(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】オイルパルス工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20240805BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B25B21/02 J
B25F5/00 D
B25F5/00 G
(21)【出願番号】P 2020174889
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】高萩 耕司
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120121(JP,A)
【文献】特開2013-233631(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137916(WO,A1)
【文献】特開2006-289596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00-23/18;
B25F 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの前方に
減速機構を介して配置され
、前記モータ
から前記減速機構を介して伝わる回転により駆動するオイルユニットと、
前記オイルユニットの前方に配置されて前記オイルユニットにより駆動する回転軸と、
前記モータ
及び前記減速機構を収容する筒状のモータハウジングと、
前記モータハウジングの下方に配置されるグリップ部と、
前記オイルユニットを収容し、前記
減速機構の前方に配置されるユニットケースと、を含み、
前記ユニットケース
の前部にのみ吸気孔が設けられ、前記モータハウジングにのみ排気孔が設けられて、
前記オイルユニットと前記ユニットケースとの間には、前記吸気孔と連通する空間が形成され、
前記ユニットケース
の前記前部の後端側は、前記モータハウジング
の前端に保持されて、前記ユニットケースの後部には、前記空間と連通する内排気孔が形成される一方、
前記モータハウジングには、
前記減速機構の径方向外側へ張り出して前記内排気孔と前記径方向でオーバーラップする張出部が前後方向に形成されて、前記張出部の内側には、前記内排気孔と前記モータの収容空間とを連通させる空気流路が形成されて、
前記吸気孔から導入されて前記空間を通り、前記内排気孔を介して前記空気流路を後方へ流れて、前記モータの収容空間を通って前記排気孔から排出される空気の流れにより、前記オイルユニット及び前記モータを冷却可能であるオイルパルス工具。
【請求項2】
前記モータに、温度検出素子が設けられる請求項1に記載のオイルパルス工具。
【請求項3】
前記モータの駆動を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記温度検出素子から検出される前記モータの温度が予め設定された設定温度に達したら、前記モータの駆動を停止する請求項2に記載のオイルパルス工具。
【請求項4】
前記モータは、ステータと、前記ステータの内側に配置されるロータとを有し、
前記温度検出素子は、前記ステータに設けられる請求項2又は3に記載のオイルパルス工具。
【請求項5】
前記ステータは、インシュレータを有し、前記温度検出素子は、前記インシュレータに設けられる請求項4に記載のオイルパルス工具。
【請求項6】
前記インシュレータには、前記温度検出素子を収容する凹みが形成されている請求項5に記載のオイルパルス工具。
【請求項7】
前記温度検出素子は、サーミスタである請求項
2乃至6の何れかに記載のオイルパルス工具。
【請求項8】
前記内排気孔は、前記ユニットケースの左右にそれぞれ形成される請求項
1乃至7の何れかに記載のオイルパルス工具。
【請求項9】
前記張出部及び前記空気流路は、前記モータハウジングの左右にそれぞれ形成される請求項
1乃至8の何れかに記載のオイルパルス工具。
【請求項10】
前記モータは、前後方向に延びる回転軸を有し、前記回転軸の後端に、ファンが設けられる請求項1乃至
9の何れかに記載のオイルパルス工具。
【請求項11】
前記排気孔は、前記ファンの径方向外側で前記モータハウジングに設けられる請求項
10に記載のオイルパルス工具。
【請求項12】
前記ユニットケースには、ユニットケースカバーが、前記ユニットケースとの間に隙間を有した状態で被せられて、前記ユニットケースカバーには、前記隙間を介して前記吸気孔と連通する外吸気孔が設けられる請求項1乃至
11の何れかに記載のオイルパルス工具。
【請求項13】
前記ユニットケースカバーは、後端が前記モータハウジングの前端に当接する状態で組み付けられて、前記後端に切欠きを有し、前記切欠きと前記前端との間に前記外吸気孔が形成される請求項
12に記載のオイルパルス工具。
【請求項14】
前記外吸気孔は、前記ユニットケースの周方向に複数設けられる請求項
12又は13に記載のオイルパルス工具。
【請求項15】
前記吸気孔は、前記ユニットケースの前部に複数設けられる請求項
12乃至14の何れかに記載のオイルパルス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃トルクの出力用にオイルユニットを用いたオイルパルス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルパルス工具は、モータの回転を、オイルユニットにより断続的な衝撃トルク(インパクト)としてスピンドルから出力する。このオイルユニットは、例えば特許文献1に開示される構造が知られている。この構造は、オイルが封入されてモータの回転が伝達されるケース内に、スピンドルの後部を回転可能に収容している。また、ケースの中心で一体回転するカムをスピンドルの後部に挿入させると共に、カムの外側で当該後部内に、一対のボールとブレードとをそれぞれ放射方向へ移動可能に収容している。
このオイルユニットでは、ケースが回転すると、これと一体のカムも回転して後部内でボールを介してブレードを径方向外側へ押し出す。ケースの所定の位相で後部内がカムによりシールされると、オイル圧によってブレードは押し出し位置にとどまる。そのままケース内の突起がブレードに衝突することで衝撃トルク(インパクト)が発生する。続けてケースと共にカムが回転すると、後部内のオイルが流出してオイル圧が低下するため、ブレードは後部内に後退して突起を相対的に乗り越える。このブレードの押し出し、突起との衝突、後退を繰り返してインパクトが断続的に発生する。なお、ボール等を用いず、ケースとスピンドルとの相対回転によりブレードをケース内で揺動させ、油圧を変化させることでインパクトを発生させるオイルユニットも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルパルス工具では、連続作業を行うとオイルユニットの温度が上昇し、性能低下や故障の原因となる。
【0005】
そこで、本発明は、オイルユニット及びモータを冷却することができるオイルパルス工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、モータと、
前記モータの前方に減速機構を介して配置され、前記モータから前記減速機構を介して伝わる回転により駆動するオイルユニットと、
前記オイルユニットの前方に配置されて前記オイルユニットにより駆動する回転軸と、
前記モータ及び前記減速機構を収容する筒状のモータハウジングと、
前記モータハウジングの下方に配置されるグリップ部と、
前記オイルユニットを収容し、前記減速機構の前方に配置されるユニットケースと、を含み、
前記ユニットケースの前部にのみ吸気孔が設けられ、前記モータハウジングにのみ排気孔が設けられて、
前記オイルユニットと前記ユニットケースとの間には、前記吸気孔と連通する空間が形成され、
前記ユニットケースの前記前部の後端側は、前記モータハウジングの前端に保持されて、前記ユニットケースの後部には、前記空間と連通する内排気孔が形成される一方、
前記モータハウジングには、前記減速機構の径方向外側へ張り出して前記内排気孔と前記径方向でオーバーラップする張出部が前後方向に形成されて、前記張出部の内側には、前記内排気孔と前記モータの収容空間とを連通させる空気流路が形成されて、
前記吸気孔から導入されて前記空間を通り、前記内排気孔を介して前記空気流路を後方へ流れて、前記モータの収容空間を通って前記排気孔から排出される空気の流れにより、前記オイルユニット及び前記モータを冷却可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オイルユニット及びモータを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2のA-A線断面図である(ブレードは押し出し状態)。
【
図10】
図2のD-D線拡大断面図である(ブラシレスモータ部分のみ示す)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、オイルパルス工具の一例である充電式のソフトインパクトドライバ1の斜視図である。
図2はソフトインパクトドライバ1の正面図である。
図3は、
図2のA-A線断面図である。
図4は、
図2のB-B線拡大断面図である。
なお、ここでの「ソフトインパクトドライバ」は、出願人が定義した名称で、他の電動工具メーカでは、オイルパルスドライバと称したり、インパルスドライバと称したりする場合もある。要するに、オイルが封入されたオイルユニットを有する工具であれば全て本発明のオイルパルス工具に含まれる。
【0010】
ソフトインパクトドライバ1は、本体部2とグリップ部3とを有する。本体部2は、中心軸を前後方向として延び、ブラシレスモータ40及びオイルユニット42を収容する。グリップ部3は、本体部2から下方に突出する。グリップ部3の下端には、バッテリ装着部4が設けられている。バッテリ装着部4には、電源となるバッテリパック5が前方から取り付け可能である。
図5にも示すように、ソフトインパクトドライバ1のハウジングは、本体ハウジング6と、ユニットケース7と、リアカバー8と、ユニットケースカバー9とを含む。本体ハウジング6は、本体部2の中央部とグリップ部3とバッテリ装着部4とを一体化している。
本体ハウジング6は、左右一対の半割ハウジング6a,6bを複数のネジ10,10・・によって組み付けて形成される。本体部2の中央部となる本体ハウジング6の上側には、前後方向に延びる筒状部6cが形成されている。
リアカバー8は、筒状部6cの後部に後方から左右2本のネジ11,11によってネジ止めされる。リアカバー8は、本体部2の後部を閉塞する。筒状部6cとリアカバー8とでモータハウジングが形成される。
【0011】
ユニットケース7は、円筒状の後部12と、先細り筒状の前部13とを有する。後部12が本体ハウジング6に保持されて、前部13が本体ハウジング6から突出する。後部12の左右両側には、側面視四角形状の凸部14,14が形成されている。凸部14,14は、半割ハウジング6a,6bの内面に形成された凹部15,15が嵌合する。凸部14,14の前方で後部12と本体ハウジング6との間には、前方へ向けて一対のライト16,16が設けられる。
後部12の側面で凸部14,14の下側には、四角形状の内排気孔17,17が形成されている。前部13の左右両側には、複数の円形状の吸気孔18,18・・が形成されている。後部12の上面には、本体ハウジング6をネジ止めするネジボス19との干渉を回避する逃げ凹部12aが左右方向に形成されている。
【0012】
ユニットケースカバー9は、本体ハウジング6の前方でユニットケース7の前部13に前方から被せられる。ユニットケースカバー9は、前部13よりも一回り大きい先細り筒状である。ユニットケースカバー9の後端で上部及び下部の左右両側には、本体ハウジング6の前端に係止する3つの係止片20,20・・・・が後向きに形成されている。ユニットケースカバー9は、本体ハウジング6の組み付け状態で各係止片20によって前方への抜け止めがなされる。ユニットケースカバー9の後端は、係止片20を除いて本体ハウジング6の前端に当接する。前部13とユニットケースカバー9との間には、
図6にも示すように、隙間21が形成される。
ユニットケースカバー9の後端には、4つの切欠き22,22・・が形成されている。切欠き22は、ユニットケースカバー9の左右でライト16を挟んで上下に一対ずつ形成されている。切欠き22の後方は、本体ハウジング6の前端に閉塞される。よって、ユニットケースカバー9と本体ハウジング6との間には、
図2及び
図7に示すように、周方向に4つの外吸気孔23,23・・が形成される。各外吸気孔23は、隙間21を介して前部13の吸気孔18と連通する。ユニットケースカバー9の左右の側面には、凹溝24,24が形成されている。凹溝24は、ライト16,16の前方で前後方向に形成される。凹溝24は、ライト16から照射される光を遮ることなく前方へ導く。
【0013】
本体ハウジング6の筒状部6cの左右両側には、一対の張出部25,25が形成されている。張出部25,25は、
図8にも示すように、筒状部6cの左右の側面から下向きに張り出す横断面L字状となっている。張出部25,25の前端は、
図8及び
図9に示すように、筒状部6cの前端近くまで前方へ延び、左右方向でユニットケース7の内排気孔17,17とオーバーラップしている。張出部25,25の後端は、後方へ延び、左右方向で後述するギヤケース70とオーバーラップしている。
こうして、張出部25,25の内側には、
図9に示すように、ユニットケース7及びギヤケース70の外側で内排気孔17,17をブラシレスモータ40の収容空間まで連通させる前後方向の空気流路26,26が形成される。
【0014】
グリップ部3の上部には、スイッチ30が収容される。スイッチ30は、トリガ31を前方へ突出させている。スイッチ30の上側には、ブラシレスモータ40の回転の正逆切替ボタン32が設けられている。正逆切替ボタン32の前方には、ライト16,16をON/OFFさせる押しボタン33が設けられている。
バッテリ装着部4内には、端子台34が収容されている。端子台34は、バッテリパック5と電気的に接続される。端子台34の上側には、コントローラ35が配置されている。コントローラ35は、制御回路基板36を備えて端子台34と平行に配置されている。コントローラ35の上側には、スイッチパネル37が設けられている。スイッチパネル37には、打撃力の切替ボタン等が設けられている。スイッチパネル37は、バッテリ装着部4の上面に露出している。
【0015】
図3,4に示すように、本体部2には、後側から順に、ブラシレスモータ40、減速機構41、オイルユニット42が収容されている。オイルユニット42は、スピンドル43を保持している。スピンドル43の前端は、オイルユニット42から前方へ突出している。
ブラシレスモータ40は、ステータ44とロータ45とを有する。ブラシレスモータ40は、筒状のステータ44の内側にロータ45を備えるインナロータ型である。ステータ44は、筒状部6cに保持される筒状のステータコア46を備える。ステータコア46は、複数の積層鋼板から形成される。ステータ44は、インシュレータ47A,47Bを備える。インシュレータ47A,47Bは、ステータコア46の軸方向前後の端面にそれぞれ固定される。ステータ44は、複数のコイル48,48・・を有する。複数のコイル48,48・・は、インシュレータ47A,47Bを介してステータコア46の複数のティース49,49・・に巻回される。各コイル48は、前側のインシュレータ47Aに保持されるヒュージング端子50と電気的に接続されることで三相結線される。
【0016】
前側のインシュレータ47Aには、センサ回路基板51が取り付けられている。センサ回路基板51は、ロータ45に設けたセンサ用永久磁石63の位置を検出して回転検出信号を出力する。センサ回路基板51は、中央に透孔51aを備える。
インシュレータ47A,47Bには、コイル48が巻回される各ティース49の前面側及び後面側を覆う複数の被覆部52,52・・が形成されている。このうちインシュレータ47Aの下側の1つの被覆部52(以下、区別するために符号「52A」とする。)の前面には、
図10及び
図11に示すように、凹み53が形成されている。凹み53内には、サーミスタ55をインサート成形した樹脂製の感温板54が収容されている。サーミスタ55は、温度に応じて変化する抵抗値を検出信号として出力する。感温板54から引き出されるサーミスタ55の正負の端子56,56は、インシュレータ47A内を通ってステータ44の外部に引き出される。
インシュレータ47Aの下側には、ヒュージング端子50を制御回路基板36からの三相の電源線と電気的に接続するためのコネクタ57がネジ止めされる。サーミスタ55の端子56,56も、コネクタ57を介して制御回路基板36とリード線を介して電気的に接続される。
【0017】
ロータ45は、回転軸60とロータコア61とを備える。回転軸60は、ロータコア61の軸心に設けられる。ロータコア61は、回転軸60の周囲で円筒状に配置される。ロータコア61は、複数の鋼板を積層してなる。ロータ45には、複数の筒状の永久磁石62,62・・が固定される。永久磁石62,62・・は、ロータコア61の外側で極性を交互に変えて配置される。ロータ45には、複数のセンサ用永久磁石63,63・・が固定される。センサ用永久磁石63,63・・は、永久磁石62,62・・の前方で放射状に固定される。
回転軸60の後端は、軸受64に保持される。軸受64は、リアカバー8の中央内面に保持されている。軸受64の前方で回転軸60には、ファン65が取り付けられている。ファン65の外側でリアカバー8の左右の側面には、複数の排気孔66,66・・が形成されている。
【0018】
本体ハウジング6内でブラシレスモータ40の前側には、ギヤケース70が保持される。ギヤケース70は、円盤状の軸受保持部71を備える。軸受保持部71は、後面側で軸受72を介して回転軸60の前端を支持している。回転軸60の前端には、ピニオン73が取り付けられている。ピニオン73は、ギヤケース70を貫通して前方へ突出している。ギヤケース70の外周には、前方へ延びる筒状部74が形成されている。筒状部74の先端は、ユニットケース7の後端にねじ込まれている。筒状部74とユニットケース7との間には、ユニットケース7の後端を閉塞する円盤状の蓋板75が配置されている。蓋板75は、筒状部74に係合して回り止めされた状態で筒状部74とユニットケース7との間に挟持固定される。
【0019】
減速機構41は、インターナルギヤ76と、3つのプラネタリギヤ77,77・・と、キャリア78とを含む。
インターナルギヤ76は、ギヤケース70の筒状部74内に固定される。インターナルギヤ76の後端には、周方向に所定間隔をおいて複数の係止突起76a,76a・・(
図3)が形成されている。ギヤケース70の軸受保持部71の前面には、各係止突起76aが挿入される複数の係止凹部71a,71a・・が形成されている。係止突起76aが係止凹部71aに係止することでインターナルギヤ76の回転規制がなされる。筒状部74の内面には、前後一対のリング状の溝79,79が形成されて、溝79,79にOリング80,80が収容されている。Oリング80,80は、インターナルギヤ76の外周に当接している。インターナルギヤ76は、Oリング80,80によって振れ止めされる。インターナルギヤ76の前端と蓋板75との間には、Oリング80よりも断面径の大きいOリング81が介在されている。Oリング81は、インターナルギヤ76を前方から軸受保持部71に押圧している。
【0020】
各プラネタリギヤ77は、中心を貫通するピン82を介してキャリア78に支持される。各ピン82は、前後両端がキャリア78に支持される。回転軸60のピニオン73は、キャリア78の中心に位置している。プラネタリギヤ77,77・・は、ピニオン73を中心に配置されてピニオン73と噛み合う。
プラネタリギヤ77の前後には、軸受83,83が配置されている。後側の軸受83は、軸受保持部71の前面側に保持されてキャリア78の後端外周を支持する。前側の軸受83は、蓋板75の後面側に保持されてキャリア78の前端外周を支持する。軸受83,83は、内外径が同じで、軸受83,83の中心間を結ぶ線は、遊星運動するピン82の移動軌跡と重なる。キャリア78の前端は、オイルユニット42の後ケース86と結合されている。
【0021】
オイルユニット42は、前ケース85と、後ケース86と、スピンドル43とを備える。
前ケース85は、ユニットケース7の内側に配置され、前方へ向けて段階的に先細りとなる筒状である。前ケース85とユニットケース7との間には、空間87が形成されている。空間87は、ユニットケース7の内排気孔17及び吸気孔18と連通している。
前ケース85の前面を形成する前面部88には、スピンドル43が貫通する軸心孔89が形成される。前面部88とスピンドル43との間には、シール用のOリング90が設けられる。
軸心孔89の径方向外側で前面部88には、一対のネジ91,91が、それぞれOリング91aを介して前方からねじ込まれている。前面部88の後方には、リング状の前室92が形成されている。前室92内には、チューブ93が収容されている。チューブ93は、空気が封入された中空で、前室92内へリング状の形で収容されている。チューブ93の後方には、仕切板94が設けられている。仕切板94は、外周に複数の切欠き94a,94a・・を備えている。仕切板94の後方には、後室95が形成され、切欠き94aを介して前室92と連通している。
【0022】
後ケース86は、後面部96と側壁部97とを備える。後面部96は、円盤状を有して前ケース85の前面部88と前後方向で対向する。側壁部97は、後面部96の周縁から前方に突出する円筒状を有している。側壁部97が前ケース85内に後方からねじ込まれて前ケース85と結合される。側壁部97と前ケース85との間には、シール用のOリング98が設けられる。
側壁部97の前端は、仕切板94に当接している。前ケース85の内面には、段部85aが設けられて、側壁部97と段部85aとの間で仕切板94が固定される。
図8に示すように、側壁部97の内周面には、一対の突起99,99が形成されている。突起99,99は、後ケース86の軸心を中心とした点対称位置に配置されて中心側へ隆起している。突起99,99は、中心側へ行くに従って周方向の幅が狭くなるテーパ状の横断面形状を有している。
【0023】
後ケース86の後面部96の中心には、受け凹部100が形成される。受け凹部100は、中央が深く、その外側が浅くなって2段階に凹む形状となっている。受け凹部100の中央には、カム101が前向きに固定されている。カム101の後部は、二面幅部101aとなっている。カム101の前部は、最も太い中心から直径方向で外側へ行くに従って徐々に薄肉となる扁平部101bとなっている。二面幅部101aと扁平部101bとは、正面視で突起99,99の中心同士を結ぶ直線と直交する向きとなっている。
【0024】
スピンドル43は、軸心に貫通孔102を有している。貫通孔102の後部は、後室95内に位置する内圧室103となっている。内圧室103は、横断面円形を有し、カム101が相対回転可能に挿入されている。スピンドル43の後端部は、カム101の外側で後ケース86の受け凹部100に支持されている。スピンドル43の中間部は、ユニットケース7に軸受104を介して支持されている。スピンドル43の前端は、ユニットケース7及びユニットケースカバー9を貫通して前方へ突出している。当該前端には、ドライバビット等のビットB(
図3)を着脱するためのスリーブ105が設けられている。
貫通孔102の前部は、ビットBを挿入する前側のビット挿入孔106と、ビット挿入孔106よりも小径となる後側の調圧孔107となっている。ビット挿入孔106の後端には、ビットピース108が挿入されている。ビットピース108は、ビットBの後端を受けるために内径が前方へ向かってテーパ状に拡開する筒状部材である。ビットピース108は、ビット挿入孔106の内底面に形成されるリング状の肩部109に当接して後方への移動が規制される。
【0025】
調圧孔107には、圧力調整バルブ110が挿入されている。圧力調整バルブ110は、前側にネジ部111を、後側にシール部112を有する弁部材である。ネジ部111は、シール部112よりも僅かに小径となっている。ネジ部111の前面には、ドライバー等の工具を係止するための係止溝113が形成されている。シール部112には、調圧孔107の内面との間をシールする2つのOリング112a,112aが外装されている。
調圧孔107の前部には、圧力調整バルブ110のネジ部111が螺合する雌ネジ部114が形成されている。調圧孔107の後部は、シール部112が挿入される大径部115となっている。雌ネジ部114と大径部115との間には、リング状のストッパ116が形成されている。
【0026】
ビットピース108は、スピンドル43の前側から組み付けられる。圧力調整バルブ110は、スピンドル43の後側から組み付けられる。ビットピース108は、ビット挿入孔106に前方から挿入されると、前述のように肩部109に当接する位置でビット挿入孔106内に収容される。圧力調整バルブ110は、調圧孔107に後方から挿入されて、ネジ部111が雌ネジ部114に螺合する位置で調圧孔107内に収容される。この状態でシール部112は大径部115を閉塞する。
こうして組み付けられる圧力調整バルブ110と、前ケース85と、後ケース86と、ネジ91と、スピンドル43等とにより、前室92及び後室95を含む密閉空間が形成される。この密閉空間内にオイルが封入される。
【0027】
そして、ビットピース108を組み付ける前に係止溝113を介して圧力調整バルブ110を回転させる。すると、ネジ部111がねじ送りされて圧力調整バルブ110が軸方向に進退動する。この軸方向の位置により、オイル圧(出力)を調整することができる。
但し、ねじ送りの前方側では、大径のシール部112がストッパ116に当接する位置で前進が規制される。この規制位置では、
図4に示すように、ネジ部111の前端は、肩部109に当接するビットピース108の後端から離れてビットピース108と非接触となっている。
雌ネジ部114は、大径部115よりも小径となっているので、ビットピース108が当接する肩部109の面積が大きくなり、ビットピース108の後退規制は確実に行える。
【0028】
図8に示すように、スピンドル43の後部43aは、後ケース86の直径方向に延びる扁平な横断面形状となっている。但し、後部43aの長手寸法は、後ケース86の突起99,99の対向面間の寸法よりも短くなっている。後部43aは、仕切板94と後ケース86の後面部96との間に位置している。後部43aの前後には、
図4に示すように、前連通孔117と後連通孔118とがそれぞれスピンドル43の直径方向に形成されている。この方向は、後部43aが延びる直径方向と直交している。前連通孔117は、後部43aと仕切板94との当接状態で内圧室103と後室95内とを連通させる。後連通孔118は、後部43aと後面部96との当接状態で内圧室103と後室95内とを連通させる。
【0029】
後部43a内でカム101の扁平部101bの径方向外側には、一対の孔119,119が形成されている。孔119,119は、内圧室103と連通してスピンドル43の直径方向に形成される。この方向は、後部43aが延びる方向と同じである。孔119,119には、ボール120,120が配置されている。各ボール120は、孔119内で放射方向へ移動可能で、中心側へ移動した際にはカム101の扁平部101bに接触可能となっている。
後部43aの長手方向両端には、一対の保持溝121,121が形成されている。保持溝121,121は、孔119,119と連通している。保持溝121,121は、後部43aの長手方向両端及び前後に開口するように前後方向に貫通形成されている。
【0030】
各保持溝121内に、ブレード122がそれぞれ配置されている。各ブレード122は、保持溝121の周方向の幅に略収まる幅と、保持溝121の前後方向の全長に亘って収まる長さとを有している。各ブレード122は、保持溝121内でスピンドル43の径方向へ移動可能に保持されている。各ブレード122は、中心側へ移動した際はボール120に接触可能となっている。各ブレード122の径方向外側の端部は、径方向外側へ行くに従って幅が小さくなるテーパ状となっている。ブレード122,122の径方向内側の端面には、当該端面よりも内側へ突出するボス123,123が形成されている。ボス123の軸線は、スピンドル43の径方向でボール120の中心を通る線と一致している。すなわち、ボール120とボス123とはスピンドル43の径方向に並んでいる。
【0031】
ブレード122の端面でボス123の根元に当たる位置には、リング溝124が形成されている。各ボス123には、コイルバネ125が外装されている。コイルバネ125の一端がリング溝124に挿入され、他端は保持溝121の底面に当接している。よって、各ブレード122は、ボール120がボス123に当接することで径方向外側へ押し出される。これと共に、コイルバネ125によっても径方向外側へ付勢される。
図8に示すように、後部43aの内圧室103内でカム101の扁平部101bが後部43aの長手断面と平行な向きとなった際には、カム101によってボール120,120がそれぞれ径方向外側へ押し出される。これと同時に、ボール120,120及びコイルバネ125,125によってブレード122,122もそれぞれ径方向外側へ押し出される。このときブレード122,122は、後ケース86の内周面に近接或いは当接し、周方向で突起99,99と干渉する位置となる。
【0032】
以上の如く構成されたソフトインパクトドライバ1において、 スピンドル43のビット挿入孔106にビットBを装着した状態で、使用者がグリップ部3を把持してトリガ31を引く。すると、スイッチ30がON動作してバッテリパック5からブラシレスモータ40のステータ44へ三相電流が供給されてロータ45が回転する。すなわち、制御回路基板36のマイコンが、センサ回路基板51の回転検出素子から出力されるロータ45のセンサ用永久磁石63の位置を示す回転検出信号を得てロータ45の回転状態を取得する。そして、マイコンが、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御し、ステータ44の各コイル48に対し順番に三相電流を流す。よって、ロータ45と共に回転軸60が回転する。
【0033】
回転軸60の回転は、ピニオン73を介してプラネタリギヤ77,77・・に伝わる。そして、インターナルギヤ76内を公転するプラネタリギヤ77,77・・により減速されて、キャリア78からオイルユニット42の後ケース86に伝わる。よって、後ケース85と前ケース85とが共に回転する。
オイルユニット42では、
図8の矢印方向へ後ケース86と共にカム101が回転する。すると、カム101の扁平部101bがボール120,120を介してブレード122,122を後部43aからの突出方向へ押し出す。このときコイルバネ125,125の付勢力も押し出しに加わる。回転が進んで扁平部101bが後部43aと平行となる
図8の位相では、扁平部101bがボール120,120及びブレード122,122を最外まで押し出す。
【0034】
ボール120,120のみによるブレード122,122の押し出し位置では、各ブレード122の先端は後ケース86の内周面に届かない。しかし、コイルバネ125,125の付勢力により、各ブレード122はボール120から離れてさらに径方向外側へ押し出され、ブレード122,122を後ケース86の内周面に当接させる。
そして、後ケース86とカム101とがさらに回転すると、
図12Aに示すように、突起99,99がブレード122,122に当接する。
この位相では、後連通孔118と内圧室103との間は扁平部101bにより閉塞され、内圧室103内のオイル圧が高まる。このため、ブレード122,122は押し出し位置で保持される。よって、突起99,99がブレード122,122に衝突することでスピンドル43に衝撃トルク(インパクト)が発生する。このインパクト時に、オイルの粘度が低くても、ブレード122,122は、後ケース86の内周面への到達位置から大きなストロークで後退すると共に、コイルバネ125,125の付勢力も後退の抵抗として働く。よって、衝撃トルクの低下は抑制される。
【0035】
衝撃トルク発生後は、
図12Bに示すように、突起99,99とブレード122,122とのテーパ同士の案内によって、各ブレード122は中心側へ後退する。このとき内圧室103内のオイルは各部品の隙間から後室95内へ流出し、ブレード122,122の後退を許容する。よって、後退したブレード122,122が相対的に突起99,99を乗り越える。
そして、突起99,99がブレード122,122を過ぎると、後ケース86及びカム101の回転によって後連通孔118と内圧室103との間が開放される。よって、再びカム101がボール120,120を介してブレード122,122を押し出す。
この繰り返しによって後ケース86の1回転で2回の衝撃トルクが発生することになる。
【0036】
こうしてスピンドル43のビット挿入孔106に装着したビットBでネジ締め等の作業を行うことができる。このとき、ビットBを被加工材に押し付けると、ビット挿入孔106内でビットBが奥側に押され、ビットBを受けるビットピース108には押し込み力が加わる。しかし、ビットピース108はビット挿入孔106内の肩部109によって後退が規制されているので、ビットピース108が後退して圧力調整バルブ110に接触するおそれはない。
また、ユニットケース7の出力を調整するために圧力調整バルブ110が前側へ回し切られていても、シール部112がストッパ116に当接してネジ部111はビットピース108の後方に位置している。よって、圧力調整バルブ110がビットピース108に接触するおそれもない。
【0037】
一方、回転軸60が回転すると、ファン65が回転する。すると、
図9に点線矢印で示すように、ユニットケースカバー9の後端の外吸気孔23,23・・から外気が吸い込まれる。この外気は、ユニットケースカバー9とユニットケース7との間の隙間21を通り、吸気孔18,18・・からユニットケース7内に進入する。ユニットケース7内に進入した空気は、ユニットケース7とオイルユニット42との間の空間87を通って後方に流れ、左右の内排気孔17,17から左右の空気流路26,26内に進入する。空気流路26,26内に進入した空気は、ユニットケース7及びギヤケース70の外側を通って空気流路26,26内を後方に流れ、ギヤケース70を過ぎてブラシレスモータ40に達する。そして、空気は、センサ回路基板51の透孔51aからステータ44とロータ45との間を通ってファン65に達し、排気孔66,66・・から外部へ排出される。
【0038】
この空気の流れにより、オイルユニット42、減速機構41、ブラシレスモータ40の順に冷却される。オイルユニット42で発生した熱は、オイルユニット42の外側を通過する空気と熱交換されるため、温度上昇した空気が減速機構41及びブラシレスモータ40を順に通過することになる。このため、オイルユニット42の温度上昇が抑えられる一方、ブラシレスモータ40の温度は緩やかに上昇し、両者の温度推移が近似する。
図10に示すように、ブラシレスモータ40を通過する空気は、インシュレータ47Aと接触する。よって、感温板54内のサーミスタ55によってステータ44の温度が検出される。
コントローラ35の制御回路基板36は、サーミスタ55の検出温度(抵抗値)を監視している。検出温度が予め設定した設定温度(例えば70℃~90℃)に達すると、制御回路基板36は、ステータ44への通電を停止してブラシレスモータ40の駆動を停止させる。前述の空気の流れにより、オイルユニット42とブラシレスモータ40との温度推移は近似している。よって、ステータ44の検出温度に基づいてブラシレスモータ40の駆動を停止させても、オイルユニット42の温度推移に基づいた適切なタイミングとなる。
【0039】
上記形態のソフトインパクトドライバ1は、ブラシレスモータ40(モータ)と、ブラシレスモータ40の前方に配置されてブラシレスモータ40により駆動するオイルユニット42とを含む。また、ソフトインパクトドライバ1は、オイルユニット42の前方に配置されてオイルユニット42により駆動するスピンドル43(回転軸)と、ブラシレスモータ40を収容する筒状部6c及びリアカバー8(モータハウジング)とを含む。また、ソフトインパクトドライバ1は、筒状部6c及びリアカバー8の下方に配置されるグリップ部3と、オイルユニット42を収容し、筒状部6cの前方に配置されるユニットケース7と、を含む。また、ソフトインパクトドライバ1は、ユニットケース7に吸気孔18が設けられ、リアカバー8に排気孔66が設けられて、吸気孔18から導入されて排気孔66から排出される空気の流れにより、オイルユニット42及びブラシレスモータ40を冷却可能となっている。そして、ブラシレスモータ40に、サーミスタ55(温度検出素子)が設けられている。
この構成により、サーミスタ55で検出されるブラシレスモータ40の温度がオイルユニット42の温度に追従することになる。よって、連続作業を行ってもオイルユニット42の温度を適正に検出し、不具合が生じる前の適切なタイミングでブラシレスモータ40の駆動を停止する等の対策を採ることができる。従って、製品の保護と作業性の確保とを両立できる。
【0040】
特に、ブラシレスモータ40の駆動を制御するコントローラ35を備え、コントローラ35は、サーミスタ55から検出されるブラシレスモータ40の温度が予め設定された設定温度に達したら、ブラシレスモータ40の駆動を停止する。
よって、不具合が生じる前の適切なタイミングでブラシレスモータ40の駆動を停止させることができる。
ブラシレスモータ40は、ステータ44と、ステータ44の内側に配置されるロータ45とを有し、サーミスタ55は、ステータ44に設けられる。よって、ステータ44の温度を正確に検出可能となる。
ステータ44は、インシュレータ47Aを有し、サーミスタ55は、インシュレータ47Aに設けられる。よって、サーミスタ55をインシュレータ47Aを利用して容易に設置可能となる。
温度検出素子は、サーミスタである。よって、抵抗値を検出して設定温度を正確に判別可能となる。
【0041】
オイルユニット42とユニットケース7との間には、吸気孔18と連通する空間87が形成され、ユニットケース7には、空間87と連通する内排気孔17が形成される。よって、オイルユニット42とユニットケース7との間に空気を通過させてオイルユニット42の熱との熱交換が効率よく行える。
内排気孔17は、ユニットケース7の左右にそれぞれ形成される。よって、オイルユニット42とユニットケース7との間に空気をバランスよく通過させることができる。
ユニットケース7の後部は、筒状部6cに保持され、筒状部6cとユニットケース7の後部との間には、内排気孔17と連通する空気流路26が形成されている。よって、オイルユニット42を通過した空気を空気流路26によってブラシレスモータ40側へ確実に導くことができる。
空気流路26は、筒状部6c内でのブラシレスモータ40の収容空間と連通している。よって、空気流路26から流れる空気をブラシレスモータ40へ確実に接触させることができる。
空気流路26は、筒状部6cの左右にそれぞれ形成される。よって、オイルユニット42を通過した空気をブラシレスモータ40側へバランスよく導くことができる。
【0042】
ブラシレスモータ40は、前後方向に延びる回転軸60を有し、回転軸60の後端に、ファン65が設けられる。よって、オイルユニット42を通過した空気をブラシレスモータ40の全長に亘って通過させることができ、オイルユニット42の温度をブラシレスモータ40の温度に精度よく追従させることができる。
排気孔66は、ファン65の径方向外側でリアカバー8に設けられる。よって、空気を本体部2の最後部から排出できる。
ユニットケース7には、ユニットケースカバー9が、ユニットケース7との間に隙間21を有した状態で被せられて、ユニットケースカバー9には、隙間21を介して吸気孔18と連通する外吸気孔23が設けられる。よって、ユニットケース7に吸気孔18を設けても水や塵埃等の異物がユニットケース7の内部に侵入しにくくなる。
ユニットケースカバー9は、後端が筒状部6cの前端に当接する状態で組み付けられて、当該後端に切欠き22を有し、切欠き22と筒状部6cの前端との間に外吸気孔23が形成される。よって、筒状部6cを利用して外吸気孔23が簡単に形成できる。
外吸気孔23は、ユニットケース7の周方向に複数設けられる。よって、空気を均等に吸引できる。
吸気孔18は、ユニットケース7の前部に複数設けられる。よって、オイルユニット42の冷却に必要な空気を吸引できる。
【0043】
以下、変更例を説明する。
ユニットケースカバーに設ける切欠きの数や形状は上記形態に限らない。後端に切欠きを設けずに中央部や前端部に透孔を設けて外吸気孔を形成してもよい。但し、ユニットケースカバーを省略することもできる。
ユニットケースに設ける吸気孔の数や形状も適宜変更可能である。
ユニットケースに設ける内排気孔の数や形状も上記形態に限らない。例えば内排気孔をユニットケースの周方向に3つ以上設けたり、前後方向に内排気孔を長く形成したりしてもよい。
本体ハウジングに設ける張出部の数や形状も上記形態に限らない。例えば張出部を筒状部の周方向に3つ以上設けたり、張出部を横断面L字状でなく横断面台形状等で形成してもよい。張出部を設けずに空気をモータ側まで導く空気流路を形成してもよい。
サーミスタは、前側のインシュレータでなく後側のインシュレータに設けることもできる。インシュレータに限らず、センサ回路基板等の他の部材に配置してもよい。サーミスタを複数設けて検出温度の平均値を監視することもできる。サーミスタ以外の温度検出素子も使用できる。
上記形態では、サーミスタが設定温度に達したらブラシレスモータの駆動を停止させる制御となっているが、直ちにモータを停止させずに回転数を低下させる等の別の措置を行ってもよい。
【0044】
オイルユニットの構造も上記形態に限らない。
例えば、ブレードを押し出すボールとコイルバネとをスピンドルの径方向に並べず、スピンドルの軸方向で前後に並べてもよい。この場合、ボールに代えてピン等の押し出し部材も採用できる。コイルバネを1つにしてスピンドルに貫通させ、各ブレードを外向きに付勢してもよい。
ブレード及びボールは、一対ずつに限らず、1つずつとしたり、3つ以上としたり等、適宜増減可能である。コイルバネを省略することもできる。
【0045】
ユニットケースは、前ケースと後ケースを含む3つ以上の部品から構成してもよい。仕切板をなくして前室と後室とに分割せず、チューブを省略してもよい。
ボールやコイルバネを用いず、ケースとスピンドルとの相対回転によりブレードをケース内で揺動させて油圧を制御するオイルユニットも採用できる。例えば、スピンドルに、半径方向外向きに付勢される1又は複数のブレードを配置して、オイル室を形成するケースの回転によりブレードの片面に間欠的に高い流体圧を作用させるオイルユニットが挙げられる。この構造では、ブレードが回転方向に傾斜しながらケース内に設けられたシール部とスピンドルに設けた溝とによってシールされることでスピンドルに押し付けられ、それによってスピンドルが衝撃的に回転する。
モータもブラシレスに限らず、整流子モータ等も採用できる。バッテリパックを電源としないAC工具であっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・ソフトインパクトドライバ、2・・本体部、3・・グリップ部、6・・本体ハウジング、6c・・筒状部、7・・ユニットケース、8・・リアカバー、9・・ユニットケースカバー、12・・後部、13・・前部、17・・内排気孔、18・・吸気孔、21・・隙間、23・・外吸気孔、24・・張出部、25・・空気流路、35・・コントローラ、36・・制御回路基板、40・・ブラシレスモータ、41・・減速機構、42・・オイルユニット、43・・スピンドル、44・・ステータ、45・・ロータ、54・・感温板、55・・サーミスタ、60・・回転軸、65・・ファン、66・・排気孔、70・・ギヤケース、85・・前ケース、86・・後ケース、87・・空間、99・・突起、101・・カム、122・・ブレード、B・・ビット。