(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ステム電極及び端部電極を使用する電極-組織接触の推定
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240805BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020142371
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-29
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535739(JP,A)
【文献】特開2016-147018(JP,A)
【文献】特表2016-524480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331459(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351836(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0255162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61N 7/00
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の器官の空洞部内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された膨張可能なフレームであって、前記膨張可能なフレームが、前記
膨張可能なフレームの外表面上に配置された1つ以上のアブレーション電極を備え、前記1つ以上のアブレーション電極が、前記空洞部の壁組織と接触して配置されるように構成されている、膨張可能なフレームと、
前記
膨張可能なフレームより近位で、前記シャフトの前記遠位端に連結されたステム電極と、前記
膨張可能なフレームより遠位で、前記シャフトの前記遠位端に連結された端部電極と、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記
1つ以上のアブレーション電極のうちの1つ以上と前記ステム電極との間の1つ以上の第1のインピーダンスを測定し、
前記
1つ以上のアブレーション電極のうちの1つ以上と前記端部電極との間の1つ以上の第2のインピーダンスを測定し、
前記第1のインピーダンス及び前記第2のインピーダンスに基づいて、前記1つ以上のアブレーション電極の中から少なくともあるアブレーション電極について、前記
あるアブレーション電極が前記壁組織と物理的に接触しているか否かを、判定する
ように構成されている、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、測定された
前記第1のインピーダンス又は
前記第2のインピーダンスが、少なくとも予め指定された最小値だけ予め指定されたインピーダンスよりも大きいと判定することによって、前記
あるアブレーション電極が前記
壁組織と物理的に接触していると判定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記
あるアブレーション電極が血液と接触している状態で、前記予め指定されたインピーダンスが測定される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記予め指定された最小値が、ルックアップテーブルに記憶されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサの制御下で、(i)前記
1つ以上のアブレーション電極と前記ステム電極との間、及び前記
1つ以上のアブレーション電極と前記端部電極との間のインピーダンスを測定する第1の構成と、(ii)前記
1つ以上のアブレーション電極と1つ以上の体表面電極との間のインピーダンスを測定する第2の構成と、(iii)前記
1つ以上のアブレーション電極とバックパッチ電極との間で電気信号を駆動することによってアブレーションを実行する第3の構成とのうちの2つ以上の間を切り換えるように構成されたリレーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記膨張可能なフレームが膨張可能なバルーンを含み、前記
膨張可能なフレームの前記外表面が、前記
膨張可能なバルーンの膜の外表面を含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療用プローブに関し、特に、多電極アブレーションカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓組織とのカテーテルの電極の接触を検証するための様々な技法が、特許文献に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2007/0255162号は、複数の電極を有するシャフトを有するカテーテルを提供し、カテーテルを組織治療部位に位置決めし、複数の電極のうちの少なくとも2つの間に電流を印加し、複数の電極のうちの少なくとも2つの間のインピーダンス電圧を測定し、印加された電流によって生じた測定されたインピーダンス電圧を処理して、接触評価を提供することにより、組織治療部位にカテーテルを配置することによって、組織接触評価を提供するための方法及びシステムを記載している。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2012/0143179号は、バルーンカテーテルを含む複数のカテーテルベースのアブレーション装置の実施形態を説明しており、これは、心房標的組織の複数の領域に対処し、組織接触への堅固かつ一貫したアブレーション要素を特徴とし、効果的な連続するアブレーション処理部位の生成を可能にする。一実施形態において、バルーンの直ぐ近位でバルーンカテーテルシャフト上に位置付けられた参照電極と共に、バルーンカテーテルの遠位リング電極にエネルギーが加えられ得る。バルーンがPVを確実に閉塞した場合、インピーダンスが上昇し、測定値を使用してPV閉塞を検証することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある実施形態は、膨張可能なフレーム及びプロセッサを含むシステムを提供する。膨張可能なフレームは、患者の器官の空洞部内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結され、フレームの外表面上に配置された1つ以上のアブレーション電極を含み、1つ以上のアブレーション電極は、空洞部の壁組織と接触して配置されるように構成されている。膨張可能なバルーンは、バルーンより近位で、シャフトの遠位端に連結されたステム電極と、バルーンより遠位で、シャフトの遠位端に連結された端部電極とを更に含む。プロセッサは、(a)アブレーション電極のうちの1つ以上とステム電極との間の1つ以上の第1のインピーダンスを測定し、(b)アブレーション電極のうちの1つ以上と端部電極との間の1つ以上の第2のインピーダンスを測定し、(c)第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスに基づいて、1つ以上のアブレーション電極の中から少なくともあるアブレーション電極について、アブレーション電極が壁組織と物理的に接触しているか否かを判定するように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態において、測定された第1のインピーダンス又は第2のインピーダンスが、少なくとも予め指定された最小値だけ予め指定されたインピーダンスよりも大きいと判定することによって、プロセッサは、アブレーション電極が組織と物理的に接触していると判定するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態において、アブレーション電極が血液と接触している状態で、予め指定されたインピーダンスが測定される。
【0007】
一実施形態において、予め指定された最小値が、ルックアップテーブルに記憶されている。
【0008】
別の実施形態において、システムは、プロセッサの制御下で、(i)アブレーション電極とステム電極との間、及びアブレーション電極と端部電極との間のインピーダンスを測定するための第1の構成と、(ii)アブレーション電極と1つ以上の体表面電極との間のインピーダンスを測定するための第2の構成と、(iii)アブレーション電極とバックパッチ電極との間で電気信号を駆動することによってアブレーションを実行するための第3の構成とのうちの2つ以上の間を切り換えるように構成されたリレーを更に含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、膨張可能なフレームは膨張可能なバルーンを含み、フレームの外表面は、バルーンの膜の外表面を含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、患者の器官の空洞部内に、シャフトの遠位端に連結された膨張可能なバルーンを挿入することを含む方法であって、膨張可能なバルーンが、バルーンの膜の外表面上に配置された1つ以上のアブレーション電極と、バルーンより近位で、シャフトの遠位端に連結されたステム電極と、バルーンより遠位で、シャフトの遠位端に連結された端部電極とを含む、方法が更に提供される。アブレーション電極のうちの1つ以上は、空洞部の壁組織と接触させて配置される。アブレーション電極のうちの1つ以上とステム電極との間の1つ以上の第1のインピーダンスが測定される。アブレーション電極のうちの1つ以上と端部電極との間の1つ以上の第2のインピーダンスが測定される。第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスに基づいて、1つ以上のアブレーション電極の中から少なくともあるアブレーション電極について、アブレーション電極が壁組織と物理的に接触しているか否かが判定される。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による、バルーンの形態のアブレーション膨張可能なカテーテルを備えるカテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、空洞部壁組織と物理的に接触している
図1のバルーンカテーテルの概略図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による、アブレーション電極が、それぞれ組織と部分的に接触し、組織と完全に接触している間の、端部電極に連結されたアブレーション電極の概略電気図である。
【
図3B】本発明の一実施形態による、アブレーション電極が、それぞれ組織と部分的に接触し、組織と完全に接触している間の、端部電極に連結されたアブレーション電極の概略電気図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、アブレーション電極の組織との完全な接触を判定するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
バルーンアブレーションカテーテル又はバスケットカテーテルなどの多電極アブレーションカテーテルは、典型的には、患者の器官の空洞部内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された膨張可能なフレーム(例えば、膨張可能なバルーン)を備える。アブレーション処置の最良の結果のために、医師は、フレーム(例えば、バルーン)の上に配置されたアブレーション電極のそれぞれが、アブレーションされる空洞部壁組織と物理的に接触していることを判定する必要があり得る。例えば、複数のアブレーション電極を有するバルーンカテーテルが、肺室(PV)の心門をアブレーションするために使用されるとき、典型的には、カテーテルのアブレーション電極の全ては、PV組織と完全に接触するように位置付けられるべきである。
【0014】
しかしながら、多くの場合、アブレーション電極の一部は組織と完全に接触していないことがあるが、代わりに、アブレーション電極の一部の異なる部分は血液中に浸漬される。これらの電極では、加えられた電力は、組織をアブレーションするのではなく、血塊形成などの望ましくない影響を引き起こし得る。
【0015】
以下に記載される本発明の実施形態は、アブレーション電極が組織と完全に接触しているか否か(例えば、組織によって完全に覆われている)を判定することができるシステム及び方法を提供する。いくつかの実施形態において、(i)少なくとも1つ以上のアブレーション電極と、(ii)バルーンの直ぐ近位でシャフトの遠位端上に配置された電極(以下、「ステム電極」という)と、(iii)バルーンの直ぐ遠位でシャフトの遠位端上に配置された電極(以下、「端部電極」という)と、を備えるバルーンアブレーションカテーテルが提供される。各アブレーション電極とステム電極、及びアブレーション電極と端部電極との間のインピーダンス測定値を使用して、アブレーションシステムのプロセッサは、アブレーション電極が組織と完全に接触しているか否かを、各アブレーション電極について判定する。
【0016】
いくつかの実施形態において、システムのプロセッサは、組織と接触することが意図されたアブレーション電極と、アブレーション電極が血液に少なくとも部分的に露出されているときのステム及び端部電極との間の測定されたin-situインピーダンスを、同じ測定されたインピーダンスと比較する。完全接触の場合、その場で測定されるインピーダンスは、少なくとも予め指定された最小値だけ、血液中のアブレーション電極で測定されたインピーダンスよりも大きくなければならない。例えば、既に組織と完全に接触している電極の数に応じて、インピーダンス差の異なる最小値が予め指定され得る。予め指定された最小値は、例えば、ルックアップテーブル内に記憶され得る。
【0017】
上述の予め指定された最小インピーダンス差値は、数kHzの典型的なRF周波数で判定され、ここでは心臓組織インピーダンスは、典型的には血液のインピーダンスよりも数倍高い(場合によっては、組織中約300Ω、血液中約100Ω)。RF周波数の関数としての組織対血液インピーダンスに関する更なる情報は、例えば、「Medical Instrumentation:Application and Design,」Webster(ed.)3rd Ed.,John Wiley&Sons,Inc.,New-York,1998において入手できる。
【0018】
開示される測定形状は、血液及び組織における同等の経路長を伴うため、測定されたインピーダンスは、異なる組織特性に起因して主に変化する。開示された技法のこの特性は、血液接触と組織接触との間の測定値に基づいて、プロセッサによって行われる区別の高い確実性を与える。
【0019】
組織との完全な物理的接触が、細長いアブレーション電極の両端(すなわち、近位及び遠位)から達成されたことを確認するために、ステム電極及び端部電極に対して測定を実行する必要がある。
【0020】
全てのアブレーション電極について完全な物理的接触が達成されない場合、医師は、開示された技法を使用して、バルーンカテーテルを操作して、組織とのアブレーション電極のより完全な接触を確立し、接触が十分であるか再度確認し得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、器官内のバルーンカテーテルの位置を測定するために、アブレーションシステムは、アブレーション電極と表面電極との間のインピーダンスを測定する位置追跡サブシステムを含む。以下に更に記載される方法は、Advanced Catheter Location(ACL)と呼ばれることもある。リレーを使用して、システムは、アブレーション電極と表面電極との間、並びにバルーンカテーテルのアブレーション電極とステム電極及び端部電極との間の電気的接続を切り換えて、電極位置と、その位置における組織との電極接触の程度とを互換的に測定することができる。
【0022】
更に、リレーを使用して、システムは、アブレーション電極と(接触を評価するための)ステム電極及び端部電極のいずれか、又は(位置を測定するための)表面電極との間の電気的接続をバックパッチ電極に切り換えて、アブレーション電極とバックパッチ電極との間で電気信号を駆動することによってアブレーションを行うことができる。
【0023】
通常、プロセッサは、以下に概説されるプロセッサ関連のステップ及び機能のそれぞれをプロセッサが実行することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアでプログラムされる。
【0024】
組織と完全に接触しているアブレーション電極及び組織と完全に接触していないアブレーション電極をリアルタイムで判定することによって、開示される技法は、多電極アブレーション処置の安全性及び有効性を増大させ得る。
【0025】
システムの説明
本明細書で任意の数値又は数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指すことがあり、例えば、「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指すことがある。更に、本明細書で使用するとき、「患者」、「ホスト」、「ユーザ」、及び「被験者」という用語は、任意のヒト又は動物対象を指し、システム又は方法をヒトにおける使用に限定することを意図していないが、ヒト患者における本発明の使用は、好ましい実施形態を代表するものである。
図1は、本発明の実施形態による、アブレーションバルーンカテーテル40を備えるカテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステム20の概略図である。典型的には、バルーンカテーテル40は、例えば、左心房において心臓組織のアブレーションなどの治療処置に使用される。システム20は、シャフト22の遠位端に連結された、挿入
図25内に見られるバルーンカテーテル40の位置を判定するために使用される。システム20は、例えば、アブレーションを行う前に、バルーンカテーテル40のアブレーション電極50のそれぞれが組織と接触しているか否かを判定するために更に使用される。
【0026】
医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用して、及び/又はシース23からの偏向を使用して、シャフト22を操作することによって、バルーンカテーテル40を患者28の心臓26内の標的位置に誘導する。バルーンカテーテル40は、シース23を通じて折り畳まれた構成で挿入され、バルーンがシース23から引っ込められた後にだけ、バルーンカテーテル40は、その意図された機能的形状を取り戻す。バルーンカテーテル40を折り畳まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的位置への途中で血管外傷を最小限に抑える働きをする。
【0027】
バルーンカテーテル40は、バルーン膜の外側表面上に配置された細長い大面積アブレーション電極50を備える。ステム電極51は、バルーンの直ぐ近位で、シャフト22の遠位端上に配置されている。端部電極52は、バルーンの直ぐ遠位で、シャフト22の遠位端上に配置されている。電極51及び52は、アブレーション電極50のそれぞれが組織と完全に接触しているか、又は少なくとも部分的に血液に浸漬されているか否かを判定するために使用される。
【0028】
アブレーション電極50、ステム電極51及び端部電極52は、シャフト22を通るワイヤによってコンソール24内のインタフェース回路44に接続される。アブレーション電極50、ステム電極51及び端部電極52を備えるバルーンカテーテル40の詳細図を
図2に示す。
【0029】
加えて、前述のACL方法を用いて、アブレーション電極50を使用して、ケーブル39を通るワイヤによって患者の28胸部に取り付けられた例示されたシステムに見られる表面電極49に対するインピーダンスを検知することによって、心臓26内のバルーンカテーテル40の位置を測定することができる。電極50の位置を追跡するACL方法は、様々な医療用途に、例えば、Biosense-Webster(Irvine,California)製のCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第7,756,576号、同第7,869,865号、同第7,848,787号、及び同第8,456,182号に詳述されており、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。コンソール24は、心臓26内のバルーンカテーテル40の追跡位置を示すディスプレイ27を駆動する。
【0030】
コンソール24は、プロセッサ41、典型的には汎用コンピュータ、並びにRF信号及び位置信号などの信号をそれぞれ送信及び受信するための好適なフロントエンド及びインタフェース回路44を含む。インタフェース回路44はまた、表面電極49から、及び/又はカテーテル上に配置された任意の電極から心電図を受信してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、プロセッサ41は、システム20内のリレー60を制御して、(i)アブレーション電極と1つ以上の体表面電極との間のインピーダンスを測定するためのアブレーション電極と表面電極49との間の接続部(62)を有する第1の構成と、(ii)アブレーション電極とステム電極との間、及びアブレーション電極と端部電極との間のインピーダンスを測定するためのバルーンカテーテルのアブレーション電極とステム電極との間、及びアブレーション電極と端部電極との間の接続部(64)を有する第2の構成であって、接続部62及び64が、電極位置と、その位置における組織との電極接触の程度とを互換的に測定するために使用される、第2の構成と、(iii)アブレーション電極とバックパッチ電極(図示せず)との間で電気信号を駆動することによってアブレーションを実行するための接続部(66)と、のうちの2つ以上の間の電気接続を切り換えさせる。
【0032】
プロセッサ41は、本明細書に述べられる機能を実施するために、通常はソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替的に若しくは付加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上に提供及び/若しくは記憶されてもよい。特に、プロセッサ41は、
図4に含まれている本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行し、これは、以下で更に説明するように、本開示のステップをプロセッサ41が行うことを可能にする。
【0033】
図1は、簡潔性かつ明瞭性のため、開示技法に関連する要素のみを示す。システム20は、典型的には、灌注及び温度モジュールなどの開示された技法に直接関係しない追加のモジュール及び要素を備え、したがって、
図1及び対応する説明から意図的に省略されている。
【0034】
ステム電極及び端部電極を使用したバルーン電極-組織接触の推定
図2は、本発明の一実施形態による、空洞部壁組織48と物理的に接触している
図1のバルーンカテーテル40の概略図である。バルーンカテーテル40は、バルーンの膜46の上に配置されたアブレーション電極50を備える。ステム電極51及び端部電極52は、シャフト22の遠位端上に配置され、血液55に浸漬される。
【0035】
見られるように、バルーンの頂部のアブレーション電極50は、組織と完全に接触しており、すなわち、電極の全領域にわたって接触している。一方、底部にある電極50は、血液55に浸漬された遠位領域50aを有する。それに対応して、頂部及び底部アブレーション電極と端部電極52との間の異なる測定されたインピーダンス値は、それぞれ組織との頂部及び底部アブレーション電極の完全及び部分的接触を示し、
図3に説明されている。
【0036】
図2は、例として示したものであり、提示を明確にするために簡略化されている。例えば、温度センサ及び灌注穴などの、具体化された発明に関連しないバルーン要素は、簡略化のために省略される。
【0037】
図3A及び3Bは、本発明の一実施形態による、アブレーション電極50が、それぞれ組織48と部分的に接触し、組織と完全に接触している間の、端部電極52に連結されたアブレーション電極50の概略電気図である。
図3Aの図は、血液55に浸漬されて、組織接触が不十分な電極50をもたらす、
図2に見られる領域50aなどの遠位領域を有するアブレーション電極50の場合を説明する。見られるように、アブレーション電極50と端部電極52との間のインピーダンスは、血液及び/又は組織及び/又は他の導電性体内チャネルから生じ得るシャント抵抗R
Sに並列の、血液R
Bのインピーダンスに等しい。潔に述べると、これは|Z_不十分|=R
B||R
Sとして表される。最小値のZ_不十分は、バルーンが血液中にほとんど浸漬されて、その結果、シャント抵抗率が血液抵抗率によって支配される場合に、約R
B/2である。無限のシャント抵抗率の場合、最大値はR
Bである。典型的な血液抵抗値が約100Ωである場合、Z_不十分は50~100Ωの範囲になる。
【0038】
図3Bの図は、組織に完全に接触している(すなわち、その全体が覆われている)アブレーション電極50の場合を説明する。見られるように、アブレーション電極50と端部電極52との間のインピーダンスは、シャント抵抗R
Sに平行な、組織と直列の血液のものである、R
B+R
T。簡潔に述べると、これは|Z_十分|=(R
B+R
T)||R
Sとして表される。組織インピーダンスは血液のインピーダンスよりもかなり大きいため、上述のように、「十分な」インピーダンスは、測定するのに十分な大きさの値、例えば、少なくとも数Ωだけ「不十分な」インピーダンスよりも大きくなる可能性があり、したがって、開示された方法では、例えば、較正されたしきい値インピーダンス値を使用して、2つの場合を区別できる。
【0039】
最小値のZ_十分は、バルーンが血液中にほとんど浸漬されて、その結果、シャント抵抗率が血液抵抗率によって支配される場合に、約RBであり、この場合、シャント抵抗率が低いためにバルーンの再配置が必要となる。シャント抵抗率が主に組織を経由する場合、Z_十分の実際的なしきい値はRTである。約100Ωの典型的な血液抵抗値と300Ωの組織抵抗値の場合、Z_十分は150Ωを超える。約100Ωを超えるより低い数値も、例えば測定の再現性に応じて、Z_十分のしきい値として使用できる。
【0040】
いくつかの実施形態において、測定された第1のインピーダンス又は第2のインピーダンスが、例として表Iの形態を有するルックアップテーブルに与えられた少なくとも予め指定された最小値だけ予め指定されたインピーダンスよりも大きいと判定することによって、プロセッサ41は、アブレーション電極が組織と物理的に接触していると判定するように構成されている。
【0041】
【0042】
図3A及び3Bは、ステム電極51に完全に適用可能である。アブレーション電極50と、両方のステム電極51と端部電極52との間のインピーダンスを測定することによって、開示された技法は、組織との完全な物理的接触が細長いアブレーション電極の両端から達成されたことを検証する。
【0043】
図3A及び3Bに示される電気図は、概念を提示することを目的として、非常に単純化されている。実際の値は、経験的に、又はより精巧な電気モデルによって判定され得る。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態による、アブレーション電極の組織との完全な接触を判定するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。本実施形態によるアルゴリズムは、バルーン位置決めステップ80において、医師30が、肺静脈の心門などの心臓26の心腔内の標的位置に、部分的に膨張したバルーンカテーテル40を位置決めすることから始まるプロセスを実行する。次に、医師30は、バルーン拡張ステップ82において、バルーンを拡張して、アブレーション電極50を組織と完全に接触させる。次に、インピーダンス測定ステップ74において、システム20は、アブレーション電極50とステム(51)及びアブレーション電極と端部電極(52)のそれぞれとの間のインピーダンスを測定する。
【0045】
物理的接触判定ステップ86で、測定されたインピーダンスに基づいて、プロセッサ41は、各アブレーション電極50について、上記で定義されたように、電極が組織と完全に接触しているか否かを判定する。接触チェックステップ88において、全てのアブレーション電極50が組織と完全に接触しているとプロセッサが判定した場合、アブレーションステップ90において、プロセスはアブレーションを実行し続ける。一方、1つ以上の電極が(電極(複数可)によって測定したインピーダンスが不十分(表I)なため)組織との接触が不十分であるとプロセッサ41によって判定された場合、医師30は次に接触の改善を試みてバルーンカテーテル40を再配置し、プロセスはループしてステップ84に戻り、接触の十分性を再評価する。
【0046】
図4に示す例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されている。本実施形態はまた、心臓内心電図を取得するなど、アルゴリズムの追加のステップも含み、これらは、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書の開示から省略されている。加えて、提示を明確にするために、温度測定及び灌注の適用などの他のステップは省略されている。
【0047】
本明細書に記述される実施形態は、主として心臓での用途に関するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、例えば腎臓神経除去などの他の用途で用いることもできる。
【0048】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
患者の器官の空洞部内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された膨張可能なフレームであって、前記膨張可能なフレームが、前記フレームの外表面上に配置された1つ以上のアブレーション電極を備え、前記1つ以上のアブレーション電極が、前記空洞部の壁組織と接触して配置されるように構成されている、膨張可能なフレームと、
前記バルーンより近位で、前記シャフトの前記遠位端に連結されたステム電極と、前記バルーンより遠位で、前記シャフトの前記遠位端に連結された端部電極と、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記アブレーション電極のうちの1つ以上と前記ステム電極との間の1つ以上の第1のインピーダンスを測定し、
前記アブレーション電極のうちの1つ以上と前記端部電極との間の1つ以上の第2のインピーダンスを測定し、
前記第1のインピーダンス及び前記第2のインピーダンスに基づいて、前記1つ以上のアブレーション電極の中から少なくともあるアブレーション電極について、前記アブレーション電極が前記壁組織と物理的に接触しているか否かを、判定する
ように構成されている、システム。
(2) 前記プロセッサは、測定された第1のインピーダンス又は第2のインピーダンスが、少なくとも予め指定された最小値だけ予め指定されたインピーダンスよりも大きいと判定することによって、前記アブレーション電極が前記組織と物理的に接触していると判定するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記アブレーション電極が血液と接触している状態で、前記予め指定されたインピーダンスが測定される、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記予め指定された最小値が、ルックアップテーブルに記憶されている、実施態様2に記載のシステム。
(5) 前記プロセッサの制御下で、(i)前記アブレーション電極と前記ステム電極との間、及び前記アブレーション電極と前記端部電極との間のインピーダンスを測定する第1の構成と、(ii)前記アブレーション電極と1つ以上の体表面電極との間のインピーダンスを測定する第2の構成と、(iii)前記アブレーション電極とバックパッチ電極との間で電気信号を駆動することによってアブレーションを実行する第3の構成とのうちの2つ以上の間を切り換えるように構成されたリレーを備える、実施態様1に記載のシステム。
【0050】
(6) 前記膨張可能なフレームが膨張可能なバルーンを含み、前記フレームの前記外表面が、前記バルーンの膜の外表面を含む、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記予め指定されたインピーダンスが、前記電極によって測定して約100~約130Ωを含む、実施態様4に記載のシステム。
(8) 方法であって、
患者の器官の空洞部内に、シャフトの遠位端に連結された膨張可能なフレームを挿入することであって、前記膨張可能なフレームが、前記フレームの外表面上に配置された1つ以上のアブレーション電極と、前記バルーンより近位で、前記シャフトの前記遠位端に連結されたステム電極と、前記バルーンより遠位で、前記シャフトの前記遠位端に連結された端部電極とを備える、ことと、
前記アブレーション電極のうちの1つ以上を前記空洞部の壁組織と接触させて配置することと、
前記アブレーション電極のうちの1つ以上と前記ステム電極との間の1つ以上の第1のインピーダンスを測定することと、
前記アブレーション電極のうちの1つ以上と前記端部電極との間の1つ以上の第2のインピーダンスを測定することと、
前記第1のインピーダンス及び前記第2のインピーダンスに基づいて、前記1つ以上のアブレーション電極の中から少なくともあるアブレーション電極について、前記アブレーション電極が前記壁組織と物理的に接触しているか否かを判定することと
を含む、方法。
(9) 前記アブレーション電極が前記組織と物理的に接触していると判定することは、測定された第1のインピーダンス又は第2のインピーダンスが、少なくとも予め指定された最小値だけ予め指定されたインピーダンスよりも大きいと判定することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記アブレーション電極が血液と接触している状態で、前記予め指定されたインピーダンスが測定される、実施態様9に記載の方法。
【0051】
(11) 前記予め指定された最小値が、ルックアップテーブルに記憶されている、実施態様10に記載の方法。
(12) (i)前記アブレーション電極と前記ステム電極との間、及び前記アブレーション電極と前記端部電極との間のインピーダンスを測定する第1の構成と、(ii)前記アブレーション電極と1つ以上の体表面電極との間のインピーダンスを測定する第2の構成と、(iii)前記アブレーション電極とバックパッチ電極との間で電気信号を駆動することによってアブレーションを実行する第3の構成とのうちの2つ以上の間を切り換えることを含む、実施態様8に記載の方法。
(13) 膨張可能なフレームを挿入することが、前記バルーンの膜の外表面を有する膨張可能なバルーンを挿入することを含む、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記予め指定されたインピーダンスが、前記電極によって測定して約100~約130Ωを含む、実施態様11に記載の方法。