IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液体供給装置 図1
  • 特許-液体供給装置 図2
  • 特許-液体供給装置 図3
  • 特許-液体供給装置 図4
  • 特許-液体供給装置 図5
  • 特許-液体供給装置 図6
  • 特許-液体供給装置 図7
  • 特許-液体供給装置 図8
  • 特許-液体供給装置 図9
  • 特許-液体供給装置 図10
  • 特許-液体供給装置 図11
  • 特許-液体供給装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 119
B41J2/175 121
B41J2/175 141
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020052597
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151724
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武居 康徳
(72)【発明者】
【氏名】林 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】越川 浩志
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-034122(JP,A)
【文献】特開2018-140607(JP,A)
【文献】特開2014-151512(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/016119(JP,A1)
【文献】特開2020-183118(JP,A)
【文献】特開平10-029318(JP,A)
【文献】特開2001-001539(JP,A)
【文献】米国特許第06505923(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査しながら液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドにチューブを介して連通する液体貯留タンクと、
液体を貯留し前記液体貯留タンクに対して着脱可能に設けられるカートリッジと、
を有する液体供給装置であって、
前記液体貯留タンクは、前記カートリッジが装着された状態における、前記カートリッジと対向する第1側面に、
大気に連通する大気連通部と、
前記カートリッジが前記液体貯留タンクに装着された状態において、前記カートリッジと前記液体貯留タンクとを液体連通させる第1接続部と、
記カートリッジが前記液体貯留タンクに装着された状態において、前記カートリッジに貯留される液体の液面より上方に位置し、前記カートリッジと液密に接続され、且つ前記カートリッジと前記大気連通部とを気体連通させる第2接続部と、
を有し、
前記第2接続部と前記大気連通部は、液体の流通を遮断し且つ気体の流通を許容する第1気液分離膜によって共に被覆されるように、前記第1側面において互いに隣接して設けられていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記大気連通部は、前記カートリッジが前記液体貯留タンクに装着された状態において、前記液体貯留タンクの内部に貯留される液体の液面より上方に位置する、請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記第2接続部は、使用姿勢における前記液体貯留タンクの上方に位置する請求項1又は2に記載の液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置には、液体吐出ヘッドに連通するタンクに対して、液体を貯留したカートリッジを接続し、カートリッジからタンクへと液体を供給する液体供給装置を備えるものが知られている。
【0003】
このような液体供給装置を備える液体吐出装置として、特許文献1には、液体(インク)を吐出して記録するインクジェット記録装置が開示されている。ここに開示のインクジェット記録装置では、使用時において、タンクの液体貯留室(インクの貯留室)とカートリッジの液体貯留室(インクの貯留室)とがそれぞれ大気開放される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-25818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の構成では、タンクとカートリッジの双方に大気連通機構が必要になり、これが装置の大型化及び装置コストの上昇を招くという課題がある。特にカートリッジに関しては、輸送時などの使用前の状態では密閉性を保ち、使用時には液体の漏出を阻止しつつ大気に連通することが必要になる。このため、特許文献1に開示のカートリッジは、複雑な大気連通機構が設けられている。
【0006】
本発明は、カートリッジとサブタンクとを簡易な構成で大気に連通させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走査しながら液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドにチューブを介して連通する液体貯留タンクと、液体を貯留し前記液体貯留タンクに対して着脱可能に設けられるカートリッジと、を有する液体供給装置であって、前記液体貯留タンクは、前記カートリッジが装着された状態における、前記カートリッジと対向する第1側面に、大気に連通する大気連通部と、前記カートリッジが前記液体貯留タンクに装着された状態において、前記カートリッジと前記液体貯留タンクとを液体連通させる第1接続部と、記カートリッジが前記液体貯留タンクに装着された状態において、前記カートリッジに貯留される液体の液面より上方に位置し、前記カートリッジと液密に接続され、且つ前記カートリッジと前記大気連通部とを気体連通させる第2接続部と、を有し、前記第2接続部と前記大気連通部は、液体の流通を遮断し且つ気体の流通を許容する第1気液分離膜によって共に被覆されるように、前記第1側面において互いに隣接して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カートリッジとサブタンクとを簡易な構成で大気に連通させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に適用される記録装置の外観斜視図及び模式図である。
図2】第1実施形態におけるカートリッジを示す図である。
図3】カートリッジのバルブ機構を示す拡大側断面図である。
図4】第1実施形態におけるサブタンクを示す図である。
図5図2のサブタンク及び図3のカートリッジを示す側断面模式図である。
図6】第2実施形態のカートリッジの側断面模式図である。
図7】第2実施形態のサブタンクを示す外観斜視図及び側断面模式図である。
図8図6のサブタンク及び図7のカートリッジを示す側断面模式図である。
図9】第3実施形態のサブタンクの外観斜視図及び側断面模式図である。
図10図9のサブタンクに図2のカートリッジを装着した状態を示す側断面模式図である。
図11】第4実施形態のサブタンクの外観斜視図及び側断面模式図である。
図12図11のサブタンクに対し、図2に示すカートリッジを装着した状態と図6に示すカートリッジを装着した状態とを示す側断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本明細書において参照する図面において、X及びYは、水平面上で互いに直交する2方向を示し、Zは鉛直方向を示している。また、X1は前方を、X2は後方を、Y1は左方を、Y2は右方を、Z1は上方を、Z2は下方をそれぞれ示している。また、以下の説明において、特に断りのない限り、上方、下方、左右は、液体吐出装置を通常の状態で使用する姿勢を想定することとする。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を、図1ないし図4を参照しつつ詳細に説明する。図1は本実施形態における液体吐出装置1を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は液体の供給経路を示す模式図である。本実施形態に示す液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド2に設けられた複数の吐出口よりインク等の液体を吐出して記録を行うインクジェット方式の記録装置を構成している。以下、液体吐出装置1を記録装置1と称し、液体吐出ヘッド2を記録ヘッド2と称す。
【0012】
図1(a)に示す記録装置1は、記録ヘッド2を主走査方向(Y方向)に沿って移動させる主走査と、主走査方向との交差方向(X方向)に記録媒体を間欠的に搬送する副走査とを行うことにより記録を行うシリアル型のインクジェット記録装置を構成している。
【0013】
記録装置1は、筐体1aによってその外殻が構成されている。筐体1aの内部には、記録ヘッド2を主走査させる不図示の走査機構、記録ヘッド2によって記録される記録媒体を搬送する不図示の搬送機構、記録ヘッド2に液体を供給する液体供給装置100、及びこれらを制御する不図示の制御装置等が収容されている。なお、本実施形態の記録装置1には、記録ヘッド2に設けられた吐出口に負圧を印加して吐出口内のインクを排出させることにより、吐出口の吐出性能を回復させる吸引回復機構が設けられている。
【0014】
液体供給装置100は、図1(b)に示すように、記録装置1の本体部に保持されたサブタンク(液体貯留タンク)22と、サブタンク22と記録ヘッド2とを接続するチューブ3と、カートリッジ12とを有する。カートリッジ12は、記録ヘッド2から吐出する液体(インク)を貯留しており、後述する構成によりサブタンク22に対して着脱可能に設けられている。カートリッジ12がサブタンク22に装着されて接続された状態となると、カートリッジ12に貯留されている液体は、サブタンク22に供給されて一旦貯留される。その後、前述の吸引回復機構によって記録ヘッド2の吐出口に負圧が印加され、サブタンク22に貯留された液体はチューブ3を介して記録ヘッド2に供給される。これにより、カートリッジ12から記録ヘッド2に至る液体供給経路が形成され、記録ヘッド2は液体を吐出可能な状態となる。
【0015】
以下、カートリッジ12及びサブタンク22の構成をより詳細に説明する。
【0016】
〈カートリッジ〉
図2は、本実施形態におけるカートリッジ12を示す図であり、図2(a)はカートリッジ12の斜視図、図2(b)はカートリッジ12の側面図、図2(c)はカートリッジの内部構造を示す側断面模式図である。カートリッジ12は略直方体形状をなす中空箱状の筐体35を有する。筐体35は前壁部30、後壁部31、左右の側壁部32、33及び底壁部34により構成され、内部には液体(インク)を貯留する第1貯留室11が形成されている。
【0017】
底壁部34の一部には、カートリッジ12の使用時の姿勢において後端から前端にかけて傾斜する傾斜面34aが形成されている。この傾斜面34aにより、カートリッジ12内のインクは、傾斜面34aに沿って以下に説明する液体供給部40へと円滑に導かれる。
【0018】
第1貯留室11の底壁部34には段差部34bが形成されている。段差部34bには、前方に突出する円筒状の液体供給部40が形成されている。液体供給部40の先端には、後述のサブタンク22に設けられた導入管20が挿入される液体供給口42が形成されている。また、液体供給部40の内部には、液体供給部40に流入した液体の、液体供給口42からの漏出を防止するための第1バルブ機構47を収容するバルブ室46が形成されている。
【0019】
図2(c)は、未使用のカートリッジ12が通常の使用姿勢をとる場合の液体の貯留状態を示している。図示のように、第1貯留室11の液体が貯留されている領域の上方には空間領域(エアーバッファ室)11aが形成される。このとき、カートリッジ12の前壁部30に形成された第1大気連通部(気体連通部)50は、液面10より上方に位置し、エアーバッファ室11aに連通する。
【0020】
図3は、第1バルブ機構47の構成を示す拡大図である。図3(a)は、カートリッジ12がサブタンク22に装着されていない状態を、図3(b)はカートリッジ12がサブタンク22に装着されている状態をそれぞれ示している。第1バルブ機構47は、液体供給口42に対して進退可能に設けられたバルブ44と、バルブ44を液体供給口42に向けて付勢するコイルばね45と、液体供給口42の周囲に設けた環状のシール部材43と、を有している。
【0021】
図3(a)に示す状態では、バルブ44とシール部材43とがコイルばね45の付勢力によって密接し、液体供給口42がバルブ44によって閉塞される。従って、この状態では、バルブ室46内の液体が液体供給口42から漏出することはない。また、後述するサブタンク22に設けられた導入管22にも、第3バルブ機構60が設けられている。第3バルブ機構60は、バルブ61と、導入管20の端部に形成された液体導入口20aに向けてバルブ61を付勢するコイルばね62と、を備える。図3(a)に示す状態では、バルブ61がコイルばね62の付勢力によって液体導入口20aを閉塞している。このときバルブ61の一端部(図3において後端部)は導入管20の液体導入口20aから後方(X2方向)へと突出した状態にある。
【0022】
カートリッジ12がサブタンク22に装着されると、後述のサブタンク22の導入管20が液体供給口42からカートリッジ12の供給部40内に挿入されていく。そして、最終的には、図3(b)に示すように、第3バルブ機構60のバルブ61が液体導入口20aを開放し、第1バルブ機構47のバルブ44が液体供給口42を開放する。これにより、カートリッジ22とサブタンク22は液体連通した状態となる。この間、第3バルブ機構60のバルブ61と第1バルブ機構47のバルブ43は、次のように移動する。
【0023】
まず、導入管20が液体供給口42から液体供給部40内に挿入されると、第3バルブ機構60のバルブ61の後端部がバルブ43に当接する。バルブ61とバルブ43とが当接した当初は、コイルばね62の付勢力は、コイルばね45の付勢力より小さい。このため、導入管20が液体供給部40の内方へと挿入されていくに従い、バルブ61はバルブ43に押圧されて導入管20の内方へと相対的に移動し、液体導入口20aを開放する。その後、さらに導入管20が液体供給部40内に挿入されると、圧縮されたコイルばね62の付勢力がコイルばね45の付勢力を上回り、バルブ61に押されてバルブ44が後方(X2方向)へと移動する。これにより、バルブ66がシール部材43から離間し、液体供給口42が開放される。
【0024】
以上のように、液体導入口20aと液体供給口42とが開放されることにより、カートリッジ12とサブタンク22とが液体連通した状態となる。これにより、第1貯留室11からバルブ室46に流入した液体は、図3(b)の矢印に示すように、導入管20内を通過してサブタンク22内に流入する。
【0025】
また、カートリッジ12がサブタンク22から取り外され、導入管20がカートリッジ12の液体供給部から抜去されると、バルブ44とバルブ61のそれぞれは、図3(a)の状態に戻る。すなわち、バルブ44はコイルばね45の付勢力によって液体供給口42を閉塞し、バルブ61は、コイルばね62の付勢力によって液体導入口20aを閉塞する。これにより、サブタンク22の液体導出口20aからの液漏れ、及びカートリッジ12の液体供給口42からの液漏れは抑制される。
【0026】
一方、カートリッジ12の上部には、前壁部30を貫通する第1大気連通部50が形成されている(図2参照)。第1大気連通部50は、カートリッジ12の使用前の状態において、カートリッジ12の前壁部30に貼着されたフィルム(密閉部材)51によって密閉されている。
【0027】
以上のように、未使用時のカートリッジ12は、フィルム51とバルブ44とによって内部が密閉された状態に保たれる。このため、輸送時などにおいてカートリッジ12がいかなる姿勢をとろうとも、内部の液体が外部へと漏出することはない。なお、図2に示すカートリッジ12は、記録動作に使用するインク色毎に用意されている。各カートリッジは収容されるインクの種類が異なる点を除き同一の構成を有する。
【0028】
〈サブタンク〉
図4は、本実施形態におけるサブタンク22を示す図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は側断面模式図である。また、図4(c)はサブタンク22のニードル24とカートリッジ12の第1大気連通部50との関係を示す部分拡大図である。なお、図4においては、導入管20内に設けられている第3バルブ機構50の図示を省略しているが、実際には図3に示すような第3バルブ機構50が存在するものとする。また、後述する第2実施形態~第4実施形態において参照する図面においても、導入管内20に設けられている第3バルブ機構50の図示を省略する。
【0029】
本実施形態のサブタンク22は、略直方体形状をなす筐体21を有する。筐体21の内方には、種類の異なる液体(例えば、色の異なるインク)を貯留するための複数の第2貯留室26が画成されている。また、筐体21の外壁には、第2大気連通部25、第1接続部20、第2接続部24、及び液体流出口23が、複数の第2貯留室26のそれぞれに対応して設けられている。
【0030】
すなわち、筐体21の後壁部21bの上部には、第2大気連通部25が形成されている。第2大気連通部は、第2貯留室26を大気に連通させる役割を果す。さらに、筐体21の後壁部21bには、カートリッジ12を接続可能とする第1接続部20と、第2接続部24とが形成されている。
【0031】
第1接続部20は、筐体22aの後壁の下方部から後方に突出する導入管20によって構成されている。導入管20の前端は開口しており、第2貯留室26と連通している。また、導入管20の後端部には液体導入口20aが形成されている。なお、導入管20内には、前述のように、液体導入口20aからの液体の漏出を抑制するためのバルブ機構60(図3参照)が設けられている。
【0032】
第2接続部24は、筐体22aの後壁部21bから後方に突出する中空体としてのニードル24によって構成されている。ニードル24の前端及び後端は開口している。ニードル24の前端の開口及び第2大気連通部25の前端の開口は、第2貯留室26の内面に貼着された半透膜28によって被覆されている。半透膜28は、液体の流通を遮断し、気体の流通を許容する気液分離部材を構成する膜である。この半透膜28により、第2大気連通部25及びニードル24は、第2貯留室26に対して、液体連通が遮断され、且つ気体連通が許容された状態となっている。
【0033】
なお、ニードル24は、図4(c)に示すように、後端に向かうに従って漸次外径が縮小するテーパ形状をなしており、後端の外径はカートリッジの第1大気連通部50の内径より小さく、中腹部が第1大気連通部50の内径以上となるように形成されている。このため、ニードル24が第1大気連通部50に所定量挿入されると、図4(c)に示すように、ニードル24の中腹部が第1大気連通部50の内面に密接し、ニードル24と第1大気連通部50との間は、液密状態に保たれる。
【0034】
また、筐体21の前壁21aの上部には、記録ヘッド2に連通するチューブ3に接続される液体流出口23が形成されている。筐体22aの内部には、カートリッジ12から供給される液体を貯留可能とする第2貯留室26と、第2貯留室26内に貯留された液体を液体流出口23へと導く流路27とが形成されている。
【0035】
以上の構成において、サブタンク22が通常の使用姿勢にあるとき、ニードル24は、第2大気連通部25より鉛直方向において低い位置に位置する。また、導入管20はサブタンク22の底部に近い位置に設けられており、通常の使用姿勢においてニードル24より鉛直方向(Z方向)において下方に位置する。さらに、サブタンク22のニードル24と導入管20は、カートリッジ12の第1大気連通部50と液体供給口42とにそれぞれ対応する位置に形成されている。
【0036】
次に、上記構成を有する液体供給装置100のサブタンク22とカートリッジ12における大気連通状態及び液体の移動状態を、図5の側断面模式図を参照しつつ説明する。なお、図5においては、カートリッジ12の液体供給部40内に設けられている第1バルブ機構47の図示を省略しているが、実際には図1及び図3に示すような第1バルブ機構47が存在するものとする。
【0037】
図5(a)は、通常の使用状態にある記録装置1に対してカートリッジ12を装着する前の状態、すなわち、サブタンク22に対してカートリッジ12が装着される前(接続される前)の初期状態を示している。初期状態において、サブタンク22の第2貯留室26には液体が充填されておらず、第2貯留室26内は第2大気連通部25を介して大気に連通している。
【0038】
一方、カートリッジ12内の第1貯留室11及び液体供給部40のバルブ室46には液体が充填されている。液体供給口42は、第1バルブ機構47によって液体供給口42が閉塞された状態にあるため、液体が液体供給口42から漏出することはない。また、第1大気連通部50はフィルム51によって密閉されており、カートリッジ12の第1貯留室11と大気との連通は遮断されている。
【0039】
図5(b)は、カートリッジ12を記録装置1に装着した状態を示している。カートリッジ12は、その前壁部30をサブタンク22に向けて挿入することにより装着される。カートリッジ12を記録装置1に装着すると、サブタンク22のニードル24がカートリッジ12の第1大気連通部50を閉塞していたフィルム51を貫通し、カートリッジ12のエアーバッファ室11a内に突出する。その結果、カートリッジ12は、中空のニードル24、サブタンク22の第2貯留室26、及び第2大気連通部25を介して大気と連通する。これにより、サブタンク22からカートリッジ12に亘って、図5(b)の矢印に示すような大気の導入経路が形成される。
【0040】
一方、サブタンク22とカートリッジ12の下方部では、サブタンク22の導入管20が液体供給部40の液体供給口42からバルブ室46の内方へと侵入する。これにより、図3(b)に示すように、導入管20を介してカートリッジ12の第1貯留室11とサブタンク22の第2貯留室26とが液体連通する。このとき、カートリッジ12とサブタンク22とが、前述のように大気と連通することにより、カートリッジ12の第1貯留室11内に貯留された液体は、水頭差によって、サブタンク22の第2貯留室26への移動(供給)を開始する。この液体の移動(供給)は、第1貯留室11の液面10と第2貯留室26の液面10とが等しくなるまで行われる。
【0041】
その後、記録装置1に設けられた吸引回復機構を用いて記録ヘッド2の吐出口に負圧を印加し、吐出口から吸引動作を行う。これにより、サブタンク22の第2貯留室26の液体が流路27を通じて液体流出口23からチューブ3へと送られ、最終的に記録ヘッド2へと供給される。このときカートリッジ12及びサブタンク22では、液体と気体とが交換される気液交換が行われる。気液交換における気体(空気)の流入及び流出は、サブタンク22に設けられた第2大気連通部25を通じて行われる。
【0042】
以上のように本実施形態では、使用時にニードル24と第1大気連通部50とが接続されることにより、サブタンク22とカートリッジ12の双方の大気連通を、サブタンク22に設けた第2大気連通部25に集約して行うことができる。従って、カートリッジ12を簡易な構成を用いて大気に連通させることが可能になる。また、使用中における大気連通路からの液漏れを、サブタンク22側に設けた半透膜28によって抑制することができるため、カートリッジ12側に液漏れ防止用の構成を設ける必要はなくなる。従って、大気連通と液体の漏出防止とを可能にする構成を、サブタンクとカートリッジの双方に設けていた従来に比べ、本実施形態では、カートリッジ12の部品点数を削減することが可能になる。このため、カートリッジ12の小型化及びコスト低減を図ることが可能になる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図6ないし図8を参照しつつ説明する。なお、図6ないし図8において、第1実施形態において説明したものと同一もしくは相当部分には同一符号を付す。
【0044】
〈カートリッジ〉
図6は、本実施形態におけるカートリッジ12Aの側断面模式図である。本実施形態におけるカートリッジ12Aは、第1実施形態に示したカートリッジ12における筐体35と同様の外形を有する筐体35Aを備える。但し、本実施形態における筐体35A内の上方部には、第1大気連通部50と第1貯留室11のエアーバッファ室11aとの連通、遮断を行う第2バルブ機構39が設けられている。
【0045】
第2バルブ機構39は、第1大気連通部50に対向して設けられたバルブ36と、バルブ36を第1大気連通部50に向けて付勢するコイルバネ37と、これらを支える支持部38とを備える。支持部38の底部には、連通孔38aが設けられている。未使用のカートリッジ12Aを通常の使用姿勢に保持した状態において、第2バルブ機構39は、第1貯留室11内に貯留されている液体の液面10より上方に位置する。また、本実施形態においても、カートリッジ12Aの下方部には、第1実施形態と同様に、液体供給部40が設けられ、液体供給部40内には第1バルブ機構47が設けられている。なお、本実施形態において、第1大気連通部50は、未使用の状態においてはフィルム51とバルブ36とにより密閉されており、これらが第1大気連通部50の密閉部材として機能する。
【0046】
〈サブタンク〉
図7は、本実施形態におけるサブタンク22Aを示す図であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は側断面模式図である。本実施形態におけるサブタンク22Aでは、後壁部に設けられた中空のニードル24Aの後端部が閉塞されると共に、周壁部の一部にニードル孔29Aが設けられており、この点が、第1実施形態に示したものと異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0047】
次に、本実施形態のサブタンク22A及びカートリッジ12Aの大気連通状態及び液体の移動状態を、図8の側断面模式図を参照しつつ説明する。なお、図8においても、カートリッジ12Aの液体供給部40内に設けられている第1バルブ機構47の図示は省略してある。
【0048】
図8(a)は、カートリッジ12Aを記録装置1に装着する前における、サブタンク22Aとカートリッジ12Aのそれぞれの状態を示している。この状態において、サブタンク22Aの第2貯留室26には液体(インク)が充填されておらず、第2大気連通部25を介して大気に連通している。一方、カートリッジ12A内の第1貯留室11には液体が充填されている。第1大気連通部50はフィルム51及びバルブ36によって密閉されており、カートリッジ12Aの内部は大気に連通していない。また、図8(a)の状態において、第2バルブ機構39のコイルバネ37は伸張状態にあり、バルブ36は連通孔38aより第1大気連通部50に近い位置に保持されている。このため、第1大気連通部50とエアーバッファ室11aとの連通は遮断された状態となっている。
【0049】
図8(b)は、カートリッジ12Aが記録装置1の本体部に装着され、サブタンク22Aとカートリッジ12Aとが接続された状態を示している。このとき、サブタンク22Aのニードル24Aは、カートリッジ12Aの第1大気連通部50を閉塞しているフィルム51を貫通する。そして、ニードル24Aは、カートリッジ12に設けられたバルブ36を押圧し、バルブ36を後方(X2方向)へと移動させる。バルブ36が後方へと移動することにより、支持部38の底部に設けられた連通孔38aと、ニードル24Aに設けられたニードル孔29Aとが連通する。その結果、カートリッジ12Aのエアーバッファ室11aは、サブタンク22Aのニードル孔29A、第2貯留室26及び第2大気連通部25を通じて大気と連通する。図8(b)の矢印は、サブタンク22Aの第2大気連通部25からカートリッジ12Aのエアーバッファ室11aに至る大気導入経路を示している。
【0050】
カートリッジ12Aの第1貯留室11が大気に連通することにより、第1貯留室11内の液体は、水頭差によって第2貯留室26への移動を開始する。この液体の移動は、第1貯留室11内の液面10と第2貯留室26内の液面10とが等しくなるまで継続される。その後、第1実施形態と同様に、吸引回復機構によって記録ヘッド2から吸引動作を行い、サブタンク22Aの第2貯留室26の液体を、流路27及びチューブ3を介して記録ヘッド2へと供給する。記録ヘッド2に液体が供給されたときのサブタンク22A及びカートリッジ12Aの状態を図8(c)に示す。なお、カートリッジ12Aから記録ヘッド2へのインクが充填された後は、記録動作によるインクの消費に応じてカートリッジ12Aから記録ヘッド2へとインクが供給される。
【0051】
また、図8(d)は、カートリッジ12A内の液体を使い切る前に、カートリッジ12Aをサブタンク22Aから取り外した状態を示している。カートリッジ12Aがサブタンク22Aから取り外されると、第2バルブ機構39のバルブ36は、コイルバネ37の付勢力によってカートリッジ12装着前の位置、すなわち、連通孔38aより第1大気連通部50に近い位置へと移動する。その結果、第1大気連通部50とエアーバッファ室11aとの連通が遮断される。また、導入管20が液体供給部40から抜去されることにより、第1バルブ機構47のバルブ44がシール部材43に密接して液体供給口42を閉塞する(図3(a)参照)。これにより、カートリッジ12は、再び大気との連通が遮断された状態となる。
【0052】
以上のように本実施形態においても、第1実施形態と同様に、使用時の液体の漏出を阻止しつつ、サブタンク22Aとカートリッジ12Aの双方の大気連通を第2大気連通部25に集約して行うことが可能になる。さらに、サブタンク22Aからカートリッジ12Aを取り外した場合にも、第1大気連通部50からの液体の漏出を阻止することが可能になり、カートリッジ12Aの利便性を向上させることが可能になる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、図9及び図10を参照しつつ説明する。図9は本実施形態におけるサブタンク22Bを示す図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は側断面模式図である。本実施形態におけるサブタンク22Bは、筐体21Bの後壁部21bに設けたニードル24Bの根元部の近傍にニードル孔29Bが設けられている。このニードル孔29Bは、以下に説明するように、第1、第2実施形態における第2大気連通部25と同様の機能を果す。このため、本実施形態における筐体21の後壁部21bには、第1、第2実施形態に示した第2大気連通部25は設けられていない。なお、ニードル24Bの前後両端には開口部が形成されている。さらに、ニードル24Bには、ニードル孔29Bを挟む前後2箇所にそれぞれ半透膜28a、28bが設けられている。すなわち、ニードル24Bの前端の開口部を覆う位置に半透膜28aが設けられ、ニードル24Bの後端の開口部とニードル孔29Bとの間の内部空間に半透膜28bが設けられている。これにより、サブタンク22B側からのインクの漏出と、カートリッジ12側からのインクの漏出の両方を抑制することが可能になる。なお、その他の構成は、第1実施形態に示したサブタンク22と同様である。
【0054】
本実施形態では、サブタンク22Bに対し、第1実施形態において示したカートリッジ12を適用する。カートリッジ12が記録装置1の本体部に装着されると、カートリッジ12とサブタンク22Bは、図10に示すように接続される。すなわち、サブタンク22Bのニードル24Bは、カートリッジ12の第1大気連通部50を通過してエアーバッファ室11a内に侵入し、サブタンク22Bの導入管20はカートリッジ12の液体供給口42を通過して液体供給部40内に侵入する。
【0055】
サブタンク22Bとカートリッジ12とが接続された状態において、ニードル24Bに形成されたニードル孔29Bは、サブタンク22Bとカートリッジ12Bとの間に位置し、大気に開放された状態となる。このため、サブタンク22Bの第2貯留室26及びカートリッジ12の第1貯留室11は、いずれも、ニードル24B及びニードル孔29Bを介して大気に連通する。従って、本実施形態においても第1、第2実施形態と同様の効果を期待できる。さらに、本実施形態では、第1、第2実施形態に設けられていた第2大気連通部を形成する必要がないため、サブタンク22Bの外壁構造を簡略化することが可能になる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図11及び図12を参照しつつ説明する。本実施形態は、第1実施形態に示したカートリッジ12と第2実施形態に示したカートリッジ12Aの双方を適用可能なサブタンク22Cを備える。
【0057】
図11は本実施形態におけるサブタンク22Cを示す図であり、図11(a)は斜視図、図11(b)は側断面模式図である。サブタンク22Cの筐体21の後壁部21bには、上記実施形態と略同様の外形を有するニードル24Cが設けられている。ニードル24Cは、前後両端に開口部を有すると共に、周壁部の前後2か所にニードル孔29A、29Bを有する。ニードル孔29Aは第2実施形態に示したものと同様であり、ニードル孔29Bは第3実施形態に示したものと同様である。また、ニードル24Cの内部空間には、ニードル孔29Aとニードル孔29Bとの間に半透膜28bが設けられると共に、ニードル24Cの前端部側の開口部を覆う位置にも半透膜28aが設けられている。これらの半透膜28a、28bによって、サブタンク22C側からの液体の漏出と、カートリッジ12側からのインクの漏出の双方を抑制することが可能となる。なお、サブタンク22Cの他の構成は、第3実施形態と同様である。よって、本実施形態においても、サブタンク22Cの筐体21の後壁部には、第1、第2実施形態で示した第2大気連通部25は設けられていない。
【0058】
図12は、本実施形態におけるサブタンク22Cに、異なる2種類のカートリッジを適用した状態を示す図である。ここで、図12(a)に示すカートリッジ12は、第1実施形態に示すカートリッジ12(図2参照)と同一であり、図12(b)に示すカートリッジ12Aは、第2実施形態に示すカートリッジ12A(図6参照)と同一である。
【0059】
図12(a)に示すように、サブタンク22Cにカートリッジ12を接続した場合、サブタンク22Cの第2貯留室26とカートリッジ12の第1貯留室11は、いずれもニードル24及びニードル孔29A、29Bを通じて大気に連通可能となる。
【0060】
また、図12(b)に示すように、サブタンク22Cにカートリッジ12Aを接続した場合、第2貯留室26は、ニードル24C及びニードル孔29Bを通じて大気に連通する。そして、第1貯留室11のエアーバッファ室11aは、連通孔38a、ニードル孔29A、ニードル24C及びニードル孔29Bを通じて大気に連通する。
【0061】
このように本実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を期待できると共に、2種類のカートリッジ12、12Aを適用することが可能になり、カートリッジの互換性を高めることが可能になる。
【0062】
以上で示したように、上記各実施形態では、カートリッジとサブタンクの大気連通を、サブタンクに集約することが可能となる。さらに、使用時において、カートリッジからの液体の漏出をサブタンク側の機能を用いて抑制することが可能となる。このため、カートリッジの部品点数の削減及びカートリッジの小型化が可能になり、安価にカートリッジを構成することが可能になる。
【0063】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施例で示したサブタンク、カートリッジの様態に限定されない。例えば、上記実施形態におけるサブタンクは、単一のサブタンクに複数のカートリッジを装着する構成を示したが、複数の独立した構成のサブタンクを設け、各サブタンクにカートリッジを装着するようにすることも可能である。
【0064】
また、サブタンクにおける第2大気連通部、第1接続部、第2接続部及び液体流出口の位置や個数、形状等は適宜変更可能であり、同様に、カートリッジにおける第1大気連通部及び液体供給口の位置や個数、形状等も適宜変更可能である。
【0065】
また、使用時におけるニードルと第1大気連通部との接続部分の液密性を高めため、カートリッジの第1大気連通部とサブタンクのニードルとの間にシール部材を介在させるようにすることも可能である。この場合、シール部材は、第1大気連通部の内面あるいは周縁部に設けても良いし、ニードルの周面に設けても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 記録装置
2 記録ヘッド
11 第1貯留室
12 カートリッジ
20 導入管
22 サブタンク
24 ニードル
25 第2大気連通部
26 第2貯留室
50 第1大気連通部
100 液体供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12