ポート23a及び高温排ガス入力ポート23bと、その高温排ガスを排出するための高温排ガス排出ポート24a及び高温排ガス排出ポート24bが設けられていた。これは、電熱ヒータ19により溶解保持炉本体10内のアルミニウムを加熱しているからである。
【0118】
しかしながら、溶解保持炉1がガス炉のときには、溶解保持炉1内の高温の排ガスを第1の投入路22a及び第2の投入路22bに供給し、インゴット30を予熱してもよい。これにより、高温排ガス入力ポート23a、23b及び高温排ガス排出ポート24a、24bを使って外部より高温排ガスを供給することを不要とすることができる。よって、これらのポート等の設備は不要とすることができる。
【0119】
[投入システムの他の例]
図45は本発明の他の実施形態に係る投入システムの構成を示す正面図である。
【0120】
上記の実施形態に係る投入システム40は、図12及び図13に示したように、インゴット30を移送用棒43から第1及び第2のストレージ棒42a、42bに受け渡し、さらにそのインゴット30を第1及び第2のストレージ棒42a、42bから第1及び第2の投入装置41a、41b側に受け渡す構成であった。
【0121】
他の実施形態に係る投入システム40'は、図45に示すように、第1及び第2のストレージ棒42a、42bを用いずに、移送用棒43にストレージ棒のストレージ機能を持たせ、インゴット30を移送用棒43から直接第1及び第2の投入装置41a、41b側に受け渡すように構成してもよい。この場合には、第1及び第2の投入装置41a、41bがそれぞれ交互に移送用棒43にアクセスして1本ずつインゴット30を受け取るように構成すればよい。
【0122】
[移送用棒の他の例]
図46は本発明の他の実施形態に係る移送用棒の説明図である。
【0123】
上記の実施形態では、移送用棒43は断面円形であり、その直径(太さ)は、開口目孔31の貫通孔31aの径よりも小さく、かつ、開口溝31bの幅より大きい関係にあった。これに対して、図46に示すように、移送用棒43'を断面楕円形とし、その長辺を、開口目孔31の貫通孔31aの径よりも小さく、かつ、開口溝31bの幅より大きく、その短辺を、開口溝31bの幅より小さい関係としてもよい。例えばインゴット30をコンテナ50より吊り下げて取り出すときに、まず図46(A)に示すように開口目孔31の開口溝31bを介して上部よりその短辺を介して移送用棒43'を挿入し、その後図46(B)及び図46(C)に示すように移送用棒43'を90°回転させ、その後図46(D)に示すように移送用棒43'の長辺でインゴット30を保持しつつインゴット30を移送用棒43'によりコンテナ50から吊り上げればよい。この場合、移送装置側に移送用棒43'を回転させる機構が必要となるが、インゴット30の側面側より移送用棒43'を挿入することなく、上部から移送用棒43'を挿入できるので、さらなる省スペース化が可能となる。なお、図46に示した吊り下げ方法では、1本のインゴット30を吊り下げてもよく、また2本以上、或いは一列のインゴット30をまとめて吊り下げるようにしてもよい。
【0124】
図50は本発明の更に別の他の実施形態に係る移送用棒の説明図である。
【0125】
図50に示すように、移送用棒43''は、例えば断面I型形状であって、下端部がインゴット30の開口目孔31の貫通孔31aの径よりも幅狭で上端部が開口目孔31の貫通孔31aの径よりも幅広の移送用棒本体43''aと、下端部に取り付けられた保持機構43''bとを有する。保持機構43''bは、左右一対の係止部材44''a及び44''bと、係止部材44''a及び44''bを回転可能にその基部を保持する保持部材45''とを具備する。係止部材44''a及び44''bは、送用棒本体43''aの下端部により水平状態よりした方向に傾くことが規制される。移送用棒43''がインゴット30の開口目孔31の貫通孔31aの上部より挿入されるとき、係止部材44''a及び44''bは開口目孔31の貫通孔31aの上部両端部に当たり水平状態より上方に畳まれた状態となり、移送用棒43''がインゴット30の開口目孔31内に案内される(図50(A))。移送用棒43''がインゴット30の開口目孔31内に案内されると(図50(B))、係止部材44''a及び44''bが自重で水平状態に復帰する(図50(C))。なお、自重だけでなく係止部材44''a及び44''bを上方に回転するように付勢する例えばバネ部材などの付勢部材を用いて復帰させるように構成してもよい。その後図50(D)に示すように移送用棒43''の係止部材44''a及び44''bでインゴット30を保持しつつインゴット30を移送用棒43''によりコンテナ50から吊り上げればよい。これにより、コンテナ50からインゴット30を取り出す作業の自動化が容易となる。また、上部から移送用棒43''を挿入できるので、さらなる省スペース化が可能となる。なお、図58に示した吊り下げ方法でも、1本のインゴット30を吊り下げてもよく、また2本以上、或いは一列のインゴット30をまとめて吊り下げるようにしてもよい。
【0126】
[投入装置の制御系の他の例]
図47は投入装置の動作を制御する制御系の他の例の説明図である。
【0127】
制御系80は、上記の制御装置45と、上記の昇降装置47a、47bと、上記の在荷検知センサ62a、62bと、満杯検出センサ81と、湯面接触センサ82a、82bとを有する。
【0128】
満杯検出センサ81は、溶解保持炉本体10内の湯面が満杯の位置になったことを検出するものであり、センサ本体81aと、電圧検出部81bとを有する。センサ本体81aは、導電体の棒であり、先端が溶解保持炉本体10内に保持された溶解したアルミニウムの満杯時の湯面の位置になるように配置されている。電圧検出部81bは、センサ本体81aとグランドとの間に配置され、センサ本体81aの先端が湯面に接触するとセンサ本体81aがグランド電圧になるように構成され、それにより溶解保持炉本体10内に保持されたアルミニウムが満杯位置になったことを検出する。
【0129】
湯面接触センサ82aは、第1の投入装置41aのフック46aにより吊り下げられたインゴット30の先端が溶解保持炉本体10内に保持されたアルミニウムの湯面に接触したことを検出するセンサであり、センサ本体83aと、電圧検出部83bとを有する。センサ本体83aは、フック46aを介して吊り下げられたインゴット30に通電する通電路である。電圧検出部83bは、センサ本体83aとグランドとの間に配置され、センサ本体83aの先端が湯面に接触するとセンサ本体81aがグランド電圧になるように構成され、それによりフック46aにより吊り下げられたインゴット30の先端が溶解保持炉本体10内に保持されたアルミニウムの湯面に接触したことを検出する。湯面接触センサ82bは、第2の投入装置41bのフック46bによりインゴット30が吊り下げられたインゴット30の先端が溶解保持炉本体10内に保持されたアルミニウムの湯面に接触したことを検出するセンサであり、湯面接触センサ82aと同様の構成である。
【0130】
満杯検出センサ81及び湯面接触センサ82a、82bによる検出結果は制御装置45に入力される。
【0131】
図48のフローチャートに第1の投入装置41aの動作を示す。第2の投入装置41bの動作も同様であるので、説明を省略する。
【0132】
制御装置45は、在荷検知センサ62aがフック46aによりインゴット30が吊り下げられていることを検出すると(ステップ4801)、インゴット30を高速で下降させるように、昇降装置47aを制御する(ステップ4802)。
【0133】
制御装置45は、湯面接触センサ82aによりインゴット30の先端が湯面に接触したことを検出すると(ステップ4803)、第2の投入装置41bによるインゴット30の湯面内への投入の終了を待ち、つまり第2の投入装置41bによるインゴット30の溶解が完了したかどうかを判断する(ステップ4804)。
【0134】
制御装置45は、ステップ4804において、第2の投入装置41bによるインゴット30の溶解が完了していないと判断する場合には第1の投入装置41aによるインゴット30の下降を停止させるように、昇降装置47aを制御し(ステップ4805)、第2の投入装置41bによるインゴット30の溶解が完了し(ステップ4806)、かつ、満杯検出センサ81による検出結果により湯面が満杯でなくなると(ステップ4807)、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解を開始する(ステップ4808)。
【0135】
制御装置45は、ステップ4804において、第2の投入装置41bによるインゴット30の溶解が完了していると判断する場合には満杯検出センサ81による検出結果により湯面が満杯の位置になったかどうかを判断する(ステップ4809)。
【0136】
制御装置45は、ステップ4809において、湯面が満杯の位置になっていないと判断した場合には、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解を開始する(ステップ4808)。
【0137】
制御装置45は、ステップ4809において、湯面が満杯の位置になったと判断した場合には、第1の投入装置41aによるインゴット30の下降を停止させるように、昇降装置47aを制御し(ステップ4810)、満杯検出センサ81による検出結果により湯面が満杯でなくなると(ステップ4811)、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解を開始する(ステップ4808)。
【0138】
ステップ4808において、制御装置45は、インゴット30の下端が湯面となる位置から、インゴット30を低速で下降させてインゴット30が徐々に溶解するように、昇降装置47aを制御する。下降速度は、ステップ4802での速度よりも低速であり、かつ、典型的には溶解能力に合致する一定の速度である。
【0139】
制御装置45は、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解が完了するまで、つまり湯面接触センサ82aによる検出結果に基づき昇降装置47aによる下降されたフック46aの位置が湯面の位置の直前となるまで(ステップ4812)、満杯検出センサ81による検出結果に応じて湯面の満杯状態が維持するように第1の投入装置41aによるインゴットの下降・下降の停止を行うように、昇降装置47aを制御する(ステップ4813~4815)。
【0140】
制御装置45は、第1の投入装置41aによるインゴット30の溶解が完了すると、フック46aが高速で上昇し、上昇端で停止するように、昇降装置47aを制御する(ステップ4816)。
【0141】
本実施形態に係る制御系80においても、上記実施形態と同様に、溶解保持炉本体10内に投入されるインゴット30の一端が溶解保持炉本体10内の湯面に達するまでインゴット30が第1の速度である高速で下降し、溶解保持炉本体10内に投入されるインゴット30の一端が湯面に達した後はインゴット30が第1の速度より遅い第2の速度である低速で下降するように、昇降装置47a、47bを制御しているので、生産性を向上させつつ、溶解保持炉本体10内で保持する溶融したアルミニウムの温度変動を極力抑えることができる。
【0142】
本実施形態に係る制御系80においては、上記実施形態と同様に、少なくとも2つの投入装置である、第1の投入装置41a及び第2の投入装置41bによって、一方のインゴット投入部に投入されたインゴット30が溶解保持炉本体10内で溶解されているときは、他方のインゴット投入部に投入されたインゴット30は溶解保持炉本体10内で溶解されずに予熱するように制御しているので、生産性を落とさずにインゴット30の予熱を十分に行うことができる。
【0143】
加えて、本実施形態に係る制御系80では、上記構成の満杯検出センサ81を採用することで溶解保持炉本体10に検出用の開口を設けることは不要となり、溶解保持炉本体10内から熱が外部に放出しづらくなり、エネルギ効率を向上させることができる。さらに満杯検出センサ81及び湯面接触センサ82aは、通電の有無の検出により満杯等を検出する構成なので、確実な検出が可能であり、メンテナンスの手間を減らすことができる。
【0144】
[その他]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で変形や応用をしての実施が可能であり、それらの実施の範囲も本発明の技術的範囲に属する。
【0145】
例えば、上記の実施形態における図1~3に示した溶解保持炉1では、棒状の電熱ヒータ19により溶解保持炉本体10内に保持された溶解したアルミニウムを加熱していたが、大型部品を鋳造する生産能力の高いダイカストマシーン等では電気だけで十分な溶解能力を確保することは困難な場合もある。その場合には、図58及び図59に示すように、
溶解保持炉本体10を構成する材料挿入室11、加熱保持室12及び汲上室13のうち、例えば加熱保持室12にガス燃焼式にヒータ19'を取り付けて、ガス加熱を行うように構成してもよい。図58及び図59に示した溶解保持炉1において、図1~3に示した溶解保持炉1と同一の要素には同一の符号を付している。
【0146】
また、上記の実施形態においては、本発明に係る溶解保持炉に投入システム40を採用したシステムを示していたが、本発明に係る溶解保持炉はこのような投入システム以外の構成を採用してもよい。
【0147】
また、上記の実施形態においては、本発明に係る投入システムに溶解保持炉1を採用したシステムを示していたが、本発明に係る投入システムはこのような溶解保持炉1以外の構成を採用してもよい。
【0148】
さらに、本発明に係るコンテナは本実施形態で示した投入システム40や溶解保持炉1以外にも採用することが可能である。
【0149】
インゴットの形状も上記実施形態で示したものは一例にすぎず、他の形状であっても勿論かまわない。例えば、上記のインゴット30は開口目孔31を有するものであったが、開口目孔31のないインゴットであってもかまわない。その場合に、フック46によりインゴット30を吊り下げる代わりに、例えばインゴットを把持する別の機構を採用すればよい。
【符号の説明】
【0150】
1 :溶解保持炉
10 :溶解保持炉本体
10a :開口部
11 :材料挿入室
12 :加熱保持室
13 :汲上室
14 :蓋部材
15 :流路
16 :蓋部材
19 :電熱ヒータ
20 :インゴット投入部
20a :第1のインゴット投入部
20b :第2のインゴット投入部
21a :第1の投入口
21b :第2の投入口
22a :第1の投入路
22b :第2の投入路
23a :高温排ガス入力ポート
23b :高温排ガス入力ポート
24a :高温排ガス排出ポート
24b :高温排ガス排出ポート
30 :インゴット
30' :インゴット
30'' :インゴット
30''' :インゴット
31 :開口目孔
31a :貫通孔
31b :開口溝
40 :投入システム
40' :投入システム
41a :第1の投入装置
41b :第2の投入装置
42a :第1のストレージ棒
42b :第2のストレージ棒
43 :移送用棒
43' :移動用棒
43' :移送用棒
44 :移送装置
44a :チェーン
44b :支持棒
45 :制御装置
46 :フック
46a :フック
46b :フック
47a :昇降装置
47b :昇降装置
50 :コンテナ
51 :保持床板
52 :支柱
53 :梁部材
54 :脚部
55 :チャネル部材
56 :金具
60 :制御系
61 :湯面検出センサ
62a :在荷検知センサ
62b :在荷検知センサ
71 :ベルトコンベア
72 :ロボット
72a :吸着ハンド
80 :制御系
81 :満杯検出センサ
81 :杯検出センサ
81a :センサ本体
81b :電圧検出部
82a :湯面接触センサ
82b :湯面接触センサ
83a :センサ本体
83b :電圧検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図30
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図35
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図44
図45
図46
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図49
図50
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図52
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図55
図56
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