(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】露光装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240805BHJP
G05D 3/12 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G05D3/12 305S
(21)【出願番号】P 2020127585
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】早川 崇志
(72)【発明者】
【氏名】江本 圭司
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0218842(US,A1)
【文献】特開2011-035381(JP,A)
【文献】特開2012-142463(JP,A)
【文献】特開2019-121656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの露光光を用いて原版に形成されたパターンを基板に転写するように前記基板を露光する露光装置であって、
前記基板が載置される基板ステージと、
第1推力を前記基板ステージに発生させる第1アクチュエータ、及び第2推力を前記基板ステージに発生させる第2アクチュエータを有し、前記基板ステージを走査方向に駆動する駆動部と、
前記基板上の複数のショット領域の各々を露光する露光期間において、前記基板ステージを前記走査方向に移動させながら前記基板上の複数のショット領域の各々を露光するように前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記露光期間において前記基板ステージを前記走査方向に移動させるために、前記第1アクチュエータにより前記第1推力
を前記走査方向における第1方向に前記基板ステージに付与させ、前記第2アクチュエータにより前記第2推力
を前記走査方向における前記第1方向とは逆の第2方向に前記基板ステージに付与させ、前記第1推力と前記第2推力
のそれぞれが変化することにより前記第1推力と前記第2推力の合力は正弦関数に従い変化し、前記合力の向きが変化するとき前記第1推力の大きさと前記第2推力の大きさとがいずれも0にならないように前記駆動部を制御することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板上の一部のショット領域の各々を露光する際に前記基板ステージの前記走査方向における加速度が正の値をとる区間から所定の時刻において0になった後、負の値をとる区間に移行するように生成された前記加速度のプロファイルに従って、前記基板ステージを前記走査方向に移動させるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基板上の残りのショット領域の各々を露光する際に前記基板ステージの前記走査方向における前記加速度が負の値をとる区間から所定の時刻において0になった後、正の値をとる区間に移行するように生成された前記加速度のプロファイルに従って、前記基板ステージを前記走査方向に移動させるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数のショット領域の各々を露光する際の前記加速度のプロファイルを、時間に関する微分可能関数から生成することを特徴とする請求項2または3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のショット領域の各々を露光する際の前記加速度のプロファイルから生成された加速指令値に基づいて前記第1推力及び前記第2推力それぞれのプロファイルを生成することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数のショット領域の各々を露光する際の前記第1推力及び前記第2推力それぞれのプロファイルを、時間に関する微分可能関数から生成することを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定の時刻において、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータそれぞれが前記基板ステージに前記第1推力及び前記第2推力を発生させるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記
露光期間のいずれの時刻においても前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータそれぞれが前記基板ステージに前記第1推力及び前記第2推力を発生させるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記露光期間に含まれる第1期間におい
て前記合力は前記第1方向に前記基板ステージに付与され、前記露光期間に含まれ前記第1期間の後の第2期間におい
て前記合力は前記第2方向に前記基板ステージに付与され、前記第1期間と前記第2期間との間の期間におい
て前記合力の大きさは0になることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータはそれぞれ、電磁石アクチュエータであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項11】
光源からの露光光を用いて原版に形成されたパターンを基板に転写するように前記基板を露光する露光装置であって、
前記基板が載置される基板ステージと、
第1推力を前記基板ステージに発生させる第1アクチュエータ、及び第2推力を前記基板ステージに発生させる第2アクチュエータを有し、前記基板ステージを走査方向に駆動する駆動部と、
前記基板上の複数のショット領域の各々を露光する露光期間において、前記基板ステージを前記走査方向に移動させながら前記基板上の複数のショット領域の各々を露光するように前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記露光期間において前記基板ステージを前記走査方向に移動させるために、前記第1アクチュエータにより前記第1推力を前記走査方向における第1方向に前記基板ステージに付与させ、前記第2アクチュエータにより前記第2推力を前記走査方向における前記第1方向とは逆の第2方向に前記基板ステージに付与させ、前記第1推力と前記第2推力
のそれぞれが変化することにより前記第1推力と前記第2推力の合力は正弦関数に従い変化し、前記合力の向きが変化するとき前記第1推力の大きさと前記第2推力の大きさとがいずれも0にならないように前記駆動部を制御し、
前記露光期間に含まれる第1期間におい
て前記合力は前記第1方向に前記基板ステージに付与され、前記露光期間に含まれ前記第1期間の後の第2期間におい
て前記合力は前記第2方向に前記基板ステージに付与され、前記第1期間と前記第2期間との間の期間におい
て前記合力の大きさは0になることを特徴とする露光装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記基板を露光するステップと、
露光された前記基板を現像するステップと、
現像された前記基板を加工して物品を製造するステップと、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項13】
基板が載置される基板ステージと、第1推力を前記基板ステージに発生させる第1アクチュエータ、及び第2推力を前記基板ステージに発生させる第2アクチュエータを有し、
前記基板ステージを走査方向に駆動する駆動部とを備える露光装置において、光源からの露光光を用いて原版に形成されたパターンを前記基板に転写するように前記基板を露光する方法であって、
前記基板上の複数のショット領域の各々を露光する露光期間において、前記基板ステージを前記走査方向に移動させながら前記基板上の複数のショット領域の各々を露光するように前記駆動部を制御するステップを含み、
該制御するステップは、前記露光期間において前記基板ステージを前記走査方向に移動させるために、前記第1アクチュエータにより前記第1推力
を前記走査方向における第1方向に前記基板ステージに付与させ、前記第2アクチュエータにより前記第2推力
を前記走査方向における前記第1方向とは逆の第2方向に前記基板ステージに付与させ、前記第1推力と前記第2推力
のそれぞれが変化することにより前記第1推力と前記第2推力の合力は正弦関数に従い変化し、前記合力の向きが変化するとき前記第1推力の大きさと前記第2推力の大きさとがいずれも0にならないように前記駆動部を制御するステップを含むことを特徴とする基板を露光する方法。
【請求項14】
基板が載置される基板ステージと、第1推力を前記基板ステージに発生させる第1アクチュエータ、及び第2推力を前記基板ステージに発生させる第2アクチュエータを有し、
前記基板ステージを走査方向に駆動する駆動部とを備える露光装置において、光源からの露光光を用いて原版に形成されたパターンを前記基板に転写するように前記基板を露光する方法であって、
前記基板上の複数のショット領域の各々を露光する露光期間において、前記基板ステージを前記走査方向に移動させながら前記基板上の複数のショット領域の各々を露光するように前記駆動部を制御するステップを含み、
該制御するステップは、前記露光期間において前記基板ステージを前記走査方向に移動させるために、前記第1アクチュエータにより前記第1推力を前記走査方向における第1方向に前記基板ステージに付与させ、前記第2アクチュエータにより前記第2推力を前記走査方向における前記第1方向とは逆の第2方向に前記基板ステージに付与させ、前記第1推力と前記第2推力
のそれぞれが変化することにより前記第1推力と前記第2推力の合力は正弦関数に従い変化し、前記合力の向きが変化するとき前記第1推力の大きさと前記第2推力の大きさとがいずれも0にならないように前記駆動部を制御するステップを含み、
前記露光期間に含まれる第1期間におい
て前記合力は前記第1方向に前記基板ステージに付与され、前記露光期間に含まれ前記第1期間の後の第2期間におい
て前記合力は前記第2方向に前記基板ステージに付与され、前記第1期間と前記第2期間との間の期間におい
て前記合力の大きさは0になることを特徴とする基板を露光する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板ステージを走査方向に走査移動させながら、基板ステージ上に載置された基板を露光する露光装置が知られている。
そして、そのような露光装置では、基板を露光する際のスループットを増加させることで生産性を向上させることが求められている。
特許文献1は、基板を露光する際に正弦関数から構成される駆動プロファイルに従って基板ステージを変速させながら走査移動させることで、露光時間を短縮しスループットを向上させた露光装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、基板上の所定のショット領域を露光する際に、基板ステージの走査方向における加速度が正の値をとる第1の区間から所定の時刻において0になった後、負の値をとる第2の区間に移行するように基板ステージを走査移動させている。
【0005】
一方、基板ステージに走査方向の正の向きを有する第1の推力を発生させる第1のアクチュエータと走査方向の負の向きを有する第2の推力を発生させる第2のアクチュエータとを用いて基板ステージを走査移動させる露光装置が知られている。
ここで、そのような露光装置において基板を露光する際に、特許文献1に開示されているように基板ステージを変速させながら走査移動させる場合には、第1のアクチュエータから第2のアクチュエータへの切り替えが発生することが考えられる。
すなわち、第1の区間では第1のアクチュエータによって第1の推力のみを発生させることで基板ステージの加速度を正の値にする一方で、第2の区間では第2のアクチュエータによって第2の推力のみを発生させることで基板ステージの加速度を負の値にする。
【0006】
このとき、基板ステージの加速度が0になる所定の時刻において第1の推力の発生が終了すると同時に第2の推力の発生が開始する。
すなわち、所定の時刻において第1の推力及び第2の推力が同時に0になることで、基板ステージの位置に関する制御偏差が発生し、これにより重ね合わせ精度が低下してしまう。
そこで本発明は、スループットの向上を維持しつつ、基板ステージの位置に関する制御偏差の発生を抑制することができる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る露光装置は、光源からの露光光を用いて原版に形成されたパターンを基板に転写するように基板を露光する露光装置であって、基板が載置される基板ステージと、第1推力を基板ステージに発生させる第1アクチュエータ、及び第2推力を基板ステージに発生させる第2アクチュエータを有し、基板ステージを走査方向に駆動する駆動部と、基板上の複数のショット領域の各々を露光する露光期間において、基板ステージを走査方向に移動させながら基板上の複数のショット領域の各々を露光するように駆動部を制御する制御部とを備え、制御部は、露光期間において基板ステージを走査方向に移動させるために、第1アクチュエータにより第1推力を走査方向における第1方向に基板ステージに付与させ、第2アクチュエータにより第2推力を走査方向における第1方向とは逆の第2方向に基板ステージに付与させ、第1推力と第2推力のそれぞれが変化することにより第1推力と第2推力の合力は正弦関数に従い変化し、合力の向きが変化するとき第1推力の大きさと第2推力の大きさとがいずれも0にならないように駆動部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スループットの向上を維持しつつ、基板ステージの位置に関する制御偏差の発生を抑制することができる露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る露光装置の模式的断面図及び基板ステージの上面図。
【
図2】第一実施形態に係る露光装置における加速度プロファイル、速度プロファイル、推力プロファイル及び合力プロファイル。
【
図3】第一実施形態に係る露光装置における基板の露光処理を示したフローチャート。
【
図4】第二実施形態に係る露光装置における推力プロファイル及び合力プロファイル。
【
図5】従来の露光装置における加速度プロファイル及び速度プロファイル。
【
図6】別の従来の露光装置における加速度プロファイル、速度プロファイル、推力プロファイル及び合力プロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本実施形態に係る露光装置を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために、実際とは異なる縮尺で描かれている。
なお以下では、基板ステージの基板載置面に垂直な方向をZ方向、基板載置面内において互いに直交する(垂直な)二つの方向をそれぞれX方向及びY方向と定義する。
【0011】
現在、半導体デバイスの製造装置である露光装置では、光学系に対してマスクとウエハとを走査しながら露光を行う走査露光装置が主流となっている。
また、露光装置では露光精度や重ね合わせ精度の向上と同時に生産性の向上が求められている。
【0012】
そして、そのような要望に応えるために、マスクステージや基板ステージを走査移動させて露光を行う際の加速度及び速度を向上させることで、露光時間を短縮することによって生産性を向上させてきた。
しかしながら、加速度及び速度の向上にはハード的な限界があるため、露光を行う際にマスクステージや基板ステージを変速させながら走査移動させることによって露光時間をさらに短縮する露光装置が提案されている。
【0013】
一方、リニアモータを用いてマスクステージや基板ステージを走査移動させる露光装置では、マスクステージや基板ステージの加速度の向上に伴って、リニアモータで用いられるコイルの発熱量が増大する。
それにより、マスクステージや基板ステージにおいて熱膨張が発生することで計測基準が変形したり、レーザ干渉計の光路において空気密度が擾乱したりすることによって、位置計測の精度が低下してしまう虞がある。
【0014】
これに対しては、発熱量が小さい電磁石アクチュエータを用いてマスクステージや基板ステージを走査移動させる露光装置が提案されている。
そして、そのような露光装置では、走査方向の正の向きを有する第1の推力を発生させる第1の電磁石アクチュエータと走査方向の負の向きを有する第2の推力を発生させる第2の電磁石アクチュエータとを用いて各ステージを走査方向に駆動する方法が採られる。
【0015】
ここで、基板上の所定のショット領域を露光する際に、基板ステージの加速度が正の値をとる第1の区間から所定の時刻において0になった後、負の値をとる第2の区間に移行するように基板ステージを走査移動させる場合を考える。
このとき、第1の区間では第1の電磁石アクチュエータによって第1の推力のみを発生させる一方で、第2の区間では第2の電磁石アクチュエータによって第2の推力のみを発生させる方法を採ることが考えられる。
すなわちこの場合、第1の区間では第1の推力のみを発生させることで基板ステージの加速度を正の値にする一方で、第2の区間では第2の推力のみを発生させることで基板ステージの加速度を負の値にすることができる。
【0016】
このとき、基板ステージの加速度が正の値をとる第1の区間から所定の時刻において0になった後、負の値をとる第2の区間に移行する際に、第1の電磁石アクチュエータから第2の電磁石アクチュエータへの瞬間的な切り替えが発生する。
そしてこの場合、基板ステージを駆動するアクチュエータが瞬間的に切り替わることで、基板ステージの位置に関して制御偏差が発生することによって重ね合わせ精度が低下してしまう虞がある。
【0017】
そこで本実施形態に係る露光装置では、以下に示す構成を採ることで、基板ステージの加速度(加速方向)が正から負に切り替わる変曲点を有する駆動プロファイルに従って基板ステージを駆動する際に生じるそのような制御偏差の発生を抑制することができる。
【0018】
[第一実施形態]
図1(a)は、第一実施形態に係る露光装置100の模式的断面図を示している。
【0019】
本実施形態に係る露光装置100は、光源からの露光光を用いてマスク102(原版)に形成されたパターンを基板104に転写するように基板104を露光する。
ここで基板104としては、例えばその表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハが用いられ、基板104上には、先の露光処理で形成された互いに同一のパターン構造を有する複数のショット領域が配列されている。
そして本実施形態に係る露光装置100は、マスク102と基板104とを互いに同期してY方向に走査移動させながら基板104上の各ショット領域を高精度に露光するステップ・アンド・スキャン方式を採用している。なおこの際、露光領域は矩形又は円弧スリット形状とされる。
【0020】
図1(a)に示されているように、本実施形態に係る露光装置100は、投影光学系101、マスクステージ103、基板ステージ105、照明光学系106及び制御部111を備えている。
【0021】
投影光学系101は、光軸AXがZ方向に平行になるように配置されており、マスク102のパターンの像を投影光学系101の像面、すなわち基板104上に投影する。
なお、投影光学系101の倍率は、例えば1/4、1/2及び1/5から選択することができる。
【0022】
マスクステージ103は、マスク102を保持しており、露光を行う際に投影光学系101の光軸AXに垂直なXY面内において、Y方向に平行な矢印103aの方向に走査移動する。
このとき、マスクステージ103は、マスクステージ103のX方向における位置が目標位置に維持されるように補正駆動される。
そして、マスクステージ103のX方向及びY方向における位置は、干渉計109がマスクステージ103上に配置されたバーミラー107からの反射光を計測することで決定される。
【0023】
基板ステージ105は、載置される基板104を不図示のチャックを用いて吸着保持しており、露光を行う際に投影光学系101の光軸AXに垂直なXY面内において、Y方向に平行な矢印105aの方向に走査移動する。
具体的には、基板ステージ105は、X方向及びY方向それぞれに移動可能なXYステージと、投影光学系101の光軸AXに平行なZ方向(基板104の高さ方向)に移動可能なZステージとを含む。
さらに、基板ステージ105は、X軸及びY軸の回りに回転可能なレベリングステージと、Z軸の回りに回転可能な回転ステージとを含む。
このように、基板ステージ105では、マスク102に形成されているパターンの像を基板104上の所望のショット領域に一致させるための六軸駆動系が構成されている。
そして、基板ステージ105のX方向、Y方向及びZ方向における位置は、干渉計110が基板ステージ105上に配置されたバーミラー108からの反射光を計測することで決定される。
【0024】
照明光学系106は、エキシマレーザ等のパルス光を発生する不図示の光源からの光をマスク102に照明する。
具体的には、照明光学系106は、入射光の断面形状(寸法)を予め定められた形状に整形するためのビーム整形光学系と、入射光の配光特性を均一にしてマスク102を均一な照度で照明するためのオプティカルインテグレータとを有している。
また照明光学系106は、チップサイズに対応する矩形の照明領域を規定するためのマスキングブレード、コリメータレンズ及びミラー等を有している。
これにより、照明光学系106は、遠紫外領域のパルス光を効率的に透過又は反射することができる。
【0025】
制御部111は、CPUやメモリ等を含んでおり、本実施形態に係る露光装置100の各構成部材を統括的に制御する。
具体的には、制御部111は、マスク102に形成されているパターンからの光を基板104の所定のショット領域に結像させるために、マスク102を保持するマスクステージ103と基板104を保持する基板ステージ105との駆動を制御する。
例えば制御部111は、マスクステージ103及び基板ステージ105のXY面内における位置(X方向及びY方向における位置、及びZ軸周りの角度)及びZ方向における位置(X軸周り及びY軸周りそれぞれにおける角度)を調整する。
また制御部111は、基板104上の所定のショット領域を露光する際にはマスクステージ103及び基板ステージ105を互いに同期して走査移動させると共に、露光するショット領域を切り替える際には、基板ステージ105をステップ移動させる。
これにより制御部111は、基板ステージ105によって保持されている基板104を走査しながら基板104の各ショット領域を露光する露光処理を制御することができる。
【0026】
また、マスクステージ103を矢印103aの方向に走査移動させる際には、基板ステージ105は、投影光学系101の倍率(縮小倍率)だけ補正した速度で矢印105aの方向に走査移動する。
そして、マスク102に形成されているパターンのXY面内における位置合わせは、マスクステージ103の位置、基板ステージ105の位置、及び基板ステージ105に対する基板104上の各ショット領域の位置に基づいて行われる。
ここで、マスクステージ103及び基板ステージ105それぞれの位置は、上述したように干渉計109及び110によって計測される。
そして、基板ステージ105に対する基板104上の各ショット領域の位置は、不図示のアライメント顕微鏡によって基板ステージ105上に設けられたマークの位置及び基板104上に形成されたアライメントマークの位置を検出することで計測される。
【0027】
図1(b)は、本実施形態に係る露光装置100に設けられた基板ステージ105の上面図を示している。
【0028】
図1(b)に示されているように、基板ステージ105は、基板104を搭載して短距離駆動及び長距離駆動それぞれを行う微動ステージ201及び粗動ステージ202から構成される。
具体的には、粗動ステージ202は、Xスライダ203及びYスライダ204によって移動可能に支持されていると共に、リニアモータ可動子205、206、207及び208に接続されている。
リニアモータ可動子205、206、207及び208はそれぞれ、リニアモータ固定子209、210、211及び212との間に生じるローレンツ力によって、粗動ステージ202をX方向及びY方向に駆動することができる。
【0029】
微動ステージ201は、複数の電磁石アクチュエータ213、214、215及び216によって、X方向及びY方向に移動可能であるように粗動ステージ202に非接触で連結される。
そして、電磁石アクチュエータ213及び215は微動ステージ201をY方向に駆動させることができる一方で、電磁石アクチュエータ214及び216は微動ステージ201をX方向に駆動させることができる。
【0030】
なお、電磁石アクチュエータ213乃至216は、吸引力のみを発生させることが可能であり、制御部111によって制御される。
また、微動ステージ201では、不図示のXYZリニアモータによって、Z方向、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向及びZ軸周りの回転方向に駆動されることで、六軸駆動系が構成されている。
【0031】
そして、微動ステージ201を+Y方向、すなわちY方向の正の向きに駆動させる場合には、電磁石アクチュエータ213によって吸引力である推力をY方向の正の向き(第1方向)に生じさせる。
一方、微動ステージ201を-Y方向、すなわちY方向の負の向きに駆動させる場合には、電磁石アクチュエータ215によって吸引力である推力をY方向の負の向き(第2方向)に生じさせる。
【0032】
また、微動ステージ201を+X方向、すなわちX方向の正の向きに駆動させる場合には、電磁石アクチュエータ214によって吸引力である推力をX方向の正の向きに生じさせる。
一方、微動ステージ201を-X方向、すなわちX方向の負の向きに駆動させる場合には、電磁石アクチュエータ216によって吸引力である推力をX方向の負の向きに生じさせる。
すなわち本実施形態に係る露光装置100では、複数のアクチュエータの各々が微動ステージ201に対して互いに異なる向きの推力を発生させる。
【0033】
本実施形態に係る露光装置100では、上記のように基板ステージ105を構成することによって、基板104を高速かつ高精度に位置決めすることが可能となる。
また本実施形態に係る露光装置100では、微動ステージ201を駆動するための駆動部は、電磁石アクチュエータ213(第1のアクチュエータ)、214、215(第2のアクチュエータ)、216から構成される。
なお、微動ステージ201をY方向に駆動するための電磁石アクチュエータの数は上記の二個に限らず、三個以上の電磁石アクチュエータを用いて微動ステージ201をY方向に駆動することもできる。
【0034】
図5は、従来の露光装置400において基板104上の所定のショット領域に露光を行う際の微動ステージ201のY方向における加速度プロファイルA
p及び速度プロファイルV
pを示している。
なおここで示す従来の露光装置400は、本実施形態に係る露光装置100と同一の構成であるため、同一の部材には同一の符番を付して、説明を省略する。
また以下では、Y方向における加速度A及び速度Vをそれぞれ、単に加速度A及び速度Vと称する。
【0035】
図5に示されているように、露光装置400において基板104上の所定のショット領域に露光を行う際の微動ステージ201の駆動は、制御部111によって以下に示すように制御される。
具体的には、まず時刻t
0からt
3までの加速区間501において微動ステージ201をY方向に加速する際に、時刻t
1においてA
maxに到達するように時刻t
0から時刻t
1まで加速度Aを増加させる。
そして、時刻t
1から時刻t
2の間では加速度AをA
maxに維持した後、時刻t
3において0になるように時刻t
2から時刻t
3まで加速度Aを減少させることで、微動ステージ201の速度Vは露光速度V
sに到達する。
【0036】
次に、時刻t3からt4までの等速区間502において微動ステージ201のY方向における速度Vを露光速度Vsに維持したまま、基板104上の所定のショット領域を走査しながら露光する。
そして、時刻t4からt7までの減速区間503において微動ステージ201をY方向に減速する際に、時刻t5において-Amaxに到達するように時刻t4から時刻t5まで加速度Aを減少させる。
その後、時刻t5から時刻t6の間では加速度Aを-Amaxに維持し、最後に時刻t7において0になるように時刻t6から時刻t7まで加速度Aを増加させることで、微動ステージ201の速度Vは0に到達する。
【0037】
そして、上記に示した走査駆動とステップ駆動とを連続的に繰り返すことによって、基板104上の全体に設けられた複数のショット領域を露光することができる。
ここで、生産性を向上させるためには、露光速度Vsや最高加速度Amaxを向上させることによって、加速区間501、露光区間502及び減速区間503それぞれにおける時間を短縮することで、基板104の一枚当たりの処理時間を短縮することが考えられる。
しかしながら、最高加速度Amaxの向上にはハード的な制約があるために、それによる生産性の向上には限界がある。
【0038】
図6(a)は、別の従来の露光装置500において基板104上の所定のショット領域に露光を行う際の微動ステージ201のY方向における加速度プロファイルA
p及び速度プロファイルV
pを示している。
なおここで示す別の従来の露光装置500は、本実施形態に係る露光装置100と同一の構成であるため、同一の部材には同一の符番を付して、説明を省略する。
また以下では、Y方向における加速度A、速度V及び推力Fをそれぞれ、単に加速度A、速度V及び推力Fと称する。
【0039】
露光装置500では、加速度Aが正弦関数に従って周期的に変化することで、速度Vも周期的に変化する。なお
図6(a)では、加速度A及び速度Vの一周期における時間変化しか示されていないことに注意されたい。
【0040】
具体的には、まず所定の時刻t0において加速度A及び速度VがそれぞれA0及び-V0であったとする。
そして、変速区間601では、時刻t0から時刻t1までの間において加速度AがAmaxまで増加した後にA0まで減少することで、速度Vは-V0からV0まで増加する。
次に、露光区間602では、時刻t1から時刻t3までの間において加速度Aが-A0まで減少することで、速度VはV0からVmaxまで増加した後にV0まで減少する。
そして、変速区間603では、時刻t3から時刻t4までの間において加速度Aが-Amaxまで減少した後に-A0まで増加することで、速度VはV0から-V0まで減少する。
【0041】
このとき、露光装置500では、加速度A及び速度Vがそれぞれ0及びVmaxに到達する時刻t2が時刻t1と時刻t3との中間、すなわち(t1+t3)/2となるように、露光区間602を設定している。
そして、この露光区間602において基板104上の所定のショット領域に露光を行うことで、微動ステージ201の走査速度を略一定に保ちながら安定した露光を行うことができる。なお、このとき時刻t2において所定のショット領域の中心を走査露光することになる。
【0042】
このように、露光装置500では、変速しながら露光を行うことで、変速区間601、露光区間602及び変速区間603を短縮することができる。
これにより、基板104の一枚当たりの処理時間を短縮することができる。
【0043】
図6(b)は、露光装置500における電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2p並びに電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pを示している。
なおここでは、電磁石アクチュエータ213の推力F
1は微動ステージ201を+Y方向に駆動させるために正の値で示す一方で、電磁石アクチュエータ215の推力F
2は微動ステージ201を-Y方向に駆動させるために負の値で示すことに注意されたい。
【0044】
図6(b)に示されているように、電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
p(合力Fの時間依存性)は、微動ステージ201の加速度プロファイルA
p(加速度Aの時間依存性)に基づいて出力されることになる。
すなわち、電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pは、微動ステージ201の加速度Aが±A
maxになるときに合力Fが±F
maxになるように、加速度プロファイルA
pと同じ周期且つ位相で変化する。
そして、電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2pは、それぞれの和が電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pになるように、すなわち合力プロファイルF
pから分配される。
【0045】
このとき、合力プロファイルF
pからそれぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2pへの分配の方法としては、従来、合力Fの正負に従って分配を行う方法が採られる。
すなわち、
図6(b)に示されているように、微動ステージ201を+Y方向に駆動させるように合力Fが正である、時刻t
2より前の区間では、電磁石アクチュエータ213に吸引力である推力F
1を生じさせる。
一方、微動ステージ201を-Y方向に駆動させるように合力Fが負である、時刻t
2より後の区間では、電磁石アクチュエータ215に吸引力である推力F
2を生じさせる。
このように、微動ステージ201の加速度Aの符号に応じて、電磁石アクチュエータ213及び215の一方のみに推力を生じさせるように、電磁石アクチュエータ213及び215は制御される。
【0046】
このため、
図6(b)に示されているように、露光区間602において時刻t
1ではF
0であった電磁石アクチュエータ213の推力F
1は減少し始めた後、時刻t
2において0に到達し、時刻t
2以降においては0のまま維持される。
一方、露光区間602において時刻t
1では0であった電磁石アクチュエータ215の推力F
2は、時刻t
2から減少し始め、時刻t
3において-F
0に到達する。
【0047】
そして、
図6(b)に示されているように、推力プロファイルF
1p及びF
2pの和が合力プロファイルF
pになるため、電磁石アクチュエータ213の推力F
1は、時刻t
2において急峻に変化する。
換言すると、電磁石アクチュエータ213の推力プロファイルF
1p(推力F
1の時間依存性)は、時刻t
2において微分不連続になる。
同様に、電磁石アクチュエータ215の推力F
2も時刻t
2において急峻に変化する。換言すると、電磁石アクチュエータ215の推力プロファイルF
2p(推力F
2の時間依存性)も、時刻t
2において微分不連続になる。
さらに換言すると、露光装置500では、露光区間602における推力プロファイルF
1p及びF
2pはそれぞれ、推力F
1及びF
2が0になる時刻t
2において時間に関して微分可能ではない関数から生成される。
【0048】
すなわち、露光装置500における微動ステージ201の加速度プロファイルApのように加速度Aが連続的に変化する場合、加速度Aが正から負に瞬間的に切り替わる変曲点t2が露光区間602内に存在する。
そして、変曲点t2において、電磁石アクチュエータ213の推力F1が微分不連続に0に到達すると同時に、電磁石アクチュエータ215の推力F2も微分不連続に0から変化し始める。
【0049】
そのため、微動ステージ201への推力の印加は、変曲点t2において電磁石アクチュエータ213から電磁石アクチュエータ215へ瞬間的に切り替わるため、微動ステージ201において制御偏差が生じる可能性がある。
すなわち、露光装置500では、露光を行っている露光区間602において微動ステージ201に制御偏差が生じることで、重ね合わせ精度が低下してしまう。
【0050】
そこで、本実施形態に係る露光装置100では、以下に示すような制御を行うことで、そのような微動ステージ201における制御偏差の発生を抑制することができる。
【0051】
図2(a)は、本実施形態に係る露光装置100において基板104上の所定のショット領域に露光を行う際の微動ステージ201のY方向における加速度プロファイルA
p及び速度プロファイルV
pを示している。
なお以下では、Y方向における加速度A、速度V及び推力Fをそれぞれ、単に加速度A、速度V及び推力Fと称する。
【0052】
本実施形態に係る露光装置100では、微動ステージ201の加速度Aを正弦関数に従って周期的に変化するように構成することで、微動ステージ201の速度Vも周期的に変化する。なお
図2(a)では、加速度A及び速度Vの一周期における時間変化しか示されていないことに注意されたい。
【0053】
具体的には、まず所定の時刻t0において加速度A及び速度VがそれぞれA0及び-V0であったとする。
そして、時刻t0から時刻t1までの間の変速区間301では、時刻t’において加速度AがAmaxまで増加した後、時刻t1においてA0まで減少することで、速度Vは-V0からV0まで増加する。
次に、時刻t1から時刻t3までの間の露光区間302では、時刻t2において加速度Aが0まで減少した後、時刻t3において-A0まで減少することで、速度VはV0からVmaxまで増加した後にV0まで減少する。
そして、時刻t3から時刻t4までの間の変速区間303では、時刻t’’において加速度Aが-Amaxまで減少した後、時刻t4において-A0まで増加することで、速度VはV0から-V0まで減少する。
【0054】
このとき、本実施形態に係る露光装置100では、加速度A及び速度Vがそれぞれ0及びVmaxに到達する時刻t2が時刻t1と時刻t3との中間、すなわち(t1+t3)/2となるように、露光区間302を設定している。
そして本実施形態に係る露光装置100では、この露光区間302において基板104上の所定のショット領域に露光を行うことで、微動ステージ201の走査速度を略一定に保ちながら安定した露光を行うことができる。なお、このとき時刻t2において所定のショット領域の中心を走査露光することになる。
【0055】
このように、本実施形態に係る露光装置100では、変速しながら露光を行うことで、変速区間301、露光区間302及び変速区間303を短縮することができる。
これにより、基板104の一枚当たりの処理時間を短縮することができる。
【0056】
そして
図2(a)に示されているように、本実施形態に係る露光装置100では、露光区間302における加速度プロファイルA
pは、時間に関する微分可能関数から生成される。
換言すると、本実施形態に係る露光装置100では、露光区間302における加速度プロファイルA
pは、露光区間302における任意の時刻においてdA(t)/dtの値が存在する、時間tに依存する関数A(t)から生成される。
【0057】
図2(b)は、本実施形態に係る露光装置100における電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2p並びに電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pを示している。
【0058】
図2(b)に示されているように、電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pは、微動ステージ201の加速度プロファイルA
pに基づいて生成されることになる。
すなわち、電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pは、微動ステージ201の加速度Aが±A
maxになるときに合力Fが±F
maxになるように、加速度プロファイルA
pと同じ周期及び位相で変化する。
そして、電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2pは、それぞれの和が電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pになるように、すなわち合力プロファイルF
pから分配される。
換言すると、電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2pは、微動ステージ201の加速度プロファイルA
pから生成された加速指令値に基づいて生成される。
【0059】
このとき、本実施形態に係る露光装置100では、露光区間302において電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力F1及びF2が同時に0にならないように、合力プロファイルFpから推力プロファイルF1p及びF2pへの分配を行う。
【0060】
具体的には、例えば時刻t’においてFmaxであった電磁石アクチュエータ213(第1のアクチュエータ)の推力F1(第1の推力)は、露光区間302が始まる時刻t1においてF0となった後、時刻t3において0に到達するように単調減少する。
一方、0であった電磁石アクチュエータ215(第2のアクチュエータ)の推力F2(第2の推力)は、時刻t1から減少し始め、露光区間302が終わる時刻t3において-F0となった後、時刻t’’において-Fmaxに到達するように単調減少する。
これにより、時刻t2において微動ステージ201へ推力を印加するアクチュエータが電磁石アクチュエータ213から電磁石アクチュエータ215へ瞬間的に切り替わらないように、微動ステージ201へ印加される推力を制御することができる。
【0061】
すなわち、本実施形態に係る露光装置100では、露光区間302において電磁石アクチュエータ213及び215の一方の推力が0に到達する又は0から変化し始める際に、他方の推力を発生させておく。
換言すると、本実施形態に係る露光装置100では、露光区間302のうち少なくとも一部の区間において、電磁石アクチュエータ213及び215の推力F1及びF2が共に0ではない。
さらに換言すると、本実施形態に係る露光装置100では、露光区間302のうち少なくとも一部の区間において、微動ステージ201に対して電磁石アクチュエータ213及び215の合力が印加されている。
【0062】
すなわち、基板104上の一部のショット領域の各々を露光する際に、微動ステージ201のY方向における加速度Aが正の値をとる区間から所定の時刻において0になった後、負の値をとる区間に移行するように加速度プロファイルApが生成される。
同様に、基板104上の残りのショット領域の各々を露光する際に、微動ステージ201のY方向における加速度Aが負の値をとる区間から所定の時刻において0になった後、正の値をとる区間に移行するように加速度プロファイルApが生成される。
そして、本実施形態に係る露光装置100では、制御部111が、生成された加速度プロファイルApに従って微動ステージ201を走査移動させるように駆動部を制御する。
【0063】
このとき、本実施形態に係る露光装置100では、基板104上の複数のショット領域を露光する際の各走査移動の少なくとも一部の時間において、複数のアクチュエータそれぞれが微動ステージ201に推力を発生させるように駆動部が制御される。
特に、基板104上の複数のショット領域を露光する際の各走査移動における加速度Aが0になる所定の時刻において、複数のアクチュエータそれぞれが微動ステージ201に推力を発生させるように駆動部が制御される。
これにより、本実施形態に係る露光装置100では、露光を行っている露光区間302において微動ステージ201における制御偏差の発生を抑制することができ、重ね合わせ精度の低下を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る露光装置100では、
図2(b)に示されているように、電磁石アクチュエータ213の推力F
1は、時刻t
3において0に到達する際に微分連続で変化させることが好ましい。
同様に、電磁石アクチュエータ215の推力F
2は、時刻t
1において0から微分連続で変化させることが好ましい。
換言すると、露光区間302における推力プロファイルF
1p及びF
2pはそれぞれ、時間に関する微分可能関数から生成されることが好ましい。
これにより、露光を行っている露光区間302において微動ステージ201における制御偏差の発生をさらに抑制することができ、重ね合わせ精度の低下をさらに抑制することができる。
【0065】
また具体的には、例えば露光区間302における電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2pは、以下の式(1)及び(2)のように表すことができる。
【数1】
【数2】
【0066】
図3は、本実施形態に係る露光装置100における基板104の露光処理を示したフローチャートである。
【0067】
図3に示されているように、基板104の露光処理が開始されると(ステップS1)、基板104が基板ステージ105上に搬送される(ステップS2)。
次に、制御部111によって、基板104のアライメントが行われ(ステップS3)、基板104上において露光されるショット領域のレイアウト情報から基板ステージ105及びマスクステージ103の駆動プロファイルが算出される(ステップS4)。
【0068】
そして、ステップS4において算出された基板ステージ105及びマスクステージ103の駆動プロファイルから、各ステージに設けられている電磁石アクチュエータの推力指令値を算出し(ステップS5)、出力タイミングを設定する(ステップS6)。
その後、ステップS5及びS6によって算出された電磁石アクチュエータの推力指令値及び出力タイミングに基づいて、基板ステージ105及びマスクステージ103の走査駆動が行われる。この走査駆動とステップ駆動とを繰り返すことによって、基板104の各ショット領域に対して露光が行われる(ステップS7)。
そして、基板104の全てのショット領域に対して露光が完了すると、基板104が基板ステージ105上から回収され(ステップS8)、基板104の露光処理が終了する(ステップS9)。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る露光装置100では、基板104上の複数のショット領域を露光する際の各走査移動の少なくとも一部の時間において、複数のアクチュエータそれぞれが微動ステージ201に推力を発生させるように駆動部が制御される。
これにより、露光区間302の時刻t2における合力Fの符号反転に伴う電磁石アクチュエータ213及び215の一方から他方への切り替えは行われない。
そのため、露光を行っている露光区間302において微動ステージ201における制御偏差の発生を抑制することができ、重ね合わせ精度の低下を抑制することができる。
【0070】
なお本実施形態に係る露光装置100では、露光区間302における電磁石アクチュエータ213及び215の推力プロファイルF1p及びF2pを、式(1)及び(2)に示される関数から生成しているが、上記の条件が満たされていればこれに限られない。
また、上記の制御方法は、電磁石アクチュエータ214及び216による微動ステージ201のX方向における駆動やマスクステージ103の駆動においても同様に適用することができる。
【0071】
[第二実施形態]
図4は、第二実施形態に係る露光装置における電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力プロファイルF
1p及びF
2p並びに電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルF
pを示している。
なお、本実施形態に係る露光装置は、第一実施形態に係る露光装置100と同一の構成であるため、同一の部材には同一の符番を付して説明を省略する。
【0072】
また、本実施形態に係る露光装置において基板104上の所定のショット領域に露光を行う際の微動ステージ201のY方向における加速度プロファイルAp及び速度プロファイルVpは、第一実施形態に係る露光装置100と同様であるため、説明を省略する。
また、本実施形態に係る露光装置における電磁石アクチュエータ213及び215の合力プロファイルFpも、第一実施形態に係る露光装置100と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
図4に示すように、本実施形態に係る露光装置では、第一実施形態に係る露光装置100と同様に、露光区間302において電磁石アクチュエータ213及び215の一方の推力が0に到達する又は0から変化し始める際に、他方の推力を発生させておく。
換言すると、本実施形態に係る露光装置では、露光区間302のうち少なくとも一部の区間において、電磁石アクチュエータ213及び215の推力F
1及びF
2が共に0ではない。
さらに換言すると、本実施形態に係る露光装置では、露光区間302のうち少なくとも一部の区間において、微動ステージ201に対して電磁石アクチュエータ213及び215の合力が印加されている。
【0074】
しかしながら、本実施形態に係る露光装置では、第一実施形態に係る露光装置100とは異なり、電磁石アクチュエータ213の推力F1は、露光区間302より後の時刻において0に到達する。
一方、電磁石アクチュエータ215の推力F2は、露光区間302より前の時刻から減少し始める。
【0075】
具体的には、時刻t’においてFmaxであった電磁石アクチュエータ213の推力F1は、露光区間302が始まる時刻t1においてF0となった後、露光区間302より後の時刻t+において0に到達するように単調減少する。
一方、0であった電磁石アクチュエータ215の推力F2は、露光区間302より前の時刻t-から減少し始め、露光区間302が始まる時刻t1において-F0’となった後、時刻t’’において-Fmaxに到達するように単調減少する。
【0076】
このように、本実施形態に係る露光装置では、電磁石アクチュエータ213及び215それぞれの推力F1及びF2が0に到達する又は0から変化し始める時刻を露光区間302以外の変速区間301又は303内に設定する。
換言すると、本実施形態に係る露光装置では、基板104上の複数のショット領域を露光する際の各走査移動のいずれの時刻においても複数のアクチュエータそれぞれが微動ステージ201に推力を発生させるように駆動部が制御される。
これにより、露光区間302において、電磁石アクチュエータ213及び215を、推力が0に到達する又は0から変化し始めるように、オンにするか又はオフにする際に発生する可能性がある微動ステージ201における制御偏差の発生も抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る露光装置においても、
図4に示されているように、電磁石アクチュエータ213の推力F
1は、時刻t
+において0に到達する際に微分連続で変化させることが好ましい。換言すると、電磁石アクチュエータ213の推力F
1は、時刻t
+において時間tに関して微分可能な関数から生成されることが好ましい。
同様に、電磁石アクチュエータ215の推力F
2は、時刻t
-において0から微分連続で変化させることが好ましい。換言すると、電磁石アクチュエータ215の推力F
2は、時刻t
-において時間tに関して微分可能な関数から生成されることが好ましい。
【0078】
以上のように、本実施形態に係る露光装置では、基板104上の複数のショット領域を露光する際の各走査移動のいずれの時刻においても複数のアクチュエータそれぞれが微動ステージ201に推力を発生させるように駆動部が制御される。
これにより、露光を行っている露光区間302において微動ステージ201における制御偏差の発生をさらに抑制することができ、重ね合わせ精度の低下をさらに抑制することができる。
【0079】
[物品の製造方法]
本実施形態に係る露光装置を用いた物品の製造方法は、例えば、半導体素子、磁気記憶媒体や液晶表示素子等のデバイスを製造するのに好適である。
本実施形態に係る物品の製造方法は、本実施形態に係る露光装置を用いて、感光剤が塗布された基板を露光する工程と、露光された基板を現像する工程とを含む。
また、本実施形態に係る物品の製造方法は、現像された基板を加工するための他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。
本実施形態に係る物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【符号の説明】
【0080】
100 露光装置
102 マスク(原版)
104 基板
111 制御部
201 微動ステージ(基板ステージ)
213 電磁石アクチュエータ(アクチュエータ)
215 電磁石アクチュエータ(アクチュエータ)