(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】円柱状ワークの穴あけ装置、円柱状ワークの穴あけ方法、円柱状製品の製造方法、及び円柱状ワークの検査方法
(51)【国際特許分類】
B23B 41/00 20060101AFI20240805BHJP
B23B 49/00 20060101ALI20240805BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B23B41/00 Z
B23B49/00 A
B23Q3/06 304G
(21)【出願番号】P 2020043543
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2021-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019069410
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福井 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英彬
【合議体】
【審判長】渋谷 善弘
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-131308(JP,A)
【文献】特開2001-212730(JP,A)
【文献】米国特許第2625861(US,A)
【文献】国際公開第2008/018536(WO,A1)
【文献】特開2006-239810(JP,A)
【文献】実開平5-72340(JP,U)
【文献】特開昭59-1108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0178343(US,A1)
【文献】特開2013-132692(JP,A)
【文献】特開2002-118342(JP,A)
【文献】特表2015-510455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00 - 49/06
B25B 1/00 - 11/02
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な基準面、及びそれよりも下方に窪んだ溝部であって、一端から他端まで水平な一方向に延びる溝部を有する受け台と、
溝部の一端に設けられたストッパーと、
溝部の鉛直上方に配置されて少なくとも鉛直方向に移動可能であり、鉛直方向に延びたドリルビットを有するドリルと、
ドリルビットの回転軸に対して対称に、溝部の延びる方向に対して垂直な水平方向に互いに近づくように移動可能な一対の対向する把持部を有し、更に各把持部が上下に拡開する上下対称な一対の傾斜面を有するチャックと、
を備えた円柱状ワークの穴あけ装置。
【請求項2】
ストッパーは、溝部の延びる方向に垂直な壁面を有する請求項1に記載の穴あけ装置。
【請求項3】
ドリルは、溝部の延びる方向に移動可能である請求項1又は2に記載の穴あけ装置。
【請求項4】
ドリルがワークに接触した時点をドリルビットへの主軸負荷の変化により検知可能な検知器と、ドリルのワークへの接触をトリガーとしてドリルに対して所定の深さの穴あけ加工を指示することができる制御装置とを備える請求項1~3の何れか一項に記載の穴あけ装置。
【請求項5】
溝部の輪郭形状は、溝部の延びる方向から観察すると、V字状、U字状、円弧状、又はこれらの何れかの形状の一部である請求項1~4の何れか一項に記載の穴あけ装置。
【請求項6】
各把持部の一対の傾斜面は、溝部の長手方向から観察すると、V字状である請求項1~5の何れか一項に記載の穴あけ装置。
【請求項7】
受け台は溝部を挟んで二つの部分に分割されており、受け台の各部分は前記一対の把持部の各把持部に固定されている請求項1~6の何れか一項に記載の穴あけ装置。
【請求項8】
円柱状ワークの側面に穴を形成するための穴あけ方法であって、
請求項1~7の何れか一項に記載の穴あけ装置を用意する工程と、
ワークの中心軸方向と溝部の延びる方向とが一致するように、且つ、ワークの中心軸方向の一端がストッパーに当接するように、ワークを前記溝部に嵌める第一の位置決め工程と、
チャックの一対の把持部が、ドリルビットの回転軸に対して対称に、溝部の延びる方向に垂直な水平方向に互いに近づくように移動することにより、前記ワークを鉛直方向に持ち上げながら、対向側面を挟持する第二の位置決め工程と、
ドリルを鉛直下方に移動させて、ドリルによってワークの側面に穴あけする工程と、
を含む穴あけ方法。
【請求項9】
ドリルは、溝部の長手方向に移動可能であり、
前記穴あけする工程において、ドリルは、溝部の長手方向に所定距離だけ移動した後に、鉛直下方に移動する請求項8に記載の穴あけ方法。
【請求項10】
前記穴あけ装置は、ドリルがワークに接触した時点をドリルビットへの主軸負荷により検知可能な検知器と、ドリルのワークへの接触をトリガーとしてドリルに対して所定の深さの穴あけ加工を指示することができる制御装置とを備えており、前記穴あけする工程において、ドリルは、ワークに接触した時点の高さ位置を基準として、制御装置からの指示によって、所定の深さの穴あけ加工を行う請求項8又は9に記載の穴あけ方法。
【請求項11】
請求項8~10の何れか一項に記載の穴あけ方法を実施することを含む円柱状製品の製造方法。
【請求項12】
前記ワークの側面部に開いた穴にセンサーを挿入することを含む請求項11に記載の円柱状製品の製造方法。
【請求項13】
請求項8~10の何れか一項に記載の穴あけ方法を実施した後に、テレセントリックレンズを有するカメラを用いて、前記ワークの側面部に開いた穴を撮像することを含む円柱状ワークの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円柱状ワークの穴あけ装置、円柱状ワークの穴あけ方法、円柱状製品の製造方法、及び円柱状ワークの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンに代表される内燃機関の排気系には、排ガス浄化用触媒や排ガス浄化用フィルターが設置されている。排ガス浄化用触媒を担持する担体や排ガス浄化用フィルターの中には、センサーを差し込む穴を有する穴あきハニカム構造体がある。例えば、触媒を担持した円柱状のハニカム構造体にセンサーを差し込むことで、浄化性能をモニタリングすることが行われている。
【0003】
特開2009-172518号公報においては、ハニカム構造体の一部にセンサー等を挿入可能な、ハニカム構造体の外壁の表面から、外壁及び隔壁の一部を貫通する穴部が形成された穴あきハニカム構造体を製造する方法において、穴部を研削する際のチッピングの発生を有効に防止するとともに、簡便且つ安価に穴あきハニカム構造体を製造することが可能な製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハニカム構造体等の円柱状ワークに穴あけする場合、穴の深さと位置について、所定の公差が設定される。所定の公差を満たす穴あけ加工は、マシニングセンタのプローブで事前にワークの寸法測定を実施することで達成可能である。例えば、穴位置の公差を満たすため、マシニングセンタのプローブでワーク直径方向の両側端の位置を測定して、演算により、穴あけ位置を決定する方法が挙げられる。同様に、穴深さの公差も、マシニングセンタのプローブでワークの高さ位置を測定して、加工開始点を決定することで達成可能である。
【0006】
マシニングセンタを用いた穴あけ加工は自動で行うことができ、正確である。しかしながら、プローブ測定ができるマシニングセンタは、設備導入コストが高い。また、プローブ測定のために、複数の測定点への移動及び測定を繰り返すことから、長時間を要するという問題もある。更には、穴あけ加工を自動で行うためのNCプログラムを作成するために専門知識も必要である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一側面において、マシニングセンタのプローブによりワークの寸法測定を実施することなく、穴の深さと位置について高い精度で穴あけ加工可能な円柱状ワークの穴あけ装置を提供することを課題とする。また、本発明は別の一側面において、当該穴あけ装置を用いた、円柱状のワークの側面に穴を形成するための穴あけ方法を提供することを課題とする。また、本発明は更に別の一側面において、当該穴あけ方法を実施することを含む円柱状製品の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は更に別の一側面において、当該穴あけ方法を実施した円柱状ワークの検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に例示される発明を完成した。
【0009】
[1]
一端から他端まで水平な一方向に延びる溝部を有する受け台と、
溝部の一端に設けられたストッパーと、
溝部の鉛直上方に配置されて少なくとも鉛直方向に移動可能であり、鉛直方向に延びたドリルビットを有するドリルと、
ドリルビットの回転軸に対して対称に、溝部の延びる方向に対して垂直な水平方向に互いに近づくように移動可能な一対の対向する把持部を有し、更に各把持部が上下に拡開する上下対称な一対の傾斜面を有するチャックと、
を備えた円柱状ワークの穴あけ装置。
[2]
ストッパーは、溝部の延びる方向に垂直な壁面を有する[1]に記載の穴あけ装置。
[3]
ドリルは、溝部の延びる方向に移動可能である[1]又は[2]に記載の穴あけ装置。
[4]
ドリルが前記ワークに接触した時点をドリルビットへの主軸負荷の変化により検知可能な検知器と、ドリルのワークへの接触をトリガーとしてドリルに対して所定の深さの穴あけ加工を指示することができる制御装置とを備える[1]~[3]の何れか一項に記載の穴あけ装置。
[5]
溝部の輪郭形状は、溝部の延びる方向から観察すると、V字状、U字状、円弧状、又はこれらの何れかの形状の一部である[1]~[4]の何れか一項に記載の穴あけ装置。
[6]
各把持部の一対の傾斜面は、溝部の長手方向から観察すると、V字状である[1]~[5]の何れか一項に記載の穴あけ装置。
[7]
受け台は溝部を挟んで二つの部分に分割されており、受け台の各部分は前記一対の把持部の各把持部に固定されている[1]~[6]の何れか一項に記載の穴あけ装置。
[8]
円柱状のワークの側面に穴を形成するための穴あけ方法であって、
[1]~[7]の何れか一項に記載の穴あけ装置を用意する工程と、
ワークの中心軸方向と溝部の延びる方向とが一致するように、且つ、ワークの中心軸方向の一端がストッパーに当接するように、ワークを前記溝部に嵌める第一の位置決め工程と、
チャックの一対の把持部が、ドリルビットの回転軸に対して対称に、溝部の延びる方向に垂直な水平方向に互いに近づくように移動することにより、前記ワークを鉛直方向に持ち上げながら、対向側面を挟持する第二の位置決め工程と、
ドリルを鉛直下方に移動させて、ドリルによってワークの側面に穴あけする工程と、
を含む穴あけ方法。
[9]
ドリルは、溝部の長手方向に移動可能であり、
前記穴あけする工程において、ドリルは、溝部の長手方向に所定距離だけ移動した後に、鉛直下方に移動する[8]に記載の穴あけ方法。
[10]
前記穴あけ装置は、ドリルがワークに接触した時点をドリルビットへの主軸負荷により検知可能な検知器と、ドリルのワークへの接触をトリガーとしてドリルに対して所定の深さの穴あけ加工を指示することができる制御装置とを備えており、前記穴あけする工程において、ドリルは、ワークに接触した時点の高さ位置を基準として、制御装置からの指示によって、所定の深さの穴あけ加工を行う[8]又は[9]に記載の穴あけ方法。
[11]
[8]~[10]の何れか一項に記載の穴あけ方法を実施することを含む円柱状製品の製造方法。
[12]
前記ワークの側面部に開いた穴にセンサーを挿入することを含む[11]に記載の円柱状製品の製造方法。
[13]
[8]~[10]の何れか一項に記載の穴あけ方法を実施した後に、テレセントリックレンズを有するカメラを用いて、前記ワークの側面部に開いた穴を撮像することを含む円柱状ワークの検査方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る円柱状ワークの穴あけ装置の一実施形態によれば、マシニングセンタのプローブによりワークの寸法測定を実施することなく、穴の深さと位置について高い精度で円柱状ワークに対する穴あけ加工が可能となる。また、本発明に係る円柱状ワークの穴あけ装置の一実施形態によれば、円柱状ワークに対する穴あけ加工を短時間に行うことができるようになる。従って、本発明に係る円柱状ワークの穴あけ装置は、例えば、穴あきハニカム構造体のような穴あき円柱状製品の製造に好適に使用可能である。
【0011】
本発明に係る円柱状ワークの検査方法の一実施形態によれば、円柱状ワークの側面にあけた穴位置の測定を短時間で正確に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】円柱状ワークの穴あけ装置の一実施形態に係る模式的な正面図(a)(ドリル図示)及び平面図(b)(ドリル不図示)である。
【
図2】円柱状ワークを溝部に載置して、ストッパーに押し当てたときの穴あけ装置の模式的な正面図(a)(ドリル図示)及び平面図(b)(ドリル不図示)である。
【
図3】穴あけ装置に載置した円柱状ワークの側面に穴あけする手順を示す模式図である。
【
図4】穴あけを実施した後の円柱状ワークの一例に係る模式的な斜視図である。
【
図5】テレセントリックレンズを有するカメラを用いて、円柱状ワークの側面部に開いた穴を検査する方法を説明するための概略図である。
【
図6】テレセントリックレンズを有するカメラを用いて、円柱状ワークの穴の位置基準を明確化する方法を説明するための概略図である。
【
図7】バイスで円柱状ワークを挟む方法を説明するための概略平面図である。
【
図8】三次元座標測定機を用いた穴位置の検査方法を説明するための概略正面図である。
【
図9】チャックの動作原理の一例を説明するための模式的な断面図である(チャックが開いた状態)。
【
図10】チャックの動作原理の一例を説明するための模式的な断面図である(チャックが閉じた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0014】
<1.穴あけ装置>
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る円柱状ワークの穴あけ装置(100)は、
一端から他端まで水平な一方向に延びる溝部(112)を有する受け台(110)と、
溝部(112)の一端に設けられたストッパー(120)と、
溝部(112)の鉛直上方に配置されて少なくとも鉛直方向に移動可能であり、鉛直方向に延びたドリルビット(132)を有するドリル(130)と、
ドリルビット(132)の回転軸に対して対称に、溝部(112)の延びる方向に対して垂直な水平方向に互いに近づくように移動可能な一対の対向する把持部(142a、142b)を有し、更に各把持部(142a、142b)が上下に拡開する上下対称な一対の傾斜面(144a、144b)を有するチャック(140)と、
を備える。
【0015】
受け台(110)には、円柱状ワーク(1)を載置することが可能である(
図2(a)参照)。受け台(110)は水平な基準面(111)と、それよりも下方に窪んだ溝部(112)を有する。溝部(112)は一端から他端まで水平な一方向に延びている。円柱状ワーク(1)の中心軸方向と溝部(112)の延びる方向とが一致するように、溝部(112)に円柱状ワーク(1)を嵌めることで、穴あけ装置(100)を正面視したときの、円柱状ワーク(1)を受け台(110)に載置する際の左右方向(溝部(112)の延びる方向に対して垂直な水平方向を指す。以下同じ。)の予備的な位置決めを容易に行うことができる。
【0016】
一実施形態において、受け台(110)は溝部(112)を挟んで二つの部分に分割されてもよい。この場合、受け台(110)の各部分は、一対の把持部(142a、142b)の各把持部に固定することができる。
【0017】
別の一実施形態において、受け台(110)は一体的に構成されていてもよい。この場合、一対の把持部(142a、142b)は、受け台(110)と相対移動可能に構成することができる。当該実施形態により、部品点数が少なくなるという利点が得られる。
【0018】
溝部(112)の輪郭形状は、溝部の延びる方向から観察すると(
図1(a)参照)、例えば折線状、曲線状、又は線分と曲線の組み合わせとすることができる。より具体的には、当該輪郭形状は、V字状(折線状の一種)、U字状(線分と曲線の組み合わせ)、円弧状(曲線状の一種)、又はこれらの何れかの形状の一部などとすることができる。中でも、円柱状ワークの側面形状に対応する円弧状であることが、円柱状ワーク(1)を安定して溝部(112)に位置決めすることができるので好ましい。
【0019】
円柱状ワーク(1)を溝部(112)に嵌めたときに円柱状ワーク(1)が沈み過ると、その後、一対の把持部(142)によって円柱状ワーク(1)を挟持するときに円柱状ワーク(1)が溝部(112)から持ち上がり難くなる。そこで、溝部(112)の深さは、円柱状ワーク(1)を溝部(112)に嵌めたときに円柱状ワーク(1)の沈む深さが、円柱状ワーク(1)の直径に対して好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更により好ましくは5%以下となるように設定することが望ましい。一方、溝部(112)が浅くなり過ぎると、円柱状ワーク(1)を溝部(112)に嵌めたときの安定性が低下する。そこで、溝部(112)の深さは、円柱状ワーク(1)を溝部(112)に嵌めたときに円柱状ワーク(1)の沈む深さが、円柱状ワーク(1)の直径に対して好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、更により好ましくは1.5%以上となるように設定することが望ましい。ここで、円柱状ワーク(1)の沈む深さDは、受け台(110)の基準面(111)の高さと、円柱状ワーク(1)を溝部(112)に嵌めたときの円柱状ワーク(1)の最下点との距離を指す。
【0020】
溝部(112)の一端にはストッパー(120)が設けられている。ストッパー(120)に円柱状ワーク(1)の一端を当接させることで、プローブによるワークの寸法測定を実施することなく、円柱状ワーク(1)を受け台(110)に載置する際の円柱状ワーク(1)の軸方向の位置決めを容易に行うことができる(
図2(b)参照)。ストッパー(120)の構造は、円柱状ワーク(1)の中心軸方向の所定位置に円柱状ワーク(1)を位置決めする効果が得られる限り、特に制限はない。従って、ストッパーは、例えば壁、棒、柵又は格子などの構造を有することができるが、溝部(112)の延びる方向に垂直な壁面を有することが好ましい。位置決めを安定的に行うという観点から、当該壁面は、円柱状ワーク(1)の一端における底面全体に当接可能となる大きさ及び位置に設置されることがより好ましい。
【0021】
ドリル(130)は、溝部(112)の鉛直上方、典型的には溝部(112)の左右方向中心の鉛直上方に配置されて少なくとも鉛直方向に移動可能である。ドリル(130)は、鉛直方向に延びたドリルビット(132)を有する。ドリルビット(132)が回転しながらドリル(130)が下降することで、円柱状ワーク(1)の側面上部への穴あけ加工が可能である。ドリル(130)は更に、溝部(112)の延びる方向に移動可能に構成してもよい。これにより、円柱状ワーク(1)の側面にあける穴について円柱状ワーク(1)の中心軸方向の位置を変更することができる。従って、一実施形態において、ドリル(130)は、溝部の長手方向に所定距離だけ移動した後に、鉛直下方に移動する工程を経て穴あけ加工を行うことができる。
【0022】
ドリルビット(132)の径、種類、材質及び回転数は、円柱状ワークの材質、穴の大きさ等によって適宜選定すればよい。例えば、ドリルビット(132)の径は、15~45mmφとすることができ、典型的には25~35mmφとすることができる。ドリルビット(132)の種類は、電着、メタルボンド等とすることができる。ドリルビット(132)の材質は、超硬合金、高速度鋼等とすることができる。ドリルビット(132)の回転数は、1200~10000rpmとすることができ、典型的には4000~8000rpmとすることができる。
【0023】
一実施形態において、穴あけ装置(100)は制御装置(150)を備え、ドリル(130)は制御装置(150)からの指令によって移動及び駆動することができる。例えば、制御装置(150)は、円柱状ワーク(1)の目標直径に基づいて、ドリル(130)を予め定めた位置まで移動させ、そこから所定の深さだけ穴を鉛直方向に掘るように指示することができる。このような穴あけ装置の構成は、例えば、NC工作機械のサーボ機構により実現可能である。
【0024】
但し、この実施形態においては、円柱状ワーク(1)の直径に寸法誤差が生じたときに穴あけ深さの寸法誤差が生じ得る。そこで、好ましい一実施形態において、穴あけ装置(100)は、円柱状ワーク(1)に接触した時点をドリルビット(132)への主軸負荷の変化により検知可能な検知器(152)を備える。この場合、制御装置(150)は、ドリル(130)の円柱状ワーク(1)への接触をトリガーとしてドリル(130)に対して所定の深さの穴あけ加工を指示するように構成することができる。当該実施形態によれば、円柱状ワーク(1)の直径に寸法誤差が生じたとしても、常に目標の深さの穴を掘ることができるという利点が得られる。
【0025】
チャック(140)は、ドリルビット(132)の回転軸に対して対称に、溝部(112)の延びる方向に対して垂直な水平方向(左右方向)に互いに近づくように移動可能な一対の把持部(142a、142b)を有する。そのような機構を有するチャックとしては、例えば、SMC株式会社製のクサビ形カム機構を有する平行開閉形エアチャックMHS2シリーズを挙げることができる。このため、一対の把持部(142a、142b)は、穴あけ装置(100)を正面から見たときに、ドリルビット(132)の回転軸を中心として左右方向に互いに近づくので、一対の把持部(142a、142b)によって円柱状ワーク(1)を挟むだけで、円柱状ワーク(1)の直径に関わらず、常に円柱状ワーク(1)の中心軸の鉛直上方に、ドリルビット(132)の回転軸Aを配置することができる。すなわち、円柱状ワーク(1)を受け台(110)に載置するだけでは、円柱状ワーク(1)の左右方向の中心とドリルビットの中心軸を高精度に一致させることは難しいが、本実施形態によれば、プローブによりワークの寸法測定を実施することなく、ワークの左右方向の位置決めを高精度に行うことができる。
【0026】
図9及び
図10には、クサビ形カム機構によって一対の把持部(142a、142b)を左右対称に水平移動させるための動作原理の一例を説明するための模式的な断面図が示されている。チャック(140)は、チャックボディ(146)と、チャックボディ(146)内に収納されて鉛直方向に往復運動可能に構成されたピストン(149a)と、ピストン(149a)の移動を制限するエンドプレート148と、ピストン(149a)に連動して左右対称に水平方向に開閉可能なフィンガ(147a、147b)とを備える。
【0027】
本実施形態において、受け台(110)は二つの部分に分割されている。受け台(110)の各部分は、一対の把持部(142a、142b)の各把持部に固定されている。また、受け台(110)の各部分は、一対のフィンガ(147a、147b)の各部分に固定されており、一対のフィンガ(147a、147b)と連動して運動可能である。
【0028】
ピストン(149a)は先端に、ピストンの鉛直運動を一対のフィンガ(147a、147b)の水平運動に変換可能なカム(149b)を有している。カム(149b)はピストン(149a)の中心軸に対称なクサビ形をしており、ピストン(149a)が上昇すると、一対のフィンガ(147a、147b)は、ピストン(149a)の中心軸を対称軸として水平方向に開く(
図9参照)。また、ピストン(149a)が下降すると、一対のフィンガ(147a、147b)は、ピストンの中心軸を対称軸として水平方向に閉じる(
図9参照)。従って、ピストン(149a)の中心軸とドリルビット(132)の回転軸の左右方向の位置を一致させることで、チャック(140)の一対の把持部(142a、142b)は、ドリルビット(132)の回転軸に対して対称に、左右方向に移動可能となる。
【0029】
また、一対の把持部(142a、142b)はそれぞれ、上下に拡開する上下対称な一対の傾斜面(144a、144b)を有する。当該構成によれば、一対の把持部(142a、142b)を互いに近づくように水平方向に移動させて、一対の把持部(142a、142b)によって円柱状ワーク(1)を挟むと、両者の距離が短くなるにつれて円柱状ワーク(1)は下側の傾斜面(144a)を徐々に登る。一対の把持部(142a、142b)同士が更に近づくと、円柱状ワーク(1)の動きは上側の傾斜面(144b)に当接した時点で停止し、下側の傾斜面(144a)及び上側の傾斜面(144b)に挟まれた状態でロックされる。この際、下側の傾斜面(144a)と上側の傾斜面(144b)は上下対称に構成されているため、円柱状ワーク(1)の上下方向の中心は、円柱状ワーク(1)の直径に関わらず、常に一対の傾斜面(144a、144b)の上下方向中心(対称軸B上)に配置される。また、当該構成により、円柱状ワーク(1)の直径にばらつきが発生したとしても、寸法誤差は半径分だけしか生じなくなる。このため、ドリルによる穴あけ加工を、円柱状ワーク(1)の目標直径に基づいて予め定めた位置から所定の深さだけ行うように自動制御したとしても、円柱状ワーク(1)を受け台に載置した場合に比べて、穴深さのばらつきを半分にできるという利点がある。
【0030】
上下に拡開する上下対称な一対の傾斜面(144a、144b)の輪郭形状は、溝部(112)の延びる方向に垂直な断面において、折線状、曲線状、又は線分と曲線の組み合わせとすることができる。例えば、当該輪郭形状は、V字状(折線状の一種)、U字状(線分と曲線の組み合わせ)、円弧状(曲線状の一種)、又はこれら何れかの形状の一部などとすることができる。中でも、V字状であると、傾斜面(144a、144b)は、円柱状ワーク(1)と常に線接触又は点接触するので、円柱状ワーク(1)が移動する抵抗が小さく、更に一対の把持部の製作が容易であるという理由により好ましい。
【0031】
一対の傾斜面(144a、144b)の輪郭形状がV字状である場合、V字頂点の内角θが大きすぎると、一対の把持部(142a、142b)によって円柱状ワーク(1)を挟持するときに円柱状ワーク(1)が溝部(112)から持ち上がり難くなる。そこで、当該内角θは、好ましくは170°以下であり、より好ましくは150°以下であり、更により好ましくは130°以下である。但し、当該内角θを小さくしていくにつれて、穴あけ装置(100)の寸法が
図1(a)の左右方向に大きくなりやすい。このため、当該内角θは、好ましくは50°以上であり、より好ましくは70°以上であり、更により好ましくは90°以上である。
【0032】
一対の傾斜面(144a、144b)についての溝部(112)の延びる方向の長さLは、円柱状ワーク(1)を安定的に挟持することができるように、円柱状ワーク(1)の中心軸方向の長さに対して、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、更により好ましくは30%以上である。また、一対の傾斜面(144a、144b)についての溝部(112)の延びる方向の長さは、穴あけ装置の製造コストを抑制するという観点から、円柱状ワーク(1)の中心軸方向の長さに対して、好ましくは100%以下であり、より好ましくは80%以下であり、更により好ましくは60%以下である。
【0033】
一対の傾斜面(144a、144b)の対称軸Bは、一対の把持部(142a、142b)によって円柱状ワーク(1)を挟持するときに円柱状ワーク(1)が溝部(112)から持ち上がりやすくなるように、溝部(112)に嵌めた状態の円柱状ワーク(1)の中心軸Oよりも高い位置に設定されることが好ましい。
【0034】
下側の傾斜面(144a)の下端は、一対の把持部(142a、142b)によって溝部(112)に嵌まっている円柱状ワーク(1)を挟持するときに、円柱状ワーク(1)が持ち上がりやすくなる高さ位置に設置されることが望ましい。具体的には、円柱状ワーク(1)の中心軸の高さ位置をHRとし、溝部(112)に嵌まっている円柱状ワーク(1)の下端の高さ位置を0とすると、下側の傾斜面(144a)の下端の高さ位置HLは、受け台(110)の基準面(111)よりも上方であって、HL<HRであることが好ましく、HL≦4/5HRであることがより好ましく、HL≦3/5HRであることが更により好ましく、HL≦2/5HRであることが最も好ましい。
【0035】
一対の傾斜面(144a、144b)についての上下方向の高さHは、短すぎると一対の把持部(142a、142b)によって円柱状ワーク(1)を挟持するときに円柱状ワーク(1)が溝部(112)から持ち上がり難くなる。そこで、当該高さHの下限は、円柱状ワーク(1)の直径に対して好ましくは0.5倍以上であり、より好ましくは0.7倍以上であり、更により好ましくは0.9倍以上である。これにより、一対の把持部(142a、142b)によって円柱状ワーク(1)を挟持するときの安定性も向上する。一方、当該高さHは長すぎると、円柱状ワーク(1)の持ち上がる量が必要以上に大きくなると共に、穴あけ装置も上下方向に不必要に大きくなる。そこで、当該高さHの上限は、円柱状ワーク(1)の直径に対して好ましくは1.5倍以下であり、より好ましくは1.2倍以下であり、更により好ましくは1.0倍以下である。
【0036】
<2.円柱状ワーク>
円柱状ワーク(1)は、材質及び構造には特に制限はない。例えば、円柱状ワーク(1)はセラミックス製、プラスチック製又は金属製とすることができる。セラミックスとしては、限定的ではないが、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム又はチタニア等が挙げられる。金属としては、限定的ではないが、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、又はケイ素等が挙げられる。プラスチックとしては、限定的ではないが、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル系樹脂、ポリカーボネ-ト、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、及びフッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、並びに、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、及びポリウレタン等の熱硬化性樹脂が挙げられる。円柱状ワーク(1)は、上述した一種又は二種以上を組み合わせて配合してもよいし、更に、上述した材料以外の材料を一種以上適宜配合してもよい。
【0037】
図4には、穴あけを実施した後の、セラミックス製の円柱状ワーク(1)の一実施形態に係る斜視図が模式的に示されている。図示の円柱状ワーク(1)は、側面(2)と、側面(2)の内側に配設され、一方の底面からもう一方の底面まで貫通した流路を形成する複数のセル(4)とを備えるハニカム構造を有する。複数のセル(4)は多孔質の隔壁(3)によって区画形成可能である。側面(2)には、中心軸に向かって開いた有底穴(5)が形成されている。
【0038】
セルの延びる方向(高さ方向)に直交する断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等の中でも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム成形体の焼成品を触媒担体やフィルターとして使用したときに、排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、浄化性能が優れたものとなる。
【0039】
<3.穴あけ方法>
本発明の一実施形態によれば、円柱状ワークの側面に穴を形成するための穴あけ方法が提供される。
当該穴あけ方法は、
上述した穴あけ装置(100)を用意する工程と、
円柱状ワーク(1)の中心軸方向と溝部の延びる方向とが一致するように、且つ、円柱状ワーク(1)の中心軸方向の一端がストッパー(120)に当接するように、円柱状ワーク(1)を前記溝部(112)に嵌める第一の位置決め工程と、
チャック(140)の一対の把持部(142a、142b)が、ドリルビット(132)の回転軸に対して対称に、溝部(112)の延びる方向に垂直な水平方向(すなわち、「左右方向」)に互いに近づくように移動することにより、円柱状ワーク(1)を鉛直方向に持ち上げながら、対向側面を挟持する第二の位置決め工程と、
ドリル(130)を鉛直下方に移動させて、ドリル(130)によって円柱状ワーク(1)の側面に穴あけする工程と、
を含むことができる。
【0040】
第一の位置決め工程を実施することで、円柱状ワークを受け台(110)に載置する際の円柱状ワーク(1)の中心軸の位置決めが簡単に行える。また、左右方向の予備的な位置決めを簡単に行えるという利点もある。第一の位置決め工程を実施する際の穴あけ装置(100)の具体的な実施態様については、穴あけ装置の説明で既に述べた通りであるので割愛する。
【0041】
図2には、第一の位置決め工程が完了した状態が示されている。第一の位置決め工程は、手動で実施してもよいし、ロボットアーム(不図示)で把持することにより、自動で実施してもよい。例えば、ロボットアームは、NC装置により制御可能であり、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能であると共に、アームの軸方向を回転軸として回転可能であるように構成できる。また、ロボットアームは、把持爪を有しており、把持爪の開閉操作により円柱状ワークの把持及び開放が可能であるように構成できる。
【0042】
第一の位置決め工程においては、付加的に、円柱状ワーク(1)をその中心軸を中心に回転させる工程を実施することができる(
図3(1)参照)。例えば、円柱状ワーク(1)をその中心軸を中心に回転させることで、前述したセルの断面形状の向きを予め定めた向きに調整することができる。一例として、セルの断面形状が正方形である場合、円柱状ワークを溝部に嵌めたときに、セルの一辺が水平になるように円柱状ワークを回転することができる。このように、予めセルの方向を制御しておくことで、穴の深さ方向に対するセルの向きが一定となるため、品質安定性に優れた穴あけ作業を実施することが可能となる。
【0043】
図3(2)には、第二の位置決め工程が完了した状態が示されている。第二の位置決め工程を実施することで、プローブによりワークの寸法測定を実施することなく、ワークの左右方向の位置決めを高精度に行うことができる。また、円柱状ワーク(1)の上下方向の中心を、円柱状ワーク(1)の直径に関わらず、常に一対の傾斜面(144a、144b)の上下方向中心(対称軸B上)に配置することができる。第二の位置決め工程を実施する際の穴あけ装置(100)の具体的な実施態様については、穴あけ装置の説明で既に述べた通りであるので割愛する。
【0044】
第二の位置決め工程が完了した後は、
図7に示すように、付加的に、円柱状ワーク(1)の両底面を溝部の延びる方向(図中の矢印の方向)にバイス(122)でクランプしてもよい。これにより、円柱状ワーク(1)は溝部の延びる方向の移動が拘束されるので、円柱状ワーク(1)が強固に固定される。これにより、次工程の穴あけ工程をより安定して行うことができるようになる。
【0045】
図3(3)には、ドリル(130)を鉛直下方に移動させて、ドリル(130)によって円柱状ワーク(1)の側面に穴あけする工程において、ドリル(130)が円柱状ワーク(1)に接触したときの状態が示されている。一実施形態において、穴あけ装置は、ドリルが円柱状ワークに接触した時点をドリルビットへの主軸負荷により検知可能な検知器と、ドリルのワークへの接触をトリガーとしてドリルに対して所定の深さの穴あけ加工を指示することができる制御装置とを備える。この場合、穴あけする工程において、ドリルは、ワークに接触した時点の位置を基準として、制御装置からの指示によって、所定の深さの穴あけ加工を行うことができるように構成可能である。例えば、制御装置(150)は、ドリルビット(132)が円柱状ワークに接触することで、ドリルビット(132)への主軸負荷が変化したことを示す信号を検知器(152)から受信すると、円柱状ワークに接触した時点の位置を基準として、ドリル(130)に対して所定の深さの穴あけ加工を指示する信号を送信するように構成可能である。当該実施形態によれば、円柱状ワーク(1)の直径に寸法誤差が生じたとしても、常に所定の深さの穴を掘ることができるという利点が得られる。穴あけ深さには、特に制限はないが、一般には円柱状ワークの直径以下とすることができ、典型的には円柱状ワークの半径以下とすることができる。穴あけ工程を実施する際の穴あけ装置(100)のその他の具体的な実施態様については、穴あけ装置の説明で既に述べた通りであるので割愛する。
【0046】
円柱状ワーク(1)の側面への穴あけ工程を実施した後、ドリル(130)は鉛直上方に移動することで、円柱状ワーク(1)から引き抜かれる。次いで、チャック(140)の一対の把持部(142a、142b)が、左右方向に開くことで、円柱状ワーク(1)は下側の傾斜面(144a)から滑り落ち、再び溝部(112)に嵌る(
図3(4)参照)。その後、円柱状ワーク(1)は穴あけ装置(100)から取り出すことが可能である。
【0047】
<4.円柱状製品の製造方法>
本発明の一実施形態によれば、上述した穴あけ方法を実施することを含む円柱状製品の製造方法が提供される。円柱状製品の用途に特段の制約はない。例えば、円柱状製品がハニカム構造を有する場合、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)及びガソリンパティキュレートフィルター(GPF)等のフィルターの他、熱交換器及び触媒担体などとして利用可能である。触媒担体として利用する場合、円柱状製品には三元触媒、SCR触媒、酸化触媒等の触媒を一種以上担持することが可能である。穴あけ方法を実施することで円柱状ワークの側面部に開いた穴には、例えばセンサーを挿入することができる。センサーとしては、限定的ではないが、酸素センサー、NOxセンサー、空燃比センサー、温度センサー、圧力センサー、及び微粒子状物質センサーが挙げられる。
【0048】
<5.円柱状ワークの検査方法>
本発明の一実施形態によれば、上述した穴あけ方法を実施した後に、テレセントリックレンズを有するカメラ(典型的にはデジタルビデオカメラ)を用いて、円柱状ワーク(1)の側面部に開いた穴を撮像することを含む円柱状ワークの検査方法が提供される。当該検査方法によれば、撮像した円柱状ワークの三次元形状に基づく歪みが現れなくなるので、穴の位置、形状及び大きさ等の一種以上の検査項目をモニターで正確に検査することが可能となる。検査のタイミングには特に制限はないが、例えば、穴あけ加工後、チャック(140)によって円柱状ワーク(1)が挟持されている状態にあるときに、テレセントリックレンズを有するカメラ(502)で、鉛直上方から円柱状ワーク(1)の側面部に開いた穴(5)を撮像することができる(
図5参照)。当該実施形態によれば、穴が円柱状ワークの側面最上部から鉛直方向に開いているときに当該穴を検査できるので穴の位置基準が明確であり、検査精度を高めることができる。
【0049】
この際、撮像された円柱状ワークの直径及び長さ、穴の位置、大きさ及び長さ等の情報を画素位置に基づいて自動的に計算させてもよい。そして、計算結果は、穴を含む円柱状ワークの側面部を二次元モニターに、穴の位置や大きさ、更には円柱状ワークの直径を重ね合わせて表示させてもよい。これにより、検査時間を短縮することができる。
【0050】
穴あけ加工後、チャックから円柱状ワークを開放した後に、円柱状ワークの穴を検査する場合には、セルの向きをテレセントリックレンズを有するカメラ(典型的にはデジタルビデオカメラ)(502)で撮像しながら調整することで、予め穴(5)の位置基準を明確にすることが好ましい(
図6参照)。この際、モニター(504)には、撮像したセル(4)と共に、水平方向及び/又は鉛直方向を表す線分(506)を重ね合わせて表示することが便利である。例えば、当該モニター(504)でセル(4)の向きを観察しながら円柱状ワーク(1)を回転させて、穴(5)の位置が側面最上部に位置するように調整することが可能である。テレセントリックレンズを有するカメラを使用することで歪みがなくなるため、セルの向きをより正確に調整できるという利点が得られる。
【0051】
カメラで円柱状ワークのセルを撮像する際は、歪みを防止するため、円柱状ワークの底面に垂直な方向から撮像することが好ましい。そこで、カメラ(502)で円柱状ワーク(1)を撮像する際には、異なる箇所を撮像することができるように、受け台(110)をジャッキ等の昇降機(508)に載せて鉛直方向に移動可能に構成することが好ましい。これにより、カメラ(502)を動かすことなく、円柱状ワーク(1)の異なる高さ位置を撮像することができるようになる。昇降機(508)は、コントローラ(509)、好ましくはリモートコントローラによって変位制御可能に構成することが好ましい。穴(5)の位置基準を明確にした後は、テレセントリックレンズを有するカメラ(502)で、鉛直上方から円柱状ワーク(1)の側面部に開いた穴(5)を撮像することで、所定の検査項目を検査可能である。
【0052】
上述した穴あけ方法を実施した後の円柱状ワークのその他の検査方法としては、タッチプローブを備えた三次元座標測定機を用いて穴位置を検査する方法がある。
図8には、三次元座標測定機(160)を用いた穴位置の検査方法を説明するための概略図が示されている。図示の実施形態において、三次元座標測定機(160)は、xyz方向(x方向は溝部の延びる方向、y方向はチャックの移動方向、z方向は鉛直方向)に移動制御可能なタッチプローブ(161)を先端に備えており、タッチプローブ(161)が物体に触れた時の三次元座標位置を特定可能である。三次元座標測定機(160)を用いることで、例えば、以下の手順により円柱状ワーク(1)の側面部に開いた穴(5)の深さを測定可能である。まず、タッチプローブ(161)を円柱状ワーク(1)の穴の位置からx軸方向に少しずらした円柱状ワーク(1)の側面に当て、当該場所の座標を記録する。次いで、穴(5)の中央最深部にタッチプローブ(161)を当て、当該場所の座標を記録する。両座標のz軸方向の距離を測定することで、穴(5)の深さを検査することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 円柱状ワーク
2 側面
3 隔壁
4 セル
5 穴
100 穴あけ装置
110 受け台
111 基準面
112 溝部
120 ストッパー
122 バイス
130 ドリル
132 ドリルビット
140 チャック
142a、142b 把持部
144a、144b 傾斜面
146 チャックボディ
147a、147b フィンガ
148 エンドプレート
149a ピストン
149b カム
150 制御装置
160 三次元座標測定機
161 タッチプローブ
502 カメラ
504 モニター
506 水平方向及び/又は鉛直方向を表す線分
508 昇降機
509 コントローラ