(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61L2/10
(21)【出願番号】P 2020141815
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】貴家 学
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125812(JP,A)
【文献】特開2015-225799(JP,A)
【文献】特表2016-525906(JP,A)
【文献】特開2007-068651(JP,A)
【文献】特表2012-520545(JP,A)
【文献】特開2019-072476(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03466451(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00
F21V
F21S
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付面に設置される取付部と;
前記取付部に取り付けられる保持部と;
紫外線を照射可能な光源と、この光源の前面側に設けられる透光カバーと、前面部に前記透光カバーが配設されることで閉塞される照射開口、および前記照射開口の周囲から前記前面側かつ外方に向けて広がるように設けられた傾斜部を有する筐体と、を備え、前記透光カバーを前記被取付面よりも下方側に配置し、前記保持部に対して向きが可変となるように保持される灯具本体と;
を備え、
前記灯具本体の向きを変化させたときに、前記灯具本体の向きを変化させた方向に位置する前記傾斜部と前記前面部に垂直な中心線とがなす角度が、前記被取付面
に平行な方向と前記中心線とがなす角度よりも小さくなるように前記灯具本体の向きが規制されている
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記灯具本体は、前記灯具本体に対して所定の距離以上の人体および所定の距離未満の人体を検出可能な距離検出手段をさらに有し、この距離検出手段により人体が所定の距離以上にあることを検出したときに前記光源を点灯し、所定の距離未満に人体があることを検出したときに前記光源を消灯する
ことを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被取付面に設置される照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を放出するように構成された光源と反射器とを備え、照射方向の角度を調整可能な照明アセンブリが知られている。
【0003】
このような照明アセンブリを用いることにより、空間内に対し照射方向を変更することで様々な位置へ紫外線を照射することができる。
【0004】
しかしながら、照射方向の可動範囲が広くなると、被取付面に紫外線が照射され、被取付面の劣化が促進される虞がある。さらに、被取付面に紫外線検知型の煙感知器が設置される場合、この煙感知器に紫外線が照射されると誤作動を起こす虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線の照射方向を変更可能でありながら、被取付面への紫外線の照射を抑制できる照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の照明装置は、被取付面に設置される取付部と、取付部に取り付けられる保持部と、灯具本体とを備える。灯具本体は、紫外線を照射可能な光源と、光源の前面側に設けられる透光カバーと、前面部に透光カバーが配設されることで閉塞される照射開口、および照射開口の周囲から前面側かつ外方に向けて広がるように設けられた傾斜部を有する筐体と、を備える。灯具本体は、透光カバーを被取付面よりも下方側に配置し、保持部に対して向きが可変となるように保持される。灯具本体の向きを変化させたときに、灯具本体の向きを変化させた方向に位置する傾斜部と前面部に垂直な中心線とがなす角度が、被取付面に平行な方向と中心線とがなす角度よりも小さくなるように灯具本体の向きが規制されている。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の照明装置によれば、紫外線の照射方向を変更可能でありながら、被取付面への紫外線の照射を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態の照明装置10を、
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0011】
照明装置10は、被取付面11に設置されるものであって、被取付面11を構成する被取付部材12に設けられた開口部13に一部が埋め込まれた状態に設置される。本実施形態では、被取付面11は天井面、被取付部材12は天井部材とし、天井面に設置された状態で照明装置10の各方向を説明する。
【0012】
照明装置10は、被取付面11に設置される取付部15である埋込シャーシ16、およびこの埋込シャーシ16に取り付けられる灯具ユニット17を備えている。
【0013】
取付部15である埋込シャーシ16は、下面が開口された円筒状に設けられている。埋込シャーシ16は、円板状の取付面部20、この取付面部20の周辺部から設けられた周面部21、およびこの周面部21から外周に突出されたフランジ部22を有している。
【0014】
埋込シャーシ16は、被取付部材12の開口部13に挿入されるとともに、フランジ部22が被取付面11に当接された状態で、開口部13の上方の天井構造物から突出されている吊ボルトに対して取り付けられる。
【0015】
埋込シャーシ16内には、埋込シャーシ16内に引き込まれる電源線を接続する端子台25、およびこの端子台25を通じて供給される外部電源を所定の点灯電源に変換して灯具ユニット17側に供給する電源部26が取り付けられている。
【0016】
また、灯具ユニット17は、埋込シャーシ16の前面側に取り付けられる化粧枠30、この化粧枠30の前面側に設けられた保持部31であるアーム32、およびこのアーム32に取り付けられた灯具本体33を有している。
【0017】
化粧枠30は、下面側が開口された円筒状に形成されている。化粧枠30は、円板状の取付面部36、この取付面部36の周辺部から設けられた周面部37、この周面部37から外周に突出された縁枠部38を有している。化粧枠30の内側、すなわち取付面部36および周面部37の内側には、前面側に開口する凹部39が設けられている。取付面部36の中央には、アーム32を回動可能に取り付ける第1の軸部または垂直軸部である軸部40が設けられている。軸部40は、被取付面11に垂直な方向である鉛直方向を軸として、アーム32を被取付面11に平行な方向である水平方向に回転可能とする。軸部40は、筒状で、電源部26と灯具ユニット17とを電気的に接続する配線を挿通可能とする。
【0018】
化粧枠30の取付面部36には複数の取付孔41が設けられている。化粧枠30は、埋込シャーシ16に挿入されるとともに、縁枠部38がフランジ部22を覆って被取付面11に当接された状態で、各取付孔41を通じて埋込シャーシ16の内側に設けられているねじ受部に螺着される取付ねじ42により、埋込シャーシ16に取り付けられる。なお、取付ねじ42は、アーム32の回転領域よりも外側に位置され、回転するアーム32とは干渉しない。
【0019】
保持部31であるアーム32は、化粧枠30の凹部39内に配置されて軸部40に取り付けられ、軸部40を中心として被取付面11に平行な方向である水平方向に回転可能としている。アーム32は、軸部40に取り付けられるアーム取付部45、およびこのアーム取付部45の両端から下方に向けて折曲された両側のアーム部46を有し、断面略コ字形に形成されている。アーム32は、軸部40を中心として360°の範囲で水平方向に回転可能とする。
【0020】
また、灯具本体33は、光源50、この光源50の前面側に配置される透光カバー51、これら光源50および透光カバー51を配設する筐体52を備えている。
【0021】
光源50は、紫外線を照射する紫外線LEDが用いられている。紫外線LEDは、基板55に実装されている。光源50は、紫外線LEDに限定されるものではなく、水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光形紫外線ランプ、エキシマランプ等が用いられていてもよい。この場合、光源50は基板55には実装されず、基板55に代えて、反射板が配設される。また、上述した紫外線を照射する光源50とともに、可視光を照射する光源も備えていてもよい。光源50から照射する紫外線は、人体への影響が少ない例えば222nmを主波長とする紫外線を用いてもよいし、222nmを主波長とするとともに230nm以上の波長がカットされた人体への影響がより少ない紫外線を用いてもよい。
【0022】
透光カバー51は、紫外線を透過するとともに紫外線による劣化が少ないガラスや樹脂等の材料で形成されている。透光カバー51は、平板状に形成されている。
【0023】
筐体52は、紫外線を遮断し、紫外線による劣化が少ない金属や樹脂等の材料で形成されている。筐体52は、背面側ケース58と、この背面側ケース58の前面側に組み合わせて取り付けられる前面側ケース59とで構成されている。筐体52は、略四角形状の前面部60、この前面部60に対して反対側の背面部61、アーム32に取り付けられる両側の側面部62、およびこの両側の側面部62と交差する上下の側面部63を有している。
【0024】
筐体52の前面部60には、照射開口64が形成されている。照射開口64は、略四角形状に設けられている。なお、照射開口64は、円形に設けられていてもよい。
【0025】
筐体52の照射開口64の内側位置に、照射開口64を閉塞するように透光カバー51が配置されているとともに、照射開口64から筐体52の内方の奥まった位置で照射開口64に対向するように光源50が配置されている。
【0026】
筐体52の背面側からは、電源部26と光源50とを電気的に接続する配線が引き出されている。
【0027】
筐体52の照射開口64の周縁部の4辺には、透光カバー51の周囲から外方に向けて広がるように傾斜部65が設けられている。傾斜部65は、照射開口64の周縁部の背面側から前面側に向って拡開するように傾斜されている。傾斜部65から筐体52の内方へ向けた延長線上に光源50が配置されている。
【0028】
筐体52の両側の側面部62は、第2の軸部または水平軸部である軸部66により、アーム32の両側のアーム部46に回転可能に取り付けられている。軸部66は、被取付面11に平行な方向である水平方向を軸として、灯具本体33を上下方向に回転可能とする。軸部66は、アーム32に対して灯具本体33を回転させて灯具本体33の向きを調整可能とするとともに調整された向きで保持可能とする。
【0029】
筐体52の両側の側面部62には、アーム部46の先端側および軸部66が配置される窪み部67が設けられている。窪み部67は、略V字状に設けられており、アーム部46の幅方向の寸法よりも広い幅を有している。灯具本体33は、軸部66を中心として、窪み部67の両側側縁であるストッパ部67aがアーム部46の幅方向の縁部にそれぞれ接触する範囲内で回転可能とする。
【0030】
これらアーム部46と筐体52の窪み部67とにより、軸部66を中心として回転可能とする灯具本体33の回転範囲を規制する規制部68が構成されている。規制部68は、灯具本体33の中心軸Zが被取付面11に垂直な方向である直下方向に向く位置から左右に例えば45°ずつ回転する範囲に規制している。
【0031】
ここで、筐体52の照射開口64の周囲4辺の傾斜部65のうち、灯具本体33の軸部66を中心として回転する方向における両側の傾斜部65を第1傾斜部65a、軸部66の軸方向の両側の傾斜部65を第2傾斜部65bとする。
【0032】
筐体52の前面部60に垂直な中心線Zに対して、少なくとも灯具本体33の軸部66を中心として回転する方向の傾斜部65(第1傾斜部65a)のなす角度θ1は、例えば45°未満とされている。
【0033】
そして、規制部68により、灯具本体33の向きを変化させたときに、傾斜部65(第1傾斜部65a)の外方に向けて広がる傾斜方向S1が被取付面11に平行な方向S2よりも前面側(被取付面11から離れる前面側)となるように灯具本体33の向きを規制する。この規制条件は、傾斜部65の角度と、灯具本体33の回転可能な角度とによって設定されるため、傾斜部65の角度と、灯具本体33の回転可能な角度とを適宜組み合わせることにより規制条件を満たすことができる。
【0034】
なお、規制部68は、窪み部67を設けずとも、筐体52の側面部62から一体に突出する突出部や、筐体52の側面部62に別体の規制部材を設けることにより、灯具本体33の向きを規制するようにしてもよい。つまり、灯具本体33の向きの規制は灯具本体33とアーム部46との干渉、アーム部46と軸部66、あるいはその他の部材との係合により実現してもよい。
【0035】
また、灯具本体33は、光源50に対して所定の距離以上の人体および所定の距離未満の人体を検出する距離検出手段71、およびこの距離検出手段71により人体が所定の距離以上にあることを検出したときに光源50を点灯し、所定の距離未満に人体があることを検出したときに光源50を消灯する制御手段72を備えている。
【0036】
距離検出手段71は、紫外線を照射する照射対象領域に対向するように、筐体52の前面部60で照射開口64の側部に設けられている。距離検出手段71は、人感センサ、反射形センサ、カメラ等の少なくとも1つを利用して検出する。人感センサを利用する場合、人感センサの感度を高感度と低感度とに所定時間毎に交互に変え、高感度とすることで光源50に対して所定の距離以上の人体を検出し、低感度とすることで光源50に対して所定の距離未満の人体を検出する。反射形センサを利用する場合、赤外線を照射し、人体等から反射してくる赤外線の受光に応じて、光源50に対して所定の距離以上の人体および所定の距離未満の人体を検出する。カメラを利用する場合、カメラの画角から光源50に対して所定の距離以上の人体および所定の距離未満の人体を検出する。
【0037】
制御手段72は、電源部26が備えているが、電源部26と別体で構成してもよい。
【0038】
次に、照明装置10を被取付面11に設置する場合には、被取付部材12の開口部13から引き出される電源線を埋込シャーシ16内に引き込むとともに端子台25に接続する。埋込シャーシ16を被取付部材12の開口部13に挿入し、フランジ部22を被取付面11に当接させた状態で、開口部13の上方の天井構造物から突出されている吊ボルトに対して埋込シャーシ16を取り付ける。
【0039】
灯具ユニット17の軸部40を挿通する配線により電源部26と灯具本体33の光源50とを電気的に接続する。灯具ユニット17の化粧枠30を埋込シャーシ16に挿入するとともに、フランジ部22を覆う縁枠部38を被取付面11に当接させた状態で、化粧枠30の各取付孔41を通じて埋込シャーシ16の内側に設けられているねじ受部に螺着される取付ねじ42により、灯具ユニット17を埋込シャーシ16に取り付ける。
【0040】
そして、照明装置10を被取付面11に設置した後、紫外線の照射方向を調整する。
【0041】
軸部40を中心として、灯具本体33を水平方向に回転させることにより、灯具本体33の水平方向の向きであって、紫外線を照射する照射開口64の水平方向の向きを調整する。
【0042】
軸部66を中心として、アーム32に対して灯具本体33を上下方向に回転させることにより、灯具本体33の上下方向の向きであって、紫外線を照射する照射開口64の上下方向の向きを調整する。
【0043】
このとき、灯具本体33は、規制部68により、軸部66を中心として、筐体52の窪み部67の両側側縁であるストッパ部67aがアーム部46の幅方向の縁部にそれぞれ接触する範囲内で回転可能とする。
【0044】
規制部68では、灯具本体33の向きを変化させたときに、傾斜部65(第1傾斜部65a)の外方に向けて広がる傾斜方向S1が被取付面11に平行な方向S2よりも前面側(被取付面11から離れる側)となるように灯具本体33の向きを規制する。
【0045】
そのため、光源50を点灯させることにより、光源50からの紫外線が透光カバー51を透過して筐体52の照射開口64から外部に照射されるが、紫外線は、傾斜部65によって被取付面11よりも前面側に照射され、被取付面11に紫外線が照射されるのが抑制される。これにより、紫外線の照射による被取付面11の劣化が抑制されるとともに、被取付面11に紫外線検知型の煙感知器が設置されている場合でも、この煙感知器に紫外線が照射されるのを防止でき、煙感知器が誤作動するのを防止できる。
【0046】
そして、照明装置10は、光源50の点灯により、灯具本体33が向けられた所定の照射領域に紫外線を照射し、照射領域に存在する人体や設置物などの表面を除菌する。
【0047】
また、光源50の点灯中に、紫外線の照射領域に存在する人体が光源50をのぞき込むような場合が想定される。そのため、距離検出手段71により人体との距離を検出し、人体が所定の距離未満にあることを検出したときには光源50を消灯させることにより、人体の目に紫外線が照射される影響を低減する。また、人体が所定の距離以上にあることを検出したときには、人体への影響が少ないため、光源50を点灯させ、適切に殺菌する。
【0048】
このように、本実施形態の照明装置10では、灯具本体33の向きを変化させたときに、筐体52の傾斜部65の外方に向けて広がる傾斜方向が被取付面11に平行な方向よりも前面側となるように灯具本体33の向きが規制されているため、紫外線の照射方向を変更可能でありながら、被取付面11への紫外線の照射を抑制できるとともに煙感知器の誤動作を防止することができる。
【0049】
また、距離検出手段71により人体との距離を検出し、人体との距離に応じて光源50を消灯または点灯させることにより、人体への影響を少なくし、適切に殺菌できる。
【0050】
なお、本実施形態の照明装置10の構成は、被取付面11に直付けする直付形照明装置等にも適用できる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 照明装置
11 被取付面
15 取付部
31 保持部
33 灯具本体
50 光源
51 透光カバー
52 筐体
60 前面部
64 照射開口
65 傾斜部
71 距離検出手段
Z 中心線