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特許7532179中空基板集積導波路回路基板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】中空基板集積導波路回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/12 20060101AFI20240805BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240805BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01P3/12 100
H05K1/02 C
H01P11/00 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020165835
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057529
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小田 康明
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0128702(US,A1)
【文献】特開平08-172304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/12
H05K 1/02
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空基板集積導波路が内部に形成される中空基板集積導波路回路基板であって、
前記中空基板集積導波路の導波空間及び一対の対向壁面が形成される第1のコア部材と、
前記第1のコア部材と接着部材で接着され、前記中空基板集積導波路の他対の対向壁面のうちの各々の壁面が形成される第2のコア部材及び第3のコア部材と、を備え、
前記第2のコア部材及び前記第3のコア部材のうちの一方又は両方において、前記他対の対向壁面の電流方向と平行方向に延伸するスロット形状の穴が形成され、
前記導波空間と前記接着部材との間の境界位置において、めっきが形成される
ことを特徴とする中空基板集積導波路回路基板。
【請求項2】
前記他対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の広壁面であり、前記一対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の狭壁面であり、前記スロット形状の穴は、前記他対の対向壁面の中心軸上に形成され、前記他対の対向壁面の中心軸と平行方向に延伸する
ことを特徴とする、請求項1に記載の中空基板集積導波路回路基板。
【請求項3】
前記他対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の広壁面であり、前記一対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の狭壁面であり、前記スロット形状の穴は、前記他対の対向壁面の端部近傍に形成され、前記他対の対向壁面の中心軸と垂直方向に延伸する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の中空基板集積導波路回路基板。
【請求項4】
前記他対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の狭壁面であり、前記一対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の広壁面であり、前記スロット形状の穴は、前記他対の対向壁面の中心軸と垂直方向に延伸し、前記他対の対向壁面の全幅以下の長さを有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の中空基板集積導波路回路基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の中空基板集積導波路回路基板の製造方法であって、
前記導波空間及び前記一対の対向壁面が形成される前記第1のコア部材と、前記他対の対向壁面のうちの各々の壁面が形成され、一方又は両方に前記スロット形状の穴が形成される前記第2のコア部材及び前記第3のコア部材と、を前記接着部材で接着する工程と、
前記スロット形状の穴にめっき溶液を通過させ、前記導波空間と前記接着部材との間の境界位置に前記めっきを形成し、前記スロット形状の穴を通気口として、前記導波空間と前記接着部材との間の境界位置で前記めっきを乾燥させる工程と、
を順に備えることを特徴とする中空基板集積導波路回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中空基板集積導波路を回路基板内部に形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
中空基板集積導波路(Air-Filled Substrate Integrated Waveguide、AF-SIW)を回路基板内部に形成する技術が、非特許文献1等に開示されている。中空基板集積導波路は、誘電体導波管と比べて、低損失である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Anthony Ghiotto and Frederic Parment et al.,“Air-filled substrate integrated waveguide - A flexible and low loss technological platform”,[online],2017 13th International Conference on Advanced Technologies, Systems and Services in Telecommunications (TELSIKS),[令和2年6月3日検索],<URL:https://www.semanticscholar.org/paper/Air-filled-substrate-integrated-waveguide---A-and-Ghiotto-Parment/e2f66f200088e105bb5a96c43474dbf46b6e99a3>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の中空基板集積導波路回路基板の構成を図1に示す。図1の下段及び上段は、それぞれ、中空基板集積導波路回路基板Aの透過平面図及びP-P断面図を示す。中空基板集積導波路回路基板Aは、第1のコア部材1、第2のコア部材2、第3のコア部材3及びねじ4を備える。
【0005】
第1のコア部材1は、中空基板集積導波路の導波空間11及び狭壁面12が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、それぞれ、中空基板集積導波路の広壁面21、31が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、第1のコア部材1とねじ4でねじ止めされる。このように、ねじ4が必要であり、1枚の回路基板として製造不能となる。
【0006】
比較例の中空基板集積導波路回路基板の構成を図2に示す。図2の下段及び上段は、それぞれ、中空基板集積導波路回路基板Bの透過平面図及びQ-Q断面図を示す。中空基板集積導波路回路基板Bは、第1のコア部材1、第2のコア部材2、第3のコア部材3及びビア6を備える。
【0007】
第1のコア部材1は、中空基板集積導波路の導波空間11及び狭壁面12が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、それぞれ、中空基板集積導波路の広壁面21、31が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、第1のコア部材1と接着部材5で接着される。ビア6は、中空基板集積導波路の狭壁面12に沿って等間隔に形成される。
【0008】
このように、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51において、接着部材5が露出するため、接着部材5の誘電体損が生じてしまう。そして、中空基板集積導波路の狭壁面12に沿って等間隔に、ビア6が形成されても、接着部材5の誘電体損が生じてしまう。さらに、ビア6が必要であり、中空基板集積導波路回路基板Bが高コストとなる。
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、中空基板集積導波路を回路基板内部に形成するにあたり、1枚の回路基板として製造可能とするとともに、中空基板集積導波路回路基板を低コストとしたうえで、接着部材の誘電体損が生じることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、導波管スロットアンテナにおいて、広壁面又は狭壁面の電流方向と平行方向に延伸するスロットを形成したときには、導波空間から電波が放射されないことを応用する。つまり、中空基板集積導波路回路基板において、広壁面又は狭壁面の電流方向と平行方向に延伸するスロット形状の穴を形成することにより、導波空間から電波が漏れることを防止する。そして、中空基板集積導波路回路基板において、スロット形状の穴にめっき溶液を通過させ、導波空間と接着部材との間の境界位置にめっきを形成することにより、導波空間と接着部材との間の境界位置で接着部材の誘電体損が生じることを防止する。
【0011】
具体的には、本開示は、中空基板集積導波路が内部に形成される中空基板集積導波路回路基板であって、前記中空基板集積導波路の導波空間及び一対の対向壁面が形成される第1のコア部材と、前記第1のコア部材と接着部材で接着され、前記中空基板集積導波路の他対の対向壁面のうちの各々の壁面が形成される第2のコア部材及び第3のコア部材と、を備え、前記第2のコア部材及び前記第3のコア部材のうちの一方又は両方において、前記他対の対向壁面の電流方向と平行方向に延伸するスロット形状の穴が形成され、前記導波空間と前記接着部材との間の境界位置において、めっきが形成されることを特徴とする中空基板集積導波路回路基板である。
【0012】
また、本開示は、以上に記載の中空基板集積導波路回路基板の製造方法であって、前記導波空間及び前記一対の対向壁面が形成される前記第1のコア部材と、前記他対の対向壁面のうちの各々の壁面が形成され、一方又は両方に前記スロット形状の穴が形成される前記第2のコア部材及び前記第3のコア部材と、を前記接着部材で接着する工程と、前記スロット形状の穴にめっき溶液を通過させ、前記導波空間と前記接着部材との間の境界位置に前記めっきを形成し、前記スロット形状の穴を通気口として、前記導波空間と前記接着部材との間の境界位置で前記めっきを乾燥させる工程と、を順に備えることを特徴とする中空基板集積導波路回路基板の製造方法である。
【0013】
これらの構成によれば、中空基板集積導波路を回路基板内部に形成するにあたり、ねじを用いず1枚の回路基板として製造可能とするとともに、ビアを用いず中空基板集積導波路回路基板を低コストとしたうえで、接着部材の誘電体損が生じることを防止することができる。
【0014】
また、本開示は、前記他対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の広壁面であり、前記一対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の狭壁面であり、前記スロット形状の穴は、前記他対の対向壁面の中心軸上に形成され、前記他対の対向壁面の中心軸と平行方向に延伸することを特徴とする中空基板集積導波路回路基板である。
【0015】
この構成によれば、中空基板集積導波路の広壁面を回路基板と平行平面とするにあたり、本開示を適用することができる。つまり、広壁面の電流方向と殆ど平行方向にスロット形状の穴を延伸するため、導波空間から電波が漏れることを殆ど防止することができる。そして、スロット形状の穴から導波空間と接着部材との間の境界位置までの距離は遠いものの、導波空間と接着部材との間の境界位置へとめっき液を間接的でも導入することができる。
【0016】
また、本開示は、前記他対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の広壁面であり、前記一対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の狭壁面であり、前記スロット形状の穴は、前記他対の対向壁面の端部近傍に形成され、前記他対の対向壁面の中心軸と垂直方向に延伸することを特徴とする中空基板集積導波路回路基板である。
【0017】
この構成によれば、中空基板集積導波路の広壁面を回路基板と平行平面とするにあたり、本開示を適用することができる。つまり、広壁面の電流方向とほぼ平行方向にスロット形状の穴を延伸するため、導波空間から電波が漏れることをほぼ防止することができる。そして、スロット形状の穴から導波空間と接着部材との間の境界位置までの距離は近いため、導波空間と接着部材との間の境界位置へとめっき液を直接的に導入することができる。
【0018】
また、本開示は、前記他対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の狭壁面であり、前記一対の対向壁面は、前記中空基板集積導波路の広壁面であり、前記スロット形状の穴は、前記他対の対向壁面の中心軸と垂直方向に延伸し、前記他対の対向壁面の全幅以下の長さを有することを特徴とする中空基板集積導波路回路基板である。
【0019】
この構成によれば、中空基板集積導波路の狭壁面を回路基板と平行平面とするにあたり、本開示を適用することができる。つまり、狭壁面の電流方向と殆ど平行方向にスロット形状の穴を延伸するため、導波空間から電波が漏れることを殆ど防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本開示は、中空基板集積導波路を回路基板内部に形成するにあたり、1枚の回路基板として製造可能とするとともに、中空基板集積導波路回路基板を低コストとしたうえで、接着部材の誘電体損が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術の中空基板集積導波路回路基板の構成を示す図である。
図2】比較例の中空基板集積導波路回路基板の構成を示す図である。
図3】本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板の構成を示す図である。
図4】本開示の第1の中空基板集積導波路スロット穴の位置を示す図である。
図5】本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板の製法を示す図である。
図6】本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板の製法を示す図である。
図7】本開示及び比較例の中空基板集積導波路回路基板の特性を示す図である。
図8】本開示の第2の中空基板集積導波路回路基板の構成を示す図である。
図9】本開示の第2の中空基板集積導波路スロット穴の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0023】
(本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板)
本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板の構成を図3に示す。本開示の第1の中空基板集積導波路スロット穴の位置を図4に示す。図3の下段及び上段は、それぞれ、中空基板集積導波路回路基板Cの透過平面図及びR-R断面図を示す。図4の上段及び下段は、それぞれ、中空基板集積導波路の電流分布及びスロット形状の穴の形成位置を示す。中空基板集積導波路回路基板Cは、第1のコア部材1、第2のコア部材2及び第3のコア部材3を備える。
【0024】
第1の本開示では、中空基板集積導波路の広壁面21、31を回路基板と平行平面とする。ここで、導波管スロットアンテナにおいて、広壁面の電流方向と平行方向に延伸するスロットを形成したときには、導波空間から電波が放射されないことを応用する。つまり、中空基板集積導波路回路基板Cにおいて、広壁面21、31の電流方向と平行方向に延伸するスロット形状の穴22、23、32、33を形成することにより、導波空間11から電波が漏れることを防止する。そして、中空基板集積導波路回路基板Cにおいて、スロット形状の穴22、23、32、33にめっき溶液を通過させ、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51にめっきを形成することにより、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51で接着部材5の誘電体損が生じることを防止する。以下に、第1の本開示を具体的に説明する。
【0025】
第1のコア部材1は、中空基板集積導波路の導波空間11及び狭壁面12が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、それぞれ、中空基板集積導波路の広壁面21、31が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、第1のコア部材1と接着部材5で接着される。第1の本開示では、ねじ4は不要であり、ビア6も不要である。
【0026】
第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、それぞれ、広壁面21、31の電流方向と平行方向に延伸するスロット形状の穴22、23、32、33が形成される。具体的には、スロット形状の穴22、32は、それぞれ、広壁面21、31の中心軸上に形成され、広壁面21、31の中心軸と平行方向に延伸する。その一方で、スロット形状の穴23、33は、それぞれ、広壁面21、31の端部近傍に形成され、広壁面21、31の中心軸と垂直方向に延伸する。スロット形状の穴22、23、32、33を用いて、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51において、めっきが形成される。
【0027】
ここで、スロット形状の穴22、32は、スロット長さを伸ばしたときでも、広壁面21、31の電流方向と殆ど平行方向に延伸すると言えるが、製造工程及び製造誤差を低減するために、スロット長さを例えばλ/2以下(λは、真空中の電波波長。)にすることが望ましい。そして、スロット形状の穴22、32は、導波方向間隔を短くすれば、めっき溶液を通過させやすくなるが、製造工程及び製造誤差を低減するために、導波方向間隔を例えばλ/2以上(λは、導波空間11中の電波波長。)にすることが望ましい。
【0028】
一方で、スロット形状の穴23、33は、スロット長さを短くしなければ、広壁面21、31の電流方向とほぼ平行方向に延伸すると言えず(図4の上段の電流分布を参照。)、スロット長さをできるだけ短くすることが望ましい(例えば、スロットの管内部分の長さ=広壁面幅の約20%)。そして、スロット形状の穴23、33は、導波方向間隔を短くすれば、めっき溶液を通過させやすくなるが、狭壁面12の電流分布を妨害しないために(図4の上段の電流分布を参照。)、導波方向間隔をできるだけ長くすることが望ましい。
【0029】
本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板の製法を図5及び図6に示す。図5の上段では、第1のコア部材1において、導波空間11をドリル加工等で形成し、狭壁面12をめっきで形成する。ここで、スロット形状の穴22、23、32、33を用いて、狭壁面12において、めっきを形成してもよい。図5の下段では、第2のコア部材2及び第3のコア部材3において、それぞれ、広壁面21、31を地板面で形成し、スロット形状の穴22、23、32、33をドリル加工等で形成する。ここで、スロット形状の穴22、23、32、33の内縁は、誘電体を露出されており、めっきを形成されていない。
【0030】
図6の上段では、第1のコア部材1と、第2のコア部材2及び第3のコア部材3と、を接着部材5で接着する。なお、接着部材5として、プリプレグ等が挙げられる。ここでも、スロット形状の穴22、23、32、33の内縁は、誘電体を露出されている。そして、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51は、接着部材5を露出されている。
【0031】
図6の下段では、スロット形状の穴22、23、32、33にめっき溶液を通過させ、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51にめっきを形成し、スロット形状の穴22、23、32、33を通気口として、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51でめっきを乾燥させる。なお、めっき工程として、図6の上段に示した中空基板集積導波路回路基板Cをめっき浴槽に浸漬する湿式めっき工程等が挙げられる。ここでは、スロット形状の穴22、23、32、33の内縁は、めっきを形成されている。そして、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51も、めっきを形成されている。
【0032】
本開示及び比較例の中空基板集積導波路回路基板の特性を図7に示す。「本開示」及び「比較例」は、それぞれ、第1の本開示及び比較例の中空基板集積導波路回路基板C、Bを示す。
【0033】
比較例の中空基板集積導波路回路基板Bでは、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51において、電界強度が集中するとともに、境界位置51⇔ビア6の経路で、回り込み電流が発生する。よって、電波伝搬特性S21は、第1の本開示と比べて劣化し、ビア6の導波方向間隔及びビア6と狭壁面12との間の距離に応じて周波数特性を有する。
【0034】
本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板Cでは、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51において、電界強度が集中するものの、めっきが形成されており、回り込み電流が発生しない。よって、電波伝搬特性S21は、比較例と比べて向上し、スロット形状の穴22、23、32、33の導波方向間隔によらず周波数特性を有さない。
【0035】
このように、中空基板集積導波路を回路基板内部に形成するにあたり、ねじ4を用いず1枚の回路基板として製造可能とするとともに、ビア6を用いず中空基板集積導波路回路基板Cを低コストとしたうえで、接着部材5の誘電体損が生じることを防止することができる。そして、中空基板集積導波路の広壁面21、31を回路基板と平行平面とすることができる。
【0036】
具体的には、広壁面21、31の電流方向と殆ど平行方向にスロット形状の穴22、32を延伸するため(図4の電流分布及びスロット位置を参照。)、導波空間11から電波が漏れることを殆ど防止することができる。そして、スロット形状の穴22、32から導波空間11と接着部材5との間の境界位置51までの距離は遠いものの、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51へとめっき液を間接的でも導入することができる。
【0037】
その一方で、広壁面21、31の電流方向とほぼ平行方向にスロット形状の穴23、33を延伸するため(図4の電流分布及びスロット位置を参照。)、導波空間11から電波が漏れることをほぼ防止することができる。そして、スロット形状の穴23、33から導波空間11と接着部材5との間の境界位置51までの距離は近いため、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51へとめっき液を直接的に導入することができる。
【0038】
第1の本開示では、第2のコア部材2及び第3のコア部材3において、スロット形状の穴22、23、32、33が形成されている。第1の変形例として、第2のコア部材2のみにおいて、スロット形状の穴22、23が形成されてもよい。第2の変形例として、第3のコア部材3のみにおいて、スロット形状の穴32、33が形成されてもよい。第3の変形例として、第2のコア部材2及び第3のコア部材3において、スロット形状の穴22、32のみが形成されてもよい。第4の変形例として、第2のコア部材2及び第3のコア部材3において、スロット形状の穴23、33のみが形成されてもよい。
【0039】
(本開示の第2の中空基板集積導波路回路基板)
本開示の第2の中空基板集積導波路回路基板の構成を図8に示す。本開示の第2の中空基板集積導波路スロット穴の位置を図9に示す。図8の下段及び上段は、それぞれ、中空基板集積導波路回路基板Dの透過平面図及びS-S断面図を示す。図9の上段及び下段は、それぞれ、中空基板集積導波路の電流分布及びスロット形状の穴の形成位置を示す。中空基板集積導波路回路基板Dは、第1のコア部材1、第2のコア部材2及び第3のコア部材3を備える。
【0040】
第2の本開示では、中空基板集積導波路の狭壁面24、34を回路基板と平行平面とする。すると、本開示の第2の中空基板集積導波路回路基板Dは、本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板Cと比べて、若干厚くなる。ここで、導波管スロットアンテナにおいて、狭壁面の電流方向と平行方向に延伸するスロットを形成したときには、導波空間から電波が放射されないことを応用する。つまり、中空基板集積導波路回路基板Dにおいて、狭壁面24、34の電流方向と平行方向に延伸するスロット形状の穴25、35を形成することにより、導波空間11から電波が漏れることを防止する。そして、中空基板集積導波路回路基板Dにおいて、スロット形状の穴25、35にめっき溶液を通過させ、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51にめっきを形成することにより、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51で接着部材5の誘電体損が生じることを防止する。以下に、第2の本開示を具体的に説明する。
【0041】
第1のコア部材1は、中空基板集積導波路の導波空間11及び広壁面13が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、それぞれ、中空基板集積導波路の狭壁面24、34が形成される。第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、第1のコア部材1と接着部材5で接着される。第2の本開示でも、ねじ4は不要であり、ビア6も不要である。
【0042】
第2のコア部材2及び第3のコア部材3は、それぞれ、狭壁面24、34の電流方向と平行方向に延伸するスロット形状の穴25、35が形成される。具体的には、スロット形状の穴25、35は、それぞれ、狭壁面24、34の中心軸と垂直方向に延伸し、狭壁面24、34の全幅以下の長さを有する。スロット形状の穴25、35を用いて、導波空間11と接着部材5との間の境界位置51において、めっきが形成される。
【0043】
ここで、スロット形状の穴25、35は、導波方向間隔を短くすれば、めっき溶液を通過させやすくなるが、狭壁面24、34の電流分布を妨害しないために(図9の上段の電流分布を参照。)、導波方向間隔をできるだけ長めにすることが望ましい。
【0044】
このように、中空基板集積導波路を回路基板内部に形成するにあたり、ねじ4を用いず1枚の回路基板として製造可能とするとともに、ビア6を用いず中空基板集積導波路回路基板Dを低コストとしたうえで、接着部材5の誘電体損が生じることを防止することができる。
【0045】
そして、中空基板集積導波路の狭壁面24、34を回路基板と平行平面とすることができる。ただし、本開示の第2の中空基板集積導波路回路基板Dは、本開示の第1の中空基板集積導波路回路基板Cと比べて、若干厚くなる。具体的には、狭壁面24、34の電流方向と殆ど平行方向にスロット形状の穴25、35を延伸するため(図9の電流分布及びスロット位置を参照。)、導波空間11から電波が漏れることを殆ど防止することができる。
【0046】
第2の本開示では、第2のコア部材2及び第3のコア部材3において、スロット形状の穴25、35が形成されている。第1~第4の変形例に続いて、第5の変形例として、第2のコア部材2のみにおいて、スロット形状の穴25が形成されてもよく、第6の変形例として、第3のコア部材3のみにおいて、スロット形状の穴35が形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示の中空基板集積導波路回路基板及びその製造方法は、誘電体導波管と比べて低損失である中空基板集積導波路を回路基板内部に形成するにあたり、適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
A、B、C、D:中空基板集積導波路回路基板
1:第1のコア部材
2:第2のコア部材
3:第3のコア部材
4:ねじ
5:接着部材
6:ビア
11:導波空間
12:狭壁面
13:広壁面
21、31:広壁面
22、23、25、32、33、35:スロット形状の穴
24、34:狭壁面
51:境界位置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9