(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】成形システムおよび成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20240805BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020130124
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平野 峻之
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-241872(JP,A)
【文献】特開2011-132595(JP,A)
【文献】特開2006-027138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を樹脂と一体成
形して立体形状を形成するための成形システムであって、
金型の固定型と可動型とが開いている状態で前記フレキシブル基板を前記固定型または
前記可動型のいずれか一方に沿って賦形する賦形装置と、
前記賦形した前記フレキシブル基板を保持するとともに、前記固定型と前記可動型とを
閉じることにより前記金型に形成される樹脂充填空間に熱可塑性樹脂を充填する射出成形
装置と、
前記フレキシブル基板における予め設定された第1領域が予め設定された閾値未満の温度となり、前記第1領域と異なる第2領域が前記閾値以上の温度となるように前記第2領域を加熱する加熱装置と、を備える
成形システム。
【請求項2】
前記賦形装置は、前記フレキシブル基板を吸引して賦形する吸引装置を有する
請求項1に記載の成形システム。
【請求項3】
前記賦形装置は、前記フレキシブル基板に空気を圧送して賦形する圧空成形装置を有する
請求項1又は2に記載の成形システム。
【請求項4】
前記射出成形装置が有するスクリューの進退方向と直交する方向に、第1ステージと第2ステージとを有する前記可動型をスライドさせるスライド機構をさらに備え、
前記賦形装置は前記第1ステージにおいて前記射出成形装置が前記樹脂を充填する場合に、前記第2ステージにおいて前記フレキシブル基板を賦形するよう配置された
請求項1~3のいずれか一項に記載の成形システム。
【請求項5】
可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を樹脂と一体成形して立体形状を形成するための成形方法であって、
(a)前記立体形状に対応した形状および回路配置を有する前記フレキシブル基板を用意する工程と、
(b)固定型と可動型とを有する金型が開いている状態で、前記フレキシブル基板を前記金型に沿って前記立体形状に賦形して保持する工程と、
(c)前記固定型と前記可動型とを閉じ、前記固定型と前記可動型とを閉じることにより前記金型に形成される樹脂充填空間に樹脂を充填する工程と、
を備え、
前記工程(a)は、前記回路配置において、前記工程(b)および前記工程(c)において変形する前記フレキシブル基板の領域のうち、予め設定された閾値未満に変形する領域を第1領域と設定し、前記閾値以上となる領域を第2領域と設定し、前記第1領域に前記電子部品を配置することを含む
成形方法。
【請求項6】
可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を樹脂と一体成形して立体形状を形成するための成形方法であって、
(a)前記立体形状に対応した形状および回路配置を有する前記フレキシブル基板を用意する工程と、
(b)固定型と可動型とを有する金型が開いている状態で、前記フレキシブル基板を前記金型に沿って前記立体形状に賦形して保持する工程と、
(c)前記固定型と前記可動型とを閉じ、前記固定型と前記可動型とを閉じることにより前記金型に形成される樹脂充填空間に樹脂を充填する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記工程(b)において変形する前記フレキシブル基板の領域のうち、予め設定された閾値未満に変形する領域を第1領域と設定し、前記閾値以上となる領域を第2領域と設定し、前記第2領域が前記第1領域より高い温度になるように前記第2領域を加熱する
成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形システムおよび成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された回路基板と樹脂とを一体成形するインサート成形が知られている。例えば特許文献1に記載の技術は、金型を閉じた状態でキャビティ内において突出したピンが電子基板を保持し、射出成形装置がキャビティ内に樹脂を一次射出する。そして一次射出された樹脂がある程度固化することにより電子基板を保持する状態になると、上記ピンは後退し、続いて射出成形装置が樹脂を二次射出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子部品を含むフレキシブル基板を射出成形用の金型で立体形状に賦形してインサート成形する技術は存在しなかった。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態にかかる成形システムは、可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を樹脂と一体成形して立体形状を形成するための成形システムであって、賦形装置と、射出成形装置と、を有している。
賦形装置は、金型の固定型と可動型とが開いている状態でフレキシブル基板を固定型または可動型のいずれか一方に沿って賦形する。
射出成形装置は、賦形したフレキシブル基板を保持するとともに、固定型と可動型とを閉じることにより金型に形成される樹脂充填空間に熱可塑性樹脂を充填する。
【0006】
一実施の形態にかかる成形方法は、可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を樹脂と一体成形して立体形状を形成するための成形方法であって、
(a)立体形状に対応した形状および回路配置を有するフレキシブル基板を用意する工程と、
(b)固定型と可動型とを有する金型が開いている状態で、フレキシブル基板を金型に沿って立体形状に賦形して保持する工程と、
(c)固定型と可動型とを閉じ、固定型と可動型とを閉じることにより金型に形成される樹脂充填空間に樹脂を充填する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記一実施の形態によれば、シンプルな工程により電子部品を含むフレキシブル基板と樹脂とを立体形状に一体成形するインサート成形システムおよび成形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1にかかる成形システムの概観図である。
【
図2】実施の形態1にかかるフレキシブル基板と加熱装置を示す図である。
【
図3】実施の形態1にかかる成形方法のフローチャートである。
【
図4】実施の形態1にかかる成形工程を示す第1図である。
【
図5】実施の形態1にかかる成形工程を示す第2図である。
【
図6】実施の形態1にかかる成形工程を示す第3図である。
【
図7】実施の形態1にかかる成形工程を示す第4図である。
【
図8】実施の形態1にかかる成形工程を示す第5図である。
【
図9】実施の形態2かかる成形システムの概観図である。
【
図10】実施の形態2かかる成形工程を示す第1図である。
【
図11】実施の形態2かかる成形工程を示す第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
<実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる成形システムの概観図である。
図1に示す成形システム1は、電子部品を含むフレキシブル基板と熱可塑性樹脂とを立体形状に一体成形して成形品(または製品と称する)を製造するための成形システムである。
【0011】
なお本実施の形態において、一体成形とは、インサート成形によってフレキシブル基板と樹脂とを一体に成形することをいう。また本実施の形態におけるインサート成形とは、金型にフレキシブル基板を設置したうえで金型に樹脂を注入し、フレキシブル基板と樹脂とを一体化した複合製品を製造することをいう。また本実施の形態において、「フレキシブル基板」は、可撓性を有する平板状のフィルムに、回路と電子部品とを実装したものをいう。また以降の説明において「熱可塑性樹脂」を単に「樹脂」と称する場合がある。
【0012】
以下に、成形システム1の構成の概要について説明する。成形システム1は、主な構成として、射出成形装置10、金型11、吸引装置12を有している。
【0013】
射出成形装置10は、金型11のうち、固定型11Fを固定し、可動型11Mを進退可能に保持する。射出成形装置10は、金型11が閉じた状態で、射出成形装置10が有するスクリュー10Aを利用して可塑化した樹脂を金型11に注入する。注入した樹脂が固化すると、射出成形装置10は、金型11を開き、固化した樹脂成形品を取り出すことが出来る状態にする。なお
図1において、射出成形装置10の一部は断面で示されており、断面部には射出成形装置10が有するスクリュー10Aが示されている。
【0014】
金型11は、固定型11Fと可動型11Mとにより構成される。固定型11Fと可動型11Mとが閉じた状態において、金型11は内部に樹脂充填空間を形成する。樹脂充填空間には、後述するフレキシブル基板が設置されるとともに、射出成形装置10から注入される熱可塑性樹脂が充填される。
【0015】
吸引装置12は、フレキシブル基板を金型11に沿って賦形する賦形装置の実施態様の一つである。本実施の形態における賦形装置とは、フレキシブル基板を立体形状に賦形する装置である。
【0016】
吸引装置12は、真空ポンプを有しており、可動型11Mに設けられた孔に連結した管12Aを介して、可動型11Mの孔から空気を吸引する。これにより吸引装置12は、金型11における樹脂充填空間に露呈する面に設けられた孔を介して空気を吸引する。そして、吸引装置12は、可動型11Mに設置されたフレキシブル基板を吸引することによりフレキシブル基板14を賦形する。
【0017】
加熱装置13は、フレキシブル基板を搬送して金型11内に設置し、設置したフレキシブル基板を加熱する。加熱装置13は、吸引装置12がフレキシブル基板を賦形する際に、フレキシブル基板を軟化し、賦形を促進する役割を担う。
【0018】
図2を参照して、加熱装置13についてさらに説明する。
図2は、実施の形態1にかかるフレキシブル基板と加熱装置を示す図である。
図2は、加熱装置13と、フレキシブル基板14とが示されている。
【0019】
加熱装置13は、主な構成として本体部131、領域加熱器132および吸着部133を有している。本体部131は、加熱装置13の各構成を支持する筐体である。本体部131は、領域加熱器132および吸着部133を支持する。また本体部131は、アーム130の先端に固定されている。アーム130は、任意の駆動部(不図示)を有し、加熱装置13を所望の位置に移動するとともに、当該位置に固定する。
【0020】
領域加熱器132は、例えばハロゲンヒータを含む加熱器であり、フレキシブル基板14の所定の領域に熱を与えて温度を上昇させることによりフレキシブル基板14を部分的に軟化させる。領域加熱器132は、例えば、フレキシブル基板14における予め設定された領域であって、賦形の際に比較的に大きく変形する領域に対して熱を与える。なお、領域加熱器132はハロゲンヒータに代えて、例えば電流を流すと発熱するニクロム線や炭素繊維などの発熱体により構成されてもよい。また領域加熱器132は、例えばレーザを有し、フレキシブル基板にレーザを照射することにより加熱する構成であってもよい。
【0021】
吸着部133は、フレキシブル基板14を吸着して保持する。吸着部133は、例えば先端に空気を吸引する孔を有する棒状の部材により構成され、先端にフレキシブル基板14が当接した場合に空気を吸引することによりフレキシブル基板14を吸着して保持する。
【0022】
フレキシブル基板14は、可撓性を有する平板状のベースフィルム141を基材とし、ベースフィルム141の一方の主面に、配線部142および電子部品143が実装されている。ベースフィルム141は、例えばポリカーボネートやポリイミドまたはポリエステルなどの樹脂の板材により構成される。
【0023】
本実施の形態において配線部142に使用される材料は、導電性を有すると共に、ベースフィルムの変形に追従できる性質を有している。配線部142は、例えば、導電性を有する銀ペーストに柔軟性を持たせるためのバインダを含有した材料により構成される。また電子部品143は、抵抗器、LED、コンデンサ、集積回路など任意の電子部品である。電子部品143は例えば導電性接着剤により配線部142の上に実装される。
【0024】
図に示すフレキシブル基板14は、第1領域A11と、第2領域A12とを有している。第1領域A11は、賦形の際に予め設定された閾値未満に変形する領域である。一方、第2領域A12は、賦形の際に予め設定された閾値以上に変形する領域である。そのため、第1領域A11は、フレキシブル基板14の領域の内、電子部品143を実装することが可能な領域である。第2領域A12は、フレキシブル基板14の領域の内、電子部品143を実装すると、品質に問題が生じる可能性がある領域である。なお、上述の「変形」とは、伸長、圧縮、曲げおよび捩れのうちいずれか一つを含む。
【0025】
第1領域A11と、第2領域A12とは、それぞれ排他的に画定される領域である。第1領域A11および第2領域A12は、成形品を製造する場合にフレキシブル基板14が受ける力学的または熱的な負荷に応じて設定されてもよい。かかる設定は、ユーザが解析を行うことにより実現する。なおこの際、ユーザはコンピュータによるシミュレーションや有限要素法による解析など、種々の手法を用いることが出来る。
【0026】
なお配線部142は、配線部142のパターンの形状や太さなどが、上述の各領域に対応して構成されている。すなわち第2領域A12に実装されている配線パターンは、第1領域A11に実装されている配線パターンに比べて、大きな変形に耐えうるものとなっている。上述のように、第1領域A11と第2領域A12とを設定することにより、本実施の形態にかかる成形方法は、フレキシブル基板14と樹脂とを一体成形する成形品の信頼性の低下を抑制できる。
【0027】
次に、
図3を参照して、成形システム1が成形品を製造する際に行われる方法について説明する。
図3は、実施の形態1にかかる成形方法のフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、例えば成形システム1を利用して所望の成形品を製造するために成形システム1を使用するユーザが実行する方法である。なお、
図3に示すフローチャートを開始するに際し、成形品の立体形状は決定しているものとする。
【0028】
まず、ユーザは、立体形状に対応した形状および回路配置を有するフレキシブル基板を用意する(ステップS11)。より具体的には、ユーザは、成形品の立体形状からフレキシブル基板の平面形状を決定するとともに、決定した平面形状において回路パターンや電子部品の配置を決定する。このときユーザは、フレキシブル基板を、上述の第1領域A11と第2領域A12とに分ける。そしてユーザは、決定した回路パターンや電子部品の配置にしたがって、フレキシブル基板を用意する。
【0029】
次に、ユーザは、成形システム1の金型11が開いている状態で、フレキシブル基板14を金型11に沿って立体形状に賦形して保持する(ステップS12)。例えばユーザは、加熱装置13の吸着部133に吸着したフレキシブル基板14を搬送してフレキシブル基板14を金型11の可動型11Mに設置する。そして、ユーザは、加熱装置13の領域加熱器132を動作させてフレキシブル基板14を軟化させる。さらにユーザは、吸引装置12を動作させてフレキシブル基板14を賦形する。なお、加熱装置13の領域加熱器132は、金型11に設置される前に動作を開始してもよい。これにより成形システム1は、フレキシブル基板14を金型11に設置する前に加熱できる。そのため、加熱時間を比較的に多く必要とする場合に、ユーザは、金型11に設置される前に領域加熱器132を動作させてフレキシブル基板14を軟化させてもよい。
【0030】
次に、ユーザは、成形システム1を操作し、金型11を閉じて、樹脂を金型11に充填する(ステップS13)。射出成形装置10が樹脂を金型に充填し、充填した樹脂を冷却することにより、射出成形装置10は、フレキシブル基板と樹脂とを一体成形する。これにより、ユーザは、所望の成形品を製造できる。以上、実施の形態1にかかる成形方法のフローチャートについて説明した。なお、上述の処理において、フレキシブル基板14の賦形は、金型11を閉じた後に行われてもよい。この場合、例えば、金型11を閉じる処理において金型11がフレキシブル基板14を賦形してもよい。またフレキシブル基板14を賦形する処理は、第1次賦形と第2次賦形の2段階により行われてもよい。この場合、成形システム1は例えば、金型11を閉じる際に、金型11がフレキシブル基板14に対して第1次賦形を行い、金型11が閉じられた後に、吸引装置12が第2次賦形を行う。フレキシブル基板14を賦形する処理は、金型11を閉じながら並行して行われてもよい。
【0031】
次に、上述の成形方法についてより具体的に説明する。
図4は、実施の形態1にかかる成形工程を示す第1図である。
図4には、
図1および
図2に示した成形システム1およびフレキシブル基板14が示されている。
図4に示す成形システム1において、射出成形装置10は、樹脂ペレットを収容するホッパおよび樹脂ペレットを可塑化して金型に樹脂を注入するスクリュー10Aが模式的に示され、その他の部分は省略されている。また金型11は断面が模式的に示されている。また吸引装置12、加熱装置13およびフレキシブル基板14も理解容易にするために模式的に示されている。
【0032】
ここで金型11について説明する。
図4に示す金型11は、開いた状態すなわち固定型11Fと可動型11Mとが離間した状態である。金型11のうち、固定型11Fは、射出成形装置10の樹脂を注入する注入口に接続し、注入口から樹脂を受け入れる。また固定型11Fは凹凸部111を有している。凹凸部111は、成形品の形状を形成するキャビティであり、金型11が閉じた状態になった場合に、可動型11Mが有する凹部との間に樹脂充填空間を形成する。
【0033】
可動型11Mは、凹部を有し、金型11が閉じた状態になった場合に、固定型11Fが有する凹凸部111との間に樹脂充填空間を形成する。可動型11Mの凹部は、当接部112と賦形部113とを含む。当接部112は、平面上に加工された部分であり、賦形される前のフレキシブル基板14が当接する部分である。
【0034】
賦形部113は、当接部112の平面に形成された凹部である。賦形部113には、複数の吸引孔11Hが設けられている。複数の吸引孔11Hは、可動型11M内において合流した後に、吸引装置12に接続している。そのため複数の吸引孔11Hは、吸引装置12が動作すると、吸引孔11Hの外から空気を吸い込む。なお、吸引孔11Hは、図に示したような管状のものでもよいし、ポーラス状に加工されたものでもよい。
【0035】
上述の構成において、
図4に示した成形システム1に対して、ユーザは、フレキシブル基板14を吸着させた状態で加熱装置13を移動する。そしてユーザは、フレキシブル基板14のベースフィルム141と可動型11Mの当接部112とを当接させるように加熱装置13を設置する。
【0036】
図5を参照して、次の工程について説明する。
図5は、実施の形態1にかかる成形工程を示す第2図である。
図5は加熱装置13がフレキシブル基板14を可動型11Mに当接させ、さらにフレキシブル基板14に対して加熱処理を行っている状態を示している。
【0037】
図5において、加熱装置13の吸着部133はフレキシブル基板14を吸着した状態である。また吸着部133を有する加熱装置13は、フレキシブル基板14を可動型11Mの当接部112に当接させた状態を維持している。このとき、賦形部113とフレキシブル基板14との間に存在する空間は、フレキシブル基板14により塞がれた状態になっている。
【0038】
図5において、加熱装置13は、領域加熱器132を動作させ、可動型11Mの当接部112に当接させたフレキシブル基板14の第2領域A12を加熱している。フレキシブル基板14は、領域加熱器132に加熱される第2領域A12の温度が上昇する。そのため、領域加熱器132により加熱される第2領域A12の温度は、第1領域A11の温度と比べて高くなる。すなわち、第2領域A12は、第1領域A11に比べて軟化する。そのため、第2領域A12は、第1領域A11に比べて変形しやすくなる。
【0039】
図6は、実施の形態1にかかる成形工程を示す第3図である。
図6において、吸引装置12は、フレキシブル基板14が加熱された後に動作し、賦形部113とフレキシブル基板14との間に存在していた空気を吸引する。これにより軟化したフレキシブル基板14は主として第2領域A12が変形する。その結果、フレキシブル基板14は、賦形部113に沿って変形している。
【0040】
フレキシブル基板14が賦形されると、加熱装置13は領域加熱器132の動作を停止し、さらに吸着部133によるフレキシブル基板14の保持を解除する。その後、加熱装置13は金型11から待避する。このときフレキシブル基板14は吸引装置12により可動型11Mに吸引されている。そのため、可動型11Mはフレキシブル基板14を保持できる。
【0041】
図7は、実施の形態1にかかる成形工程を示す第4図である。
図7は、加熱装置13が待避した後に、射出成形装置10が金型11を閉じ、閉じた金型11に形成されている樹脂充填空間11Cに樹脂を注入している状態を示している。すなわち金型11は、固定型11Fと可動型11Mとが閉じた状態で、樹脂充填空間11Cを形成する。射出成形装置10は可塑化した樹脂を金型11の樹脂充填空間11Cに注入する。樹脂が充填された後に冷却されて固化することにより、成形品が形成される。このとき、吸引装置12は、注入された樹脂によりフレキシブル基板14が保持された後に、動作を停止する。
【0042】
図8は、実施の形態1にかかる成形工程を示す第5図である。
図8は、樹脂充填空間に注入された樹脂が冷却されて固化した後に、射出成形装置10が金型11を開いた状態を召している。
【0043】
図8に示すように、金型11が開くことにより、成形品15が金型11から取出可能となる。成形品15は、賦形されたフレキシブル基板14と樹脂とが一体成形されている。ユーザは成形品15を取り出すと、再び
図4に示すように、新たなフレキシブル基板14を固定型11Fと可動型11Mとの間に設置できる。
【0044】
以上、実施の形態1について説明したが、実施の形態1にかかる成形システム1は、上述の構成に限られない。成形システム1は、例えば、フレキシブル基板14を搬送する手段と加熱装置13とが別体であってもよい。実施の形態1におけるフレキシブル基板14は、第1領域A11の変形を抑制するために、あるいは、電子部品143もしくは配線部142を保護するために、補強板が添付され、または補強剤が添加されていてもよい。また成形システム1は、フレキシブル基板14を金型11に固定するための固定装置をさらに有していてもよい。この場合、例えば固定装置は、可動型11Mに設けられ、搬送されてきたフレキシブル基板14を固定型11Fとの間に挟持する。またこの場合、固定装置は、フレキシブル基板14が賦形された後に樹脂充填空間から待避してもよい。
【0045】
上述の実施の形態1によれば、シンプルな工程により電子部品を含むフレキシブル基板と樹脂とを立体形状に一体成形するインサート成形システムおよび成形方法を提供できる。
【0046】
また成形システム1は、ダイスライドインジェクション方式を有するシステムであってもよい。ダイスライドインジェクション方式は、スクリュー10Aの進退方向に直交する方向に可動型11Mをスライドさせるスライド機構を有する。スライド可能に設置された可動型11Mは、第1ステージと第2ステージとを有する。第1ステージと第2ステージとは、それぞれ賦形部113を含んでいる。
【0047】
このようなシステムにおいて、成形システム1は、第1ステージと第2ステージとが、交互に固定型11Fと当接して樹脂充填空間を形成し、形成した樹脂充填空間に樹脂を受け入れる。一方、第1ステージおよび第2ステージの固定型11Fと当接していない側が有する賦形部113は、加熱装置13およびフレキシブル基板14を受け入れて、フレキシブル基板14を賦形する。
【0048】
このような構成により、成形システム1は、フレキシブル基板14の賦形と、一体成形とを並行して実行できる。そのため、成形システム1は、電子部品を含むフレキシブル基板と樹脂とを効率よく立体形状に一体成形するインサート成形システムおよび成形方法を提供できる。
【0049】
ダイスライドインジェクション方式は、成形工程として、1次成形と2次成形とを有しているということができる。成形システム1がダイスライドインジェクション方式を有する場合、例えば、成形工程は、1次成形においてフレキシブル基板14を賦形し、2次成形において賦形したフレキシブル基板14に樹脂を一体成形するものであってもよい。
【0050】
なお、成形システム1は、上述のダイスライドインジェクション方式に代えて、ロータリーテーブルを有する竪型成形機を有するものであってもよい。この場合においても、成形システム1は、1次成形においてフレキシブル基板14を賦形し、2次成形において樹脂を一体成形する工程を採用できる。この場合、ロータリーテーブルに設置された2つの可動型11Mは、1次成形側と2次成形側とを交互に往来(回転または往復)する。
【0051】
<実施の形態2>
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2は、賦形手段として圧空成形装置をさらに有する点が、実施の形態1と異なる。また実施の形態2は、フレキシブル基板14の態様およびフレキシブル基板14を搬送する手段が実施の形態1と異なる。
【0052】
図9は、実施の形態2かかる成形システム2の概観図である。
図9に示す成形システム2は、加熱装置13に代えて、圧空成形装置16および加熱装置23を有している。
【0053】
圧空成形装置16は、フレキシブル基板14を圧空成形するための装置である。圧空成形装置16は、金型11に設置したフレキシブル基板14に対して空気を押し当てることによりフレキシブル基板14を賦形する。圧空成形装置16は、空気を圧送するためのポンプや、送り込まれた空気による圧力をフレキシブル基板14に対して与えるために、フレキシブル基板14と圧空成形装置16との隙間を塞ぐための隔壁等を有している。
【0054】
加熱装置23は、吸着部133を有さない点が、実施の形態1における加熱装置13と異なる。すなわち、加熱装置23は、フレキシブル基板14を搬送しない。加熱装置23は、実施の形態1とは異なる手段により搬送および設置されたフレキシブル基板14に対して加熱する。
【0055】
次に、
図10および
図11を参照して、実施の形態2にかかる成形システムの詳細について説明する。
図10は、実施の形態2かかる成形工程を示す第1図である。
図2は、開いた状態の金型11に、フレキシブル基板14が設置され、さらに、加熱装置13がフレキシブル基板24を加熱している状態を示している。
図10に示すフレキシブル基板24は、ベースフィルム241、配線部142および電子部品143を有している。
【0056】
ベースフィルム241は、金型11の上下方向の幅より長い。ベースフィルム241は、金型11の上方および下方において図示しない保持手段により保持されている。例えばベースフィルム241は、ロール状に形成されたものであって、金型11の上方から繰り出されたロール状のフィルムが、金型11の下方の巻き取り手段により巻き取られることにより保持されていてもよい。またこのとき、フレキシブル基板24を構成する配線部142および電子部品143は、金型11の上方から繰り出されたフィルムに連続して実装され、実装された後に金型11に搬送されるものであってもよい。
【0057】
加熱装置23は、
図5で説明した加熱装置13と同様に、領域加熱器132により第2領域A12を加熱する。加熱装置23は、フレキシブル基板24を加熱すると、金型11から待避する。
【0058】
次に、
図11を参照して圧空成形装置16について説明する。
図11は、実施の形態2かかる成形工程を示す第2図である。
図11には、加熱装置23が待避した後にフレキシブル基板24に当接する圧空成形装置16が示されている。
図11に示す圧空成形装置16は、金型11と同様に、断面が模式的に示されている。
【0059】
圧空成形装置16は、フレキシブル基板24を賦形するための賦形装置の一実施態様である。圧空成形装置16は、フレーム部16Fおよび圧送孔16Hを有している。フレーム部16Fは、フレキシブル基板24に当接することによりフレキシブル基板24の所望の領域を閉塞状態にする。圧送孔16Hは、圧送ポンプから圧送される空気を上記閉塞状態の空間に送り込む孔である。
【0060】
図11は、吸引装置12および圧空成形装置16によりフレキシブル基板24が賦形された状態を示している。加熱装置23により加熱された後に、吸引装置12が空気を吸引し、同時に圧空成形装置16が空気を圧送することにより、フレキシブル基板24は可動型11Mに沿って賦形される。フレキシブル基板24が賦形された後は、圧空成形装置16は金型11から待避する。その後、射出成形装置10は金型11を閉じて樹脂を注入する。
【0061】
なお、本実施の形態におけるフレキシブル基板24は、ベースフィルム241が金型11の上下幅より長い。そのため、本実施の形態にかかる成形システム2は、
図11に示す工程においてフレキシブル基板24を賦形した後に、ベースフィルム241を所望の大きさにカットする工程を有してもよい。また成形システム2は、ベースフィルム241が上下に延びたまま成形を行い、成形後にベースフィルム241をカットする工程を有していてもよい。
【0062】
以上、実施の形態2について説明した。実施の形態2にかかる成形システム2は、上述の構成に限られない。例えば、成形システム2は、賦形装置の一実施態様として、圧空成形装置16に代えて、または圧空成形装置16に加えて、立体形状に賦形するための賦形用型を有していてもよい。この場合、賦形用型は、例えば、フレキシブル基板24を可動型11Mに押し当てる。例えば、賦形用型は、シリコーンを主成分とする弾性を有するものであってもよい。賦形用型を用いることにより、成形システム2は、確実にフレキシブル基板24を賦形できる。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 成形システム
10 射出成形装置
10A スクリュー
11 金型
11C 樹脂充填空間
11F 固定型
11H 吸引孔
11M 可動型
12 吸引装置
13 加熱装置
14 フレキシブル基板
15 成形品
16 圧空成形装置
16F フレーム部
16H 圧送孔
23 加熱装置
24 フレキシブル基板
112 当接部
113 賦形部
130 アーム
131 本体部
132 領域加熱器
133 吸着部
141 ベースフィルム
142 配線部
143 電子部品
241 ベースフィルム
A11 第1領域
A12 第2領域