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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20240805BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R13/42 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020123164
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019368
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】進藤 昌彦
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200905(JP,A)
【文献】特開2011-222157(JP,A)
【文献】特表2001-512225(JP,A)
【文献】独国実用新案第202015103733(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ本体と、該コネクタ本体と結合する固定部材とを備えるコネクタであって、前記コネクタ本体および前記固定部材のいずれか一方が第1嵌合部を有し、該コネクタ本体および該固定部材の他方が第2嵌合部を有し、
前記第1嵌合部は、角度θ1で傾斜する空間部を有し、第2嵌合部は、外側の面が平坦であり、内側の面が角度θ1よりも大きい角度θ2で傾斜し、前記空間部に挿入されるテーパ部を有し、
前記角度θ1は、0°よりも大きく45°よりも小さい値であり、
前記角度θ2は、0°よりも大きく60°以下の値であり、
前記固定部材を前記コネクタ本体に対して非回転運動により互いに結合させる間において、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが互いに接することによって、前記第1嵌合部が変位して前記第1嵌合部が電線を押圧することにより該電線を固定する、コネクタ。
【請求項2】
前記固定部材が単一部材である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記固定部材が前記第1嵌合部を備え、前記コネクタ本体が前記第2嵌合部を備える、請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2嵌合部が、前記コネクタ本体の後端から突出するテーパ部である、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタ本体は、前記固定部材との係合部を少なくとも1つ有する、請求項1~4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記コネクタ本体がランスを備え、該ランスが前記電線に設けられたコンタクトの移動を抑制する、請求項1~5のいずれかに記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコネクタに関する。具体的には、本発明は、より向上した電線保持力および耐振動特性を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より電気的な接続に使用するためのコネクタが知られている。例えば、特許文献1(特開2015-191890号公報)には、プラグ接続部材とケーブル出口部材とを備えるコネクタが開示されている。具体的には、特許文献1には、プラグ接続部材に対してケーブル出口部材を「回転」させることによって、ケーブル出口部材をプラグ接続部材に結合させること、およびその「回転」に伴ってケーブルを固定することが開示されている。
【0003】
特許文献2(特開2016-76407号公報)には、ハウジングと、それに嵌合可能な部材とを備えるコネクタが開示されている。具体的には、特許文献2には、ハウジングに嵌合可能な部材に保持部が設けられ、この保持部によって電線を保持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-191890号公報
【文献】特開2016- 76407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、従前のコネクタには克服すべき課題があることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者は見出した。
【0006】
例えば、特許文献1には、プラグ接続部材とケーブル出口部材とを「回転」により互いに結合させるコネクタが開示されている。このような「回転」による結合の間において、ケーブル出口部材の内部に別途に設けられたケーブル緊締要素(72)によってケーブルを固定している。具体的には、弾性的に変形可能な2つの緊締顎(74,76)によって、ケーブルをその両側から把持することでケーブルを固定している(特許文献1の図4および図8参照)。このような「回転」を伴う構造は、概して複雑であることから、当該コネクタにおいて、電線保持力および耐振動特性が確実に発揮されない場合もあることがわかった。従って、特許文献1に開示のコネクタにおいて、電線保持力および耐振動特性の観点から、さらなる改良の余地があった。
また、特許文献1に開示のコネクタでは、「回転」に伴って、コネクタ内部に配置されたケーブル緊締要素(72)、具体的には2つの緊締顎(74,76)によって、ケーブルを把持することから、コネクタの外形を円形にしなければならない。このような構造から、特許文献1に開示のコネクタの構造は、多極化、特に基板型の多極コネクタ、なかでも基板型の多極メスコネクタに応用することは困難であった。また、特許文献1に開示のコネクタでは、ケーブルをその両側から2つの緊締顎(74,76)で把持することから、特許文献1に開示のコネクタをより小さな径を有する細線などの電線の固定に適用することは困難であった。
【0007】
特許文献2に開示のコネクタでは、ハウジングに嵌合可能な部材(60)に設けられた保持部(61)が、電線を通す通路に向けて隆起した保持面(72)を備えている(特許文献2の図2および図3参照)。特許文献2に開示のコネクタでは、このような保持面(72)が単に電線と当接するに過ぎず、電線保持力および耐振動特性が確実に発揮されない場合もあることがわかった。従って、特許文献2に開示のコネクタにおいても、電線保持力および耐振動特性の観点から、さらなる改良の余地があった。また、特許文献2に開示のコネクタでは、保持面(72)が電線を通すための通路内に突出した形状を有することから、電線を挿入する際に電線と保持面(72)との物理的な干渉を回避することができない。このような構造から、特許文献2に開示のコネクタでは、コネクタ内に電線を真直ぐに挿入することが困難であった。また、特許文献2に開示のコネクタでは、電線を曲がった状態で固定することから、電線が揺れ易い傾向ある。さらに、特許文献2に開示のコネクタでは、単に隆起した保持面(72)と電線が当接することから、より小さな径を有する細線などの電線の保持や細線の揺れを抑制することは困難であった。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、より向上した電線保持力および耐振動特性を有するコネクタを提供することである。また、本発明は、より簡単な構造および操作で電線を取り付けることができ、細線などの電線にも適用することができる単極または多極のコネクタを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成されたコネクタの発明に至った。
【0010】
まず、本発明では、特許文献1に開示されるような回転運動ではなく、より簡便な構造および操作によって、各部材を互いに結合させることで電線をより確実に固定することができるコネクタ構造の可能性について検討した。具体的には、一軸方向に直線的に各部材を移動させることによって、各部材を互いに結合させることができるコネクタ構造について検討した。その際、電線も各部材と同様の直線的な移動によってコネクタ内にスムーズに挿入することができ、なおかつコネクタ内でより確実に固定できる構造を検討した。
【0011】
より具体的には、本体と固定部材とからコネクタを構成し、それらを電線に沿う方向のスライド移動によって互いに結合させることでコネクタ内に電線を収容するとともに、より確実に電線を固定できる構造を検討した(具体的には図1参照)。
【0012】
本願発明者は、例えば、本体または固定部材の内側にコネクタ本体の一部と接することで変位し得るバネ様の部位を設けることによって、固定部材とコネクタ本体との結合の間において、このバネ様の部位が電線を押圧してより確実に電線が固定できることを見出した(具体的には図8および図9参照)。尚、このようなバネ様の部材は、バネ弾性部または単に弾性部または押圧部と称することもできる。
【0013】
このような検討を通じ、コネクタ本体と、固定部材との直線的な結合によって、より向上した電線保持力および耐振動特性を有するコネクタが得られることを本願発明者は見出した。
【0014】
本発明では、コネクタ本体と、該コネクタ本体と結合する固定部材とを備えるコネクタであって、前記コネクタ本体および前記固定部材のいずれか一方が第1嵌合部を有し、該コネクタ本体および該固定部材の他方が第2嵌合部を有し、前記固定部材を前記コネクタ本体に対して非回転運動により互いに結合させる間において、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが互いに接することによって、前記第1嵌合部が変位して電線を押圧することにより該電線を固定するコネクタが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、より向上した電線保持力および耐振動特性を有するコネクタが得られる。さらに、本発明では、より簡単な構造および操作で電線を取り付けることができ、特に細線などの電線にも適用することができる単極または多極のコネクタ、特に基板型の多極コネクタを得ることができる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでなく、他の付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタを模式的に示す分解斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るコネクタに電線を挿入してコネクタを完全に閉じる前の状態(開いた状態)を模式的に示す概略図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るコネクタに電線を挿入してコネクタを完全に閉じた状態を模式的に示す概略図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るコネクタの完全に閉じる前の状態(開いた状態)を模式的に示す概略図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係るコネクタの完全に閉じた状態を模式的に示す概略図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係るコネクタの本体を模式的に示す概略図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るコネクタの固定部材を模式的に示す概略図である。
図8図8は、図2BのX-X’でのコネクタの断面を模式的に示す図である。
図9図9は、図3BのY-Y’でのコネクタの断面を模式的に示す図である。
図10図10は、本発明の別の実施形態に係るコネクタの部分的な断面を模式的に示す図である。
図11図11は、本発明の一実施形態に係るコネクタの本体と固定部材との関係を模式的に示す断面図である。
図12図12は、本発明の一実施形態に係るコネクタの本体と電線に設けられたコンタクトとの関係を模式的に示す断面図である。
図13図13は、本発明の一実施形態に係るコネクタの固定部材に設けられた第1嵌合部を模式的に示す概略図である。
図14図14は、本発明の一実施形態に係るコネクタの底面を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は電気的な接続に使用することができるコネクタに関する。本発明の一実施形態に係るコネクタは、コネクタ本体と、このコネクタ本体と結合することができる固定部材とを備える。コネクタ本体および固定部材のいずれか一方が「第1嵌合部」を有し、コネクタ本体および固定部材の他方が「第2嵌合部」を有し、固定部材をコネクタ本体に対して非回転運動により互いに結合させる間において、第1嵌合部と第2嵌合部とが互いに接することによって、第1嵌合部が変位して電線を押圧することにより電線を固定することを特徴とする。以下、上記の特徴を有するコネクタを「本開示のコネクタ」または単に「コネクタ」と称する。
【0018】
[定義]
本開示において「コネクタ」とは、少なくとも1本の電線を収容して、外部との電気的な接続、例えば別のコネクタとの電気的な接続を提供することができる構造体を意味する。
【0019】
本開示において「電線」とは、電気伝導性または導電性を有する少なくとも1本の細長い線状の導体部の少なくとも一部が絶縁性の被覆部で覆われた細長い部材を意味する(以下、「絶縁電線」と称する場合もある)。
「導体部」は、例えば、電気伝導性または導電性を有する金属、合金などを含む。導体部に含まれ得る金属、合金などを構成する金属元素に特に制限はない。導体部に含まれ得る金属元素として、例えば、銅、鉄、金、銀、アルミニウムなどが挙げられる。
「被覆部」は、絶縁性の樹脂などを含む。被覆部に含まれ得る樹脂を構成する高分子に特に制限はない。被覆部に含まれ得る樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;天然ゴム;クロロプレンゴム等の合成ゴムなどが挙げられる。
本開示において電線は、同一または異なる複数の種類の「絶縁電線」をさらに保護部で被覆したケーブルまたはコードであってもよい。保護部は、シースとも呼ばれ、絶縁性の樹脂などを含む。保護部に含まれ得る樹脂を構成する高分子に特に制限はない。保護部に含まれ得る樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;天然ゴム;クロロプレンゴム等の合成ゴムなどが挙げられる。
本開示のコネクタにおいて、電線は、市販のものを特に制限なく使用することができる。
【0020】
本開示において電線は、その端部に「コンタクト」と呼ばれる端子が設けられていてよい。コンタクトは、電線の導体部と電気的に接続され得る部材である。コンタクトは、金属または合金から作製されていることが好ましい。このようなコンタクトは、本開示のコネクタにおいて、正または負の電極として機能することができる。本開示のコネクタにおいて、コンタクトは、市販のものを特に制限なく使用することができる。
【0021】
本開示のコネクタは、1本の電線のみを収容することができる単極コネクタであっても、複数本の電線を収容することができる多極コネクタであってもよい。多極コネクタの場合、種類の異なる電線を収容することができる。本開示のコネクタでは、電極として機能し得るコンタクトが電線の端部に設けられていることが好ましい。本開示のコネクタは、電極が突出したオスコネクタであってもよい。また、本開示のコネクタは、このようなオスコネクタの突出した電極を受けることができるメスコネクタであってもよい。
【0022】
本開示において「コネクタ本体」とは、電線、好ましくはコンタクトが設けられた電線を収容して配置することができる部材を意味する。コネクタ本体は、「ハウジング」とも呼ばれ、プラスチックなどの絶縁性の材料から構成されることが好ましい。
【0023】
本開示において「固定部材」とは、コネクタ本体と結合してコネクタ本体に固定され得る部材を意味する。本開示のコネクタにおいて、固定部材は、コネクタ本体に対する「非回転運動」によってコネクタ本体に結合することができるように構成されている。
【0024】
本開示において「非回転運動」とは、長手方向を回転軸とした運動を除く運動全般を意味する。非回転運動は、例えば特許文献1に開示されるような回転運動を除く運動を意味する。非回転運動は、より具体的には、一軸方向に沿う直線的な運動であってよい。非回転運動として、例えば図1に示す電線3の長手軸方向a-a’に沿って、固定部材2をコネクタ本体1に対してスライド移動させることが好ましい。
【0025】
「固定部材」は、コネクタ本体の「後端」に結合することが好ましい。本開示において、コネクタ本体の「後端」とは、例えば図1に示すように本体1の電線を挿入する側の端部を意味する。このようなコネクタ本体の「後端」に対して、コネクタ本体の「前端」とは、概して、コネクタ本体の別のコネクタと結合し得る端部を意味する。「前端」と「後端」は互いに対向していることが好ましい。
【0026】
本開示のコネクタにおいて、「コネクタ本体」および「固定部材」のいずれか一方が「第1嵌合部」を有する。本開示において「第1嵌合部」とは、以下にて詳しく説明する「第2嵌合部」と接して互いに嵌合することができる部分もしくは部位または領域を意味する。本開示のコネクタにおいて、「第1嵌合部」と「第2嵌合部」とが互いに対向して配置されることが好ましい。「第1嵌合部」は、「第2嵌合部」などの外部から力を受けて、例えば弾性的、好ましくはバネ様に変位することができ、除力すると元の形状および位置に戻ることができる。
【0027】
第1嵌合部は、コネクタ本体の一部または固定部材の一部であることが好ましい。より好ましくは、第1嵌合部は、固定部材の一部である。第1嵌合部が固定部材の一部である場合、第1嵌合部を有する固定部材は、単一部材であることが好ましい。固定部材は、第1嵌合部と同一の材料から一体的に形成された単一部材であることがより好ましい。
【0028】
固定部材、特に第1嵌合部を有する固定部材を構成する材料に特に制限はない。固定部材は、プラスチックまたは金属の材料から構成されることが好ましい。固定部材は、コネクタ本体よりも相対的に柔らかい材料で構成されることがより好ましい。
【0029】
固定部材が第1嵌合部を有する場合、第1嵌合部は、上記の非回転運動、具体的には一軸方向に沿う直線的な運動によって固定部材をコネクタ本体に結合させる間において、コネクタ本体の一部、好ましくはコネクタ本体に設けられた第2嵌合部と接することができる。コネクタ本体の一部または第2嵌合部と、固定部材に設けられた第1嵌合部とが互いに接することで固定部材の第1嵌合部が変位して電線を押圧することができる。このような第1嵌合部によって電線を押圧することで、より向上した電線保持力を提供することができ、より確実に電線を固定することができる。従って、このような第1嵌合部は「押圧部」と称することもできる。このような第1嵌合部によって、より確実に電線の揺れを抑制することができ、より向上した耐振動特性を提供することができる。
【0030】
第1嵌合部は、以下にて具体的な実施形態を挙げて詳述する通り、外部からの力を受けて弾性的に変位することができる。例えば図8および図9に示す通り、固定部材2は、第1嵌合部6を有していてよい。第1嵌合部6は、その断面視において、固定部材2の壁部15とともに、例えば略V字型または略U字型の形状を有することができる。尚、図示する態様では、固定部材2の第1嵌合部6は、主に、その断面視において、壁部15から延出して変位することができる部位を指し、本体1との結合の際に変位しない壁部15を除く残りの部分であってよい(図8B図9B参照)。以下、第1嵌合部6は、弾性的に変位することから「バネ弾性部」または「弾性部」と称する場合もある。また、第1嵌合部6は、以下にて詳しく説明する「第2嵌合部5」を受けることから「被嵌合部」または「受容部」と称することもできる。
【0031】
例えば図8Bおよび図9Bに示すように、第1嵌合部6は、壁部15との間にSで示す空間部(以下、間隙部または溝と称する場合もある)を有する。つまり、このSで示される空間部は、第1嵌合部6の一部とみなすことができる。第1嵌合部6の空間部Sに「コネクタ本体の一部」である「第2嵌合部5」が進入することによって、第1嵌合部6は、第2嵌合部5から力を受けて、固定部材2の壁部15から離れるように、第1嵌合部6の根元から固定部材2の内側に撓むことができる。換言すると、第1嵌合部6は、固定部材2の壁部15に対してバネ様に変位することができる。つまり、このような第1嵌合部は、仮にコネクタ本体の一部が元の非接触の位置に戻る場合、同様に第1嵌合部も元の位置に戻ることができるような弾性を有している。
【0032】
このような第1嵌合部によって、電線、具体的には電線の被覆部を押圧し、電線を固定および保持できる。本開示のコネクタでは、このような第1嵌合部によって、より向上した電線保持力および耐振動特性を提供することができる。また、より小さな径を有する細い電線(以下「細線」と称する)に対しても本開示のコネクタを適用することができる。特に細線は、本体のキャビティに対して相対的に体積が小さく、換言すると本体のキャビティにおいて隙間が大きくなるため、本体のキャビティ内で電線が揺れやすい傾向にある。そのため、本開示のコネクタを使用することで、変位可能な第1嵌合部によって、このような細線にも対応して電線を押圧することができる。従って、このような細線に対しても電線保持力を付与することができる。例えば0.22mm以下の呼び径または外径を有する電線であっても、より効果的に電線を押圧することができ、このような電線に対しても電線保持力を付与することができ、ひいては耐振動特性を奏することができる。
【0033】
第1嵌合部は、以下の具体的な実施形態で詳説する通り、電線と当接する面に凹部を有していてよい。例えば図13に示す通り、第1嵌合部6は、電線と当接する面に凹部14を有していてよい。それにより、電線の表面に沿って当接することができ、さらにより向上した電線保持力および耐振動特性を提供することができる。
【0034】
尚、「第1嵌合部」は、以下にて詳しく説明する「コネクタ本体」に設けられていてもよい。その場合、以下にて詳しく説明する「第2嵌合部」が「固定部材」に設けられていてよい。
【0035】
本開示において「コネクタ本体」は、「コネクタ本体の一部」として、「第2嵌合部」を有していてよい。
【0036】
本開示において「第2嵌合部」は、コネクタ本体と固定部材との結合によって、上述の第1嵌合部と接して互いに嵌合することができるように構成されていて、第1嵌合部に力を与えて第1嵌合部を弾性的に変位させることができる部分もしくは部位または領域を意味する。このような部分の形状に特に制限はない。例えば、コネクタ本体から突出する板状の形態であってもよく、棒状の形態であってもよい。
【0037】
例えば図6に示すように、コネクタ本体1は、テーパ状の第2嵌合部5を有していてよい。以下、このようなテーパ状の第2嵌合部を「テーパ部」と称する場合もある。
第2嵌合部5は、例えば固定部材2に設けられ得る第1嵌合部6に対向するように本体1の後端から突出することが好ましい。より好ましくは、本体1の後端からより後方へと突出するように第2嵌合部5が設けられている。
【0038】
より具体的には、第2嵌合部5は、図8Dに示すように、その断面の形状が略三角形であってよい。第2嵌合部5は、その先端に近づくにつれて、その厚みが小さくなることが好ましい。第2嵌合部5は、少なくとも内側面(図示する態様では上面)が傾斜していればよい。このような第2嵌合部5を設けることによって、第1嵌合部6とスムーズに接触しつつ、第1嵌合部6の空間部S1にスムーズに進入することができる(図8Bおよび図9B参照)。また、第2嵌合部5は、第1嵌合部6に対して相対的に剛性を呈する部分である。従って、第2嵌合部5は、第1嵌合部6に外力を効果的に与えることができ、第1嵌合部6をより適切に変位させることができる(図8Bおよび図9B参照)。
【0039】
図示する態様のように、本開示のコネクタは、固定部材が第1嵌合部を備え、コネクタ本体が第2嵌合部を備えることが好ましい。このような構成とすることで、より安定して第1嵌合部と第2嵌合部との接触を達成することができ、固定部材の内部において電線をより確実に固定することができる。
【0040】
尚、「第2嵌合部」は「固定部材」に設けられていてもよい。その場合、上述の「第1嵌合部」が「コネクタ本体」に設けられていてよく、このような「固定部材」に設けられた「第2嵌合部」が「コネクタ本体」に設けられた「第1嵌合部」に接して互いに嵌合することができる。その結果、「コネクタ本体」に設けられた「第1嵌合部」で電線を固定することができる。
【0041】
「コネクタ本体」は、以下の具体的な実施形態で詳述する通り、固定部材との「係合部」を少なくとも1つ有していてよい。コネクタ本体の係合部は、固定部材と物理的に係合することができれば、どのような形状を有していてもよい。コネクタ本体の係合部は、凸状の部分または凹状の部分を有していてよい。
例えば、コネクタ本体の係合部が凸状の部分を有している場合、固定部材は凹状の部分を有していてよい。コネクタ本体の凸状の部分および固定部材の凹状の部分は、互いに対応する略相補的な形状を有していることが好ましい。例えば図11に示すように、コネクタ本体1の凸状の部分(9a、9b)と、固定部材2の凹状の部分8の縁部とが互いに係合することが好ましい。
あるいは、コネクタ本体の係合部が凹状の部分を有している場合、固定部材は凸状の部分を有していてよい。コネクタ本体の凹状の部分および固定部材の凸状の部分は、互いに対応する略相補的な形状を有していることが好ましい(図示せず)。
【0042】
さらに、コネクタ本体は「ランス」を備えていてよい。コネクタ本体の「ランス」とは、コネクタ本体の任意の場所から突出または延在する板状または棒状の部分または領域を意味する。具体的には、ランスは、コネクタ本体の内部の電線を配置する通路に沿って、前端に向けて突出または延在してよい。ランスは、コネクタ本体の内部において、電線に接続され得るコンタクトの移動を抑制することが好ましい。また、ランスは、コネクタ本体の内側および/または外側に向けて撓むことができ、電線および/またはコンタクトを付勢してもよい。
【0043】
以下の具体的な実施形態で詳述する通り、ランスは、例えば電線に設けられたコンタクトの凹部(例えばオープニング)に適合するような凸部を有していてよい。例えば図12に示すように、ランス11は、コンタクト4のオープニング13に適合するような凸部12を有していてよい。このようなランス11の凸部12と、コンタクト4のオープニング13との係合によって、コネクタ本体1の内部におけるコンタクト4の移動、ひいては電線3の移動を抑制することができる。換言すると、コンタクト4および電線3をコネクタ本体の内部で係止または固定することができる。より具体的には、コネクタ本体1からコンタクト4が外れること、ひいてはコネクタから電線3が抜けて外れることを防止できる。
【0044】
さらに、本発明のコネクタでは、このようなコネクタ本体1のランス11と、例えば固定部材2の第1嵌合部6とを組み合わせて使用することによって、コネクタ10の内部の2箇所において、さらにより確実に電線3を固定することができる。このような2か所での固定によって、さらにより向上した電線保持力および耐振動特性を提供することができる。
【0045】
以下、例示の実施形態によって、本開示のコネクタを添付の図面を参照しながら、より詳しく説明する。
【0046】
[実施形態]
図1に本発明の一実施形態に係るコネクタ10を示す。なお、本開示のコネクタは、図示する態様に限定されるものではない。コネクタ10は、基本的な構成要素として、少なくともコネクタ本体1(以下、「本体1」と略して記載する場合もある)と、固定部材2とを備える。
コネクタ10は、本体1と固定部材2とが互いに結合することができるように構成されている。コネクタ10は、例えば一軸方向の直線運動によって、本体1と固定部材2とが互いに結合することができるように構成されていてよい。具体的には、電線3の長手軸方向に沿って、例えば図1の破線a-a’に沿って、本体1と固定部材2とが互いに結合することができる。より具体的には、スライド移動によって、本体1と固定部材2とが互いに結合することができる。
【0047】
このように、コネクタ10では、本体1と固定部材2との間に相対的な回転運動が実質的に無く、本体1に固定部材2をより簡単に取り付けることができる。従って、本開示のコネクタでは、「非回転運動」によって、コネクタ本体と固定部材とが結合し得る。
【0048】
本体1は、その内部に電線3を収容することができる。電線3にはコンタクト4が接続されていてよい。本開示のコネクタでは、このようなコンタクトとともに電線を本体内部に収容することができる。
【0049】
図1図3において具体的に示すように、電線3は、コンタクト4とともに、例えば図1の破線a-a’に沿って、固定部材2を通して、本体1の内部に挿入することができる。
【0050】
図2は、電線3を本体1の内部に固定部材2を介して挿入した状態を示す。例えば図2Aの斜視図で示す通り、固定部材2は、本体1に完全に取り付けられていない。換言すると、コネクタは、固定部材2によって完全に閉じられていない。以下、本開示では、このような状態を「オープン状態(OPEN)」と称する。このようなオープン状態において、電線3は本体内部に位置し得るが、電線3は固定されていない(以下、「プリセット状態」または「フリー状態」と称する場合もある)。このようなオープン状態におけるコネクタの断面を図8Aに示す。尚、図8Aは、図2BのX-X’でのコネクタの断面を示している。
【0051】
図3は、コネクタにおいて、固定部材2が本体1に完全に取り付けられた状態を示す(図3A参照)。換言すると、コネクタは、固定部材2によって完全に閉じられている。以下、本開示では、このような状態を「クローズド状態(CLOSE)」と称する。このようなクローズド状態において、電線3は、例えば固定部材2に設けられた第1嵌合部6によって固定されている(以下、「セット状態」または「ロック状態」と称する場合もある)。このようなクローズド状態におけるコネクタの断面を図9Aに示す。尚、図9Aは、図3BのY-Y’でのコネクタの断面を示している。
【0052】
以下、図4図13を参照しながら、コネクタの「オープン状態」から「クローズド状態」への移行とともに、本体1と固定部材2との結合ならびに固定部材2に設けられた「第1嵌合部」(符号6参照)による電線3の固定について詳述する。ただし、本開示のコネクタは、図示する形態に限定されるものではない。
【0053】
図4Aは、コネクタ10の「オープン状態」を示す斜視図である。図4Bは、オープン状態のコネクタ10を上方から見た図である。図4Cは、オープン状態のコネクタ10を側方から見た図である。図4Dは、オープン状態のコネクタ10の後端側、すなわち電線を挿入する側から見た図である。尚、オープン状態のコネクタ10の底面は図14Aに示す通りである。
【0054】
図5Aは、コネクタ10の「クローズド状態」を示す斜視図である。図5Bは、クローズド状態のコネクタ10を上方から見た図である。図5Cは、クローズド状態のコネクタ10を側方から見た図である。図5Dは、クローズド状態のコネクタ10の後端側、すなわち電線を挿入する側から見た図である。尚、クローズド状態のコネクタ10の底面は図14Bに示す通りである。
【0055】
コネクタ10の「オープン状態」から「クローズド状態」への移行は、例えば図4Cのオープン状態の側面図と、図5Cのクローズド状態の側面図とを対比することによって、より深く理解することができる。
【0056】
コネクタ10の「オープン状態」から「クローズド状態」への移行は、本体1と固定部材2との相対的な移動、具体的には一軸方向の直線的な移動、例えば直進移動によって達成することができる。より具体的には、本体1の側面に設けられ得る溝がガイドとなって、本体1と固定部材2とが図示する態様の水平方向に互いにスライド移動することでオープン状態からクローズド状態へと移行できる。
【0057】
図6は、コネクタ10から本体1のみを分離して示す。図6Aは、本体1を示す斜視図である。図6Bは、本体1を上方から見た図である。図6Cは、本体1を側方から見た図である。図6Dは、本体1の後端側、すなわち固定部材2に対向する側または電線を挿入する側から見た図である。尚、本体1の底面は図14Cに示す通りである。本体1は、その一部として、以下にて詳述する「第2嵌合部」(符号5参照)を有することができる。
【0058】
図7は、コネクタ10から固定部材2のみを分離して示す。図7Aは、固定部材2を内側から見た斜視図である。図7Bは、固定部材2を上方から見た図である。図7Cは、固定部材2を側方から見た図である。図7Dは、固定部材2の電線を挿入する側から見た図である。図7Eは、固定部材2の図7BのZ-Z’における断面図である。尚、固定部材2の底面は図14Dに示す通りである。固定部材2は、その一部として、以下にて詳述する「第1嵌合部」(符号6参照)を有することができる。
【0059】
ここで、固定部材2は、単一部材であることが好ましい。固定部材2が単一部材であることによって、第1嵌合部6が固定部材2と一体となる。このような一体構造によって、固定部材2の壁部15から延出し得る第1嵌合部6を固定部材2の壁部15で適切に支持することができる(図8Bおよび図8C参照)。そのため、固定部材2に設けられた第1嵌合部6によって、電線3をより効果的に押圧することができる(図9B参照)。このようなことから、第1嵌合部6によって、電線3をより確実に固定できる。さらに、より確実に電線3の揺れを抑制することができる。
【0060】
本体1および固定部材2は互いに結合してコネクタ10を構成することができる(図1図4および図5参照)。本体1と固定部材2との間の結合は、例えば係合などによって物理的に達成されていればよい。
【0061】
本体1と固定部材2との間の結合は、例えば、本体1の係合部9、具体的には第1係合部9aおよび第2係合部9b(図6Aおよび図6B参照)と、固定部材2のウインドウ8の本体側の縁部(図7B参照)との係合によって達成することができる。図示する態様において、ウインドウ8の本体側の縁部は、バー7の後端側の縁部に一致している(図7B参照)。尚、固定部材2におけるウインドウ8の形状に特に制限はなく、図示する形態に限定されない。
【0062】
本体1に設けられ得る第1係合部9aは、例えば図1の破線a-a’に沿って固定部材2を本体1に向けて水平移動させることで固定部材2のウインドウ8に適合し、バー7の後端側の縁部と係合することができる(図2B図8Aおよび図8B、具体的には図11A参照)。このとき、本体1と固定部材2とは互いに係合しているが、本体1は固定部材2によって完全に閉じられていない(図8A参照)。つまり、コネクタ10は「オープン状態」にある。オープン状態において、例えば図11Aに示すように、固定部材2のバー7が、本体1の第1係合部9aと第2係合部9bとの間に位置することが好ましい(図2B参照)。また、このような「オープン状態」において、本体1に設けられた第2嵌合部5は、固定部材2に設けられた第1嵌合部6と接していないことが好ましい(図8B参照)。
【0063】
続いて、本体1に設けられ得る第2係合部9bが、図1の破線a-a’に沿って固定部材2を本体1に向けてさらに水平移動させることでウインドウ8に適合し、バー7の後端側の縁部と係合することができる(図3Bおよび図9A、具体的には図11B参照)。このとき、本体1は、固定部材2によって完全に閉じられている(図9A参照)。つまり、コネクタ10は、「クローズド状態」にある。クローズド状態において、例えば図11Bに示すように、バー7が第2係合部9bと係合して、固定部材2が係止または固定されていることが好ましい(図3B参照)。
また、このような「クローズド状態」では、本体1に設けられた第2嵌合部5と、固定部材2に設けられた第1嵌合部6とが互いに接して電線3をより確実に押圧することで電線3をより確実に固定することができる(図9B参照)。
【0064】
コネクタ10では、固定部材2が第1嵌合部6を有していることが好ましい。非回転運動、例えば直進移動によって固定部材2を本体1と結合させる間において、本体1の一部、好ましくは第2の嵌合部5と、固定部材2の第1嵌合部6とが互いに接することができる。換言すると「オープン状態」から「クローズド状態」への移行の間において、本体1の一部、好ましくは第2の嵌合部5と、固定部材2の第1嵌合部6とが互いに接することができる。より具体的には、本体1の第2嵌合部5と、固定部材2の第1嵌合部6とを互いに対向させて直進移動させることによって、第2嵌合部5と第1嵌合部6とを互いに接触させることができる。このような接触によって、固定部材2の第1嵌合部6が変位して電線3を押圧することができ、電線3をより確実に固定することができる(図8図9参照)。例えば、「クローズド状態」において、第1嵌合部6が電線3を押圧することによって、電線3を固定するとともに、電線3の揺れを抑制することができる。それにより、耐振動特性を提供することができる。
【0065】
例えば図8Bに示す通り、「オープン状態」では、第2嵌合部5は、第1嵌合部6と接していない。次いで、本体1と固定部材2とを結合させることによって、すなわち「クローズド状態」では、例えば図9Bに示す通り、第2嵌合部5が第1嵌合部6と接することで第1嵌合部6が内側(図示する態様の上方)に押し上げられるとともに、内側(図示する態様の上方)に変位することができる。このとき、第1嵌合部6は、電線3を押圧し、特に電線3の被覆部を押圧して、固定部材2の内部で電線3をより確実に固定することができる。
【0066】
このように「オープン状態」から「クローズド状態」に移行する間において、第2嵌合部5は、第1嵌合部6と固定部材2の壁部15との間の空間部(または間隙部または溝)S1に進入することができる。つまり、第1嵌合部6と第2嵌合部5とが互いに嵌合あるいは適合または係合することができる。
【0067】
空間部S1の形状は、第2嵌合部5の進入または嵌合を許容することができる形状であれば特に制限はない。空間部S1の形状と、第2嵌合部5の形状とが断面視において略相補的な形状を有することが好ましい。
【0068】
空間部S1は、図示するように断面視において略三角形の形状を有することが好ましい。空間部S1が略三角形の形状を有する場合、その角度θ1は、例えば0°よりも大きく45°よりも小さい範囲内の値、好ましくは10°以上30°以下の範囲内の値である(図8C参照)。
【0069】
第2嵌合部5の形状は、図示するように断面視で略三角形の形状を有することが好ましい。第1嵌合部6を効率よく押し上げることから、図示する態様のように第2嵌合部5の外側(図示する態様の下側)の面が平坦であり内側(図示する態様の上側)の面がテーパ面であることが好ましい。第2嵌合部5が略三角形の形状を有する場合、このような第2嵌合部5を「テーパ部」と称してもよく、その角度θ2は、例えば0°よりも大きく60°以下の範囲内の値、好ましくは15°以上45°以下の範囲内の値である(図8D参照)。第1嵌合部6を効率よく押し上げることから、角度θ2は、角度θ1よりも大きいことが好ましい。
【0070】
「クローズド状態」において、第1嵌合部6が有する角度θ3は、例えば0°よりも大きく90°以下の範囲内の値、好ましくは15°以上45°以下の範囲内の値である(図9C参照)。角度θ3が上記の範囲内であると首尾よく電線3を押圧して固定することができる。
【0071】
第1嵌合部6の内側の面(図示する態様では上面)、すなわち第1嵌合部6の電線3と当接する側の面に関して、例えば図8Bに示すように、第1嵌合部6の内側(図示する態様の上側)の面は、「オープン状態」において、断面視で電線3の表面に平行して平らであることが好ましい。第1嵌合部6は、このような形状を有することで「オープン状態」において、固定部材2を通して、電線3を本体1の内部に直線的にスムーズに進入させることができる。
【0072】
別の態様として、例えば図10Aに示すように、第1嵌合部26の内側の面(図示する態様では上面)が電線側に隆起するように第1嵌合部26の厚みを増してもよい。このような形状を有することで電線を第1嵌合部26でより強く押圧して固定することができる。なお、図示する態様では、第1嵌合部26の内側の面が電線側に隆起しているが、電線を挿入する際には、バネ様の第1嵌合部26が電線と接触することで下方に押し下げられ得るため、第1嵌合部26は、本体21への電線の進入を阻害し得ない。尚、図10に示す空間部S2は、前述のS1と同様であってよい。
【0073】
例えば図13に示すように、第1嵌合部6の内側面(図示する態様では上面)は凹部14を有してよい。ここで、図13は、例えば図1の破線a’-aに沿って、固定部材2の内部から第1嵌合部6を見た図である。凹部14は、電線3に沿う溝状の凹部であってよい。凹部14は、好ましくは電線3の表面に沿うように設けられてよい。凹部14は、電線3の表面に沿って、特に電線3の断面の円形の形状に沿って、弧状の形状を有することが好ましい。このような形状の凹部14を第1嵌合部6の内側(図示する態様の上側)の面が有することによって、第1嵌合部6の内側(図示する態様の上側)の面と、電線3の表面との接触面積が増加し、より適切に電線3を固定することができる。図10に示す第1嵌合部26も同様に凹部を有していてよい。
【0074】
例えば図8に示す「オープン状態」において、固定部材2を介して、電線3、好ましくはコンタクト4を有する電線3を本体1の内部に挿入することができる。このとき、電線3は、図8Aに示す波線a-a’に沿って、本体1の内部に直進移動により簡単かつスムーズに挿入することができる。
【0075】
例えば図12に示すように、本体1はランス11を有していてよい。図示する態様において、ランス11は、本体1の前端に向けて突出し得る板状または棒状の部分もしくは部位または領域である。ランス11は、その内側(図示する態様の上側)の面上をコンタクト4が直進移動またはスライド移動することができる。ランス11は、凸部12を有していてよい。ランス11の凸部12は、コンタクト4に設けられ得るオープニング13に適合することができるような形状を有していてよい。例えば、ランス11の凸部12は、断面視において、後端に向けて傾斜面を有し、前端に向けて段差を有していることが好ましい。このようなランス11の凸部12は、コンタクト4のオープニング13に進入することができる。例えば、ランス11の凸部12と、コンタクト4のオープニング13の縁部とが当接することによって、コンタクト4の移動、ひいては電線3の移動を抑制することができる。換言すると、ランス11によって、コンタクト4、ひいては電線3を係止または固定することができる。また、このとき、ランス11によって、コンタクト4を内側(図示する態様の上側)に付勢することもできる。
【0076】
つまり、本体1に挿入された電線3のコンタクト4では、その本体1の内部での移動または運動がランス11、好ましくは凸部12によって抑制または係止され、本体1から電線3が抜けて外れることを防止できる。また、ランス11は、電線3および/またはコンタクト4を付勢することができるので、電線3および/またはコンタクト4の揺れをさらに防止することができる。
【0077】
従って、「オープン状態」において、電線3を本体1の内部でプリセットすることができる(図8A参照)。プリセット状態では、例えば図8Aおよび図11Aに示す通り、本体1の第1係合部9aと、固定部材2のバー7とが係合することによって、固定部材2を本体1で係止することができる。換言すると、第1係合部9aによって、固定部材2が本体1から脱落することを防止することができる。
【0078】
電線3を本体1にプリセットした後、固定部材2を本体1に対してさらに移動させることができる。例えば固定部材2を本体1に対して平行に直線的にさらに移動させることができる。それにより、コネクタ10をロックすることができる。例えば図9Aおよび図11Bに示す通り、本体1の第2係合部9bと固定部材2のバー7とが係合することによって、本体1が固定部材2で完全に閉じられた「クローズド状態」を達成することができる。このような「クローズド状態」では、固定部材2に設けられた第1嵌合部6により、電線3を固定してロックすることができる(図9B参照)。
【0079】
ここで、本体1の係合部9、具体的には第1係合部9aおよび第2係合部9bは、例えば図11に示す通り、固定部材2に対向する面(図示する態様では右側の面)が斜面を成していてもよい。第1係合部9aおよび第2係合部9bがこのような斜面を有することで固定部材2のバー7の通過をより促進することができる。また、固定部材2のバー7の本体1と対向する面(図示する態様では左側の面)も同じ理由から斜面を成していてもよい。
【0080】
上述のように、コネクタ10では、本体1と固定部材2との非回転運動による結合、特に本体1の係合部9(具体的には第1係合部9aおよび第2係合部9b)による本体1と固定部材2との結合、それにともなう固定部材2に設けられた第1嵌合部6と本体1に設けられた第2嵌合部5との接触による第1嵌合部6の変位に起因する電線3の固定、さらに本体1のランス11、好ましくは凸部12によるコンタクト4の係止によって、さらにより向上した電線保持力および耐振動特性をコネクタに提供することができる。
【0081】
以上、例示の実施形態により本発明のコネクタを説明したが、本発明のコネクタは、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態において、本体1に第1嵌合部、好ましくは弾性的に変位可能なバネ弾性部が設けられてよく、固定部材2に第2嵌合部、好ましくは断面が略三角形の形状を有するテーパ部が設けられていてよい。
また、上記の実施形態において、コネクタ10は、メスコネクタとして記載されているが、オスコネクタであってもよい。コネクタ10は、多極コネクタに限定されず、単極コネクタであってもよい。コネクタ10は、基板型に限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示のコネクタは、電気的な接続が求められる様々な分野に利用することができる。特に振動の抑制が求められる分野において幅広く使用することができる。つまり、本開示のコネクタは、例えば自動車などの車両用途のコネクタであってよい。
本開示のコネクタは、向上した電線保持力および耐振動特性を提供することから、より径の小さい細線などの電線の電気的な接続に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,21 コネクタ本体
2,22 固定部材
3 電線
4 コンタクト
5,25 第2嵌合部またはテーパ部
6,26 第1嵌合部またはバネ弾性部
7,27 バー
8 ウインドウ
9,29 係合部
9a,29a 第1係合部
9b,29b 第2係合部
10 コネクタ
11 ランス
12 凸部
13 オープニング
14 凹部
15 壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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