(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】医用情報処理装置及び医用情報生成装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240805BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240805BHJP
G06T 7/143 20170101ALI20240805BHJP
G06T 7/168 20170101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B6/03 560D
A61B6/03 560J
G06T7/00 614
G06T7/143
G06T7/168
(21)【出願番号】P 2020132636
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 亮
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011773(JP,A)
【文献】特開平06-343627(JP,A)
【文献】特開平02-185240(JP,A)
【文献】特表2007-524438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0285462(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103479398(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医用画像の各々から当該医用画像に設定された関心領域内のデータを周波数変換して得られた複数の第1周波数成分データが表す周波数空間のポイント毎に、当該ポイントに出現するスペクトル値の傾向を示した特性データを記憶する記憶部と、
処理対象の医用画像を周波数変換して第2周波数成分データを取得する取得部と、
前記第2周波数成分データが表す周波数空間のポイント毎に、当該ポイントのスペクトル値と、前記特性データとの類似性を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記第2周波数成分データが表す周波数空間の中から処理対象の領域を決定する決定部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、同一のポイントに出現するスペクトル値の分布特性を、所定の確立分布モデル又はヒストグラムで表した前記特性データに基づいて類似性を判定する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、同一のポイントに出現するスペクトル値の分布特性を症例毎に表した前記特性データの各々を統合し、統合した前記特性データに基づいて類似性を判定する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記周波数空間の各ポイントに関連付けて、当該ポイントの類似性の判定結果をピクセル値で表したマップデータを生成し、
前記決定部は、前記マップデータに基づいて処理対象の領域を決定する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第2周波数成分データが表す周波数空間のポイント毎に、当該ポイントのスペクトル値と、症例毎に用意された前記特性データとの類似性の有無をそれぞれ判定し、前記症例毎に得られた前記類似性の判定結果の論理和から前記マップデータを生成する、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記判定部で類似性ありと判定された前記ポイントが占める領域を前記処理対象の領域に決定する、請求項4又は5に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記判定部で類似性ありと判定された前記ポイントが占める領域と、他の領域との境界をぼかすための処理を実行した後、所定の閾値で二値化した前記ピクセル値に基づいて、処理対象の領域を決定する、請求項4又は5に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記第2周波数成分データが表す周波数空間のポイント毎に、前記特性データとの類似度を判定し、
前記決定部は、前記判定部で判定された類似度に基づいて前記処理対象の領域を決定する、請求項1又は2に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記処理対象の領域からスペクトル値を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前記スペクトル値に基づいて診断支援処理を実行する診断支援部と、
を更に備える請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記第2周波数成分データが表す周波数空間に、所定の周波数範囲を規定したサブバンドを一又は複数個設定する設定部を更に備え、
前記抽出部は、前記処理対象の領域からスペクトル値を前記サブバンド毎に抽出する、請求項9に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
複数の医用画像の各々から当該医用画像に設定された関心領域内のデータを変換して得られた複数の第1変換データが表す空間のポイント毎に、当該ポイントに出現するデータ値の傾向を示した特性データを記憶する記憶部と、
処理対象の医用画像を変換して第2変換データを取得する取得部と、
前記第2変換データが表す空間のポイント毎に、当該ポイントのデータ値と、前記特性データとの類似性を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記第2変換データが表す空間の中から処理対象となる領域を決定する決定部と、
を備え
る医用情報処理装置。
【請求項12】
複数の医用画像の各々から当該医用画像に設定された関心領域内のデータを周波数変換して
複数の第1周波数成分データを取得する取得部と、
前記取得部で取得された複数の前記第1周波数成分データが表す周波数空間のポイント毎に、当該ポイントに出現するスペクトル値の傾向を示した特性データを生成する生成部と、
を備える医用情報生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、医用情報処理装置及び医用情報生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT装置等のモダリティで取得された医用画像をCAD(Computer Aided Diagnosis/Detection)等の診断支援技術を用いて解析することが行われている。例えば、従来、医用画像に設定された関心領域(Region Of Interest:ROI)内のデータから特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて病状や疾患名等を判定する技術が提案されている。
【0003】
ところで、上述した技術の判定精度は、ROIに含まれるデータの影響を受けることになる。例えば、画像解析の対象となる組織(以下、対象組織)として肝臓組織の状態を判定するような場合、ROIのデータに脈管や肝外組織等の非対象組織が含まれていると、非対象組織の影響により判定精度が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Omer Kayaalti, Bekir Hakan Aksebzeci, Ibrahim Okkes Karahan, Kemal Deniz, Mehmet Ozturk, Bulent Yilmaz, Sadik Kara, Musa Hakan Asyali, “Liver Fibrosis Staging Using CT Image Texture Analysis and Soft Computing,” Applied Soft Computing 25 (2014) 399-413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像から対象組織の特徴を表したデータを効率的に抽出することである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本願明細書に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報処理装置は、記憶部と、取得部と、判定部と、決定部とを備える。記憶部は、複数の医用画像の各々から当該医用画像に設定された関心領域内のデータを周波数変換して得られた複数の第1周波数成分データが表す周波数空間のポイント毎に、当該ポイントに出現するスペクトル値の傾向を示した特性データを記憶する。取得部は、処理対象の医用画像を周波数変換して第2周波数成分データを取得する。判定部は、前記第2周波数成分データが表す周波数空間のポイント毎に、当該ポイントのスペクトル値と、前記特性データとの類似性を判定する。決定部は、前記判定部の判定結果に基づいて、前記第2周波数成分データが表す周波数空間の中から処理対象の領域を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る医用情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る医用画像の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る医用情報生成装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る周波数空間の並び替え動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る生成機能の動作例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る医用情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る判定機能及び決定機能の動作例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る対象マップと合成マップとの各組を比較可能に示した図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るサブバンド設定機能及び抽出機能の動作例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態の医用情報生成装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態の医用情報処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例1に係る医用情報処理装置の動作例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、変形例2に係る医用情報処理装置の動作例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、変形例3に係る医用情報処理装置の動作例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置及び医用情報生成装置の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る医用情報処理システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、医用情報処理システム1は、医用情報記憶装置10と、医用情報生成装置20と、医用情報処理装置30とを有する。医用情報記憶装置10、医用情報生成装置20、及び医用情報処理装置30は、例えば病院等の医療施設に設置され、院内ネットワーク等のネットワークN1を介して互いに通信可能に接続される。
【0010】
医用情報記憶装置10は、複数の被検体の医用情報を記憶するデータベースを含んで構成される。具体的には、医用情報記憶装置10は、被検体の各々を識別する被検体IDに関連付けて当該被検体の医用情報を記憶する。
【0011】
医用情報には、少なくとも医用画像が含まれる。医用画像は、X線CT装置で取得されたX線CT画像、MRI装置で取得されたMRI画像、X線装置で取得されたX線画像、マンモグラフィ装置で取得されたマンモグラフィ画像等、各種の医用モダリティで取得された被検体の画像である。本実施形態では、一例として、X線CT装置で取得されたX線CT画像を医用画像とする例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0012】
図2は、医用画像(X線CT画像)の一例を示す図である。
図2に示すように、医用画像MGには、関心領域(以下、ROIともいう)が設定されている。ROIは、画像解析のために設定される画像範囲である。
【0013】
なお、医用情報記憶装置10の医用画像に設定されるROIは、画像解析の対象となる対象組織以外の非対象組織が含まれていない状態、又は非対象組織の含有率が微小であることが好ましい。ここで「対象組織」は、画像解析の主対象となる生体組織や生体部位を意味する。また「非対象組織」は、対象組織以外の他の生体組織や部位を意味する。例えば、対象組織を肝臓組織とした場合、脈管や肝外組織等が非対象組織となる。
【0014】
また、医用情報記憶装置10は、被検体IDに関連付けて医用画像に関する情報や、被検体に関する情報等を記憶する。例えば、医用情報記憶装置10は、医用画像の撮像部位を示す情報を記憶する。また、例えば、医用情報記憶装置10は、医用画像に関連付けて、当該医用画像に含まれるROIの状態から導出された診断結果を示す情報を記憶する。ここで、診断結果を示す情報は、医師等の医療従事者により最終的に判定された診断結果の内容を含むことが好ましい。ここで、診断結果は、疾患名等の他、疾患の有無や良性・悪性といった二値の判定結果や、複数段階の重症度の判定結果等をも含む概念である。
【0015】
なお、医用情報の記憶の仕方は特に問わず、種々の形態を採用することが可能である。例えば、撮像部位を示す情報は、医用画像に付帯された付帯情報に記憶されてもよいし、医用画像とは別の電子カルテ等の電子ファイルに記憶されてもよい。また、ROIは、医用画像自体に設定(記憶)されてもよいし、電子カルテ等の医用画像とは別の形態で記憶されてもよい。また、診断結果を示す情報は、医用画像とは別の電子カルテ等の電子ファイルに記憶されてもよい。
【0016】
医用情報生成装置20は、医用情報記憶装置10に記憶された複数の被検体の医用情報を用いて、後述する特性データを生成するための処理を実行する。医用情報生成装置20は、例えば、PC(Personal Computer)やワークステーション、サーバ等のコンピュータ機器によって実現される。
【0017】
医用情報処理装置30は、医用情報生成装置20によって生成された特性データに基づき、処理対象となる医用画像から特徴量を抽出する。そして、医用情報処理装置30は、抽出した特徴量に基づき、疾患判定等の診断支援処理を実行する。医用情報処理装置30は、例えば、PCやワークステーション、サーバ等のコンピュータ機器によって実現される。
【0018】
なお、
図1の構成では、医用情報生成装置20と医用情報処理装置30とを別体としたが、同一の装置(コンピュータ機器)によって実現する構成としてもよい。また、医用情報生成装置20や医用情報処理装置30は、クラウドコンピューティングを利用した、複数のコンピュータ機器(クラウド)で実現されてもよい。
【0019】
次に、上述した医用情報生成装置20及び医用情報処理装置30の構成について説明する。まず、
図3を参照して、医用情報生成装置20の構成について説明する。
【0020】
図3は、医用情報生成装置20の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、医用情報生成装置20は、入力インタフェース21と、ディスプレイ22と、通信インタフェース23と、記憶回路24と、処理回路25とを有する。入力インタフェース21、ディスプレイ22、通信インタフェース23、記憶回路24、及び処理回路25は、互いに接続される。
【0021】
入力インタフェース21は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路25に出力する。例えば、入力インタフェース21は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。
【0022】
また、入力インタフェース21は、医用情報生成装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。また、入力インタフェース21は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用情報生成装置20とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路25へ出力する電気信号の処理回路も、入力インタフェース21の例に含まれる。
【0023】
ディスプレイ22は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ22は、処理回路25による制御の下、処理回路25による処理結果を表示する。また、ディスプレイ22は、入力インタフェース21を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、ディスプレイ22は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ22は、デスクトップ型でもよいし、医用情報生成装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。
【0024】
通信インタフェース23は、ネットワークN1に接続された各種の装置と通信を行うためのインタフェースである。例えば、処理回路25は、通信インタフェース23によって、医用情報記憶装置10や医用情報処理装置30等との間で各種データの授受を行うことができる。
【0025】
記憶回路24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路24は、医用情報生成装置20に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、例えば、記憶回路24は、医用情報記憶装置10等から取得された各種情報を記憶する。また、例えば、記憶回路24は、後述する特性データ(特性マップ)を記憶する。
【0026】
処理回路25は、医用情報生成装置20の処理全体を制御する。例えば、処理回路25は、
図2に示すように、第1取得機能251と、生成機能252とを実行する。ここで、第1取得機能251は、医用情報生成装置に係る取得部の一例である。生成機能252は、医用情報生成装置に係る生成部の一例である。
【0027】
例えば、第1取得機能251及び生成機能252が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路24に記録されている。処理回路25は、各プログラムを記憶回路24から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路25は、
図2の処理回路25内に示された各機能を有することとなる。
【0028】
第1取得機能251は、医用情報記憶装置10に記憶された複数の被検体の医用画像群を処理対象とする。以下では、医用情報記憶装置10に記憶された医用画像群をサンプル画像ともいう。
【0029】
第1取得機能251は、サンプル画像に設定されたROIのデータを変換することで、当該データの特性を表した第1変換データを取得する。具体的には、第1取得機能251は、ROIのデータを構成する要素毎に第1変換データを取得する。
【0030】
ここで、変換方法は、ROIのデータの特性を抽出できるものであれば特に問わないものとする。具体的には、変換方法は、空間周波数特性を抽出するフーリエ変換等の周波数変換や、テクスチャ特性を抽出するGLCM(グレー・レベルの同時生起行列)等を用いることができる。
【0031】
例えば、変換方法として周波数変換を用いる場合、第1取得機能251は、第1変化データ及び第1周波数成分データとして、パワースペクトルを取得する。ここで、パワースペクトルは、周波数成分毎のパワースペクトル密度値(以下、スペクトル値という)を表すものである。また、変換方法としてGLCMを用いる場合、第1取得機能251は、第1変化データとして、ピクセル値の発生頻度を画素毎に取得する。なお、本実施形態では、変換方法としてフーリエ変換を用いた例について説明する。
【0032】
第1取得機能251は、ROIのデータにフーリエ変換を施すことで、当該データのパワースペクトルを取得する。具体的には、第1取得機能251は、フーリエ変換で得られたフーリエ係数とその共役複素数との積を算出することでパワースペクトルを取得する。
【0033】
なお、フーリエ変換のアルゴリズムは特に問わず、例えばDFT(Discrete Fourier Transform)やFFT(Fast Fourier Transform)等を用いることができる。FFTを用いることで、DFTと比較してパワースペクトルの導出を高速化することができる。
【0034】
また、第1取得機能251は、フーリエ変換(FFT等)を行う際に、周波数空間の中心付近に低周波成分が出現する配置となるよう、周波数空間の並び替えを行ってもよい。
【0035】
ここで、
図4は、周波数空間の並び替え動作を説明するための図である。具体的には、第1取得機能251は、
図4の左図に示すように、フーリエ変換後の周波数空間FSでは、隅部に低周波成分(L)が配置され、中央部に高周波成分(H)が配置される。
【0036】
第1取得機能251は、水平周波数iの方向と垂直周波数jの方向でそれぞれ2分割することで、周波数空間FSを、4つの小周波数空間A1~A4に区分する。そして、第1取得機能251は、
図4の右図に示すように、周波数空間FSの四隅に対応する小周波数空間A1~A4の隅部が、周波数空間FSの中心付近に位置するよう小周波数空間A1~A4の配置位置を並び替える。ここで、
図4の右図は、並び替え後の周波数空間FSを示す図である。
【0037】
上述した並び替えを行うことで、周波数空間FSの中心付近に低周波成分(L)が配置される。かかる配置とすることで、後述するサブバンドの設定を効率的に行うことができる。
【0038】
図3に戻り、生成機能252は、同種のROIから取得された第1変換データを用いて、当該第1変換データの特性を示す特性データを要素毎に生成する。具体的には、生成機能252は、同種のROIから取得されたパワースペクトル群を用いて、当該パワースペクトル群の統計的な特性を示す特性データを周波数成分毎に生成する。
【0039】
ここで、「同種のROI」とは、ROIが設定された部位が同一であること(又は類似すること)を意味する。例えば、生成機能252は、設定部位が同一(例えば肝臓組織)のROIから取得されたパワースペクトル群を、同種のROIから取得されたパワースペクトル群として処理する。
【0040】
また、生成機能252は、更なる区分条件として、設定部位が同一のROIから取得されたパワースペクトル群を、当該ROIの医用画像と関連付けて記憶された診断結果の内容に基づいて区分してもよい。例えば、生成機能252は、設定部位が同一のROIから取得されたパワースペクトル群を、診断結果が同一の(又は類似する)パワースペクトル群毎に区分する。なお、本実施形態では、症例毎に区分して処理する例を説明する。また、本実施形態では、説明の簡略化のため「陰性」と「陽性」との二つの診断結果で区分された例を説明する。
【0041】
本実施形態の生成機能252は。同種のROIから取得されたパワースペクトル群を用いて、当該パワースペクトル群の統計的な特性を表した特性データを生成する。具体的には、生成機能252は、各周波数成分(水平周波数i及び垂直周波数j)の、スペクトル値の出現頻度(又は出現確立)を表した特性データを生成する。以下、水平周波数iと垂直周波数jとで特定される周波数空間上での周波数成分の位置(ポイント)を、点P(i、j)とも表記する。
【0042】
図5は、生成機能252の動作例を説明するための図である。
図5では、設定部位が同種のROIから取得されたパワースペクトル群PSを、陰性のパワースペクトル群PSnと、陽性のパワースペクトル群PSpとに区分した例を示している。
【0043】
この場合、生成機能252は。パワースペクトル群PSnと、パワースペクトル群PSpとの各々から、スペクトル値の出現頻度を表した特性データを周波数成分毎に生成する。具体的には、生成機能252は、所定の分布モデルを用いることで、パワースペクトル群が表す周波数空間の点P(i,j)毎に特性データを生成する。
【0044】
例えば、スペクトル値の分布が正規分布に従うと仮定すると、各点P(i、j)でのスペクトル値xの出現頻度(或いは出現確立)Pi,j(x)は、下記式(1)で表すことができる。ここで、μは平均値、σ2は分散(σは標準偏差)である。
【0045】
【0046】
生成機能252は、パワースペクトル群PSnとパワースペクトル群PSpとの各々について、点P(i、j)でのスペクトル値xを上記式(1)に適用することで、点P(i、j)毎に平均値μと標準偏差σとの組を取得する。そして、生成機能252は、点P(i、j)と、当該点P(i、j)について取得した平均値μ及び標準偏差σの組とを対応付けた特性データを生成する。
【0047】
図5では、陰性のパワースペクトル群PSnから生成された特性データとして、各点P(i,j)での平均値μを周波数空間上にマッピングした特性マップMn1と、各点P(i,j)での標準偏差σを周波数空間上にマッピングした特性マップMn2とを示している。また同様に、陽性のパワースペクトル群PSpから生成された特性データとして、各点P(i,j)での平均値μを周波数空間にマッピングした特性マップMp1と、各点P(i,j)での標準偏差σを周波数空間にマッピングした特性マップMp2とを示している。
【0048】
ここで、特性マップMn1、Mp1は、平均値μの値を色の濃淡で表したものであり、色が薄い(白色に近い)ほど平均値μが大きいことを意味している。また、特性マップMn2、Mp2は、標準偏差σの値を色の濃淡で表したものであり、色が薄い(白色に近い)ほど標準偏差σが大きいことを意味している。このように、生成機能252が生成した特性データは、生成元となったパワースペクトル群、つまり同種のROIのデータの特性を統計的に表したものとなる。
【0049】
また、生成機能252は、生成した特性データを、生成元となった同種のROIや医用画像に関する情報と関連付けて記憶回路24や医用情報処理装置30の記憶回路34等に記憶する。具体的には、生成機能252は、生成した特性データを、ROIの設定部位や診断結果等の情報と関連付けて記憶する。
【0050】
なお、上述の例では、確立分布モデルとして正規分布を用いたが、これに限らず、他の確立分布モデルを基にして平均値μ及び標準偏差σを求めてもよい。例えば、生成機能252は、スペクトル値の分布がt分布やf分布に従うものとして平均値μと標準偏差σとを求めてもよい。また、確立分布モデルは、実際のスペクトル値の分布に近いものを使用することが好ましい。実際の分布に近い確率分布モデルを使用することで、後述する有効周波数を精度よく決めることができる。
【0051】
また、上記の例では、確立分布モデルを用いて各点P(i、j)でのスペクトル値xの分布特性を示したが、これに限らず、ヒストグラムを用いて表してもよい。この場合、例えば、ブートストラップ法やカーネル密度推定(KDE:kernel Density Estimation)等の公知の技術を用いることで、各点P(i、j)でのスペクトル値の出現頻度に基づいたヒストグラムを導出することができる。
【0052】
次に、医用情報処理装置30の構成について説明する。
図6は、医用情報処理装置30の構成の一例を示す図である。
図6に示すように、医用情報処理装置30は、入力インタフェース31と、ディスプレイ32と、通信インタフェース33と、記憶回路34と、処理回路35とを有する。入力インタフェース31、ディスプレイ32、通信インタフェース33、記憶回路34、及び処理回路35は、互いに接続される。
【0053】
入力インタフェース31は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路35に出力する。例えば、入力インタフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。
【0054】
また、入力インタフェース31は、医用情報処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。また、入力インタフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用情報処理装置30とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路35へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース31の例に含まれる。
【0055】
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、処理回路25による制御の下、処理回路35による処理結果を表示する。また、ディスプレイ32は、入力インタフェース31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUIを表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。ディスプレイ32は、デスクトップ型でもよいし、医用情報処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。
【0056】
通信インタフェース33は、ネットワークN1に接続された各種の装置と通信を行うためのインタフェースである。例えば、処理回路35は、通信インタフェース33によって、医用情報生成装置20等との間で各種データの授受を行うことができる。
【0057】
記憶回路34は、例えばRAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路34は、医用情報処理装置30に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、例えば、記憶回路34は、医用情報生成装置20で生成された特性データ等を記憶する。つまり、記憶回路34は、記憶部の一例である。
【0058】
処理回路35は、医用情報処理装置30の処理全体を制御する。例えば、処理回路35は、
図6に示すように、第2取得機能351と、判定機能352と、決定機能353と、サブバンド設定機能354と、抽出機能355と、診断支援機能356とを実行する。ここで、第2取得機能351は、取得部の一例である。判定機能352は、判定部の一例である。決定機能353は、決定部の一例である。サブバンド設定機能354は、設定部の一例である。抽出機能355は、抽出部の一例である。診断支援機能356は、診断支援部の一例である。
【0059】
例えば、第2取得機能351、判定機能352、決定機能353、サブバンド設定機能354、抽出機能355、及び診断支援機能356が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路34に記録されている。処理回路35は、各プログラムを記憶回路34から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路35は、
図6の処理回路35内に示された各機能を有することとなる。
【0060】
第2取得機能351は、処理対象の医用画像を変換することで、第2変換データを取得する。具体的には、第2取得機能351は、第1取得機能251と同様の周波数変換を実行することで、第2周波数成分データ(パワースペクトル)を取得する。
【0061】
ここで、処理対象の医用画像は、診断対象の被検体を撮像した医用画像を意味する。処理対象の医用画像は、例えば、モダリティ(X線CT装置)から入力される構成としてもよいし、医用情報記憶装置10等の外部装置から取得する形態としてもよい。
【0062】
また、処理対象の医用画像は、被検体を撮像した医用画像全体であってもよいし、医用画像に設定されたROIのデータであってよい。本実施形態では、処理対象の医用画像は、ROIのデータとして説明を進める。以下では、処理対象の医用画像に設定されたROIを、処理対象のROIともいう。
【0063】
なお、処理対象の医用画像に対するROIの設定は、医師等の医療従事者によって行われるものとするが、これに限らず、第2取得機能351等の処理回路35が有する機能により自動で設定する構成としてもよい。また、処理対象の医用画像に設定されるROIのサイズや形状は、サンプル画像に設定されたROIと等しくすることが好ましい。
【0064】
第2取得機能351は、処理対象のROIのデータにフーリエ変換を施すことで、当該データのパワースペクトルを取得する。また、第2取得機能351は、第1取得機能251と同様、フーリエ変換を行う際に、周波数空間の中心付近に低周波成分が出現する配置となるよう、周波数空間の並び替えを行ってもよい。
【0065】
判定機能352は、医用情報生成装置20で生成された特性データに基づき、第2取得機能351が取得した第2変換データの各要素から、特性データの特性に類似した変換データ値を有する要素を判定する。
【0066】
具体的には、判定機能352は、医用情報生成装置20の記憶回路24から類似度判定に使用する特性データを読み出す。ここで、判定機能352は、全ての特性データを読み出してもよいし、一部の特性データを読み出してもよい。後者の場合、処理対象のROIと同種のROIから導出された特徴データを読み出すことが好ましい。例えば、判定機能352は、処理対象のROIと設定部位と同じ(又は類似する)ROIから導出された、陰性の特徴データと陽性の特徴データとを読み出す。
【0067】
次いで、判定機能352は、第2取得機能351で取得されたパワースペクトルの各点P(i,j)のスペクトル値と、特性データに規定された対応する点でのスペクトル値の分布の傾向とを比較し、その類似性を判定する。
【0068】
決定機能353は、判定機能352の判定結果に基づいて、第2取得機能351で取得された第2変換データ(パワースペクトル)のうち、処理対象領域となる周波数成分を有効周波数として決定する。
【0069】
以下、
図7を参照して、判定機能352及び決定機能353の動作例について説明する。
図7は、判定機能352及び決定機能353の動作例を説明するための図である。
【0070】
まず、第2取得機能351によって取得されたパワースペクトルが、
図7(a)に示す対象マップTMの状態であったとする。ここで、対象マップTMは、パワースペクトルの各点P(i、j)でのスペクトル値を色の濃淡で表したものである。なお、色が薄い(白色に近い)ほどスペクトル値が大きいことを意味する。
【0071】
判定機能352は、処理対象のROIと同種のROIから導出された特性データを医用情報生成装置20の記憶回路24から読み出す。そして、判定機能352は、読み出した特性データに基づき、第2取得機能351によって取得されたパワースペクトルの各点P(i,j)のスペクトル値について類似性の判定を行う。
【0072】
例えば、或る点P(i,j)についての陰性の特性データが、
図7(b)に示す分布BnP(i,j)であり、陽性の特性データが、
図7(c)に示す分布BpP(i,j)であったとする。ここで、分布BnP(i,j)及び分布BpP(i,j)の横軸はスペクトル値を、縦軸は出現頻度(又は出現確立)を表す。なお、分布BnP(i,j)及び分布BpP(i,j)は、特性データとして保持された、点P(i、j)での平均値μと標準偏差σとを統計モデル(正規分布)に適用することで導出されるものである。
【0073】
この場合、判定機能352は、対象マップTMでの点P(i、j)のスペクトル値xを、分布BnP(i,j)及び分布BpP(i,j)のそれぞれにプロットすることで、そのスペクトル値xの出現頻度をそれぞれ特定する。次いで、判定機能352は、特定した出現頻度に基づいて、対象マップTMでの点P(i,j)のスペクトル値xと、分布BnP(i,j)及び分布BpP(i,j)との類似性の有無を二値(1/0)で判定する。ここで、類似性の判定方法は任意に設定することが可能である。一例として、判定機能352は、対象マップTMのスペクトル値xが、図中矢印で示した、平均値(中央値)から68%の範囲(平均値±1σの範囲)に含まれる場合に類似性ありと判定する。
【0074】
例えば、分布BnP(i,j)では、対象マップTMのスペクトル値xは68%の範囲に含まれる。この場合、判定機能352は、分布BnP(i,j)の特性、つまり陰性の特性データの特性に類似していると判定する。一方、分布BpP(i,j)では、対象マップTMのスペクトル値xは68%の範囲に含まれない。この場合、判定機能352は、分布BpP(i,j)の特性、つまり陽性の特性データの特性に類似していないと判定する。また、判定機能352は、対象マップTM上の全ての点について上記の処理を実行することで、各点P(i、j)のスペクトル値x毎に類似性の有無を判定する。
【0075】
図7(d)の類似性マップTMnは、対象マップTMの各点P(i,j)について、分布BnP(i,j)との類似性の判定結果を表したものである。ここでは、類似すると判定された点を白色、類似しないと判定された点を黒色で示している。また、同様に、類似性マップTMpは、対象マップTMの各点P(i,j)について、分布BpP(i,j)との類似性の判定結果を表したものである。なお、類似性マップTMn及び類似性マップTMpは、マップデータの一例である。
【0076】
また、判定機能352は、
図7(d)の類似性マップTMnと
図7(e)の屡次性マップTMpとの対応する各点で、判定結果の論理和(OR)を取ることで、
図7(f)に示す合成マップTMnpを生成する。例えば、類似性を有する白色の点を真(1)、類似性を有していない黒色の点を偽(0)とした場合、類似性マップTMn及び類似性マップTMpの何れか又は両方で真となる点が、合成マップTMnp上でも真となる。なお、合成マップTMnpは、マップデータの一例である。
【0077】
ここで、合成マップTMnp上で真(1)となる点のスペクトル値は、少なくとも陰性の特性データ及び陽性の特性データの何れかと類似性を有するものとなる。一方で、合成マップTMnp上で偽(0)となる点のスペクトル値は、陰性の特性データ及び陽性の特性データの何れとも類似性を有していないものとなる。
【0078】
そこで、決定機能353は、合成マップTMnp上で真となった点に対応する周波数成分を、有効周波数として決定する。ここで、特性データの生成元となったROIのデータが、非対象組織を含んでいない場合、或いは非対象組織を少量しか含んでいない場合、その特性データと類似性を有すると判定された周波数成分のスペクトル値は、対象組織の特徴を表すものとなる。すなわち、決定機能353は、第2取得機能351によって取得されたパワースペクトルの周波数空間から、対象組織の特徴を表す周波数成分の領域を処理対象領域として決定する。
【0079】
図8は、対象マップTM(TM1、TM2、TM3)と、合成マップTMnp(TM1np、TM2np、TM3np)との各組を比較可能に示した図である。なお、
図8に示す、対象マップTMは、異なる部位に設定されたROIから得られたものである。
【0080】
ここで、
図8の(a)の列は、処理対象のROIに非対象組織がほぼ含まれていない状態の対象マップTM1と合成マップTM1npとを示している。この場合は、合成マップTM1npのほぼ全域が、有効周波数帯を示す白色の領域で覆われることになる。
【0081】
また、
図8の(b)の例は、処理対象のROIに非対象組織が少量含まれている状態の対象マップTM2と合成マップTM2npとを示している。この場合、合成マップTM2np内には、非有効周波数を示す黒色の点が少量出現することになる。
【0082】
また、
図8の(c)の列は、処理対象のROIに非対象組織が多く含まれている状態の対象マップTM3と合成マップTM3npとを示している。この場合、合成マップTM3np内には、非有効周波数を示す黒色の点が多く出現することになる。
【0083】
このように、処理対象のROIに含まれた非対象組織の量に応じて、合成マップTMnpに出現する白色の点と黒色の点との割合が変動することになる。
【0084】
なお、決定機能353は、合成マップTMnp上において、白色の点が占める割合が第1閾値未満となる場合、処理対象のROIが疾患判定に使用されないよう抑制してもよい。ここで、第1閾値は、任意に設定可能とするが、白色の点が占める割合が、黒色の点が占める割合よりも小さいことを示す値とすることが好ましい。例えば、決定機能353は、
図8に示した合成マップTM3npの場合、対象マップTM3に対応するROIのデータが疾患判定に使用されないよう、後述する診断支援機能356の動作を抑制したり、警告メッセージをディスプレイ32に表示させたりしてもよい。
【0085】
また、決定機能353は、合成マップTMnp上の各点において、白色の点が占める割合が第2閾値(但し、第2閾値>第1閾値)以上となる場合、処理対象のROIの全域を疾患判定に使用する制御を行ってもよい。ここで、第2閾値は、任意に設定可能とするが、白色の点が占める割合が黒色の点が占める割合よりもはるかに大きな値とすることが好ましい。例えば、決定機能353は、
図8に示した合成マップTM1npの場合、対象マップTM1の全周波数成分を有効周波数に決定してもよい。
【0086】
図6に戻り、サブバンド設定機能354は、第2取得機能351で取得されたパワースペクトルの周波数帯域を、複数の周波数範囲(サブバンド)に区分する。ここで、サブバンドの区分範囲は予め設定されているものとする。具体的には、サブバンド設定機能354は、パワースペクトルの周波数空間に、所定の周波数範囲を規定したサブバンドを一又は複数個設定する。
【0087】
例えば、第2取得機能351によるフーリエ変換時に、上述した周波数空間の並び替えが行われている場合、周波数空間の中心から縁部にかけて低周波成分から高周波成分は配置されることになる。この場合、サブバンド設定機能354は、例えば周波数空間の中心から同心円状に小領域を複数設定することで、周波数範囲の異なるサブバンドを複数設定することができる。なお、サブバンドの設定数(区分数)は特に問わず、任意に設定可能である。
【0088】
抽出機能355は、決定機能353の処理結果に基づき、第2取得機能351で取得されたパワースペクトルから、有効周波数とされた周波数成分のスペクトル値を特徴量として抽出する。また、抽出機能355は、サブバンド設定機能354が設定したサブバンドに基づき、有効周波数とされた周波数成分の特徴量をサブバンド毎に抽出する。
【0089】
以下、
図9を参照して、サブバンド設定機能354及び抽出機能355の動作例について説明する。
図9は、サブバンド設定機能354及び抽出機能355の動作例を説明するための図である。
【0090】
まず、決定機能353により導出された合成マップTMnpが、
図9(a)に示す状態にあるものとする。また、サブバンド設定機能354により設定された、周波数空間上でのサブバンドが、
図9(b)に示すサブバンドマップSBMの状態にあるものとする。なお、
図9(b)では、周波数空間の中心を基準に設定した3つの同心円により、3つのサブバンドSB1、SB2、SB3に区分した例を示している。
【0091】
この場合、抽出機能355は、合成マップTMnpとサブバンドマップSBMとに基づき、第2取得機能351によって取得されたパワースペクトルの周波数空間から、有効周波数とされた点のスペクトル値をサブバンド毎に抽出する。
【0092】
具体的には、抽出機能355は、合成マップTMnpにサブバンドマップSBMを合成することで、
図9(c)に示す抽出用マップTMnp+SBMを生成する。そして、抽出機能355は、抽出用マップTMnp+SBMに基づいて、
図9(d)に示す対象マップTMから、有効周波数とされた白色の点(領域)のスペクトル値をサブバンド毎に抽出する。ここで、抽出機能355が抽出するスペクトル値は、処理対象のROIに含まれた対象組織の特徴を表す特徴量となる。
【0093】
図3に戻り、診断支援機能356は、抽出機能355が抽出した特徴量に基づいて、疾患名を判定(推測)する処理を行う。具体的には、診断支援機能356は、抽出機能355によって抽出されたサブバンド毎のスペクトル値の一部又は全てを分類器に入力することで、疾患名等の推測結果を診断支援情報として出力する。例えば。診断支援機能356は、診断支援情報をディスプレイ32等に出力する。
【0094】
なお、分類器は特に問わず、公知の技術を用いることが可能である。例えば、分類器は、SVM(Support Vector Machine)やLogistic regression、単純Bayes分類器、決定木等を用いることができる。
【0095】
また、診断支援機能356は、抽出機能355が抽出した特徴量以外の他の情報を、分類器に入力してもよい。例えば、抽出機能355は、他の情報として、処理対象となった医用画像に関係する被検体の情報(例えば、年齢、性別、既往歴等)を入力してもよい。
【0096】
以下、上述した医用情報生成装置20及び医用情報処理装置30の動作例について説明する。
【0097】
図10は、医用情報生成装置20が実行する処理の一例を示すフローチャートである。まず、第1取得機能251は、サンプル画像の各々に設定されたROIのデータからパワースペクトルを取得する(ステップS11)。
【0098】
続いて、生成機能252は、ステップS11で取得されたパワースペクトルのうち、同種のROIから取得されたパワースペクトルに基づいて、当該パワースペクトルの特性を表した特性データを生成する(ステップS12)。なお、生成機能252は、同種のROIから取得されたパワースペクトルを、更に診断結果(症例)毎に区分することで、診断結果毎の特性データを生成する形態としてもよい。
【0099】
続いて、生成機能252は、生成した特性データを、記憶回路24や医用情報処理装置30の記憶回路34に記憶し(ステップS13)、本処理を終了する。
【0100】
図11は、医用情報処理装置30が実行する処理の一例を示すフローチャートである。まず、第2取得機能351は、処理対象となる医用画像(ROI)からパワースペクトルを取得する(ステップS21)。なお、第2取得機能351は、パワースペクトルを取得する際に、上述した周波数空間の並び替えを行ってもよい。
【0101】
続いて、判定機能352、処理対象のROIと同種のROIから生成された特性データを医用情報生成装置20等から読み出す(ステップS22)。判定機能352は、周波数空間の点P(i,j)毎に、ステップS21で取得されたパワースペクトルのスペクトル値と、ステップS22で読み出した特性データの特性とを比較する(ステップS23)。
【0102】
続いて、判定機能352は、ステップS23の比較結果に基づき、ステップS21で取得されたパワースペクトルのスペクトル値と、ステップS22で読み出した特性データとの類似性を点P(i,j)毎に判定する(ステップS24)。そして、決定機能353は、ステップS24の判定結果に基づき、類似性ありと判定された点P(i,j)毎の周波数成分を有効周波数に決定する(ステップS25)。
【0103】
続いて、サブバンド設定機能354は、ステップS21で取得されたパワースペクトルの周波数空間を複数のサブバンドに区分する(ステップS26)。次いで、抽出機能355は、ステップS21で取得されたパワースペクトルから、有効周波数のスペクトル値をサブバンド毎に抽出する(ステップS27)。
【0104】
そして、診断支援機能356は、ステップS27で抽出されたサブバンド毎のスペクトル値に基づいて、処理対象となった被検体の疾患等を判定(推定)し(ステップS28)、本処理を終了する。
【0105】
以上述べた様に、本実施形態に係る医用情報処理装置30は、処理対象の医用画像を周波数変換してパワースペクトルを取得し、パワースペクトルが表す周波数空間のポイント毎に、当該ポイントのスペクトル値と、サンプル画像に設定されたROI内のデータを周波数変換して得られた複数のパワースペクトルが表す周波数空間の点P(i,j)毎に、当該点P(i,j)に出現するスペクトル値の傾向を示した特性データとの類似性を判定し、その判定結果に基づいて、処理対象の医用画像から取得されたパワースペクトルが表す周波数空間の中から処理対象の領域を決定する。
【0106】
これにより、医用情報処理装置30によれば、処理対象の医用画像(ROI)に対象組織以外の非対称組織が含まれる場合であっても、サンプル画像から生成された特性データとの類似性に基づき、パワースペクトルが表す周波数空間の中から、対象組織に対応する周波数成分の領域を、処理対象の領域として決定することができる。したがって、医用情報処理装置30によれば、決定された処理対象の領域からスペクトル値を抽出することで、対象組織の特徴を表したデータを効率的に抽出することができる。
【0107】
なお、上述した実施形態では、医用情報生成装置20や医用情報処理装置30が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0108】
(変形例1)
上述の実施形態では、陰性の類似性マップTMnと陽性の類似性マップTMpとの論理和を取ることで得られた合成マップTMnpをそのまま用いて、有効周波数を決定する形態とした。本変形例では、所定の処理を施した合成マップTMnpを用いて有効周波数を決定する形態を説明する。
【0109】
図12は、本変形例に係る医用情報処理装置30の動作例を説明するための図である。まず、決定機能353は、
図7で説明した陰性の類似性マップTMnと陽性の類似性マップTMpとの論理和を取ることで、
図12の上段に示す合成マップTMnpを導出したとする。
【0110】
続いて、決定機能353は、合成マップTMnpに対し、白色の点と黒色の点との境界をぼかすためのぼかし処理を実行する。ぼかし処理としては、例えば、ガウシアンフィルタや移動平均フィルタ、ローパスフィルタ等の各種フィルタ処理を用いることができる。ぼかし処理により、白色(1)と黒色(0)との二値(1ビット)で表されていた各点のピクセル値は、例えば256ビット等に多値化され、
図12の中断に示す中間合成マップTMbが得られる。
【0111】
続いて、決定機能353は、中間合成マップTMbの各点のピクセル値に対して閾値処理を行うことで、当該ピクセル値を再び二値化する。ここで、閾値処理の閾値は任意に設定可能であり、ぼかし処理の分解能に応じて設定することができる。閾値処理により、中間合成マップTMbは、例えば、
図12の下段に示す最終合成マップTMnp’の状態となる。そして、決定機能353は、上述した実施形態と同様の処理を行うことで、最終合成マップTMnp’に基づき有効周波数を決定する。
【0112】
一般的に、各種のモダリティで取得される医用画像には、機器や画像の再構成方法等に依存したノイズが含まれる。そのため、処理対象の医用画像から取得されるパワースペクトルにも、上記のノイズが含まれることになる。そのため、例えば、パワースペクトルに含まれたノイズの影響により、合成マップTMnpにおいて、「1」、「0」のピクセル値が反転した点が局所的に発生する可能性がある。
【0113】
このような場合、上記のぼかし処理と閾値処理とを行うことで、ノイズの影響で反転したピクセル値を修正できる可能性がある。そのため、本変形例2に係る医用情報処理装置30では、ノイズの影響を低減化することができるため、類似性の判定精度や疾患判定の精度の更なる向上を図ることができる。
【0114】
(変形例2)
上述の実施形態では、陰性の分布BnP(i,j)と陽性の分布BpP(i,j)とから二値の類似性マップTMn、TMpを導出する形態を説明したが、これに限定されるものではない。本変形例では、陰性の分布BnP(i,j)と陽性の分布BpP(i,j)とから連続値(多値)の類似性マップを導出する形態について説明する。
【0115】
図13は、変形例2に係る医用情報処理装置30の動作例を説明するための図である。なお、本変形例では、スペクトル値の分布が正規分布に従うと仮定している。
【0116】
まず、本変形例の判定機能352は、第2取得機能351が取得したパワースペクトルの各点P(i、j)のスペクトル値xついて、対応する点の陰性及び陽性の分布からZスコアを算出する。例えば、陰性の分布BnP(i,j)から算出されるZ値をZn(i,j)、陽性の分布BpP(i,j)から算出されるZスコアをZp(i、j)とすると、Zn(i,j)及びZp(i、j)は、下記式(2)、(3)を用いて算出することできる。
【0117】
【0118】
上記式(2)において、μnは点P(i,j)に対応する陰性の分布BnP(i,j)の平均値、σnは点P(i、j)に対応する陰性の分布BnP(i,j)の標準偏差である。また、上記式(3)において、μpは点P(i、j)に対応する陽性の分布BpP(i,j)の平均値、σpは点P(i、j)に対応する陽性の分布BpP(i,j)の標準偏差である。
【0119】
ここで、Zスコアは、点P(i、j)に関するパワースペクトルのスペクトル値xが、陰性又は陽性の分布の中心値から標準偏差の何倍離れているかを示す値となる。つまり、Zスコアは、パワースペクトルのスペクトル値が、陰性又は陽性の分布の傾向とどの程度類似しているかを示す指標となる。具体的には、Zスコアの逆数が類似度に対応する。
【0120】
判定機能352は、第2取得機能351が取得したパワースペクトルの各点P(i,j)のスペクトル値xについて、陰性と陽性のZスコアをそれぞれ算出することで、周波数空間の点P(i、j)にZスコアを関連付けたマップ(以下、Zマップともいう)を生成する。
【0121】
図13(a)は、陰性の特徴データに基づき導出されたZマップZMnを、
図13(b)は、陽性の特徴データに基づき導出されたZマップZMpを示している。なお、ZマップZMn及びZマップZMpでは、各点P(i,j)のZスコアを色の濃淡で表している。
【0122】
また、判定機能352は、ZマップZMnとZマップZMpとを合成することで、
図13(c)に示す合成ZマップZMnpを生成する。具体的には、判定機能352は、ZマップZMnとZマップZMpとの対応する各点P(i、j)について、Z
n(i,j)とZ
p(i、j)との平均を算出することで、合成ZマップZMnpを生成する。
【0123】
そして、判定機能352は、合成ZマップZMnpの各点P(i,j)のピクセル値に対して閾値処理を行うことで、白色の「1」と黒色の「0」とに二値化した合成ZマップZMnpを導出する。この場合、決定機能353は、上記した実施形態や変形例1と同様に、白色の点に対応する周波数成分を有効周波数に決定する。
【0124】
また、判定機能352は、合成ZマップZMnpから、重み(重み係数)を規定した重みマップを生成してもよい。この場合、判定機能352は、合成ZマップZMnpの点P(i、j)のピクセル値に対し、例えば下記式(4)を用いることで、重みw(i,j)を導出する。ここで、athresは、「2」等の任意の閾値である。また。ZMnp(i、j)は、点P(i、j)のピクセル値を意味する。
【0125】
【0126】
上記式(4)では、ピクセル値の絶対値がathres以上となる場合に、陰性及び陽性の特性データとも類似性がないと判定されて、重みw(i,j)に0が設定される。また、ピクセル値の絶対値がathresよりも小さい場合は、陰性又は陽性の特性データの何れか(又は両方)と類似性があると判断され、ピクセル値に応じた重みw(i,j)が設定される。
【0127】
そして、決定機能353は、合成ZマップZMnpの各点P(i、j)のピクセル値に対して上記式(4)を適用し、各点P(i、j)の重みw(i,j)を算出することで、
図13(e)に示す重みマップWMnpを導出する。なお、重みマップWMnpでは、各点の重みw(i,j)を色の濃淡で表している。
【0128】
この場合、決定機能353は、重みマップWMnpに基づき、重みw(i,j)がセットされた点P(i,j)の周波数成分を有効周波数として決定する。また、抽出機能355は、第2取得機能351で取得されたパワースペクトルから、有効周波数とされた周波数成分のスペクトル値に、対応する点(有効周波数)の重みw(i,j)を乗算した値を特徴量として抽出する。
【0129】
このように、本変形例の医用情報処理装置30では、有効周波数のスペクトル値に重みw(i,j)を加味して抽出する。これにより、例えば、有効周波数の中でも、非対象組織の影響が大きいものについては、疾患判定に寄与する影響度を低下させることができる。したがって、本変形例の医用情報処理装置30では。処理対象の医用画像(ROI)から対象組織の特徴量を効率的に抽出することができるとともに、疾患判定の精度向上を図ることができる。
【0130】
なお、本変形例では、Zスコアを用いて多値のマップを生成する形態としてが、正規分布以外の分布モデルを用いる場合には、スペクトル値の出現頻度やp値等の他の指標値を用いて多値のマップを生成してもよい。
【0131】
(変形例3)
上述の実施形態では、陰性の類似度マップTMnと陽性の類似度マップTMpとを合成する形態としたが、合成のタイミングはこれに限らず、特性データの段階で合成してもよい。以下、本変形例では、特性データの段階で合成する形態について説明する。
【0132】
図14は、変形例3に係る医用情報処理装置30の動作例を説明するための図である。
図14(a)に示す陰性の分布BnP(i,j)と、
図14(b)に示す陽性の分布BpP(i,j)とは、
図7(b)、(c)で説明した分布を示すものである。
【0133】
本変形例の判定機能352は、類似性の判定に先駆けて、分布BnP(i,j)と、分布BpP(i,j)とを合成し、
図14(c)に示す合成分布BnpP(i,j)を生成する。具体的には、判定機能352は、分布BnP(i,j)と分布BpP(i,j)とで、対応するスペクトル値の出現頻度を加算することで、合成分布BnpP(i,j)を生成する。
【0134】
続いて、判定機能352は、第2取得機能351が取得したパワースペクトルの点P(i、j)のスペクトルとxを合成分布BnpP(i,j)上にプロットすることで、出力頻度を特定する。以降の処理は、上述した実施形態と同様である。
【0135】
これにより、処理対象の医用画像(ROI)から対象組織の特徴量を効率的に抽出することができるため、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0136】
(変形例4)
上述の実施形態では、陰性と陽性との診断結果について特性データを生成する形態を説明した。しかしながら、この形態に限定されるものではない。例えば、ROIの設定部位が同様で且つ複数の症例が混在したパワースペクトル群から特性データを生成し、当該特性データを使用して特徴量を抽出する形態としてもよい。この場合、上述した実施形態と比較し、特徴量の抽出に係る工程数を減らすことができるため、処理の効率化を図ることができる。
【0137】
(変形例5)
上述の実施形態では、医用画像に設定されるROIのサイズや形状は特に問わないものとするが、以下の点を考慮したROIを設定することで更なる処理の効率化を図ることができる。
【0138】
例えば、ROIの形状は正方形等の矩形としてもよい。ROIの形状を矩形とする場合、ROIのサイズを32ピクセル×32ピクセル等、2の累乗とすることで、後述する医用情報生成装置20等において、ROI内のデータをFFTする際の利便性を向上させることができる.また、ROIのサイズを2の累乗以外のサイズとした場合であっても、ROIのデータに適当な値をパディングすることで2の累乗にサイズを調整し、FFTを行う構成としてもよい。
【0139】
ROIの形状は円形等としてもよい。この場合、血管等の非対象組織を回避してROIを設定しやすいという利点が挙げられる。なお、円形のROIをFFTで処理する場合には、円外の領域を適当なデータで満たすことで、2の累乗のサイズの正方形状に成形した後、FFTを行う構成とすればよい。
【0140】
また、ROIのサイズ(ピクセル単位)は、当該ROIが設定された医用画像の1ピクセルあたりの実空間上の長さに応じて変更することが好ましい。具体的には、全ての医用画像で実空間に換算した際のROIのサイズを略同等とすることが好ましい。
【0141】
例えば、i番目の医用画像の1ピクセル当たりの実空間上の長さがliであり、実空間上におけるROIの1辺の長さをLとする場合、ROIの1辺のピクセル数Nは、下記式(5)で表される。
【0142】
【0143】
上記式(5)に従ってROIの1辺のピクセル数を決めることで、全ての医用画像で実空間に換算した際のROIのサイズを一定とすることができる。これにより、撮像時の1ピクセル当たりの長さの違いによるパワースペクトルのバラつきを抑えることができるため、類似判定の精度を向上させることができるとともに、疾患判定の精度を向上させることができる。
【0144】
なお、上述した実施形態(変形例)では、医用情報生成装置20及び医用情報処理装置30が備える機能構成を、処理回路25及び処理回路35によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限らないものとする。例えば、明細書における機能構成は、ハードウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0145】
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0146】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0147】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像から対象組織の特徴を表したデータを効率的に抽出することができる。
【0148】
いくつかの実施形態(変形例)を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0149】
1 医用情報処理システム
10 医用情報記憶装置
20 医用情報生成装置
30 医用情報処理装置
251 第1取得機能
252 生成機能
351 第2取得機能
352 判定機能
353 決定機能
354 サブバンド設定機能
355 抽出機能
356 診断支援機能