(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】保全リコメンドシステム及び保全リコメンド方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240805BHJP
G06F 11/22 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06F11/22 675C
(21)【出願番号】P 2020112881
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】森岡 智陽
(72)【発明者】
【氏名】横張 孝志
(72)【発明者】
【氏名】難波 康晴
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-042389(JP,A)
【文献】特開2008-202898(JP,A)
【文献】特開2016-004279(JP,A)
【文献】特開2019-133360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 ー 99/00
G06F 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の検査項目の検査結果を用いて機械の故障モードを特定する保全リコメンドシステムであって、
故障モードの特定に必要な少なくとも1つ以上の機械の検査項目の検査結果を入力する情報入力手段と、前記検査結果を記憶する一次記憶部と、故障モード毎に、この故障が起きた時の、検査項目の挙動を示す確率である条件付確率を記憶する検査項目確率テーブルと、故障モードとその発生確率を記憶する故障モード確率テーブルと、前記一次記憶部に記憶した最低1回以上の検査結果から前記検査項目確率テーブルと前記故障モード確率テーブルを参照し、前記機械の検査項目の検査結果の時の前記条件付確率と前記発生確率から故障モードと検査結果の同時確率分布を計算して、故障モードと検査結果の確率を推定する故障モード確率算出部と、同時確率から、検査結果を反映した故障モードの確率を計算し、そのばらつきとしてその事後分散を計算し、故障モードの確率の不確かさを算出する推定精度判定部とを備え、前記故障モードの確率の不確かさを示す前記事後分散が
閾値以上である故障モードについて、前記故障モードの確率の不確かさを改善するための新たに実行すべき検査項目を提示することを特徴とする保全リコメンドシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の保全リコメンドシステムであって、
故障モードの確率の不確かさを、これまで収集してきた検査項目の検査結果から推定する事を特徴とする保全リコメンドシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の保全リコメンドシステムであって、
故障モードの確率が不確かだと判定された時に、検査項目を提示することを特徴とする保全リコメンドシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の保全リコメンドシステムであって、
提示する検査項目についてより故障モードの絞り込みに有効な検査項目を提示するために、故障モードと各検査項目の相互情報量を計算し、最も高い相関の検査項目を優先的に提示することを特徴とする保全リコメンドシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の保全リコメンドシステムであって、
提示する検査項目と、実際に発生していた故障モードを学習する事を特徴とする保全リコメンドシステム。
【請求項6】
端末と、端末に通信を介して接続されるセンタ側システムで構成され、機械の検査項目の検査結果を用いて機械の故障モードを特定する保全リコメンドシステムであって、
前記端末は、表示部と、入力部と、通信部を備え、
前記センタ側システムは、前記端末の入力部で入力された、故障モードの特定に必要な少なくとも1つ以上の検査結果を、前記通信部を介して入力する情報入力部と、前記検査結果を記憶する一次記憶部と、故障モード毎に、この故障が起きた時の、検査項目の挙動を示す確率である条件付確率を記憶する検査項目確率テーブルと、故障モードとその発生確率を記憶する故障モード確率テーブルと、前記一次記憶部に記憶した最低1回以上の検査結果から前記検査項目確率テーブルと前記故障モード確率テーブルを参照し、前記検査結果の時の前記条件付確率と前記発生確率から故障モードと検査結果の同時確率分布を計算して、故障モードと検査結果の確率を推定する故障モード確率算出部と、同時確率から、検査結果を反映した故障モードの確率を計算し、そのばらつきとしてその事後分散を計算し、故障モードの確率の不確かさを算出する推定精度判定部とを備え、
前記端末は、前記センタ側システムにおいて求めた前記故障モードの確率の不確かさを示す前記事後分散が
閾値以上である故障モードについて、前記故障モードの確率の不確かさを改善するための新たに実行すべき検査項目を、前記通信部を介して入力し前記表示部に表示することを特徴とする保全リコメンドシステム。
【請求項7】
計算機により、機械の検査項目の検査結果を用いて機械の故障モードを特定する保全リコメンド方法であって、
計算機は、故障モードの特定に必要な少なくとも1つ以上の検査結果を記憶する一次記憶部と、故障モード毎に、この故障が起きた時の、検査項目の挙動を示す確率である条件付確率を記憶する検査項目確率テーブルと、故障モードとその発生確率を記憶する故障モード確率テーブルとを備え、前記一次記憶部に記憶した最低1回以上の検査結果から前記検査項目確率テーブルと前記故障モード確率テーブルを参照し、前記検査結果の時の前記条件付確率と前記発生確率から故障モードと検査結果の同時確率分布を計算して、故障モードと検査結果の確率を推定し、同時確率から、検査結果を反映した故障モードの確率を計算し、そのばらつきとしてその事後分散を計算し、故障モードの確率の不確かさを算出し、前記故障モードの確率の不確かさを示す前記事後分散が
閾値以上である故障モードについて、前記故障モードの確率の不確かさを改善するための新たに実行すべき検査項目として提示することにより、故障モードの確率の不確かさの程度が高い前記検査項目の検査を促すことを特徴とする保全リコメンド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機器の故障時にその故障モードを特定するための検査箇所をリコメンドするとともに、その検査結果から故障モードを推定することで機器の保全作業を支援する保全リコメンドシステム及び保全リコメンド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンやエレベータ、採掘・建築機器といった機器を常に動作させるためには、
機器の保守作業が必須である。特に機器が故障し停止してしまった際には、迅速に故障の内容を調査して処置を行って機器の稼働復帰することが求められる。調査では機器の各部を検査し、故障を起こしている機器の状態である故障モードを特定することが重要である。
【0003】
この問題を解決するため、故障モードを自動特定する発明として例えば特許文献1がある。特許文献1では、機器各部の状態や機器を使うユーザの操作履歴ごとに故障確率を定義したモデルを用いて、いまどのような故障モードが発生しているかを確率で推定する技術が紹介されている。故障確率は機器の設計者の知識や経験および故障日報などから推定し、モデルに設定する。特許文献1では、加えて発生頻度が一定値を超えた故障モードの発生確率を更新することで市場での故障状況の実情に即して、臨時の更新も行なうことができる技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故障確率の情報源である故障日報には、故障モードを見つけたとき、機器に対し実施した検査の情報が書いてないことが多い。これは1件1件の保全現場での作業時間が限られていること、また「何の故障モードが起きていてどのような処置をしたか?」は報告義務があっても、どのような検査をしたかについては必ずしも報告義務はないためである。
【0006】
それでも発生頻度が高くて大量の故障日報がある故障モードならば、割合は少ないが検査項目が書いてある日報を必要量収集できる可能性は高い。しかし発生頻度が低い故障モードの検査項目はそれが難しい。よって発生頻度の低い故障モードの推定精度を上げるのが困難になる。
【0007】
以上のことから本発明においては、機器の故障モードの推定精度を向上して無駄な交換作業を減らす、また調査時間を短縮し、機器の故障~復帰までの時間を短縮することができる保全リコメンドシステム及び保全リコメンド方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから本発明においては、「機械の故障モードを特定する保全リコメンドシステムであって、故障モードの特定に必要な少なくとも1つ以上の検査結果を入力する情報入力手段と、検査結果を記憶する一次記憶部と、最低1回以上の検査結果から故障モードの確率を推定する故障モード確率算出部と、その故障モードの確率の不確かさを算出する推定精度判定部とを備え、故障モードの確率の不確かさを元に検査項目を提示することを特徴とする保全リコメンドシステム」としたものである。
【0009】
また本発明においては、「端末と、端末に通信を介して接続されるセンタ側システムで構成され、機械の故障モードを特定する保全リコメンドシステムであって、端末は、表示部と、入力部と、通信部を備え、記センタ側システムは、端末の入力部で入力された、故障モードの特定に必要な少なくとも1つ以上の検査結果を、通信部を介して入力する情報入力部と、検査結果を記憶する一次記憶部と、最低1回以上の検査結果から故障モードの確率を推定する故障モード確率算出部と、その故障モードの確率の不確かさを算出する推定精度判定部とを備え、端末は、センタ側システムにおいて故障モードの確率の不確かさを元に求めた検査項目を、通信部を介して入力し表示部に表示することを特徴とする保全リコメンドシステム」としたものである。
【0010】
また本発明においては、「機械の故障モードを特定する保全リコメンド方法であって、
故障モードの特定に必要な少なくとも1つ以上の検査結から、故障モードの確率を推定し、その故障モードの確率の不確かさを算出し、故障モードの確率の不確かさの程度が高い検査項目を提示ことにより、故障モードの確率の不確かさの程度が高い前記検査項目の検査を促すことを特徴とする保全リコメンド方法」としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機器の故障モードの推定精度を向上して無駄な交換作業を減らす、また調査時間を短縮し、機器の故障~復帰までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る保全リコメンドシステム1の全体構成例を示す図。
【
図2】検査項目確率テーブルDB2のデータ構造例を示す図。
【
図3】故障モード確率テーブルDB3のデータ構造例を示す図。
【
図5】本発明の実施例1に係る保全リコメンド処理のメインルーチンを示すフロー図。
【
図6】処理ステップS710の詳細なサブルーチン処理を示すフロー図。
【
図7】処理ステップS730の詳細なサブルーチン処理を示すフロー図。
【
図8】処理ステップS750の詳細なサブルーチン処理を示すフロー図。
【
図9】全検査項目を端末に表示した初期画面例90Aを示す図。
【
図10】処理ステップS905の処理の結果得られた未検査の検査項目の表示画面例90Bを示す図。
【
図11】最も高い相関の検査項目を探索し表示する表示画面例90Cを示す図。
【
図12】信頼性が担保された故障モードの確率上位N位を表示する表示画面90Dを示す図。
【
図13】ベイジアンネットワークの考え方を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施例での検査対象機器は、蒸気圧縮式冷凍機を持つ冷蔵庫を一例として想定する。
【実施例】
【0014】
図1に本発明の実施例に係る保全リコメンドシステム1の全体構成例を示している。保全リコメンドシステム1は、大きくは保全員102が修理する故障した機器104を診断検査の対象機器とし、保全員102が故障の調査を行うための端末100と、端末100に通信を介して接続するセンタ側システム150で構成される。
【0015】
端末100は、保全員102が機器の稼働サイトに持っていきやすい軽量なタブレットなどが好ましい。端末100には、液晶ディスプレイなどの表示部105と、タッチディスプレイなどで構成される入力部120と通信部125をもつ。なお本実施例では、保全員102が機器104のある客先に出かけて保全作業を行い、かつセンタ側システム150を複数の保全員102で共有するという想定なので、端末100とセンタ側システム150を分けている。しかし端末100とセンタ側システム150を一体化してもよい。なお表示部105には、保全員102が入力したデータのほかに、センタ側システム150の中間処理段階あるいは最終処理段階における各種のデータが表示される。従って、後述するセンタ側システム150が提示した情報は表示部105にも表示され、これを受けて保全員102はセンタ側システム150が提示し、リコメンドしている新たな検査項目についての検査を実行することが促される。
【0016】
機器104は、発電機や建設機器、医療機器といった保守を行う対象となる機器である。この機器の各部を検査してその結果を端末100に入力することで、保全員102は次に検査すべき項目と故障モードの推定結果をセンタ側システム150から得る。なお機器104の中に端末100が内蔵されている構成を備えたものであっても本発明は実現可能である。
【0017】
センタ側システム150は、端末100に入力された機器の検査結果を、通信部190を介して受信し、故障モードおよび次に検査すべき項目、すなわち検査項目候補を保全員102が保有する端末100に返す。そのため、端末100内に通信部125を、またセンタ側システム150内に通信部190を備える。
【0018】
センタ側システム150は、保全員102が実施した検査の結果を記憶する一次記憶部DB1、故障モードの確率を推定するのに使う故障モード確率算出部175、故障モードの確率の推定精度が低いかどうかを判定する推定精度判定部195、精度が低い場合に提示する追加の検査項目を見つける追加検査項目探索部200を備える。また推定精度を向上させるため、保全員102が入力した検査結果を基に検査項目確率テーブルDB2と故障モード確率テーブルDB3を更新する確率更新部170を備える。
【0019】
上記したセンタ側システム150によれば、確率の推定精度が低い故障モードである場合に、追加の検査項目が保全員102に提示され、検査結果が入力されることで当該故障モードの確率の推定精度を高めることができる。過去における故障のサンプル数が少なく、従って確率の推定精度が低い故障モードである場合に、今回の検査機会を利用して当該項目の検査を促し、入力した結果を反映することでサンプル数を増やすことを通じて、確率の推定精度を高めるものである。
【0020】
一般にはデータベースで構成され、一次情報D1を記憶する一次記憶部DB1、検査項目確率データD2を記憶する検査項目確率テーブルDB2、故障モード確率データD2を記憶する故障モード確率テーブルDB3は、それぞれ
図4、
図2、
図3のように構成されたデータを保有しており、一次記憶部DB1以外は本発明によるシステムの設計時に初期値を定義する。
【0021】
検査項目確率テーブルDB2は、
図2に例示するデータ構造のテーブルにより構成されており、故障モードの欄D21、検査部位の欄D22、検査項目の欄D23、検査項目の挙動の欄D24、検査項目が起きる確率の欄D25、Experienceの欄D26の各欄にデータを記述して構成されている。なお以下の説明においては、特に区別する必要がない限りにおいて、各欄の記号(D21からD26)はこの欄に記載された情報の種別を意味するものとして説明する。この点は他の検査項目確率テーブルDB2、故障モード確率テーブルDB3に対しても同じ扱いとする。
【0022】
このテーブルは、故障モードD21毎に、この故障が起きた時の、検査項目D23が検査項目の挙動D24のような挙動を示す確率D25を記憶したテーブルである。この確率D25は統計学の用語で言えば条件付確率のことであり、故障モードD21が起きている時に挙動D24が起きる条件付確率P(検査項目の挙動=True|故障モード=True)と言える。
【0023】
例えば
図2のテーブル1行目は凝縮器冷水減少という故障モードD21が起きた時に、電源部の入力電力という検査項目D23が上昇する確率D25が0.30であるという意味である。同様にテーブル2行目は凝縮器冷水減少という故障モードD21が起きた時に、凝縮部の出口温度という検査項目D23が上昇する確率D25が0.20であることを表している。説明を省略するが、3行目以降も同様意図で記述されている。
【0024】
この確率は必ずしも厳密な値ではなくて良い。例えば機器104の設計者や保全員の経験から見積り、あるいは信頼性データベースの故障率、過去の実験した値、物理モデルに基づく故障シミュレーションなどから見積ることにより、本発明を適用したシステムの設計時に入力しておくことができる。この条件付確率と次に説明する
図3の故障モード確率テーブルの確率から、故障モードの推定を行うことができる。
【0025】
なお
図2では、検査項目が起きる確率の欄D25とともに、欄D26に確率の信頼度を表すExperienceというパラメータを保有している。このパラメータは、ベイズ統計における事前分布をベータ分布としたときのベイズ更新に出てくるパラメータである。このベイズ更新とExperienceD26というパラメータは公知技術の範疇であるが簡単に以下で説明する。
【0026】
このExperienceD26の初期値は、検査項目が起きる確率D25の値がどれだけ信頼できるかで決める。例えばベテランのエンジニアによる経験であり、あるいは物理的に間違いなく信頼できる情報であるなら、高い数字に設定する。初期値を定義した後、
図1のセンタ側システム150内の確率更新部170においては、日々発生する故障日報を基に検査項目が起きる確率D25を更新するたびにExperienceD26に記憶するデータの値を初期値から順次増加していく。これは故障日報で更新すればするほど実績に裏打ちされた信頼できる確率になっていくという考えに基づく。
【0027】
参考としてよく知られた事前確率ベータ分布を表す数式を(1)式に、(1)式のパラメータa、bとExperienceパラメータの対応関係を(2)式に示す。また検査項目が起きる確率の欄D25における確率値を(3)式に示す。なお、(1)式において、Bはベータ関数を意味する。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
この関係式を使って、e=Experienceパラメータ、p=検査項目が起きる確率の確率値と定義すれば、上記(1)式のベータ分布は(4)式のように表すことができる。
【0032】
【0033】
故障モード確率テーブルDB3は、
図3に例示するデータ構造のテーブルにより構成されており、故障モードの欄D31、発生確率P(故障モード)の欄D32、Experienceの欄D33の各欄にデータを記述して構成されている。このように、故障モード確率テーブルDB3には、故障モードD31とその発生確率D32が記憶されている。このうち、故障モードD31には
図2の故障モードD21と同じものが記憶されている。ただし
図3では発生確率の欄D32には、条件付確率ではなく、各故障モードが起きる一般的な確率を記憶している。この各故障モードが起きる一般的な確率は、実際の今まで起きた故障モードの発生件数から割り出し、あるいは機器104のFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)に記載されている発生確率といった情報から作ることができる。
【0034】
また
図2のExperienceD26と同様に、
図3にもExperienceExperienceD33が定義されている。定義や扱いは
図2のExperienceD26と同様であり、
図3においてもExperienceD33がどれだけ信頼できるかを示し、故障日報にもとづく更新に伴い値は増加していくものとされる。
【0035】
一次記憶部DB1のデータ構造を
図4に示す。まず一次記憶部DB1はこれまで説明した検査項目確率テーブルDB2、故障モード確率テーブルDB3などと異なりRAMなど書き換え可能な装置で構成されている。これは今の現場で保全員102がこなした検査項目の結果を記憶するためである。この検査結果から故障モードや次に検査すべき項目を推定する。
【0036】
一時記憶部DB1は、
図4に例示するデータ構造のテーブルにより構成されており、検査部位の欄D11、検査項目の欄D12、検査項目の挙動の欄D13、検査結果の欄D14の各欄にデータを記述して構成されている。このデータ構造によれば、D11、D12、D13、D14の各欄には
図2の欄D22、D23、D24うち、保全員102により検査完了した行のデータがコピーされて記憶される。検査結果D14は保全員が検査した結果であり、D14で定義した通りの挙動であれば1、そうでなければ0が記憶される。
【0037】
【0038】
まず
図5は、本発明の実施例1に係る保全リコメンド処理のメインルーチンを示すフロー図であり、機器104の故障モードを調査する作業を始めて、故障モードを特定するまでの手順を示している。
図6、
図7、
図8は
図5のメインルーチンから呼び出されるサブルーチンである。なお、
図9、
図10、
図11、
図12の画面例が表示されるタイミングや説明は、フローチャートの説明の中で適宜述べることとする。
【0039】
図5の最初の処理ステップS700では、全検査項目を端末に表示する。これは保全員102が故障した機器のある現場に到着する前に、事前に機器のユーザやオーナから聞いた症状を元に入力するためのものである。表示のやりかたは、
図2の検査項目確率テーブルDB2が記憶する検査部位D22、検査項目D23、検査項目の挙動D24を全レコード読み取り表示する。
【0040】
全検査項目を端末に表示する時の初期画面例90Aを
図9に示す。初期画面例90Aでは、読み取った検査部位D22についての検査項目D23、検査項目の挙動D24を、それぞれの表示枠D22A、D23A、D24Aに表示する。また検査結果の表示枠D27Aには、検査項目D23が検査項目の挙動D24に示す対応をしているか(True)、していないか(False)について、検査した結果を入力できるようにTrueとFalseの文言とチェックボックスを表示する。
【0041】
この例では、最初に初期表示として全検査項目である1合目と2行目が入力、表示されたものとする。1行目では、検査部位D22Aが冷蔵庫、検査項目D23Aがアラート、検査項目の挙動D24Aがアラート001発報という事象が表示され、また2行目では、検査部位D22Aが電源部、検査項目D23Aが入力電力、検査項目の挙動D24Aが上昇という事象が表示される。
【0042】
次の処理ステップS700では、保全員102が故障した機器のある現場に到着する前に分かっている初期情報がもしあれば、
図9の追加表示として検査部位D22A、検査項目D23A、検査項目の挙動D24Aの入力、表示を行い、さらに検査結果の表示枠D27Aのチェックボックスに入力する。
図9がタッチパネルで表示されていれば、直接チェックボックスを指でタッチすればチェック入力が可能である。
【0043】
追加表示としては、例えば
図9のテーブルの1行目の検査項目の挙動D24Aのように機器104のアラート発報の記録があるとき、これに関連して機器104は本実施例では冷蔵庫という想定であることから、「冷凍機がそもそも機能しているか?」といった機器の分解など特別な作業をしなくても分かる情報を入力する。例えばこの例では、3行目として新たに、検査部位D22Aが冷凍機、検査項目D23Aが機能、検査項目の挙動D24Aが冷凍機能は有効か?といった情報を入力する。
【0044】
図9の初期画面例90Aには、診断ボタン1050が表示されており、これを保全員102が押すことで、検査結果を一次記憶部DB1に記憶する。チェック結果がTrueなら検査結果の表示枠D27Aに1を、Falseなら0を検査結果の表示枠D27Aに記憶する。この時には、検査項目D23が検査項目の挙動D24に示す対応をしていれば、検査結果の表示枠D27Aを(True)とし、していなければ(False)にチェックマークをすることになる。
【0045】
図5の処理ステップS710は、処理ステップS705で入力した検査結果D27から、故障モード確率を算出する。
図5の処理ステップS710の詳細な処理内容を示すサブルーチン(SUB01)について、
図6のフロー図を使って以下に説明する。
【0046】
図6の最初の処理ステップS800では、処理ステップSS705でTrue/Falseが入力された検査項目D23を
図2のテーブルから検索し、条件付確率D25としてP(検査項目の挙動|故障モード)と故障モードD21を読み取る。例えば
図9の2行目の検査項目D23Aである入力電力に着目した時、これに関連して、
図2のテーブルから検索し、条件付確率D25としてP(検査項目の挙動|故障モード)と故障モードD21を読み取る。この例では、
図2の1行目から、条件付確率D25が0.30、故障モードD21が凝縮器冷水減少を読み取り、また
図2の3行目から、条件付確率D25が0.25、故障モードD21が冷媒漏れを読み取り、また
図2の6行目から、条件付確率D25が0.10、故障モードD21が蒸発器冷水減少を読み取る。
【0047】
処理ステップS810では、処理ステップS800で読み取った故障モードD21と同じ故障モードを
図3の故障モード発生確率テーブルDB3の故障モードD31をキー入力して検索し、故障モードの発生確率D32からP(故障モード)を読み取る。例えば、
図2の1行目の故障モードD21である凝縮器冷水減少に関連して、
図3の1行目が検索により抽出され、故障モードの発生確率D32からP(故障モード)として0.05が取り出され、
図2の3行目の故障モードD21である冷媒漏れに関連して、
図3の2行目が検索により抽出され、故障モードの発生確率D32からP(故障モード)として0.001が取り出され、
図2の6行目の故障モードD21である蒸発器冷水減少に関連して、
図3の3行目が検索により抽出され、故障モードの発生確率D32からP(故障モード)として0.01が取り出される。これにより、一連の情報が紐づけされて抽出される。
【0048】
処理ステップS820では、処理ステップS800、処理ステップS810でよみとった複数の発生確率P(検査項目の挙動|故障モード)と発生確率P(故障モード)から、検査項目の挙動と故障モードの同時確率P(複数の検査項目の挙動、複数の故障モード)を求める。
【0049】
処理ステップS820における処理は、ベイジアンネットワークと呼ばれる従来技術に基づき実現可能なものであり、計算方法を簡単に説明する。説明のため、本実施例で使用するベイジアンネットワークを
図13に示した。
【0050】
図13は、上段に示す故障モードF(1410、1420、1430)と、下段に示す検査項目の挙動I(1440、1450、1460、1470、1480)が紐づけられたネットワークである。
【0051】
このうち故障モードF(1410、1420、1430)は、
図3の故障モード確率データベースDB3における故障モードD31と発生確率D32を含む情報である。例えば故障モード1410は、故障モードD31が凝縮器冷水減少、発生確率D32が0.005であり、故障モード1420は、故障モードD31が冷媒漏れ、発生確率D32が0.001であり、故障モード1430は、故障モードD31が蒸発器冷水減少、発生確率D32が0.01である。
【0052】
検査項目の挙動I(1440、1450、1460、1470、1480)は、
図2の検査項目確率テーブルDB2における検査項目に関する情報D23、D24、D25に対応している。例えば検査項目の挙動1440は、D23、D24に対応する内容が入力電力の上昇であり、検査項目の挙動1450は、D23、D24に対応する内容が凝縮器の出口温度上昇であり、検査項目の挙動1460は、D23、D24に対応する内容が入力電力の下降であり、検査項目の挙動1470は、D23、D24に対応する内容が凝縮器の圧力上昇であり、検査項目の挙動1480は、D23、D24に対応する内容が蒸発器の入り口温度の上昇である。
【0053】
また
図2の検査項目確率テーブルDB2によれば、1行目と2行目の故障モードD21はいずれも凝縮器冷水減少であるに対し、検査項目とその挙動に関するD23、D24に記述された内容は、このときには入力電力が上昇し、かつ凝縮器の出口温度上昇というものであり、このことは
図11の上段に示す故障モードF(1410、1420、1430)と、下段に示す検査項目の挙動I(1440、1450、1460、1470、1480)の間に因果関係があることを意味している。
【0054】
図13では、上下段間の要因通しの因果関係を、上段(故障モード)から下段(検査項目の挙動)に伸びている1412、1415などの矢印線で表し、かつ故障モードから検査項目の挙動への条件付確率Pを付与して示している。因果関係を示す矢印線1412に例として書いた0.30という数字は条件付確率P(検査項目の挙動|故障モード)が0.30であることを意味している。また故障モード、例えば1410に書いてある0.005という数字は
図3の発生確率P(故障モード)が0.005であることを意味している。
【0055】
この
図13のベイジアンネットワークにおいて、検査項目の挙動と故障モードの同時確率P(複数の検査項目の挙動、複数の故障モード)とし、これを
図13の故障モードを示すF
1や検査項目の挙動を示すI
1といった記号を使って表現すると(5)式で表すことができる。(5)式を求めるには、(6)式を計算すればよい。
【0056】
【0057】
【0058】
なお(6)式においてP(Ik=ik/Fj=fj)は、処理ステップS800で読み取ったP(検査項目の挙動|故障モード)のことであり、(6)式では全部でJ件読み取ったと想定している。また(6)式においてP(Fj=fj)は、処理ステップS810で読み取ったP(故障モード)のことで、全部でK件読み取ったという想定である。fjは故障モードが発生していれば1(True)、発生していなければ0(False)をとる値である。ikは検査項目Ikの検査結果を示す数値で、検索項目が挙動どおりなら1(True)、そうでなければ0(False)をとる。この0、1の情報は
図4の検査結果D14を参照して取得する。
【0059】
なお上記の数式の導出にはベイジアンネットの因数分解とNoisy-ORと呼ばれるベイジアンネットワークの従来技術を用いている。(5)式が計算できたら
図6の処理ステップS820を終了し処理ステップS840に移る。
【0060】
処理ステップS840では、処理ステップS820で求めた(7)式の同時確率から、検査結果を反映した(8)式に示すj番目の故障モードの確率を計算する。これには以下の(9)式を計算すればよい。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
この式は検査項目I1~Ikの検査結果がi1~ikだったとき、j番目の故障モードFj=fjとなる条件付確率を意味している。これが検査結果から推定される故障モードの確率である。(9)式の確率を返却して
図6のサブルーチンは終了し、
図5の処理ステップS710に戻ったのち処理ステップS715に進む。
【0065】
図5の処理ステップS715では、処理ステップS710で計算した(9)式のばらつきとしてその事後分散を計算し、計算結果の不確さを計算する。特に(9)式の結果、最大の確率となった故障モードについて分散を計算する。そのためには式中のP(Ik=ik/Fj=fj)とP(Fj=fj)を定数ではなく、ばらつきのある確率変数として扱い、(6)式と式(9)を計算する必要がある。
【0066】
ここで、P(Ik=ik/Fj=fj)を確率変数として扱うということの意味は、例えば
図2の検査項目確率テーブルDB2における1行目の検査項目が起きる確率D25であるP(検査項目の挙動|故障モード)は0.30という定数だが、実際にはその前後でばらつく。ばらつく前提で(6)式、(9)式を計算したときの(9)式の分散を計算するということである。
【0067】
具体的な計算方法を以下に述べる。まずP(Ik=ik/Fj=fj)のばらつきが、(4)式で示したベータ分布に従うとすると、(10)式のように表すことができる。ここで、θjk=P(Ik=ik/Fj=fj)とする。
【0068】
【0069】
ここでejkはExperience(例えば
図2の検査項目確率テーブルDB2における1行目のD26に記載された100)で、Pjkは確率の期待値(例えば
図2の検査項目確率テーブルDB2における1行目のD25に記載された0.30)である。Experienceが小さいほど信頼性が低くなるため、(10)式はばらつきが大きい分布になる。
【0070】
同様にP(Fj=fj)のばらつきは(11)式のように表すことができる。ここで、φj=P(Fj=fj)とする。
【0071】
【0072】
あとは(6)式、(9)式中のP(Ik=ik/Fj=fj)とP(Fj=fj)が(10)式、(11)式に従うものとして、(9)式の分散を計算すればよい。
【0073】
図5の処理ステップS725では、処理ステップS715で算出した最大確率の故障モードの確率の分散を評価しそれが閾値未満なら、推定精度は十分として処理ステップS740に移る。ここで、閾値は精度の不確かさをどこまで許容するかという業務要件から決定する設計項目である。加えてこれから行う追加の検査項目の回数が上限値を超えた場合も処理ステップS740に移る。これも何回までは追加の検査をしてもよいかという業務要件から決定する設計項目である。
【0074】
処理ステップS725の判断の結果、処理ステップS715で算出した最大確率の故障モードの確率の分散が閾値以上である場合、推定精度は不十分として処理ステップS730に移る。
【0075】
処理ステップS730では、故障モードの推定精度を担保するための、追加検査項目の探索、提示を行う。この処理は、推定精度が低い故障モードについては、保全員が検査を行おうとしているこの検査機会に、新たに検査を実行することを促し、その結果を今後に反映させようとしたものである。
【0076】
図5の処理ステップS730の詳細な処理内容を示すサブルーチン(SUB02)について、
図7のフロー図を使って以下に説明する。処理ステップS900では、処理ステップS710で見つけた最大確率の故障モードに紐づく検査項目を検索する。これは
図2の故障モードD21をキーとして、故障モードD21に紐付けされている検査項目D23を検索すればよい。
【0077】
図7の最初の処理ステップS905では、処理ステップS900の結果の検査項目D23のうち、保全員102が未検査の検査項目に絞る処理を行う。未検査の検査項目かどうかの判定は、
図4の一時記憶部DB1のテーブルにおける検査項目D12の記録が無ければ未検査であるとする。
【0078】
図10は、処理ステップS905の処理の結果得られた未検査の検査項目の表示画面例90Bを示している。この場合に未検査の検査項目は、追加の検査項目候補と位置付けられて表示される。この段階で未検査のものは全て、新たな検査の対象としてもよいが、本発明においてはさらに以下の処理、判断を行うことにより、一層検査の必要性の確度が高い検査項目に限定して、
処理ステップS910では、処理ステップS905で求めた未検査の検査項目D12とそれに紐づく故障モードD11の間の相互情報量を計算する。相互情報量Mは検査項目D12の結果が分かったとき、どれだけ故障モードD11の発生確率が正確にわかるかを示す値である。
【0079】
相互情報量Mは、
図2の検査項目確率テーブルDB2におけるD25(検査項目が起きる確率)に対応するP(Ik=ik/Fj=fj)と、
図3の故障モード確率テーブルDB3におけるD32(発生確率P(故障モード))に対応するP(Fj=fj)から、(12)式を用いて計算できる。なおFjは確率最大の故障モードを示す変数に絞られるのでjは固定値である。
【0080】
【0081】
ただし以下の(13)(14)式の関係であるとする。
【0082】
【0083】
【0084】
図7の処理ステップS950では、処理ステップS910の(12)式で計算した相互情報量Mjkのうち、上位N位までの高い相互情報量の検査項目を見つける。これは(12)式でいえばMjkを高くするkを見つけることに相当する。これは単純にkを全種類調べして大きい順に1~N位になるkを複数見つければよい。
【0085】
図10に示す中間段階の表示画面90Bでは、未検査の検査項目を追加の検査項目候補と位置付けて表示したが、処理ステップS950における処理後の
図11に示す表示画面90Cでは、高い相互情報量の観点から選択した検査項目を追加の検査項目候補として他の情報とともに表示する。
【0086】
図11に示す表示画面90Cは左右表示領域に構成され、左側表示領域には検査項目候補のリスト、右側表示領域には故障モード候補を発生確率の上位を確率が大きい順に提示している。
【0087】
図11の左側表示領域は、
図9と同じ検査項目のリストに、
図10の追加検査項目候補から高い相互情報量の観点で選択した検査項目を黒枠1142により区分けして表示し、追加検査項目候補として追加記載した構成になっている。
【0088】
図11の右半分は、故障モードの発生確率の上位を確率が大きい順に故障モード候補として提示している。ここでは、故障モード候補を故障モードの欄D41A、確率の欄D42A、発生確率の欄D43A、関連検査部位D44Aにより定義している。発生確率の欄D43Aには、その発生確率の標準偏差を記述する。この標準偏差は、処理ステップS715で算出した「最大確率の故障モードの確率の分散」のルートをとった値である。
【0089】
図11の右半分の1行目について、故障モードD41が蒸発器冷水減少であるときの確率D42は70%で表中では最大であるが、発生確率D43は標準偏差が±30%もあり、あまり信頼できない結果であることを示している。
【0090】
関連検査部位D44Aには、参考情報を表記するのがよい。例えば、参考情報として故障モードD41Aに紐づく検査部位の情報(この例では蒸発器入口温度と電源部入力電圧)を関連検査部位D44Aに提示する。関連検査部位D44Aに提示する検査部位は故障モードに紐づくものを
図2のD21、D22、D23から検索すればよい。これでSUB02は終了し、処理ステップS730に戻ったのち処理ステップS735に進む。
【0091】
処理ステップS735では発生確率D43の信頼性を上げるため、保全員102に
図11の画面の黒枠1142に検査結果を入力させる。その後に処理ステップS710に戻り処理ステップS735で入力された検査結果を基に確率最大の故障モードを計算しなおす。以上のループは処理ステップS725で故障確率の標準偏差D43が閾値以下になり、確率D42の信頼性が担保されたと判断されるか、検査回数が上限を超えるまで続く。
【0092】
次に
図5において、処理ステップS725でループを抜けた後の処理ステップS740からの説明を行う。処理ステップS740は信頼性が担保された故障モードの確率上位N位を
図12のように表示画面90Dにより提示する。
図12は上位3位まで表示している例である。N件の数字は画面サイズなどに応じて本発明を適用したシステムの設計時に決定する。
図12のD41A、D42A、D43A、D44Aの欄には、
図11の右半分の表に対応した情報を提示する。ただし追加の検査項目により確率偏差D43は5%まで抑えられており
図1の動欄の表示数値より故障確率の信頼性が改善している。
【0093】
処理ステップS745では、処理ステップS740で提示された発生確率上位N位の故障モードから選んで保全員102が処置を行う。本発明は何も処理を行わない。
【0094】
処理ステップS750では、その結果、どれが正しい故障モードであったかを保全員102に入力させ、それを基にExperienceと確率情報を更新する。処理ステップS750の詳細内容を示すサブルーチン処理SUB03を、
図8を用いて説明する。
【0095】
図8の処理ステップS400では、故障モードを保全員102に入力させる。これは
図12のチェック入力欄D40Aに正解の故障モードをチェック入力させればよい。チェック後、送信ボタン1242を押して処理ステップS705と処理ステップS735で入力した検査結果と正解の故障モードの情報をセンタ側システム150に送る。
【0096】
処理ステップS410では今までに保全員102が入力した検査結果と処理ステップS400で入力した正解の故障モードから、
図2と
図3の確率D25、D32とExperienceD26、D33を更新する。これはベイズ更新として公知の技術であるが、簡単に
図3の故障モード確率テーブルの更新の場合を説明する。
【0097】
ExperienceD26についてe、ExperienceD33についてp=発生確率P(故障モード)とすると、更新の式は以下の(15)(16)式になる。
【0098】
【0099】
【0100】
例えば
図3の1行目の凝縮器冷水減少の場合ならば上の式は以下の(17)(18)式になる。
【0101】
【0102】
【0103】
これらの更新を完了したら
図8のサブルーチン処理SUB03を終了し、処理ステップS750に戻ったのち、本実施例の処理を完了する。
【0104】
以上説明した本発明の考え方は要するに、発生頻度が少なく、推定精度が低い故障モードが疑われる場合は、追加の検査項目を現場の保全員に指示し、推定精度を担保する。またその際に検査結果を入力させて検査項目の情報を集めることで、今後は追加の検査が無くても推定精度を上げられるようにするというものである。これにより本発明によれば、機器の故障モードの推定精度を向上して無駄な交換作業を減らす、また調査時間を短縮し、機器の故障~復帰までの時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0105】
1:保全リコメンドシステム1
102:保全員
104:機器
100:端末
105:表示部
120:入力部
125:通信部
150:センタ側システム
170:確率更新部
175:故障モード確率算出部
190:通信部
195:推定精度判定部
200:追加検査項目探索部
DB1:一次記憶部
DB2:検査項目確率テーブ
DB3:故障モード確率テーブル