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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】観察装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/53 20230101AFI20240805BHJP
   G03B 13/06 20210101ALI20240805BHJP
   G03B 13/02 20210101ALI20240805BHJP
   G03B 17/00 20210101ALI20240805BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240805BHJP
   H04N 23/611 20230101ALI20240805BHJP
【FI】
H04N23/53
G03B13/06
G03B13/02
G03B17/00 Q
G03B15/00 P
H04N23/611
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020093879
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021190816
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】信夫 史弘
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-154899(JP,A)
【文献】特開平02-150202(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222
H04N 5/253-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
G03B 13/06
G03B 13/02
G03B 17/00
G03B 15/00
A61B 3/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画像表示素子と、
該画像表示素子からの光を観察者の眼球に導く接眼光学系と、
それぞれ前記眼球の光学像を形成する撮像レンズと前記光学像を撮像する撮像センサを含む複数の撮像系とを有し、
前記複数の撮像系のそれぞれの前記撮像レンズの光軸は、前記接眼光学系の光軸に対して、該光軸上の互いに異なる位置にて互いに異なる傾斜角度で交差し、
前記複数の撮像系のそれぞれにおける前記撮像レンズの光軸と前記撮像センサの撮像面の法線とがなす角度が互いに異なることを特徴とする観察装置。
【請求項2】
前記撮像レンズの光軸と前記撮像面の法線とがなす角度は、前記撮像系の前記撮像センサ側のピント面の前記接眼光学系の光軸に対する傾きが前記撮像レンズの光軸に直交する面の前記接眼光学系の光軸に対する傾きよりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記複数の撮像系は、互いに異なる画角を有し、
前記複数の撮像系のそれぞれの前記画角のうち最も広い画角をω1、最も狭い画角をω2とするとき、
-0.30≦tan(ω2)/tan(ω1)≦0.80
なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の観察装置。
【請求項4】
前記複数の撮像系のそれぞれの前記傾斜角度のうち絶対値が最も大きい傾斜角度をθ1、絶対値が最も小さい傾斜角度をθ2とするとき、
1.1≦tan(θ1)/tan(θ2)≦8.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項5】
前記複数の撮像系のそれぞれにおける前記傾斜角度の絶対値をθa、前記撮像面の法線と前記接眼光学系の光軸とがなす角度の絶対値をθbとするとき、
0.70≦tan(θa)/tan(θb)<1.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項6】
前記複数の撮像系のそれぞれにおける前記傾斜角度の絶対値をθnとするとき、
10°≦θn≦70°
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項7】
前記複数の撮像系のそれぞれにおける前記撮像レンズの焦点距離をf、前記撮像センサの撮像面の対角長をHとし、前記複数の撮像系のそれぞれのH/fのうち最大値をH1/f1、最小値のH2/f2とするとき、
1.1≦(H1/f1)/(H2/f2)≦2.5
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項8】
前記複数の撮像系のそれぞれにおける前記撮像レンズの眼球側の曲率をR1、撮像センサ側の曲率をR2とするとき、
-4.00≦(R1+R2)/(R1-R2)<1.00
なる条件を満足する撮像系を少なくとも1つ含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項9】
画像を表示する画像表示素子と、
該画像表示素子からの光を観察者の眼球に導く接眼光学系と、
それぞれ前記眼球を撮像する複数の撮像系とを有し、
前記複数の撮像系のそれぞれの撮像方向は、前記接眼光学系の光軸に対して、該光軸上の互いに異なる位置にて互いに異なる傾斜角度をなす方向であり、
前記複数の撮像系はそれぞれ、該撮像系の撮像センサ側のピント面の前記接眼光学系の光軸に対する傾きが前記撮像方向に直交する面の前記接眼光学系の光軸に対する傾きよりも小さくなるように構成されていることを特徴とする観察装置。
【請求項10】
前記複数の撮像系のうち1つの撮像系から得られたメイン撮像データを用いて、前記接眼光学系からの距離が互いに異なる前記眼球の向きを取得する処理手段を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項11】
前記処理手段は、前記接眼光学系から前記眼球までの距離に応じて、前記メイン撮像データを得る前記撮像系を切り替えることを特徴とする請求項10に記載の観察装置。
【請求項12】
前記処理手段は、
前記メイン撮像データを得る前記撮像系とは異なる前記撮像系からのサブ撮像データを用いて、前記メイン撮像データを用いて取得した前記眼球の向きを補正することを特徴とする請求項10または11に記載の観察装置。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の観察装置を有し、
前記処理手段により得られた前記眼球の向きに応じて撮像画面内で領域を選択することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者の眼球を撮像する撮像系を備えた観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置には、観察装置としての光学ファインダまたは電子ビューファインダの接眼光学系を覗く観察者の眼球の向き、すなわち視線方向を検出し、該視線方向に応じて撮像画面内にてオートフォーカスや自動露出等を行う領域を選択する視線検出機能を有するものがある。このような視線検出機能は、接眼光学系とは別に、観察者の眼球を撮像する撮像系を設けることによって実現される。
特許文献1には、接眼光学系内にプリズムを配置して光路を分岐し、分岐光路からの光を撮像系に導く撮像装置が開示されている。また、特許文献2には、接眼光学系の外部から該接眼光学系の光軸に対して傾斜した方向から眼球を撮像する撮像系を有する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-188430号公報
【文献】特開平05-313057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接眼光学系内に光路を分岐するプリズム等の光学部材を配置すると、観察装置および撮像装置が大型化する。また、接眼光学系内に接眼光学系としては不要な光学部材を配置することで、接眼光学系の設計自由度が低下する。
【0005】
さらに、接眼光学系の光軸に対して傾斜した方向から眼球を撮像すると、接眼光学系から眼球までの距離が変動することによって撮像倍率の変動が大きくなる。例えば、観察者が裸眼の場合と眼鏡をかけている場合とで同等の視線検出精度を維持することが難しくなる。
【0006】
本発明は、眼球の位置が変動しても眼球を良好に撮像することができるようにした小型の観察装置およびこれを備えた撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての観察装置は、画像を表示する画像表示素子と、該画像表示素子からの光を観察者の眼球に導く接眼光学系と、それぞれ眼球の光学像を形成する撮像レンズと光学像を撮像する撮像センサを含む複数の撮像系とを有する。複数の撮像系のそれぞれの撮像レンズの光軸は、接眼光学系の光軸に対して、該光軸上の互いに異なる位置にて互いに異なる傾斜角度で交差する。複数の撮像系のそれぞれにおける撮像レンズの光軸と撮像センサの撮像面の法線とがなす角度が互いに異なることを特徴とする。
【0008】
また本発明の他の一側面としての観察装置は、画像を表示する画像表示素子と、該画像表示素子からの光を観察者の眼球に導く接眼光学系と、それぞれ眼球を撮像する複数の撮像系とを有する。複数の撮像系のそれぞれの撮像方向は、接眼光学系の光軸に対して、該光軸上の互いに異なる位置にて互いに異なる傾斜角度をなす方向である。複数の撮像系はそれぞれ、該撮像系の撮像センサ側のピント面の接眼光学系の光軸に対する傾きが撮像方向に直交する面の接眼光学系の光軸に対する傾きよりも小さくなるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型の観察装置でありながらも、眼球の位置が変動しても良好に眼球を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1である観察装置の構成を示す図。
図2】実施例1における撮像系の構成を示す図。
図3】実施例1における他の撮像系の構成を示す図。
図4】本発明の実施例2である観察装置の構成を示す図。
図5】実施例2における撮像系の構成を示す図。
図6】実施例2における他の撮像系の構成を示す図。
図7】実施例2におけるさらに別の撮像系の構成を示す図。
図8】本発明の実施例3である観察装置の構成を示す図。
図9】実施例1~3の観察装置を備えた撮像装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1である観察装置1Aの構成を示している。観察装置1Aは、画像表示素子3と、接眼光学系2と、複数の撮像系4、5とを有する。図4は、本発明の実施例2である観察装置1Bの構成を示している。観察装置1Bは、画像表示素子3と、接眼光学系2と、複数の撮像系6、7、8とを有する。
【0012】
図2および図3はそれぞれ、観察装置1Aに設けられた撮像系4および撮像系5の構成を示している。図5図6および図7はそれぞれ、観察装置1Bに設けられる撮像系6、撮像系7および撮像系8の構成を示している。各撮像系(4~8)は、物体側から像側に順に、絞り(11、14、17、20、23)撮像レンズ(12、15、18、21、24)および撮像センサ(13、16、19、22、25)により構成されている。
【0013】
表1~5はそれぞれ、撮像系4~8の数値例を示す。各数値例における全体諸元のうち「焦点距離」は撮像レンズの焦点距(mm)、「撮像面対角長」は撮像センサの矩形の撮像面の対角長(mm)、「画角」は撮像レンズの画角(°)を示す。
【0014】
また、面データにおいて、iを物体側から数えた面番号とすると、rはi番目の面の曲率半径(mm)、zとyはそれぞれi番目の面の図1図4に示すz方向とy方向での座標を示す。θは撮像レンズの光軸および撮像センサの撮像面の法線が接眼光学系の光軸に対してなす傾斜角度(°)、ndとνdはそれぞれ、i番目のレンズのd線(587.6nm)に対する屈折率およびd線を基準とするアッベ数を示す。アッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、νd=(Nd-1)/(NF-NC)で表される。「有効径」は、i番目の面のうち撮像面に到達する光が通過する領域の直径を示す。
【0015】
また、面番号の横に*が付されたレンズ面は非球面形状を有する。非球面形状は、レンズ面の頂点からの撮像レンズの光軸上の位置をx、該光軸に直交する方向での高さをh、光の進行方向を正とし、rを近軸曲率半径、Kを円錐定数、A4,A6,A8を非球面係数とするとき、以下の式で表される。円錐定数と非球面係数における「E±M」は×10±Mを意味する。
【0016】
【数1】
【実施例1】
【0017】
図1に示す実施例1の観察装置1Aにおいて、画像表示素子3は、液晶素子や有機EL素子等により構成されて観察画像を表示する。接眼光学系2は、画像表示素子3からの光を観察者の眼球10に導く。観察装置1Aは、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に搭載され、該撮像装置により被写体を撮像して得られた撮像画像を観察画像として表示する電子ビューファインダ(EVF)として機能する。
【0018】
また観察装置1Aは、撮像系4、5を有する。撮像系4、5はそれぞれ、図2および図3に示すように、絞り11、14と、該絞り11、14の開口を通過した光を結像させる撮像レンズ12、15と、撮像レンズ12、15により形成された光学像を撮像(光電変換)する光電変換素子としての撮像センサ13、16とにより構成されており、接眼光学系2を覗く眼球10を撮像する。撮像系4、5により眼球10を撮像して得られた撮像データ(画像データ)は、眼球10の向き、すなわち観察者の視線を検出するために用いられる。
【0019】
撮像系4はその撮像方向(撮像レンズ12の光軸12aが延びる方向)が接眼光学系2の光軸2a上での接眼光学系2からの距離が遠い位置を向いており、撮像系5はその撮像方向(撮像レンズ15の光軸15aが延びる方向)が接眼光学系2からの距離が近い位置を向いている。すなわち、撮像系4、5は、接眼光学系2からの距離が互いに異なる位置にある眼球10を撮像するために設けられている。
【0020】
具体的には、撮像系4の撮像レンズ12の光軸12aと撮像系5の撮像レンズ15の光軸15aは、接眼光学系2の光軸2aに対して、該光軸2a上の互いに異なる位置(接眼光学系2からの距離が異なる位置)において互いに異なる傾斜角度θ4、θ5で交差する。
【0021】
このように撮像系4、5は、接眼光学系2の光軸2aに対して傾斜した撮像方向から眼球10を撮像する構成を有するため、従来のように接眼光学系にプリズムやミラー等の光学部材を設けることによる不要な光路長の増加を防止することができる。特に本実施例のようなEVFでは、接眼光学系に求められる拡大倍率が大きく、接眼光学系の焦点距離が短くなるため、接眼光学系の光路長の増加は好ましくない。
【0022】
また、眼球を正面からではなく斜め方向から撮像する場合、接眼光学系から眼球までの距離によって撮像センサ上において眼球が撮像される像高が変化する。さらに接眼光学系から眼球までの距離によって撮像系から眼球までの距離も変化するため、撮像系のピント位置が変化するとともに、眼球に対する撮像倍率も変化する。これらの影響は、眼鏡型端末やヘッドマウントディスプレイのように接眼光学系から眼球までの距離がほぼ固定される場合は無視できるが、撮像装置のEVFのように接眼光学系から眼球までの距離が大きく変化し得る場合は、眼球までの距離によっては視線検出が困難になる。
【0023】
このため本実施例では、接眼光学系2から眼球10までの距離に応じた撮像系4、5を設け、上述した像高、ピント位置および撮像倍率の変化を緩和することで、眼球10までの距離が変化してもが眼球10を良好に撮像することができ、高精度な視線検出を行えるようにしている。具体的には、撮像系4、5の撮像レンズ12、15の光軸12a、15aが接眼光学系2の光軸2aに交差する位置を互いに異ならせることで、眼球10の光学像が撮像センサ13、16の中心に形成される距離を変化させている。
【0024】
また、各撮像系に対応する眼球10の位置に応じて撮像レンズの画角(以下、撮像系の画角ともいう)および焦点距離を異ならせることで、眼球10までの距離の変化に対するピント位置や撮像倍率の変化を抑制している。具体的には、接眼光学系2からの距離が近い眼球10を撮像する撮像系5に比べて、距離が遠い眼球10を撮像する撮像系4の画角を狭くしている。
【0025】
また、各撮像系において、撮像レンズの光軸が接眼光学系2の光軸2aに対してなす傾斜角度(以下、レンズ光軸角度という)と撮像センサの撮像面の法線(13a、16a)が接眼光学系2の光軸2aに対してなす傾斜角度(以下、センサ法線角度という)とは互いに異なる。レンズ光軸角度に対するセンサ法線角度の差(=センサ法線角度-レンズ光軸角度)を、センサチルト角度Δθという。さらに本実施例では、撮像系4のセンサチルト角度Δθ4と撮像系5のセンサチルト角度Δθ5も互いに異なる。
【0026】
接眼光学系2の光軸2aに対して傾いた撮像方向から眼球10を撮像する場合において、レンズ光軸角度とセンサ法線角度が一致する(すなわちセンサチルト角が0である)と、撮像系のピントが合う平面であるピント面は、撮像レンズの光軸に直交し、接眼光学系2の光軸2aに直交する面から大きく傾いた面となる。しかし、眼球10のうち角膜だけでなく、強膜、瞳孔、さらには瞼にもピントが合うように撮像するためには、撮像系のピント面が接眼光学系2の光軸2aに直交する面(眼球10に正対する面)に対する傾きができるだけ小さい面であることが望ましい。このため本実施例では、各撮像系において撮像センサを撮像レンズに対してチルトさせてセンサチルト角度を適切に設定することで、該撮像系のピント面の接眼光学系2の光軸2aに直交する面に対する傾きを撮像レンズの光軸(撮像方向)に直交する面よりも小さくしている。
【0027】
具体例として、図2に示す撮像系4では、センサチルト角度Δθ4を撮像系4の観察者側のピント面12cの接眼光学系2の光軸2aに直交する面2bに対する傾きが撮像レンズ12の光軸12aに直交する面12bよりも小さくなるように設定されている。なお、このとき、撮像系4の撮像センサ側のピント面の接眼光学系2の光軸2aに対する傾きは、撮像レンズ12の光軸12aに直交する面12bの前記接眼光学系の光軸に対する傾きよりも小さくなる。
【0028】
以下、本実施例および後述する他の実施例において、複数の撮像系が満足することが望ましい条件について説明する。
【0029】
複数の撮像系の画角のうち最も広い画角をω1、最も狭い画角をω2とするとき、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
-0.30≦tan(ω2)/tan(ω1)≦0.80 (1)
条件式(1)は、接眼光学系と眼球との距離の変化に十分に対応可能な複数の撮像系を設けるための画角に関する条件を示す。tan(ω2)/tan(ω1)が条件式(1)の下限を下回ると、いずれかの撮像系の結像性能が低くなって歪曲等が発生するとともに、眼球に対する撮像倍率が小さくなるため、好ましくない。tan(ω2)/tan(ω1)は条件式(1)の上限を上回ると、複数の撮像系の画角が互いに近づきすぎて眼球の距離の変化に対する影響を十分に軽減することができなくなるため、好ましくない。
【0030】
条件式(1)の数値範囲を、以下のようにすることがより好ましい。
-0.20≦tan(ω2)/tan(ω1)≦0.70 (1a)
条件式(1)の数値範囲を、以下のようにすることがさらに好ましい。
-0.10≦tan(ω2)/tan(ω1)≦0.60 (1b)
また、複数の撮像系のレンズ光軸角度の絶対値のうち最も大きいレンズ光軸角度をθ1、最も小さいレンズ光軸角度をθ2とするとき、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
1.1≦tan(θ1)/tan(θ2)≦8.0 (2)
条件式(2)は、接眼光学系と眼球との距離の変化に十分に対応可能な複数の撮像系を設けるためのレンズ光軸角度に関する条件を示す。tan(θ1)/tan(θ2)が条件式(2)の下限を下回ると、眼球の距離の変動による影響を軽減できなくなるため、好ましくない。tan(θ1)/tan(θ2)が条件式(2)の上限を上回ると、撮像系の光路が接眼光学系の光路に干渉するおそれが生じるため、好ましくない。
【0031】
条件式(2)の数値範囲を、以下のようにすることがより好ましい。
1.5≦tan(θ1)/tan(θ2)≦6.0 (2a)
条件式(2)の数値範囲を、以下のようにすることがさらに好ましい。
1.7≦tan(θ1)/tan(θ2)≦5.0 (2b)
また、各撮像系のレンズ光軸角度の絶対値をθa、センサ法線角度の絶対値をθbとするとき、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
0.70≦tan(θa)/tan(θb)<1.00 (3)
条件式(3)は、撮像系のピント面の接眼光学系の光軸に直交する面に近づけるための条件を示す。tan(θa)/tan(θb)が条件式(3)の下限値を下回ると、撮像系が大型化するため、好ましくない。tan(θa)/tan(θb)が条件式(3)の上限を上回ると、撮像系の観察者側のピント面の傾きを接眼光学系の光軸に直交する面に近づけるために撮像系の全長が長くなるので、好ましくない。
【0032】
条件式(3)の数値範囲を、以下のようにすることがより好ましい。
0.75≦tan(θa)/tan(θb)<1.00 (3a)
条件式(3)の数値範囲を、以下のようにすることがさらに好ましい。
0.80≦tan(θa)/tan(θb)<1.00 (3b)
また、各撮像系のレンズ光軸角度の絶対値をθnとするとき、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
10°≦θn≦70° (4)
条件式(4)は、接眼光学系に対する影響を抑えつつ撮像系の光学性能を確保するための条件を示す。θnが条件式(4)の下限値を下回ると、撮像系の位置が接眼光学系に近つなりすぎて接眼光学系の光学性能に影響するおそれがあるため、好ましくない。θnが条件式(4)の上限を上回ると、撮像系が接眼光学系に対する傾きが大きくなりすぎて撮像系の光学性能を確保することが難しくなるため、好ましくない。
【0033】
条件式(4)の数値範囲を、以下のようにすることがより好ましい。
10°≦θn≦65° (4a)
条件式(4)の数値範囲を、以下のようにすることがさらに好ましい。
10°≦θn≦60° (4b)
また、各撮像系の撮像レンズの焦点距離をf、撮像センサの撮像面の対角長をHとし、複数の撮像系のH/fのうち最大値をH1/f1、最小値をH2/f2とするとき、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
1.1≦(H1/f1)/(H2/f2)≦2.5 (5)
条件式(5)は、接眼光学系と眼球との距離が変動しても複数の撮像系による視線検出精度を良好にするための条件を示す。(H1/f1)/(H2/f2)が条件式(5)の下限を下回ると、複数の撮像系の特性が近過ぎて、眼球の距離の変動による視線検出精度の変化が大きくなるため、好ましくない。(H1/f1)/(H2/f2)が条件式(5)の上限を上回ると、複数の撮像系の特性の違いが大き過ぎて、撮像系の数が増加するおそれがあるため、好ましくない。
【0034】
条件式(5)の数値範囲を、以下のようにすることがより好ましい。
1.1≦(H1/f1)/(H2/f2)≦2.1 (5a)
条件式(5)の数値範囲を、以下のようにすることがさらに好ましい。
1.1≦(H1/f1)/(H2/f2)≦1.9 (5b)
また、各撮像系の撮像レンズのうち眼球側の曲率をR1、撮像センサ側の曲率をR2とするとき、各撮像系は以下の条件式(6)を満足する少なくとも1つの撮像レンズを含むことが望ましい。
-4.00≦(R1+R2)/(R1-R2)<1.00 (6)
条件式(6)は、各撮像系において視線検出のための光学性能と小型化を両立するために撮像レンズが満足することが望ましい条件を示す。(R1+R2)/(R1-R2)が条件式(6)の下限を下回ると、撮像レンズが大型化するため、好ましくない。(R1+R2)/(R1-R2)が条件式(6)の上限を上回ると、撮像レンズの像面湾曲やコマ収差等が増加して撮像レンズの光学性能が低下するため、好ましくない。
【0035】
条件式(6)の数値範囲を、以下のようにすることがより好ましい。
-3.50≦(R1+R2)/(R1-R2)<1.00 (6a)
条件式(5)の数値範囲を、以下のようにすることがさらに好ましい。
【0036】
-3.30≦(R1+R2)/(R1-R2)<1.00 (6b)
実施例1の数値例における条件式(2)のtan(θa)/tan(θb)、条件式(5)のH/fおよび条件式(6)の(R1+R2)/(R1-R2)を表1、2に示す。また、条件式(1)のtan(ω2)/tan(ω1)、条件式(2)のtan(θ1)/tan(θ2)および条件式(5)の(H1/f1)/(H2/f2)を表6にまとめて示す。
【実施例2】
【0037】
図4は、本発明の実施例2である観察装置1Bの構成を示している。観察装置1Bにおける画像表示素子3と接眼光学系2は、実施例1における画像表示素子3と接眼光学系2と同じものである。本実施例では、撮像系4、5の数が2つである実施例1に比べて撮像系6~8の数を3つに増やすことで、接眼光学系2からの眼球10までの距離の変化に対してより高い視線検出精度を得ることができる。
【0038】
撮像系6、7、8はそれぞれ、図5図6および図7に示すように、絞り17、20、23と、該絞り17、20、23の開口を通過した光を結像させる撮像レンズ18、21、24、撮像レンズ18、21、24により形成された光学像を撮像する光電変換素子としての撮像センサ19、22、25とにより構成されており、接眼光学系2を覗く眼球10を撮像する。実施例1と同様に、撮像系6~8により眼球10を撮像して得られた撮像データは、眼球10の向き、すなわち観察者の視線を検出するために用いられる。
【0039】
撮像系6はその撮像方向が接眼光学系2からの距離が遠い位置を向いており、撮像系7はその撮像方向が接眼光学系2からの距離が近い位置を向いている。撮像系8はその撮像方向が接眼光学系2からの距離が中間の位置を向いている。すなわち、撮像系6~8は、接眼光学系2からの距離が互いに異なる位置にある眼球10を撮像するために設けられている。
【0040】
具体的には、撮像系6の撮像レンズ18の光軸18aと撮像系7の撮像レンズ21の光軸21aと撮像系8の撮像レンズ24の光軸24aは、接眼光学系2の光軸2aに対して互いに異なる位置(接眼光学系2からの距離が異なる位置)において互いに異なる傾斜角度θ6、θ7、θ8で交差する。
【0041】
また本実施例でも、撮像系6~8の画角を互いに異ならせている。具体的には、接眼光学系2からの距離が近い眼球10を撮像する撮像系6の画角、距離が中間の眼球10を撮像する撮像系8の画角、距離が遠い眼球10を撮像する撮像系7の画角の順で狭くしている。
【0042】
さらに本実施例でも、図5~7に示すように、撮像系6~8のそれぞれにおいて撮像センサ19、22、25の撮像面の法線19a、22a、25aを撮像レンズ18、21、24の光軸18a、21a、24aに対してチルトさせてセンサチルト角度Δθ6、Δθ7、Δθ8を適切に設定することで、各撮像系の観察者側のピント面の接眼光学系2の光軸2aに直交する面に対する傾きを撮像レンズの光軸に直交する面よりも小さくしている。
【0043】
実施例2の数値例における条件式(2)のtan(θa)/tan(θb)、条件式(5)のH/fおよび条件式(6)の(R1+R2)/(R1-R2)を表3~5に示す。また、条件式(1)のtan(ω2)/tan(ω1)、条件式(2)のtan(θ1)/tan(θ2)および条件式(5)の(H1/f1)/(H2/f2)を表6にまとめて示す。
なお、本実施例では3つの撮像系を設けたが、撮像系の数を4つ以上としてもよい。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
以上説明した実施例1、2では、各撮像系において撮像レンズの光軸に対して撮像センサの撮像面の法線をチルトする構成により、撮像系の撮像センサ側のピント面の接眼光学系の光軸に対する傾きを撮像レンズの光軸(撮像方向)に直交する面の接眼光学系の光軸に対する傾きよりも小さくする場合について説明した。しかし、撮像系の撮像センサ側のピント面の接眼光学系の光軸に対する傾きが撮像方向に直交する面の接眼光学系の光軸に対する傾きよりも小さくなれば、上述した実施例の構成と異なる構成であってもよい。例えば撮像系を構成する撮像レンズは複数枚から構成されていても構わない。また、観察装置の大きさを抑制するために、撮像系の中にミラーを配置する等して光路を折り曲げる構成を採ってもよい。この場合はミラーを展開した状態において、本実施例の条件を満たせればよい。
【実施例3】
【0051】
図8は、本発明の実施例3である観察装置101の構成を示している。観察装置101は、画像表示素子103と、接眼光学系102と、観察者の眼球109を撮像する撮像系104、105とを有する。画像表示素子103と接眼光学系102は実施例1における画像表示素子3と接眼光学系2と同じものである。
【0052】
また観察装置101は、撮像系104により眼球109を撮像する際に眼球109に対して赤外光を照射する照明系106と、撮像系104により眼球109を撮像する際に眼球109に対して赤外光を照射する照明系107を有する。照明系106、107は、接眼光学系102からの距離が異なる眼球109に対して接眼光学系102の光軸に対して互いに異なる角度だけ傾斜した方向から赤外光を照射する。赤外光を用いるのは、その照射を観察者に視認されないようにするためである。
【0053】
観察装置101は、処理回路(処理手段)108に接続されている。処理回路108は、撮像系104、105で得られた撮像データを用いて観察者の視線方向を算出する。この際、処理回路108は、接眼光学系102から眼球109までの距離に応じて、撮像系104、105のうち主として視線検出に用いる撮像データ(メイン撮像データ)を得る撮像系を切り替える。これは、眼球109までの距離に応じて、最も視線検出精度が高くなる撮像系が異なるためである。眼球109までの距離は、撮像系104、105から得られる撮像データの視差等を用いて算出すればよい。視線方向の演算方法は、照明系106、107から眼球109に照射された赤外光の反射像の座標から算出する方法や、眼球109を中心とする顔の広い範囲の撮像データから算出する方法等がある。
【0054】
また処理回路108は、メイン撮像データを得る撮像系とは別の撮像系から得られた撮像データ(サブ撮像データ)を用いて、メイン撮像データから得られる視線方向を補正してもよい。例えば、メイン撮像データを得る撮像系より画角が広い別の撮像系からのサブ撮像データには、顔のうち眼球109以外の範囲の画像が含まれていることがあるので、このサブ撮像データを利用してメイン撮像データを用いて算出された視線方向を補正することで、メイン撮像データのみを用いる場合よりも視線方向の視線精度を向上させることができる。
【0055】
以上説明した実施例1~3によれば、小型でありながらも、眼球の位置が変動しても眼球を良好に撮像することができ、良好な視線検出精度を維持することが可能な観察装置を実現することができる。
【0056】
上記実施例1~3では、複数の撮像系を接眼光学系の上下に配置した場合について説明した。これは、通常の接眼光学系の有効領域は上下方向の方が水平方向より狭いので、複数の撮像系を接眼光学系の上下に配置する方が観察装置の大型化を抑えやすいためである。ただし、複数の撮像系は、接眼光学系の光軸を中心する円周上であればどの位置に配置されてもよい。
【0057】
また実施例1~3では、撮像系の光学系が撮像レンズと絞りにより構成されている場合について説明したが、絞りの前面にカバーガラスを配置してもよいし、撮像レンズの前後のいずれかにプリズム等の光学部材を配置してもよい。
【0058】
図9は、実施例1~3の観察装置1A、1B、101のうちいずれかを搭載したデジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置200を示している。
【0059】
撮像装置200は、撮像レンズ201により形成された被写体像をCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像センサ202により撮像する。撮像センサ202から出力された撮像信号は、演算処理回路(処理手段)203に入力される。演算処理回路203は、撮像信号に対して各種画像処理を行って撮像画像データを生成する。撮像画像データは、EFVとしての観察装置に出力され、観察装置内の画像表示素子(3、103)に表示される。ユーザは、その眼球(10、109)により観察装置内の接眼光学系(2、102)を覗くことで画像表示素子に表示された画像を観察することができる。
【0060】
この際、演算処理回路203は、観察装置の撮像系(4~8、104、105)から得られる撮像データを用いて、上記処理回路108のようにユーザ(観察者)の視線方向を算出(取得)する。そしてこの視線方向から撮像画面内におけるユーザの注視位置を算出する。さらに演算処理回路203は、撮像画面内から注視位置を含む領域を選択し、該選択した領域の撮像画像データを用いて自動露出やオートフォーカス等の処理を行う。
【0061】
このように小型で視線検出精度が高い観察装置を用いることで、小型でありながらも自動露出やオートフォーカス等の処理を良好に行える撮像装置を実現することができる。
【0062】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1A,1B,101 観察装置
2,102 接眼光学系
3,103 画像表示素子
4,5,6,7,8,104,105 撮像系
12,15,18,21,24 撮像レンズ
13,16,19,22,25 撮像センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9