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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】配管保持具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20240805BHJP
   F16L 3/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F16L3/12 G
F16L3/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020104440
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021196033
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】植田 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛士
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031433(JP,A)
【文献】中国実用新案第201639211(CN,U)
【文献】特開2000-283337(JP,A)
【文献】特開2015-166627(JP,A)
【文献】特開2000-283332(JP,A)
【文献】特開2002-372170(JP,A)
【文献】特開2020-084742(JP,A)
【文献】特開2014-214868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0038398(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103807509(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/12
F16L 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外周を環状に囲んで挟持する挟持部と、
前記挟持部から前記配管と交差する方向に向けて張り出すと共に、互いに長さが異なる複数の位置決め部と、
前記挟持部から前記位置決め部と同じ方向に向けて張り出すと共に、前記位置決め部よりも長く形成された固定部と、を備え、
各前記位置決め部は、前記配管を支持する対象である被支持体に同じ方向から当接する先端部を有し、
各前記先端部のうち、いずれかの前記先端部記被支持体に当接させた状態で、前記固定部前記被支持体に固定ることにより、前記被支持体から所定の距離離間した状態で前記配管を支持可能であると共に、前記被支持体に当接させる前記先端部を選択することにより、前記所定の距離の変更が可能である、
ことを特徴とする配管保持具。
【請求項2】
前記位置決め部同士における長さの差が、前記配管と、前記配管と外径が異なる別配管との半径の差と同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載された配管保持具。
【請求項3】
前記先端部と前記被支持体との間に挟むことができる調整部材を備え、
前記調整部材が挟まれることで、前記配管と前記被支持体とが離間する距離の調整が可能である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された配管保持具。
【請求項4】
前記固定部に複数の切取溝が形成されており、
前記切取溝に沿って前記固定部が切り取られることで、前記固定部が張り出す長さの調整が可能である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載された配管保持具。
【請求項5】
前記挟持部の内側に、滑り止め部が形成された、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載された配管保持具。
【請求項6】
前記挟持部が一端部と他端部とを有する帯状に形成され、前記一端部が前記他端部に差し込まれ、前記挟持部が任意の位置で前記他端部に係止されることで、前記挟持部による内径が任意の大きさとなり、
前記固定部に、固着具が挿通可能な挿通孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載された配管保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水設備では、床下に固定される配管において、配管内の排水を容易にするため、予め算出された所定の勾配を設けて配管が固定されている。この所定の勾配を設けて配管を固定するためには、種々の配管固定具または配管支持具等が提案されている。例えば、特許文献1では、配管の下に所定の高さ寸法で形成された支持部材を配置することで、配管を所定の勾配で固定する配管固定具が提案されており、また、特許文献2では、土台と支柱と配管支持部とを備え、この配管支持部の一端が上下動可能に支柱に固定されていることで、配管を固定する高さの調整が可能な配管支持具が提案されている。
【0003】
また、市販品の中には、所定の勾配に配管を固定するために必要な長さよりも長めに形成された固定部を備え、配管の固定作業において、事前に固定部の余分な長さ部分を切り取って、配管が配置される高さの調整をすることで、所定の勾配で配管を固定する配管保持具なども存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-8881号公報
【文献】特開2000-310357号公報
【0005】
しかし、特許文献1の配管固定具では、所定の勾配を設けるために、配管が固定される位置や配管の外径等によって予め所定の高さ寸法に形成された支持部材を使い分けなければならず、配管固定具を構成する部材の数も多くなり、配管の固定作業や勾配の調整作業が煩雑で手間がかかるものであった。
【0006】
また、例えば、特許文献2の配管保持具についても、床下に配管支持具の土台を固定した状態で、土台から伸びた支柱に固定された配管支持部を上下にスライドさせて高さを調整するものであるため、作業者が配管支持部を所定の高さで支える等しながら配管支持部を固定する必要があり、配管の固定作業や勾配の調整作業に手間がかかるものであった。
【0007】
さらに、市販品においても、事前に配管保持具における余分な長さの部分の切り取り作業が必要であることで、配管の固定作業や勾配の調整作業の手間を解消するには至っていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、配管の固定作業および勾配の調整作業において、事前に部材を加工する必要がないだけでなく、外径が異なる配管であっても異なる部材を使い分ける必要もなく、配管の固定や所定の勾配の調整を容易に行うことができる配管保持具が求められている。
【0009】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、配管の固定作業を容易にするだけでなく、外径が異なる配管であっても所定の勾配に調整することが容易な配管保持具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管保持具は、配管の外周を環状に囲んで挟持する挟持部と、前記挟持部から前記配管と交差する方向に向けて張り出すと共に、互いに長さが異なる複数の位置決め部と、前記挟持部から前記位置決め部と同じ方向に向けて張り出すと共に、前記位置決め部よりも長く形成された固定部と、を備え、いずれかの前記位置決め部の先端部が、前記配管を支持する対象である被支持体に当接した状態で、前記固定部が前記被支持体に固定されることにより、前記被支持体から所定の距離離間した状態で前記配管を支持可能とする、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る配管保持具は、前記位置決め部同士における長さの差が、前記配管と、前記配管と外径が異なる別配管との半径の差と同じである、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る配管保持具は、前記先端部と前記被支持体との間に挟むことができる調整部材を備え、前記調整部材が挟まれることで、前記配管と前記被支持体とが離間する距離の調整が可能である、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る配管保持具は、前記固定部に複数の切取溝が形成されており、前記切取溝に沿って前記固定部が切り取られることで、前記固定部が張り出す長さの調整が可能である、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る配管保持具は、前記挟持部の内側に、滑り止め部が形成された、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る配管保持具は、前記挟持部が一端部と他端部とを有する帯状に形成され、前記一端部が前記他端部に差し込まれ、前記挟持部が任意の位置で前記他端部に係止されることで、前記挟持部による内径が任意の大きさとなり、前記固定部に、固着具が挿通可能な挿通孔が形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る配管保持具は、配管の外周を環状に囲んで挟持する挟持部と、挟持部から配管と交差する方向に向けて張り出すと共に、互いに長さが異なる複数の位置決め部と、挟持部から位置決め部と同じ方向に向けて張り出すと共に、位置決め部よりも長く形成された固定部と、を備え、いずれかの位置決め部の先端部が、配管を支持する対象である被支持体に当接した状態で、固定部が被支持体に固定されることにより、被支持体から所定の距離離間した状態で配管を支持可能とするものである。すなわち、本発明に係る配管保持具は、固定部を被支持体に固定する際に、位置決め部の先端部を被支持体に当接させた状態で固定部が固定されることで、配管を、被支持体から所定の距離離間した状態で、被支持体に支持させることができる。また、本発明に係る配管保持具は、互いに長さが異なる位置決め部を備えているため、外径が異なる配管を被支持体に支持させる場合であっても、別の位置決め部の先端部を被支持体に当接させた状態で、固定部を被支持体に固定することで、外径が異なる配管を、被支持体から所定の距離離間させた状態で、被支持体に支持させることができる。したがって、本発明に係る配管保持具は、外径が異なる種々の配管に用いられる場合であっても、他の部材を用いることなく、これらの配管を、被支持体から所定の距離離間した状態で、被支持体に支持させることができる。また、配管が被支持体から所定の距離離間した状態で支持されることで、一端が浴室の床下に固定された配管の勾配の調整も同時に行うことができる。
【0017】
本発明に係る配管保持具は、位置決め部同士における長さの差が、配管と、この配管と外径が異なる別配管との半径の差と同じである。すなわち、本発明に係る配管保持具を用いることで、配管またはこの配管と外径が異なる別配管のいずれが被支持体に支持される場合であっても、それぞれの配管に合わせて選択した位置決め部の先端部を被支持体に当接させることで、被支持体から配管の中心位置までの距離と、被支持体から別配管の中心位置までの距離とを、一定に保つことができる。したがって、一端が排水口に接続された配管または別配管において、それぞれの配管に合わせて被支持体に当接させる位置決め部の先端部が選択され、被支持体に支持される配管の中心位置および別配管の中心位置が一定となることで、配管または別配管を所定の勾配に調整することが容易になる。
【0018】
本発明に係る配管保持具は、先端部と被支持体との間に挟むことができる調整部材を備え、調整部材が挟まれることで、配管と被支持体とが離間する距離の調整が可能である。すなわち、本発明に係る配管保持具は、先端部と被支持体との間に調整部材が挟まれることで、配管と被支持体とが離間する距離の調整が可能であると共に、複数の位置決め部のみでは所定の勾配に調整が困難な場合であっても、容易に配管を所定の勾配に調整することができる。
【0019】
本発明に係る配管保持具は、固定部に複数の切取溝が形成されており、切取溝に沿って固定部が切り取られることで、固定部が張り出す長さの調整が可能である。すなわち、本発明に係る配管保持具は、固定部の長さが余分である場合、例えば、固定部の先端が床下に干渉する場合等に、切取溝に沿って余分な固定部を切り取ることで、固定部の長さを調整して被支持体に固定することができる。
【0020】
本発明に係る配管保持具は、挟持部の内側に、滑り止め部が形成されている。すなわち、本発明に係る配管保持具は、挟持部における滑り止め部が配管を挟持するため、配管内を排水が流れて振動が加えられた場合であっても、配管がずれることがなく、所定の勾配を保った状態で配管を堅固に保持することができる。
【0021】
本発明に係る配管保持具は、挟持部が一端部と他端部とを有する帯状に形成され、一端部が他端部に差し込まれ、挟持部が任意の位置で他端部に係止されることで、挟持部による内径が任意の大きさとなり、固定部に、固着具が挿通可能な挿通孔が形成されている。すなわち、本発明に係る配管保持具は、挟持部の一端部が他端部に差し込まれ、任意の大きさの内径で環状をなした状態で挟持部を係止することができるため、外径が異なる配管であっても、その外周を挟持部が囲んで挟持することができる。また、固定部に固着具が挿通可能な挿通孔が形成されていることで、固着具を用いて間仕切り板の側面に容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る配管保持具の使用前の状態を示す前方左側上方からの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る配管保持具の使用前の状態を示す後方右側上方からの斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る配管保持具の使用前の状態を示す右側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る配管保持具の使用前の状態を示す後方右側下方からの斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る配管保持具の挟持部を係止した状態を示す後方右側下方からの斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る配管保持具の取付位置を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る配管保持具の取付方法の一例を示す拡大図である。
図8】本発明の実施形態に係る配管保持具における調整部材の前方左側上方からの斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る配管保持具における調整部材を固定部に差し込んだ状態の一例を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態に係る配管保持具における取付接続具の後方左側上方からの斜視図である。
図11】本発明の実施形態に係る配管保持具における取付接続具の取付方法の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る配管保持具1を図面に基づいて説明する。
なお、便宜上、図1から図11においては、図7に示すように、配管保持具1の固定部30を上方にし、配管保持具1の挟持部10を下方にした状態で、鉛直方向を上下方向、配管2の長手方向を前後方向、配管2の長手方向に水平かつ直角に交差する方向を左右方向として、説明する。
【0024】
配管保持具1は、図1図2図3および図4に示すように、長手方向が湾曲し、下方が開口した略C字形の帯状の部材である挟持部10と、この挟持部10の上面から上方に向けて張り出す複数の突起である位置決め部20と、この位置決め部20が張り出す方向と同じ方向に向けて、挟持部10の上面から張り出す平板状の固定部30と、から構成されている。挟持部10、位置決め部20および固定部30のそれぞれは、樹脂製で、一体に形成されている。また、複数の位置決め部20は、互いに挟持部10の上面から張り出す長さが異なっており、さらに、固定部30は、挟持部10の上面から張り出す長さが、位置決め部20よりも、長く形成されている。
【0025】
挟持部10は、図1に示すように、略C字形に下方が開口した帯状の部材であり、開口した一方の端部は、下方に向けて延伸し、配管2の外周を囲むことができる程度に、十分な長さに形成されている。また、この下方に向けて延伸した部位の先端には、後述する他端部12における差込口15に差し込みやすい部位として、下方がテーパー状に窄まって形成された略台形の端部である一端部11が形成されている。一方で、挟持部10の略C字形に開口した他方の端部である他端部12には、一端部11が差し込まれる差込口15が形成されている。この構成により、挟持部10は、使用時において、図7に示すように、配管2の外周を環状に囲むことができると共に、図5に示すように、配管2の外周を環状に囲んだ状態で、一端部11を差込口15に通し、差込口15を貫通した一端部11を引っ張ることで、配管2を挟持することができる。
【0026】
また、挟持部10は、図1図2図4および図5に示すように、下方に向けて延伸した部位と一端部11とを除いて、配管2を挟持する帯状の部材の内側において、内歯車状の滑り止め部13が形成されている。滑り止め部13は、帯状の部材の長手方向を横断する複数の凸部13Aと、帯状の部材の長手方向を横断する複数の凹部13Bとが、交互に形成されることで、内歯車状の凸凹面として形成されている。したがって、挟持部10が配管2を挟持する際には、滑り止め部13における凸部13Aが、配管2の外周を挟持する。
【0027】
さらに、挟持部10には、図1および図5に示すように、下方に向けて延伸した部位の外側において、延伸方向に沿って、この延伸方向を横断する鋸歯状の溝であるセレーション部14が形成されている。また、挟持部10には、図4に示すように、他端部12における差込口15の内側において、セレーション部14の溝に係止される爪部12Bを備えた係止片12Aが形成されている。この構成により、挟持部10は、図5に示すように、一端部11を差込口15に通した状態で、セレーション部14の溝に爪部12Bが係止されることで、任意の大きさの内径で環状にすることができる。すなわち、挟持部10は、上記した一端部11、下方に向けて延伸した部位および他端部12における構成により、いわゆる結束バンドとしての機能を備えている。なお、一端部11における外側には、図1および図5に示すように、前後方向に沿って、上下に二箇所の略長方形のグリップ部16が形成されている。この二箇所のグリップ部16は、一端部11を掴んで引っ張る際の滑り止めとして機能する。
【0028】
次に、位置決め部20は、図1図2および図3に示すように、挟持部10の上面から上方に向けて張り出す複数の突起として形成されており、互いに長さが異なる二種類の前側位置決め部22と後側位置決め部21とから構成されている。前側位置決め部22は、挟持部10の上面における前後方向の前側において、一対の突起が上方に向けて張り出すことで形成されており、同様に、後側位置決め部21は、挟持部10の上面の前後方向における後側において、一対の突起が上方に向けて張り出すことで、形成されている。
【0029】
前側位置決め部22は、図1および図3に示すように、挟持部10の上面において、上方に向けて張り出す一対の突起として形成されている。具体的には、前側位置決め部22は、図1に示すように、正面視において、挟持部10の上端における孤に沿って、挟持部10の最上端から左右方向の両外側に向けて、左右対称に横たわる略へ字状の突起として形成されている。また、左右の前側位置決め部22、22の上端は、正面視において、それぞれ挟持部10の最上端と同一の高さで水平をなして形成されており、挟持部10の最上端に連接されている。さらに、左右の前側位置決め部22、22の上端面は、前後方向において、挟持部10の上面における前側から中央にかけて、水平に奥行きをもって形成されている。したがって、挟持部10の上面における前側中央には、左右の水平な前側位置決め部22、22の上端面と、左右の前側位置決め部22、22の上端面で挟まれた挟持部10の最上端とによって、水平な上端面である前側位置決め先端部22Aが形成されている。なお、略へ字状の角にあたる部位は、面取りがなされて、なだらかに傾斜している。
【0030】
後側位置決め部21は、図2および図3に示すように、挟持部10の上面において、上方に向けて張り出す一対の突起として形成されている。具体的には、後側位置決め部21は、挟持部10の上面において、上方に向けて張り出す一対の略四角柱状の突起が、左右方向に互いに一定の距離を設けて、左右対称に形成されている。また、後側位置決め部21は、背面視において、右側の後側位置決め部21の右辺が、下方にかけて右側に向けて湾曲しており、同様に、左側の後側位置決め部21の左辺が、下方にかけて左側に向けて湾曲している。したがって、左右の後側位置決め部21、21は、背面視において、それぞれ下部が広がった逆テーパー状の突起として形成されている。さらに、後側位置決め部21の上端面には、水平な上端面として後側位置決め先端部21Aが形成されている。また、後側位置決め部21は、前側位置決め部22よりも長く形成されており、挟持部10の最上端よりも高く上方に張り出している。したがって、上下方向において、後側位置決め先端部21Aは、前側位置決め先端部22Aよりも高い位置において形成されている。また、前側位置決め先端部22Aが設けられた高さ位置と後側位置決め先端部21Aが設けられた高さ位置との差、すなわち前側位置決め部22と後側位置決め部21とにおける挟持部10の上面から張り出す長さの差は、種々の配管における配管同士の半径の差に合わせて形成されることが好ましい。具体的には、配管保持具1では、前側位置決め部22と後側位置決め部21とにおける長さの差は、配管2と、この配管2と外径が異なる別配管(図示せず)とにおける半径の差と同じに形成されている。
【0031】
また、後側位置決め部21における上下方向の長さは、配管2の外径および所定の勾配を考慮した長さで形成されている。具体的には、後側位置決め部21における上下方向の長さは、図7に示すように、後側位置決め先端部21Aを被支持体である間仕切り板7の下面に当接させた状態で、後述する固定部30が間仕切り板7に固定されたときに、挟持部10で挟持された配管2が、間仕切り板7の下面から所定の距離離間する長さで形成されている。さらに、この後側位置決め部21における上下方向の長さは、後側位置決め先端部21Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態で、固定部30が間仕切り板7に固定されたときに、配管2の挟持部10で挟持された部位における中心位置の高さが、配管2の洗場排水トラップ4に接続された一端における中心位置の高さよりも、低くなるように形成されている。これにより、配管2が、洗場排水トラップ4に接続された一端から挟持部10で挟持された部位にかけて、下り勾配を保持した状態で、間仕切り板7に支持される。なお、後側位置決め部21における上下方向の長さは、洗場排水トラップ4から間仕切り板7までの距離や、配管2の洗場排水トラップ4に接続された一端から挟持部10で挟持される部位までの長さを考慮して、配管2が所定の下り勾配となる長さに調整されることが望ましい。
【0032】
さらに、図示していないが、前側位置決め部22における上下方向の長さは、後側位置決め部21が配管2の外径および所定の勾配を考慮した長さで形成されているのと同様に、別配管の外径および所定の勾配を考慮した長さで形成されている。具体的には、配管2の代わりに別配管を固定する場合において、前側位置決め先端部22Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態で、後述する固定部30が間仕切り板7に固定されたときに、挟持部10で挟持された別配管が、間仕切り板7の下面から所定の距離離間する長さで形成されている。さらに、この前側位置決め部22における上下方向の長さについても、前側位置決め先端部22Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態で、固定部30が間仕切り板7に固定されたときに、別配管の挟持部10で挟持された部位における中心位置の高さが、別配管の洗場排水トラップ4に接続された一端における中心位置の高さよりも、低くなる長さで形成されている。これにより、別配管が、洗場排水トラップ4に接続された一端から挟持部10で挟持された部位にかけて、下り勾配を保持した状態で、間仕切り板7に支持される。なお、前側位置決め部22における上下方向の長さにおいても、洗場排水トラップ4から間仕切り板7が設けられる位置までの距離や、別配管における洗場排水トラップ4に接続された一端から配管保持具1の挟持部10で挟持される部位までの長さを考慮して、別配管が所定の下り勾配となる長さに調整されることが望ましい。
【0033】
また、前側位置決め先端部22Aおよび後側位置決め先端部21Aのそれぞれにおける前後方向の幅は任意であるが、後述する調整部材40における第一載置部41Aおよび第二載置部42Aの前後方向の幅と同一の幅において形成されることが好ましい。
【0034】
次に、固定部30は、図1図2および図3に示すように、挟持部10の上面において、上方に向けて張り出す一対の平板状の部位として形成されている。具体的には、固定部30は、挟持部10の上面において、上方に向けて張り出す一対の平板状の部位が、前後方向を厚み方向として、左右方向に互いに一定の距離を設けて、左右対称に形成されている。左右の固定部30、30は、図1および図2に示すように、正面視および背面視において、上下方向を長手方向とした略長方形に形成されており、また、図3に示すように、側面視において、挟持部10の上端における前後方向の中央、すなわち前側位置決め部22と後側位置決め部21とに挟まれた間から上方に向けて張り出している。
【0035】
また、左右の固定部30、30は、図1および図2に示すように、左右の後側位置決め部21、21が互いに距離を設けたよりも広く距離を設けて形成されており、背面視において、左右の固定部30、30における中央寄りの下部の一部は、それぞれ左右の後側位置決め部21、21に重なるようにして、かつ、左右の後側位置決め部21、21を左右の固定部30、30が挟むようにして形成されている。したがって、後側位置決め部21は、背面視だけでなく、正面視においても、左右の固定部30、30の間から視認することができる。なお、固定部30は、図1および図3に示すように、その下端の前面が、前側位置決め部22の後端と連接されており、また、その下端の後面中央寄りは、図2および図3に示すように、後側位置決め部21の前端と連接されている。さらに、左右の固定部30、30は、正面視および背面視において、それぞれの左右方向の外側にあたる下端が、下方にかけて外側に向けて湾曲して逆テーパー状に形成されており、挟持部10の上面に滑らかに連接されている。
【0036】
さらに、固定部30は、図1図2および図3に示すように、前側位置決め部22および後側位置決め部21が挟持部10の上面から張り出すよりも長く、突出している。この張り出した固定部30には、図1および図2に示すように、固定部30の厚み方向を貫通して、ネジ、ビス等の固着具8を挿通させることができる挿通孔32が形成されている。この挿通孔32は、固定部30の長手方向に沿った三箇所において、一列に形成されている。また、固定部30には、図2および図3に示すように、この三箇所の挿通孔32が設けられた部分同士を区切るようにして、略長方形をなす固定部30の前面において、固定部30の長手方向を横断して、固定部30の長手方向を三分する上下二箇所の切取溝31が形成されている。この切取溝31は、固定部30の前面に切り欠き加工がなされることで、形成されている。
【0037】
次に、配管を所定の勾配に調整をする際に、上記した位置決め部20と共に用いることができる調整部材40について説明する。調整部材40は、図8および図9に示すように、平面視において、前方が開口した略C字形の樹脂製の部材である。調整部材40は、上下方向を厚み方向として、厚さが異なる二種類の第一調整部材41と第二調整部材42とから構成されており、第一調整部材41が、第二調整部材42よりも厚く形成されている。
【0038】
第一調整部材41は、平面視で前方が開口した略C字形の部材であり、左右方向を長手方向として横たわる略四角柱の部材である第一載置部41Aと、第一載置部41Aの左右両端から前方に向けて張り出し、先端が内側に直角に折れ曲がった鈎状の第一係止部41B、41Bとから構成されている。また、第一調整部材41は、第一載置部41Aと左右の第一係止部41B、41Bとの間に形成される左右の第一空隙41C、41Cに、左右の固定部30、30を嵌めることができる程度に、左右方向の長さおよび前後方向の幅をもって形成されている。さらに、第一載置部41Aの前後方向の幅は、前側位置決め先端部22Aおよび後側位置決め先端部21Aのそれぞれにおける前後方向の幅と同一の幅において形成されることが好ましい。なお、第一載置部41Aと第一係止部41B、41Bとは、上下方向において互いに同一の厚みで形成されている。
【0039】
第二調整部材42は、第一調整部材41と同様に、平面視で前方が開口した略C字形の部材である。第二調整部材42は、第一調整部材41と比較して、上下方向の厚みが薄く形成されている。具体的には、第二調整部材42は、左右方向を長手方向とし、かつ、上下方向を厚み方向として横たわる略長方形の平板状の第二載置部42Aと、第二載置部42Aの左右両端から前方に向けて張り出し、先端が内側に直角に折れ曲がった鈎状の第二係止部42B、42Bとから構成されている。また、第二調整部材42は、第一調整部材41と同様に、第二載置部42Aと左右の第二係止部42B、42Bとの間に形成される左右の第二空隙42C、42Cに、左右の固定部30、30を嵌めることができる程度に、左右方向の長さおよび前後方向の幅をもって形成されている。さらに、第二載置部42Aの前後方向の幅は、第一載置部41Aと同様に、前側位置決め先端部22Aおよび後側位置決め先端部21Aのそれぞれにおける前後方向の幅と同一の幅において形成されることが好ましい。なお、第二載置部42Aと第二係止部42B、42Bとは、上下方向において互いに同一の厚みで形成されており、また、左右の第二係止部42B、42Bの上端部前方は、面取り加工がなされている。
【0040】
次に、配管保持具1を所定の位置に固定する際に用いられる補助具である取付接続具50について説明する。取付接続具50は、図10および図11に示すように、左右方向を長手方向とし、上下方向を厚み方向とした略長方形の平板状の第一取付部50Aと、この第一取付部50Aの前端から下方に向けて垂直に連接され、左右方向を長手方向とし、前後方向を厚み方向とした略長方形の平板状の第二取付部50Bと、第一取付部50Aの左端および右端のそれぞれから下方に向けて垂直に連接され、かつ、前端が第二取付部50Bの左端および右端のそれぞれと直角に折れ曲がって連接された、一対の略三角形の平板状の側面部50C、50Cとが、一体として構成された樹脂製の部材である。なお、取付接続具50において、第二取付部50Bの短手方向は、第一取付部50Aの短手方向よりも長く形成されている。
【0041】
また、第一取付部50Aには、長手方向に沿った三箇所において、第一取付部50Aの厚み方向を貫通して、固着具8を挿通させることができる第一取付孔51が形成されている。この第一取付孔51は、第一取付部50Aの長手方向に沿った三箇所において、均等に一列に形成されている。また、第二取付部50Bには、第一取付部50Aと同様に、長手方向に沿った三箇所において、第二取付部50Bの厚み方向を貫通して、固着具8を挿通させることができる第二取付孔52が形成されている。この第二取付孔52は、第二取付部50Bの長手方向に沿った三箇所において、均等に一列に形成されている。
【0042】
さらに、取付接続具50には、第一取付部50Aの上面から第二取付部50Bの前面にわたって、第一取付部50Aおよび第二取付部50Bのそれぞれの長手方向を横断して、第一取付孔51が設けられた部分および第二取付孔52が設けられた部分のそれぞれを区切る二箇所において、複数の切欠き溝が形成され、固定部30の取付可能範囲を示す取付範囲確認溝53が形成されている。なお、取付範囲確認溝53は、取付範囲確認溝53の裏側に固定される固定部30の左右方向の幅と同一の幅において形成されることが好ましい。
【0043】
以上のとおり、本実施形態が構成されている。続けて、本実施形態を用いた配管2の支持方法について説明する。
【0044】
配管保持具1は、図6に示すように、主に、浴槽5と洗場6等とを備えた浴室9の床下において取り付けられる。配管保持具1は、図7に示すように、固定部30を上方に、挟持部10を下方にした状態で、洗場6の床下に垂下して固定される。具体的には、洗場6の床下に設けられた左右方向に伸びる間仕切り板7の前側面に、固定部30の後面を合わせた状態で、挿通孔32に通された固着具8によって、固定部30が間仕切り板7に固定される。これにより、洗場6の床下に配管保持具1が固定される。また、洗場6の床下に固定された配管保持具1において、配管2の外周を挟持部10で挟持することで、配管2が配管保持具1に固定される。これにより、配管2が、洗場6の床下において、配管保持具1を介して、間仕切り板7に支持される。なお、上記説明では、間仕切り板7の前側面に固定部30の後面を合わせて固定する場合を示したが、配管2の排水勾配を変更する場合や、配管2と外径が異なる別配管、例えば耐火二層管等を固定する場合等には、間仕切り板7の前側面に、固定部30の前面を合わせて固定してもよい。
【0045】
また、上記説明では、洗場6の床下に間仕切り板7が設けられている場合の配管保持具1の固定方向を示したが、洗場6の床下において間仕切り板7のような固定部30を固定する側面がない場合には、図11に示すように、取付接続具50を介して、配管保持具1を洗場6の床下に固定してもよい。この場合には、取付接続具50の第一取付部50Aの上面を固着具8によって洗場6の床下に固定し、取付接続具50の第二取付部50Bにおける取付範囲確認溝53の裏側に、固定部30の前面を合わせた状態で、固着具8によって固定部30を固定する。これにより、洗場6の床下において間仕切り板7のような固定部30を固定する側面がない場合においても、配管保持具1を洗場6の床下に固定することができる。なお、床下の空間が十分に確保することができない場合や所定の排水勾配を調整するために上記した固定方法よりも上下方向に短く配管保持具1を固定したい場合等には、上記した固定方法において、第一取付部50Aと第二取付部50Bとを入れ替えて取付接続具50を用いることで、第一取付部50Aが第二取付部50Bよりも短手方向が短いぶんにおいて、上下方向に短く配管保持具1を固定することができる。なお、上下方向において、よりコンパクトに配管保持具1を固定したい場合や、配管保持具1の固定の際に固定部30の余分な上部が干渉する場合等には、いずれかの切取溝31に沿って、鋏やカッター等の切断工具で固定部30の余分な上部を切り落として配管保持具1を用いてもよい。これにより、よりコンパクトにまたは余計な干渉を防いで、配管保持具1を固定することができる。
【0046】
続けて、本実施形態を用いた勾配の調整方法について説明する。
通常、配管2は、図6に示すように、浴室9の床下において、一端が浴槽排水トラップ3または洗場排水トラップ4に接続され、他端が一次排水に接続される。この際、配管2は、配管2内の排水を容易にするため、浴槽排水トラップ3および洗場排水トラップ4側から一次排水側にかけて、所定の勾配による下り勾配で固定される必要がある。そこで、間仕切り板7の下方において、所定の下り勾配を保持した状態で、配管2を間仕切り板7に支持させるために、配管保持具1が用いられる。具体的には、配管保持具1では、図7に示すように、配管2を固定する際に、固定部30の後面を間仕切り板7の前側面に合わせ、かつ、後側位置決め先端部21Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態で、固定部30を固定する。これにより、上述した通り、後側位置決め部21の上下方向の長さが配管2の外径および所定の勾配を考慮して形成されていることで、配管2が、間仕切り板7の下面から所定の距離で離間した状態で、かつ、洗場排水トラップ4に接続された一端から挟持部10で挟持された部位にかけて所定の下り勾配が保持された状態で、間仕切り板7に配管2を支持させることができる。また、図示していないが、配管2の排水勾配を変更する場合や、配管2と外径が異なる別配管、例えば耐火二層管等を固定する場合等には、上記配管2を固定する場合とは異なり、固定部30の前後面を反転させて、固定部30の前面を間仕切り板7の前側面に合わせ、かつ、前側位置決め先端部22Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態で、固定部30を固定してもよい。すなわち、配管保持具1は、配管2を固定する場合と別配管を固定する場合とで、固定部30の前後面を反転させて用いることができる。また、配管保持具1は、前側位置決め部22および後側位置決め部21のそれぞれの長さが、配管2または別配管の外径および所定の勾配を考慮した長さで形成されていることから、固定部30の前後面を反転させて用いることで、配管2または別配管のいずれを固定する場合であっても、所定の下り勾配を保持した状態で、配管2または別配管を容易に固定することができる。
【0047】
また、後側位置決め先端部21Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態でも所定の排水勾配の調整が困難な場合には、図9に示すように、調整部材40を左右の固定部30、30の上方から嵌めて、後側位置決め先端部21Aの上に第二載置部42Aおよび第一載置部41Aを載置し、後側位置決め先端部21Aと間仕切り板7の下面との間に第二載置部42Aおよび第一載置部41Aを挟んだ状態で、固定部30を固定することで、排水勾配を調整してもよい。なお、上記説明では、調整部材40を構成する第一調整部材41および第二調整部材42の双方を用いる場合を示したが、所定の排水勾配を調整するために必要な場合には、第一調整部材41および第二調整部材42のいずれか一方を単独で用いてもよく、また、複数の第一調整部材41または第二調整部材42を用いてもよい。さらに、図示していないが、配管保持具1を、固定部30の前後面を反転させて用いる場合には、上記した調整方法と同様に、前側位置決め先端部22Aと間仕切り板7の下面との間に第二載置部42Aおよび第一載置部41Aを挟んだ状態で、固定部30を固定することで、排水勾配を調整してもよい。
【0048】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上記した通り、通常、配管2は、図6に示すように、浴室9の床下において、浴槽排水トラップ3および洗場排水トラップ4側から一次排水側にかけて、所定の下り勾配(1/50~1/100)で固定される必要がある。すなわち、配管2の固定時には、所定の排水勾配に合わせて勾配が調節された後に、配管2が固定される。
【0049】
ここで、配管保持具1は、配管2の外周を環状に囲んで挟持する挟持部10と、挟持部10の上面から上方に向かって張り出し、互いに長さが異なる前側位置決め部22および後側位置決め部21と、挟持部10の上面から上方に向かって張り出し、前側位置決め部22および後側位置決め部21よりも長く形成された固定部30と、を備え、後側位置決め先端部21Aが、配管2を支持する対象である間仕切り板7の下面に当接した状態で、固定部30が間仕切り板7の前側面に固定されることにより、間仕切り板7の下面から所定の距離離間した状態で配管2を支持可能とするものである。すなわち、配管保持具1は、固定部30を間仕切り板7に固定する際に、後側位置決め先端部21Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態で固定部30が固定されることで、配管2を、間仕切り板7の下面から所定の距離離間した状態で、間仕切り板7の下方において支持することができる。また、配管保持具1は、後側位置決め部21よりも長さが短い前側位置決め部22を備えているため、例えば、配管2よりも外径が大きい別配管を間仕切り板7に支持させる場合であっても、固定部30の前後面を反転させ、前側位置決め先端部22Aを間仕切り板7の下面に当接させた状態で、固定部30を間仕切り板7の前側面に固定することで、別配管を、間仕切り板7の下面から所定の距離離間させた状態で、間仕切り板7の下方において支持することができる。したがって、配管保持具1を用いることにより、配管2または別配管のいずれを支持させる場合であっても、他の部材を用いることなく、配管2または別配管を、間仕切り板7から所定の距離離間した状態で、間仕切り板7に支持させることができる。また、配管保持具1は、前側位置決め部22および後側位置決め部21における上下方向の長さが、配管2または別配管を所定の下り勾配とすることができる長さで形成されていることから、配管2または別配管が、間仕切り板7の下面から所定の距離離間した状態で支持されることで、配管2または別配管の勾配の調整も同時に行うことができる。
【0050】
配管保持具1は、前側位置決め先端部22Aにおける高さ位置と後側位置決め先端部21Aにおける高さ位置との差、すなわち前側位置決め部22と後側位置決め部21とにおける挟持部10の上面から張り出す長さの差が、配管2の半径と配管2と外径が異なる別配管の半径との差と同じである。すなわち、配管保持具1を用いることで、配管2または別配管のいずれが間仕切り板7に支持される場合であっても、それぞれの配管に合わせて、前側位置決め先端部22Aまたは後側位置決め先端部21Aから選択したいずれかを間仕切り板7の下面に当接させることで、間仕切り板7の下面から配管2の中心位置までの距離と、間仕切り板7の下面から別配管の中心位置まで距離を、一定に保つことができる。したがって、一端が洗場排水トラップ4に接続された配管または別配管において、それぞれの配管に合わせて間仕切り板7の下面に当接させる前側位置決め先端部22Aまたは後側位置決め先端部21Aが選択され、間仕切り板7に支持される配管2の中心位置または別配管の中心位置が一定となることで、配管2または別配管における勾配の調整が容易になる。
【0051】
また、配管保持具1は、前側位置決め先端部22Aまたは後側位置決め先端部21Aと間仕切り板7の下面との間に挟むことができる調整部材40である第一調整部材41および第二調整部材42を備え、第一調整部材41または第二調整部材42の双方またはいずれか一方が挟まれることで、配管2または別配管と間仕切り板7の下面とが離間する距離の調整が可能である。すなわち、配管保持具1は、前側位置決め先端部22Aまたは後側位置決め先端部21Aと間仕切り板7の下面との間に第一調整部材41または第二調整部材42の双方またはいずれか一方が挟まれることで、配管2または別配管と間仕切り板7の下面とが離間する距離の調整が可能であると共に、前側位置決め部22または後側位置決め部21のみでは所定の勾配に調整が困難な場合であっても、容易に配管2または別配管を所定の勾配に調整することができる。
【0052】
また、配管保持具1は、固定部30に複数の切取溝31が形成されており、切取溝31に沿って固定部30が切り取られることで、固定部30が張り出す長さの調整が可能である。すなわち、配管保持具1は、固定部30を間仕切り板7の側面に固定する際に、固定部30の長さが余分である場合、例えば、固定部30の先端が洗場6の床下に干渉する場合等に、切取溝31に沿って余分な固定部30を切り取ることで、固定部30の長さを調整して間仕切り板7の側面に固定することができる。
【0053】
さらに、配管保持具1は、挟持部10の内側に、滑り止め部13が形成されている。すなわち、配管保持具1は、挟持部10における滑り止め部13が配管2または別配管を挟持するため、配管2または別配管内を排水が流れて振動が加えられた場合であっても、配管2または別配管がずれることがなく、所定の排水勾配を保った状態で配管2または別配管を堅固に保持することができる。
【0054】
また、配管保持具1は、挟持部10が一端部11と他端部12とを有する帯状に形成され、一端部11が他端部12に差し込まれ、挟持部10が任意の位置で他端部12に係止されることで、挟持部10による内径が任意の大きさとなり、固定部30に、固着具8が挿通可能な挿通孔32が形成されている。すなわち、配管保持具1は、挟持部10の一端部11が他端部12の差込口15に差し込まれ、任意の大きさの内径で環状をなした状態で、挟持部10を係止することができるため、配管2と外径が異なる別配管であっても、その外周を挟持部10が囲んで挟持することができる。また、固定部30に固着具8が挿通可能な挿通孔32が形成されていることで、固着具8を用いて間仕切り板7の側面に容易に固定することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0056】
例えば、本発明の実施形態では、挟持部10、位置決め部20および固定部30等の各部材が樹脂製であるものを示したが、これに限定されるものではなく、金属製でもよい。
【0057】
また、例えば、本発明の実施形態では、固定部30および複数の位置決め部20が、それぞれ一対の部材によって形成されたものを示したが、これに限定されるものではなく、一または二以上の数で形成されていてもよい。
【0058】
さらに、例えば、本発明の実施形態では、固着具8が通される挿通孔32等の穴が複数形成されたものを示したが、これに限定されるものではなく、一または二以上の数で形成されていてもよい。
【0059】
また、例えば、本発明の実施形態では、固定部30および複数の位置決め部20における左右方向および前後方向の位置関係が限定されたものを示したが、これに限定されるものではなく、挟持部10の上面において張り出す位置は任意である。
【0060】
さらに、例えば、本発明の実施形態では、固定部30の二箇所において切取溝31が形成されたものを示したが、これに限定されるものではなく、一若しくは二以上の切取溝31が形成された固定部30でもよく、また、切取溝31が形成されていない固定部30であってもよい。
【0061】
また、例えば、本発明の実施形態では、挟持部10の内側に滑り止め部13が形成されたものを示したが、これに限定されるものではなく、凸部13Aおよび凹部13B以外の構成、例えば、挟持部10の内側の表面にゴムやスポンジ等の滑りにくい素材を設けて滑り止め部を設けたものでもよく、また、滑り止め部13が形成されていない挟持部10であってもよい。
【0062】
さらに、例えば、本発明の実施形態では、挟持部10が結束バンドであるものを示したが、これに限定されるものではなく、挟持部10が配管2を挟持した状態で係止することができるものであれば、他の構成、例えば、フックとフック係止部とを備え、任意の大きさの内径で係止することができる挟持部等であってもよい。
【0063】
また、例えば、本発明の実施形態では、浴室9の床下において配管保持具1を用いて配管2を固定した例を示したが、これに限定されるものではなく、種々の配管を任意の位置に固定する必要がある場合、例えば、台所の洗い場または洗面台における配管を所定の位置に固定する場合や、トイレの配管を所定の位置に固定する場合等において、配管保持具1を用いて配管を固定してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 配管保持具
2 配管
3 浴槽排水トラップ
4 洗場排水トラップ
5 浴槽
6 洗場
7 間仕切り板
8 固着具
9 浴室
10 挟持部
11 一端部
12 他端部
12A 係止片
12B 爪部
13 滑り止め部
13A 凸部
13B 凹部
14 セレーション部
15 差込口
16 グリップ部
20 位置決め部
21 後側位置決め部
21A 後側位置決め先端部
22 前側位置決め部
22A 前側位置決め先端部
30 固定部
31 切取溝
32 挿通孔
40 調整部材
41 第一調整部材
41A 第一載置部
41B 第一係止部
41C 第一空隙
42 第二調整部材
42A 第二載置部
42B 第二係止部
42C 第二空隙
50 取付接続具
50A 第一取付部
50B 第二取付部
50C 側面部
51 第一取付孔
52 第二取付孔
53 取付範囲確認溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11