(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】負荷駆動回路及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240805BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M7/12 Q
H02M3/155 F
(21)【出願番号】P 2020169303
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前島 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 匠
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-074910(JP,A)
【文献】特開2018-046715(JP,A)
【文献】特開2017-195750(JP,A)
【文献】特開2015-070696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0290107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路装置を備え、
前記半導体集積回路装置の出力に基づき負荷を駆動し、
前記半導体集積回路装置の出力が停止しているときに、前記半導体集積回路装置の出力を停止していないときよりも電源電圧が大きくなるように構成される、負荷駆動回路であって、
前記半導体集積回路装置は、
前記電源電圧が印加されるように構成される端子と、
異常を検出するように構成される異常検出回路と、
前記異常検出回路によって異常が検出されているときに前記半導体集積回路装置の出力を停止させるように構成される出力停止回路と、
前記異常検出回路によって異常が検出されているときに前記半導体集積回路装置の消費電流を抑制するように構成される抑制回路と、
を備える、
負荷駆動回路。
【請求項2】
前記半導体集積回路装置は、
前記電源電圧が過電圧であることを検出するように構成される過電圧検出回路と、
前記過電圧検出回路によって前記電源電圧の過電圧が検出されているときに前記端子から電流を引き抜くように構成される電流引き抜き回路と、
をさらに備える、請求項1に記載の
負荷駆動回路。
【請求項3】
前記半導体集積回路装置は、
前記抑制回路は、クロック信号を発振するように構成される発振回路と、前記クロック信号に基づき動作する論理回路と、を含み、
前記異常検出回路によって異常が検出されているときに前記発振回路はディセーブル状態になる、請求項1又は請求項2に記載の
負荷駆動回路。
【請求項4】
力率改善回路である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の負荷駆動回路。
【請求項5】
負荷と、
前記負荷を駆動する請求項
1~4のいずれか一項に記載の負荷駆動回路と、
を備える、電子機器。
【請求項6】
調光及び調色の少なくとも一方が可能な照明機器である、請求項
5に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、負荷駆動回路及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
力率改善回路は、AC/DC(交流/直流)変換する電源装置の交流入力電圧と交流入力電流をモニタし、それらの位相を略一致させて力率を1(すなわち100%)に近い状態に近づける(例えば特許文献1参照)。
【0003】
通常、力率改善回路の制御回路は、集積化されパッケージ化された半導体集積回路装置である。
【0004】
図6は、従来の半導体集積回路装置を含む力率改善回路の概略構成例を示す図である。
図6に示す力率改善回路は、従来の半導体集積回路装置101と、出力回路102と、抵抗103と、キャパシタ104と、インダクタ105及び106と、ダイオード107と、を備える。
【0005】
従来の半導体集積回路装置101は、出力回路102内のスイッチングトランジスタを制御する。出力回路102は、全波整流された電圧VHをレギュレートされた出力電圧VDCに変換して負荷108に供給する。
【0006】
インダクタ105は電源ラインLN1に設けられ、インダクタ106はインダクタ105と磁気結合する。
【0007】
従来の半導体集積回路装置101の端子VCCと電源ラインLN1との間に抵抗103が設けられる。従来の半導体集積回路装置101の端子VCCとグラウンド電位との間にキャパシタ104が設けられる。従来の半導体集積回路装置101の端子VCCとインダクタ106との間にダイオード107が設けられる。
【0008】
従来の半導体集積回路装置101の端子VCCには、抵抗103を流れる電流が常に供給され、出力回路102内のスイッチングトランジスタがスイッチング動作を行っているときのみダイオード107を流れる電流が供給される。端子VCCに印加される電圧は、従来の半導体集積回路装置101において電源電圧VCCとして利用される。
【0009】
従来の半導体集積回路装置101は、コンパレータ101Aを備える。コンパレータ101Aは、ヒステリシスコンパレータであり、電源電圧VCCを閾値電圧と比較し、比較結果を示す低電圧ロックアウト信号UVLOを出力する。電源電圧VCCが閾値電圧以上であれば低電圧ロックアウト信号UVLOはローレベル(正常状態を示すレベル)になり、電源電圧VCCが閾値電圧未満であれば低電圧ロックアウト信号UVLOはハイレベル(異常状態を示すレベル)になる。コンパレータ101Aで用いられる閾値電圧は、低電圧ロックアウト信号UVLOのレベルに応じて、第1閾値電圧VTH1と第2閾値電圧VTH2とを遷移する。
【0010】
従来の半導体集積回路装置101は、電源電圧VCCの低電圧、出力電圧VDCの過電圧、過熱等の何らかの異常を検知した場合、出力回路102内のスイッチングトランジスタのスイッチング動作を停止させる。一方、従来の半導体集積回路装置101は、電源電圧VCCの低電圧、出力電圧VDCの過電圧、過熱等の何らかの異常を検知しない場合、出力回路102内のスイッチングトランジスタをスイッチング動作させる。
【0011】
また、従来の半導体集積回路装置101は、低電圧ロックアウト信号UVLOがハイレベル(異常状態を示すレベル)である期間、いわゆるスタンバイ状態となって消費電力が低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図7は、従来の半導体集積回路装置101の電源電圧V
CCの波形を示すタイムチャートである。第1のタイミングt1で、何らかの異常が検出されてスイッチングトランジスタのスイッチング動作が停止する。
【0014】
スイッチングトランジスタのスイッチング動作が停止すると、ダイオード107に電流が流れなくなる。そして、従来の半導体集積回路装置101の消費電流が抵抗103を流れる電流より大きくなって、電源電圧VCCが徐々に低下する。
【0015】
電源電圧VCCが第1閾値電圧VTH1まで低下すると、低電圧ロックアウトによって従来の半導体集積回路装置101はスタンバイ状態となり、従来の半導体集積回路装置101の消費電流が抵抗103を流れる電流より小さくなって、電源電圧VCCが徐々に増加なる。
【0016】
電源電圧VCCが第2閾値電圧VTH2まで増加すると、低電圧ロックアウトが解除され、従来の半導体集積回路装置101はスタンバイ状態でなくなる。このとき、何らかの異常の検出が継続していれば、再度電源電圧VCCが徐々に低下する。
【0017】
何らかの異常の検出が継続している限り、電源電圧VCCは上述した低下と増加を繰り返す。
【0018】
ここで、第2のタイミングt2で電源電圧VCCの低電圧以外の異常が解消されたものとする。電源電圧VCCの低電圧以外の異常が解消されても、第2のタイミングt2で低電圧ロックアウト中であるため、スイッチングトランジスタのスイッチング動作は直ぐには復帰しない。電源電圧VCCが第2閾値電圧VTH2まで増加する第3のタイミングt3で、ようやく低電圧ロックアウトが解除され、スイッチングトランジスタのスイッチング動作が復帰して電源電圧VCCがさらに増加する。
【0019】
なお、第2のタイミングt2で、負荷108が重負荷になると、スイッチング動作停止中であるため負荷変動に応答できずに電源電圧VCCが低下することになる。
【0020】
出力回路102内のスイッチングトランジスタがスイッチング動作を停止しているときに電源電圧VCCが低下しないようにすれば、異常が解消されたときにスイッチング動作を速やかに復帰させることができる。
【0021】
出力回路102内のスイッチングトランジスタがスイッチング動作を停止しているときに電源電圧VCCが低下しないようにするためには、キャパシタ104の容量を大きくすることが考えられる。しかしながら、この方法では、キャパシタ104のコストが増大してしまう。また、異常がいつ解消されるかは決まっておらずスイッチング動作の停止期間の長さは決まっていないので、たとえキャパシタ104の容量を大きくしてもスイッチング動作の停止期間が長ければ、電源電圧VCCが低下してしまう。
【0022】
出力回路102内のスイッチングトランジスタがスイッチング動作を停止しているときに電源電圧VCCが低下しないようにするためには、抵抗103の抵抗値を小さくして抵抗103を流れる電流を増やすことも考えられる。しかしながら、この方法では、抵抗103のコストが増大してしまう。
【0023】
以上の通り、従来の半導体集積回路装置101は、負荷応答特性が良好でないという問題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本明細書中に開示されている半導体集積回路装置は、電源電圧が印加されるように構成される端子と、異常を検出するように構成される異常検出回路と、前記異常検出回路によって異常が検出されているときに前記半導体集積回路装置の出力を停止させるように構成される出力停止回路と、前記異常検出回路によって異常が検出されているときに前記半導体集積回路装置の消費電流を抑制するように構成される抑制回路と、を備える構成(第1の構成)とする。
【0025】
また、上記第1の構成の半導体集積回路装置において、前記電源電圧が過電圧であることを検出するように構成される過電圧検出回路と、前記過電圧検出回路によって前記電源電圧の過電圧が検出されているときに前記端子から電流を引き抜くように構成される電流引き抜き回路と、をさらに備える構成(第2の構成)であってもよい。
【0026】
また、上記第1又は第2の構成の半導体集積回路装置において、前記抑制回路は、クロック信号を発振するように構成される発振回路と、前記クロック信号に基づき動作する論理回路と、を含み、前記異常検出回路によって異常が検出されているときに前記発振回路はディセーブル状態になる構成(第3の構成)であってもよい。
【0027】
本明細書中に開示されている負荷駆動回路は、上記第1~第3いずれかの構成の半導体集積回路装置を備え、前記半導体集積回路装置の出力に基づき負荷を駆動する構成(第4の構成)とする。
【0028】
また、上記第4の構成の負荷駆動回路において、前記半導体集積回路装置の出力が停止しているときに、前記半導体集積回路装置の出力を停止していないときよりも前記電源電圧が大きくなる構成(第5の構成)であってもよい。
【0029】
また、上記第4又は第5の構成の負荷駆動回路において、前記負荷駆動回路が力率改善回路である構成(第6の構成)であってもよい。
【0030】
本明細書中に開示されている電子機器は、負荷と、前記負荷を駆動する上記第4~第6いずれかの構成の負荷駆動回路と、を備える構成(第7の構成)とする。
【0031】
また、上記第7の構成の電子機器において、前記電子機器が調光及び調色の少なくとも一方が可能な照明機器である構成(第8の構成)であってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本明細書中に開示されている半導体集積回路装置は、負荷応答特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図4】過電圧検出回路及び電流引き抜き回路の一例を示す図
【
図6】従来の半導体集積回路装置を含む力率改善回路の概略構成例を示す図
【
図7】従来の半導体集積回路装置の電源電圧の波形を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書において、基準電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0035】
本明細書において、定電流とは、理想的な状態において一定である電流を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電流である。
【0036】
本明細書において、定電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0037】
図1は、一実施形態に係る電子機器1の構成を示す回路図である。電子機器1としては、例えばテレビ、冷蔵庫、空気調和機などの家電製品、又はコンピュータなどを挙げることができる。電子機器1は、例えば調光及び調色の少なくとも一方が可能な照明機器であってもよい。照明機器で用いられる発光素子としては、例えばLED、有機EL等を挙げることができる。照明機器では、調光又は調色の設定を変えたときに負荷が変動する。照明機器において負荷応答性を改善すれば、調光又は調色の設定変更がリモコン送信機の送信信号等によって指示されてから調光又は調色の設定変更が完了するまでに要する時間を短縮することができる。
【0038】
電子機器1は、ヒューズ2、コンデンサ3、フィルタ4、整流回路5、コンデンサ6、及び力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路7を備える。電子機器1は、DC/DCコンバータ8、マイコン9、及び信号処理回路10をさらに備える。電子機器1は、DC/DCコンバータ8の絶縁トランス(不図示)を境界として、互いに絶縁される1次側と2次側に分けられる。
【0039】
整流回路5は、例えばダイオードブリッジの整流回路である。商用交流電圧などの交流電圧VACは、ヒューズ2、コンデンサ3、及びフィルタ4を経由して整流回路5に供給される。整流回路5は、交流電圧VACを全波整流して第1電圧VHを生成する。したがって、第1電圧VHは、全波整流波形を有する。
【0040】
第1電圧VHは、コンデンサ6を経由してPFC回路7に供給される。PFC回路7は、第1電圧VHから出力電圧VDCを生成する昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を有する。PFC回路7は、第1電圧VHと入力電流IACの位相を略一致させることにより力率を改善する。
【0041】
DC/DCコンバータ8は、PFC回路7の出力電圧VDCを受け、これを降圧してマイコン9及び信号処理回路10それぞれに供給する。
【0042】
マイコン9は、電子機器1全体を統合的に制御する。信号処理回路10は、特定の信号処理を行うブロックであり、例えば外部機器との通信を行うインタフェース回路、画像処理回路、音声処理回路などを挙げることができる。現実の電子機器1においては、その機能に応じて複数の信号処理回路10が設けられることはいうまでもない。
【0043】
以上が電子機器1の構成に関する説明である。このように、交流電圧VACを全波整流する整流回路5と、全波整流された第1電圧VHを昇圧して出力電圧VDCを生成するPFC回路7と、を備える電子機器によりAC/DC変換を行う。次に、電子機器1に搭載されるPFC回路7の詳細について説明する。
【0044】
PFC回路7は、半導体集積回路装置の出力に基づき負荷を駆動する負荷駆動回路の一例である。PFC回路7の負荷は、DC/DCコンバータ8、マイコン9、及び信号処理回路10である。なお、半導体集積回路装置の出力に基づき負荷を駆動する負荷駆動回路は、力率改善回路に限定されることはなく、例えば力率改善を行わない電源回路などであってよい。
【0045】
図2は、一実施形態に係るPFC回路7の構成を示す回路図である。PFC回路7は、上述した通り昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を有する。なお、本実施形態とは異なり、PFC回路7は、昇圧型以外のDC/DCコンバータを有してもよい。
【0046】
PFC回路7は、IC700と、抵抗R1~R9と、キャパシタC1~C6と、ダイオードD1及びD2と、インダクタL1及びL2と、スイッチングトランジスタM1と、を備える。本実施形態では、スイッチングトランジスタM1は、NMOSトランジスタである。
【0047】
PFC回路7の制御回路である。また、IC700は、パッケージ化された半導体集積回路装置である。IC700は、端子VCCと、端子GNDと、端子ZCDと、端子OUTと、端子CSと、端子MULTと、端子EOと、端子VSと、を備える。
【0048】
抵抗R1の一端に第1電圧VHが印加される。抵抗R1の他端は、抵抗R2の一端、キャパシタC5の一端、及び端子MULTに接続される。抵抗R2の他端及びキャパシタC5の他端はグラウンド電位に接続される。このような構成により、第1電圧VHの抵抗R1及びR2による分圧である第1電圧VMULTが端子MULTに供給される。
【0049】
抵抗R1の一端は、インダクタL1の一端及びダイオードD1のアノードに接続される。インダクタL1の他端はダイオードD2のアノード及びスイッチングトランジスタM1のドレインに接続される。ダイオードD1及びD2の各カソードは、キャパシタC1の一端に接続される。キャパシタC1の他端はグラウンド電位に接続され、スイッチングトランジスタM1のゲートは抵抗R8を介して端子OUTに接続され、スイッチングトランジスタM1のソースは抵抗R9を介してグラウンド電位に接続される。このような構成により、PFC回路7は、昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を備えることになる。昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)の出力電圧である電圧VDCはキャパシタC1の一端から出力される。
【0050】
インダクタL1とインダクタL2とは磁気結合する。インダクタL2の一端は抵抗R7を介して端子ZCDに接続される。インダクタL2の他端はグラウンド電位に接続される。このような構成により、IC700は、端子ZCDに供給される電圧を監視することでインダクタL1を流れる電流のゼロクロスを検出することが可能となる。
【0051】
抵抗R3の一端に電圧VDCが印加される。抵抗R3の他端は、抵抗R4の一端、キャパシタC2の一端、及び端子VSに接続される。抵抗R4の他端及びキャパシタC2の他端はグラウンド電位に接続される。このような構成により、電圧VDCの抵抗R3及びR4による分圧である第1検出電圧VSが端子VSに供給される。
【0052】
抵抗R9の一端はスイッチングトランジスタM1のソースに接続され、抵抗R9の他端はグラウンド電位に接続される。抵抗R9の両端間には、スイッチングトランジスタM1に流れる電流(スイッチングトランジスタM1のドレイン電流)に比例した電圧が生ずる。抵抗R9の両端間に生ずる電圧は、抵抗R6及びキャパシタC6によって構成されるRC回路(ローパスフィルタ)は、抵抗R9の両端間に生ずる電圧の高周波成分を除去して第2検出電圧VCSを生成し、第2検出電圧VCSをCSに供給する。第2検出電圧VCSは、スイッチングトランジスタに流れる電流に応じた電圧である。
【0053】
抵抗R5の一端及びキャパシタC3の一端は、端子EOに接続される。抵抗R5の他端はキャパシタC4の一端に接続される。キャパシタC3の他端及びキャパシタC4の他端はグラウンド電位に接続される。端子VCCに電源電圧VCCが供給され、端子GNDはグラウンド電位に接続される。
【0054】
端子VCCには、抵抗R10の一端、キャパシタC7の一端、ダイオードD3のカソードが接続される。抵抗R10の他端には第1電圧VHが供給される。ダイオードD3のアノードはインダクタL2と抵抗R7との接続ノードに接続される。なお、本実施形態とは異なり、ダイオードD3を設けない構成にしてもよい。
【0055】
以下、IC700の具体的な構成を説明する。
【0056】
IC700は、ツェナーダイオード701、コンパレータ702、バンドギャップ基準電圧回路703、定電圧回路704、及び過熱保護回路705を備える。ツェナーダイオード701のアノードはグラウンド電位に接続され、ツェナーダイオード701のカソードは端子VCCに接続される。
【0057】
ツェナーダイオード701は、電源電圧VCCをツェナー電圧にクランプする。コンパレータ702の反転入力端子、バンドギャップ基準電圧回路703、及び定電圧回路704は端子VCCに接続される。
【0058】
コンパレータ702は、ヒステリシスコンパレータであり、電源電圧VCCを閾値電圧と比較し、比較結果を示す低電圧ロックアウト信号UVLOを出力する。電源電圧VCCが閾値電圧以上であれば低電圧ロックアウト信号UVLOはローレベル(正常状態を示すレベル)になり、電源電圧VCCが閾値電圧未満であれば低電圧ロックアウト信号UVLOはハイレベル(異常状態を示すレベル)になる。コンパレータ702で用いられる閾値電圧は、低電圧ロックアウト信号UVLOのレベルに応じて、第1閾値電圧VTH1(例えば8[V])と第2閾値電圧VTH2(例えば13[V])とを遷移する。
【0059】
バンドギャップ基準電圧回路703は、電源電圧VCCを用いて基準電圧を生成して定電圧回路704に供給する。
【0060】
定電圧回路704は、電源電圧VCC及び基準電圧を用いて定電圧を生成し、IC700の各部に供給する。
【0061】
過熱保護回路705は、周辺温度を検知し、周辺温度が閾値温度以上であればハイレベル(異常状態を示すレベル)の過熱保護信号TSDを出力し、周辺温度が閾値温度未満であればローレベル(正常状態を示すレベル)の過熱保護信号TSDを出力する。
【0062】
IC700は、コンパレータ706、起動時過昇圧低減回路707、コンパレータ708、及びコンパレータ709をさらに備える。
【0063】
コンパレータ706は、第1検出電圧VSを閾値電圧VTH3(例えば2.25[V])と比較し、比較結果を起動時過昇圧低減回路707に出力する。第1検出電圧VSが閾値電圧VTH3以上であればコンパレータ706の出力信号はハイレベル(異常状態を示すレベル)になり、第1検出電圧VSが閾値電圧VTH3未満であればコンパレータ706の出力信号はローレベル(正常状態を示すレベル)になる。
【0064】
起動時過昇圧低減回路707は、起動時過昇圧低減信号OVRを出力する。起動時過昇圧低減回路707は、コンパレータ706の出力信号及び後述するコンパレータ30の出力電圧VCOMPに基づき、起動時に第1検出電圧VSが閾値電圧VTH3まで上昇すると、後述する第2電圧V2が下降して後述する定電圧VBURSTになるまで、起動時過昇圧低減信号OVRをハイレベル(異常状態を示すレベル)にし、それ以外のときには起動時過昇圧低減信号OVRをローレベル(正常状態を示すレベル)にする。
【0065】
コンパレータ708は、第1検出電圧VSを閾値電圧VTH4(例えば0.3[V])と比較し、比較結果である短絡保護信号SPを出力する。第1検出電圧VSが閾値電圧VTH4以上であれば短絡保護信号SPはローレベル(正常状態を示すレベル)になり、第1検出電圧VSが閾値電圧VTH4未満であれば短絡保護信号SPはハイレベル(異常状態を示すレベル)になる。
【0066】
コンパレータ709は、ヒステリシスコンパレータであり、第1検出電圧VSを閾値電圧と比較し、比較結果を示す静的過電圧保護信号SOVPを出力する。第1検出電圧VSが閾値電圧以上であれば静的過電圧保護信号SOVPはハイレベル(異常状態を示すレベル)になり、第1検出電圧VSが閾値電圧未満であれば静的過電圧保護信号SOVPはハイレベル(異常状態を示すレベル)になる。コンパレータ709で用いられる閾値電圧は、静的過電圧保護信号SOVPのレベルに応じて、第5閾値電圧VTH5(例えば2.6[V])と第6閾値電圧VTH6(例えば2.7[V])とを遷移する。
【0067】
IC700は、誤差増幅回路710、ORゲート711、NMOSトランジスタ712、演算回路713、ツェナーダイオード714、コンパレータ715、及び駆動回路DRV1をさらに備える。
【0068】
誤差増幅回路710は、PFC回路7に設けられる昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)の出力電圧VDCに応じた第1検出電圧VSと、基準電圧VREFとの誤差を増幅し、第2電圧V2を生成する。なお、誤差増幅回路710での増幅率は1であっても構わない。誤差増幅回路710は、第2電圧V2を端子EO及び演算回路713に供給する。
【0069】
ORゲート711は、低電圧ロックアウト信号UVLOと起動時過昇圧低減信号OVRとの論理和をNMOSトランジスタ712のゲートに出力する。NMOSトランジスタ712のドレインは端子EOに接続され、NMOSトランジスタ712のソースはグラウンド電位に接続される。NMOSトランジスタ712は、端子EOに印加される第2電圧を放電するためのスイッチである。したがって、低電圧ロックアウト信号UVLO及び起動時過昇圧低減信号OVRの少なくとも一方がローベルであるときに、NMOSトランジスタ712がオンになって第2電圧V2が下降する。
【0070】
演算回路713は、交流電圧(第1電圧)VMULTと第2電圧V2を乗算することによって第3電圧を生成し、当該第3電圧にオフセット電圧VOFFSETを加えて第4電圧V4を生成する。なお、演算回路713が第3電圧にオフセット電圧VOFFSETを加えないようにし、第2電圧V3と第4電圧V4とを同一の電圧にしてもよい。
【0071】
第4電圧V4は、コンパレータ715の反転入力端子に接続される。ツェナーダイオード714のカソードはコンパレータ715の反転入力端子に接続され、ツェナーダイオード714のアノードはグラウンド電位に接続される。ツェナーダイオード714は、第4電圧V4をツェナー電圧にクランプする。
【0072】
コンパレータ715は、スイッチングトランジスタM1に流れる電流に応じた第2検出電圧VCSと第4電圧V4とを比較し、比較結果を示す電圧VCOMPを出力する。
【0073】
駆動回路DRV1は、スイッチングトランジスタM1をオン/オフ駆動し、コンパレータ715の出力である電圧VCOMPに応じて、第2検出電圧VCSが第4電圧V4より高くなるごとにスイッチングトランジスタM1をオフする。すなわち、駆動回路DRV1は、コンパレータ715の出力である電圧VCOMPに基づき、スイッチングトランジスタM1をオフする。駆動回路DRV1の構成は特に限定されず、公知の技術を用いればよい。
【0074】
図2には、駆動回路DRV1の一例が示される。駆動回路DRV1は、コンパレータ716、ワンショット回路717、タイマー718、ORゲート719、RSフリップフロップ720、ANDゲート721、プリドライバ722、ゲートクランプ回路723、PMOSトランジスタ724、NMOSトランジスタ725、及び抵抗726を含む。
【0075】
コンパレータ716は、ヒステリシスコンパレータであり、端子ZCDに印加される電圧を閾値電圧と比較し、比較結果をワンショット回路717に出力する。端子ZCDに印加される電圧が閾値電圧以上であればコンパレータ716の出力信号はローレベルになり、端子ZCDに印加される電圧が閾値電圧未満であればコンパレータ716の出力信号はハイレベルになる。コンパレータ716で用いられる閾値電圧は、コンパレータ716の出力信号のレベルに応じて、第7閾値電圧VTH7(例えば0.67[V])と第8閾値電圧VTH8(例えば0.9[V])とを遷移する。
【0076】
ワンショット回路717は、コンパレータ716の出力信号はハイレベルになると、ワンショットパルスをORゲート719の第1入力端子に供給する。
【0077】
タイマー718は、一定時間を計時すると、ハイレベルの信号をORゲート719の第2入力端子に供給する。タイマー718の計時は、プリドライバ722がANDゲートからハイレベルの信号を受け取る度にリセットされる。
【0078】
ORゲート719は、ワンショット回路717の出力信号とタイマー718の論理和をRSフリップフロップ720のセット端子(S)に供給する。RSフリップフロップ720のリセット端子(R)にはコンパレータ715の出力である電圧VCOMPが供給される。RSフリップフロップ48の出力(Q)は、セット端子(S)に印加される電圧のポジティブエッジごとにハイレベルに遷移し、リセット端子(R)に印加される電圧のポジティブエッジごとにローレベルに遷移する。
【0079】
ANDゲート720は、低電圧ロックアウト信号UVLOと、RSフリップフロップ720の出力信号と、静的過電圧保護信号SOVPの反転信号と、短絡保護信号SPの反転信号と、過熱保護信号TSDの反転信号との論理積をプリドライバ722に供給する。
【0080】
プリドライバ722は、ANDゲート720の出力に基づき、PMOSトランジスタ724及びNMOSトランジスタ725を相補的にオン/オフ駆動する。
【0081】
PMOSトランジスタ724のソースはゲートクランプ回路723に接続され、PMOSトランジスタ724のドレインはNMOSトランジスタ725のドレイン、端子OUT、及び抵抗726の一端に接続される。NMOSトランジスタ725のソースはグラウンド電位及び抵抗726の他端に接続される。ゲートクランプ回路723は、電源電圧VCCから端子OUTに印加されるハイレベルの電圧を生成する。ゲートクランプ回路723は、端子OUTに印加されるハイレベルの電圧を一定電圧にクランプして、端子OUTに印加されるハイレベルの電圧が、電源電圧VCCが上昇した際にスイッチングトランジスタM1のゲート-ソース間耐圧を超えないようにする。
【0082】
上述したコンパレータ702、過熱保護回路705、コンパレータ708、及びコンパレータ709はそれぞれIC700の異常を検出する異常検出回路である。上述したANDゲート721は、異常検出回路によって異常が検出されているときにIC700の出力を停止させる。なお、本実施形態において、IC700の出力停止とは、端子OUTに印加される電圧がローレベルのままになり、スイッチングトランジスタM1のスイッチング動作が停止している状態を意味している。
【0083】
IC700は、抑制回路727をさらに備える。抑制回路727は、異常検出回路によって異常が検出されているときにIC700の消費電流を抑制する。
【0084】
図3は、抑制回路727の一例を示す図である。
図3に示す抑制回路727は、ORゲート727Aと、発振器727Bと、を含む。
【0085】
ORゲート727Aは、低電圧ロックアウト信号UVLOと、静的過電圧保護信号SOVPと、短絡保護信号SPと、過熱保護信号TSDとの論理和を発振器727Bに供給する。
【0086】
発振器727Bは、ORゲート727Aの出力信号がハイレベルであるときにディセーブル状態になり、クロック信号CLKを出力しない。一方、発振器727Bは、ORゲート727Aの出力信号がローレベルであるときにイネーブル状態になり、クロック信号CLKを出力する。クロック信号CLKが供給されていないとき、演算回路713は動作を停止する。したがって、異常検出回路によって異常が検出されているとき、発振器727B及び演算回路713の消費電流ひいてはIC700の消費電流を抑制することができる。なお、発振器727Bから出力されるクロック信号CLKは、演算回路713以外の論理回路に供給されてもよい。
【0087】
IC700は、過電圧検出回路728及び電流引き抜き回路729(
図2において不図示)をさらに備える。
【0088】
図4は、過電圧検出回路728及び電流引き抜き回路729の一例を示す図である。
【0089】
過電圧検出回路728は、ヒステリシスコンパレータであり、電源電圧VCCを閾値電圧と比較し、比較結果を後述するスイッチ729Bに供給する。電源電圧VCCが閾値電圧以上であれば過電圧検出回路728の出力信号はハイレベル(過電圧であることを示すレベル)になり、電源電圧VCCが閾値電圧未満であればローレベル(過電圧でないことを示すレベル)になる。過電圧検出回路728で用いられる閾値電圧は、過電圧検出回路728の出力信号のレベルに応じて、第9閾値電圧VTH9(例えば34[V])と第10閾値電圧VTH10(例えば38[V])とを遷移する。
【0090】
電流引き抜き回路729は、定電流源729A及びスイッチ729Bを含む。スイッチ729Bの一端は定電流源729Aを介して端子VCCに接続される。スイッチ729Bの他端は端子GNDに接続される。スイッチ729Bは、過電圧検出回路728の出力信号がハイレベルであるときにオンになり、過電圧検出回路728の出力信号がローレベルであるときにオフにある。したがって、定電流源729Aは、電源電圧VCCが過電圧であるときのみ端子VCCから定電流を引き抜く。なお、本実施形態とは異なり、電源電圧VCCが過電圧であるときに、電源電圧VCCが大きいほど端子VCCから引き抜く電流を大きくしてもよい。このような変形例は、例えば電源電圧VCCと基準電圧との誤差を出力する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力に応じた電流値の電流を出力する電流源によって実現することができる。
【0091】
図5は、IC700の電源電圧V
CCの波形を示すタイムチャートである。なお、
図5において、従来の半導体集積回路装置101の電源電圧V
CCの波形も比較のために図示している。
【0092】
IC700では、スイッチングトランジスタM1のスイッチング動作が停止しているときに、IC700の消費電流を抑制回路727によって抑制しているので、電源電圧VCCを増加させることができる。これにより、IC700は、従来の半導体集積回路装置101と異なり、第2のタイミングt2で負荷変動に応答することができる。つまり、IC700は、従来の半導体集積回路装置101と比較して、負荷応答性を改善することができる。
【0093】
また、PFC回路7では、スイッチングトランジスタM1のスイッチング動作が停止しているときに、スイッチングトランジスタM1のスイッチング動作を停止しているときよりも電源電圧VCCが大きくなるようにしている。これにより、負荷応答性を一層改善することができる。例えば、IC700内の定電流源から出力される定電流の値を従来の半導体集積回路装置101の定電流源から出力される定電流の値よりも小さくすることで、イッチングトランジスタM1のスイッチング動作が停止しているときに、スイッチングトランジスタM1のスイッチング動作を停止しているときよりも電源電圧VCCを大きくすることができる。
【0094】
IC700は、過電圧検出回路728及び電流引き抜き回路729を備えるので、電源電圧VCCが過電圧になった際に電源電圧VCCを低下させることができる。
【0095】
また、IC700を用いた場合、電源電圧VCCの低下を抑制できるので、キャパシタC7の容量を小さくすることができる。したがって、例えばキャパシタC7を電解コンデンサではなく安価なセラミックコンデンサにすることができる。
【0096】
また、キャパシタC7の容量を小さくすると、電子機器1に電源を投入したときにキャパシタC7の充電時間が短くなるので、電子機器1の起動時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 電子機器
7 力率改善回路
700 IC
705 過熱保護回路
702、708、709 コンパレータ
721 ANDゲート721
727 抑制回路