IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

特許7532066電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置
<>
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図1
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図2
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図3
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図4
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図5
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図6
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図7
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図8
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図9
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図10
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図11
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図12
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図13
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図14
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図15
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図16
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図17
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図18
  • 特許-電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/289 20210101AFI20240805BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/249
H01M50/264
H01M50/291
H01M50/503
H01M50/507
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/262 E
H01M10/44 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020064061
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163629
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小島 康雅
(72)【発明者】
【氏名】森下 大樹
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065055(JP,A)
【文献】特開2016-091800(JP,A)
【文献】特開2018-170254(JP,A)
【文献】特開2015-149281(JP,A)
【文献】特開2014-003008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶の上面に電極端子を有する電池セルを複数積層した電池積層体と、
前記複数の電池セル同士の間に介在される、絶縁性を有する複数の絶縁スペーサと、
前記電池積層体の端面を覆うエンドプレートと、
前記電池積層体を締結する締結部材と、
隣接する電池セルの前記電極端子同士を接続する、複数のバスバーと、
を備え、
隣接する電池セル同士の間で、前記電極端子同士を接続するバスバーと、前記バスバーの下面で、前記電池セル同士の間に介在された前記絶縁スペーサとの間に、位置決め機構を設けており、
前記位置決め機構は、
前記バスバーに開口された環状の開口部と、
前記絶縁スペーサに形成された、前記環状の開口部に挿通される突起部と
で構成されてなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、さらに、
前記複数のバスバーを保持するバスバーホルダ
を備え、
前記バスバーは、前記バスバーホルダを介して、前記位置決め機構でもって位置決めされてなる電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、さらに、
前記エンドプレート同士で押圧する押圧前の押圧厚さを調整する弾性体を備えてなる電源装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記環状の開口部が、丸穴状に開口されてなる電源装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記電極端子が、前記外装缶の上面から突出する突出量が5mm以下である電源装置。
【請求項6】
外装缶の上面に電極端子を有する電池セルを複数積層した電池積層体と、
前記複数の電池セル同士の間に介在される、絶縁性を有する複数の絶縁スペーサと、
前記電池積層体の端面を覆うエンドプレートと、
前記電池積層体を締結する締結部材と、
隣接する電池セルの前記電極端子同士を接続する、複数のバスバーと、
を備え、
隣接する電池セル同士の間で、前記電極端子同士を接続するバスバーと、前記バスバーの下面で、前記電池セル同士の間に介在された前記絶縁スペーサとの間に、位置決め機構を設けており、
前記位置決め機構は、
前記バスバーに開口された開口部と、
前記絶縁スペーサに形成された、前記開口部に挿通される突起部と
で構成されており、
前記電極端子が、前記外装缶の上面から突出する突出量が5mm以下である電源装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一に記載の電源装置を備える車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一に記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを備える電池モジュールや電池パックなどの電源装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車など車両用の電源や、工場用、家庭用などの蓄電システムの電源などに利用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような電源装置は、充放電可能な複数の電池セルを複数枚積層している。例えば図19の模式断面図に示すように、電源装置900は角型の外装缶の電池セル901を積層した電池積層体910の両側の端面に、それぞれエンドプレート903を配置し、エンドプレート903同士をバインドバー904で締結している。また角形の電池セル901は、その上面に正負の電極端子902を離間して設けている。隣接する電池セル901の電極端子902は、バスバー940で接続される。
【0004】
電池セルを積層した電池積層体は、製造公差等によって同じ枚数であっても積層厚さが異なる。従来は、電池積層体の積層長さが所定の寸法になるまで、両側端面を押圧して締結していた。また締結後に、電池セルの電極端子を電気接続するため、バスバーと溶接していた。
【0005】
この方法では、電池積層体の厚さによって押圧する圧力が異なることになる。一定寸法内で電池積層体を固定できる最小圧力を確保し、かつ電池積層体のばらつきにより過大な圧力に対応するため、電池積層体の端面を覆うエンドプレート等に高強度な部材を用いる必要があり、製品重量大、高コストの要因になっていた。そこで、電池積層体とエンドプレートの間に押し圧力を調整する弾性体を追加することで、押し圧力のばらつきを低減することが考えられる。
【0006】
しかしながら、この方法によれば、電池積層体の積層長さにばらつきが生じることになる。この結果、電池セルの電極と溶接するバスバーの溶接位置が、電池積層体毎に異なってしまうという新たな課題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6344362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様に係る目的の一は、電池セルを複数枚積層した電池積層体において電極端子をバスバーと溶接する際の位置決めを行えるようにした電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様に係る電源装置は、外装缶の上面に電極端子を有する電池セルを複数積層した電池積層体と、前記複数の電池セル同士の間に介在される、絶縁性を有する複数の絶縁スペーサと、前記電池積層体の端面を覆うエンドプレートと、前記電池積層体を締結する締結部材と、隣接する電池セルの前記電極端子同士を接続する、複数のバスバーとを備え、隣接する電池セル同士の間で、前記電極端子同士を接続するバスバーと、前記バスバーの下面で、前記電池セル同士の間に介在された前記絶縁スペーサとの間に、位置決め機構を設けている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様に係る電源装置によれば、絶縁スペーサでもってバスバーの位置決めを行うことが可能となり、バスバーを電池セル毎に電極端子と溶接する溶接位置を規定し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る電源装置を示す斜視図である。
図2図1に示す電源装置の分解斜視図である。
図3図1の電源装置の電極端子部分を示す拡大斜視図である。
図4図3の分解斜視図である。
図5図5A図5Cは、厚さに個体差のある電池セルを同じ数だけ積層しても、電源装置の積層長さにばらつきが生じる状態を示す模式断面図である。
図6】厚さの異なる絶縁スペーサを含む電源装置を示す模式断面図である。
図7】弾性体を含む電源装置を示す模式断面図である。
図8】電極端子がネジ端子である電源装置で電極端子とバスバーの位置決めを行う様子を示す要部拡大図付き模式断面図である。
図9】変形例に係る位置決め機構を示す分解斜視図である。
図10】他の変形例に係る位置決め機構を示す分解斜視図である。
図11】さらに他の変形例に係る位置決め機構を示す分解斜視図である。
図12】本発明の実施形態2に係る電源装置を示す斜視図である。
図13図13に示す電源装置の分解斜視図である。
図14図13の電源装置の電極端子部分を示す拡大斜視図である。
図15図15の分解斜視図である。
図16】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図17】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図18】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
図19】従来の電源装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、以下の構成によって特定されてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る電源装置は、上記構成に加えて、前記位置決め機構が、前記バスバーに開口された開口部と、前記絶縁スペーサに形成された、前記開口部に挿通される突起部とで構成されている。上記構成により、絶縁スペーサの突起部をバスバーの開口部に挿入して、電池セル毎にバスバーの溶接位置を位置決めし易くできる。
【0014】
本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記複数のバスバーを保持するバスバーホルダを備え、前記バスバーは、前記バスバーホルダを介して、前記位置決め機構でもって位置決めされている。上記構成により、絶縁スペーサとバスバーホルダでもってバスバーの位置決めを行うことが可能となり、バスバーを電池セル毎に電極端子と溶接する溶接位置を規定し易くできる。
【0015】
また、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記位置決め機構は、前記バスバーホルダに開口された開口部と、前記絶縁スペーサに形成された、前記開口部に挿通される突起部とで構成されている。上記構成により、絶縁スペーサの突起部をバスバーホルダの開口部に挿入して、電池セル毎にバスバーの溶接位置を位置決めし易くできる。
【0016】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記エンドプレート同士で押圧する押圧前の押圧厚さを調整する弾性体を備えている。
【0017】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記電極端子が、前記外装缶の上面から突出する突出量が5mm以下である。上記構成により、突出量の少ない、電極端子のみでの機械的な位置決めが困難な電池セルに対しても、電極端子の位置決めを行うことが可能となる。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動車両は、上記何れかの電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る蓄電装置は、上記何れかの電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと備えて、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する。
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0021】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
[実施形態1]
【0022】
本発明の実施形態1に係る電源装置100を、図1図2にそれぞれ示す。これらの図において、図1は実施形態1に係る電源装置100の斜視図、図2図1に示す電源装置100の分解斜視図を、それぞれ示している。
【0023】
これらの図に示す電源装置100は、複数の電池セル1を絶縁スペーサ16を介して積層した電池積層体10と、この電池積層体10の両側端面を覆う一対のエンドプレート20と、エンドプレート20同士を締結する複数の締結部材15と、電池積層体10の上面に設けられたバスバー40を備える。
【0024】
締結部材15は、複数の電池セル1の積層方向に沿って延長された板状に形成される。この締結部材15は、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート20同士を締結する。
(電池積層体10)
【0025】
電池積層体10は、図2に示すように、正負の電極端子2を備える複数の電池セル1と、これら複数の電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー40を備える。これらのバスバー40を介して複数の電池セル1を並列や直列に接続している。電池セル1は、充放電可能な二次電池である。電源装置100は、複数の電池セル1が並列に接続されて並列電池グループを構成すると共に、複数の並列電池グループが直列に接続されて、多数の電池セル1が並列かつ直列に接続される。図2に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層して電池積層体10を形成している。また電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート20が配置される。このエンドプレート20同士に、締結部材15の端部を固定して、積層状態の電池セル1を押圧した状態に固定する。
(電池セル1)
【0026】
電池セル1は、図2に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体10としている。電池セル1は、例えば、リチウムイオン二次電池とすることができる。また、電池セルは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等、充電できる全ての二次電池とすることもできる。電池セル1は、密閉構造の外装缶1aに正負の電極板を電解液と共に収容している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板を角形にプレス成形され、開口部分を封口板1bで気密に密閉している。封口板1bは、角型の外装缶1aと同じアルミニウムやアルミニウム合金で、両端部に正負の電極端子2を固定している。さらに、封口板1bは、正負の電極端子2の間に、電池セル1のそれぞれ内部の圧力変化に応じて開弁する安全弁であるガス排出弁1cを設けている。
【0027】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚み方向が積層方向となるように積層されて電池積層体10を構成している。この際、積層数を通常よりも多めにすることで、電池積層体10の高出力化を図ることができる。斯かる場合、電池積層体10は積層方向に延長された長尺のものとなる。電池セル1は、正負の電極端子2を設けている端子面1Xを同一平面に配置して、複数の電池セル1を積層して電池積層体10としている。そして、電池積層体10の上面を、複数の電池セル1のガス排出弁1cを設けた面としている。
(電極端子2)
【0028】
電池セル1は、図2等に示すように天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。電極端子2は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0029】
電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、図2に示すように、電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバー40で接続することで、隣接する電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。なお、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
【0030】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて、電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、図2においては封口板1bが同一平面となるように、複数の電池セル1を積層している。また電池積層体10は、図3の拡大斜視図に示すように、電池積層体10の両側において、隣接する電極端子2を金属板のバスバー40で連結して、電池セル1を直列に接続している。
(バスバー40)
【0031】
バスバー40は、その両端部を正負の電極端子2に接続して、電池セル1を直列に、あるいは並列に接続する。電源装置100は、電池セル1を直列に接続して出力電圧を高くし、電池セル1を直列と並列に接続して、出力電圧と出力電流を大きくできる。
【0032】
電池セル1の正負の電極端子2は、図4の拡大分解斜視図に示すように、接合面2Bを有する端子台と、接合面2Bから突出する突出部2Aとを有している。接合面2Bは、封口板12の表面と平行な平面状としている。また、この接合面2Bの中央部に突出部2Aを設けている。図3に示す電極端子2は、突出部2Aを円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、図示しないが、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0033】
バスバー40は、電極端子2の上に案内することができるように両端部に開口窓62を設けており、各々の開口窓62に、隣接して配設している電池セル1の電極端子2の突出部2Aを案内している。図3図4のバスバー40は、開口窓62を貫通孔として、ここに突出部2Aを挿入している。開口窓62は、電極端子2の突出部2Aを案内できる内径としている。なお、バスバーの開口窓は、必ずしも貫通孔でなくてもよく、電極端子2の突出部2Aを利用してバスバーの位置決めを行うことができる形状であればよい。例えば、開口窓をバスバーの一部を切り欠いて形成される切り欠き部とすることもできる。
【0034】
バスバー40は、図3図4に示すように第一接続部41と、第二接続部51と、これらを連結する連結部49を備えている。これらの部材は、金属板を折曲する等して一体に成形される。またバスバー40は、導電性に優れた部材で構成され、好ましくはアルミニウム製や銅製等とする。
【0035】
第一接続部41は、一方の電池セルの電極端子2(図3等においては左側)に接続される。また第二接続部51は、他方の電池セルの電極端子2(図3等においてはその右側)に接続される。第一接続部41と第二接続部51は、ほぼ平行に隣接される。これにより、封口板がほぼ同一面となるように積層された電池セル集合体の、隣接する電極端子2同士を接続できる。また第一接続部41及び第二接続部51には、開口窓62を形成している。開口窓62を通じて、電極端子2が表出される。
【0036】
また、第一接続部41と第二接続部51は、連結部49を介して接続されている。連結部49は、第一折曲部43と、第一中間部45と、第二折曲部53と、第二中間部55と、第三折曲部47を備えている。第一接続部41と第一中間部45は、第一折曲部43を介して接続されている。また第二接続部51と第二中間部55は、第二折曲部53を介して接続されている。さらに第一中間部45と第二中間部55とは、第三折曲部47を介して接続されている。
【0037】
第一折曲部43は、第一接続部41から第一接続折曲領域42で折曲されており、さらに第一中間部45との間も、第一中間折曲領域44で折曲されている。好ましくは、第一折曲部43と第一接続部41との第一接続折曲領域42も、第一折曲部43と第一中間部45との第一中間折曲領域44も、ほぼ直角に折曲させて、第一接続部41と第一折曲部43と第一中間部45とを階段状に構成する。これらの第一接続部41と第一折曲部43と第一中間部45とを一枚の金属板を折曲して構成し、かつ第一接続部41のみを電池セル1に固定する一方、第一中間部45は固定せずに電池セル1に対して浮かした状態とする。これによって、第一接続部41と第一中間部45との距離が相対的に変化しても、第一折曲部43の第一接続折曲領域42と第一中間折曲領域44が折曲して変形することで、電池セル1の位置ずれを吸収することができる。
【0038】
同様に第二折曲部53も、第二接続部51から第二接続折曲領域52で折曲されており、さらに第二中間部55との間も、第二中間折曲領域54で折曲されている。好ましくは、第二折曲部53と第二接続部51との第二接続折曲領域52も、第二折曲部53と第二中間部55との第二中間折曲領域54も、ほぼ直角に折曲させて、第二接続部51と第二折曲部53と第二中間部55とを階段状に構成する。これらの第二接続部51と第二折曲部53と第二中間部55も一枚の金属板で構成し、かつ第二接続部51側を電池セル1に固定し、第二中間部55を電池セル1に対して固定しないことで、第二接続部51と第二中間部55との相対的な距離の変化を第二折曲部53の第二接続折曲領域52と第二中間折曲領域54で吸収することができる。
【0039】
さらに第一中間部45と第二中間部55との間は、第三折曲部47を介して接続されている。具体的には第一中間部45と第三折曲部47とは、第三中間折曲領域46を介して、また第二中間部55と第三折曲部47とは、第四中間折曲領域56を介して、それぞれ接続されている。第三折曲部47も、好ましくは第一中間部45と第二中間部55と同じ部材、例えば金属板を折曲して構成されている。さらに第三折曲部47は、垂直断面視においてU字状に形成されており、この部分が変形することで、第一中間部45と第二中間部55との間の距離が相対的に変化しても、これを吸収することができる。なお、第三折曲部の垂直断面形状はU字状に限定されず、例えば逆の山形に構成してもよい。
【0040】
第一中間部45と第一接続部41、第二中間部55と第二接続部51は、それぞれほぼ並行に構成する。また第一中間部45と第二中間部55を、それぞれほぼ並行に、好ましくはほぼ同一平面上に構成する。そして、第一中間部45を平面視においてほぼ矩形状として、第一接続折曲領域42と、第三中間折曲領域46とを、ほぼ直角となるように、隣接する辺に設ける。同様に第二中間部55もほぼ矩形状として、第二接続折曲領域52と、第四中間折曲領域56とを、ほぼ直角となるように、隣接する辺に設ける。この結果、図3等に示すように、第一接続部41と第二接続部51との距離が、X軸方向に相対的に変化しても、第三折曲部47が変形することで、これを吸収できる。またY軸方向への相対的な変化は、第一折曲部43、第二折曲部53が変形することでこれを吸収できる。さらにZ軸方向への相対的な変化も、これら第一折曲部43、第二折曲部53が変形することでこれを吸収できる。このように、第一折曲部43と、第一中間部45と、第二折曲部53と、第二中間部55と、第三折曲部47で構成される連結部49は、第一接続部41と第二接続部51の相対的な距離が、XYZ方向のいずれに変化しても、これを吸収することができる。この結果、第一接続部41と第二接続部51との相対的な変位によって、電極端子2とバスバー40との溶接部分に負荷がかかって溶接部位が破損、破断、剥離するといった問題を回避することができる。
【0041】
以上のように、第一接続部41と第二接続部51を連結する連結部49に、XYZ方向に変形可能な緩衝機構を持たせることで、製造時や組立時における電池セルの公差を吸収できる。また電源装置100の使用時においても、電池セルの充放電による膨張や、衝撃や振動等の外力により、第一接続部41と第二接続部51の相対位置にずれが生じても、これを連結部49の緩衝機構でもって吸収することで、第一接続部41や第二接続部51に直接負荷が印加されて破損や破断、剥離が生じる事態を回避でき、電池セル同士の接続の信頼性を高めることができる。
【0042】
また中間部を、中間電位の検出端子として利用することもできる。特にリチウムイオン二次電池を電池セルとして用いる場合等、電池の状態を正確に管理するために中間電位の検出が行われており、このため中間電位を検出するための中間電位検出用端子を接続する必要がある。このため、衝撃吸収機構を有する中間部を、このような中間電位検出用端子を接続するための部材に兼用できる。
【0043】
さらにバスバー40は、電池セル1の電極端子2とレーザ溶接するための接合領域を設けている。具体的には、第一接続部41と第二接続部51にそれぞれ、他の領域よりも部分的に肉厚を薄くした薄肉領域61を設けている。この薄肉領域61の一部に、部分的に開口された開口窓62を形成している。レーザ溶接する際は、電極端子2の接合面2Bの上に密着させるように重ねて配置された薄肉領域61に対して、上面からレーザ光を照射し、薄肉領域61を貫通させて接合面2Bと一緒に溶かし、溶接させている。この際、バスバー40と電極端子2とを正確に位置決めする必要がある。そこで、開口窓62から電極端子2の突出部2Aを表出させて、これをバスバー40と電極端子2との相対的な位置決め用のガイドとして利用する。また、レーザ光を照射させる溶接位置を制御するための位置決めとしても利用できる。例えば、開口窓62から表出させた電極端子2の突出部2Aを、画像処理によって検出して、この位置を基準としてレーザ光の走査位置を制御する。これにより、バスバー40と電極端子2の端子台との間に接合部が形成される。
(絶縁スペーサ16)
【0044】
電池積層体10は、隣接して積層される電池セル1同士の間に、絶縁スペーサ16を介在させている。絶縁スペーサ16は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作されている。絶縁スペーサ16は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状とする。この絶縁スペーサ16を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁できる。なお、隣接する電池セル間に配置されるスペーサとしては、電池セルとスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、電池セルの表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクフィルムで電池セルの電極端子部分を除く外装缶の表面を覆ってもよい。
【0045】
さらに、図2に示す電源装置100は、電池積層体10の両端面にエンドプレート20を配置している。なおエンドプレート20と電池積層体10の間に端面スペーサ17を介在させて、これらを絶縁してもよい。端面スペーサ17も、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作できる。
【0046】
実施形態1に係る電源装置100は、複数の電池セル1が互いに積層される電池積層体10において、互いに隣接する複数の電池セル1の電極端子2同士をバスバー40で接続して、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続する。
(エンドプレート20)
【0047】
エンドプレート20は、図2に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対の締結部材15を介して締結される。エンドプレート20は、電池積層体10の電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ17の外側に配置されて電池積層体10を両端から挟着している。
(締結部材15)
【0048】
締結部材15は、両端を電池積層体10の両端面に配置されたエンドプレート20に固定される。複数の締結部材15でもってエンドプレート20を固定し、もって電池積層体10を積層方向に締結している。各締結部材15は、図2等に示すように、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属製で、電池積層体10の両側面に対向して配置されている。この締結部材15には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなる締結部材15は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。
【0049】
締結部材15は、板状の締結主面15aの上下をコ字状に折曲して、折曲片15dを形成している。上下の折曲片15dは、電池積層体10の左右側面において、電池積層体10の上下面を隅部から覆う。この締結部材15は、締結主面15aに開口された複数の締結ねじ穴にそれぞれボルト15fを螺合し、エンドプレート20の外周面に固定している。なお、締結主面15aとエンドプレート20との固定は、必ずしもボルトを用いた螺合に限られず、ピンやリベット等としてもよい。
【0050】
多数の電池セル1を積層している電源装置100は、複数の電池セル1からなる電池積層体10の両端に配置されるエンドプレート20を締結部材15で連結することで、複数の電池セル1を拘束するように構成されている。複数の電池セル1を、高い剛性をもつエンドプレート20や締結部材15を介して拘束することで、充放電や劣化に伴う電池セル1の膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などを抑制できる。
(絶縁シート30)
【0051】
また締結部材15と電池積層体10の間には、絶縁シート30が介在される。絶縁シート30は絶縁性を備える材質、例えば樹脂などで構成され、金属製の締結部材15と電池セル1との間を絶縁している。図2等に示す絶縁シート30は、電池積層体10の側面を覆う平板31と、この平板31の上下にそれぞれ設けられた折曲被覆部32とで構成される。折曲被覆部32は、締結部材15の折曲片15dを覆うように、平板31からコ字状に折曲した後、さらに折り返している。これにより折曲片15dは、上面から側面及び下面にかけて絶縁性の折曲被覆部で覆うことにより、電池セル1と締結部材15の意図しない導通を回避することができる。
【0052】
また折曲片15dは、折曲被覆部32を介して、電池積層体10の電池セル1の上面及び下面を押圧する。これにより、各電池セル1を上下方向から折曲片15dで押圧して高さ方向に保持し、振動や衝撃等が電池積層体10に印加されても、各電池セル1が上下方向に位置ずれしないように維持できる。
【0053】
なお、電池積層体や電池積層体の表面が絶縁されている場合、例えば電池セルが絶縁性のケースに収納されていたり、樹脂製の熱収縮性フィルムで覆われている場合、又は締結部材の表面に絶縁性の塗料やコーティングが施されている場合、あるいは締結部材が絶縁性の材質で構成されている場合等は、絶縁シートを不要とできる。また絶縁シート30も、電池積層体10の下面側で締結部材15の折曲片15dとの絶縁を考慮しなくてよい場合は、折曲被覆部32を上端側にのみ形成してもよい。例えば電池セルを熱収縮性フィルムで被覆している場合等が該当する。
(位置決め機構)
【0054】
また電源装置100は、隣接する電池セル1同士の間で、電極端子2同士を接続するバスバー40と、バスバー40の下面で、電池セル1同士の間に介在された絶縁スペーサ16との間に、位置決め機構を設けている。これによって、絶縁スペーサ16でもってバスバー40の位置決めを行うことが可能となり、バスバー40を電池セル1毎に電極端子2と溶接する溶接位置を規定し易くできる。
【0055】
電池セルを複数積層した電源装置においては、従来、積層した長さが所定の寸法となるように設計していた。すなわち、図19に示すように電池積層体910の両側にエンドプレート903を配置し、バインドバー904で締結することにより電池積層体910を押圧していた。しかしながら、電池セルは製造公差などに起因する寸法差があるため、所定の長さとなるように締結すると、電池セルに作用する押圧力が異なることになる。押圧力に対する電池セルの反力も異なることから、電池セルへの負荷が電源装置毎に個体差を生じることとなり、電源装置の性能や寿命に差を生じる可能性が考えられる。そこで本発明者らは、電池積層体を締結する圧力を一定とすることで、電池セルへの負荷を一定として、押圧力のばらつきに起因する性能差の発生を抑制して、均質で高品質な電源装置を実現することを検討した。
【0056】
しかしながら、このように電池積層体への押圧力を一定とすることで、電池セルの個体差に起因して電池積層体の積層長さが一定しなくなる。例えば図5A図5Cに示すように、厚さに個体差のある電池セル1、1、...を同じ数だけ積層しても、電池積層体10の積層長さBL1、BL2、BL3にばらつきが生じる。そこで、押圧力を一定に維持しつつも、得られる電池積層体の積層長さを一定にするために、電池セル1同士の間に介在させる絶縁スペーサとして、厚さの異なる絶縁スペーサ16Lを複数種類用意して、図6に示すように適切な厚さの絶縁スペーサ16Lを選択することで積層長さを調整することができる。あるいは、図7に示すように、弾性体72を介在させて積層長さを調整してもよい。
【0057】
しかしながら、このような方法で電池積層体10の長さを一定に調整しても、各電池セル1の電極端子2の位置が異なるため、バスバー40’との溶接位置が一定しないという問題は解決できない。従来は、電池積層体の長さを所定とすることを前提に設計していたため、各電池セルの電極端子の位置も概ね一律に定まり、電極端子とバスバーとの溶接のための位置決めも比較的容易であった。これに対して、電池積層体への押圧力を一定とする構成では、図6図7に示すように、電池積層体10の積層長さを一定に調整しても、各電池セル1の電極端子2の位置が異なるため、バスバー40’の位置が一定しなくなり、バスバー40’と電極端子2の溶接が適切に行えないという新たな課題が生じた。
【0058】
例えば、電極端子がネジ端子のように大きく突出した構造であれば、電極端子を用いた位置決めを利用することが考えられる。一例として、図8の要部拡大図付き断面図に示すように突出型電極端子2X同士を接続する複数のバスバー40Xを保持するバスバーホルダ34に、各バスバー40Xが電池セル1の積層方向に変位することを許容する構造を付加する。この例ではバスバーホルダ34を樹脂製とし、各バスバー40Xを保持するバスバー保持部36同士を連結する部分に、U字状に折曲したヒンジ構造37を設けている。またバスバー保持部36に保持される各バスバー40Xには、電極端子2Xを挿入できる穴58Xを形成しておく。このように、電極端子2Xをバスバー40Xの穴58Xに挿入させる誘い込みとして利用することで、フレキシブル性を持たせたヒンジ構造37によってバスバー40Xと電極端子2Xを位置決めして、螺合や溶接等の固定が可能である。
【0059】
しかしながら、電極端子の突出量が少ない場合は、このような電極端子自体を用いた誘い込み構造を採用できない。特に近年は、電源装置の小型化が一層望まれており、電池セルから突出する電極端子も突出量を少なくすることが求められる傾向にある。
【0060】
そこで本実施形態1に係る電源装置100では、上述の通り、絶縁スペーサ16に、バスバー40と位置決めする位置決め機構を設けている。具体的には、図3の拡大斜視図及び図4の分解斜視図に示すように、バスバー40に開口された開口部58と、絶縁スペーサ16に形成された、開口部58に挿通される突起部28とで位置決め機構を構成することができる。このような構成により、絶縁スペーサ16の突起部28をバスバー40の開口部58に挿入して、電池セル1毎にバスバー40の溶接位置を位置決めし易くできる。
【0061】
絶縁スペーサ16は、図4に示すように、電池セル1と対向するスペーサ主面26の上部に、電池セル1の封口板側に突出したスペーサ折曲片27を形成している。またスペーサ折曲片27には、ピン状の突起部28を形成している。
【0062】
一方バスバー40には、上述の通り開口部58を開口している。開口部58は、突起部28を挿入できる大きさ及び形状に形成される。図3図4の例では、突起部28を円柱状とし、開口部58を円形の丸穴としている。
【0063】
この構成であれば、電極端子2の突出量が少ない場合にも適用できる利点が得られる。例えば電極端子が、外装缶の上面から突出する突出量が5mm以下といったタイプであっても、本実施形態によればこのような電極端子のみでは機械的な位置決めが困難な電池セルに対しても、電極端子2とバスバー40の位置決めが可能となり、溶接を適切に行って信頼性を向上できる。
【0064】
また位置決め機構は、上述した丸穴状の開口部58と円柱状の突起部28の組み合わせに限られない。例えば図9に示す変形例に係る電源装置のように、楕円柱状の突起部28Bと、楕円状の開口部58Bの組み合わせとしてもよい。また、図10に示す他の変形例に係る電源装置のように、板状の突起部28Cと、スリット状の開口部58Cの組み合わせとしてもよい。さらに、開口部58は環状に形成される必要はなく、図11に示すさらに他の変形例に係る電源装置のように、切り欠き状の開口部58Dと突起28Dの組み合わせとしてもよい。
[実施形態2]
【0065】
以上の実施形態1では、バスバー40に直接、絶縁スペーサ16との間で位置決め機構を設けた例を説明した。ただ本発明は、位置決め機構をバスバー側に設ける構成に限定せず、他の部材に位置決め機構を設けてもよい。例えば、バスバーを保持するバスバーホルダに、絶縁スペーサとの間で位置決めする位置決め機構を設けてもよい。このような例を実施形態2に係る電源装置200として、図12図15に示す。これらの図において、図12は本発明の実施形態2に係る電源装置200を示す斜視図、図13図12に示す電源装置200の分解斜視図、図14図12の電源装置200の電極端子2の部分を示す拡大斜視図、図15図14の分解斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電源装置200は、電池セル1同士の間に絶縁スペーサ16を介在させて複数積層した電池積層体10と、電池積層体10の端面を覆うエンドプレート20と、電池積層体10を締結する締結部材15と、隣接する電池セル1の電極端子2同士を接続するバスバー40と、複数のバスバー40を保持するバスバーホルダ34を備えている。なお上述した実施形態1と同様の部材については、同じ符号を付して詳細説明を適宜省略する。
(バスバーホルダ34)
【0066】
バスバーホルダ34は、複数のバスバー40を保持する部材である。バスバー40は、バスバーホルダ34を介して、位置決め機構でもって位置決めされている。これによって、絶縁スペーサ16とバスバーホルダ34でもってバスバー40の位置決めを行うことが可能となり、バスバー40を電池セル1毎に電極端子2と溶接する溶接位置を規定し易くできる。
【0067】
図14図15に示す例では、位置決め機構は、バスバーホルダ34に開口された開口部38と、絶縁スペーサ16に形成された、開口部38に挿通される突起部28とで構成される。このような構成により、絶縁スペーサ16の突起部28をバスバーホルダ34の開口部38に挿入して、電池セル1毎にバスバー40の溶接位置を位置決めし易くできる。
【0068】
このバスバーホルダ34は、絶縁性に優れた樹脂製とする。例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)製とする。またバスバーホルダ34に、電池セルのガス排出弁から排出されるガスを導入して電源装置200の外部に排出するガス排出経路を規制するガスダクトを形成してもよい。
【0069】
バスバー40は、図12図13に示すバスバーホルダ34で定位置に配置されて、電極端子2の突出部2Aを開口窓62に案内する。バスバーホルダ34は、プラスチック等の絶縁材で成形されて、バスバー40を定位置に配置する。バスバーホルダ34は、電池積層体10に連結されて、バスバー40を定位置に配置する。バスバーホルダ34は、電池セル1の間に積層している絶縁スペーサ16に連結されて定位置に配置され、あるいは電池セル1に連結されて、電池積層体10の定位置に連結される。図13等に示すバスバーホルダ34は、各バスバー40を定位置に配置する枠形状のホルダ枠体35を、バスバー40毎に複数連結した構成としている。ホルダ枠体35は、複数のバスバー40が定位置に配置された状態で電池積層体10の上面に配置されて、各バスバー40の開口窓62が電極端子2の突出部2Aに配置される。この状態で、ホルダ枠体35の上方開口からレーザ光が照射されて、バスバー40が電極端子2に溶着される。またバスバー40が電極端子2に溶着された後、ホルダ枠体35の上方開口を閉塞するカバープレートを設けてもよい。
【0070】
以上の電源装置100は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置100を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、電動車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置100を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築した例として説明する。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0071】
図16は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図16に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
(電気自動車用電源装置)
【0072】
また、図17は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
(蓄電装置用の電源装置)
【0073】
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図18は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0074】
図18に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0075】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0076】
以上のような蓄電システムは、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置は、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0078】
100、200、900…電源装置
1…電池セル
1X…端子面
1a…外装缶
1b…封口板
1c…ガス排出弁
2…電極端子
2A…突出部
2B…接合面
2X…突出型電極端子
10…電池積層体
15…締結部材;15a…締結主面;15d…折曲片
15f…ボルト
16、16L…絶縁スペーサ
17…端面スペーサ
20…エンドプレート
26…スペーサ主面
27…スペーサ折曲片
28、28B、28C、28D…突起部
30…絶縁シート;31…平板;32…折曲被覆部
34…バスバーホルダ
35…ホルダ枠体
36…バスバー保持部
37…ヒンジ構造
38…開口部
40、40’、40X…バスバー
41…第一接続部
42…第一接続折曲領域
43…第一折曲部
44…第一中間折曲領域
45…第一中間部
46…第三中間折曲領域
47…第三折曲部
49…連結部
51…第二接続部
52…第二接続折曲領域
53…第二折曲部
54…第二中間折曲領域
55…第二中間部
56…第四中間折曲領域
58、58B、58C、58D…開口部
58X…穴
61…薄肉領域
62…開口窓
72…弾性体
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
901…電池セル
902…電極端子
903…エンドプレート
904…バインドバー
910…電池積層体
940…バスバー
BL1、BL2、BL3…電池積層体の積層長さ
HV、EV…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19