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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ウインチドラム
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/30 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B66D1/30 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020174068
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065467
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高好
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209283(JP,A)
【文献】実開昭57-141988(JP,U)
【文献】特開2019-123585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0207744(US,A1)
【文献】特開2012-001321(JP,A)
【文献】特開2010-285224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
B65H 57/00-57/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、
少なくとも一方の前記キッカーは、前記フランジの半径方向から見た断面形状が台形状に形成され、フランジ内面部を台形における幅広の下底とし、突出端の最高部を上底とした形状を有し、前記突出端の最高部の位置には、着脱可能なキッカー部材を嵌装させるキッカー凹部が設けられ、該キッカー凹部に前記キッカー部材を嵌装してなることを特徴とするウインチドラム。
【請求項2】
前記キッカー部材は、前記キッカー凹部に嵌装した状態で、あらかじめ設定された突出量だけ前記キッカー凹部から突出する突出面を有し、該突出面には、突出方向における面取り量が前記突出量よりも大きい面取り部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のウインチドラム。
【請求項3】
前記キッカー部材の取付面と前記キッカー凹部の底面との間には、前記突出面の突出量を調整するシム板が設けられていることを特徴とする請求項2記載のウインチドラム。
【請求項4】
前記キッカー部材は、前記キッカー凹部の材料よりも摩耗しにくい材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のウインチドラム。
【請求項5】
ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、
少なくとも一方の前記キッカーは、前記フランジの半径方向から見た断面形状が三角形状に形成され、フランジ内面部を三角形における幅広の底辺とし、突出端の最高部を頂点とした形状を有し、前記突出端の最高部の位置には、着脱可能なキッカー部材を嵌装させるキッカー凹部が設けられ、該キッカー凹部に前記キッカー部材を嵌装してなることを特徴するウインチドラム。
【請求項6】
前記キッカー部材は、前記キッカー凹部に嵌装した状態で、あらかじめ設定された突出量だけ前記キッカー凹部から突出する突出面を有し、該突出面には、突出方向における面取り量が前記突出量よりも大きい面取り部が設けられていることを特徴とする請求項5記載のウインチドラム。
【請求項7】
前記キッカー部材の取付面と前記キッカー凹部の底面との間には、前記突出面の突出量を調整するシム板が設けられていることを特徴とする請求項6記載のウインチドラム。
【請求項8】
前記キッカー部材は、前記キッカー凹部の材料よりも摩耗しにくい材料から形成されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項記載のウインチドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインチドラムに関し、詳しくは、クレーンや杭打機、アースドリルなどの建設機械に使用されるロープ巻取用のウインチドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種建設機械に使用されているロープ巻取用のウインチドラムは、一般に、巻胴の外周面にロープ溝が設けられるとともに、巻胴のフランジ内面に邪魔板と称されるキッカーが突出して設けられることにより、第1層のロープがロープ溝に入り込んで整然と巻き取られ、第2層以上の上層のロープは、このキッカーによりガイドされて下層のロープの上に順に巻き取られていく。キッカーは、その構造上、ロープが通るたびに擦れて摩耗が進みやすく、特に、高負荷(ハイラインプル)でウインチを使用するアースドリルでは、耐摩耗性を向上させた断面台形状のキッカーが開発され、実用化に至っている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6290699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された断面台形状のキッカーは、ロープに対して広い接触面を有しているので、キッカーの最高部の摩耗量を減らせるという利点がある。しかし、こうした摩耗の進行を遅らせることが可能なキッカーであっても、いずれは摩耗が進行して耐用年月に達してしまう。この場合、摩耗したキッカーは溶接などで肉盛り補修を行うか、ドラムごと交換する必要があるが、これらの補修や交換は大掛かりな作業となるため、施工現場での作業は難しく、また、コストの高い作業となってしまう。
【0005】
そこで本発明は、優れた摩耗耐久性を有しつつ、保守の際には交換が容易なキッカーの着脱構造を備えたウインチドラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のウインチドラムは、ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、少なくとも一方の前記キッカーは、前記フランジの半径方向から見た断面形状が台形状に形成され、フランジ内面部を台形における幅広の下底とし、突出端の最高部を上底とした形状を有し、前記突出端の最高部の位置には、着脱可能なキッカー部材を嵌装させるキッカー凹部が設けられ、該キッカー凹部に前記キッカー部材を嵌装してなることを特徴としている。
【0007】
また、ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、少なくとも一方の前記キッカーは、前記フランジの半径方向から見た断面形状が三角形状に形成され、フランジ内面部を三角形における幅広の底辺とし、突出端の最高部を頂点とした形状を有し、前記突出端の最高部の位置には、着脱可能なキッカー部材を嵌装させるキッカー凹部が設けられ、該キッカー凹部に前記キッカー部材を嵌装してなることを特徴している。
【0008】
さらに、前記キッカー部材は、前記キッカー凹部に嵌装した状態で、あらかじめ設定された突出量だけ前記キッカー凹部から突出する突出面を有し、該突出面には、突出方向における面取り量が前記突出量よりも大きい面取り部が設けられていることを特徴としている。加えて、前記キッカー部材の取付面と前記キッカー凹部の底面との間には、前記突出面の突出量を調整するシム板が設けられていることを特徴としている。また、前記キッカー部材は、前記キッカー凹部の材料よりも摩耗しにくい材料から形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウインチドラムによれば、断面台形状あるいは断面三角形状のキッカーの最高部にキッカー凹部を設けるとともに、該キッカー凹部にキッカーの一部を構成する着脱可能なキッカー部材が嵌装されるので、特許文献1のウインチドラムと同様にキッカーの長寿命化が図れ、さらには、補給部品として扱えるキッカー部材により、ウインチドラムの保守を容易かつ経済的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のウインチドラムの一形態例を示す正面図である。
図2】同じく断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5図3のV-V断面図である。
図6図4のVI-VI断面図である。
図7】シム板を用いたキッカー部材の高さ調整方法を示す図である。
図8】本発明のウインチドラムを適用可能な建設機械の一例を示すアースドリルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図8は、本発明のウインチドラムを適用可能な建設機械の一例であるアースドリルを示している。このアースドリル11は、走行装置を備えた下部走行体12の上に上部旋回体13を旋回可能に設けたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に装着されたブーム15と、上部旋回体13の後方上部に設けられた折り畳み可能なガントリ16と、上部旋回体13の後端部に設けられたカウンタウエイト17と、上部旋回体13の幅方向中央に搭載された複数のウインチ18a,18b,18cと、上部旋回体13の右側前端部に設けられた運転室19とを備えている。
【0012】
ブーム15の前方には、アースドリル用の機器として、複数のアーム21a及びシリンダ21bを介してケリーバ駆動装置21が保持され、ブーム15の上端に設けられたトップシーブブロック22から垂下する主巻ロープ23aには、ケリーバ駆動装置21を貫通したケリーバ24が垂下されており、ケリーバ24の下端には、掘削バケットや拡底バケット25が取り付けられている。さらに、トップシーブブロック22からは補巻ロープ23bが垂下しており、ブーム15の後部側には、ペンダントロープ26を介して起伏ロープ23cが連結されている。
【0013】
主巻ロープ23a、補巻ロープ23b及び起伏ロープ23cは、金属製のワイヤロープであって、前記ウインチ18a,18b,18cにそれぞれ巻回されており、掘削作業は、ケリーバ駆動装置21によりケリーバ24を介して掘削バケットや拡底バケット25を回転させながら、第1のウインチ18aを操作して主巻ロープ23aにより、ケリーバ24を介して掘削バケットや拡底バケット25を昇降させることで行われる。したがって、主巻ロープ23aには、掘削した土砂を取り込んだ掘削バケットや拡底バケット25を上昇させる際に、大きな荷重が作用し、第1のウインチ18aは、高負荷での使用状態となる。
【0014】
図1乃至図7は、前述のように高負荷で使用されるアースドリルの第1のウインチ18aに用いるウインチドラムとして適した構造を有する本発明のウインチドラムの一形態例を示している。本形態例に示すウインチドラム31は、基本的に従来のウインチドラムと同様に形成されており、第1層目のロープを整列させるロープ溝32の一部区間を傾斜状にした、いわゆる平行巻式の巻胴33と、該巻胴33の両側にそれぞれ設けられた一対のフランジ34,35とを有しており、巻胴33の一側には、巻回するロープの端部を固定するロープ固定部33aが設けられるとともに、一方のフランジ34の外面側や巻胴33の内部には、油圧モータなどの駆動源との連結部やブレーキ部などが設けられている。
【0015】
アースドリルの第1のウインチ18aに巻回されるロープの長さは、前記ケリーバ24の昇降に必要な長さだけであることから、通常、ウインチドラム31の巻胴33に3層目まで巻回する長さで十分である。この場合、ロープ固定部33aから巻胴33の外周に引き出されたロープは、ロープ溝32にガイドされて1層目から2層目へと巻回される。具体的には、ロープ溝32にガイドされたロープは、最後の巻列で巻き取られたロープがあるため押し出されるように2層目に上がる。そして、巻方向が切り替えられた2層目のロープは1層目のロープ間、つまりロープ溝32を形成する鍔の真上に沿って巻き取られていく。
【0016】
巻胴33のロープ固定部33a側に位置する一方のフランジ34の内面には、2層目のロープを3層目にガイドする部分からフランジ外周にわたる部分に、ロープの巻方向を2層目の方向から3層目の方向に切り替えるための台形キッカー(偶数列キッカーとも称する)36が設けられている。また、第1のウインチ18aでは、ロープを多層に巻回しても使用可能な汎用性の高い設計がなされており、具体的には、台形キッカー36が設けられたフランジ34とは反対側のフランジ35の内面に、ロープの巻方向を3層目の方向から4層目の方向に切り替えるための三角形キッカー(奇数列キッカーとも称する)37が設けられている。これら2箇所のキッカー36,37は、ロープの収容性を考慮して、ウインチドラム31の回転軸に対して180度互い違い(対角)に配置されている。
【0017】
台形キッカー36は、基本的に、巻胴33やフランジ34,35などの各部材とともに高強度の球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)で一体成形されている。球状黒鉛鋳鉄は、JIS規格に規定されている記号として、例えばFCD600-3が挙げられる。こうした材料からなる台形キッカー36は、図3図5などに示すように、断面形状が台形状に形成されたキッカー基部36aと、該キッカー基部36aに嵌装されて台形キッカー36の一部をなす台形キッカー部材38とによって構成され、全体としてフランジ内外方向に延びた形状を有し、ロープの1層目から2層目までの範囲に設けられた断面三角形状の内周側キッカー39の外周側に連設する形で、ロープの3層目からフランジ外周縁にわたって設けられている。
【0018】
キッカー基部36aは、その断面が、フランジ34の内面部を幅広の下底36bとし、突出端の最高部を上底36cとした台形形状を有しており、ロープを巻胴33に巻き取る際にロープが接触する側の脚、すなわちロープ巻入れ側斜面36dにおけるフランジ内面に対する斜面角度αは、反対側の脚である巻出し側斜面36eの斜面角度βとは異なる角度、本形態例では、巻出し側斜面36eの斜面角度βより小さな角度で形成されている。キッカー基部36aの最高部となる上底36cは、内周側キッカー39の最高部となる頂点よりも高く形成されており、上底36cのフランジ周方向の寸法は、巻胴33の直径及びロープの直径に応じて設定された寸法、例えば100mm程度に設定されている。
【0019】
キッカー基部36aの上底(最高部)36cの位置には、台形キッカー部材38が着脱可能に嵌装されるキッカー凹部36fが設けられている。キッカー凹部36fは、上底36cのフランジ周方向幅いっぱいに広げられた略矩形状の嵌合凹部であって、フランジ34まで達する深さの底面には、嵌装した台形キッカー部材38を六角穴付きボルト(キャップスクリュー)40で固定するための複数のねじ部34aが設けられている。
【0020】
台形キッカー部材38は、キッカー凹部36fの形状に対応した外形と所定の厚みを有する板片であって、キッカー凹部36fの材料(ダクタイル鋳鉄)よりも摩耗しにくい材料である耐摩耗鋼板から形成されている。耐摩耗鋼板は、例えば、拡底バケット25の底板など、耐摩耗性が要求される部位に用いられている鋼板であり、合金鋼に焼入などの熱処理を施すことによって得られる高い硬度、例えば、表面のブリネル硬度(HB)で400以上となっている。これにより、台形キッカー36は、ロープが接触する台形キッカー部材38のある部分が、他の部分よりも2倍以上の硬さとなり、最高部の摩耗量が大幅に低減される。
【0021】
また、台形キッカー部材38は、ねじ部34aに対応した位置にボルト頭嵌入凹部41aを備えた複数のボルト孔41が設けられ、六角穴付きボルト40を用いてキッカー凹部36fに嵌装固定した状態で、あらかじめ設定された突出量(例えば1mm)だけキッカー凹部36fの開口から突出する突出面42を有している。突出面42は、その周縁部に突出方向における面取り量が前記突出量よりも大きい量(例えば7mm)の面取り部(略45度傾斜)43が設けられている。これにより、ロープ巻入れ側斜面36dと突出面42と巻出し側斜面36eとは、この順に滑らかに連続するようになっている。
【0022】
三角形キッカー37は、主にロープの巻方向を3層目の方向から4層目の方向に切り替えるためのもので、基本的に、前記台形キッカー36と同じ耐摩耗構造を備えており、図4図6などに示すように、断面形状が略二等辺三角形状に形成されたキッカー基部37aと、該キッカー基部37aに嵌装されて三角形キッカー37の一部をなす三角形キッカー部材44とによって構成され、全体としてフランジ内外方向に延びた形状を有している。キッカー基部37aは、その断面が、フランジ35の内面部を幅広の底辺37bとし、突出端の最高部を頂点37cとした三角形状を有し、該頂点(最高部)37cの位置には、前記三角形キッカー部材44が着脱可能に嵌装されるキッカー凹部37dが設けられている。キッカー凹部37dは、略ひし形状の嵌合凹部であって、底面には嵌装した三角形キッカー部材44を六角穴付きボルト45で固定するための複数のねじ部35aが設けられている。
【0023】
三角形キッカー部材44は、キッカー凹部37dの形状に対応した外形と所定の厚みを有する板片であって、ねじ部35aに対応した位置にボルト頭嵌入凹部46aを備えた複数のボルト孔46が設けられ、六角穴付きボルト45を用いてキッカー凹部37dに嵌装固定した状態で、あらかじめ設定された突出量(例えば1mm)だけ頂点37cから突出する突出面47を有している。突出面47は、その周縁部に突出方向における面取り量が前記突出量よりも大きい量(例えば7mm)の面取り部(略45度傾斜)48が設けられている。これにより、三角形の二等辺であるロープ巻入れ側斜面37eと巻出し側斜面37fとが突出面47を介して滑らかに連続するようになっている。
【0024】
このように形成されたウインチドラム31は、長期使用により各キッカー部材38,44の摩耗が進行するが、一定量摩耗しても直ちに交換されるものではなく、各キッカー部材38,44の取付面とキッカー凹部36f,37dの底面との間に高さ調整用のシム板(金属板)を挿入して、突出面42,47を使用開始時の突出量に回復させることが可能である。以下では、一例として台形キッカー部材38の高さ調整方法について、図7を参照しながら説明する。
【0025】
まず、使用開始時(新品)において、台形キッカー部材38は、図7(A)に示すように、キッカー凹部36fに嵌装固定した状態で、設定突出量(例えば1mm)だけキッカー凹部36fの開口から突出する突出面42を形成している。突出面42は、ロープを巻き取る際に台形キッカー36の最高部となって真っ先に削れていくことから、やがてキッカー凹部36fの開口と面一の高さ位置まで低くなる。ここで、用意したシム板49を摩耗量(1mm)に相当する枚数、例えば厚さ1mmのシム板49を1枚、台形キッカー部材38の取付面に挿入して突出量を回復させた後、引き続きウインチの使用を継続する。こうして、突出面42の摩耗が進むたびにシム板49を追加していくと、最終的には、面取り部43がキッカー凹部36fから完全に露出した状態、あるいは、図7(B)に示すように、完全に露出する手前の状態となり、この状態は、台形キッカー部材38の交換時期の目安とされる。
【0026】
このように、本発明のウインチドラム31によれば、断面台形状あるいは断面三角形状のキッカー36,37の最高部にキッカー凹部36f,37dを設けるとともに、該キッカー凹部36f,37dにキッカー36,37の一部を構成する着脱可能なキッカー部材38,44が嵌装されるので、特許文献1のウインチドラムと同様にキッカーの長寿命化が図れ、さらには、補給部品として扱えるキッカー部材38,44により、ウインチドラム31の保守を容易かつ経済的に行うことができる。
【0027】
また、キッカー部材38,44が設定突出量だけキッカー凹部36f,37dから突出する突出面42,47を有し、該突出面42,47に設定突出量よりも大きい面取り量の面取り部43,48を設けているので、簡単な構成でロープの角当たりを抑えることが可能となり、ロープの円滑な滑りや押付力を容易に得ることができる。しかも、簡便なシム調整により、キッカー凹部36f,37dから面取り部43,48が露出すれば一目で交換時期を把握でき、六角穴付きボルト40,45の頭部(工具穴)が削られてしまう不具合も未然に防止できることから、信頼性の高いキッカーの着脱構造を備えたウインチドラム31が実現される。さらに、キッカー部材38,44がキッカー凹部36f,37dの材料よりも摩耗しにくい材料から形成されているので、キッカーの一層の長寿命化を図ることができる。
【0028】
なお、本発明のウインチドラムは、前記アースドリルに限らず、杭打機やクレーンなど、ウインチを搭載した各種建設機械の各種ウインチに適用可能であり、さらに、単独で使用されるウインチや、ロープ状物を巻き取る各種機器にも適用可能であり、キッカーにおける台形状及び三角形状の各部の寸法や角度は、ウインチの使用目的、ロープの直径、巻胴の直径、巻胴へのロープ巻回数などの条件に応じて適宜に設定することができる。また、キッカー部材は、ロープを損傷させない範囲で硬度の高い耐摩耗鋼板を採用することができ、面取り部の大きさも必要に応じて変更することが可能である。さらに、負荷頻度に応じて台形キッカーのみを着脱式にする構成をとるなど、ウインチの仕様に合わせた各種態様が考えられる。加えて、保守においては面取り部が全て消失した時を交換時期の目安とするなど運用上の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0029】
11…アースドリル、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…ブーム、16…ガントリ、17…カウンタウエイト、18a,18b,18c…ウインチ、19…運転室、21…ケリーバ駆動装置、21a…アーム、21b…シリンダ、22…トップシーブブロック、23a…主巻ロープ、23b…補巻ロープ、23c…起伏ロープ、24…ケリーバ、25…拡底バケット、26…ペンダントロープ、31…ウインチドラム、32…ロープ溝、33…巻胴、33a…ロープ固定部、34…フランジ、34a…ねじ部、35…フランジ、35a…ねじ部、36…台形キッカー、36a…キッカー基部、36b…下底、36c…上底、36d…ロープ巻入れ側斜面、36e…巻出し側斜面、36f…キッカー凹部、37…三角形キッカー、37a…キッカー基部、37b…底辺、37c…頂点、37d…キッカー凹部、37e…ロープ巻入れ側斜面、37f…巻出し側斜面、38…台形キッカー部材、39…内周側キッカー、40…六角穴付きボルト、41…ボルト孔、41a…ボルト頭嵌入凹部、42…突出面、43…面取り部、44…三角形キッカー部材、45…六角穴付きボルト、46…ボルト孔、46a…ボルト頭嵌入凹部、47…突出面、48…面取り部、49…シム板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8