(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】接眼レンズ、観察光学系および光学機器
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G02B25/00
(21)【出願番号】P 2020108871
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-108280(JP,A)
【文献】特開2011-227318(JP,A)
【文献】特開2018-005138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から観察側へ順に配置された、対物レンズ、像反転系および接眼レンズを有する観察光学系に用いられる接眼レンズであって、
物体側から観察側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間の空気間隔は、前記接眼レンズ内において最大の空気間隔であり、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間に中間像が形成され、
前記第1レンズ群は、最も物体側に配置された負レンズ要素と、最も観察側に配置された正レンズ要素とを含み、前記負レンズ要素と前記正レンズ要素との間に空気間隔が設けられており、
前記第1レンズ群における最も焦点距離が短い空気レンズの焦点距離をfair、前記正レンズ要素の焦点距離をfB
、前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
-20.0≦fB/fair≦-4.0
-5.00≦f1/f2≦-0.50
なる条件を満足することを特徴とする接眼レンズ。
【請求項2】
前記正レンズ要素における最も物体側のレンズ面の曲率半径をR1B、最も観察側のレンズ面の曲率半径をR2Bとするとき、
-0.10≦(R1B-R2B)/(R1B+R2B)≦0.22
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の接眼レンズ。
【請求項3】
前記接眼レンズの焦点距離をfとするとき、
5.0≦fB/f≦20.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の接眼レンズ。
【請求項4】
前記接眼レンズにおいて前記正レンズ要素よりも物体側に配置された全てのレンズの合成焦点距離をfAAとするとき、
-15.0≦fB/fAA≦-3.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項5】
前記接眼レンズの焦点距離をfとするとき、
-10.0≦f1/f≦-1.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項6】
物体側から観察側へ順に配置された、対物レンズ、像反転系および接眼レンズを有する観察光学系に用いられる接眼レンズであって、
物体側から観察側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間の空気間隔は、前記接眼レンズ内において最大の空気間隔であり、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間に中間像が形成され、
前記第1レンズ群は、最も物体側に配置された負レンズ要素と、最も観察側に配置された正レンズ要素とを含み、前記負レンズ要素と前記正レンズ要素との間に空気間隔が設けられており、
前記第1レンズ群における最も焦点距離が短い空気レンズの焦点距離をfair、前記正レンズ要素の焦点距離をfB、前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記接眼レンズの焦点距離をfとするとき、
-20.0≦fB/fair≦-4.0
-10.0≦f1/f≦-1.0
なる条件を満足することを特徴とする接眼レンズ。
【請求項7】
前記第2レンズ群の焦点距離をf2、前記接眼レンズの焦点距離をfとするとき、
1.0≦f2/f≦10.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項8】
前記第1レンズ群における最も観察側のレンズ面から該第1レンズ群の後側主点までの光軸上の距離をH
1とするとき、
0.50≦H1/f1≦5.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項9】
前記第1レンズ群の後側主点は、該第1レンズ群における最も観察側のレンズ面よりも物体側に位置することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項10】
前記第1レンズ群における最も観察側のレンズ面から該第1レンズ群の後側主点までの光軸上の距離をH1、前記第2レンズ群における最も物体側のレンズ面から該第2レンズ群の前側主点までの光軸上の距離をH2、前記第1レンズ群における最も観察側のレンズ面と前記第2レンズ群における最も物体側のレンズ面との光軸上の間隔をD、前記接眼レンズの焦点距離をfとするとき、
3.0≦(-H1+D+H2)/f≦10.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項11】
0.10≦fair/f1≦1.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項12】
前記空気レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をR1、該空気レンズの観察側のレンズ面の曲率半径をR2とするとき、
-0.10≦(R1
+R2)/(R1
-R2)<1.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項13】
前記第1レンズ群における最も観察側のレンズ面から該第1レンズ群の後側主点までの光軸上の距離をH1、前記第1レンズ群における最も観察側のレンズ面と前記第2レンズ群における最も物体側のレンズ面との光軸上の間隔をDとするとき、
1.0≦-H1/D≦10.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項14】
前記第1レンズ群における最も観察側のレンズ面と前記第2レンズ群における最も物体側のレンズ面との光軸上の間隔をD、前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から前記第2レンズ群における最も観察側のレンズ面までの距離をLDとするとき、
0.10≦D/LD≦0.30
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項15】
対物レンズと、
請求項1から14のいずれか一項に記載の接眼レンズとを有することを特徴とする観察光学系。
【請求項16】
請求項1
5に記載の観察光学系を有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡等の観察光学系に好適な接眼レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような接眼レンズには、大口径かつ高倍率でありながら小型であることが望まれている。さらに接眼レンズには、視野角が60度以上と広視野でありながらアイレリーフが十分に確保され、かつ諸収差が良好に補正された光学系が望まれている。
【0003】
特許文献1には、負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群とにより構成され、焦点距離が7.0mm程度で、視野角が68度程度の接眼レンズが開示されている。特許文献2には、負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群とにより構成され、焦点距離が12.11mm程度で、視野角が75度程度の接眼レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3541285号公報
【文献】特許第3259530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、視野角を大きくしてアイレリーフを十分に確保しつつ接眼レンズの焦点距離を短くすると、接眼レンズが大型化する。またこのような接眼レンズでは、軸外主光線に対して収斂性の屈折レンズ面が多くなり、諸収差を良好に補正することが困難となる。
【0006】
特許文献1の接眼レンズでは、焦点距離は短くするためには負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群との空気間隔を広くする必要があり、接眼レンズが大型化する。特許文献2の接眼レンズでは、第1レンズ群と第2レンズ群との空気間隔は狭いが、第1レンズ群の負の屈折力が弱くて接眼レンズの焦点距離が短くならないため、接眼レンズの倍率を十分に確保することが難しい。
【0007】
本発明は、広視野角でありながら、諸収差が良好に補正され、アイレリーフが十分に確保され、焦点距離が短い小型の接眼レンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての接眼レンズは、物体側から観察側へ順に配置された、対物レンズ、像反転系および接眼レンズを有する観察光学系に用いられる。該接眼レンズは、物体側から観察側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群とからなる。第1レンズ群と第2レンズ群との間の空気間隔は、接眼レンズ内において最大の空気間隔である。第1レンズ群と第2レンズ群の間に中間像が形成されている。第1レンズ群は、最も物体側に配置された負レンズ要素と、最も観察側に配置された正レンズ要素とを含み、負レンズ要素と正レンズ要素との間に空気間隔が設けられている。第1レンズ群における最も焦点距離が短い空気レンズの焦点距離をfair、正レンズ要素の焦点距離をfB、第1レンズ群の焦点距離をf1、第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
-20.0≦fB/fair≦-4.0
-5.00≦f1/f2≦-0.50
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記観察光学系およびこれを有する光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広視野角でありながら、諸収差が良好に補正され、アイレリーフが十分に確保され、焦点距離が短い小型の接眼レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1、
図3、
図5、
図7、
図9および
図11に示す実施例1~6は、物体からの光の入射側である物体側から観察側(アイポイントEP側)へ順に対物レンズ、像反転系および接眼レンズを有し、接眼レンズにより拡大された物体像を観察者に提示する観察光学系に用いられる接眼レンズの実施例である。観察者は、アイポイントEPの位置に眼を配置することで、物体像を観察することができる。また、
図13に示す実施例7は、観察光学系の実施例である。
図1、
図3、
図5、
図7、
図9、
図11および
図13において、左側が物体側であり、右側がアイポイントEP側である。また、各実施例において、物体側の方向を負の符号で、EP側の方向を正の符号で表す。実施例1~7のそれぞれに対応する数値例1~7を後にまとめて示している。
【0013】
実施例(数値例)1~6の接眼レンズは、観察者の瞳の径(瞳径)φが2.0mm、視野角2ωが60°程度の接眼レンズである。
【0014】
図2、
図4、
図6、
図8,
図10および
図12は、EP側から光線が入射するときの実施例1~6の接眼レンズの結像収差図である。球面収差図において、実線はd線(波長587.6nm)に対する球面収差を、一点鎖線はC線(656.3nm)に対する球面収差を、二点鎖線はF線(486.1nm)に対する球面収差をそれぞれ示している。非点収差図において、実線Sはサジタル像面での非点収差を、破線Mはメリディオナル像面での非点収差を示している。ωは半視野角(°)である。歪曲図において、はd線に対するものを示している。色収差図において、一点鎖線はC線に対する倍率色収差を、二点鎖線はF線に対する倍率色収差を示している。
【0015】
次に、各実施例について具体的に説明する。実施例1~3の接眼レンズは、物体側からEP側へ順に配置された、負の屈折力(=焦点距離の逆数)の第1レンズ群L1と、正の屈折力の第2レンズ群L2とにより構成されている。第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間には接眼レンズ内での最大の空気間隔LAが形成されており、該空気間隔LA内には中間像が形成される。
【0016】
負の屈折力の第1レンズ群L1は、物体側からEP側へ順に配置された、負の屈折力のレンズ(負レンズ要素)A、第1レンズ群L1内で最も焦点距離が短い空気レンズと、正の屈折力のレンズ(正レンズ要素)Bとにより構成されている。なお、本実施例において「レンズ要素」とは、単レンズまたは接合レンズである。単レンズとは1つのレンズで構成されたレンズであって他のレンズと接合されていないものである。接合レンズとは2以上のレンズが接合されたレンズである。
【0017】
この構成により、第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くしている。第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くするのは、中間像における軸外光線の高さを高くしてアイレリーフ(最もEP側のレンズ面からEPまでの距離)を長くするためと、中間像の位置よりもEP側で発生する像面湾曲や非点収差と逆の収差を発生させて接眼レンズ全体として像面湾曲や非点収差を小さく抑えるためである。
【0018】
また、観察光学系全体の倍率を大きくするためには、対物レンズの焦点距離を長くするか接眼レンズの焦点距離を短くする必要がある。対物レンズの焦点距離を長くする場合はレンズ全長が大幅に長くなり、レンズ全長を小さくした場合はレンズの組立精度を厳しくする必要があり、大きさと精度の両立が難しい。
【0019】
観察光学系全体の大型化を抑えつつ高倍率化を図るためには、接眼レンズの焦点距離を短くすることが好ましい。接眼レンズの焦点距離を短くするためには、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2のそれぞれの焦点距離を短くし、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の主点間隔を広げる必要がある。主点間隔は、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間の空気間隔LAを広げることで実現できる。ただし、空気間隔LAを広げると、接眼レンズが大型化する。
【0020】
第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間の空気間隔LAを広げずに主点間隔を広げるためには、第1レンズ群L1の後側主点を該第1レンズ群L1における最もEP側のレンズ面よりも物体側に配置し、第2レンズ群L2の前側主点を該第2レンズ群L2における最も物体側のレンズ面よりもEP側に配置すればよい。
【0021】
第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置するためには、第1レンズ群L1において最も物体側に負レンズ要素Aを、最もEP側に正レンズ要素Bをそれぞれ適切な焦点距離で配置し、さらに第1レンズ群L1内に空気レンズを配置して負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間隔を適切(長め)に設定すればよい。本実施例では、第1レンズ群L1をこのように構成することで、第1レンズ群L1に負の短い焦点距離を持たせつつ、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置している。
【0022】
また、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間の空気間隔LA内には中間像が形成される。空気間隔LAが狭すぎると、中間像に近いレンズ面である第1レンズ群L1の最もEP側のレンズ面や第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面に付着しているゴミや傷等が観察されてしまう。このため、空気間隔LAを、ゴミ等が観察されない広さに設定する必要がある。このような空気間隔LAを確保しつつ、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置することで、接眼レンズを小型化にしつつ、接眼レンズの焦点距離を短くすることが可能となる。
【0023】
さらに、本実施例において、中間像の位置よりもEP側に第2レンズ群L2を配置しているのは、中間像として形成される空中像を拡大するためである。
【0024】
実施例4の接眼レンズも、実施例1~3と同様に、物体側からEP側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1と、正の屈折力の第2レンズ群L2とにより構成されている。第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間には接眼レンズ内での最大の空気間隔LAが形成されており、該空気間隔LA内には中間像が形成される。
【0025】
負の屈折力の第1レンズ群L1は、物体側からEP側に順に配置された、負の屈折力のレンズ(負レンズ要素)Aと、第1レンズ群L1内で最も焦点距離が短い空気レンズと、もう1つの負レンズと、もう1つの空気レンズと、正の屈折力のレンズ(正レンズ要素)Bとにより構成されている。本実施例でも、第1レンズ群L1に物体側から負レンズ要素Aと正レンズ要素Bを配置し、負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間に焦点距離が短い空気レンズを形成することで、第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くしている。第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くする理由は、実施例1~3と同じである。
【0026】
また、本実施例でも、実施例1~3と同様に、中間像の位置を挟んで物体側に第1レンズ群L1をEP側に第2レンズ群L2を配置することで、中間像の位置を挟んで逆の収差が発生させて良好な収差補正を可能としている。
【0027】
さらに本実施例でも、実施例1~3と同様に、第1レンズ群L1において最も物体側に負レンズ要素Aを、最もEP側に正レンズ要素Bをそれぞれ適切な焦点距離で配置し、さらに第1レンズ群L1内に空気レンズを配置して負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間隔を適切に設定することにより、第1レンズ群L1に負の短い焦点距離を持たせつつ、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置している。
【0028】
そして本実施例でも、空気間隔LAをゴミ等が観察されない間隔に設定するとともに第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置することで、接眼レンズを小型化にしつつ、接眼レンズの焦点距離を短くしている。また、本実施例でも、中間像の位置よりEP側に第2レンズ群L2を配置して、中間像としての空中像を拡大している。
【0029】
実施例5の接眼レンズも、実施例1~3と同様に、物体側からEP側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1と、正の屈折力の第2レンズ群L2とにより構成されている。第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間には接眼レンズ内での最大の空気間隔LAが形成されており、該空気間隔LA内には中間像が形成される。
【0030】
負の屈折力の第1レンズ群L1は、物体側からEP側に順に配置された、負の屈折力のレンズ(負レンズ要素)Aと、第1レンズ群L1内で最も焦点距離が短い空気レンズと、正の屈折力の接合レンズ(正レンズ要素)Bとにより構成されている。本実施例でも、第1レンズ群L1に物体側から負レンズ要素Aと正レンズ要素Bを配置し、負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間に焦点距離が短い空気レンズを形成することで、第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くしている。第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くする理由は、実施例1~3と同じである。
【0031】
また、本実施例でも、実施例1~3と同様に、第1レンズ群L1において最も物体側に負レンズ要素Aを、最もEP側に正レンズ要素Bをそれぞれ適切な焦点距離で配置し、さらに第1レンズ群L1内に空気レンズを配置して負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間隔を適切に設定することにより、第1レンズ群L1に負の短い焦点距離を持たせつつ、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置している。
【0032】
また、本実施例でも、実施例1~3と同様に、中間像の位置を挟んで物体側に第1レンズ群L1をEP側に第2レンズ群L2を配置することで、中間像の位置を挟んで逆の収差が発生させて良好な収差補正を可能としている。
【0033】
また、本実施例でも、実施例1~3と同様に、第1レンズ群L1において最も物体側に負レンズ要素Aを、最もEP側に正レンズ要素Bをそれぞれ適切な焦点距離で配置し、さらに第1レンズ群L1内に空気レンズを配置して負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間隔を適切に設定することにより、第1レンズ群L1に負の短い焦点距離を持たせつつ、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置している。
【0034】
そして本実施例でも、空気間隔LAをゴミ等が観察されない間隔に設定するとともに第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置することで、接眼レンズを小型化にしつつ、接眼レンズの焦点距離を短くしている。また、本実施例でも、中間像の位置よりEP側に第2レンズ群L2を配置して、中間像としての空中像を拡大している。
【0035】
実施例6の接眼レンズも、実施例1~3と同様に、物体側からEP側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1と、正の屈折力の第2レンズ群L2とにより構成されている。第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間には接眼レンズ内での最大の空気間隔LAが形成されており、該空気間隔LA内には中間像が形成される。
【0036】
負の屈折力の第1レンズ群L1は、物体側からEP側に順に配置された、負の屈折力の接合レンズ(負レンズ要素)Aと、第1レンズ群L1内で最も焦点距離が短い空気レンズと、正の屈折力の接合レンズ(正レンズ要素)Bとにより構成されている。本実施例でも、第1レンズ群L1に物体側から負レンズ要素Aと正レンズ要素Bを配置し、負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間に焦点距離が短い空気レンズを形成することで、第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くしている。第1レンズ群L1の負の焦点距離を短くする理由は、実施例1~3と同じである。
【0037】
また、本実施例でも、実施例1~3と同様に、中間像の位置を挟んで物体側に第1レンズ群L1をEP側に第2レンズ群L2を配置することで、中間像の位置を挟んで逆の収差が発生させて良好な収差補正を可能としている。
【0038】
さらに本実施例でも、実施例1~3と同様に、第1レンズ群L1において最も物体側に負レンズ要素Aを、最もEP側に正レンズ要素Bをそれぞれ適切な焦点距離で配置し、さらに第1レンズ群L1内に空気レンズを配置して負レンズ要素Aと正レンズ要素Bの間隔を適切に設定することにより、第1レンズ群L1に負の短い焦点距離を持たせつつ、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置している。
【0039】
そして本実施例でも、空気間隔LAをゴミ等が観察されない間隔に設定するとともに第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置することで、接眼レンズを小型化にしつつ、接眼レンズの焦点距離を短くしている。また、本実施例でも、中間像の位置よりEP側に第2レンズ群L2を配置して、中間像としての空中像を拡大している。
【0040】
実施例7の観察光学系は、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡等の光学機器100に用いられる。観察光学系は、物体側からEP側へ順に、正の屈折力の対物レンズOLと、対物レンズOLにより形成される物体像(倒立像)を正立像に反転させる像反転系Pと、正立像を観察する接眼レンズELとを有する。なお、
図13では像反転系Pを光路を直線状に展開したガラスブロックとして示している。接眼レンズELは、実施例1(数値例1)の接眼レンズである。ただし、観察光学系に他の実施例の接眼レンズを用いてもよい。
【0041】
また、本実施例では、対物レンズOLと像反転系Pとの間に可変頂角プリズムVAPを配置している。可変頂角プリズムVAPは、手振れ等の振動に応じて物体側の面とEP側の面の相対角度を変化させることにより像振れを低減(補正)する光学素子である。本実施例の観察光学系は、25倍程度の高倍率でありながら、手振れ補正機能を有する。
【0042】
なお、本実施例では、対物レンズOLが3つのレンズにより構成されるが、対物レンズを構成するレンズの数は3つに限られない。また、像反転系Pの具体的構成はどのようなものでもよく、プリズムを用いる場合のプリズムの個数はいくつでもよい。
【0043】
また、対物レンズOLを移動させたり接眼レンズELを移動させたりして、視度調整を行えるようにしてもよい。接眼レンズELを移動させて視度調整を行う場合には、接眼レンズの焦点距離が短いために移動量を小さくすることができるため、観察光学系全体を小さくすることができる。
【0044】
次に、視野角が60度以上と広視野でありながら、視野全体に渡って歪曲収差、像面湾曲および色ずれ等の諸収差を良好に補正でき、アイレリーフが長く、焦点距離が短くて観察光学系の倍率を十分に確保できる小型の接眼レンズが満足すべき条件について説明する。
【0045】
第1レンズ群L1内の最も焦点距離が短い空気レンズの焦点距離をfair、正レンズ要素Bの焦点距離をfBをとするとき、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
-20.0≦fB/fair≦-4.0 (1)
条件式(1)は、正レンズ要素Bと第1レンズ群L1内の最も焦点距離の短い空気レンズの焦点距離との関係に関する条件を示す。fB/fairが条件式(1)の上限値を超えると、空気レンズの焦点距離が短くなるために接眼レンズ全体の焦点距離が短くなる。しかし、正レンズ要素Bの焦点距離が長くなることで第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置しにくくなり、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の主点間隔を広げることが難しくなる。この結果、接眼レンズ全体の焦点距離を短くしにくくなり、観察光学系の高倍率化が難しくなるため、好ましくない。fB/fairが条件式(1)の下限値を下回ると、正レンズ要素Bの焦点距離が短くなるため、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置しやすくなる。しかし、空気レンズの焦点距離が長くなり、この結果、接眼レンズ全体の焦点距離を短くすることが困難になるため、好ましくない。
【0046】
なお、条件式(1)の数値範囲を次のようにすると、より好ましい。
-15.00≦fB/fair≦-4.05 (1a)
また、条件式(1)の数値範囲を次のようにすると、さらに好ましい。
-12.00≦fB/fair≦-4.10 (1b)
正レンズ要素Bにおける最も物体側のレンズ面の曲率半径をR1B、正レンズ要素Bにおける最もEP側の曲率半径をR2B、接眼レンズの焦点距離をf、接眼レンズにおいて正レンズ要素Bよりも物体側に配置された全てのレンズの合成焦点距離をfAA、第1レンズ群L1の焦点距離をf1、第2レンズ群L2の焦点距離をf2、第1レンズ群L1における最もEP側のレンズ面から該第1レンズ群L1の後側主点までの光軸上の距離をH1、第2レンズ群L2における最も物体側のレンズ面から該第2レンズ群L2の前側主点までの光軸上の距離をH2、第1レンズ群L1の最もEP側のレンズ面と第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面との光軸上の間隔をD(=LA)、第1レンズ群L1内における最も焦点距離が短い空気レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をR1、該空気レンズのEP側のレンズ面の曲率半径をR2、第1レンズ群L1における最も物体側のレンズ面から第2レンズ群L2における最もEP側のレンズ面までの光軸上の距離をLDとするとき、以下の条件式(2)~(13)のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
-0.10≦(R1B-R2B)/(R1B+R2B)≦0.22 (2)
5.0≦fB/f≦20.0 (3)
-15.0≦fB/fAA≦-3.0 (4)
-5.00≦f1/f2≦-0.50 (5)
-10.0≦f1/f≦-1.0 (6)
1.0≦f2/f≦10.0 (7)
0.50≦H1/f1≦5.00 (8)
3.0≦(-H1+D+H2)/f≦10.0 (9)
0.10≦fair/f1≦1.00 (10)-0.10≦(R1+R2)/(R1-R2)<1.00 (11)
1.0≦-H1/D≦10.0 (12)
0.10≦D/LD≦0.30 (13)
条件式(2)は、正レンズ要素Bのシェイプファクタに関する条件を示す。(R1B-R2B)/(R1B+R2B)が条件式(2)の上限値を超えると、正レンズ要素Bの焦点距離が短くなるため、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置しやすくなる。しかし、第1レンズ群L1の負の焦点距離が弱くなり、この結果、接眼レンズの焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。(R1B-R2B)/(R1B+R2B)が条件式(2)の下限値を下回ると、正レンズ要素Bの焦点距離が長くなるため、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置することが難しくなる。この結果、接眼レンズの焦点距離を短くすることが困難となり、観察光学系の倍率を十分に確保することができなくなるため、好ましくない。
【0047】
条件式(3)は、接眼レンズの焦点距離と正レンズ要素Bの焦点距離との関係に関する条件を示す。fB/fが条件式(3)の上限値を超えると、正レンズ要素Bの焦点距離が長くなるため、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置することが難しくなる。この結果、接眼レンズの焦点距離を短くすることが困難となり、観察光学系の倍率を十分に確保することができなくなるため、好ましくない。fB/fが条件式(3)の下限値を下回ると、正レンズ要素Bの焦点距離が短くなるため、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に配置しやすくなる。しかし、第1レンズ群L1の負の焦点距離が弱くなり、この結果、接眼レンズの焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。
【0048】
条件式(4)は、第1レンズ群L1における正レンズ要素Bと該正レンズ要素Bよりも物体側の少なくとも1つのレンズの合成焦点距離との関係に関する条件を示す。fB/fAAが条件式(4)の上限値を超えると、正レンズ要素Bの焦点距離が短くなり、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に移動させやすくなり、接眼レンズ全体の焦点距離を短くしやすくなる。しかし、正レンズ要素Bの屈折力が強まることによってアイレリーフの確保が困難となる。アイレリーフを確保するためには、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間隔を広げる必要があり、この結果、接眼レンズが大型化するため、好ましくない。fB/fAAが条件式(4)の下限値を下回ると、第1レンズ群L1の負の焦点距離が短くなり、アイレリーフを確保しやすくなる。しかし、正レンズ要素Bの焦点距離が短くなるため、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に移動させることが困難となる。この結果、接眼レンズの焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。
【0049】
条件式(5)は、第1レンズ群L1の焦点距離と第2レンズ群L2の焦点距離との関係に関する条件を示す。f1/f2が条件式(5)の上限値を超えると、第1レンズ群L1の負の屈折力が強くなり、接眼レンズの焦点距離を短くしやすくなる。しかし、像面湾曲がアンダー側に大きくなり、これを補正することが困難となるため、好ましくない。f1/f2が条件式(5)の下限値を下回ると、第1レンズ群L1の負の屈折力が弱くなり、接眼レンズの焦点距離を短くすることができなくなり、観察光学系の倍率を確保することが困難となるため、好ましくない。また、像面湾曲がオーバー側に大きく発生してこれを補正することが困難となるため、好ましくない。
【0050】
条件式(6)は、接眼レンズの焦点距離と第1レンズ群L1の焦点距離との関係に関する条件を示す。f1/fが条件式(6)の上限値を超えると、第1レンズ群L1の負の屈折力が強くなり、接眼レンズの焦点距離を短くしやすくなる。しかし、像面湾曲がアンダー側に大きくなってこれを補正することが困難となるため、好ましくない。f1/fが条件式(6)の下限値を下回ると、第1レンズ群L1の負の屈折力が弱くなり、接眼レンズの焦点距離を短くすることができなくなり、観察光学系の倍率を確保することが困難となるため、好ましくない。また像面湾曲がオーバー側に大きく発生してこれを補正することが困難となるため、好ましくない。
【0051】
条件式(7)は、接眼レンズの焦点距離と第1レンズ群L2の焦点距離との関係に関する条件を示す。f2/fが条件式(7)の上限値を超えると、第2レンズ群L2の焦点距離が長くなるため、接眼レンズの焦点距離を短くすることができなくなり、観察光学系の倍率を確保することが困難となるため、好ましくない。また像面湾曲がアンダー側に大きく発生してこれを補正することが困難であるため、好ましくない。f2/fが条件式(7)の下限値を下回ると、第2レンズ群L2の焦点距離が短くなり、接眼レンズの焦点距離を短くしやすくなる。しかし、第2レンズ群L2の焦点距離が短くなって像面湾曲がオーバー側に発生してこれを補正することが困難になるため、好ましくない。
【0052】
条件式(8)は、第1レンズ群L1の後側主点の位置と焦点距離との関係に関する条件を示す。H1/f1が条件式(8)の上限値を超えると、第1レンズ群L1の最もEP側のレンズ面から後側主点までの距離が長くなるために接眼レンズの焦点距離を確保しやすくなる。しかし、第1レンズ群L1の後側主点を物体側に移動させることで負レンズ要素Aの焦点距離が短くなり、像面湾曲がアンダー側に大きく発生してこれを補正することが困難になるため、好ましくない。H1/f1が条件式(8)の下限値を下回ると、第1レンズ群L1の最も物体側のレンズ面から後側主点までの距離が短くなるため、接眼レンズの焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。また正レンズ要素Bの焦点距離が長くなり、この結果、第2レンズ群L2の焦点距離が短くなり、像面湾曲がアンダー側に大きく発生してこれを補正することが困難になるため、好ましくない。
【0053】
条件式(9)は、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の主点間隔と接眼レンズの焦点距離との関係に関する条件を示す。(-H1+D+H2)/fが条件式(9)の上限値を超えると、第1レンズ群L1の最も物体側のレンズ面から後側主点までの距離が長くなるため、接眼レンズの焦点距離を確保しやすくなる。しかし、後側主点を物体側に移動させるために、負レンズ要素Aの焦点距離が短くなる。この結果、像面湾曲がアンダー側に大きく発生してこれを補正することが困難となるため、好ましくない。(-H1+D+H2)/fが条件式(9)の下限値を下回ると、第1レンズ群L1の最も物体側のレンズ面から後側主点までの距離が短くなって、接眼レンズの焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。また、正レンズ要素Bの焦点距離が長くなり、この結果、第2レンズ群L2の焦点距離が短くなり、像面湾曲がオーバー側に大きく発生してこれを補正することが困難となるため、好ましくない。
【0054】
条件式(10)は、第1レンズ群L1における最も焦点距離が短い空気レンズの焦点距離と第1レンズ群L1の焦点距離との関係に関する条件を示す。fair/f1が条件式(10)の上限値を超えると、第1レンズ群L1の負の焦点距離が長くなり、接眼レンズ全体の焦点距離を短くすることができず、観察光学系の倍率を確保することが困難となるため、好ましくない。また第1レンズ群L1のレンズ数が増加して、接眼レンズ全体が大型化するため、好ましくない。fair/f1が条件式(10)の下限値を下回ると、空気レンズの焦点距離が短くなり、接眼レンズの焦点距離を短くしやすくなる。しかし、像面湾曲がオーバー側に発生してこれを補正することが困難となるため、好ましくない。
【0055】
条件式(11)は、最も焦点距離が短い空気レンズのシェイプファクタに関する条件を示す。(R1+R2)/(R1-R2)が条件式(11)の上限値を超えると、空気レンズの物体側のレンズ面(曲率半係R1)の曲率よりEP側のレンズ面(曲率半径R2)の曲率が大きくなる。この結果、負レンズ要素Aの屈折力と正レンズ要素Bの屈折力が強くなり、第1レンズ群L1を構成するレンズの数を増やす必要があり、接眼レンズ全体が大型化するため、好ましくない。(R1+R2)/(R1-R2)が条件式(11)の下限値を下回ると、空気レンズの物体側のレンズ面の曲率よりEP側のレンズ面の曲率が小さくなる。このため、第1レンズ群L1を構成するレンズの数を増やすことなく、空気レンズの負の屈折力を大きく設定することが可能となる。しかし、空気レンズの曲率が強くなりすぎて正レンズ要素Bを加工することが困難となる。この結果、第1レンズ群L1を構成するレンズの数を増やすしかなくなるため、好ましくない。
【0056】
条件式(12)は、第1レンズ群L1の後側主点の位置と接眼レンズ内の最大の空気間隔D(LA)との関係に関する条件を示す。H1/Dが条件式(12)の上限値を超えると、第1レンズ群L1の最も物体側のレンズ面から後側主点までの距離が長くなる。しかし、後側主点を物体側に移動させることにより正レンズ要素Bの焦点距離が短くなって接眼レンズの焦点距離を短くすることが難しくなるため又は空気間隔Dが短くなってゴミ等が観察されやすくなるため、好ましくない。H1/Dが条件式(12)の下限値を下回ると、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の主点間隔を確保することが困難となり、接眼レンズの焦点距離を短くすることが難しくなるため、好ましくない。
【0057】
条件式(13)は、接眼レンズの全長に対する接眼レンズ内における最大の空気間隔との関係に関する条件を示す。D/LDが条件式(13)の上限値を超えると、空気間隔が大きくなって接眼レンズの全長が長くなり、接眼レンズが大型化するため、好ましくない。D/LDが条件式(13)の下限値を下回ると、接眼レンズの全長は短くなる。しかし、中間像が形成される空気間隔が狭くなることで、接眼レンズ内の最大の空気間隔が狭くなり、ゴミやレンズ面の傷等が観察されやすくなるため、好ましくない。
なお、条件式(2)~(13)の数値範囲を次のようにすると、より好ましい。-0.080≦(R1B-R2B)/(R1B+R2B)≦0.215 (2a)
5.1≦fB/f≦15.0 (3a)
-10.0≦fB/fAA≦-3.5 (4a)
-2.0≦f1/f2≦-0.8 (5a)
-5.0≦f1/f≦-2.0 (6a)
1.5≦f2/f≦5.0 (7a)
0.80≦H1/f1≦3.00 (8a)
5.0≦(-H1+D+H2)/f≦8.5 (9a)
0.20≦fair/f1≦0.80 (10a)
-0.098≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.500 (11a)
1.5≦-H1/D≦8.0 (12a)
0.11≦D/LD≦0.25 (13a)
また、条件式(2)~(13)の数値範囲を次のようにすると、さらに好ましい。
【0058】
-0.040≦(R1B-R2B)/(R1B+R2B)≦0.212 (2b)
5.2≦fB/f≦10.8 (3b)
-6.5≦fB/fAA≦-3.9 (4b)
-1.6≦f1/f2≦-1.1 (5b)
-3.4≦f1/f≦-2.9 (6b)
2.1≦f2/f≦2.7 (7b)
1.0≦H1/f1≦1.5 (8b)
6.0≦(-H1+D+H2)/f≦7.6 (9b)
0.29≦fair/f1≦0.65 (10b)
-0.095≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.380 (11b)
2.0≦-H1/D≦4.5 (12b)
0.11≦D/LD≦0.22 (13b)
さらに、第2レンズ群L2は、負レンズと正レンズが接合された正の接合レンズ、正レンズと負レンズと正レンズが接合された正の接合レンズにより構成されることが好ましい。
接眼レンズの焦点距離を短くすると正の屈折力が強くなるため、その正の屈折力を3のレンズに分担させることで、それらに収差補正を分担させることができる。また、正レンズのみでは色収差の補正が困難となるため、3つの正レンズのうち径が小さい最も物体側と最もEP側の正レンズを接合レンズとすることで、倍率色収差を良好に補正することができる。
【0059】
以下、数値例1~7を示す。各数値例において、面番号iは物体側からi番目の面を示し、rはi番目の曲率半径(mm)、dはi番目と(i+1)番目の面間のレンズ厚または空気間隔(mm)、ndはi番目の光学部材の材料のd線における屈折率である。νdはi番目の光学部材の材料のd線を基準としたアッベ数である。アッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、νd=(Nd-1)/(NF-NC)で表される。
【0060】
全長は、接眼レンズまたは観察光学系における最も物体側のレンズ面から最もEP側のレンズ面までの光軸上の長さである。アイレリーフは、接眼レンズにおける最もEP側のレンズ面からアイポイントEPまでの光軸上の距離である。
【0061】
また、数値例1~6(実施例1~6)における前述した条件式(1)~(13)に対応する値を表1にまとめて示す。
数値例1(実施例1)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 -12.718 1.00 1.72916 54.7 8.66
2 22.030 6.19 9.32
3 -10.238 4.12 1.85478 24.8 12.61
4 -10.041 10.97 15.66
5 -1934.297 1.30 1.84666 23.8 23.41
6 29.231 9.38 1.53775 74.7 24.71
7 -26.226 0.20 26.60
8 742.662 6.41 1.59522 67.7 28.00
9 -26.919 0.20 28.45
10 36.502 1.40 1.84666 23.8 25.52
11 14.809 9.51 1.77250 49.6 22.90
12 -93.208 15.00 21.09
13(瞳) ∞ 2.00
各種データ
全長 50.68
焦点距離 7.276
瞳径 φ2.00
アイレリーフ 15.00
視野角2ω 60.0°
レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -21.58 11.31 -6.33 -23.73
2 5 17.09 43.40 11.48 -20.40
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -10.93
2 3 57.39
3 5 -34.00
4 6 27.32
5 8 43.78
6 10 -30.33
7 11 17.20
数値例2(実施例2)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 -12.516 1.00 1.72916 54.7 8.11
2 19.407 6.46 8.82
3 -10.005 4.13 1.85478 24.8 12.72
4 -9.723 9.72 15.81
5 -51.650 1.30 1.84666 23.8 22.45
6 37.317 11.41 1.53775 74.7 24.89
7 -19.467 0.20 27.80
8 237.469 6.64 1.59522 67.7 29.92
9 -30.710 0.20 30.26
10 31.827 1.40 1.84666 23.8 26.93
11 14.136 10.39 1.77250 49.6 23.68
12 -146.091 15.00 21.54
13(瞳) ∞ 2.00
各種データ
全長 52.85
焦点距離 6.500
瞳径 φ2.00
アイレリーフ 15.00
視野角2ω 60.0°
レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -21.65 11.59 -6.85 -25.84
2 5 16.12 46.54 12.59 -19.01
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -10.30
2 3 52.07
3 5 -25.42
4 6 25.59
5 8 46.11
6 10 -31.17
7 11 17.17
数値例3(実施例3)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 -12.386 1.00 1.69680 55.5 7.77
2 16.225 7.86 8.51
3 -8.778 2.86 1.94594 18.0 13.39
4 -8.874 7.60 15.60
5 -45.104 1.30 2.00069 25.5 22.39
6 38.374 13.48 1.59522 67.7 25.28
7 -18.687 0.20 29.60
8 155.348 6.82 1.69680 55.5 32.91
9 -38.440 0.20 33.22
10 29.568 1.40 1.86966 20.0 29.54
11 15.361 11.79 1.69680 55.5 26.00
12 -84.226 15.00 23.76
13(瞳) ∞ 2.00
各種データ
全長 57.51
焦点距離 5.900
瞳径 φ2.00
アイレリーフ 15.00
視野角2ω 60.0°
レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -17.80 11.72 -4.83 -22.44
2 5 15.24 50.19 13.37 -18.65
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -9.94
2 3 63.61
3 5 -20.56
4 6 23.15
5 8 44.87
6 10 -38.53
7 11 19.60
数値例4(実施例4)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 -18.809 1.00 1.67790 55.3 7.80
2 19.504 2.13 8.24
3 -16.746 1.20 1.80400 46.6 9.06
4 -56.526 5.92 10.14
5 -9.859 3.62 2.00100 29.1 13.94
6 -9.908 5.95 16.80
7 -71.597 1.30 1.95906 17.5 22.78
8 37.544 11.91 1.49700 81.5 24.87
9 -19.428 0.20 28.40
10 151.041 6.80 1.88300 40.8 32.15
11 -36.745 0.20 32.50
12 27.284 1.40 1.94594 18.0 27.61
13 14.792 9.69 1.71999 50.2 24.16
14 -454.392 15.00 21.85
15(瞳) ∞ 2.00
各種データ
全長 54.32
焦点距離 5.900
瞳径 φ2.00
アイレリーフ 15.00
視野角2ω 60.0°
レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -18.05 13.87 -5.06 -26.36
2 7 15.38 46.50 12.10 -18.95
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -13.98
2 3 -30.00
3 5 55.39
4 7 -25.53
5 8 27.68
6 10 34.05
7 12 -36.12
8 13 20.07
数値例5(実施例5)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 -17.658 1.00 1.78590 44.2 9.04
2 17.938 6.29 9.52
3 -11.166 0.50 1.59522 67.7 12.95
4 -40.000 3.76 1.84666 23.8 15.03
5 -11.950 6.50 16.30
6 -43.726 1.30 1.84666 23.8 20.73
7 29.445 11.91 1.53775 74.7 23.49
8 -19.745 0.20 27.29
9 81.404 8.46 1.59522 67.7 31.12
10 -30.183 0.20 31.55
11 33.055 1.40 1.84666 23.8 27.69
12 14.021 11.24 1.77250 49.6 24.10
13 -206.056 15.00 21.60
14(瞳) ∞ 2.00
各種データ
全長 55.76
焦点距離 7.277
瞳径 φ2.00
アイレリーフ 15.00
視野角2ω 60.0°
レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -24.14 11.55 -7.02 -24.55
2 6 15.87 49.71 13.32 -19.18
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -11.18
2 3 -26.19
3 4 18.96
4 6 -20.62
5 7 24.01
6 9 38.07
7 11 -29.76
8 12 17.38
数値例6(実施例6)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 -14.721 0.50 1.80100 35.0 9.17
2 6.188 3.40 1.84666 23.8 10.19
3 16.241 6.04 10.46
4 -19.509 0.50 1.84666 23.9 14.60
5 -45.368 3.90 1.78470 26.3 16.57
6 -12.716 6.29 17.13
7 -108.619 1.30 1.84666 23.8 23.34
8 39.302 10.92 1.53775 74.7 25.21
9 -19.935 0.20 27.66
10 123.371 6.00 1.59522 67.7 29.15
11 -36.704 0.20 29.26
12 32.550 1.40 1.84666 23.8 26.40
13 14.286 9.79 1.77250 49.6 23.34
14 -172.311 15.00 21.33
15(瞳) ∞ 2.00
各種データ
全長 50.44
焦点距離 7.298
瞳径 φ2.00
アイレリーフ 15.00
視野角2ω 60.0°
レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -23.08 14.34 -6.69 -26.95
2 7 16.29 44.81 11.51 -20.52
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -5.38
2 2 10.22
3 4 -40.79
4 5 21.39
5 7 -33.95
6 8 26.29
7 10 48.20
8 12 -31.17
9 13 17.48
数値例7(実施例7)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 65.796 7.35 1.53775 74.7 50.70
2 -598.450 24.68 50.15
3 44.898 7.75 1.43875 94.7 35.37
4 -109.659 1.85 1.77250 49.6 33.68
5 55.985 15.16 31.47
6 ∞ 7.00 1.51633 64.1 27.87
7 ∞ 40.25 26.59
8 ∞ 75.50 1.65844 50.9 15.39
9 ∞ 3.95 8.72
10 -12.718 1.00 1.72916 54.7 8.66
11 22.030 6.19 9.32
12 -10.238 4.12 1.85478 24.8 12.61
13 -10.041 10.97 15.66
14 -1934.297 1.30 1.84666 23.8 23.41
15 29.231 9.38 1.53775 74.7 24.71
16 -26.226 0.20 26.60
17 742.662 6.41 1.59522 67.7 28.00
18 -26.919 0.20 28.45
19 36.502 1.40 1.84666 23.8 25.52
20 14.809 9.51 1.77250 49.6 22.90
21 -93.208 15.00 21.09
22(瞳) ∞ 2.00
各種データ
倍率 25.00
画角 1.22
全長 235.18
レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 181.85 41.63 -50.77 -66.28
2 6 ∞ 7.00 2.31 -2.31
3 8 ∞ 75.50 22.76 -22.76
4 10 7.28 65.68 13.33 -4.83
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 110.66
2 3 73.73
3 4 -47.75
4 6 0.00
5 8 0.00
6 10 -10.93
7 12 57.39
8 14 -34.00
9 15 27.32
10 17 43.78
11 19 -30.33
12 20 17.20
【0062】
【0063】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
LA 最大の空気間隔
fair 空気レンズの焦点距離
A 負レンズ要素
B 正レンズ要素
EP アイポイント