(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/02 20060101AFI20240805BHJP
B23K 11/20 20060101ALI20240805BHJP
B23K 11/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B23K11/02 510
B23K11/20
B23K11/00 560
(21)【出願番号】P 2020081433
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】布施 洋
(72)【発明者】
【氏名】飯田 将道
(72)【発明者】
【氏名】井出 拓美
(72)【発明者】
【氏名】龍末 朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳司
(72)【発明者】
【氏名】米山 剛弘
(72)【発明者】
【氏名】園田 寿良
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-110397(JP,A)
【文献】特開2020-205197(JP,A)
【文献】特開2017-094497(JP,A)
【文献】特開2007-190569(JP,A)
【文献】特開2006-032072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00-11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材で形成され、第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有するアース端子と、前記第1の金属材とは異なる第2の金属材で形成された第1のインレット板金及び第2のインレット板金と、を溶接する溶接方法であって、
前記第1のインレット板金と前記アース端子の前記第1の面とを接触させ、かつ、前記第2のインレット板金と前記アース端子の前記第2の面とを接触させた状態で、前記第1のインレット板金
の平面に第1の電極を接触させ、前記第2のインレット板金
の平面に第2の電極を接触させて、前記第1の電極と前記第2の電極との間に力を加えて電流を流す溶接工程を備え、
前記第1の電極と前記第1のインレット板金
の前記平面とが接触する
領域を第1の領域
とし、前記第1のインレット板金と前記アース端子の前記第1の面とが接触する
領域を第2の領域
としたとき、
前記第1の電極側から見たときに、前記第2の領域の全てが、前記第1の領域の外縁の内側にあり、かつ、
前記第2の電極と前記第2のインレット板金
の前記平面とが接触する
領域を第3の領域
とし、前記第2のインレット板金と前記アース端子の前記第2の面とが接触する
領域を第
4の領域
としたとき、前記第2の電極側から見たときに、前記第4の領域の全てが、前記第3の領域の外縁の内側にあり、
前記第1の電極側から見たときに、前記第2の領域と前記第4の領域とが重なる、
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
前記第1のインレット板金は、前記アース端子の前記第1の面側に第1の突起部を有し、
前記第2のインレット板金は、前記アース端子の前記第2の面側に第2の突起部を有
し、
前記第2の領域は、前記第1の突起部が前記アース端子と接触する領域であり、
前記第4の領域は、前記第2の突起部が前記アース端子と接触する領域である、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記第1のインレット板金は、前記第1の電極側に第1の凹部を有し、
前記第2のインレット板金は、前記第2の電極側に第2の凹部を有することを特徴とする請求項2に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記第1の電極は、前記第1の凹部に入り込む第5の突起部を有し、
前記第2の電極は、前記第2の凹部に入り込む第6の突起部を有することを特徴とする請求項3に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記第1の電極が前記第1の凹部の周囲に当接した状態で、前記第1の電極は、前記第1の凹部の内面から離れており、
前記第2の電極が前記第2の凹部の周囲に当接した状態で、前記第2の電極は、前記第2の凹部の内面から離れている、
ことを特徴とする請求項3に記載の溶接方法。
【請求項6】
前記アース端子は、前記第1の突起部が入り込む第3の凹部と、前記第2の突起部が入り込む第4の凹部と、を有することを特徴とする請求項2から請求項
5のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項7】
前記アース端子は、前記第1のインレット板金側に第3の突起部と、前記第2のインレット板金側に第4の突起部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項8】
前記第1のインレット板金は、前記アース端子の前記第1の面側に第1の突起部を有
し、
前記第2の領域は、前記第1の突起部が前記アース端子と接触する領域である、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項9】
前記第1のインレット板金は、前記第1の電極側に第1の凹部を有することを特徴とする請求項
8に記載の溶接方法。
【請求項10】
前記第1の電極は、前記第1の凹部に入り込む第5の突起部を有することを特徴とする請求項
9に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記第1の電極が前記第1の凹部の周囲に当接した状態で、前記第1の電極は、前記第1の凹部の内面から離れている、
ことを特徴とする請求項9に記載の溶接方法。
【請求項12】
前記アース端子は、前記第1の突起部が入り込む第3の凹部を有することを特徴とする請求項
8から請求項
11のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項13】
前記アース端子は、前記第1のインレット板金側に第3の突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項14】
前記第1の金属材の融点は、前記第2の金属材の融点よりも低いことを特徴とする請求項1から請求項
13のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項15】
前記第1の金属材は銅であり、前記第2の金属材は鉄であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項16】
前記第1のインレット板金と前記第2のインレット板金は、前記第1のインレット板金と前記第2のインレット板金が曲げ部を介して繋がった状態で前記アース端子と溶接されることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項17】
前記第1の電極側から見たときに、前記第2の領域は、前記第1の領域の中央部に重なり、前記第2の電極側から見たときに、前記第4の領域は、前記第3の領域の中央部に重なる、
ことを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接方法に関し、特に、異種の金属を結合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ACラインから電力供給が行われる装置の筐体に用いられている板金(以下、筐体用板金という)は、装置に設けられているインレットのアース端子とインレット用板金とを経由して電気的に締結されている。このような構成とされる理由は、例えば装置内部に設けられた電気基板からの放射ノイズを遮蔽するためのシールド効果等の電気的な性能を満足させるためである。
図12(a)(b)は、インレットの構成を説明する図である。(a)は、インレットに電源ケーブルを挿入する方向から見た図であり、(b)は、(a)を反対側から見た図である。インレットは、交流電源から電流が供給されるインレット端子1、2と、装置のグランド(以下、GNDとする)となるフレームとアースとを接続するためのアース端子3と、を有している。また、インレットは、インレット端子1、2、アース端子3を固定するためのモールド部4を有している。また、筐体用板金及びインレット用板金は、安価であることや、加工のし易さ、入手が簡易であること、比較的低い電気伝導率を有することを理由に、鉄が広く使用されている。一方、アース端子3は、電流が流れることが前提であるため、低い電気伝導率であることが必須であり、また、入手が簡易なこと、安価であることを理由に、銅が広く使用されている。アース端子3とインレット用板金との締結方法においては、ビスによる締結方法よりも金属溶接方法の方が低コストである(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
例えば異種金属の結合方法には、次のような方法が考えられる。まず、
図12(c)に示すようにインレットに設けられたアース端子3をインレット板金28で挟み込む。そして、インレット板金28を溶接用の第1の電極7と第2の電極8とにより挟み込んで、互いに圧力かけた状態で第1の電極7及び第2の電極8に電流を流す。これによりアース端子3とインレット板金28とを融解させることによって結合する溶接方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3311061号公報
【文献】特許第5723992号公報
【文献】特表2016-523718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鉄より柔らかい銅を鉄で挟み込んで圧力を加えるため、次の様な課題がある。
図13は、課題を説明する図であり、
図12(c)の溶接部を左に90°回転させ拡大したものである。(a)は、溶接前の状態を示し、(b)は溶接後の状態を示している。第1の電極7と第2の電極8との間に矢印9の方向に圧力を加えて電流を流すと、アース端子3は軟化し、つぶれてくる。一方、インレット板金28には、反力10が発生する。そして、反力10により、インレット板金28は、第1の電極7及び第2の電極8との接触部であるA点を起点として内側(アース端子3側)に屈曲する。また、屈曲した部分の屈曲の角度は、(b)で示すように、右側の方(インレット板金28が連続している方)が左側(インレット板金28が開放されている方)よりも大きい。その理由は、右側は、インレット板金28の折り曲げ部が存在するため、アース端子3が押しつぶされても、折り曲げ部の位置が変化しにくいからである。一方、左側は、アース端子3の端部であるため位置が固定される外力が働かない。よって、左側よりも右側の方が屈曲しやすい。このように、A点で屈曲が発生し、反対面は逆に外側(電極側)に反る。左右で屈曲の角度は異なるが、どちらでもひび割れ11が発生してしまう。
【0006】
インレットは、ユーザが電源ケーブルを挿入する際や、製品に組み込まれた状態での輸送時などの振動によって、機械的なストレスがかかるため、インレット板金とアース端子には、強固な機械的強度が求められる。しかし、
図13で説明したようなひび割れ11が発生した場合、十分な機械的強度が確保できず、かつ、電気的導通性が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0009】
(1)第1の金属材で形成され、第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有するアース端子と、前記第1の金属材とは異なる第2の金属材で形成された第1のインレット板金及び第2のインレット板金と、を溶接する溶接方法であって、前記第1のインレット板金と前記アース端子の前記第1の面とを接触させ、かつ、前記第2のインレット板金と前記アース端子の前記第2の面とを接触させた状態で、前記第1のインレット板金の平面に第1の電極を接触させ、前記第2のインレット板金の平面に第2の電極を接触させて、前記第1の電極と前記第2の電極との間に力を加えて電流を流す溶接工程を備え、前記第1の電極と前記第1のインレット板金の前記平面とが接触する領域を第1の領域とし、前記第1のインレット板金と前記アース端子の前記第1の面とが接触する領域を第2の領域としたとき、前記第1の電極側から見たときに、前記第2の領域の全てが、前記第1の領域の外縁の内側にあり、かつ、前記第2の電極と前記第2のインレット板金の前記平面とが接触する領域を第3の領域とし、前記第2のインレット板金と前記アース端子の前記第2の面とが接触する領域を第4の領域としたとき、前記第2の電極側から見たときに、前記第4の領域の全てが、前記第3の領域の外縁の内側にあり、前記第1の電極側から見たときに、前記第2の領域と前記第4の領域とが重なることを特徴とする溶接方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のインレット板金とアース端子の構成を説明する図
【
図2】実施例1の課題を解決するためのメカニズムを説明する図
【
図3】実施例2のインレット板金とアース端子の構成を説明する図
【
図4】実施例2の課題を解決するためのメカニズムを説明する図
【
図5】実施例3のインレット板金とアース端子の構成を説明する図
【
図6】実施例3の課題を解決するためのメカニズムを説明する図
【
図7】実施例4のインレット板金とアース端子の構成を説明する図
【
図9】実施例5のインレット板金とアース端子の構成を説明する図
【
図10】実施例6のインレット板金とアース端子の構成を説明する図
【
図12】従来例のインレットの構成を説明する図、異種金属溶接構成を説明する図
【
図13】従来例の異種金属の溶接時に発生する課題を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0013】
[インレット板金とアース端子の構成]
図1は、実施例1のインレット板金とアース端子の溶接時に発生するひび割れを防止する構成を説明する図である。アース端子は第1の金属材である銅で形成され、インレット板金は第1の金属材とは異なる第2の金属材である鉄で形成される。なお、銅の融点は鉄の融点よりも低い。実施例1でも、インレットの構成は
図12(a)(b)と同様であり、各部について同じ符号を用いる。また、アース端子3とインレット板金28とを溶接する際の状態は
図12(c)と同様であり、各部について同じ符号を用いる。更に、溶接部における各金属間の重なり構成は、
図13で説明した構成と同じである。
図1(a)は、溶接部を斜めから描写した投影図である。ここで、第1の電極7を上側、第2の電極8を下側とし、上から下に向かって、第1の電極7、第1のインレット板金5、アース端子3、第2のインレット板金6、第2の電極8、の順に重なっている。
図1(b)は、
図1(a)の投影図を2次元で示した第1の電極7側から見た上面図である。(c)はアース端子3の側面側((a)の右側)から見た側面図であり、(d)はアース端子3の先端側(モールド部4とは反対側)((a)の手前側)から見た側面図である。
【0014】
実施例1では、インレットは第1のインレット板金5と第2のインレット板金6とを有している。なお、
図1では第1のインレット板金5と第2のインレット板金6とが別体として描画されているが、
図12のように図中右側に屈曲部を有し、屈曲部を介して一体となっていてもよい。アース端子3は、第1の面が第1のインレット板金5と接触し、第1の面とは反対側の第2の面が第2のインレット板金6と接触している。
【0015】
第1の電極7と第1のインレット板金5とが接する第1の領域を接触領域C 12(斜線部)とする。第1のインレット板金5とアース端子3の第1の面とが接する第2の領域を接触領域D 13(横線部)とする。ここで、第1の電極7側(第1の電極側)から見たときに、すなわち
図1(b)の上面図のように見たときに、接触領域C 12の内側に接触領域D 13が含まれる構成としている。
【0016】
また、アース端子3を挟んで、下方に配置された第2のインレット板金6と第2の電極8との接触領域についても同様に構成されている。すなわち、第2の電極8と第2のインレット板金6とが接する第3の領域を接触領域E 14(斜線部)とする。第2のインレット板金6とアース端子3の第2面とが接する第4の領域を接触領域F 15(横線部)とする。ここで、第2の電極8側(第2の電極側)から見たときに、接触領域E 14の内側に接触領域F 15が含まれる構成としている。なお、従来の
図13では、どちらの電極においても、アース端子3とインレット板金28との接触領域は、電極(7又は8)とインレット板金28との接触領域からはみ出した状態となっており、実施例1とは逆の関係となっている。
【0017】
[ひび割れ発生が防止される理由]
従来例で説明したひび割れ11の発生を防止する実施例1のメカニズムについて説明する。
図2は、
図1(d)の側面図において、溶着動作を行った際の様子を示している。従来例の
図13で説明した様に第1の電極7と第2の電極8に、矢印9の方向に圧力を加えて電流を流すと(溶接工程)、アース端子3は軟化し、つぶれてくる。そして、第1のインレット板金5の方向と、第2のインレット板金6の方向へ、それぞれ反力10を発生させる。実施例1では、接触領域C 12内に接触領域D 13が含まれるため、第1のインレット板金5方向への反力10が発生しても、第1の電極7と接触している第1のインレット板金5によって、反力10を受け止めることができる。このため、第1のインレット板金5は歪まず、ひび割れが発生することはない。同様に、アース端子3の下側において、接触領域E 14内に接触領域F 15が含まれるため、第2のインレット板金6の方向への反力10が発生しても、第2の電極8と接触している第2のインレット板金6によって、反力10を受け止めることができる。このため、第2のインレット板金6は歪まず、ひび割れが発生することは無い。以上のように、実施例1では、反力10を受け止められるだけの領域を、第1の電極7と第1のインレット板金5との接触領域、及び、第2の電極8と第2のインレット板金6との接触領域においてそれぞれ確保する。
【0018】
以上、実施例1によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【実施例2】
【0019】
[インレット板金とアース端子の構成]
実施例1とは異なる構成で、インレット板金にひび割れが発生しない構成を説明する。なお、実施例2でも、反力10を受け止められるだけの領域を、第1の電極7と第1のインレット板金5との接触領域、及び、第2の電極8と第2のインレット板金6との接触領域においてそれぞれ確保している。
図3は、実施例2の溶接構成を説明する図である。実施例2でも、溶接部における各金属間の重なり構成は、
図13等で説明した内容と同じであり、既に説明した構成と同じ構成には同じ符号を付し説明を省略する。
図3(a)は、溶接部を斜めから描写した投影図である。
図3(b)は、
図3(a)の投影図を2次元で示した第1の電極7側から見た上面図であり、(c)はアース端子3の側面側から見た側面図であり、(d)はアース端子3の先端側から見た側面図である。実施例2でも、2つの電極と、アース端子、インレット板金の重なり順は、実施例1と同じである。また、第1の電極7と第1のインレット板金5との接触領域C 12、第2の電極8と第2のインレット板金6との接触領域E 14も実施例1と同様である。
【0020】
ここで、実施例2では、第1のインレット板金5において接触領域C 12とは反対側の面、すなわちアース端子3の第1の面側に、第1のインレット板金5から突き出た第1の突起部16が設けられている。また、第2のインレット板金6において接触領域E 14とは反対側の面、すなわちアース端子3の第2の面側に、第2のインレット板金6から突き出た第2の突起部17が設けられている。実施例2では、第1のインレット板金5の第1の突起部16がアース端子3の第1の面と接触し、第2のインレット板金6の第2の突起部17がアース端子3の第2の面と接触する。第1の突起部16とアース端子3との接触領域を接触領域16Sとすると、第1の電極7側から見たとき、接触領域16Sは接触領域C 12に含まれる。また、第2の突起部17とアース端子3との接触領域を接触領域17Sとすると、第2の電極8側から見たとき、接触領域17Sは接触領域E 14に含まれる。なお、第1の突起部16は接触領域C 12内に含まれるように第1のインレット板金5に設けられればよく、好ましくは接触領域C 12の中央部に配置される。第2の突起部17は接触領域E 14内に含まれるように第2のインレット板金6に設けられればよく、好ましくは接触領域E 14の中央部に配置される。また、好ましくは、第1の突起部16と第2の突起部17とは、アース端子3を挟んで対向するように配置される。
【0021】
[ひび割れ発生が防止される理由]
続いて、従来例で説明したひび割れ11の発生を防止するメカニズムについて説明する。
図4は、
図3(d)の側面図において、溶着動作を行った際の様子を示している。第1の電極7と第2の電極8に、矢印9の方向に圧力を加えて電流を流すと、アース端子3は軟化し、つぶれてくる。そして、第1のインレット板金5の方向と、第2のインレット板金6の方向へそれぞれ反力10を発生させる。実施例2では、従来例とは異なり、反力10は、第1の突起部16と第2の突起部17を介してそれぞれ第1のインレット板金5と第2のインレット板金6に発生する。第1のインレット板金5において、第1の突起部16とは反対の面には第1の電極7が存在し、第2のインレット板金6において、第2の突起部17とは反対の面には第2の電極が存在する。このため、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6は反力10によっては歪まず、ひび割れが発生することは無い。
【0022】
以上、実施例2によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【実施例3】
【0023】
[インレット板金とアース端子の構成]
実施例1及び実施例2とは異なる構成でインレット板金にひび割れが発生しない構成を説明する。なお、実施例3でも、反力10を受け止められるだけの領域を、第1の電極7と第1のインレット板金5との接触領域、及び、第2の電極8と第2のインレット板金6との接触領域においてそれぞれ確保している。
図5は、実施例3における溶接構成を説明する図である。
図5(a)は、溶接部を斜めから描写した投影図である。
図5(b)は、
図5(a)の投影図を2次元で示した第1の電極7側から見た上面図であり、(c)はアース端子3の側面側から見た側面図であり、(d)はアース端子3の先端側から見た側面図である。実施例3は、実施例2で説明した第1の突起部16の代わりに、アース端子3が、アース端子3から第1のインレット板金5方向(第1のインレット板金側)に突き出した第3の突起部18を有している。また、アース端子3は、第2の突起部17の代わりに、アース端子3から第2のインレット板金6方向(第2のインレット板金側)に突き出した第4の突起部19を有している。実施例3では、アース端子3の第3の突起部18が、第1のインレット板金5の第1の電極7と接触している面とは反対側の面と接触し、アース端子3の第4の突起部19が、第2のインレット板金6の第2の電極8と接触している面とは反対側の面と接触する。第3の突起部18と第1のインレット板金5との接触領域を接触領域18Sとすると、第1の電極7側から見たとき、接触領域18Sは接触領域C 12に含まれる。また、第4の突起部19と第2のインレット板金6との接触領域を接触領域19Sとすると、第2の電極8側から見たとき、接触領域19Sは接触領域E 14に含まれる。なお、第3の突起部18は接触領域C 12内に含まれるようにアース端子3に設けられればよく、好ましくは接触領域C 12の中央部に配置される。第4の突起部19は接触領域E 14内に含まれるようにアース端子3に設けられればよく、好ましくは接触領域E 14の中央部に配置される。また、好ましくは、第3の突起部18と第4の突起部19とは、アース端子3を挟んで対称となる位置に配置される。
【0024】
[ひび割れ発生が防止される理由]
続いて、従来例で説明したひび割れの発生を防止するメカニズムについて説明する。
図6は、
図5(b)の側面図において、溶着動作を行った際の様子を示している。第1の電極7と第2の電極8に、矢印9の方向に圧力を加えて電流を流すと、アース端子3は軟化し、つぶれてくる。アース端子3の第3の突起部18及び第4の突起部19は、
図6に示すように第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6に沿ってつぶれる。そして、第1のインレット板金5の方向と第2のインレット板金6の方向へそれぞれ反力10を発生させる。実施例3では、従来例とは異なり、反力10が発生するが、第1のインレット板金5において第3の突起部18とは反対側の面には第1の電極7が存在し、第2のインレット板金6において第4の突起部19とは反対側の面には第2の電極8が存在する。このため、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6は反力10によって歪まず、ひび割れが発生することは無い。つまり、実施例1と同じく、反力10が発生する対向面に反力10を受け止める第1の電極7及び第2の電極8が存在し、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6のひび割れを防止する。
【0025】
以上、実施例3によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【実施例4】
【0026】
実施例1、実施例2、実施例3で説明してきたように、ひび割れを防止するには、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6に、溶着の際に発生する反力10を第1の電極7及び第2の電極8で受け止める必要がある。また、実施例2や実施例3の第1の突起部16及び第3の突起部18は、接触領域C 12の中央に配置されることが好ましく、第2の突起部17及び第4の突起部19は、接触領域D 13の中央に配置されることが好ましい。なぜならば、溶着時に安定した圧力を加えることができるからである。そこで、実施例4では、上述した箇所に対して正確に溶接せしめる方法を提案する。
【0027】
[インレット板金とアース端子の構成]
図7は、実施例4における溶接構成を説明する図である。また、
図7(a)は、溶接部を斜めから描写した投影図である。
図7(b)は、
図7(a)の投影図を2次元で示した第1の電極7側から見た上面図であり、(c)はアース端子3の側面側から見た側面図であり、(d)はアース端子3の先端側から見た側面図である。実施例4では、第1のインレット板金5は第1の電極7側に第1の凹部22を有し、第1の電極7は第1の凹部22に入り込むように第5の突起部20を有している。一方、第2のインレット板金6は第2の電極8側に第2の凹部24を有し、第2の電極8は第2の凹部24に入り込むように第6の突起部21を有している。
【0028】
また、第1のインレット板金5はアース端子3側に実施例2同様に第1の突起部16を有し、アース端子3は第1の突起部16が入り込むように第3の凹部23を有している。一方、第2のインレット板金6はアース端子3側に実施例2同様に第2の突起部17を有し、アース端子3は第2の突起部17が入り込むように第4の凹部25を有している。第1の電極7又は第2の電極8から見たときに、第5の突起部20及び第1の突起部16又は第6の突起部21及び第2の突起部17は、それぞれ接触領域C 12又は接触領域E 14の中に含まれる。なお、第5の突起部20、第1の突起部16、第2の突起部17、第6の突起部21を凹部とし、第1の凹部22、第3の凹部23、第4の凹部25、第2の凹部24を突起部としてもよい。
【0029】
このようにすると、第1の電極7と第1のインレット板金5、第1のインレット板金5とアース端子3、アース端子3と第2のインレット板金6、インレット板金6と第2の電極8、のそれぞれの互いの位置がずれない構成となる。以上説明したような構成で加圧溶着すると、溶着箇所が加圧される中央に配置されるため、溶着面が安定し、機械的強度や導通性が向上した溶接が可能となる。なお、溶着時のひび割れについては、実施例2で説明したように、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6に、突起を設けた構成と同じため、発生しない。
【0030】
[第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6の加工方法]
次に、実施例4の具体的な加工方法について説明する。
図8は、第1のインレット板金5と第2のインレット板金6の加工方法を説明する図である。
図8(a)は、第1のインレット板金5と第2のインレット板金6が一体の板金である状態を示した図である。第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6の材料は鉄であるため、ルータでの加工が難しく、型での押し出しや、曲げ、切断などの加工を行う。まず、所定のサイズに切断された鉄板56に対して、例えば金型による押し出しにより、第1の突起部16、第2の突起部17、第1の凹部22、第3の凹部24を形成する。そして、
図8(b)に示すように、第1の突起部16と第2の突起部17とが対向する位置関係となる様に、
図8(a)に示す矢印26の方向へ一体の鉄板56を曲げる。これにより、鉄板56に曲げ部27が形成される。次に、
図8(c)に示すように、鉄板56の曲げ部27を切断し、残った鉄板56の一方が第1のインレット板金5として形成され、他方が第2のインレット板金6として形成される。
【0031】
[アース端子の加工方法]
次に、アース端子3の加工について説明する。加工が容易なため図は省略する。アース端子3は銅材で作成されており、比較的柔らかく加工が容易である。また、実施例4では上下の同じ位置に第3の凹部23及び第4の凹部25を形成するため、アース端子3には数mm程度の厚みを有する。よって、ドリルなどのルータで、第3の凹部23及び第4の凹部25を作成する。以上説明した様に、アース端子3と、第1のインレット板金5と、第2のインレット板金6は、加工され、
図7で示した順番で重ね合わさり、各突起部と各凹部とが嵌り合って位置決めされ、溶着される。
【0032】
なお、
図8(c)で、鉄板56の曲げ部27が鉄板56から切り離される加工を行ったが、溶着工程では、瞬間的な大電流を流すため、鉄板56を切り離さずとも溶着を行うことが可能である。また、実施例1から実施例4では、アース端子3を挟んで上下対称的な構成を説明したが、上下の構成は、全ての実施例のどのような組み合わせであっても、本発明の課題を解決し、電気的な導通及び機械的な強度を確保することは達成可能である。
【0033】
以上、実施例4によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【実施例5】
【0034】
[インレット板金とアース端子の構成]
図9は、実施例5における溶接構成を説明する図である。実施例5でも、溶接部における各金属間の重なり構成は、
図13で説明した内容と同じであり、同じ符号を用いて説明を省略する。
図9(a)は、溶接部を斜めから描写した投影図である。
図9(b)は、
図9(a)の投影図を2次元で示した第1の電極7側から見た上面図であり、(c)はアース端子3の側面側から見た側面図であり、(d)はアース端子3の先端側から見た側面図である。実施例5でも、第1の電極7及び第2の電極8、アース端子3、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6の重なり順は、実施例1と同じである。実施例5では、実施例2の
図3に対して第1のインレット板金5に第1の凹部22を設け、第2のインレット板金6に第2の凹部24を追加した構成である。この場合、実施例4の
図8で説明した押し出し加工によって第1の突起部16と第1の凹部22、第2の突起部17と第2の凹部24、をそれぞれ形成することができる。また、上述した実施例と同様に第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6のひび割れを防止する。
【0035】
以上、実施例5によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【実施例6】
【0036】
[インレット板金とアース端子の構成]
図10は、実施例6における溶接構成を説明する図であり、上述した実施例で説明した構成と同じ構成には同じ符号を用いて説明を省略する。実施例6でも、溶接部における各金属間の重なり構成は、
図13で説明した内容と同じである。
図10(a)は、溶接部を斜めから描写した投影図である。
図10(b)は、
図10(a)の投影図を2次元で示した第1の電極7側から見た上面図であり、(c)はアース端子3の側面側から見た側面図であり、(d)はアース端子3の先端側から見た側面図である。実施例6でも、第1の電極7及び第2の電極8、アース端子3、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6の重なり順は、実施例1と同じである。実施例6では、実施例4の
図7に対して第2の突起部17、第6の突起部21、第2の凹部24、第4の凹部25を設けない構成である。すなわち、実施例6では、第2のインレット板金6、アース端子の第2の面に突起部や凹部を設けない構成である。なお、第1のインレット板金5側に突起部や凹部を設けず、第2のインレット板金6側に
図7と同様の突起部や凹部を設けてもよい。更に、
図3、
図5でアース端子3を挟んで両側に設けた突起部や凹部を、いずれか一方の側にだけ設けてもよい。このような構成でも、反力10を受け止められるだけの領域を、第1の電極7と第1のインレット板金5との接触領域、及び、第2の電極8と第2のインレット板金6との接触領域においてそれぞれ確保している。このため、第1のインレット板金5及び第2のインレット板金6のひび割れを防止する。
【0037】
以上、実施例6によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【実施例7】
【0038】
[レーザビームプリンタの説明]
図11に画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ1000(以下、プリンタ1000という)は、感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030を備えている。感光ドラム1010は、静電潜像が形成される像担持体である。帯電部1020は、感光ドラム1010を一様に帯電する。現像部1030は、感光ドラム1010に形成された静電潜像をトナーにより現像することでトナー像を形成する。感光ドラム1010上(像担持体上)に形成されたトナー像をカセット1040から供給された記録材としてのシートPに転写部1050によって転写し、シートPに転写した未定着のトナー像を定着器1060によって定着してトレイ1070に排出する。この感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030、転写部1050が画像形成部である。また、プリンタ1000は、電源装置1080を備え、電源装置1080からモータ等の駆動部と制御部5000へ電力を供給している。プリンタ1000は、筐体板金1007と、筐体板金1007とビス1008により締結されたインレット板金1006と、インレット板金1006によって保持されたインレット1005と、を有している。インレット1005に電源コード(不図示)が嵌合されることで、電源装置1080に交流電力が供給される。制御部5000は、CPU(不図示)を有しており、画像形成部による画像形成動作やシートPの搬送動作等を制御している。
【0039】
インレット1005は、アース端子を有しており、アース端子には第1のインレット板金及び第2のインレット板金が、実施例1から実施例6の構成で溶接されている。第1のインレット板金と第2のインレット板金は、少なくとも一方の板金がインレット板金1006と一体となっている。なお、本発明の溶接方法が適用されたインレット1005を適用することができる画像形成装置は、
図11に例示された構成に限定されない。
【0040】
以上、実施例7によれば、インレットにおける機械的強度を確保し、電気的導通性の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
3 アース端子
5 第1のインレット板金
6 第2のインレット板金
7 第1の電極
8 第2の電極
12 接触領域C
13 接触領域D
14 接触領域E
15 接触領域F