(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】像加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240805BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240805BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240805BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 530
H02M3/28 H
H05B3/00 335
H05B3/00 310D
(21)【出願番号】P 2020133163
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】又吉 康雅
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠二
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-217794(JP,A)
【文献】特開2013-61900(JP,A)
【文献】特開2020-8660(JP,A)
【文献】特開2016-212256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
H02M 3/28
H05B 3/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着のトナー画像を記録材に定着するための像加熱装置であって、
ヒータと、
交流電源からの電力を前記ヒータに供給する導通状態、又は、前記ヒータへの電力の供給を遮断する非導通状態となるスイッチング素子と、
前記交流電源の
交流の周期に応じた
一制御周期
毎に前記スイッチング素子の前記導通状態又は前記非導通状態を
切り替えて前記ヒータに供給する電力を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記
交流の半周期内における前記ヒータに電力を供給する期間を少なくとも2つに分割して前記ヒータに電力を供給するように前記スイッチング素子の前記導通状態又は前記非導通状態を制御する
ものであり、前記ヒータに電力を供給する期間を、第1の期間と前記第1の期間よりも長い第2の期間とに分割し、前記第1の期間を前記交流電源の1周期の1/6000から1/40の間の長さとすることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の期間において、前記スイッチング素子を第1の時間前記導通状態とする制御を1回以上実施することを特徴とする請求項
1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の期間において、前記スイッチング素子を前記導通状態とする第1の時間を変化させることを特徴とする請求項
1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記ヒータの温度を検知する温度検知手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記ヒータに供給する第1の電力を求め、求めた前記第1の電力と前記第1の期間に供給される電力とに基づいて前記第2の期間を決定することを特徴とする請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記交流電源のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段を備え、
前記制御手段は、前記ゼロクロス検知手段の検知結果に基づいて前記第1の期間及び前記第2の期間を制御することを特徴とする請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、前記ヒータに直列に接続された電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記スイッチング素子は、双方向サイリスタであることを特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項8】
前記ヒータに直列に接続された第1の双方向サイリスタと、
前記第1の双方向サイリスタに直列に接続されたコンデンサと、
直列に接続された前記第1の双方向サイリスタ及び前記コンデンサに並列に接続された第2の双方向サイリスタと、
を備え、
前記制御手段は、前記第1の期間において前記ヒータに電力を供給する際には前記第1の双方向サイリスタを用いて制御し、前記第2の期間において前記ヒータに電力を供給する際には前記第2の双方向サイリスタを用いて制御することを特徴とする請求項
7に記載の像加熱装置。
【請求項9】
前記交流電源に接続された電源を備え、
前記制御手段は、前記第2の期間が前記電源に電流が流れる期間と重ならないように前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項
1から請求項
8のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項10】
前記像加熱装置は、前記ヒータが内部空間に配置される筒状のフィルムと、前記フィルムの外周面に接触しており前記フィルムを介して前記ヒータと共に記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧ローラと、を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項11】
記録材に未定着のトナー画像を形成する画像形成手段と、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の像加熱装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像加熱装置及び画像形成装置に関し、特に、像加熱装置を画像定着手段として具備した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の像加熱装置は、電子写真プロセスなどの画像形成手段により転写紙上に形成された未定着の画像(トナー像)を転写紙上に定着させるものであり、例えばセラミックヒータを代表とするヒータを熱源とするフィルム加熱式が知られている。一般的に、ヒータは双方向サイリスタ(以下、トライアックという)等のスイッチング素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源により電力が供給される。高出力のヒータに電力を供給し温度制御を行う際には、制御の応答性を早くするために位相制御を行う場合が多い。一方、高出力、つまり、抵抗値の低いヒータを位相制御する場合、高調波電流が大きくなる。この対策として、高調波電流が大きくなる原因となっている、単位時間当たりの急峻な電流変化を緩やかにする方法が考えられており、例えば特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように、急峻な電流変化を緩やかにすると、スイッチング素子が発熱するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、スイッチング素子への影響を抑制しつつ、高調波電流を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0007】
(1)未定着のトナー画像を記録材に定着するための像加熱装置であって、ヒータと、交流電源からの電力を前記ヒータに供給する導通状態、又は、前記ヒータへの電力の供給を遮断する非導通状態となるスイッチング素子と、前記交流電源の交流の周期に応じた一制御周期毎に前記スイッチング素子の前記導通状態又は前記非導通状態を切り替えて前記ヒータに供給する電力を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記交流の半周期内における前記ヒータに電力を供給する期間を少なくとも2つに分割して前記ヒータに電力を供給するように前記スイッチング素子の前記導通状態又は前記非導通状態を制御するものであり、前記ヒータに電力を供給する期間を、第1の期間と前記第1の期間よりも長い第2の期間とに分割し、前記第1の期間を前記交流電源の1周期の1/6000から1/40の間の長さとすることを特徴とする像加熱装置。
(2)記録材に未定着のトナー画像を形成する画像形成手段と、前記(1)に記載の像加熱装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スイッチング素子への影響を抑制しつつ、高調波電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施例1のFETを用いたヒータ制御回路の構成図
【
図4】実施例1のヒータ電流波形と制御信号を示す図
【
図5】実施例1のヒータ電流波形と制御信号を示す図
【
図6】実施例1を実施しなかった場合のヒータ電流波形と制御信号を示す図
【
図7】実施例1の高調波電流の測定結果を示すグラフ
【
図9】実施例2のヒータ電流波形と制御信号を示す図、高調波電流の測定結果を示すグラフ
【
図10】実施例3のトライアックを用いたヒータ制御回路の構成図
【
図11】実施例3のヒータ電流波形と制御信号を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。なお、以下に示す実施例は一例であって、この発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0012】
[画像形成装置]
図1は電子写真記録技術を用いた画像形成装置100の断面図である。プリント信号が発生すると、画像情報に応じて変調されたレーザ光をスキャナユニット21が出射し、帯電ローラ16によって所定の極性に帯電された感光ドラム19を走査する。これにより感光ドラム19には静電潜像が形成される。この静電潜像に対して現像器17からトナーが供給され、感光ドラム19上に画像情報に応じたトナー画像が形成される。一方、給紙カセット11に積載された記録紙Pは、ピックアップローラ12によって一枚ずつ給紙され、ローラ13によってレジストレーションローラ(以下、レジストローラという)14に向けて搬送される。さらに記録紙Pは、感光ドラム19上のトナー画像が感光ドラム19と転写ローラ20とで形成される転写位置に到達するタイミングに合わせて、レジストローラ14から転写位置へ搬送される。記録紙Pが転写位置を通過する過程で感光ドラム19上のトナー画像は記録紙Pに転写される。
【0013】
その後、記録紙Pは像加熱装置200にあるヒータ201で加熱されて未定着のトナー画像が記録紙Pに加熱定着される。定着済みのトナー画像を担持する記録紙Pは、ローラ26、27によって画像形成装置100上部のトレイに排出される。なお、クリーナ18は感光ドラム19を清掃する。給紙トレイ(手差しトレイ)28は記録紙Pのサイズに応じて幅の調整が可能な一対の記録紙規制板(不図示)を有するトレイである。なお、幅とは、記録紙Pの搬送方向に略直交する方向の長さをいう。給紙トレイ28は定型サイズ以外のサイズの記録紙Pにも対応するために設けられている。ピックアップローラ29は給紙トレイ28から記録紙Pを給紙するローラである。モータ30は像加熱装置200等を駆動するモータである。商用の交流電源301に接続された電源回路302は、モータ30へ電力を供給している。像加熱装置200内のヒータ201には、交流電源301に接続された制御回路303の制御によって、電力が供給されている。上述した、感光ドラム19、帯電ローラ16、スキャナユニット21、現像器17、転写ローラ20が、記録紙Pに未定着のトナー画像を形成する画像形成部(画像形成手段)を構成している。なお、像加熱装置200、交流電源301、電源回路302、制御回路303を以降、周辺部300ともいう。
【0014】
[像加熱装置]
図2は実施例1の像加熱装置200の断面図である。像加熱装置200は、フィルム203、ヒータ201、加圧ローラ208、サーミスタ202を有する。フィルム203は、筒状のフィルムがエンドレスベルトとして構成されている。ヒータ201は、フィルム203の内面に接触する。ニップ部形成部材である加圧ローラ208は、フィルム203を介してヒータ201と共に定着ニップ部Nを形成する。温度検知手段であるサーミスタ202は、ヒータ201の温度を検出するための温度検出素子である。
【0015】
フィルム203のベース層の材質は、例えばポリイミド等の耐熱樹脂又はステンレス等の金属である。また、フィルム203の表層には耐熱ゴム等の弾性層を設けてもよい。加圧ローラ208は、例えば鉄やアルミニウム等の材質の芯金209と、シリコーンゴム等の材質の弾性層210を有する。ヒータ201は耐熱樹脂製の保持部材205に保持されている。保持部材205はフィルム203の回転を案内するガイド機能も有している。ステー204は、保持部材205にバネ(不図示)の圧力を加えるための金属製のステーである。加圧ローラ208はモータ(不図示)から動力を受けて矢印方向(反時計回り方向)に回転する。加圧ローラ208が回転することによって、フィルム203が従動して矢印方向(時計回り方向)に回転する。未定着のトナー画像を担持した記録紙Pは、定着ニップ部Nで挟持搬送されつつ加熱されて定着処理される。
図2では、記録材Pは右側(上流側でもある)から左側(下流側でもある)に搬送されており、この方向を以下、搬送方向ともいう。
【0016】
[ヒータ駆動回路]
図3に、実施例1のヒータ201の制御回路303及びその周辺部300の例を示す。周辺部300は、交流電源301から供給される電力を、電界効果トランジスタ(以下、FETとする)305及びFET306を導通(以下、ONとする)することで、リレー304を介してヒータ201の発熱体H1に供給する回路を示している。
【0017】
発熱体H1に直列に接続されたスイッチング素子であるFET305及びFET306の導通状態/非導通状態(以下、ON/OFFとする)の制御により、発熱体H1への電力の供給(以下、通電とする)/電力の遮断を行う。FET305及びFET306のON/OFFは、FET305及びFET306のゲート端子に印加する電圧を制御することによって行われる。まず、交流電源301から供給された電圧は、並列に接続された電源回路302と制御回路303とに供給される。電源回路302は、モータ30等を駆動する電源装置307、ゼロクロス点を検知しゼロクロス信号(ZEROXと図示)を出力するゼロクロス検知手段であるゼロクロス検知回路308を有している。
【0018】
制御回路303に供給された電圧は、ダイオード309、ダイオード310によって整流される。整流された電圧は抵抗311、抵抗312によって分圧され、分圧された電圧はダイオード313を介して電解コンデンサ314に供給され、直流電圧Vcc(以下、電源電圧Vccともいう)が生成される。次に、電解コンデンサ314にチャージされた電源電圧Vccは、抵抗315とフォトカプラ316を介してトランジスタ317のベース端子に電流を供給する。
【0019】
後述する制御手段であるCPU324の動作によって出力された、ヒータ201の駆動信号ON1が抵抗319を介して、トランジスタ321のベース端子に電流を流す。これにより、3.3Vの電源から抵抗322を介した電流がフォトカプラ316の発光ダイオード316dに供給される。フォトカプラ316の発光ダイオード316dに電流が供給されると、フォトカプラ316のフォトトランジスタ316tがオンする。駆動信号ON1(以下、ON1信号ともいう)は抵抗320を介してグランド(以下、GNDとする)に接続される。以上により、駆動信号ON1のスイッチングに合わせた電流が、トランジスタ317のベース端子に供給される。
【0020】
トランジスタ317のベース端子には駆動信号ON1にあわせて電解コンデンサ314から電流が供給される。電流が供給される時間においてはトランジスタ317がオンし、電解コンデンサ314からFET305、FET306のゲート端子に電圧が供給される。そうすると、FET305とFET306に共通のゲート-ソース間の抵抗341によって、FET305、FET306それぞれのゲート-ソース間に電位差が生じ、FET305、FET306がオンする。これにより、ヒータ201の発熱体H1に電流が流れる。なお、電解コンデンサ314への直流電圧Vccの供給は、例えば、外部電源からの供給でもよく、電源装置307のスイッチングトランス(不図示)から生成してもよい。
【0021】
[CPU324の説明]
制御回路303が有するCPU324は、ヒータ201を駆動させるON1信号を制御回路303に出力する。CPU324は、リレー304の接続状態又は非接続状態を制御するために、リレー304にRLON信号を出力する。CPU324には、サーミスタ202による検知結果であるヒータ201の温度を表したTH信号と、ゼロクロス検知回路308から出力されたZEROX信号とが入力される。CPU324では、入力されたTH信号に基づき求められたヒータ201の実温度と、CPU324内部で設定されているヒータ201の目標温度とを比較する。CPU324は、比較した結果、ヒータ201が目標温度に達するために必要である、制御周期毎の投入デューティーを決定する。ここで、制御周期は、例えばゼロクロス周期の整数倍である。また、投入デューティーとは、ヒータ201が目標温度に到達するために制御周期内で供給されるべき電力の割合(電力比でもある)をいい、以下、第1の電力という。CPU324は、TH信号に基づき決定した第1の電力と、タイミング信号となるZEROX信号とに基づいて、ヒータ201を駆動させる駆動信号ON1を出力する。
【0022】
[ヒータ電流の制御方法]
実施例1のプリント動作時のヒータ電流の制御方法を以下に説明する。実施例1では、位相制御を行い、交流電源301の半周期内、言い換えれば交流電圧の1半波内において複数回に分けてヒータ201を点灯することを特徴とする。以下の説明において、交流電源301の周波数は例えば50Hzとし、1周期は20ms(1半波は10ms)とする。このとき、1半波内において100%の電力を投入する場合には、通電する時間(以下、通電時間という)は10msとなる。
【0023】
図4(a)(b)(c)は、実施例1のヒータ電流の波形(以下、ヒータ電流波形という)と制御信号であるON1信号の波形を示している。各グラフには、左から、投入電力(%)、後述する第1の電力投入期間の通電期間における通電期間(ms)、第1の電力投入期間における通電の回数(以下、通電回数という)、ヒータ電流波形、ON1信号の波形をそれぞれ記載している。いずれも1制御周期において供給される電力(以下、投入電力という)が、100%(以下、フル通電という)である場合に対して50%の場合を示している。なお、t1~t18は時刻(又はタイミング)を示し、以下、t1等と表記するときは時刻t1(又はタイミングt1)等を意味するものとする。また、例えばt1~t2等と表記するときは時刻t1から時刻t2までの時間(又は期間)を意味するものとする。
【0024】
図4(a)では、交流電圧の1半波中、t1~t2、t3~t4の期間でヒータ201に電流が印加されており、この制御が繰り返し実行されている。なお、CPU324は、例えばゼロクロス検知回路308から入力されたZEROX信号の立ち上がり(又は立ち下がり)を基準として、内部に有するタイマ(不図示)等を参照し、t1又はt3でON1信号をハイレベルとするような制御を行うものとする。更にCPU324は、例えばゼロクロス検知回路308から入力されたZEROX信号の立ち上がり(又は立ち下がり)を基準として、タイマ(不図示)等を参照し、t2又はt4でON1信号をローレベルとするような制御を行うものとする。以下の説明においても、CPU324は同様の制御を行い、ON1信号及びヒータ電流の制御を行うものとする。
【0025】
(各期間の定義)
ここで、t1~t2の期間は、交流電源301の所定の周波数における1周期の時間(例えば20ms)の1/40倍(例えば0.5ms)から1/6000倍(例えば0.003ms)以内の通電の期間が含まれる時間に設定している。t1~t2の期間を、以下、第1の電力投入期間又は第1の通電期間という。なお、第1の通電期間は、第1の電力投入期間内における通電期間をいい、
図4(a)では、第1の通電期間はt1~t2の1回であるため、第1の通電期間が第1の電力投入期間と同じ期間となっている。一方、t3~t4の期間は、「CPUで決定した第1の電力」と「第1の電力投入期間で投入した電力」との差分の電力を投入するように設定する。t3~t4の期間を、以下、第2の電力投入期間という。また、t2~t3の期間は、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内に設定している。t2~t3の期間は、第1の電力投入期間と第2の電力投入期間との間の期間であり、以下、電力投入中断期間という。その結果、1半波中における通電回数は2回となっている。
【0026】
図4(a)は、投入電力50%の場合であり、第1の電力投入期間t1~t2、第1の電力投入期間と第2の電力投入期間との間の期間である電力投入中断期間t2~t3は、それぞれ0.1msとした。第2の電力投入期間t3~t4は4.9msとした。すなわち、第1の電力投入期間t1~t2は、第2の電力投入期間t3~t4よりも短い時間とする。電力投入中断期間t2~t3は、第1の電力投入期間t1~t2と略同じ時間とし、第2の電力投入期間t3~t4よりも短い時間とする。
【0027】
(通電期間の回数の変化)
図4(b)では、t5~t6、t7~t8、t9~t10の期間でヒータ201に電流を印加している。
図4(b)は、
図4(a)と比較して、周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の第1の通電期間の回数を変化させた場合のヒータ電流波形と制御信号の波形を示している。
図4(b)において第1の電力投入期間はt5~t8であり、第2の電力投入期間はt9~t10である。第1の電力投入期間t5~t8において、t5~t6は第1の通電期間であり、t7~t8は第2の通電期間である。t5~t6、t6~t7、t7~t8、t8~t9の期間はそれぞれ0.1msとした。t9~t10の期間は4.8msとした。その結果、通電回数は3回となっている。
【0028】
図4(c)では、t11~t12、t13~t14、t15~t16、t17~t18の期間でヒータ201に電流を印加している。
図4(c)は、
図4(a)、
図4(b)と比較して、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数を変化させた場合のヒータ電流波形と制御信号の波形を示している。
図4(c)において第1の電力投入期間はt11~t16であり、第2の電力投入期間はt17~t18である。第1の電力投入期間t11~t16において、t11~t12は第1の通電期間であり、t13~t14は第2の通電期間であり、t15~t16は第3の通電期間である。t11~t12、t12~t13、t13~t14、t14~t15、t15~t16、t16~t17の期間はそれぞれ0.1msとした。t17~t18の期間は4.7msとした。その結果、通電回数は4回となっている。ここまでは、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数を変化させた場合の波形について説明した。
図4では、CPU324は、第1の電力投入期間において、FET305、306を第1の時間である例えば0.1ms導通状態(第1の時間前記導通状態)とする制御を1回以上実施する。
【0029】
図4に示すように、CPU324は、1半波におけるヒータ201に電力を供給する期間を少なくとも2つに分割してヒータ201に電力を供給するようにFET305、306の導通状態又は非導通状態を制御する。そしてCPU324は、ヒータ201に電力を供給する期間を、第1の期間である第1の電力投入期間と第1の期間よりも長い第2の期間である第2の電力投入期間とに分割する。また、CPU324は、第1の電力投入期間を交流電源301の1周期の1/6000から1/40の間の長さとする。
【0030】
[通電期間の変化の説明]
次に、通電回数を固定して通電期間を変化させた場合の波形を説明する。
図4の場合と同じく、フル通電に対して50%の投入電力を供給する場合を示している。
図5は
図4と同様の構成のグラフである。
図5の制御では、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数を1回と固定する。このため、
図5の制御では、第1の電力投入期間における通電期間は第1の通電期間のみとなる。また、1半波における通電回数は2回に固定となる。そして、第1の通電期間(すなわち第1の電力投入期間)と第1の電力投入期間と第2の電力投入期間との間の電力投入中断期間を変化させる。
【0031】
図5(a)の第1の電力投入期間言い換えれば第1の通電期間はt1~t2であり、第2の電力投入期間はt3~t4である。
図5(a)の第1の通電期間t1~t2、電力投入中断期間t2~t3はそれぞれ0.107msとした。第2の電力投入期間t3~t4は4.893msとした。通電回数は上述したように2回である。
【0032】
図5(b)の第1の電力投入期間言い換えれば第1の通電期間はt5~t6であり、第2の電力投入期間はt7~t8である。
図5(b)の第1の通電期間t5~t6、電力投入中断期間t6~t7はそれぞれ0.115msとした。第2の電力投入期間t7~t8は4.885msとした。通電回数は上述したように2回である。
【0033】
図5(c)の第1の電力投入期間言い換えれば第1の通電期間はt9~t10であり、第2の電力投入期間はt11~t12である。
図5(c)の第1の通電期間t9~t10、電力投入中断期間t10~t11はそれぞれ0.123msとした。第2の電力投入期間t11~t12は4.877msとした。通電回数は上述したように2回である。ここまでは、第1の通電期間と、第1の電力投入期間と第2の電力投入期間との間の期間を変化させた場合の波形の変化について説明した。
図5では、CPU324は、第1の電力投入期間において、FET305、306を導通状態とする第1の時間を変化させる。
【0034】
(高調波電流の削減効果1)
図6は、実施例1の制御を行っていない場合の50%電力を投入したときのヒータ電流波形及びON1信号の波形を示す図であり、
図4、
図5等と同様の構成のグラフである。実施例1の制御を行わない場合、t1からt2に期間で電力が供給され、通電回数は1回となる。
図6は以下で実施例1の制御との比較検討を行うため示した。
図7(a)は、
図4と
図6のそれぞれのヒータ電流波形でヒータ201を制御したときの、それぞれの高調波電流の測定結果を表したグラフである。横軸が高調波電流の各次数、縦軸が各次数の高調波電流の大きさの各次数の高調波電流の規格値に対する割合(電流値/規格値)である。規格値とはIEC 61000-6-3のClassAの機器で規定される値である。実施例1の
図4(a)の制御を実施した場合を●と破線で表し、
図4(b)の制御を実施した場合を■と点線で示し、
図4(c)の制御を実施した場合を三角と実線で示す。また、実施例1の制御を行わなかった
図6の場合を×と実線で示す。
【0035】
実施例1の制御を実施した場合(
図4(通電回数を変化)の波形)の結果が、実施例1の制御を実施していない結果(
図6の波形)より高調波電流が削減されていることがわかる。これは、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の存在により、強調される高調波電流の次数が、40次以上の高次側にシフトしたためである。また、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)の結果を見ると、高調波電流の次数によって、高調波電流の削減効果が違うことがわかる。例えば、
図4(a)(通電回数が1回)では、30次近傍において50%以下となっており、
図4(b)(通電回数が2回)では、20次近傍において50%以下となっており、
図4(c)(通電回数が3回)では、10次近傍において50%以下となっている。これは、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数の違いにより、強調される高調波電流の次数が変化するため、削減される高調波電流の次数が変化することを表している。削減したい高調波電流の次数に応じて、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数を変化させる必要がある。
【0036】
なお、
図4では、第1の電力投入期間にある、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間と、各通電期間の間、及び電力投入中断期間の長さをすべて0.1msと同じにした。しかし、削減したい高調波電流の次数によって、第1の電力投入期間にある、交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間と、各通電期間の間、及び電力投入中断期間の長さは、変えてもよい。
【0037】
(高調波電流の削減効果2)
図7(b)は、
図5と
図6のヒータ電流波形の高調波電流の測定結果を表したグラフである。横軸が高調波電流の各次数、縦軸が各次数の高調波電流の大きさの各次数の高調波電流の規格値に対する割合(電流値/規格値)である。実施例1の
図5(a)の制御を実施した場合を●と破線で表し、
図5(b)の制御を実施した場合を■と点線で示し、
図5(c)の制御を実施した場合を▲と実線で示す。また、実施例1の制御を行わなかった
図6の場合を×と実線で示す。
【0038】
実施例1の制御を実施した場合(
図5の波形)の結果が、実施例1の制御を実施していない結果(
図6の波形)に比較して高調波電流が削減されていることがわかる。これは、第1の通電期間によって、強調される高調波電流の次数が、40次以上の高次側にシフトしたためである。また、
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)の結果を見ると、高調波電流の次数によって、高調波電流の削減効果が違うことがわかる。例えば、
図5(a)(通電期間が0.107ms)では、35次近傍において40%以下となっている。また、
図5(b)(通電期間が0.115ms)では、30次近傍において20%以下となっており、
図5(c)(通電期間が0.123ms)では、25次近傍において20%以下となっている。これは、第1の通電期間、又は電力投入中断期間の長さ違いによって、強調される高調波電流の次数が変化するため、高調波電流の削減効果が違うことを表している。
【0039】
このため、削減したい高調波電流の次数に応じて、第1の通電期間、又は電力投入中断期間の長さを変化させる必要がある。
図5では、第1の通電期間と電力投入中断期間とを同じにした。ここで、
図5(a)では0.107ms、
図5(b)では0.115ms、
図5(c)では0.123msとした。しかし、削減したい高調波電流の次数によって、第1の通電期間と電力投入中断期間の長さは変えてもよい。
【0040】
実施例1では、第1の電力を50%に限定して説明した。しかし、第1の電力は50%に限定することはなく、第1の電力がその他の値となっても、実施例1の適用が可能である。第1の電力が変化した場合、第1の通電期間、又は交流電源301の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数、又は電力投入中断期間の長さは、実施例1に限定しない。これらの回数又は期間は、投入デューティーによって変化する。さらに、第2の電力投入期間を1つとしたが、第2の電力投入期間を2以上の期間に分割してもよい。実施例1で説明したように、高調波電流が生じる次数を高次側にシフトさせることで、3次から39次の高調波電流を削減することができる。
【0041】
以上、実施例1によれば、スイッチング素子への影響を抑制しつつ、高調波電流を低減することができる。
【実施例2】
【0042】
(電源回路の説明)
図8は、像加熱装置200を制御する制御回路303に並列に接続されている電源装置307(電源)の回路構成を示した図である。交流電源301の交流電圧はダイオードブリッジ901に入力される。交流電圧はダイオードブリッジ901により全波整流され、平滑コンデンサ902により平滑される。平滑された電圧は、DC-DCコンバータであるスイッチング電源903に入力され、スイッチング電源903が2次側電圧を出力する。スイッチング電源903には、1次、2次間の絶縁を確保するために絶縁型のトランス903tが使用されている。平滑コンデンサ904はスイッチング電源903の2次側電圧を出力するためのコンデンサである。交流電源301から流れる電流Itは、電源装置307に流れる電流Icと、制御回路303を介して像加熱装置200に流れる電流Ihとに分岐する。
【0043】
(制御方法の説明)
図9(a)(b)は、電源装置307に流れる電流Icと制御回路303の制御によって像加熱装置200に流れる電流Ihとを示した図である。点線で示した電流が電源装置307に流れる電流Ic、実線で示した電流が像加熱装置200に流れる電流Ihを示している。
図9(a)は実施例2の制御を実施しなかった場合の波形である。電流Icと電流Ihは位相角が90°付近で時間的に重なっていることがわかる。このように電流Icと電流Ihとが時間的に重なっている場合、電流Icと電流Ihとの合成電流の高調波電流の影響が増大する。
【0044】
一方、
図9(b)は実施例2の制御を実施した場合の波形である。
図9(b)の電流Ihの総電流量は
図9(a)の電流Ihの総電流量と変わらない。実施例2では、CPU324は電流Icと電流Ihとが時間的に重ならないように電流Ihを制御する。かつ、CPU324は、実施例1で説明したように、第1の電力投入期間と第2の電力投入期間を持つ制御を行う。ここで、第1の電力投入期間は交流電圧の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間が含まれる期間である。第2の電力投入期間は、「CPU324で決定した第1の電力」と「第1の電力投入期間で投入した電力」との差分の電力を投入する期間である。
【0045】
より詳細には、
図9(b)において、第1の電力投入期間はt3~t8であり、具体的には、第1の通電期間がt3~t4、第2の通電期間がt5~t6、第3の通電期間がt7~t8である。第1の電力投入期間における各通電期間の間の通電を行わない期間であるt4~t5、t6~t7は、それぞれ異なる時間に設定されている。また、第2の電力投入期間はt1~t2、t9~t10であり、実施例2では第2の電力投入期間が2つに分割されている。このため、電力投入中断期間もt2~t3、t8~t9と2つあり、2つの電力投入中断期間の長さは同じ長さとしても異なる長さとしてもよい。これにより、
図9(b)では、電源装置307の電流Icと時間的に重ならないように、電流Ihの第2の電力投入期間を時間的(又は位相的に)に配置している。このように、1半波中において各期間をどのような順番でどのような長さで制御するかを、電源装置307の電流Icに応じて設定すればよい。
【0046】
以上により、CPU324は、電流Icと電流Ihとを時間的に重ならないようにさせ、像加熱装置200に流れる電流Ihに実施例2の制御を実施する。これにより、
図9(a)の電流Icと電流Ihとの合成電流の高調波電流より、
図9(b)の電流Icと電流Ihとの合成電流の高調波電流を削減する。
【0047】
(高調波電流削減効果の確認)
図9(c)に
図9(a)の高調波電流の測定結果と
図9(b)の高調波電流の測定結果を示す。横軸が高調波電流の各次数、縦軸が各次数の高調波電流の大きさの各次数の高調波電流の規格値に対する割合(電流値/規格値)である。
図9(a)の制御を実施した場合を●と実線で表し、
図9(b)の制御を実施した場合を▲と破線で示す。
【0048】
図9(a)の結果を確認すると、電源装置307起因の高調波電流が3次・5次で発生していることがわかる。ここで、実施例2の削減したい高調波電流の次数を3次・5次と定める。また、最適な第1の電力投入期間、最適な交流電圧の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数、電力投入中断期間を設定する。以上のように設定し、第1の電力を
図9(a)の波形と同じ電力にした
図9(b)の波形を作成した。
【0049】
図9(b)の波形は、第1の電力投入期間はt3~t8、第2の電力投入期間はt1~t2及びt9~t10である。t1~t2の期間は2.2631msとした。t2~t3及びt3~t4の期間はそれぞれ0.101msとした。t4~t5の期間は2.6849msとした。t5~t6、t6~t7、t7~t8、t8~t9の期間はそれぞれ0.1176msとした。t9~t10の期間は4.3796msとした。なお、第2の電力投入期間は、交流電流量が小さい位相角0°(180°)近傍となるように制御(配置)される。このため、上述した値の秒数で制御することで、
図10(b)の電流Ihの総電流量を、
図10(a)の総電流量と略同じに制御することが可能となる。また、実施例1では第2の電力投入期間は交流電圧の周波数の1周期内の時間内に1回であったが、実施例2では、第1の電力を満足するために2回に分割している。
図9(c)の結果を確認すると、実施例2の制御を実施した
図9(b)の波形の結果が、実施例2の制御を実施していない
図9(a)の波形の結果より高調波電流が削減されていることが確認できる。具体的には、
図9(b)では、3次・5次において40%以下となっている。
【0050】
第1の電力が変化した場合、第1の通電期間、又は交流電圧の周波数の1周期の時間の1/40倍から1/6000倍以内の通電期間の回数は、実施例2に限定されることなく変化する。また、第1の電力投入期間の通電と隣り合う通電期間との間の期間、又は第2の電力投入期間の分割回数は、実施例2に限定されることなく変化する。実施例2で説明したように、高調波電流が生じる次数を高次側にシフトさせることで、スイッチング電源の入力コンデンサへの充電電流の合成電流を考慮した場合でも、高調波電流を削減することができる。
【0051】
以上、実施例2によれば、スイッチング素子への影響を抑制しつつ、高調波電流を低減することができる。
【実施例3】
【0052】
(トライアック2つを並列接続させた回路構成の説明)
図10に、実施例3のヒータ201の制御回路303及びその周辺部300の例を示す。発熱体H1への電力の供給は、実施例1ではFET(FET305、306)を使用していた。実施例3では、スイッチング素子として双方向サイリスタ(以下、トライアックという)1201及びトライアック1202のON/OFF制御により通電/遮断する。第1の双方向サイリスタであるトライアック1201のON/OFFは、フォトトライアックカプラ1203の発光ダイオード1203dに流れる電流を制御することによって行う。トライアック1201はヒータ201に直列に接続されている。トライアック1201には、コンデンサ1206が直列に接続されている。第2の双方向サイリスタであるトライアック1202のON/OFFは、フォトトライアックカプラ1204の発光ダイオード1204dに流れる電流を制御することによって行う。トライアック1202は、直列に接続されたトライアック1201及びコンデンサ1206に並列に接続されている。
【0053】
まず、交流電源301から制御回路303に供給された電圧は、コンデンサC600とインダクタ1205を経由した後、コンデンサ1206とトライアック1202に供給される。コンデンサ1206の充電電流は、トライアック1201がONしたときにあわせて、発熱体H1に電力を供給する。トライアック1201のゲート端子には、フォトトライアックカプラ1203がONしたとき、抵抗1210を介した電流が流れる。抵抗1210を介した電流は、抵抗1211を介して、発熱体H1に流れる。フォトトライアックカプラ1203がONすることにより、トライアック1201はONする。フォトトライアックカプラ1203は発光ダイオード1203dが通電することによりONする。フォトトライアックカプラ1203の発光ダイオード1203dのカソード端子には、トランジスタ1207のベース電流に同期して、3.3V電源から抵抗1219を経由した電流が流れる。トランジスタ1207のベース電流のスイッチングは、抵抗1208を経由した制御信号ON2(以下、ON2信号ともいう)と同期する。制御信号ON2は抵抗1209を介してGNDに接続される。制御信号ON2はCPU324から出力される。以上により、制御信号ON2によってトライアック1201がONする。
【0054】
トライアック1201による発熱体H1への電力の供給は、コンデンサ1206に充電された電荷量だけ行われる。コンデンサ1206に充電される電荷量は、発熱体H1に供給される全電力に比較すると、小さい値に設定することができる。よって、コンデンサ1206に充電される電荷量によって、実施例1の第1の電力投入期間を構成することができる。コンデンサ1206の充電時間に合わせて、制御信号ON2をOFFにする。充電は終わっているので、トライアック1201をOFFできる。
【0055】
トライアック1202に供給された電圧は、前述したトライアック1201の制御と同様に、CPU324から出力された制御信号ON3(以下、ON3信号ともいう)により、トライアック1202がON/OFFされ、発熱体H1に電力を供給する。トライアック1202のゲート端子には、フォトトライアックカプラ1204がONしたとき、抵抗1216を介した電流が流れる。抵抗1216を介した電流は、抵抗1217を介して、発熱体H1に流れる。フォトトライアックカプラ1204がONすることにより、トライアック1202はONする。フォトトライアックカプラ1204は発光ダイオード1204dが通電することによりONする。フォトトライアックカプラ1204の発光ダイオード1204dには、トランジスタ1215のベース電流に同期して、3.3V電源から抵抗1212を経由した電流が流れる。トランジスタ1215のベース電流のスイッチングは、抵抗1213を経由した制御信号ON3と同期する。制御信号ON3は抵抗1214を介してGNDに接続される。以上により、制御信号ON3によってトライアック1202がONする。トライアック1202による発熱体H1への電力の供給は、発熱体H1に供給される全電力のなかで支配的な割合となるため、実施例1の第2の電力投入期間を構成することができる。その他の構成は
図3と同様であり説明を省略する。
【0056】
[実施例3の制御]
図11に、
図10の回路における、ヒータ電流波形、ON2信号、ON3信号の波形をそれぞれ示す。フル通電に対して、50%の投入電力を供給する場合を示している。ヒータ電流波形において、トライアック1201のONによって構成された波形は点線で示した部分であり、実施例1の第1の電力投入期間を構成する。トライアック1202のONによって構成された波形は実線であり、実施例1の第2の電力投入期間を構成する。通電回数は2回となる。その他については実施例1と同様であり、説明を省略する。
【0057】
実施例3では、2つのトライアック1201、1202を並列に接続させ、1つのトライアック1201には1つのコンデンサ1206を接続させ、実施例1の第1の電力投入期間を構成する。一方、もう1つのトライアック1202は、実施例1の第2の電力投入期間を構成することで、実施例1に記載の制御を実現することが可能であることを示した。なお、実施例1の
図4(b)、(c)、
図5、
図9(b)のような制御を行う際にも、第1の電力投入期間でコンデンサ1206に直列に接続されたトライアック1201をONし、第2の電力投入期間でトライアック1202をONすればよい。
【0058】
以上、実施例3によれば、スイッチング素子への影響を抑制しつつ、高調波電流を低減することができる。
なお、以上の実施例においては、1つの発熱体H1を有する像加熱装置200について説明したが、発熱体が2以上の場合についても実施例の制御を適用することができ、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0059】
201 ヒータ
305、306 FET
324 CPU