(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】アンカー打設ツール及びそれを用いたアンカー打設工法並びにアンカー打設ユニット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B25J15/08 S
B25J15/08 L
(21)【出願番号】P 2020181264
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】波田野 利昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125194(JP,A)
【文献】特開平8-193320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
E02D 3/00
E21D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設装置に接続され、壁面に穿孔された穴にアンカーを打設するアンカー打設ツールであって、
前記アンカー打設ツールは、前記アンカーを打撃する打撃部と、前記アンカーを把持する把持部と、該把持部における前記アンカーの把持状態を制御する把持制御部とを備え、
前記把持制御部では、前記把持部が前記アンカーを把持する把持モードと、前記把持部が前記アンカーの把持を解放する解放モードとに切り替える切替制御が行なわれ
、
前記把持部は、把持部ホルダに取り付けられ、空圧で膨張或いは収縮させて前記把持部の内径を変化させるゴム袋と、該ゴム袋に空気を供給或いは排出するためのエア配管を接続するエア配管継手とから成り、
前記ゴム袋に前記空気が供給されてなく、前記ゴム袋が膨張していない状態が前記解放モードであり、前記ゴム袋に前記空気が供給されて前記ゴム袋が膨張して前記把持部の内径が小さくなった状態が前記把持モードであることを特徴とするアンカー打設ツール。
【請求項2】
打設装置に接続され、壁面に穿孔された穴にアンカーを打設するアンカー打設ツールであって、
前記アンカー打設ツールは、前記アンカーを打撃する打撃部と、前記アンカーを把持する把持部と、該把持部における前記アンカーの把持状態を制御する把持制御部とを備え、
前記把持制御部では、前記把持部が前記アンカーを把持する把持モードと、前記把持部が前記アンカーの把持を解放する解放モードとに切り替える切替制御が行なわれ、
前記把持部は、少なくとも2本のフィンガと、該フィンガを開閉駆動するフィンガベースと、前記フィンガを開閉駆動するために前記フィンガベースに圧縮空気を供給するためのエア配管継手とから成り、
前記フィンガベースに前記圧縮空気が供給されてなく、前記フィンガが“開”の状態が前記解放モードであり、前記フィンガベースに前記圧縮空気が供給されて前記フィンガが“閉”動作して前記把持部の内径が狭くなった状態が前記把持モードであることを特徴とするアンカー打設ツール。
【請求項3】
打設装置に接続され、壁面に穿孔された穴にアンカーを打設するアンカー打設ツールであって、
前記アンカー打設ツールは、前記アンカーを打撃する打撃部と、前記アンカーを把持する把持部と、該把持部における前記アンカーの把持状態を制御する把持制御部とを備え、
前記把持制御部では、前記把持部が前記アンカーを把持する把持モードと、前記把持部が前記アンカーの把持を解放する解放モードとに切り替える切替制御が行なわれ、
前記把持部は、複数本の爪と、複数本の前記爪を軸方向へ送り出し可能に支持すると共に、複数本の前記爪の間隔を狭く或いは広くなるように支持するチャックと、該チャックを支持するベースと、該ベースに設置され、複数本の前記爪の軸方向への送り出し量及び複数本の前記爪の間隔を制御するサーボモータとから成り、
複数本の前記爪の軸方向への送り出し量及び複数本の前記爪の間隔を前記サーボモータで制御して、複数本の前記爪で囲まれた内径(前記アンカーを把持する径)を変化させ、複数本の前記爪の軸方向への送り出し量及び複数本の前記爪の間隔に変化がない状態が前記解放モードであり、複数本の前記爪の軸方向への送り出し量が大きく、かつ、複数本の前記爪の間隔が狭くなった状態が前記把持モードであることを特徴とするアンカー打設ツール。
【請求項4】
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載のアンカー打設ツールであって、
前記アンカーを把持する把持部は、前記把持制御部からの信号によって、前記アンカーを把持する
前記把持モードと、前記アンカーの把持を解放する
前記解放モードに切り替えられることを特徴とするアンカー打設ツール。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のアンカー打設ツールであって、
前記アンカー打設ツールは打設装置に接続され、前記打設装置はロボットに装着され、前記ロボットに前記把持制御部が設置されていることを特徴とするアンカー打設ツール。
【請求項6】
請求項
5に記載のアンカー打設ツールであって、
前記ロボットのアーム先端部には、前記壁面に穿孔された前記穴と前記アンカーに掛かる6軸の力を検出する力覚センサと、前記壁面に穿孔された前記穴を認識するカメラと、前記壁面と前記ロボットのアーム先端部間の距離を計測する距離センサと、少なくとも前記打設装置との脱着を可能にするツールチェンジャとが接続され、
前記距離センサを用いて、前記壁面と前記ロボットのアーム先端部との相対角度を算出し、前記ロボットの姿勢を制御すると共に、前記カメラで検出された前記壁面に穿孔された前記穴の中心に前記ロボットのアーム先端部を移動させ、かつ、前記力覚センサは、検出したモーメント値が最小となるように前記ロボットのアーム先端部を制御することを特徴とするアンカー打設ツール。
【請求項7】
請求項
6に記載のアンカー打設ツールであって、
前記アンカー打設ツールは前記打設装置に接続され、前記打設装置には、打撃作業を行う打撃軸が内蔵され、この打撃軸を打撃方向に稼働させることにより、前記アンカー打設ツールの打撃部を介して前記アンカーに打撃力を与えることを特徴とするアンカー打設ツール。
【請求項8】
請求項
7に記載のアンカー打設ツールと、該アンカー打設ツールが接続された打設装置とから成り、
前記打設装置は打設装置ホルダに取付けられ、ロボットのアーム先端部に接続されているツールチェンジャと接続されていることを特徴とするアンカー打設ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のアンカー打設ツールを用いて壁面に穿孔された穴にアンカーを打設するアンカー打設工法であって、
ロボットのアーム先端部に前記アンカー打設ツールを装着した打設装置を接続し、前記ロボットのアームは、少なくとも1本の前記アンカーが装填されたアンカー台座から前記アンカー打設ツールの把持部で前記アンカーを把持し、前記壁面に穿孔された前記穴の位置まで移動させて、前記アンカー打設ツールの打撃部で前記穴に前記アンカーを打撃挿入することを特徴とするアンカー打設工法。
【請求項10】
請求項
9に記載のアンカー打設工法であって、
前記アンカーの先端を前記壁面に穿孔された前記穴に挿入する際には、前記アンカー打設ツールの把持部は把持モード、前記アンカーを前記壁面に穿孔された前記穴に打撃挿入する際には、前記アンカー打設ツールの把持部は解放モードとなるように把持制御部で切り替え制御が行われることを特徴とするアンカー打設工法。
【請求項11】
請求項
10に記載のアンカー打設工法であって、
前記アンカーの一端を前記壁面に穿孔された前記穴に挿入した際に、前記アンカー打設ツールの打撃部が前記アンカーの他端側と接触し、前記アンカーを打撃する方向に前記アンカーの他端を押し付けた状態で、前記アンカー打設ツールの把持部を前記把持モードから前記解放モードへ切り替えることを特徴とするアンカー打設工法。
【請求項12】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のアンカー打設ツールを用いて壁面に穿孔された穴にアンカーを打設する際に、
ロボットのアーム先端部に取付けられた距離センサで、前記壁面の任意の異なる3点を複数回計測し、平均値を取った後、前記壁面の任意の異なる3点を直線で結んで得られる三角形の面に対して垂直となるベクトルを算出し、前記壁面と前記ロボットのアーム先端部との相対姿勢を算出する工程S1と、
前記ロボットのアーム先端部に取付けられたカメラで前記壁面に穿孔された前記穴を探索する工程S2及び前記穴を検出する工程S3と、
前記工程S3で検出した前記穴の中心座標を算出する工程S4と、
少なくとも1本の前記アンカーが装填されたアンカー台から前記アンカーを把持する工程に移行し、前記アンカー打設ツールの把持モードを解放モードにする工程S5及び前記ロボットのアーム先端部を前記アンカー台の直上に移動させる工程S6と、
前記ロボットのアーム先端部の前記カメラで把持する前記アンカーを探索する工程S7及び前記アンカー打設ツールの把持部で把持する前記アンカーを検出する工程S8と、
前記アンカー打設ツールの把持部の中心軸と前記アンカーの中心軸を合わせた後、前記アンカー打設ツールを前記アンカーに接近させ、前記アンカー打設ツールの把持部で前記アンカーを所定の長さまで覆い、前記アンカー打設ツールの把持部を把持モードする工程S9と、
前記アンカー打設ツールの把持部の内径を狭めて前記アンカーを把持し、前記アンカーを前記アンカー台から持ち上げる工程S10と、
前記アンカーを把持した状態で、前記壁面に穿孔された前記穴付近まで前記ロボットのアーム先端部を移動させる工程S11及び前記アンカーのアーム先端部を前記壁面に穿孔された前記穴へ挿入する工程S12と、
前記工程S12の時、前記ロボットのアーム先端部に取付けた力覚センサの3軸モーメント値が最小となるように前記ロボットのアーム先端部を制御し、前記壁面に穿孔された前記穴と前記アンカーの先端を嵌合させる工程S13と、
前記工程S13を行った後、前記力覚センサで前記アンカーの挿入反力が規定値以上になるまで、前記ロボットの押し込み力のみで前記アンカーの先端を前記壁面に穿孔された前記穴に挿入させる工程S14と、
前記アンカー打設ツールの把持部を解放モードにし、前記アンカーの拘束を解除する工程S15と、
所定の深さまで前記アンカーを前記アンカー打設ツールの打撃部で前記壁面に穿孔された前記穴に打撃挿入する工程S16と、
前記アンカーを所定の深さまで打撃挿入する工程S17及び前記工程S17を行なった後、前記ロボットを前記アンカーの打撃開始位置まで移動させる工程S18と、を行うことを特徴とするアンカー打設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンカー打設ツール及びそれを用いたアンカー打設工法並びにアンカー打設ユニットに係り、特に、目的とする対象物の壁面に穿孔されている穴にアンカーを打設する際にアームを有するロボットで壁面に穿孔された下穴にアンカーボルト(以下、アンカーとする)を打設する際に用いられるアンカー打設ツール及びそれを用いたアンカー打設工法並びにアンカー打設ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
日本、北米、欧州をはじめとする先進国では、少子高齢化に伴う施工作業者の減少が問題となっており、汚い、きつい、危険(所謂3K)作業や技能を有する作業を低減させる装置或いはシステムの導入によって工期短縮を図り、生産性を向上させることが求められている。
【0003】
一般的に、コンクリートを始めとする構造物の壁面にブラケットや照明具等の機材を取付ける際には、アンカー打設作業が行われる。
【0004】
具体的には、ハンマドリル等で、壁面の所定の位置に、所定の深さの下穴を明けた後、その下穴にアンカーを打撃挿入し、アンカーに付設されたボルトとナットを用いて、機材を壁面に固定することが行われる。
【0005】
従来、アンカー打設作業は、作業者がハンマでアンカーを打撃挿入するか、或いは打撃動作を備えるハンマドリル等の電動工具に、専用のアンカー打込棒を接続して実施される。アンカー打設作業は、高所で行われる場合も多く、アンカーの打撃挿入には労力と時間が掛かる。
【0006】
そこで、油圧ショベルを始めとする建設機械やロボットを用いた自動アンカー打設技術が考えられている。
【0007】
このようなアンカー或いは金属製長尺物の打設装置の先行技術文献として、特開平8-193320号公報(特許文献1)の地盤補強における打設鉄筋逆進防止工法及び抜け落ち防止用ストッパがある。
【0008】
この特許文献1に記載されている地盤補強における打設鉄筋逆進防止工法及び抜け落ち防止用ストッパは、道路などの法面や斜面等の地盤補強安定化或いは地中排水体埋設のため、地盤補強用鉄筋や地中排水体打設用ガイド管などを打設する工法とその装置に関係し、鉄筋等を水平付近から上向きに打設する際の鉄筋等の抜け落ち事故防止に利用するもので、必要に応じてストッパの使用、不使用が任意に選択でき、使用時は確実に効果が期待でき、信頼性が高く、かつ、鉄筋を打設装置に装着するときは、打設装置の前方からでも後方からでも都合のよい方から挿通でき、その後に、ストッパを容易に装着できるようにすると共に、簡単に装着が可能なストッパの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献1に記載の地盤補強における打設鉄筋逆進防止工法及び抜け落ち防止用ストッパは、油圧ショベルに取付けた前後進推力装置から前進推力と振動を鉄筋へと伝達させ、地盤に強制的に押し込み打設する工法装置、及び把持機構で鉄筋を把持する機構を備え、鉄筋を把持した状態で地盤に貫入していく工法であり、本発明が対象としているロボットで壁面に穿孔された下穴にアンカーを自動で打設する作業と使用環境、条件、課題等の設定が異なる。
【0011】
本発明が対象としているロボットで壁面に穿孔された下穴にアンカーを自動で打設する作業は、アームを有するロボットで壁面に穿孔された下穴にアンカーを打設する際に、壁面に穿孔された下穴の中心軸と、打設されるアンカーの長手方向の軸とにずれがある場合、アンカーを把持した状態で無理に打設すると、アンカーを曲げる力が掛かる。
【0012】
駆動中のロボットの関節部は、一般的に剛であるため、曲ようとする力の逃げ場がなく、大きな曲げモーメントがロボットの関節部に掛かり、結果として、ロボットの許容負荷を超えて、ロボットが停止したり関節部が破損してしまう恐れがある。
【0013】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、アンカー打設作業時に、壁面に穿孔された下穴の中心軸と、アンカーの長手方向軸とにずれがある場合に生じる曲げモーメントを低減させ、ロボットの関節軸への負荷を抑えることができるアンカー打設ツール及びそれを用いたアンカー打設工法並びにアンカー打設ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のアンカー打設ツール台は、上記目的を達成するために、打設装置に接続され、壁面に穿孔された穴にアンカーを打設するアンカー打設ツールであって、前記アンカー打設ツールは、前記アンカーを打撃する打撃部と、前記アンカーを把持する把持部と、該把持部における前記アンカーの把持状態を制御する把持制御部とを備え、前記把持制御部では、前記把持部が前記アンカーを把持する把持モードと、前記把持部が前記アンカーの把持を解放する解放モードとに切り替える切替制御が行なわれ、
前記把持部は、把持部ホルダに取り付けられ、空圧で膨張或いは収縮させて前記把持部の内径を変化させるゴム袋と、該ゴム袋に空気を供給或いは排出するためのエア配管を接続するエア配管継手とから成り、前記ゴム袋に前記空気が供給されてなく、前記ゴム袋が膨張していない状態が前記解放モードであり、前記ゴム袋に前記空気が供給されて前記ゴム袋が膨張して前記把持部の内径が小さくなった状態が前記把持モードであるか、
又は前記把持部は、少なくとも2本のフィンガと、該フィンガを開閉駆動するフィンガベースと、前記フィンガを開閉駆動するために前記フィンガベースに圧縮空気を供給するためのエア配管継手とから成り、前記フィンガベースに前記圧縮空気が供給されてなく、前記フィンガが“開”の状態が前記解放モードであり、前記フィンガベースに前記圧縮空気が供給されて前記フィンガが“閉”動作して前記把持部の内径が狭くなった状態が前記把持モードであるか、
或いは前記把持部は、複数本の爪と、複数本の前記爪を軸方向へ送り出し可能に支持すると共に、複数本の前記爪の間隔を狭く或いは広くなるように支持するチャックと、該チャックを支持するベースと、該ベースに設置され、複数本の前記爪の軸方向への送り出し量及び複数本の前記爪の間隔を制御するサーボモータとから成り、複数本の前記爪の軸方向への送り出し量及び複数本の前記爪の間隔を前記サーボモータで制御して、複数本の前記爪で囲まれた内径(前記アンカーを把持する径)を変化させ、複数本の前記爪の軸方向への送り出し量及び複数本の前記爪の間隔に変化がない状態が前記解放モードであり、複数本の前記爪の軸方向への送り出し量が大きく、かつ、複数本の前記爪の間隔が狭くなった状態が前記把持モードであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のアンカー打設工法は、上記目的を達成するために、上記構成のアンカー打設ツールを用いて壁面に穿孔された穴にアンカーを打設するアンカー打設工法であって、ロボットのアーム先端部に前記アンカー打設ツールを装着した打設装置を接続し、前記ロボットのアームは、少なくとも1本の前記アンカーが装填されたアンカー台座から前記アンカー打設ツールの把持部で前記アンカーを把持し、前記壁面に穿孔された前記穴の位置まで移動させて、前記アンカー打設ツールの打撃部で前記穴に前記アンカーを打撃挿入することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のアンカー打設ユニットは、上記目的を達成するために、上記構成のアンカー打設ツールと、該アンカー打設ツールが接続された打設装置とから成り、前記打設装置は打設装置ホルダに取付けられ、ロボットの先端部に接続されているツールチェンジャと接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンカー打設作業時に、壁面に穿孔された下穴の中心軸と、アンカーの長手方向軸とにずれがある場合に生じる曲げモーメントを低減させ、ロボットの関節軸への負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のアンカー打設ツールの実施例1を用いたアンカー打ち込み装置を示し、設置面にアームを有するロボットが設置され、アンカーが装填されたアンカー台からアンカーを1本把持し、壁面に穿孔された下穴にアンカーを移動させ、アンカー先端部を下穴に挿入している状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1のアンカー打設ツールにより壁面に穿孔された下穴に打設されるアンカーの一例を示す図である。
【
図3】本発明のアンカー打設ツールの実施例1を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例1のアンカー打設ツールを打設装置に接続し、それをロボットに装着させる際のアンカー打設ユニットを示す構成図である。
【
図5】
図3の把持部が解放モード状態の断面図である。
【
図6】
図3の把持部が把持モード状態の断面図である。
【
図7】
図1で示したロボットによるアンカーの打設作業時におけるアンカー打設ツールを、アンカーが壁面に穿孔された下穴に挿入される前の状態として示す断面図である。
【
図8】
図7の状態からアンカーが壁面に穿孔された下穴に打撃挿入された状態を示す断面図である。
【
図9】本発明のアンカー打設工法の基本的な流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図9に示したアンカー打設工法のフローチャートにおける工程S6から工程S10の動作の様子を表した概略図である。
【
図11】
図9に示したアンカー打設工法のフローチャートにおける工程S11から工程S18の動作の様子を表した概略図である。
【
図12】本発明のアンカー打設ツールの実施例2に作用される把持部の解放モード状態を示す側面図である。
【
図14】本発明のアンカー打設ツールの実施例3に作用される把持部の解放モード状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のアンカー打設ツール及びそれを用いたアンカー打設工法並びにアンカー打設ユニットを説明する。なお、各図において、同一の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合は、その説明を省略する場合がある。
【0020】
また、本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部品から成ること、複数の構成要素が一の部品から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【実施例1】
【0021】
図1に、本発明のアンカー打設ツール100の実施例1を用いたアンカー打ち込み装置を示し、アンカー打設ツール100を接続した打設装置10が、アームを有するロボット9に装着された概略図を示す。
【0022】
該図は、設置面3にロボット9が設置され、複数のアンカー4のうち、アンカー台8に付け替え可能に装填された1本のアンカー4aをアンカー打設ツール100で把持し、壁面1に穿孔された下穴2にアンカー4aの先端を挿入させている状態を示す。
【0023】
更に詳述すると、アンカー打設ツール100を接続した打設装置10は、打設装置ホルダ11に取付けられ、打設装置ホルダ11は後述するツールチェンジャ12に接続されている。
【0024】
なお、図示していないが、打設装置10には、打撃作業を行う打撃軸が内蔵され、この打撃軸を打撃方向に稼働させることにより、アンカー打設ツール100の打撃部101を介してアンカー4aに打撃力を与える。ここでは、打設装置10の一例として、ハンマドリル(打撃モード)を想定している。
【0025】
ロボット9のアーム先端部には、アンカー4aを把持している他端、即ち、下穴2とアンカー4aに掛かる6軸の力を検出する力覚センサ13と、壁面1に穿孔された下穴2を認識するカメラ14と、壁面1とロボット9のアーム先端部間の距離を計測する距離センサ15と、打設装置10をはじめとする、その他のツールとの脱着を可能にするツールチェンジャ12が接続されている。
【0026】
そして、距離センサ15を用いて、壁面1とロボット9のアーム先端部との相対角度を算出し、ロボット9の姿勢を制御し、カメラ14で検出された壁面1に穿孔された下穴2の中心にロボット9のアーム先端部を移動し、力覚センサ13は、検出したモーメント値が最小となるようにロボット9のアーム先端部を制御する。
【0027】
また、アンカー打設ツール100の把持部102Aにおける把持状態を制御する把持制御部107が、ロボット9に取付けてられている。
【0028】
次に、
図2に、本実施例において、壁面1に穿孔された下穴2に打設されるアンカー4a(ウェッジ式アンカー)の概略図を示す。
【0029】
図2に示すように、アンカー4aは、壁面1に穿孔された下穴2に挿入されるアンカー4aの端に環装され、開脚可能な3面ウェッジ5と、頭部にナット7を螺合させる雄ネジ部6とから構成されている。
【0030】
そして、アンカー4aの打設時には、壁面1に穿孔されたアンカー4aの径と同一径の下穴2に、アンカー4aをハンマ等で打撃挿入して螺合されたナット7を締め込み、壁面1内で3面ウェッジ5が開脚してアンカー4aが固定される。
【0031】
続いて、本実施例におけるアンカー打設ツール100について、
図3を用いて説明する。
【0032】
図3に示すように、本実施例におけるアンカー打設ツール100は、アンカー4aを打撃する打撃部101と、アンカー4aを把持する把持部102Aと、
図1に示した把持制御部107とから概略構成され、打撃部101と把持部102Aの中心軸は、同軸上になるように配置されている。
【0033】
本実施例におけるアンカー打設ツール100の把持部102Aは、把持部ホルダ103に取り付けられていると共に、打撃部101と接続され、空圧で膨張させることで、把持部102Aの内径を変化(収縮)させる浮き輪状のゴム袋104と、この浮き輪状のゴム袋104に空気を供給或いは排出するためのエア配管106(
図4参照)を接続するエア配管継手105とから概略構成されている。
【0034】
そして、本実施例のアンカー打設ツール100の把持部102Aは、ゴム袋104に空気が供給されてなくゴム袋104が膨張していない状態が、把持部102Aがアンカー4aの把持を解放する解放モードであり、ゴム袋104に空気が供給されてゴム袋104が膨張して把持部102Aの内径が収縮し、アンカー4aの雄ネジ部6より小さくなった状態が、把持部102Aがアンカー4aを把持する把持モードである。
【0035】
図4に、ロボット9に装着される際のアンカー打設ユニット108を示す。
【0036】
図4に示すように、アンカー打設ユニット108は、上記構成のアンカー打設ツール100と、このアンカー打設ツール100が接続された打設装置10とから成り、打設装置10は、打設装置ホルダ11に取付けられ、ロボット9のアーム先端部に接続されているツールチェンジャ12と接続されている。また、エア配管継手105から伸びたエア配管106は、ツールチ
ェンジャ12に接続されている。
【0037】
なお、ロボット9は、サーボバルブを内蔵し、ロボット9のアーム先端部に接続されたツールチェンジャ12へ圧縮空気を供給・排出する機能を備えていることを想定している。
【0038】
また、アンカー打設ツール100の把持部102Aは、把持制御部107からの信号によって、能動的にアンカー4aを把持する把持モードと、アンカー4aの把持を解放する解放モードを切り替え制御することが可能である。
【0039】
図5に、
図3に示したアンカー打設ツール100の把持部102Aが解放モード状態の断面図を示す。
図5は、把持部102Aであるゴム袋104に空気が送り込まれていない解放モード状態である。一方、
図6は、ゴム袋104に空気が送り込まれ、ゴム袋104が膨張して把持部102Aの内径が収縮し、アンカー4aの雄ネジ部6より小さくなった把持モード状態を示すアンカー打設ツール100の断面図である。
【0040】
続いて、壁面1に穿孔された下穴2の中心軸2aと、打設されるアンカー4aの長手方向軸4bにずれがある場合におけるアンカー打設ツール100の効果を説明する。
【0041】
図7に、
図1で示したロボット9によるアンカー4aの打設作業時におけるアンカー打設ツール100を、アンカー4aが下穴2に挿入される前の状態を示す。なお、
図7では、説明し易くするため、壁面1とアンカー打設ツール100は断面図で示す。
【0042】
図7は、アンカー打設ツール100の把持部102Aが、アンカー4aを把持モード状態(
図6の状態)で把持し、壁面1に穿孔された下穴2へアンカー4aの先端を位置決め挿入し、把持部102を把持モードから解放モード(
図5の状態)に切り替えた状態を示している。また、
図7は、下穴2の中心軸2aとアンカー4aの長手方向軸4bがわずかにずれている場合である。
【0043】
図7の状態からアンカー4aを下穴2へ打撃挿入した状態を
図8に示す。
【0044】
図8に示すように、壁面1に穿孔された下穴2に、アンカー4aが打撃挿入されていることが分かる。
【0045】
このように、アンカー4aを壁面1に穿孔された下穴2に打撃挿入する際には、アンカー打設ツール100の把持部102Aが解放モード状態のため、把持部102Aはアンカー4aを拘束しておらず、アンカー4aの打撃される面4c(
図2参照)とアンカー打設ツール100の打撃部101の平面101a(
図7参照)が打撃時に接触(面接触)するだけであるため(アンカー4aの打撃される面4cとアンカー打設ツール100の打撃部101は、面接触だけではなく、点接触或いは線接触もあり得る)、アンカー打設ツール100と接続される打設装置10を介してロボット9に大きな曲げモーメントが掛からず、ロボット9を用いてアンカー打設作業が実現可能となる。
【0046】
次に、上述したアンカー打設ツール100を用いて、アンカー4aを自動的に壁面1に穿孔された下穴2に打撃挿入するアンカー打設工法を、
図9を用いて説明する。
【0047】
図9は、実施例1で説明したアンカー打設ツール100を用いたアンカー打設工法の基本的な流れを示すフローチャートである。
【0048】
ここでは、
図1で示したロボット9のアーム先端部には、すでにアンカー打設ツール100を接続した打設装置10が取付けてあることを前提とする。
【0049】
始めに、アンカー4aを壁面1に対して垂直となるロボット9のアーム先端部の姿勢を算出(後述の工程S1参照)する。これは、アンカー4aを壁面1に対して垂直に打設するために必要な作業である。
【0050】
ロボット9のアーム先端部に取付けられた距離センサ15で、壁面1の任意の異なる3点を複数回計測し、平均値を取った後、3点を直線で結んで得られる三角形の面に対して垂直となるベクトルを算出し、壁面1とロボット9のアーム先端部との相対姿勢を算出する(工程S1)。以上で、ロボット9のアーム先端部の姿勢が定まる。
【0051】
次に、ロボット9のアーム先端部に取付けられたカメラ14で壁面1に穿孔された下穴2を探索し(工程S2)、下穴2を検出する(工程S3)。なお、工程S3で下穴2が検出されなかった場合は工程S2に戻る。その後、検出した下穴2の中心座標を算出する(工程S4)。
【0052】
続いて、アンカー台8からアンカー4aを把持する工程に移行する。始めに、アンカー打設ツール100の把持モードを解放モードにする(工程S5)。次に、ロボット9のアーム先端部をアンカー台8の直上に移動させる(工程S6)。
【0053】
そして、ロボット9のアーム先端部のカメラ14で把持するアンカー4aを探索し(工程S7)、アンカー打設ツール100の把持部102で把持するアンカー4aを検出する(工程S8)。なお、工程S8で把持するアンカー4aが検出されなかった場合は工程S7に戻る。
【0054】
把持部102Aの中心軸とアンカー4aの中心軸を合わせた後、アンカー打設ツール100をアンカー4aに接近させ、把持部102Aでアンカー4aを所定の長さまで覆い、アンカー打設ツール100の把持部102Aを把持モードにし(工程S9)、把持部102Aの内径を狭めてアンカー4aを把持し、アンカー4aをアンカー台8から持ち上げる(工程S10)。
【0055】
図10の(a)、(b)、(c)は、上述した工程S6から工程S10の動作の様子を表した概略図であり、
図10の(a)が工程S6から工程S8、
図10の(b)が工程S9、
図10の(c)が工程S10である。
【0056】
その後、アンカー4aを把持した状態で、壁面1に穿孔された下穴2付近までロボット9のアーム先端部を移動させ(工程S11)、アンカー4aのアーム先端部を下穴2へ挿入する(工程S12)。この時、ロボット9のアーム先端部に取付けた力覚センサ13の3軸モーメント値が最小となるようにロボット9のアーム先端部を制御し、下穴2とアンカー4aの先端を嵌合させる(工程S13)、なお、工程S13で力覚センサ13の3軸モーメント値が最小でなければ工程S12に戻る。
【0057】
嵌合後、力覚センサ13でアンカー4aの挿入反力が規定値以上になるまで、ロボット9の押し込み力のみでアンカー4aの先端を下穴2に挿入させる(工程S14)。これは、次のアンカー打撃作業時に、アンカー打設ツール100の把持部102Aを解放モードとした際に、アンカー4aが下穴2から落下することを防ぐためである。なお、工程S14でアンカー4aの挿入反力が規定値以上でなければ工程S12に戻る。
【0058】
次に、アンカー打設ツール100の把持部102Aを解放モードにし、アンカー4aの拘束を解除する(工程S15)。続いて、所定の深さまでアンカー4aを、壁面1に穿孔された下穴2に打撃部101で打撃挿入する(工程S16)。アンカー4aを所定の深さ(例えば、80mm以上)まで打撃挿入した後(工程S17)、ロボット9をアンカー4aの打撃開始位置まで移動させる(工程S18)。この際、壁面1に穿孔された下穴2に打設されたアンカー4aは、壁面1との摩擦で容易に引き抜くことはできない状態となっている。なお、工程S17で規定値深さまでアンカー4aが打設されていない場合は工程S16に戻る、
図11の(a)、(b)、(c)は、上述した工程S11から工程S18の動作の様子を表した概略図であり、
図11の(a)が工程S11、
図11の(b)が工程S12から工程S16、
図11の(c)が工程S17から工程S18である。
【0059】
以上で、アンカー打設ツール100を用いて、アンカー4aを自動的に壁面1に穿孔された下穴2に打設するアンカー打設作業は完了する。
【0060】
このような本実施例のアンカー打設工法とすることにより、アンカー4aの把持、打撃挿入の一連の作業を、アンカー打設ツール100を用いた一台のロボット9で実現可能となる。
【0061】
以上説明した本実施例によれば、アームを有するロボット9で壁面1に穿孔された下穴2にアンカー4aを打設する際に、アンカー打設ツール100を能動的に把持モードから解放モードに切り替え、打撃挿入するアンカー4aの拘束状態を解くことで、壁面1に穿孔された下穴2の中心軸2aと、打設されるアンカー4aの長手方向軸4bとにずれがある場合であっても、アンカー4aを曲げる力がアンカー打設ツール100を介してロボット9に伝わらないため、ロボット9の関節軸への負荷を抑えることが可能となる。
【0062】
そのため、軸にずれがある場合に生じる曲げモーメントを許容する強力な関節構造のアームを有するロボット9や曲げモーメントを低減させる複雑な追加装置、曲げモーメントを抑えながらアンカー4aを打設する複雑或いは工程数の多いアンカー打設工法、壁面1に穿孔された下穴2を拡張させ、アンカー4aの打設負荷を減らした一方でアンカー4aの引抜き強度を落としてしまうことなどを防ぐことができる。
【実施例2】
【0063】
実施例1で説明したアンカー打設ツール100のアンカー4aの把持部102Aは、浮き輪状のゴム袋104に圧力を掛けた空気を注入し膨張させることで、把持部102Aの内径を収縮させる把持方式であった。
【0064】
アンカー4aを把持する代替方式(実施例2)として、2本の開閉するフィンガ200を用いる把持方式を
図12及び
図13に示す。
【0065】
本実施例のアンカー打設ツール100の把持部102Bは、2本のフィンガ200と、このフィンガ200を開閉駆動する(フィンガ200の付け根をスライドさせる)フィンガベース201と、フィンガ200を開閉駆動するためにフィンガベース201に圧縮空気を供給するためのエア配管継手105とから概略構成されている。本実施例の把持部102Bは、実施例1と同様に打撃部101と接続されている。
【0066】
そして、フィンガベース201に圧縮空気が供給されてなく、フィンガ200が“開”の状態が、本実施例の把持部102Bがアンカー4aの把持を解放する解放モードであり、フィンガベース201に圧縮空気が供給されてフィンガ200が“閉”動作して把持部102Bの内径が狭くなった状態が、本実施例の把持部102Bがアンカー4aの把持する把持モードである。
【0067】
図12は、2本のフィンガ200が開いた解放モード状態を、
図13は、2本のフィンガ200が閉じた把持モード状態をそれぞれ示している。
【0068】
このような本実施例の構成でも実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0069】
また、実施例1の浮き輪状のゴム袋104は、ゴム袋104に圧縮空気を入れた把持モード状態であっても、弾力性のあるゴム袋104を把持部102Aとして使用しているため、アンカー4aを把持した状態でロボット9のアーム先端部を高速で駆動させると、ゴム袋104で把持しているアンカー4aが揺れるという課題があった。
【0070】
しかし、本実施例のアンカー打設ツール100の把持部102Bにおけるフィンガ把持方式では、フィンガ200を剛体とすると、アンカー4aをフィンガ200で強固に把持することが可能となるため、ロボット9のアーム先端部を高速で駆動させてもアンカー4aの揺れを防ぐことができる。
【0071】
また、アンカー4aをフィンガ200で強固に把持するため、壁面1に穿孔された下穴2にアンカー4aの先端を嵌合させる際にも、アンカー4aの先端を介して伝達される反力を、ロボット9の力覚センサ13で感度よく検出することが可能になるという利点がある。
【0072】
なお、フィンガ200は、2本以上であればよく、アンカー4aを把持した際の中心軸を合わせる観点では、3本フィンガの構造が好ましい。また、フィンガ200を開閉駆動させる動力源としては空圧以外に、水圧、油圧、電動でも構わない。
【実施例3】
【0073】
アンカー4aを把持する代替方式(実施例3)として、
図14及び15に示すドリルチャック方式がある。これは、一般的なドリルチャックの構造と同じで、ドリルビットの代わりにドリルチャックでアンカー4aを把持するものである。
【0074】
即ち、本実施例のアンカー打設ツール100の把持部102Cは、複数本(本実施例では3本)の爪301と、3本の爪301を軸方向へ送り出し可能に支持すると共に、3本の爪301の間隔を狭く或いは広くなるように支持するチャック300と、このチャック300を支持するベース303と、ベース303に設置され、3本の爪301の軸方向への送り出し量及び3本の爪301の間隔を制御するサーボモータ302とから概略構成され、チャック300内の3本の爪301の送り出し量で、3本の爪301で囲まれた内径(アンカー4aを把持する径)を変化させている。本実施例の把持部102Cは、実施例1と同様に打撃部101と接続されている。
【0075】
そして、3本の爪301の軸方向への送り出し量及び3本の爪301の間隔をサーボモータ302で制御して、3本の爪301で囲まれた内径(アンカー4aを把持する径)を変化させ、3本の爪301の軸方向への送り出し量及び3本の爪301の間隔に変化がない状態が、本実施例の把持部102Cがアンカー4aの把持を解放する解放モードであり、3本の爪301の軸方向への送り出し量が大きく、かつ、3本の爪301の間隔が狭くなった状態が、本実施例の把持部102Cがアンカー4aを把持する把持モードである。
【0076】
つまり、本実施例の把持部102Cは、アンカー4aを把持する際は、
図15のように3本の爪301の間隔を狭め、アンカー4aを打設する際は、
図14のように3本の爪301の間隔を広げ、アンカー4aの拘束を解除した状態で、打撃部101の平面部分でアンカー4aを打撃挿入する。
【0077】
この本実施例のアンカー打設ツール100の把持部102Cにおけるドリルチャック方式の把持部102Cであっても、実施例2と同様に、アンカー4aを強固に把持することが可能である。
【0078】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれている。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…壁面、2…下穴、2a…下穴の中心軸、3…設置面、4、4a…アンカー、4b…アンカーの長手方向軸、4c…アンカーの打撃される面、5…3面ウェッジ、6…雄ネジ部、7…ナット、8…アンカー台、9…ロボット、10…打設装置、11…打設装置ホルダ、12…ツールチェンジャ、13…力覚センサ、14…カメラ、15…距離センサ、100…アンカー打設ツール、101…アンカー打設ツールの打撃部、101a…打撃部の平面、102A、102B、102C…アンカー打設ツールの把持部、103…把持部ホルダ、104…ゴム袋、105…エア配管継手、106…エア配管、107…把持制御部、108…アンカー打設ユニット、200…フィンガ、201…フィンガベース、300…チャック、301…爪、302…サーボモータ、303…ベース。