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特許7532076撮像装置、その制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】撮像装置、その制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240805BHJP
   H04N 23/695 20230101ALI20240805BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/695
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020076074
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021175046
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 尚佳
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149602(JP,A)
【文献】特開2018-019293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローリングシャッタ方式で画像を撮影する撮像装置であって、
追尾して撮影する被写体の情報を取得する第1の取得手段と、
前記撮像装置のパン駆動およびチルト駆動のうちの少なくともいずれか一つの駆動の情報を取得する第2の取得手段と、
前記第1の取得手段により取得された被写体の情報と、前記第2の取得手段により取得された駆動の情報とに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する変更手段と、
前記変更手段により変更された補正強度によりローリングシャッタ歪み補正を行う補正手段と、を有し、
前記第1の取得手段は、追尾して撮影する被写体の速度の情報を取得し、
前記第2の取得手段は、前記駆動の情報としての駆動の速度の情報を取得し、
前記変更手段は、
前記第1の取得手段により取得された被写体の速度と、前記第2の取得手段により取得された駆動の速度との速度差が所定以上である場合には、速度差が所定未満である場合よりもローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1の取得手段は、追尾して撮影する被写体の移動方向の情報を取得し、
前記第2の取得手段は、前記駆動の情報に基づく駆動方向の情報を取得し、
前記変更手段は、
前記第1の取得手段により取得された被写体の移動方向と、前記第2の取得手段により取得された駆動方向とに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記変更手段は、
被写体を追尾せずに駆動する場合には被写体を追尾して駆動する場合よりもローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の取得手段は、追尾して撮影する被写体の位置の情報を取得し、
前記第2の取得手段は、パン駆動およびチルト駆動のうちの少なくともいずれか一つの駆動の状態の情報を取得し、
前記変更手段は、
前記第2の取得手段により取得された、前記撮像装置のパン駆動およびチルト駆動の少なくとも一方の駆動の状態が駆動中であって、前記第1の取得手段により取得された被写体の位置が画像内で同じ位置である場合には、異なる位置である場合よりもローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させることを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の取得手段は、追尾して撮影する被写体の大きさの情報を取得し、
前記変更手段は、
前記第1の取得手段により取得された被写体の大きさに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更することを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記変更手段は、
前記第1の取得手段により取得された被写体の大きさが所定以上である場合には、所定未満である場合よりもローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させることを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の取得手段は、追尾して撮影する被写体の位置の情報を取得し、
前記変更手段は、
前記第1の取得手段により取得された被写体の位置が画面外に外れた場合には、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないことを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1の取得手段は、追尾して撮影する被写体以外の被写体の情報を取得し、
前記変更手段は、
前記第1の取得手段により取得された、追尾して撮影する被写体以外の被写体が存在する場合には、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないことを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
ローリングシャッタ方式で画像を撮影する撮像装置の制御方法であって、
追尾して撮影する被写体の情報を取得する第1の取得ステップと、
前記撮像装置のパン駆動およびチルト駆動のうちの少なくともいずれか一つの駆動の情報を取得する第2の取得ステップと、
前記第1の取得ステップにより取得された被写体の情報と、前記第2の取得ステップにより取得された駆動の情報とに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する変更ステップと、
前記変更ステップにより変更された補正強度によりローリングシャッタ歪み補正を行う補正ステップと、を有し、
前記第1の取得ステップでは、追尾して撮影する被写体の速度の情報を取得し、
前記第2の取得ステップでは、前記駆動の情報としての駆動の速度の情報を取得し、
前記変更ステップでは、
前記第1の取得ステップにより取得された被写体の速度と、前記第2の取得ステップにより取得された駆動の速度との速度差が所定以上である場合には、速度差が所定未満である場合よりもローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させることを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1ないしの何れか1項に記載された撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1ないしの何れか1項に記載された撮像装置の各手段として機能させるためのプログラムを格納したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、その制御方法、プログラムおよび記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置に用いられるCMOSセンサは、センサの上部と下部との間で読み出しラグが生じることが知られている。このようなCMOSセンサをパンチルト駆動が可能なカメラに用いると、パン駆動させた場合には画像が斜めに歪み、チルト駆動させた場合には画像が伸び縮みする、ローリングシャッタ歪みが生じるために、ローリングシャッタ歪み補正を行うことが有効である。
【0003】
近年、パンチルト駆動が可能なカメラでは、被写体を自動で追尾できるような追尾機能を備えている。このようなカメラで、追尾中のカメラの動きに応じてローリングシャッタ歪み補正を行ってしまうと、追尾対象の被写体の歪みが更に増してしまう。これは、追尾中にカメラの動きに応じてローリングシャッタ歪み補正を行ったことに起因する。すなわち、追尾対象の被写体の速度と合わせるようにパンチルト駆動することで、被写体が画面内の所定位置で静止しているように見える。相対的に静止している被写体であればローリングシャッタ歪みが生じず、ローリングシャッタ歪み補正を行う必要がないにも関わらず補正を行ってしまうためである。
【0004】
特許文献1には、動き検出手段により検出された動き量と、合焦検出手段により検出された合焦度合いから、ローリングシャッタ方式に起因する歪みの補正量を決定し、画像の各ラインの読み出し位置を変更することで歪みの補正を行う撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-38482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、合焦度合いによって追従していると判断した場合にローリングシャッタ歪み補正を行わないようにしているが、実際に追従していなかった場合には被写体が歪んでしまうおそれがある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、被写体を追尾して撮影する場合にローリングシャッタ歪み補正をしたときの被写体の歪みを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ローリングシャッタ方式で画像を撮影する撮像装置であって、追尾して撮影する被写体の情報を取得する第1の取得手段と、前記撮像装置のパン駆動およびチルト駆動のうちの少なくともいずれか一つの駆動の情報を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段により取得された被写体の情報と、前記第2の取得手段により取得された駆動の情報とに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する変更手段と、前記変更手段により変更された補正強度によりローリングシャッタ歪み補正を行う補正手段と、を有し、前記第1の取得手段は、追尾して撮影する被写体の速度の情報を取得し、前記第2の取得手段は、前記駆動の情報としての駆動の速度の情報を取得し、前記変更手段は、前記第1の取得手段により取得された被写体の速度と、前記第2の取得手段により取得された駆動の速度との速度差が所定以上である場合には、速度差が所定未満である場合よりもローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被写体を追尾して撮影する場合にローリングシャッタ歪み補正をしたときの被写体の歪みを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カメラの構成を示す図である。
図2】第1の実施形態のカメラの動作を示すフローチャートである。
図3】追尾対象の被写体の一例を示す図である。
図4】追尾対象の被写体の一例を示す図である。
図5】第2の実施形態のカメラの動作を示すフローチャートである。
図6】第3の実施形態のカメラの動作を示すフローチャートである。
図7】第4の実施形態のカメラの動作を示すフローチャートである。
図8】第5の実施形態のカメラの動作を示すフローチャートである。
図9】第6の実施形態のカメラの動作を示すフローチャートである。
図10】第7の実施形態のカメラの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、撮像装置として、パン駆動およびチルト駆動が可能なカメラについて説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、カメラ100の構成の一例を示す図である。
カメラ100は、レンズ群101、光学フィルタ102、撮像素子103、AGC104、A/D変換部105、映像信号処理部106、露出制御部107、光学制御部108、動き情報取得部109、RS歪み補正量演算部110、映像信号出力部111を有する。また、カメラ100は、パンチルトモータ112、パンチルト駆動部113、パルス変調部114等を有する。
【0012】
レンズ群101は、被写体からの光を撮像素子103上に集光する光学系である。レンズ群101には、被写体に対するピント合わせを行うフォーカスレンズ、画角を調整するズームレンズ等が含まれる。レンズ群101を通してカメラ100内に入射した光は光学フィルタ102を通過して撮像素子103で受光される。光学フィルタ102は、例えば赤外線カットフィルタ(IRCF)等が用いられる。映像情報は、撮像素子103の受光面の画素毎に所定の順序で配列されたカラーフィルタを通り、撮像素子103で結像される。撮像素子103は、撮影対象の映像情報をアナログ信号として出力する。撮像素子103は、ローリングシャッタ方式で撮影するCMOSセンサである。撮像素子103で出力された映像は、AGC104でゲインコントロールされて映像信号の輝度の調整が行われる。輝度の調整が行われた映像信号は、A/D変換部105でアナログ撮像信号からデジタル撮像信号に変換される。
【0013】
映像信号処理部106は、A/D変換部105で変換されたデジタル撮像信号に所定の処理を施し、画素毎に輝度信号と色信号とを出力する。映像信号処理部106は、出力用の映像を生成すると共に、カメラ制御を行うための各パラメータを生成する。カメラ制御を行うための各パラメータとして、例えば絞りの制御、ピント合わせの制御、色味を調整するホワイトバランス制御等に用いられる。
【0014】
露出制御部107は、映像信号処理部106から出力される輝度情報から撮影画面内の輝度情報を算出し、撮影画像を所望の明るさに調整するために絞りおよびAGC104を制御する。
また、ピント合わせは、映像信号処理部106で生成された映像信号から高周波成分を抜き出し、高周波成分の値をフォーカスピント情報(フォーカス評価値)として、フォーカス評価値が最大となるように光学制御部108によりレンズ群101を制御する。また、光学制御部108は光学フィルタ102の挿抜動作も行う。
【0015】
パルス変調部114は、PWM波形に変換してパンチルト駆動部113に出力する。パンチルト駆動部113は、パンチルトモータ112を駆動する。パンチルトモータ112が駆動されることによって、レンズ群101とセンサとを含む撮像光学系がパンチルト方向に移動する。
【0016】
動き情報取得部109は、映像信号処理部106から出力された映像信号に基づいて、追尾する被写体の情報を取得する。被写体の情報には、例えば、追尾する被写体の移動方向や移動速度等の動き情報が含まれる。
ローリングシャッタ歪み補正量演算部110は、パンチルト駆動部113から取得したパンチルト駆動の情報と、動き情報取得部109で取得された追尾対象の被写体の情報とに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更して、補正量を算出する。
映像信号出力部111は、ローリングシャッタ歪み補正量演算部110により算出された補正量に基づいて幾何変換を行うことで、ローリングシャッタ歪み補正を行う。映像信号出力部111は補正した後の映像信号を出力する。
【0017】
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、追尾対象の被写体の情報と、パンチルト駆動の情報とに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する場合について説明する。
図2は、第1の実施形態のカメラ100の動作を示すフローチャートである。図2のフローチャートは、カメラ100の電源がオンされることで開始される。
【0018】
S201では、動き情報取得部109は、追尾する対象(追尾対象)の被写体を検出する。具体的に、動き情報取得部109は、画像内の人や車等の動体を物体認識で認識し、認識した動体を追尾対象の被写体として検出する。なお、動き情報取得部109は、ユーザにより手動で選択された画像内の被写体を、追尾対象の被写体として検出してもよい。
【0019】
S202では、動き情報取得部109は、検出した追尾対象の被写体の情報を取得する。具体的には、動き情報取得部109は、現フレームと前フレームとの背景差分等を比較することで、追尾対象の被写体の画面内での動きベクトル量を算出する。また、動き情報取得部109は、算出された動きベクトル量から追尾対象の被写体の移動方向および被写体の速度を算出する。
【0020】
図3(a)は、前フレーム301の一例を示す図である。
前フレーム301では、パンが右から左に駆動し、パン駆動の速度と、右から左へ移動する追尾対象の被写体302の速度とが一致しているため、被写体302が画像の中央に位置している状態である。パン駆動の速度と、追尾対象の被写体302の速度とが同一速度で移動しているために追尾対象の被写体302は静止しているように見える。この場合、ローリングシャッタ歪み補正を行っていない状態であれば、追尾対象の被写体302は斜めに歪むことなく撮影されている。
【0021】
図3(b)は、現フレーム303の一例を示す図である。
現フレーム303では、パンが右から左に駆動し、追尾対象の被写体304が前フレーム301までの速度とは異なる速度、すなわちこの場合低速で移動したことによって、パン駆動の速度と、追尾対象の被写体の速度とに差異が生じている。したがって、追尾対象の被写体304が画像の中央に位置ではなく端に位置している状態である。この状態で、前フレーム301と同様にローリングシャッタ歪み補正を行わない場合には、追尾対象の被写体304が歪んで撮影されてしまう。このように歪んで撮影されるのは、パン駆動の速度と追尾対象の被写体304の速度とに差異が生じたため、追尾対象の被写体304が静止して見えなくなってしまったためである。
【0022】
ここで、S202において算出される、パン駆動に対して相対的な追尾対象の被写体の移動方向は、図3(a)、図3(b)の場合は右であり、被写体の速度は算出されたベクトル量とフレームレート等を用いて算出することができる。左向きをプラスの速度、右向きをマイナスの速度とすると、図3(a)、図3(b)の場合には、追尾対象の被写体が相対的に右方向に移動しているため被写体の速度はマイナスとなる。
【0023】
S203では、RS歪み補正量演算部110は、パンチルト駆動部113からパンチルト駆動の情報を取得する。具体的には、RS歪み補正量演算部110は、パンチルト駆動部113からパン駆動の駆動方向の情報を取得する。RS歪み補正量演算部110は、パンチルト駆動部113がパンを右向きに駆動している場合には右向きの情報を取得し、パンを左向きに駆動している場合には左向きの情報を取得する。図3(a)、図3(b)の場合には右から左へ移動しており、左向きの情報が取得される。なお、左向きをプラス、右向きをマイナスとしているので、この場合の駆動速度はプラスとなる。
【0024】
S204では、RS歪み補正量演算部110は、S202で取得した追尾対象の被写体の移動方向と、S203で取得したパン駆動の駆動方向とを比較する。追尾対象の被写体の移動方向と、パン駆動の駆動方向とが同一の場合には、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更せず終了する。一方、追尾対象の被写体の移動方向と、パン駆動の駆動方向とが異なる場合にはS205に進む。
【0025】
S205では、RS歪み補正量演算部110は、パン駆動の速度から追尾対象の被写体の速度を減算した値が所定以上であるか否かを判定する。RS歪み補正量演算部110は、パンチルト駆動部113からパン駆動の速度を取得することができる。なお、RS歪み補正量演算部110は、ジャイロセンサの値を用いてパン駆動の速度を算出してもよい。パン駆動の速度から追尾対象の被写体の速度を減算した値が所定以上ではない場合には、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更せず終了する。一方、パン駆動の速度から追尾対象の被写体の速度を減算した値が所定以上の場合には、追尾対象の被写体の速度と、パン駆動の速度との差異によって被写体が静止しているようには見えなくなり歪んでしまうため、歪みを防止するためにS206に進む。
【0026】
S206では、RS歪み補正量演算部110は、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させて、補正量を算出する。すなわち、RS歪み補正量演算部110は、パン駆動の速度から追尾対象の被写体の速度を減算した値が所定未満である場合よりも、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させる。映像信号出力部111は、ローリングシャッタ歪み補正量演算部110により算出された補正量に基づいて幾何変換を行うことで、ローリングシャッタ歪み補正を行う。
図4は、ローリングシャッタ歪み補正を行って表示されたフレーム401の一例を示す図である。図4に示すように、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させることで、追尾対象の被写体の速度とパン駆動の速度とに差異が生じて被写体402が端に位置しても歪みのない被写体402を撮影することができる。
【0027】
本実施形態によれば、パン駆動の情報と、追尾して撮影する被写体の情報とに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更することでローリングシャッタ歪み補正をしたときの被写体の歪みを低減させることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、追尾対象の被写体の移動方向と、パン駆動の駆動方向とが異なる場合の方が速度差が大きくなるために、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させている。しかしながら、追尾対象の被写体の移動方向と、パン駆動の駆動方向とが同一の場合であっても速度差が生じている場合にはローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させるようにしてもよい。すなわち、パン駆動の速度と、被写体の速度との速度差が所定以上である場合には、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させるようにしてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、対象の被写体を追尾する場合について説明したが、被写体を追尾せずにパン駆動している場合には、RS歪み補正量演算部110は、被写体を追尾してパン駆動している場合よりもローリングシャッタ歪み補正の補正強度を増加させてもよい。
また、本実施形態では、パン駆動の場合について説明したが、この場合に限られず、パン駆動およびチルト駆動のうち少なくとも何れかの駆動(パンチルト駆動)の場合でも同様に適用することができる。
【0030】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、追尾対象の被写体の位置の情報に基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する場合について説明する。
図5は、第2の実施形態のカメラ100の動作を示すフローチャートである。なお、図5のフローチャートは、カメラ100の電源がオンされることで開始される。
【0031】
S501では、RS歪み補正量演算部110は、パンチルト駆動部113からパンチルト駆動の情報を取得する。具体的には、RS歪み補正量演算部110は、パンチルト駆動部113の状態の情報を取得して、パンチルト駆動が駆動中であるか否かを判定する。パンチルト駆動部113が駆動中ではない場合にはローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更することなく終了する。一方、パンチルト駆動部113が駆動中の場合にはS502に進む。
【0032】
S502では、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の情報を取得する。具体的には、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の画像内での位置を確認する。
S503では、動き情報取得部109は、被写体の位置が画像内で同じ位置であるか否かを判定する。例えば、動き情報取得部109は動体検出や物体認識した動体の重心位置が前フレームと現フレームとを比較して所定のピクセル数以内に位置する場合に、被写体の位置が画像内で同じ位置であると判定する。被写体の位置が画像内で同じ位置である場合には追尾対象の被写体を追尾していると考えられ、被写体が静止しているように見える。被写体の位置が画像内で異なる位置である場合にはローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないで終了する。一方、被写体の位置が画像内で同じ位置である場合にはS504に進む。
【0033】
S504では、RS歪み補正量演算部110は、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させて、補正量を算出する。すなわち、RS歪み補正量演算部110は、被写体の位置が画像内で異なる位置である場合よりも、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させる。
【0034】
本実施形態によれば、被写体の位置が画像内で同じ位置である場合には、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させることで、ローリングシャッタ歪み補正による被写体の歪みを防止することができる。
なお、本実施形態では、対象の被写体を追尾する場合について説明したが、被写体を追尾せずにパン駆動している場合に、被写体の位置が画像内で同じ位置である場合にも適用することができる。
また、本実施形態では、S503からNOに進むことでローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないで終了する場合について説明したが、S503からNOに進むことで図2のフローチャートを実行するなどして適宜、他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0035】
<第3の実施形態>
以下の実施形態では、追尾対象の被写体の情報に基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する。第3の実施形態では、追尾対象の被写体の種類に基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する場合について説明する。
【0036】
S601では、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の情報を取得する。具体的には、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の種類の情報を取得する。
S602では、動き情報取得部109は、被写体の種類が人であるか否かを判定する。被写体の種類が人以外(例えば、車両等の乗り物)である場合にはローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないで終了する。一方、被写体の種類が人である場合には603に進む。
【0037】
S603では、RS歪み補正量演算部110は、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させて、補正量を算出する。すなわち、RS歪み補正量演算部110は、被写体の種類が人以外である場合よりも、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させる。
【0038】
本実施形態によれば、被写体が人である場合には、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させることで、ローリングシャッタ歪み補正による被写体の歪みを少なくして人の顔を認識しやすくすることができる。
なお、図6のフローチャートは、上述した図2のフローチャートのS201とS202との間に追加し、S602からNOに分岐した場合にS202に進むなどして適宜、他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0039】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、追尾対象の被写体の大きさに基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する場合について説明する。
【0040】
S701では、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の情報を取得する。具体的には、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の大きさの情報を取得する。
S702では、動き情報取得部109は、被写体の大きさが所定以上であるか否かを判定する。被写体の大きさが所定未満である場合にはローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないで終了する。一方、被写体の大きさが所定以上である場合にはS703に進む。
【0041】
S703では、RS歪み補正量演算部110は、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させて、補正量を算出する。すなわち、RS歪み補正量演算部110は、被写体の大きさが所定未満である場合よりも、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させる。
なお、図7のフローチャートは、上述した図2のフローチャートのS201とS202との間に追加し、S702からNOに分岐した場合にS202に進むなどして適宜、他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0042】
<第5の実施形態>
第5の実施形態では、追尾対象の被写体の位置に基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する場合について説明する。
【0043】
S801では、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の情報を取得する。具体的には、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の位置の情報を取得する。
S802では、動き情報取得部109は、被写体の位置が画面外に外れたか否かを判定する。被写体の位置が画面外に外れておらず画面内に存在している場合には、補正強度が適切な強度になるように変更する。一方、被写体の位置が画面外に外れて存在しない場合にはS803に進む。
【0044】
S803では、RS歪み補正量演算部110は、ローリングシャッタ歪み補正が所定以上の強度で有効になっていれば、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないで終了する。したがって、ローリングシャッタ歪み補正を行うことで、背景等の被写体が歪むのを抑制することができる。
なお、図8のフローチャートは、上述した図2のフローチャートのS201とS202との間に追加し、S802からNOに分岐した場合にS202に進むなどして適宜、他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0045】
<第6の実施形態>
第6の実施形態では、追尾対象の被写体以外の被写体に基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する場合について説明する。
【0046】
S901では、動き情報取得部109は、被写体の情報を取得する。具体的には、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体以外の被写体を検出する。
S902では、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体以外の被写体が画面内に存在するか否かを判定する。追尾対象の被写体以外の被写体が存在しない場合には、補正強度が適切な強度になるように変更する。一方、追尾対象の被写体以外の被写体が存在する場合にはS903に進む。
【0047】
S903では、RS歪み補正量演算部110は、ローリングシャッタ歪み補正が所定以上の強度で有効になっていれば、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないで終了する。
なお、図9のフローチャートは、上述した図2のフローチャートのS201とS202との間に追加し、S902からNOに分岐した場合にS202に進むなどして適宜、他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0048】
<第7の実施形態>
第7の実施形態では、追尾対象の被写体の動作に基づいてローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更する場合について説明する。
【0049】
S1001では、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の情報を取得する。具体的には、動き情報取得部109は、追尾対象の被写体の動作の情報を取得する。
S1002では、動き情報取得部109は、被写体の動作が歩きであるか否かを判定する。被写体の動作が歩きではない場合にはローリングシャッタ歪み補正の補正強度を変更しないで終了する。一方、被写体の動作が歩きである場合にはS1003に進む。
【0050】
S1003では、RS歪み補正量演算部110は、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させて、補正量を算出する。すなわち、RS歪み補正量演算部110は、被写体の動作が歩き以外である場合よりも、ローリングシャッタ歪み補正の補正強度を低下させる。
なお、図10のフローチャートは、上述した図2のフローチャートのS201とS202との間に追加し、S1002からNOに分岐した場合にS202に進むなどして適宜、他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0051】
<その他の実施形態>
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するプログラムをネットワークまたは各種記録媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(CPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、該プログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体は本発明を構成する。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、上述した実施形態を適時組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100:カメラ 103:撮像素子 109:動き情報取得部 110:RS歪み補正量演算部 111:映像信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10