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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】画像処理装置、および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240805BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20240805BHJP
   G01R 33/56 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B5/055 374
A61B5/055 380
G01N24/08 520Y
G01R33/56
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020181587
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072247
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱永 翔平
(72)【発明者】
【氏名】別宮 光洋
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-296663(JP,A)
【文献】特表2017-519576(JP,A)
【文献】特開2014-158535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0002078(US,A1)
【文献】特開2009-131613(JP,A)
【文献】特開2002-301043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のショットを含むマルチショットによって得られる磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴画像を生成する画像処理装置において、
前記複数のショットに含まれる第1のショットによって得られる第1の磁気共鳴信号に基づいて第1の磁気共鳴画像を生成し、前記複数のショットに含まれる第2のショットであって前記第1のショットよりも後の第2のショットによって得られる第2の磁気共鳴信号に基づいて第2の磁気共鳴画像を生成する生成部と、
前記第1の磁気共鳴画像と前記第2の磁気共鳴画像とに基づいて、前記第1の磁気共鳴信号の位相と前記第2の磁気共鳴信号の位相とのリードアウト方向における位相ずれを補正する補正決定する決定部と、
前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との一方に対応するk空間データを前記決定部によって決定された前記補正に基づいて補正する補正部と、を有し、
前記生成部は、前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との他方に対応するk空間データと、前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との一方に対応し且つ前記補正部によって補正された前記k空間データと、に基づいて、の磁気共鳴画像を生成する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記決定部は、
前記第1の磁気共鳴画像と前記第2の磁気共鳴画像とに基づいて前記補正値としての第1の補正値を決定し、
前記第1の磁気共鳴画像と、前記複数のショットに含まれる第3のショットによって得られる第3の磁気共鳴信号に基づいて前記生成部によって生成される第4の磁気共鳴画像と、に基づいて、前記補正値として第2の補正値を決定し、
前記補正部は、前記第2の磁気共鳴信号に対応するk空間データを前記第1の補正値に基づいて補正し、前記第3の磁気共鳴信号に対応するk空間データを前記第2の補正値に基づいて補正し、
前記生成部は、前記第1の磁気共鳴信号に対応するk空間データと前記補正部によって補正された前記第2の磁気共鳴信号に対応するk空間データと前記補正部によって補正された前記第3の磁気共鳴信号に対応するk空間データとに基づいて、前記第3の磁気共鳴画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記第1の磁気共鳴画像、前記第2の磁気共鳴画像との相関を示す情報に基づいて、前記補正決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記相関を示すが最大になるように、前記補正を求める、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記マルチショットによって得られる前記磁気共鳴信号は、複数のコイルを用いて取得された信号であり、
記第1の磁気共鳴画像および前記第2の磁気共鳴画像は、パラレルイメージングにより再構成された画像である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との一方の画像における1または複数の画像領域に含まれるピクセル値に基づいて前記補正決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記1または複数の画像領域は、自動または手動により決定される、
ことを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との一方、前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との一方の磁気共鳴信号の取得に用いられたコイルの感度に関するマップとに基づいて得られる展開エラー量に基づいて、前記補正決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の磁気共鳴信号及び前記第2の磁気共鳴信号はナビゲータエコーではない、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
ルチショットに含まれる複数のショットのうちの第1のショットによって得られる第1の磁気共鳴信号に基づいて第1の磁気共鳴画像を生成し、前記複数のショットに含まれる第2のショットであって前記第1のショットよりも後の第2のショットによって得られる第2の磁気共鳴信号に基づいて第2の磁気共鳴画像を生成する第1の生成ステップと、
前記第1の磁気共鳴画像と前記第2の磁気共鳴画像とに基づいて、前記第1の磁気共鳴信号の位相と前記第2の磁気共鳴信号の位相とのリードアウト方向における位相ずれを補正する補正決定する決定ステップと、
前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との一方に対応するk空間データを前記決定ステップで決定された前記補正に基づいて補正する補正ステップと、
前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との他方に対応するk空間データと、前記第1の磁気共鳴信号と前記第2の磁気共鳴信号との一方に対応し且つ前記補正ステップで補正された前記k空間データと、に基づいて、の磁気共鳴画像を生成する第2の生成ステップと、
を含む画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、画像処理装置、および画像処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置による撮像手法の一つとして、EPI(Echo Planar Imaging)が知られている。EPIには、例えばシングルショットEPIとマルチショットEPIとがある。シングルショットEPIは、一回の励起(ショット)で一画像分のk空間データを一度に取得する方法である。マルチショットEPIは、複数回の励起でk空間全体を段階的に埋めていく方法である。マルチショットEPIでは、k空間全体をサンプリングすることで高い空間分解能を実現することができる。
【0003】
しかしながら、マルチショットに含まれる複数のショット間で位相ずれが発生することにより、磁気共鳴画像にアーチファクトが生じる場合がある。このような位相ずれを補正するために、複雑な処理が必要となる場合があった。このため、撮像および再構成のための処理が長時間化する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-5136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、マルチショットに含まれる複数のショット間における位相ずれを少ない処理負荷および処理時間で補正することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像処理装置は、複数のショットを含むマルチショットによって得られる磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴画像を生成する。画像処理装置は、生成部と、決定部と、補正部とを備える。生成部は、複数のショットに含まれる第1のショットによって得られる第1の磁気共鳴信号に基づいて第1の磁気共鳴画像を生成し、複数のショットに含まれる第2のショットであって第1のショットよりも後の第2のショットによって得られる第2の磁気共鳴信号に基づいて第2の磁気共鳴画像を生成する。決定部は、第1の磁気共鳴画像と第2の磁気共鳴画像とに基づいて、第1の磁気共鳴信号の位相と第2の磁気共鳴信号の位相とのリードアウト方向における位相ずれを補正する補正値を決定する。補正部は、第1の磁気共鳴信号と第2の磁気共鳴信号との一方に対応するk空間データを決定部によって決定された補正に基づいて補正する。生成部は、第1の磁気共鳴信号と第2の磁気共鳴信号との他方に対応するk空間データと、第1の磁気共鳴信号と第2の磁気共鳴信号との一方に対応し且つ補正部によって補正されたk空間データと、に基づいて、の磁気共鳴画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るマルチショットによって得られるエコー信号の関係性の一例を表す模式図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る複数のショットに対応する複数の磁気共鳴画像の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係る補正前画像上のゴースト領域の一例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係るエラーの計算概念の一例を模擬的に示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る補正前後の磁気共鳴画像およびエラーマップの一例を示す図である。
図9図9は、第3の実施形態に係る補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置、補正方法、およびプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置100の一例を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、架台102と、静磁場電源(非図示)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、全身用RF(Radio Frequency)コイル107と、送信回路108と、局所用RFコイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120と、計算機システム130とを備える。
【0010】
なお、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120および計算機システム130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。また、磁気共鳴イメージング装置100は、さらに他の構成を備えても良い。なお、磁気共鳴イメージング装置100に被検体P(例えば、人体)は含まれない。
【0011】
図1に示すX軸、Y軸、およびZ軸は、磁気共鳴イメージング装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、Z軸方向は、傾斜磁場コイル103の円筒の軸方向に一致し、静磁場磁石101によって発生する静磁場の磁束に沿って設定される。また、Z軸方向は、寝台105の長手方向と同方向であり、寝台105上に載置された被検体Pの頭尾方向とも同方向となる。また、X軸方向は、Z軸方向に直交する水平方向に沿って設定される。Y軸方向は、Z軸方向に直交する鉛直方向に沿って設定される。
【0012】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源は、静磁場磁石101に電流を供給する。別の例として、静磁場磁石101は、永久磁石でも良く、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくても良い。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられても良い。
【0013】
架台102は、略円筒状に形成された中空のボア102aを有し、静磁場磁石101、傾斜磁場コイル103、および全身用RFコイル107を収容している。具体的には、架台102は、ボア102aの外周側に全身用RFコイル107を配置し、全身用RFコイル107の外周側に傾斜磁場コイル103を配置し、傾斜磁場コイル103の外周側に静磁場磁石101を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台102が有するボア102a内の空間が、撮像時に被検体Pが配置される撮像空間となる。
【0014】
なお、本実施形態において、「円」という場合は「楕円」を含むものとする。また、本実施形態において、「円筒形状」または「円筒状」は、円筒の中心軸に直交する断面の形状が真円となる形状に限定されるものではなく、円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となる形状でも良いものとする。
【0015】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。また、傾斜磁場電源104は、シーケンス制御回路120の制御の下、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0016】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、患者などの被検体Pが載置された状態で、撮像口内へ挿入する。寝台制御回路106は、計算機システム130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向および上下方向に移動させる。
【0017】
全身用RFコイル107は、被検体Pの全身を囲むホールボディ(Whole body)型のコイルである。全身用RFコイル107は、傾斜磁場コイル103の内周側に配置されており、撮像空間に配置された被検体PにRF磁場を印加し、当該RF磁場の影響によって被検体Pから発生する磁気共鳴信号を受信する。具体的には、全身用RFコイル107は、中空の略円筒状に形成されており、送信回路108から供給されるRFパルス信号に基づいて、その内周側に位置する撮像空間に配置された被検体PにRF磁場を印加する。また、全身用RFコイル107は、RF磁場の影響によって被検体Pから発生する磁気共鳴信号(MR信号)を受信し、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0018】
局所用RFコイル109は、被検体Pから発生した磁気共鳴信号を受信する。具体的には、局所用RFコイル109は、被検体Pの部位ごとに用意されており、被検体Pの撮像が行われる際に、撮像対象の部位の表面近傍に配置される。そして、局所用RFコイル109は、全身用RFコイル107によって印加されたRF磁場の影響によって被検体Pから発生した磁気共鳴信号を受信し、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0019】
局所用RFコイル109は、例えば、複数のサーフェスコイルをコイルエレメントとして組み合わせて構成されたフェーズドアレイコイルである。局所用RFコイル109に含まれる複数のサーフェスコイルは、本実施形態における複数のコイルの一例である。
【0020】
なお、局所用RFコイル109は、被検体PにRF磁場を印加する送信コイルとしての機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用RFコイル109は、送信回路108に接続され、送信回路108から供給されるRFパルス信号に基づいて、被検体PにRF磁場を印加する。
【0021】
送信回路108は、シーケンス制御回路120の制御の下、全身用RFコイル107にRFパルスを供給する。
【0022】
受信回路110は、全身用RFコイル107または局所用RFコイル109から出力されるアナログのMR信号をアナログ・デジタル(AD)変換して、MRデータを生成する。また、受信回路110は、生成したMRデータをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、AD変換に関しては、全身用RFコイル107内または局所用RFコイル109内で行っても構わない。また、受信回路110はAD変換以外にも任意の信号処理を行うことが可能である。
【0023】
シーケンス制御回路120は、計算機システム130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108および受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。
【0024】
ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が全身用RFコイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110がMR信号を検出するタイミング等が定義される。被検体Pの身体のうち撮像対象となる領域の範囲に応じて、シーケンス情報は異なる。
【0025】
シーケンス制御回路120は、プロセッサにより実現されるものとしても良いし、ソフトウェアとハードウェアとの混合によって実現されても良い。
【0026】
さらに、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110からMRデータを受信すると、受信したMRデータを計算機システム130へ転送する。
【0027】
計算機システム130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、MR画像の生成等を行う。図1に示すように、計算機システム130は、NW(ネットワーク)インタフェース131、記憶回路132、処理回路133、入力インタフェース134、およびディスプレイ135を備える。
【0028】
NWインタフェース131は、シーケンス制御回路120および寝台制御回路106、と通信する。例えば、NWインタフェース131は、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。また、NWインタフェース131は、シーケンス制御回路120からMRデータを受信する。
【0029】
記憶回路132は、NWインタフェース131によって受信されたMRデータ、後述の処理回路133によってk空間に配置されたk空間データ、および処理回路133によって生成された画像データ等を記憶する。記憶回路132は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、または光ディスク等である。なお、記憶回路132は、磁気共鳴イメージング装置100の外部に設けられても良い。
【0030】
入力インタフェース134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力インタフェース134は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インタフェースは処理回路133に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路133へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェースはマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、計算機システム130とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0031】
ディスプレイ135は、処理回路133の制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、処理回路133によって生成された磁気共鳴画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。ディスプレイ135は、表示部の一例である。なお、ディスプレイ135は、磁気共鳴イメージング装置100の外部に設けられても良い。
【0032】
処理回路133は、磁気共鳴イメージング装置100の全体の制御を行う。より詳細には、処理回路133は、一例として、収集機能133a、生成機能133b、算出機能133c、補正機能133d、表示制御機能133e、および受付機能133fを備える。
収集機能133aは、収集部の一例である。生成機能133bは、生成部の一例である。算出機能133cは、算出部および取得部の一例である。また、補正機能133dは、補正部の一例である。表示制御機能133eは、表示制御部の一例である。受付機能133fは、受付部の一例である。
【0033】
ここで、例えば、処理回路133の構成要素である収集機能133a、生成機能133b、算出機能133c、補正機能133d、表示制御機能133e、および受付機能133fの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132に記憶されている。処理回路133は、プロセッサである。例えば、処理回路133は、プログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路133は、図1の処理回路133内に示された各機能を有することとなる。なお、図1においては単一のプロセッサにて、収集機能133a、生成機能133b、算出機能133c、補正機能133d、表示制御機能133e、および受付機能133fにて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路133を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、図1においては単一の記憶回路132が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路133は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0034】
本実施形態の収集機能133a及び生成機能133bは、局所用RFコイル109に含まれる複数コイルの感度差を利用して撮像時間を短縮するパラレルイメージング(Parallel Imaging:PI)により、磁気共鳴画像の撮像処理を行う。
【0035】
より詳細には、収集機能133aは、各種のパルスシーケンスを実行することにより、被検体Pから発生するMR信号から変換されたMRデータを、NWインタフェース131を介してシーケンス制御回路120から収集する。また、収集機能133aは、収集したMRデータを、傾斜磁場により付与された位相エンコード量や周波数エンコード量に従ってk空間に配置させる。
【0036】
k空間に配置されたMRデータは、k空間データと称される。k空間データは、記憶回路132に保存される。k空間内の座標は、kx軸、ky軸、およびk軸によって表される。k空間のkx軸及びky軸は、2次元(2D)画像の水平(x)軸及び垂直(y)軸に対応する。また、k軸は、実空間上の位置ではなく、x方向及びy方向の空間周波数を表す。
【0037】
本実施形態におけるk空間データは、上述のように、複数のコイルを含む局所用RFコイル109を用いて取得されたデータである。
【0038】
本実施形態の収集機能133aは、マルチショットEPI(Echo Planar Imaging)により、複数回の励起で複数ラインのリードアウト方向のエコー信号の収集を実行する。エコー信号はMR信号の一種である。
【0039】
図2は、第1の実施形態に係るマルチショットによって得られるエコー信号の関係性の一例を表す模式図である。具体的には、図2に示すように、マルチショットは1st shot、2nd shot、および3rd shotを含む。各ショットに付き、複数のエコー信号が収集される。図2では、“nth shotのm番目のエコー信号”を“S(m)”と表す。例えば、S(1)は、1st shotの1番目のエコー信号である。また、S(1)は、2nd shotの1番目のエコー信号である。1st shotは、本実施形態における第1ショットの一例である。また、2nd shotは、本実施形態における第2ショットの一例である。3rd shotは、第3ショットの一例である。
【0040】
なお、図2では、マルチショットに含まれる全ショット数が3ショットである場合を例として図示したが、ショット数はこれに限定されるものではない。例えば、マルチショットに含まれるショット数は2以上であれば良い。
【0041】
図2に示すkx軸方向は、k空間上のリードアウト方向を示す。また、図2に示すky軸は、これらのエコー信号がk空間データに変換されてk空間に充填された場合におけるky座標を示す。
【0042】
ここで、一般に、マルチショットによって得られる複数のエコー信号では、マルチショットに含まれる複数のショット間で、リードアウト方向の位相ずれが発生する。リードアウト方向の位相ずれは任意の次数の位相ずれを含む。例えば、リードアウト方向の位相ずれは、0次の位相ずれを含む。なお、本実施形態においては、リードアウト方向の位相ずれのうち、特に、0次及び1次の位相ずれについて説明する。
【0043】
位相ずれとは、例えば、複数のショットの結果として収集された複数のエコー信号間の、リードアウト方向のピーク位置のずれなどである。位相ずれが発生する原因は、例えば、磁気共鳴イメージング装置100ごとのハードウェア的な装置特性、またはシーケンスデザインの不完全性等があるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
複数のショット間でリードアウト方向の位相ずれがある場合、1st shotで得られたエコー信号と、nth shotで得られたエコー信号との関係性は、(1)式のようにモデル化できる。
【0045】
【数1】
【0046】
(1)式は、実空間上におけるリードアウト方向のショット間の位相ずれを、多項式としてモデル化したものである。また(1)式におけるkとは多項式の次数を表す。
【0047】
このような位相ずれにより、これらのエコー信号から変換されたk空間データに基づいて形成された磁気共鳴画像にアーチファクトが生じる場合がある。このような位相ずれを補正するための補正係数は、後述の算出機能133cによって算出される。なお、複数のショット間の位相ずれには、高次の位相ずれが含まれる場合もあるが、本実施形態では(1)式においてkが1である場合、すなわち、0次の位相ずれと1次の位相ずれを補正対象として例示する。
【0048】
図1に戻り、生成機能133bは、記憶回路132に記憶されたk空間データに基づいて磁気共鳴画像を生成する。例えば、生成機能133bは、k空間データにフーリエ変換などの再構成処理をすることにより、磁気共鳴画像を生成する。生成機能133bは、生成した磁気共鳴画像を、例えば、記憶回路132に保存する。
【0049】
より詳細には、本実施形態の生成機能133bは、局所用RFコイル109を用いて取得されたMRデータに基づくk空間データを再構成した折り返し画像を生成し、当該折り返し画像をSENSE(sensitivity encoding)により展開することにより、磁気共鳴画像を生成する。なお、他のパラレルイメージングの手法、例えば、SMASH(simultaneous acquisition of spatial harmonic)、またはGRAPPA(generalized autocalibrating partially parallel acquisitions)等を採用しても良い。
【0050】
まず、生成機能133bは、補正前のk空間データに基づいて、上述のマルチショットに含まれる複数のショットに対応する複数の磁気共鳴画像を生成する。以下、当該磁気共鳴画像を、補正前画像という。また、当該磁気共鳴画像は、本実施形態における第1の磁気共鳴画像の一例である。
【0051】
図3は、第1の実施形態に係る複数のショットに対応する複数の補正前画像91a~91cの一例を示す図である。補正前画像91aは、1st shotで得られたエコー信号に対応する。より詳細は、生成機能133bは、1st shotで得られたエコー信号が変換されたk空間データに対して再構成処理を実行することにより、補正前画像91aを生成する。また、補正前画像91bは、2nd shotで得られたエコー信号に対応する。また、補正前画像91cは、3rd shotで得られたエコー信号に対応する。以下、個々の補正前画像91a~91cを特に区別しない場合には、単に補正前画像91という。
【0052】
また、補正前画像91aは、本実施形態における第1画像の一例である。補正前画像91bは、本実施形態における第2画像の一例である。補正前画像91cは、本実施形態における第3画像の一例である。
【0053】
図3では、複数のショットによって収集されたエコー信号に基づくk空間データの座標を、模擬的に、kx軸、ky軸で図示しており、kx軸はリードアウト(Read Out:RO)軸を、ky軸は周波数エンコード(Phase Encode:PE)軸をそれぞれ表す。また、補正前画像91の横方向が実空間のx軸、縦方向が実空間のy軸に対応する。
【0054】
また、生成機能133bは、後述の補正機能133dによって補正されたk空間データを用いて、磁気共鳴画像を生成する。以下、当該磁気共鳴画像を、補正後画像という。また、当該磁気共鳴画像は、本実施形態における第2の磁気共鳴画像の一例である。例えば、生成機能133bは、補正されたk空間データから、1枚の補正後画像を生成する。補正後画像では、補正前画像よりも、リードアウト方向の位相ずれに起因するアーチファクトが低減される。
【0055】
図1に戻り、算出機能133cは、k空間データを用いて生成された補正前画像91に基づいて、補正係数を取得する。
【0056】
補正係数は、複数のショットを含むマルチショットによって得られるk空間データについて、複数のショット間のリードアウト方向の位相ずれを補正するための係数である。
【0057】
本実施形態において、単に「取得する」という場合、「演算によって得る」こと、及び「外部から受信する」を含む。より限定的には、算出機能133cは、補正係数を、補正前画像91に基づいて算出する。すなわち、本実施形態の算出機能133cは、補正係数を演算によって得る。
【0058】
再び図3を用いて、補正係数の算出手法について説明する。算出機能133cは、基準画像に対する、比較画像の各々の相関に基づいて、補正係数を取得する。基準画像は、複数の補正前画像91のうちのいずれか1つである。また、比較画像は、複数の補正前画像91のうちの、基準画像以外の補正前画像91である。
【0059】
図3に示す例では、補正前画像91aが基準画像である。また、補正前画像91b、91cが比較画像である。
【0060】
まず、算出機能133cは、補正前画像91aと、補正前画像91bとに基づいて、補正前画像91bに対する第1の補正係数を求める。第1の補正係数は、1st shotと2nd shotとの間の位相ずれを補正するための係数である。上述の(1)式に示したように本実施形態では、第1の補正係数は、0次と1次の位相ずれのずれ量を表す。
【0061】
例えば、算出機能133cは、補正前画像91aと補正前画像91bの相関係数が最大になるように、最適化問題を解くことにより、第1の補正係数を求める。最適化問題を解く手法は、公知の手法を採用することができる。
【0062】
また、算出機能133cは、補正前画像91aと補正前画像91bの各画像において、その信号強度や位相分散などに基づいてそれぞれマスク処理をし、このマスク処理がされた各画像間での相関係数を求めてもよい。例えば、信号強度が低い箇所、または位相が激しく変化する箇所については、外乱が発生している可能性が高い。このため、算出機能133cは、このような外乱が発生している可能性が高い箇所を、前述のマスク処理によって除外することにより、相関係数の算出において考慮しないようにしても良い。
【0063】
また、算出機能133cは、補正前画像91aと、補正前画像91cとに基づいて、補正前画像91cに対する第2の補正係数を求める。第2の補正係数の算出の手法は、第1の補正係数と同様である。本実施形態の算出手法では、マルチショットに含まれるショット数が増えるほど、補正前画像91間の比較回数が増える。また、各比較において求める対象は2つの補正前画像91間の位相ずれを補正する補正係数であるため、2つの補正前画像91の比較の度に算出する未知数の数は、マルチショットに含まれるショット数に関わらず、変わらない。
【0064】
図1に戻り、補正機能133dは、k空間データを、算出機能133cによって算出された補正係数に基づいて補正する。例えば、図3で説明した例では、補正機能133dは、k空間データを、第1の補正係数と第2の補正係数とに基づいて補正する。
【0065】
第1の補正係数および第2の補正係数は、x軸およびy軸で表される実空間上の補正前画像91に基づいて算出されたため、補正機能133dは、例えば、k空間データをリードアウト方向に逆フーリエ変換した、各エコーのプロジェクションデータに対し、第1の補正係数および第2の補正係数により実空間上における位相ずれを補正し、補正後の前記各エコーのプロジェクションデータをリードアウト方向にフーリエ変換することで、k空間データの位相ずれを補正する。
【0066】
例えば、補正機能133dは、算出機能133cによって算出された第1の補正係数を用いて、2nd shotで得られたエコー信号に対応するk空間データの位相ずれを補正する。また、補正機能133dは、算出機能133cによって算出された第2の補正係数を用いて、3rd shotで得られたエコー信号に対応するk空間データの位相ずれを補正する。これにより、1st shotに対する2nd shotおよび3rd shotの位相ずれが補正される。
【0067】
なお、本実施形態では1st shotを基準として、2nd shotおよび3rd shotに対応するk空間データを補正対象としたが、1st shot以外のショットを基準としても良い。
【0068】
図1に戻り、表示制御機能133eは、ディスプレイ135に、各種の画像、またGUI等を表示させる、例えば、表示制御機能133eは、ディスプレイ135に、補正前画像91、および補正後画像を表示させる。
【0069】
また、受付機能133fは、入力インタフェース134を介してユーザによる各種の操作を受け付ける。
【0070】
次に、以上のように構成された本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100で実行される補正処理の流れを説明する。
【0071】
図4は、第1の実施形態に係る補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0072】
まず、収集機能133aは、マルチショットEPIにより、複数ラインのリードアウト方向のエコー信号の収集を実行する(S1)。収集機能133aは、収集されたエコー信号から変換されたMRデータを、傾斜磁場により付与された位相エンコード量や周波数エンコード量に従ってk空間に配置させることにより、k空間データを生成する。
【0073】
次に、生成機能133bは、k空間データにフーリエ変換などの再構成処理と、SENSE等による展開処理をすることにより、複数のショットごとの補正前画像91a~91cを生成する。本実施形態においては、当該処理を、第1の画像再構成処理という(S2)。
【0074】
次に、算出機能133cは、補正前画像91a~91cに基づいて、補正係数を算出する(S3)。より詳細には、算出機能133cは、補正前画像91aと補正前画像91bとに基づいて、第1の補正係数を求める。また、算出機能133cは、補正前画像91aと補正前画像91cとに基づいて、第2の補正係数を求める。
【0075】
次に、補正機能133dは、第1の補正係数および第2の補正係数に基づいて、k空間データを補正する(S4)。
【0076】
そして、生成機能133bは、補正されたk空間データを用いて、補正後画像を生成する。当該処理を、第2の画像再構成処理という(S5)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0077】
このように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、複数のショットを含むマルチショットによって得られるk空間データの複数のショット間のリードアウト方向の位相ずれを補正する補正係数を、k空間データを用いて生成された実空間画像としての補正前画像91に基づいて取得する。本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、k空間データを、取得した補正係数に基づいて補正し、補正されたk空間データを用いて補正後画像を生成する。
【0078】
従来、複数のショット間の位相ずれを補正する手法として、周波数エンコード方向とリードアウト方向の両方を同時に補正する手法がある。このような手法は、例えば、拡散強調MRI(Diffusion-weighted MRI:DWI)のマルチショット間の位相ずれの補正に用いられるが、補正処理のための処理負荷および処理時間が増大する場合があった。しかしながら、マルチショットEPIでは、周波数エンコード方向の補正が磁気共鳴画像の画質の向上に重要でない場合がある。
【0079】
これに対して、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、上述のようにリードアウト方向の位相ずれを補正する補正係数を求めることにより、マルチショットに含まれる複数のショット間におけるリードアウト方向の位相ずれを少ない処理負荷および処理時間で補正することができる。
【0080】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、補正用にナビゲーターエコーを取得する必要がないため、補正のためにスキャン時間を延長させる必要はない。
【0081】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、複数のショットに対応する複数の補正前画像91a~91cを生成し、複数の補正前画像91a~91cのうちのいずれか1つである基準画像に対する、複数の補正前画像91a~91cのうちの複数の比較画像の各々の相関に基づいて、補正係数を取得する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、基準画像と比較画像との2画像間の比較によって補正係数を求めるため、ショット数が増えても、1回の比較処理あたりの未知数が増加しない。
【0082】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、基準画像に対する複数の比較画像の各々の相関を示す相関係数が最大になるように、補正係数を求める。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、基準画像に合わせて他の磁気共鳴画像に対応するk空間データを補正することにより、シンプルな演算処理を使用して補正後画像における位相ずれによるアーチファクトの発生を効率良く低減することができる。
【0083】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、磁気共鳴イメージング装置100は、各ショットに対応する複数の補正前画像91同士の相関に基づいて、補正係数を取得していた。この第2の実施形態においては、磁気共鳴イメージング装置100は、各ショットの収集結果をまとめた磁気共鳴画像のゴースト領域(すなわち、アーチファクト領域)に含まれるピクセル値に基づいて、補正係数を取得する。
【0084】
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100の構成は、図1で説明した第1の実施形態の構成と同様である。また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100の処理回路133は、第1の実施形態と同様に、収集機能133a、生成機能133b、算出機能133c、補正機能133d、表示制御機能133e、および受付機能133fを備える。収集機能133aは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0085】
本実施形態の生成機能133bは、補正前のk空間データを用いて1枚の磁気共鳴画像を生成する。当該磁気共鳴画像は、本実施形態における補正前画像である。また、当該磁気共鳴画像は、本実施形態における第1の磁気共鳴画像の一例である。なお、画像再構成に用いるSENSE等の手法については、生成機能133bは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0086】
第1の実施形態では、マルチショットに含まれる各ショットに対応する複数の磁気共鳴画像を補正前画像とした。これに対して、本実施形態では、生成機能133bは、各ショットで収集されたエコー信号から生成されたk空間データ全体から、SENSE等の手法により1枚の補正前画像を再構成する。このため、当該補正前画像には、各ショット間のリードアウト方向の位相ずれに起因するアーチファクトが発生する。
【0087】
また、本実施形態の生成機能133bは、第1の実施形態と同様に、補正後のk空間データを用いて、磁気共鳴画像を生成する。以下、当該磁気共鳴画像を、補正後画像という。また、当該磁気共鳴画像は、本実施形態における第2の磁気共鳴画像の一例である。
【0088】
また、本実施形態の算出機能133cは、補正前画像上の1または複数のゴースト領域に含まれるピクセル値に基づいて補正係数を取得する。
【0089】
ゴースト領域は、補正前画像上で各ショット間のリードアウト方向の位相ずれによるアーチファクトが発生している画像領域である。ゴースト領域は、本実施形態における画像領域の一例である。本実施形態においては、ゴースト領域は、ユーザによって手動で指定されるものとする。
【0090】
図5は、第2の実施形態に係る補正前画像92上のゴースト領域70a,70bの一例を示す図である。図5に示すように、ゴースト領域70a,70bでは、各ショット間のリードアウト方向の位相ずれに起因して、本来背景と同じ黒色となるべき箇所に、白色で被検体Pの組織がアーチファクト(ゴースト)として描出されている。なお、ゴースト領域70a,70bの数は、特に限定されるものではない。以下、ゴースト領域70a,70bを特に限定しない場合には、単にゴースト領域70という。
【0091】
本実施形態の算出機能133cは、補正前画像92上のゴースト領域70に含まれるピクセル値の合計を最小化するような補正係数を算出する。例えば、算出機能133cは、最適化問題を解くことにより、ゴースト領域70に含まれるピクセル値の合計を最小化する、0次と1次の位相ずれを補正するための補正係数を算出する。
【0092】
ピクセル値は、例えば“0”~“255”の値で表される。“0”が黒色、“255”が白色を表し、ピクセル値が小さいほど、黒色に近い色となる。すなわち、ゴースト領域70に含まれるピクセル値が最小化した場合、ゴーストとして描出されていた被検体Pの組織の色が背景の黒色に近くなることにより、画像の乱れが低減される。
【0093】
本実施形態の算出機能133cは、1回の最適化問題処理により、マルチショットに含まれる全てのショット間の位相ずれを補正するための補正係数を同時に求める。例えば、図2、3と同様に、マルチショットに含まれるショット数が“3”である場合、それぞれのショット間における0次と1次の位相ずれを補正する補正係数を求めるためには、未知数の数が“3×2”で“6”個となる。本実施形態では、マルチショットに含まれるショット数が増えるほど1回の最適化問題処理で算出機能133cが求める未知数が多くなるが、マルチショットに含まれるショット数の数に関わらず、最適化問題処理を解く回数は1回である。
【0094】
本実施形態の補正機能133dは、算出機能133cによって算出された補正係数に基づいてk空間データを補正する。例えば、補正機能133dは、算出機能133cによって算出された補正係数を用いて、k空間データをリードアウト方向に逆フーリエ変換したデータに対してリードアウト方向の0次と1次の位相ずれを補正し、これをリードアウト方向にフーリエ変換することで補正されたk空間データを得る。
【0095】
本実施形態の表示制御機能133eは、第1の実施形態の機能に加えて、補正前画像92上のゴースト領域70をユーザが指定可能な操作画面を、ディスプレイ135に表示させる。
【0096】
本実施形態の受付機能133fは、第1の実施形態の機能に加えて、ユーザによるゴースト領域70の指定を受け付ける。具体的には、受付機能133fは、ユーザによって操作画面上で指定されたゴースト領域70の、補正前画像92上の範囲を示す座標を受け付ける。
【0097】
次に、以上のように構成された本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100で実行される補正処理の流れを説明する。
【0098】
図6は、第2の実施形態に係る補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0099】
S21の収集処理は、図4で説明した第1の実施形態のS1の処理と同様である。
【0100】
次に、生成機能133bは、マルチショットによって収集されたk空間データから、1枚の補正前画像92を再構成する。本実施形態においては、当該処理を、第1の画像再構成処理という(S22)。
【0101】
次に、表示制御機能133eは、補正前画像92上のゴースト領域70をユーザが指定可能な操作画面を、ディスプレイ135に表示させる(S23)。
【0102】
そして、受付機能133fは、ユーザによるゴースト領域70の指定を受け付ける(S24)。受付機能133fは、受け付けたゴースト領域70の座標を表す情報を、算出機能133cに送出する。
【0103】
そして、算出機能133cは、補正前画像92上のゴースト領域70に含まれるピクセル値の合計を最小化する補正係数を算出する(S25)。
【0104】
そして、補正機能133dは、算出機能133cによって算出された補正係数に基づいてk空間データを補正する(S26)。
【0105】
S27の第2の画像再構成処理は、図4で説明した第1の実施形態のS5の処理と同様である。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0106】
このように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、k空間データを用いて1枚の補正前画像92を生成し、補正前画像92上の1または複数のゴースト領域70に含まれるピクセル値に基づいて補正係数を取得する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、第1の実施形態の効果を備えた上で、シンプルな演算によって、位相ずれによるアーチファクトを低減可能な補正係数を求めることができる。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、少ない処理負荷で補正することができる。
【0107】
なお、ゴースト領域70が自動的に決定される構成が採用されても良い。例えば、算出機能133cは、エコー信号の大きさあるいは位相分散等に基づいて、ゴースト領域70を自動的に決定しても良い。あるいは、算出機能133cは、その他の画像処理の手法により、補正前画像92上でアーチファクトが発生している範囲を特定し、特定した範囲をゴースト領域70と決定しても良い。ゴースト領域70が自動的に決定される場合は、ユーザによるゴースト領域70の指定操作を省略することができるため、手動で決定する手法と比べて、ユーザの作業負荷を低減することができる。
【0108】
(第3の実施形態)
この第3の実施形態では、磁気共鳴イメージング装置100は、補正前画像の展開エラー量に基づいて、補正係数を取得する。
【0109】
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100の構成は、図1で説明した第1の実施形態の構成と同様である。また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100の処理回路133は、第1の実施形態と同様に、収集機能133a、生成機能133b、算出機能133c、補正機能133d、表示制御機能133e、および受付機能133fを備える。収集機能133a、表示制御機能133e、および受付機能133fは、第1の実施形態と同様の機能を備える。また、補正機能133dは、第2の実施形態と同様の機能を備える。
【0110】
本実施形態の生成機能133bは、第2の実施形態と同様に、補正前のk空間データを用いて1枚の補正前画像92を生成する。また、補正前画像92は、本実施形態における第1の磁気共鳴画像の一例である。
【0111】
また、本実施形態の生成機能133bは、補正前画像92をSENSEにより展開した際の展開エラー量を計算する。
【0112】
【数2】
【0113】
(2)式は、SENSE法により画像を展開するために解く方程式である。また、(3)式は、本実施形態で最小化するSENSEの展開エラー量を表す。
【0114】
ここで、図7を用いて(2)式、および(3)式について説明する。図7は、第2の実施形態に係るエラーの計算概念の一例を模擬的に示す図である。
【0115】
(2)式の“A”は、局所用RFコイル109に含まれる複数のコイルの感度を示すマップ、例えば感度マップ51a,51bからなる行列を表す。また、“u”は、SENSE法により展開する磁気共鳴画像からなるベクトルを表す。また、“b”は、収集されたMRデータに基づく複数のコイル画像900a,900bからなるベクトルを表す。以下、感度マップ51a,51bを特に区別しない場合には単に感度マップ51という。
【0116】
現実的には展開エラーが存在するため、生成機能133bは、(3)式のように(2)式における両辺の残差ノルムをとることで“Err”(エラー)を求める。(3)式の“usol”は、展開された磁気共鳴画像からなるベクトルを表し、補正前画像92に相当する。生成機能133bは、最適化問題等により、“Err”を最小化するように、補正係数を求める。
【0117】
図7では、コイルごとに計算される展開エラー量を、エラー画像52a,52bとして図示する。なお、図7では画像内の各点で計算されたエラー量を画像としてマッピングしたものを表示しているが、実際には、生成機能133bは、エラー量を数値で算出する。
【0118】
各コイルのエラー画像52a,52bを合成することにより、エラーマップが得られる。なお、エラーマップの生成は必須ではない。以下、エラー画像52a,52bを特に区別しない場合には単にエラー画像52という。
【0119】
図8は、第2の実施形態に係る補正前後の磁気共鳴画像およびエラーマップの一例を示す図である。生成機能133bは、図7で説明した展開処理により、図8に示すように、補正前画像92を生成する。また、生成機能133bは、図7で説明した展開処理の際に求めた各コイルに対応するエラー画像52を合成することにより、補正前エラーマップ61を生成する。各ショット間の位相ずれが大きいほど、補正前エラーマップ61に描出される像が多く表れる。エラーの発生要因は複数あるが、本実施形態においては、特に、リードアウト方向のショット間の位相ずれの低減を目的とする。
【0120】
また、生成機能133bは、第1、第2の実施形態と同様に、補正後のk空間データを用いて、補正後画像81を生成する。補正後画像81は、本実施形態における第2の磁気共鳴画像の一例である。
【0121】
また、補正されたk空間データに基づく補正後画像81の展開処理の際のエラー量は、補正前のエラー量よりも低減している。このため、生成機能133bが、補正後のk空間データから各コイルに対応するエラー画像52を重畳して補正後エラーマップ62を生成した場合、図8に示すように、補正前エラーマップ61よりも補正後エラーマップ62に描出される像の量は少なくなる。なお、図8では比較説明のために補正前エラーマップ61および補正後エラーマップ62を図示したが、生成機能133bは、補正前エラーマップ61および補正後エラーマップ62を生成しなくとも良い。以下、単にエラーマップという場合には、補正前エラーマップ61のことをいう。
【0122】
本実施形態の算出機能133cは、補正前画像92とk空間データの取得に用いた局所用RFコイル109の感度に関する感度マップ51とに基づいて得られる展開エラー量に基づいて、補正係数を取得する。
【0123】
より詳細には、算出機能133cは、(3)式の“Err”を最小化するように、最適化問題を解くことにより、リードアウト方向の0次と1次の位相ずれを補正する補正係数を算出する。(3)式の“Err”を最小化する補正係数を用いることにより、補正前エラーマップ61に描出された像の量が減少する。換言すれば、算出機能133cは、補正前エラーマップ61に描出された像の量が減少するように、補正係数を求める。
【0124】
次に、以上のように構成された本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100で実行される補正処理の流れを説明する。
【0125】
図9は、第3の実施形態に係る補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0126】
S31の収集処理は、図4で説明した第1の実施形態のS1の処理と同様である。
【0127】
次に、生成機能133bは、マルチショットによって収集されたk空間データから、図7で説明したSENSE法により1枚の補正前画像92を再構成する第1の画像再構成処理を実行する(S32)。
【0128】
そして、生成機能133bは、補正前画像92の再構成画像を得る処理において(3)式に基づいて、展開エラー量を算出する(S33)。
【0129】
そして、算出機能133cは、展開エラー量に基づいて、補正係数を算出する(S34)。
【0130】
次に、補正機能133dは、算出機能133cによって算出された補正係数に基づいてk空間データを補正する(S35)。
【0131】
S36の第2の画像再構成処理は、図4で説明した第1の実施形態のS5の処理と同様である。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0132】
このように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、複数のコイルで取得したk空間データからなる画像900とその取得に用いた局所用RFコイル109に含まれる複数のコイルの感度を示す感度マップ51とに基づいて得られる展開エラー量に基づいて、補正係数を取得する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、磁気共鳴画像の展開に使用する情報を利用して、位相ずれの補正のための補正係数を求めることができる。また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、アーチファクトが発生するゴースト領域を特定しなくとも、各ショット間の位相ずれを補正可能であるため、手動または自動によるゴースト領域の指定の精度に左右されず、補正処理の精度を維持することができる。その結果、本実施形態によれば、ロバストであり、かつ作業負荷の低減可能な磁気共鳴イメージング装置100を提供することができる。
【0133】
なお、上述の各実施形態では、全ての処理を磁気共鳴イメージング装置100が実行するものとして説明したが、一部の処理を磁気共鳴イメージング装置100以外の情報処理装置が実行しても良い。例えば、磁気共鳴イメージング装置100以外の情報処理装置が、補正係数の算出処理を実行し、磁気共鳴イメージング装置100が、当該補正係数を取得しても良い。また、図1に示した磁気共鳴イメージング装置100の処理回路133に含まれる各機能の一部が、磁気共鳴イメージング装置100以外の情報処理装置またはクラウド環境等で実行されても良い。
【0134】
なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。
【0135】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、マルチショットに含まれる複数のショット間における位相ずれを少ない処理負荷および処理時間で補正することができる。
【0136】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0137】
51,51a,51b 感度マップ
52,52a,52b エラー画像
61 補正前エラーマップ
62 補正後エラーマップ
70,70a,70b ゴースト領域
81 補正後画像
91,91a~91c,92 補正前画像
100 磁気共鳴イメージング装置
107 全身用RFコイル
109 局所用RFコイル
130 計算機システム
132 記憶回路
133 処理回路
133a 収集機能
133b 生成機能
133c 算出機能
133d 補正機能
133e 表示制御機能
133f 受付機能
135 ディスプレイ
900a,900b コイル画像
P 被検体
図1
図2
図3
図4
図5
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図9