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  • 特許-水分散型粘着剤組成物および粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】水分散型粘着剤組成物および粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20240805BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240805BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240805BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240805BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240805BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/04
C09J11/08
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/30 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020168634
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060883
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】澤村 周
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亜紀子
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-166143(JP,A)
【文献】特開2003-129013(JP,A)
【文献】特開2014-028936(JP,A)
【文献】特開平09-071757(JP,A)
【文献】米国特許第05556922(US,A)
【文献】特開2013-148722(JP,A)
【文献】特開2003-155462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/04
C09J 11/04
C09J 11/08
C09J 7/38
B32B 27/00
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の重合体からなるポリマー粒子と、前記ポリマー粒子を分散させる水と、前記水中に存在するアンモニウムイオンと、テルペン系樹脂とを含有し、
前記ポリマー粒子のメジアン径が、0.10μm以上であり、
前記ポリマー粒子100質量部に対する前記テルペン系樹脂の質量部数は10質量部以上50質量部以下であり、
pHが9.0を越える、水分散型粘着剤組成物。
【請求項2】
基材層と、
前記基材層の厚み方向一方面に配置され、請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤層と
を備える、粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚みが、40μm以下である、請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層におけるアンモニウムイオンの含有量、800μg/g以上であり、前記アンモニウムイオンの前記含有量は、前記粘着剤層から採取したサンプルを純水に浸漬させて、120℃で、1時間の煮沸抽出した抽出液中のアンモニウムイオンをイオンクロマトグラフにより測定することにより求められる、請求項2または3に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型粘着剤組成物および粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマー粒子を水に分散した水分散型アクリル系粘着剤組成物が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。アクリル系ポリマー粒子を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸とを含有する。また、水分散型アクリル系粘着剤組成物では、ポリマー粒子の重合後にアンモニアが添加されて、(メタ)アクリル酸に由来するカルボキシル基が中和される。
【0003】
特許文献1では、水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材に塗工機で連続して塗布して、粘着剤層を形成する。塗工機は、例えば、ロールまたはダイスを備える。塗工機では、、ロール間のギャップにおいて水分散型粘着剤組成物が搬送され、または、ダイスのギャップから水分散型粘着剤組成物が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-155462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の水分散型粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー粒子が凝集し易い。すると、塗工機のギャップにおいてポリマー粒子が凝集する。凝集した箇所では、水分散型粘着剤組成物の搬送および吐出が滞る。そうすると、粘着剤層において基材の搬送方向に沿う筋状欠陥が生じるという不具合がある。
【0006】
本発明は、粘着剤層における筋状欠陥の生成を抑制できる水分散型粘着剤組成物および粘着テープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の重合体からなるポリマー粒子と、前記ポリマー粒子を分散させる水と、前記水中に存在するアンモニウムイオンとを含有し、前記ポリマー粒子のメジアン径が、0.10μm以上であり、pHが9.0を越える、水分散型粘着剤組成物を含む。
【0008】
本発明(2)は、基材層と、前記基材層の厚み方向一方面に配置され、(1)に記載の水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤層とを備える、粘着テープを含む。
【0009】
本発明(3)は、前記粘着剤層の厚みが、40μm以下である、(2)に記載の粘着テープを含む。
【0010】
本発明(4)は、前記粘着剤層におけるアンモニウムイオンの含有量が、800μg/g以上である、(2)または(3)に記載の粘着テープを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水分散型粘着剤組成物および粘着テープは、粘着剤層における筋状欠陥の生成を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の粘着テープの一実施形態の断面図である。
図2図2は、粘着テープの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<水分散型粘着剤組成物>
本発明の水分散型粘着剤組成物は、ポリマー粒子と、水と、アンモニウムイオンとを含有する。
【0014】
ポリマー粒子は、モノマー成分の重合体からなる。モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸を含有する。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー成分における主モノマーまたはベースモノマーである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルである。以下、(メタ)の使用および定義は、上記と同様である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が2以上14以下であるアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アルキル部分の炭素数は、好ましくは、4以上、12以下である。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、および、(メタ)アクリル酸テトラデシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または併用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸ブチル、および、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば、90質量%以上、好ましくは、95質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、98質量%以下である。
【0016】
(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能である。(メタ)アクリル酸は、水分散型粘着剤組成物における凝集物の発生を抑制するためにモノマー成分に含まれる。(メタ)アクリル酸としては、具体的には、アクリル酸、および、メタクリル酸が挙げられる。(メタ)アクリル酸は、単独使用または併用できる。(メタ)アクリル酸として、好ましくは、アクリル酸が挙げられる。モノマー成分における(メタ)アクリル酸の割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。アクリル酸の割合が上記した下限以上、上限以下であれば、凝集物の発生を抑制できる。
【0017】
なお、モノマー成分は、ケイ素原子含有ビニルモノマーをさらに含有することができる。ケイ素原子含有ビニルモノマーとしては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。モノマー成分におけるケイ素原子含有ビニルモノマーの割合は、例えば、0.005質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、例えば、1質量%以下、好ましくは、0.5質量%以下である。
【0018】
ポリマー粒子のメジアン径は、0.10μm以上、好ましくは、0.15μm以上であり、また、例えば、0.50μm以下である。ポリマー粒子のメジアン径が上記した下限(0.10μm)を下回れば、水分散型粘着剤組成物の凝集物に起因する筋状欠陥を粘着剤層(後述)に形成する。ポリマー粒子のメジアン径が上記した上限(0.50μm)以下であれば、水分散型粘着剤組成物の粘度の過度な低下を抑制し、基材層(後述)の一方面におけるはじきを抑制し、基材層に水分散型粘着剤組成物を安定して塗布できる。ポリマー粒子のメジアン径は、レーザー回折散乱法で測定される。
【0019】
水は、水分散型粘着剤組成物においてポリマー粒子を分散させる。例えば、水は、モノマー成分の乳化重合で使用される水を含む。水分散型粘着剤組成物における水の割合は、特に限定されない。ポリマー粒子100質量部に対する水の質量部数は、例えば、20質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、250質量部以下、好ましくは、150質量部以下である。
【0020】
アンモニウムイオン(NH )は、水中に存在する。具体的には、アンモニウムイオンは、水中で電離している。なお、本願におけるアンモニウムイオンは、ポリマー粒子において(メタ)アクリル酸のカルボキシル基とイオン結合しているアンモニウムカチオンを含まない。水分散型粘着剤組成物におけるアンモニウムイオンの割合は、次に説明する水分散型粘着剤組成物が所望のpHを有するように、適宜調整される。水分散型粘着剤組成物におけるアンモニウムイオンの存在は、イオンクロマトグラフにより同定される。
【0021】
水分散型粘着剤組成物のpHは、9.0を越える。pHは、好ましくは、9.5以上であり、また、例えば、11.0以下である。水分散型粘着剤組成物のpHが上記した下限(9.0)以下であれば、粘着剤層に筋状欠陥を形成する。一方、水分散型粘着剤組成物のpHが上記した上限(11.0)以下であれば、アンモニア臭気を緩和できる。水分散型粘着剤組成物のpHは、pH計で測定される。
【0022】
水分散型粘着剤組成物は、添加物を含有してもよい。添加物としては、粘着付与樹脂が挙げられる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、および、芳香族系石油樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。好ましくは、テルペン系樹脂が挙げられる。テルペン系樹脂は、例えば、テルペンフェノール系樹脂を含む。ポリマー粒子100質量部に対する粘着付与樹脂の質量部数は、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0023】
水分散型粘着剤組成物における固形分濃度は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。固形分濃度が上記した下限以上であれば、凝集物の発生を抑制できる。固形分濃度が上記した上限以下であれば、粘着剤層を薄くできる。
【0024】
水分散型粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されない。水分散型粘着剤組成物の製造方法としては、例えば、まず、モノマー成分を準備する。次いで、モノマー成分を水分散して水分散液を調製する。次いで、水分散液中のモノマー成分を乳化重合する。乳化重合では、重合開始剤、乳化剤、および、必要により連鎖移動剤の存在下、モノマー成分を加熱する。これにより、ポリマー粒子が水に分散するポリマー粒子水分散液を調製する。
【0025】
その後、水分散液にアンモニア水を配合する。併せて、添加剤をポリマー粒子水分散液に添加する。具体的には、カルボキシル基の全量が中和されるまで、すなわち、pHが7になるまで、アンモニア水をポリマー粒子水分散液に配合し、続いて、添加剤をポリマー粒子水分散液に配合し、その後、アンモニア水をポリマー粒子水分散液に追加する。アンモニア水を、ポリマー粒子水分散液のpHが9.0を越えるまで、ポリマー粒子水分散液に追加する。アンモニ水におけるアンモニア濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。なお、過剰のアンモニア水をポリマー粒子水分散液に配合した後、必要により、添加剤をポリマー粒子水分散液に配合してもよい。好ましくは、アンモニア水でポリマー粒子水分散液を中和し、次いで、添加剤をポリマー粒子水分散液に添加し、その後、アンモニアをポリマー粒子水分散液に追加してpHを9.0超過にする。これにより、粘着剤の凝集を抑制する。
【0026】
これにより、アルカリ性の水分散型粘着剤組成物が製造される。水分散型粘着剤組成物は、ポリマー粒子と、水と、アンモニウムイオンとを含有する。
【0027】
次に、上記した水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える粘着テープの一実施形態を、図1を参照して説明する。
【0028】
図1に示すように、粘着テープ1は、例えば、長尺状のテープが巻回されて準備される。なお、本願において、テープは、シートおよびフィルムと共通する概念である。テープ、シートおよびフィルムは、峻別されない。この粘着テープ1は、基材層2と、粘着剤層3とを厚み方向一方側に向かって備える。厚み方向は、長尺方向に直交する。
【0029】
基材層2は、長尺状のフィルムである。基材層2としては、例えば、プラスチックフィルム、紙、布、不織布、および、金属箔が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、および、ポリ塩化ビニルフィルムが挙げられる。紙としては、例えば、和紙、および、クラフト紙が挙げられる。布としては、例えば、綿布、および、スフ布が挙げられる。不織布としては、例えば、ポリエステル不織布、および、ビニロン不織布が挙げられる。金属箔としては、例えば、ステンレス箔が挙げられる。基材層2の厚み方向一方面および他方面は、例えば、剥離処理が施される。剥離処理としては、例えば、シリコーン剥離剤による処理が挙げられる。この場合には、基材層2は、剥離ライナーとして機能する。基材層2の厚みは、例えば、10μm以上であり、また、例えば、500μm以下である。
【0030】
粘着剤層3は、基材層2の厚み方向一方面に配置されている。粘着剤層3は、上記した水分散型粘着剤組成物から形成される。具体的には、粘着剤層3は、水分散型粘着剤組成物の固形物からなる。粘着剤層3は、薄い。具体的には、粘着剤層3の厚みは、例えば、40μm以下、好ましくは、30μm以下、より好ましくは、25μm以下であり、また、例えば、5μm以上である。粘着剤層3の厚みが上記した上限以下であれば、粘着テープ1を軽薄にできる。一方で、粘着剤層3の厚みが上記したように薄い場合には、水分散型粘着剤組成物の塗工の凝集の影響を受けやすく、そのため、筋状欠陥を粘着剤層3に形成しやすい。しかし、本発明の水分散型粘着剤組成物は、pHが9.0を越え、ポリマー粒子のメジアン径が0.10μm以上であるので、上記した筋状欠陥の形成を抑制できる。
【0031】
粘着剤層3におけるアンモニウムイオンの含有量は、例えば、800μg/g以上であり、また、例えば、1500μg/g以下である。粘着剤層3におけるアンモニウムイオンの含有量が800μg/g以上であれば、粘着剤層3における筋状欠陥の形成が抑制される。粘着剤層3におけるアンモニウムイオンの含有量が1500μg/g以下であれば、アンモニア臭気を緩和できる。
【0032】
粘着剤層3におけるアンモニウムイオンの含有量は、具体的には、粘着テープ1から約0.15gの粘着剤層3を採取してサンプルを得た後、サンプルを精秤する。サンプルを純水に浸漬させて、120℃で、1時間の煮沸抽出する。抽出液中のアンモニウムイオン(NH4+)量をイオンクロマトグラフを用いて定量する。詳しくは、特開2003-155462号公報の段落[0013]の記載に従って、粘着剤層3におけるアンモニウムイオンの含有量が測定される。
【0033】
次に、粘着テープ1の製造方法を説明する。
【0034】
まず、基材層2を準備する。次いで、基材層2に水分散型粘着剤組成物を塗布する。水分散型粘着剤組成物の塗布では、塗工機が用いられる。塗工機は、例えば、ダイスおよび/またはロールを含む。具体的には、塗工機としては、ロールコータが挙げられる。ロールコータは、例えば、グラビヤロールコータ、リバースロールコータ、キスロールコータ、ディップロールコータ、および、ナイフコータを含む。また、塗工機は、例えば、スロットダイを含む。塗工速度は、特に限定されない。
【0035】
その後、水分散型粘着剤組成物を加熱により乾燥させる。加熱条件は、特に限定されない。乾燥により、水分散型粘着剤組成物の水が除去される。これにより、粘着剤層3が基材層2の厚み方向一方面に形成される。
【0036】
その後、必要により、第2剥離ライナー4(仮想線)を粘着剤層3の厚み方向一方面に配置する。第2剥離ライナー4は、粘着テープ1の使用前には、粘着剤層3の厚み方向一方面を保護し、粘着テープ1の使用時には、粘着剤層3の厚み方向一方面から剥離される。第2剥離ライナー4としては、基材層2と同様のものが挙げられる。
【0037】
<作用効果>
水分散型粘着剤組成物では、ポリマー粒子のメジアン径が、0.10μm以上であり、pHが9.0を越える。そのため、水分散型粘着剤組成物では、ポリマー粒子の凝集が抑制される。すると、塗工機のギャップにおいてポリマー粒子が凝集することを抑制できる。そのため、凝集に起因する筋状欠陥が粘着剤層3に生じることを抑制できる。
【0038】
また、粘着テープ1は、上記した粘着剤層3を備えるので、粘着信頼性が高い。
【0039】
<粘着テープの変形例>
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0040】
図2に示すように、2つの粘着剤層3が基材層2の厚み方向一方面および他方面に配置されてもよい。この粘着テープ1では、第2剥離ライナー4と、粘着剤層3と、基材層2と、粘着剤層3とが厚み方向一方側に向かって順に配置される。
【実施例
【0041】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0042】
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器を用い、アクリル酸ブチル87部、アクリル酸2-エチルヘキシル10部、アクリル酸4部、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製、KBM-503)0.07部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.05部、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(開始剤)0.1部を、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2部を水100部に加えて水分散液を調製した。続いて、水分散液中のモノマー成分を乳化重合して、ポリマー粒子が水に分散するポリマー粒子分散液を得た。
【0043】
ポリマー粒子分散液に、10%アンモニア水を添加してpH7に調整した(中和した)。ポリマー粒子分散液の固形分100部に対して、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール系樹脂(荒川化学工業株式会社製、タマノルE-200NT)を固形分で30部加えた。さらに、pHが9.5になるまで、アンモニア水(10%水溶液)をポリマー粒子分散液に追加して、水分散型粘着剤組成物を得た。
【0044】
水分散型粘着剤組成物における固形分濃度は、54%であった。ポリマー粒子のメジアン径は、0.15μmであった。メジアン径は、ベックマン・コールター社製のLS13 320(レーザー回折式粒度分布測定装置、PIDSモード、分散質の屈折率1.48、分散媒の屈折率:1.333)を用いるレーザー回折散乱法で測定した。
【0045】
水分散型粘着剤組成物を、シリコーン剥離剤で厚み方向一方面を剥離処理した剥離ライナー(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイル MRF75)からなる基材層2の一方面に、乾燥後厚みが25μmとなるように、塗工機(スロットダイ)で塗布した。塗工速度が20m/分で、長尺方向における塗布距離は、500mであった。基材層2の幅は、1250mmであった。これにより、基材層2と、粘着剤層3とを備える粘着テープ1を製造した。粘着テープ1の筋状欠陥の発生数をカウントした。発生数は、0であった。
【0046】
粘着剤層3におけるアンモニウムイオンの含有量は、800μg/g以上であった。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、ポリマー粒子分散液に追加するアンモニア水(10%水溶液)の追加量を増やして、pHを10.0に変更した。分散型粘着剤組成物における固形分濃度は、52質量%であった。粘着剤層3におけるアンモニウムイオンの含有量と、筋状欠陥の発生数とを表1に記載する。以降の実施例および比較例も、アンモニウムイオンの含有量と、筋状欠陥の発生数とを表1に記載する。
【0048】
(実施例3)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、ポリマー粒子分散液に追加するアンモニア水(10%水溶液)の追加量を増やして、pHを11.0に変更した。分散型粘着剤組成物における固形分濃度は、50質量%であった。
【0049】
(実施例4)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、分散型粘着剤組成物における固形分濃度を40質量%にした。
【0050】
(実施例5)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、分散型粘着剤組成物における固形分濃度を60質量%にした。
【0051】
(実施例6)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、アクリル酸の配合部数を4部から5部に変更した。
【0052】
(実施例7)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)の配合部数を2部から1.5部に変更した。ポリマー粒子のメジアン径は、0.30μmであった。
【0053】
(比較例1)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、ポリマー粒子分散液に追加するアンモニア水(10%水溶液)の追加量を減らして、pHを8.0に変更した。
【0054】
(比較例2)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、アクリル酸を配合しなかった。
【0055】
(比較例3)
実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物を得た。但し、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)の配合部数を2部から3部に変更した。ポリマー粒子のメジアン径は、0.08μmであった。
【0056】
(各実施例および比較例の考察)
<実施例1から実施例3および比較例1の対比>
実施例1から実施例3および比較例1では、アンモニア水(10%水溶液)の追加量を変更してpHを変更した。そして、水分散型粘着剤組成物におけるpHの影響を評価した。pHが9.0を超える実施例1~3は、筋状欠陥が発生しなかった。しかし、pHが9.0未満の比較例1は、筋状欠陥が発生した。
【0057】
<実施例1と比較例2との対比>
実施例1では、アクリル酸をモノマー成分に配合したのに対して、比較例2では、アクリル酸をモノマー成分に配合しなかった。そして、モノマー成分におけるアクリル酸の有無の影響を評価した。実施例1では、ポリマー粒子表面で-COO・NH4+のイオン結合が形成されてポリマー粒子間の表面電荷による反発が生じると推測される。一方、比較例1では、上記した反発がないため、ポリマー粒子同士が凝集し易いと推測される。
【0058】
<実施例1と実施例7と比較例3との対比>
実施例1と実施例7と比較例3とでは、乳化剤の量を変更して、ポリマー粒子のメジアン径を変更した。そして、ポリマー粒子のメジアン径を評価した。メジアン径が0.10μm以上である実施例1と実施例7とは、筋状欠陥が発生しなかった。一方、メジアン径が0.10μm未満である比較例3は、筋状欠陥が発生した。
【0059】
【表1】
【符号の説明】
【0060】
1 粘着テープ
2 基材層
3 粘着剤層
図1
図2