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特許7532059容器入り食品および容器入り食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】容器入り食品および容器入り食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240805BHJP
   B65D 85/72 20060101ALI20240805BHJP
   A23L 13/60 20160101ALN20240805BHJP
【FI】
A23L5/00 G
B65D85/72
A23L13/60 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020057346
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021153489
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507152970
【氏名又は名称】公益財団法人東洋食品研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藪川 啓司
(72)【発明者】
【氏名】稲田 有美子
(72)【発明者】
【氏名】井上 竜一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 正一
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-217861(JP,A)
【文献】特開昭61-093023(JP,A)
【文献】特開昭61-015673(JP,A)
【文献】特開2002-068296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘稠性を有し、鉛直断面視が凹状となるように収容容器に充填してある対象食品と、
前記収容容器の開口を密封するフィルム蓋部を有し、
前記収容容器内のヘッドスペースに不活性ガスを充填してあり、
前記対象食品の鉛直断面視の表面形状の凹みが下記の数1の曲線に基づいて規定される容器入り食品。
[数1]
【請求項2】
前記対象食品において、前記収容容器の上面視における中央が最も凹みが深い請求項1に記載の容器入り食品。
【請求項3】
前記対象食品の鉛直断面視の表面形状の凹みが円弧状である請求項1または2に記載の容器入り食品。
【請求項4】
前記収容容器が鉛直断面視で底面にいくほど縮径するテーパ状に形成した樹脂製容器である請求項1~の何れか一項に記載の容器入り食品。
【請求項5】
前記フィルム蓋部が樹脂製または樹脂層を有する積層フィルムとしてある請求項1~の何れか一項に記載の容器入り食品。
【請求項6】
前記不活性ガスが炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも何れか一方を含む請求項1~の何れか一項に記載の容器入り食品。
【請求項7】
粘稠性を有する対象食品を収容容器に充填する充填工程と、
前記対象食品の鉛直断面視が凹状となるように成形する表面処理工程と、
不活性ガスを前記収容容器内に噴出して前記収容容器内のガスを前記不活性ガスに置換するガス置換工程と、
前記対象食品を収容した収容容器の開口をフィルム蓋部によって密封する密封工程と、を有し、
前記対象食品の鉛直断面視の凹状は、下記の数1の曲線に基づいて規定された円弧状となるように成形する容器入り食品の製造方法。
[数1]
【請求項8】
前記表面処理工程における前記対象食品の成形を杵型によって行う請求項に記載の容器入り食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容容器に充填してある対象食品と、当該収容容器の開口を密封するフィルム蓋部を有する容器入り食品、および、当該容器入り食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、食品を収容した収容容器の開口部を、シート状のシール蓋により密封シールして製造される容器入り食品が記載してある。
【0003】
また、特許文献2には、収容容器に食品を充填した後、収容容器内のヘッドスペースのガスを置換することが記載してある。ガス置換は、窒素ガス、炭酸ガス又はこれらの混合ガスなどを使用して行われることが記載してある。このように、収容容器内のヘッドスペースのガスを置換することで、食品の劣化を防ぎ、加熱殺菌後、長期間保存することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-271935号公報
【文献】特開平10-310106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献2のように、収容容器内のヘッドスペースのガス置換を窒素ガスで行った場合、収容容器の開口部をシート状のシール蓋によって密封した後、一定期間経過後に当該シール蓋が波打つ虞があり、容器入り食品の外観に問題が生じることがあった。
【0006】
一方、収容容器内のヘッドスペースのガス置換を炭酸ガスで行った場合、収容容器の開口部をシート状のシール蓋によって密封した後、一定期間経過後に当該シール蓋が波打つことは殆どなかった。しかし、炭酸ガスは対象食品に吸収されることがあり、また、積層フィルム中にアルミニウム箔を含まない樹脂製積層フィルム等から成るシール蓋や、収容容器のうち樹脂で構成された部分を透過して収容容器の外部に散逸することがあった。このような吸収や散逸が生じると、収容容器の内圧が低下する。このとき、内圧の低下に伴ってシール蓋が対象食品の側に湾曲し、対象食品と接触して対象食品を押圧する虞があった。当該対象食品が例えば粘稠性の食品である場合、シール蓋に押圧されることによって対象食品が含有する水分(液体)が対象食品の表面に滲出する虞があった(離水の発生)。
【0007】
このように、対象食品から離水が発生すると、容器入り食品のシール蓋を開封したときの見た目を損ない、また、食感や味が本来の対象食品とは異なってしまうという問題点があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、対象食品からの離水が発生し難い容器入り食品、および、容器入り食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る容器入り食品の第一特徴構成は、粘稠性を有し、鉛直断面視が凹状となるように収容容器に充填してある対象食品と、前記収容容器の開口を密封するフィルム蓋部を有し、前記収容容器内のヘッドスペースに不活性ガスを充填してあり、前記対象食品の鉛直断面視の表面形状の凹みが下記の数1の曲線に基づいて規定された点にある。
【0010】
[数1]
【0011】
本構成によれば、鉛直断面視の表面形状が凹む部位を有するように対象食品を収容容器に充填する。容器入り食品を製造した後の所定時間経過後に、不活性ガスの吸収や散逸が生じると容器の内圧が低下するが、このとき、フィルム蓋部が対象食品の側に湾曲することが考えられる。しかし、上記のように構成すれば、対象食品における表面形状が凹む部位と、フィルム蓋部の湾曲態様とを略一致させることができるため、前記所定時間経過後に、対象食品およびフィルム蓋部の最下点付近が接触するのを回避し易くなる。
【0012】
従って、本発明の容器入り食品では、前記所定時間経過後にフィルム蓋部が対象食品と接触して押圧し難くなるため、対象食品が含有する水分が対象食品の表面に滲出する離水の発生を防止することができる。これにより、容器入り食品を長期にわたって保存した場合であっても離水が発生し難い容器入り食品となり、容器入り食品のフィルム蓋部を開封したときの見た目を損ない難い。また、対象食品が含有する水分の離水を防止できることにより、対象食品の食感や味が本来とは異なってしまうことも未然に防止することができる。
【0013】
後述の実施例において、容器入り食品を製造した後の所定時間経過後のフィルム蓋部の形状を上記の数1の曲線に基づいて規定することができると認められている。従って、当該数1の曲線に基づいて算出されたフィルム蓋部の形状(予定形状)に対して、所望の間隔を空けて、当該予定形状に沿うように対象食品の鉛直断面視の表面を凹状に成形できれば、前記所定時間経過後に、対象食品およびフィルム蓋部が接触するのを回避することができる。
【0014】
本発明に係る容器入り食品の第二特徴構成は、前記対象食品において、前記収容容器の上面視における中央が最も凹みが深い点にある。
【0015】
本構成によれば、前記所定時間経過後に、対象食品およびフィルム蓋部が接触するのを確実に回避し易くなる。
【0016】
本発明に係る容器入り食品の第三特徴構成は、前記対象食品の鉛直断面視の表面形状の凹みを円弧状とした点にある。
【0017】
本構成によれば、対象食品の鉛直断面視の表面形状の凹みを単純な形状の円弧状に規定することで、当該表面形状を容易に形成することができる。
【0018】
本発明に係る容器入り食品の第四特徴構成は、前記収容容器を鉛直断面視で底面にいくほど縮径するテーパ状に形成した樹脂製容器とした点にある。
【0019】
このような樹脂製容器は、例えば各樹脂製容器を積層して保管し易いなどの理由から広く流通している。そのため、本構成によれば、多くの樹脂製容器に本発明を実施できるため、本発明を広く適用することができる。
【0020】
本発明に係る容器入り食品の第五特徴構成は、前記フィルム蓋部を樹脂製または樹脂層を有する積層フィルムとした点にある。
【0021】
本構成によれば、例えば周縁を例えばヒートシールを使用して収容容器の開口に溶着させることによって当該開口を密封することができるフィルム蓋部を使用することができる。
【0022】
本発明に係る容器入り食品の第六特徴構成は、前記不活性ガスが炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも何れか一方を含む点にある。
【0023】
本構成によれば、ヘッドスペースのガスを不活性ガスに置換することで、対象食品の劣化を防ぎ、加熱殺菌後、長期間保存することができる。
【0024】
本発明に係る容器入り食品の製造方法の第一特徴構成は、粘稠性を有する対象食品を収容容器に充填する充填工程と、前記対象食品の鉛直断面視が凹状となるように成形する表面処理工程と、不活性ガスを前記収容容器内に噴出して前記収容容器内のガスを前記不活性ガスに置換するガス置換工程と、前記対象食品を収容した収容容器の開口をフィルム蓋部によって密封する密封工程と、を有し、前記対象食品の鉛直断面視の凹状を、下記の数1の曲線に基づいて規定された円弧状となるように成形する点にある。
【0025】
[数1]
【0026】
本構成によれば、鉛直断面視の表面形状が凹む部位を有するように対象食品を収容容器に充填した容器入り食品を製造することができる。
【0027】
また、本構成によれば、当該数1の曲線に基づいて算出されたフィルム蓋部の形状(予定形状)に対して、所望の間隔を空けて、対象食品の鉛直断面視の凹状を当該予定形状に沿うように円弧状に成形できる。このように本構成であれば、対象食品とフィルム蓋部の間を適切な間隔に調整することができる。
【0028】
本発明に係る容器入り食品の製造方法の第二特徴構成は、前記表面処理工程における前記対象食品の成形を杵型によって行う点にある。
【0029】
本構成によれば、対象食品の表面に杵型を下降させて杵型の下端面を対象食品の表面に押しつけ、当該鉛直断面視が凹状となる表面形状を簡便に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態の容器入り食品を示す断面図である。
図2】実施形態の容器入り食品の製造工程を示す流れ図である。
図3】表面処理工程の概要を示す図である。
図4】実施例1-1~1-3および比較例1における容器入り食品の断面概略図である。
図5】実施例1-1~1-3における容器入り食品の対象食品の断面写真図である。
図6】実施例1-1~1-3,比較例1,2における離水量(重量%)の結果を示したグラフである。
図7】実施例2における検証用容器のフィルム蓋部を測定した結果を示したグラフである。
図8】実施例2-1における実測値および理論値を示したグラフである(P=90)。
図9】実施例2-2,2-3における実測値および理論値を示したグラフである(P=80,70)。
図10】実施例3において、横幅および縦幅のそれぞれについて理論値を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示したように、本発明の容器入り食品Xは、粘稠性を有し、鉛直断面視が凹状となるように収容容器10に充填してある対象食品1と、収容容器10の開口11を密封するフィルム蓋部12を有し、収容容器10内のヘッドスペース13に不活性ガス14を充填してある。
【0032】
対象食品1は、粘稠性を有する粘りがあり高密度な食品であればよく、例えば挽肉、畜肉加工品、ベビーフード、クリーム、バター、ペースト、パテおよび味噌等が例示されるが、これらに限定されるものではない。また、これらの食品には、予め所望の調味料やゲル化剤などを混合させておいてもよい。
【0033】
対象食品1は、鉛直断面視が凹状となるように収容容器10に充填してある。即ち、鉛直断面視の表面形状1aが凹む部位を有するように対象食品1を収容容器10に充填すればよい。前記表面形状1aの凹む部位は、対象食品1の鉛直断面視が例えば平坦状となる通常充填の場合に比べて、収容容器10の下部に向けて凹状となる領域のことである(図4参照)。このように、本発明における「鉛直断面視の表面形状1aが凹む部位」とは、容器入り食品Xを製造した後の所定時間経過後に、対象食品1およびフィルム蓋部12が接触するのを回避できる程度の凹みを形成できるようにしたものである。
【0034】
前記所定時間経過後に、不活性ガス14の吸収や散逸が生じるとヘッドスペース13の内圧が低下するが、このとき、フィルム蓋部12が対象食品1の側に湾曲することが考えられる。しかし、上記のように構成すれば、対象食品1における表面形状が凹む部位と、フィルム蓋部12の湾曲態様とを略一致させることができるため、前記所定時間経過後に、対象食品1およびフィルム蓋部12の最下点付近が接触するのを回避し易くなる。
【0035】
好ましくは、対象食品1は、収容容器10の上面視における中央が最も凹みが深くなるように収容容器10に充填することが好ましい。前記所定時間経過後のフィルム蓋部12の湾曲は、フィルム蓋部12の断面視においてその両端が固定された状態で湾曲するため、収容容器10の上面視における中央が最も大きくなると考えられる。そのため、本構成では、前記所定時間経過後に、対象食品1およびフィルム蓋部12が接触するのを確実に回避し易くなる。対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aの詳細については後述する。
【0036】
収容容器10は、常温流通やチルド流通ができる態様であり、実用強度がある成形容器であればよい。また、収容容器10は、加熱殺菌に耐えうる耐熱性や酸素ガスを遮断するバリア性を有してもよい。その容器の態様は、例えばフィルム蓋部12を例えばヒートシールを使用して密封できるように構成すればよい。
【0037】
このような収容容器10は、例えば単体の材料(例えば樹脂)で作製するのは勿論のこと、複数の樹脂を積層し作製することもできる。樹脂としては、オレフィン系やポリエステルなどの熱可塑性樹脂および生分解性樹脂など、食品に使用できる公知の樹脂を使用することができる。オレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ポリプロピレン共重合体、ポリブテン-1、或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート或いはこれらのブレンド物が挙げられる。また、ポリスチレンなどの樹脂も使うことができる。これら熱可塑性樹脂は、リサイクル材を用いてもよい。また、生分解性樹脂としては、微生物系(バクテリアやカビ、藻類などの微生物が、代謝の過程で体内に蓄積したポリエステルを利用するタイプで、バイオポリエステルなどの脂肪族ポリエステル類、バクテリアセルロース、プルランやカードランなどの微生物多糖が含まれる)、天然物系(キトサン、セルロース、澱粉、酢酸セルロース、澱粉などを変性して熱可塑性を与えたもの)、化学合成系(化学的・生物学的に合成されたモノマーを重合することにより得られるもの)等が挙げられる。
【0038】
更に、ガスバリアー性および酸素吸収能を付加するために、ガスバリアー性樹脂もしくは、ガスバリアー性樹脂と酸素吸収性樹脂を積層することもできる。ガスバリアー性樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体、MXD6ナイロン等を挙げることができる。酸素吸収性樹脂としては、鉄、アスコルビン酸等の酸素吸収剤と反応促進剤を含む樹脂もしくは、主鎖或いは側鎖に脂肪族性の炭素・炭素二重結合を有する重合体等の酸化性重合体と酸化開始剤を含む樹脂が挙げられる。収容容器10の容積は特に限定されるものではないが、50~600mL程度であればレトルト殺菌の際に扱い易い。
【0039】
このような収容容器10は、例えばカップ、トレー、パウチなどの樹脂性容器の場合は、食品側の最内層にはポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂層、外側にはポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなど)等といった樹脂層を、接着剤を介して若しくは共押出により積層加工して作製するのがよいが、このような態様に限定されるものではない。前記樹脂層に替えて、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などに、ケミカルベーパーデポジション(CVD)や真空蒸着法などの公知の方法により、シリコンオキサイド等の無機物、アルミナ等のセラミック、カーボン等を蒸着することにより形成される蒸着層としてもよいし、或いは公知のバリア性樹脂コーティング剤から成るコーティング層とした酸素バリア材や、公知の易引裂き性樹脂層としてもよい。
【0040】
また、収容容器10は樹脂以外に紙も使用した場合は、基本的には最内層に樹脂を積層する形となるため、密封方法は樹脂製の収容容器10と同様に、フィルム蓋部12をヒートシールとすればよい。また、金属製の缶の最内面に樹脂を被覆し、同様にフィルム蓋部12をヒートシールしてもよい。
【0041】
収容容器10は、フィルム蓋部12を溶着するためのフランジ部15を有しており、鉛直断面視で底面にいくほど縮径するテーパ状に形成した樹脂製容器とすることにより積層(スタッキング)が可能となり流通や保管時の利便性が増すため好ましいが、このような態様に限定されるものではない。また、樹脂製容器の形状は、上面視が円形或いは角形を呈する容器など、種々の形状を呈する容器を使用することができる。前記樹脂製容器は、例えば各樹脂製容器を積層して保管し易いなどの理由から広く流通している。そのため、多くの樹脂製容器に本発明を実施できるため、本発明を広く適用することができる。
【0042】
フィルム蓋部12は、収容容器10の開口11を密封できるフィルムであればよく、密封方法は接着、溶着など公知の方法を用いることができる。例えば、当該フィルム蓋部12を樹脂製のフィルムで形成し、その周縁をフランジ部15でヒートシールして収容容器10の開口11に溶着させることによって、当該開口11を密封することができる。この場合、フィルム蓋部12はポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)などの樹脂製を用いれば、材質は特に限定されるものではない。
【0043】
或いは、フィルム蓋部12を、樹脂層を有する積層フィルムとしてもよい。この場合、例えばPET、PP、ポリアミド樹脂などの樹脂層や、アルミニウム等の金属蒸着層、アルミニウム箔、紙等を有するように構成することができる。具体的には、フィルム蓋部12を、外層からPET、アルミニウム箔、CPP(無延伸ポリプロピレン)の順に積層して形成する、或いは、PET、アルミニウム箔、ポリアミド樹脂、CPPの順に積層して形成するとよいが、これらの態様に限定されるものではない。フィルム蓋部12を、樹脂層を有する積層フィルムとした場合も、その周縁を例えばヒートシールを使用して収容容器10の開口11に溶着させることによって、当該開口11を密封することができる。
【0044】
本発明の容器入り食品Xは、対象食品1とフィルム蓋部12との間に形成される収容容器10内のヘッドスペース13に不活性ガス14を充填してある。
【0045】
不活性ガス14は、例えば炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも何れか一方を含むものとすればよいが、これらに限定されるものではなく、炭酸ガスおよび窒素ガスの混合ガスなどの不活性ガスであってもよい。このような気体を気体供給装置よりシリンジなどを介してヘッドスペース13に充填し、その後、収容容器10を密封する。当該ヘッドスペース13のガスを不活性ガス14に置換することで、対象食品1の劣化を防ぎ、加熱殺菌後、長期間保存することができる。
【0046】
対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aについては、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aの凹みが円弧状となるようにしてもよい。本構成では、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aの凹みを単純な形状の円弧状に規定することで、当該表面形状を容易に形成することができる。当該円弧を規定する直径は、例えば収容容器10の開口直径より大きい寸法にする等、種々の寸法に設定することができる。
【0047】
また、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aの凹みは、下記の数1の曲線に基づいて規定する
【0048】
[数1]
【0049】
フィルム蓋部12は収容容器10内の方向に一様に力を受けているため、その側面視の湾曲形状は、例えば、両端を固定されて重力を受けている電線等の側面視の湾曲形状と同じような形になると考えられる。この理由としては、フィルム蓋部12は側面視においてその両端をヒートシール等により固定されており、内圧低下時にフィルム蓋部12は、その全体に亘って一様に同じ方向から作用力(大気圧、重力)を受けて湾曲する。そのため、上述した電線等と同様に湾曲した形状を呈すると考えられる。このような電線等の側面視の形状(懸垂曲線)は、カテナリー曲線で表されることが知られている。
【0050】
例えば座標(0,a)を頂点とするカテナリー曲線は、「f(x)=a×cosh(x/a)」で表され、y=f(x)としてy方向にずらすと「f(x)=a×cosh(x/a)+b」のように表すことができる。ここでy=0となる座標2点を(W/2,0),(-w/2,0)とする。wは収容容器10の口径に相当し、ヘッドスペース13の内圧が低下によって湾曲変形したフィルム蓋部12の最深部位置を(0,c)とする。cはフィルム蓋部12の中央の凹み深さの負の値であり、b=c-1となる。減圧した時のフィルム蓋部12の中央部を通る断面形状をf(x)とすると、断面の両端が(-w/2,0),(w/2,0)でcを通るため、当該断面形状は上記の数1の曲線で表すことができる。このように、収容容器10の口径wおよび湾曲変形時のフィルム蓋部12の中央部の凹み深さc(負の値)を測定することで、容器入り食品Xを製造した後の所定時間経過後のフィルム蓋部12の形状が計算によって規定することができる。
【0051】
従って、容器入り食品Xを製造した後の所定時間経過後に、対象食品1およびフィルム蓋部12が接触するのを回避するためには、収容容器10に充填するときの対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aを、前記所定時間経過後のフィルム蓋部12に接触しないように、上記の数1の曲線に基づいて規定すればよいこととなる。例えば、当該数1の曲線に基づいて算出されたフィルム蓋部12の形状(予定形状)に対して、所望の間隔を空けて、当該予定形状に沿うように対象食品1の鉛直断面視の表面を凹状に成形できれば、前記所定時間経過後に、対象食品1およびフィルム蓋部12が接触するのを回避することができる。対象食品1の形状は、上述の数1の曲線に基づいて規定されたフィルム蓋部12の形状(予定形状)と完全に一致させることは難しく、多少の凹凸のばらつきが生じることが考えられる。しかし、前記所望の間隔を例えば数ミリ(3~6mm)程度とすることで、充填後の対象食品1の形状のばらつきがあった場合でもフィルム蓋部12との接触が回避されるため好ましい。
【0052】
以上より、本発明の容器入り食品Xでは、前記所定時間経過後にフィルム蓋部12が対象食品1と接触して押圧し難くなるため、対象食品1が含有する水分が対象食品1の表面に滲出する離水の発生を防止することができる。これにより、容器入り食品Xを長期にわたって保存した場合であっても離水が発生し難い容器入り食品Xとなり、容器入り食品Xのフィルム蓋部12を開封したときの見た目を損ない難い。また、対象食品1が含有する水分の離水を防止できることにより離水によって硬くなってしまうことを防ぐなど、食感や味が本来の対象食品1とは異なってしまうことも未然に防止することができる。
【0053】
仮に、前記所定時間経過後にフィルム蓋部12の最下点付近が対象食品1の一部と接触して押圧した場合であっても、本発明の容器入り食品Xでは、対象食品1は鉛直断面視が凹状となるように収容容器10に充填してあるため、通常充填の場合に比べて対象食品1の表面に滲出する離水の発生量を少なくすることができる。
【0054】
本発明の容器入り食品の製造方法は、粘稠性を有する対象食品1を収容容器10に充填する充填工程01と、対象食品1の鉛直断面視が凹状となるように成形する表面処理工程02と、不活性ガス14を収容容器10内に噴出して収容容器10内のガスを不活性ガス14に置換するガス置換工程03と、対象食品1を収容した収容容器10の開口をフィルム蓋部12によって密封する密封工程04と、を有する(図2)。
【0055】
充填工程01では、生の挽肉などの粘稠性を有する対象食品1を収容容器10に充填する。当該充填は例えば充填ノズルを介して行うとよいが、このような態様に限定されず公知の方法を用いればよい。
【0056】
対象食品1を収容容器10に充填した後、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aが凹状となるように成形する表面処理工程02を行う(図3)。この成形は、例えば対象食品1を押圧する杵型20によって行うことができるが、このような態様に限定されるものではなく、ヘラ等を使用して手作業で行ってもよい。本実施形態では杵型20を使用する場合について説明する。
【0057】
例えば充填ノズル21を介して対象食品1を収容容器10に充填した場合、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aは平坦ではなく凸状(上面視における中央が最も凸状が高くなる)を呈している場合が多い。このとき、対象食品1の表面に杵型20を下降させて杵型20の下端面を対象食品1の表面に押しつけ、当該鉛直断面視が凹状となるように表面形状を成形する。対象食品1の表面に押し付ける杵型20の下端面は、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aに対応する形状となっている。例えば、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aの凹みが円弧状である場合、杵型20の下端面の鉛直断面視の表面形状1aは円弧状に凸状となった形状を呈している。また、対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aの凹みが上記の数1の曲線に基づいて規定される場合、杵型20の下端面は、数1の曲線に基づいて規定される形状を呈している。
【0058】
表面処理工程02の後、収容容器10内のガスを不活性ガス14に置換するガス置換工程03を行う。不活性ガス14は、例えば炭酸ガスおよび窒素ガスの少なくとも何れか一方を含むものとすればよいが、これらに限定されるものではなく、炭酸ガスおよび窒素ガスの混合ガスなどの不活性ガスであってもよい。このような気体を気体供給装置よりシリンジなどを介して収容容器10内に噴出する。
【0059】
ガス置換工程03の後、収容容器10の開口をフィルム蓋部12によって密封する密封工程04を行う。このような密封は、例えばフィルム蓋部12が樹脂製のフィルムで形成してある場合は、ヒートシールによりその周縁を収容容器10の開口11に溶着させることによって行うことができるが、このような態様に限定されるものではない。
【0060】
密封工程04の後、収容容器10を加熱して殺菌する殺菌工程05を行う。当該殺菌工程05は、容器入り食品の調理としての加工や、定められた期間・条件での流通などを目的とする。対象食品1が例えば生の挽肉である場合は、殺菌工程05における加熱によって調理を行うことができる。殺菌工程05は、例えば、常温流通が目的であれば耐熱菌も殺菌できる条件とすればよい。
【0061】
殺菌工程05で行う殺菌はレトルト殺菌処理とするのがよいが、これに限定されるものではない。レトルト殺菌処理とは、加圧加熱処理をいい、耐熱性容器に充填した製品を品温上昇に伴う製品の内圧で容器が破損しないように加圧しながら、110℃~130℃程度の蒸気又は熱水で10~50分間程度加熱し、少なくともF値=3.1分以上となるように処理することをいう。レトルト殺菌処理は、バッチ式レトルト殺菌装置、連続式レトルト殺菌装置を用いることができ、殺菌工程05は、例えば熱水式の加圧加熱殺菌機や加圧式の圧力釜等を用いるとよい。
【実施例
【0062】
〔実施例1〕
本発明の容器入り食品の製造方法によって、容器入り食品Xを作製する場合の実施態様を以下に説明する。
【0063】
対象食品1は、豚モモ肉4000g、塩108g、κ-カラギーナン17g(ゲル化剤:三晶株式会社製)、タピオカ澱粉116g(ゲル化剤:三和澱粉工業株式会社製)、豚背油1168g、水400gを混合し、粘稠性を有する食品を調製した。この対象食品1を、収容容器10である上面視が円形のオキシガードカップ(LRX84-105W、開口直径73mm、東洋製罐株式会社製)に充填ノズル21を使用して充填した(充填工程01)。各容器の充填量は77gとなるように調製した。
【0064】
充填工程01の後、対象食品1の表面を杵型20によって押圧して対象食品1の表面形状を成形した(表面処理工程02)。杵型20は、対象食品1の表面が通常充填時(収容容器10のフランジ部15からの距離H(図4)が6mmの位置)の平坦な表面(D(0))から所定の距離(深さD)を有するように、収容容器10の上面視における中央が最も凹みが深くなるように、予め作製したものを使用した。このとき、杵型20の下端面の鉛直断面視の表面形状1aは、円弧状に凸状となった形状を呈したものを使用した。凹みの深さDは、6mm(実施例1-1:D(6))、11mm(実施例1-2:D(11))、16mm(実施例1-3:D(16))とした(図4,5)。
【0065】
表面処理工程02の後、不活性ガス14である100%炭酸ガスを気体供給装置よりシリンジを介して収容容器10内に噴出した(ガス置換工程03)。
【0066】
ガス置換工程03の後、収容容器10の開口をフィルム蓋部12によってヒートシールにて密封した(密封工程04)。フィルム蓋部12は、外層からPET(9μm)、アルミニウム(20μm)、CPP(30μm)の順に積層して形成してある積層フィルム(東洋製罐株式会社製)を使用した。ヒートシールは熱封緘装置(SN-2S型:シンワ機械製)によって行った。
【0067】
密封工程04の後、収容容器10を加熱して121℃、20分のレトルト殺菌処理を行った(殺菌工程05)。
【0068】
このように、本発明の容器入り食品の製造方法によって、収容容器10の上面視における中央が最も凹みが深くなるように対象食品1を収容容器10に充填した容器入り食品Xを作製することができた。
【0069】
上記で作製した容器入り食品X(実施例1-1~1-3)において、離水の有無を調べた(N=3)。また、比較例として、通常充填時の平坦な表面D(0)を有する場合(比較例1)、および、鉛直断面視の表面形状1aが通常充填時の平坦な表面D(0)から6mmの凸状を呈する場合(比較例2:D(-6))のそれぞれについて離水の有無を調べた。離水の有無は、作製して後述する所定時間経過後の容器入り食品Xのヘッドスペース13に存在する水を離水と判断した。
【0070】
作製した容器入り食品Xを30℃-80%RHの条件で二か月保存した後、フィルム蓋部12を半分程度開封し、収容容器10を逆さまにして5分程度静置して収容容器10内の離水を採取し、離水の重量を測定した。表1および図6に離水量(重量%)の結果を示した。
【0071】
【表1】
【0072】
この結果、実施例1-1(D(6))~実施例1-3(D(16))では離水量は0.26~1.86%であり、凹みの深さDが大きくなるほど離水量が減少することが判明した。これより、凹みの深さDが大きくなるほど所定時間(二か月)経過後にフィルム蓋部12が対象食品1を押圧し難いため、対象食品1が含有する水分が対象食品1の表面に滲出する離水の発生を防止することができると認められ、対象食品1が硬くなることも防げていた。
【0073】
一方、比較例1(D(0))では離水量は2.94%以上であり、実施例1-1~実施例1-3より離水量が1.58~11.3倍も増加することが判明した。また、比較例2では離水量は3.81%以上であり、実施例1-1~実施例1-3より離水量が2.04~14.6倍も増加することが判明した。特に比較例2(D(-6))は鉛直断面視の表面形状1aが6mmの凸状を呈し、保存期間中にフィルム蓋部12が対象食品1を押圧し易い形状となっているため離水量が大幅に増加したと認められた。また、比較例1,2は、実施例1-1~1-3と比べて硬くなっていた。
【0074】
尚、上記の容器入り食品Xは不活性ガス14を炭酸ガスとしたが、これに替えて不活性ガス14を窒素ガスとした場合、および、炭酸ガスおよび窒素ガスの混合気体とした場合であっても同様の結果が得られた(結果は示さない)。
【0075】
〔実施例2〕
対象食品1の鉛直断面視の表面形状1aの凹みを、カテナリー曲線に基づいた上記の数1の曲線に基づいて規定する場合の容器入り食品Xについて、考察した。
【0076】
容器入り食品Xを製造した後の所定時間経過後にヘッドスペース13の内圧が低下すると、フィルム蓋部12が対象食品1の側に湾曲する。このときのフィルム蓋部12の形状を上記の数1の曲線に基づいて規定することができるかどうかを、前記所定時間経過後にフィルム蓋部12を実測することにより検証した。本検証では対象食品1の代わりに水を充填し、フィルム蓋部12によって密封した検証用容器を使用した。当該検証用容器に収容される収容物が水であっても、フィルム蓋部12は対象食品1を収容した場合と同様の挙動(充填した水の側に湾曲)を示すと考えられる。従って、本検証で使用する検証用容器は、対象食品1の代わりに水を充填したこと以外は、上記の容器入り食品の製造方法に準じた方法を適用して作製した。
【0077】
水を充填する容器として、上面視が円形のプラスチックカップLRX84-105W(直径73mm、深さ32mm:東洋製罐株式会社製)に水80gを充填した後、不活性ガス14として炭酸ガス:窒素ガス=90:10の混合ガス(P=90)で、ヘッドスペース13の気体を置換しながら、フィルム蓋部12(20μmPET/7μmアルミ箔/70μmCPP)を上記の熱封緘装置でヒートシールし、上記の殺菌工程05を行って容器入り食品Xを模した検証用容器を作製した。
【0078】
この検証用容器のフィルム蓋部12の湾曲の態様を、コントレーサーCV-2100M4(株式会社ミツトヨ製)を使用して測定した。具体的には、フィルム蓋部12の上面を掃引し、縦方向(深さ方向)位置xおよび横方向位置yを記録した。結果を図7に示した。
【0079】
図7(a)における二つの黒矢印は、ヒートシールした検証用容器の開口部分であり、このシール位置は容器内径とほぼ等しく、最も盛り上がるためこれら黒矢印の縦方向位置xは最大値となっていた。図7(b)は、図7(a)における二つの黒矢印から容器中心部側に向けて均等に移動させた中央付近をゼロとして変換したグラフである。
【0080】
最も高い位置(黒矢印位置)の中心をゼロ点とし、フィルム蓋部12の中央部の凹み深さをc(負の値)として、上記の数1の計算を行って得られた値を理論値として図8に実線でプロットした(P=90:実施例2-1)。
【0081】
この結果、実測値(破線)と理論値(実線)とのそれぞれの曲線形状はよく似たものとなった。これらの曲線の一致度は、以下の数2の式に基づいて算出した。
この式は、ズレ比率の定義式(参考文献「温度履歴曲線の相似関係によるATS法の理論的課題の解明」向井勇,朱政治,日本食品工学会誌Vol.16、NO.3,pp209-217,Sep.2015)に基づいて導いたものである。
【0082】
[数2]
【0083】
数2において、nはデジタルデータの個数、iはその理論値および実測値の順番を示し、i=1~nまで積算してからnで割る。
【0084】
この結果、上記の曲線の一致度は、92.1%と算出された。従って、容器入り食品Xを製造した後の所定時間経過後のフィルム蓋部12の形状を上記の数1の曲線に基づいて規定することができると認められた。
【0085】
また、不活性ガス14の組成を、炭酸ガス:窒素ガス=80:20の混合ガス(P=80)、或いは、炭酸ガス:窒素ガス=70:30の混合ガス(P=70)に変更したこと以外は上記の検証用容器と同様の手法で作製した検証用容器のそれぞれにおいて、上記と同様に実測値および理論値のグラフをプロットし、その結果を図9に示した(実施例2-2,2-3)。
【0086】
これら実施例2-2,2-3の結果においても、実測値(破線)と理論値(実線)とのそれぞれの曲線形状はよく似たものとなった。これらの場合においても実測値および理論値の曲線の一致度は、上記の数2の式に基づいて算出した。この結果、上記の曲線の一致度は、P=80の場合が86.9%、P=70の場合が95.0%、と算出された。従って、不活性ガス14の組成を種々変更した場合であっても、容器入り食品Xを製造した後の所定時間経過後のフィルム蓋部12の形状を上記の数1の曲線に基づいて規定することができると認められた。
【0087】
従って、当該数1の曲線に基づいて算出されたフィルム蓋部12の形状(予定形状)に対して、所望の間隔を空けて、当該予定形状に沿うように対象食品1の鉛直断面視の表面を凹状に成形できれば、前記所定時間経過後に、対象食品1およびフィルム蓋部12が接触するのを回避することができる。
【0088】
〔実施例3〕
実施例2では、上面視が円形のプラスチックカップを使用して検証したが、本実施例では上面視が角形のプラスチックカップ(LRX121×84-165W、横幅102mm、縦幅66mm、深さ8mm:東洋製罐株式会社製)を使用して、実施例2と同様の検証を行った。
【0089】
具体的には、横幅についてフィルム蓋部12の上面を掃引し、縦方向(深さ方向)位置xおよび横方向位置yを記録した。縦幅についても同様に縦方向(深さ方向)位置xおよび横方向位置yを記録した。また、実施例2と同様に、上記の数1の計算を行って得られた値を理論値として、横理論値および縦理論値のそれぞれを図10に実線でプロットした。
【0090】
この結果、横幅および縦幅のそれぞれにおいて、実測値と理論値とのそれぞれの曲線形状はよく似たものとなった(実測値は示さない)。これらの曲線の一致度は、上記の数2の式に基づいて算出した。この結果、上記の曲線の一致度は、横幅が88%、縦幅が92%と算出された。従って、角形のプラスチックカップの場合であっても、容器入り食品Xを製造した後の所定時間経過後のフィルム蓋部12の形状を上記の数1の曲線に基づいて規定することができると認められた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、収容容器に充填してある対象食品と、当該収容容器の開口を密封するフィルム蓋部を有する容器入り食品、および、当該容器入り食品の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0092】
X 容器入り食品
1 対象食品
10 収容容器
12 フィルム蓋部
13 ヘッドスペース
14 不活性ガス
15 フランジ部
01 充填工程
02 表面処理工程
03 ガス置換工程
04 密封工程

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10