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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ティビアパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20240805BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20240805BHJP
   B60R 21/04 20060101ALI20240805BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20240805BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20240805BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20240805BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
F16F7/00 J
B29C43/18
B29C43/34
B29C44/00 C
B29C44/36
B29C44/12
F16F7/00 B
B60R21/04 320
B60R13/08
B29K105:04
B29K75:00
B29L9:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187001
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076579
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-07-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 明生
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179052(JP,A)
【文献】特開平08-072074(JP,A)
【文献】特開平08-026054(JP,A)
【文献】特開平09-076383(JP,A)
【文献】実開昭53-131461(JP,U)
【文献】特開2010-105308(JP,A)
【文献】特開2009-066792(JP,A)
【文献】特開昭58-039545(JP,A)
【文献】特開平11-129840(JP,A)
【文献】特開2004-058498(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/007834(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
B29C 43/18
B29C 43/34
B29C 44/00
B29C 44/36
B29C 44/12
B60R 21/04
B60R 13/08
B29K 105/04
B29K 75/00
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝材と、前記緩衝材に少なくとも一部が埋設される芯材とを有するティビアパッドの製造方法であって、
前記芯材、プレート部と、前記プレート部の複数箇所を表裏の一方側に突出させてなる複数の芯材突部とを有した形状としておき、
成形金型の内部に前記芯材を配置し、その芯材の前記複数の芯材突部の内外を覆うように発泡ウレタンチップを含んだチップ材を充填して前記成形金型で加熱プレスすることで前記チップ材の結合体を成形しかつ前記芯材に固着させるティビアパッドの製造方法。
【請求項2】
前記成形金型を上下に型開き可能な構造にして、その下型に備えた成形凹部の内部に、前記芯材が前記芯材突部を上にして載置される載置面と、前記載置面のうち前記複数の芯材突部との対向位置を陥没させた複数の載置面凹部と、前記複数の載置面凹部の内部で前記載置面に対して相対的に昇降する複数の底面形成部材と、を設けておき、
前記複数の底面形成部材を可動範囲の下端に配置して前記複数の載置面凹部に前記チップ材を充填する第1充填工程と、
前記芯材を前記載置面に載置する載置工程と、
前記芯材の上に前記チップ材を充填する第2充填工程と、
前記成形金型の上型を前記載置面に対して相対的に降下させるように前記成形金型を型閉じすると共に前記複数の底面形成部材を前記載置面に対して相対的に上昇させて前記チップ材を加熱プレスするプレス工程と、を行う請求項1に記載のティビアパッドの製造方法。
【請求項3】
前記下型に、
固定ベースと、
上面に前記成形凹部を有し、固定ベース内で上下に移動する可動ベースと、
前記固定ベースに対して前記可動ベースを可動範囲の上端位置に付勢する付勢部材と、を設け、
前記上型の前記降下により前記可動ベースを前記付勢部材に抗して押し下げて、前記複数の底面形成部材を前記載置面に対して相対的に上昇させる請求項2に記載のティビアパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡構造の緩衝材を有するティビアパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のティビアパッドとして、乗員の脚部の保護に加えて車内の防音のために吸音効果を有する発泡構造の緩衝材(具体的には、発泡ウレタン)を備えたものが知られている。また、そのようなティビアパッドは、発泡成形金型に芯材をインサートして緩衝材である発泡樹脂を発泡成形することで製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-179052号公報(段落[0039]、[0040]、図6,7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のティビアパッドは、発泡成形時のガス溜まりにより緩衝材の外面に異形凹部が発生して見栄えが悪くなることがあるので、そのような異形凹部の発生を抑えて、ティビアパッドの外観品質を安定させる技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、緩衝材と、前記緩衝材に少なくとも一部が埋設される芯材とを有するティビアパッドであって、前記芯材は、プレート部と、前記プレート部の複数箇所を表裏の一方側に突出させてなる複数の芯材突部と、を有し、前記緩衝材は、前記複数の芯材突部の内外を覆う発泡ウレタンチップを含んだチップ材の結合体であるティビアパッドである。
【0006】
発明の第2態様は、前記複数の芯材突部の先端は、1mm以上の厚さの前記緩衝材で覆われている第1態様に記載のティビアパッドである。
【0007】
発明の第3態様は、前記プレート部のうち前記複数の芯材突部が突出する側と反対側の面は、ティビアパッドの表裏の一方の面に露出している第1態様又は第2態様に記載のティビアパッドである。
【0008】
発明の第4態様は、前記複数の芯材突部は、前記プレート部の全体を横切るブリッジ構造をなして互いに間隔を空けて平行に延びている第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載のティビアパッドである。
【0009】
発明の第5態様は、前記プレート部には、複数の角形開口が縦横に行列状に並べて形成され、前記複数の芯材突部は、前記複数の角形開口の1対の対向辺の間に差し渡されたブリッジ構造をなしかつ、隣合う前記芯材突部の側面開口同士が対向しないように交互に前記ブリッジ構造の向きを変えて並んでいる第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載のティビアパッドである。
【0010】
発明の第6態様は、緩衝材と、前記緩衝材に少なくとも一部が埋設される芯材とを有するティビアパッドの製造方法であって、前記芯材を、プレート部と、前記プレート部の複数箇所を表裏の一方側に突出させてなる複数の芯材突部とを有した形状としておき、成形金型の内部に前記芯材を配置し、その芯材の前記複数の芯材突部の内外を覆うように発泡ウレタンチップを含んだチップ材を充填して前記成形金型で加熱プレスすることで前記チップ材の結合体を成形しかつ前記芯材に固着させるティビアパッドの製造方法である。
【0011】
発明の第7態様は、前記成形金型を上下に型開き可能な構造にして、その下型に備えた成形凹部の内部に、前記芯材が前記芯材突部を上にして載置される載置面と、前記載置面のうち前記複数の芯材突部との対向位置を陥没させた複数の載置面凹部と、前記複数の載置面凹部の内部で前記載置面に対して相対的に昇降する複数の底面形成部材と、を設けておき、前記複数の底面形成部材を可動範囲の下端に配置して前記複数の載置面凹部に前記チップ材を充填する第1充填工程と、前記芯材を前記載置面に載置する載置工程と、前記芯材の上に前記チップ材を充填する第2充填工程と、前記成形金型の上型を前記載置面に対して相対的に降下させるように前記成形金型を型閉じすると共に前記複数の底面形成部材を前記載置面に対して相対的に上昇させて前記チップ材を加熱プレスするプレス工程と、を行う第6態様に記載のティビアパッドの製造方法である。
【0012】
発明の第8態様は、前記下型に、固定ベースと、上面に前記成形凹部を有し、固定ベース内で上下に移動する可動ベースと、前記固定ベースに対して前記可動ベースを可動範囲の上端位置に付勢する付勢部材と、を設け、前記上型の前記降下により前記可動ベースを前記付勢部材に抗して押し下げて、前記複数の底面形成部材を前記載置面に対して相対的に上昇させる第7態様に記載のティビアパッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
第1態様のティビアパッドの緩衝材は、予め発泡させた発泡ウレタンチップを含んだチップ材の結合体であるので、緩衝材の成形時には発泡させずに製造することができる。即ち、本発明のティビアパッドは、第6態様の製造方法のように、成形金型の内部に芯材を配置すると共に発泡ウレタンチップを含んだチップ材を充填して加熱プレスすることで製造することができる。これにより、従来問題になっていた緩衝材の外面の異形凹部の発生が抑えられ、ティビアパッドの外観品質が安定する。それでいて、緩衝材は、従来のティビアパッドの緩衝材と同様に発泡構造をなしているので、緩衝効果と共に吸音効果も奏する。また、ティビアパッドは、緩衝材に埋設される芯材がプレート部から複数の芯材突部が突出した構造をなしているので、芯材突部及び緩衝材の両方の圧縮変形によって衝撃を吸収することができる。
【0014】
ここで、複数の芯材突部の先端は、露出していてもよいが、車両が衝突したときに乗員の脚部にかかる初期衝撃を緩和する観点から、第2態様のティビアパッドのように、複数の芯材突部の先端が1mm以上の厚さの緩衝材で覆われているのが好ましい。また、プレート部のうち複数の芯材突部が突出する側と反対側の面は、緩衝材層で覆われていてもよいし、第3態様のティビアパッドのように露出していてもよい。
【0015】
また、複数の芯材突部は、第4態様のティビアパッドのように、プレート部の全体を横切るブリッジ構造をなして互いに間隔を空けて平行に延びた形状であってもよいし、第5態様のティビアパッドのように、プレート部には、複数の角形開口が縦横に行列状に並べて形成され、複数の芯材突部は、複数の角形開口の1対の対向辺の間に差し渡されたブリッジ構造をなしかつ、隣合う芯材突部の側面開口同士が対向しないように交互にブリッジ構造の向きを変えて並んだ形状であってもよいし、それら以外の構造であってもよい。第4態様のティビアパッドは、芯材の構造が単純であるので製造が容易である。一方、第5態様のティビアパッドによれば、ブリッジ構造の芯材突部が交互に向きを変えて並んでいるので、ティビアパッドを押圧する方向が、ティビアパッドの厚さ方向に対して任意の方向に傾斜していても安定して押圧によるエネルギーを吸収することができ、乗員の脚部への負荷を抑えることができる。
【0016】
第7態様及び第8態様のティビアパッドの製造方法によれば、成形金型の1度の型閉じ動作で、芯材突部の内側と外側を緩衝材で覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るティビアパッドの設置状況を説明するための図
図2】ティビアパッドを下面側から見た斜視図
図3】ティビアパッドの側断面図
図4】(A)成形金型の開いた状態の側断面図、(B)成形金型に芯材がセットされ、チップ材が充填された状態の側断面図、
図5】(A)成形金型が途中まで閉じた状態の側断面図、(B)成形金型が完全に閉じた状態の側断面図、
図6】第2実施形態に係るティビアパッドの芯材の斜視図
図7】ティビアパッドの斜視図
図8】ティビアパッドの側断面図
図9】(A)成形金型の開いた状態の側断面図、(B)チップ材が充填された成形金型に芯材がセットされた状態の側断面図、
図10】(A)成形金型にセットされた芯材上にチップ材を充填した状態の側断面図、(B)成形金型が完全に閉じた状態の側断面図、
図11】下型の分解斜視図
図12】確認実験の実験結果を示す表
図13】(A)圧縮試験装置の側断面図、(B)圧縮試験装置で用いた踵形状を模した圧縮治具の平面図
図14】各実験例の荷重対変位量のエネルギー吸収特性を示すグラフ
図15】各比較実験例の垂直入射吸音率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、図1図5を参照して、本開示のティビアパッド10に係る第1実施形態について説明する。図1に示されるように、本実施形態のティビアパッド10は、車両90の前部座席の前方の床面のうち乗員Jの足が配置され得る範囲に複数枚敷設されている。なお、ティビアパッド10の上にはフロアカーペット93が敷設されている。以下、ティビアパッド10における車両90の車幅方向を「ティビアパッド10の横方向H1」、ティビアパッド10における車両90の前後方向を「ティビアパッド10の縦方向H2」といいうこととする。
【0019】
図2及び図3に示すように、ティビアパッド10は、緩衝材30に芯材11が埋設された構造をなしている。芯材11は、例えば、ポリエチレン、ポリプレピレン等の合成樹脂の射出成形品であって、縦方向H2と直交する断面が、複数の台形波を有する波形状をなし、芯材11の縦方向H2の全体に亘って延びる断面台形の複数(例えば、2つ)の芯材突部20を有する。なお、芯材11の全体及び各芯材突部20は、何れも左右対称な形状をなしている。
【0020】
ティビアパッド10のうち断面形状である台形波の谷底に位置する複数の平板部分は、特許請求の範囲に記載のプレート部12になっている。換言すれば、芯材11は、平板状のプレート部12の横方向H1の複数箇所を上方に突出させてブリッジ構造の複数の芯材突部20を備えた構造をなしている。また、芯材11の両側部では、プレート部12の側縁部から側部直立壁13が直立していて、それら側部直立壁13と芯材突部20とが同じ高さになっている。また、芯材突部20の上壁22は、芯材突部20の両隣のプレート部12より幅狭になっている。
【0021】
なお、本実施形態では、芯材突部20がプレート部12から上方に突出しているが、芯材突部20がプレート部12から下方に突出した構造としてもよいし、上下の両方に突出した構造としてもよい。
【0022】
緩衝材30は、図3に示すように、芯材11の全体の上方に積層され、緩衝材30の上面は、芯材11の上面より上方に位置し、芯材11の上面と平行な平坦面になっている。また、緩衝材30は、各芯材突部20の内部にも充填され、芯材突部20内の緩衝材30の下面と芯材11の下面(詳細には、プレート部12の下面)とが面一に配置されている。緩衝材30のうち芯材11の上面より上側の層(以下、「緩衝材層31」という)の厚みは、1[mm]以上になっている。なお、本実施形態では、芯材11の1対の側部起立壁13は、外側面が緩衝材30から露出しているが、緩衝材30で覆われていてもよい。また、緩衝材層31の厚さは、1~3[mm]が好ましい。
【0023】
緩衝材30は、発泡ウレタンチップを含んだチップ材40をバインダーで結合した結合体であり、次述する成形金型50にチップ材40を充填して加熱プレスすることで成形されかつ芯材11に固着されている。具体的には、本実施形態で用いられる発泡ウレタンチップは、例えば、半硬質ウレタン発泡体であって、平均粒径3~10[mm]、密度は15~35[kg/m]であり、圧縮成形した後の密度は50~60[kg/m]である。バインダーは、例えば、ウレタンプレポリマーや、メチレンジフェニルジイソシアネート等、発泡ウレタンチップを圧縮成形する際に用いられる公知のものを使用することができる。バインダーの混合割合は、10~15[%]が好ましい。
【0024】
なお、発泡ウレタンチップは、硬質ポリウレタンフォームであってもよいし、軟質ポリウレタンフォームであってよい。
【0025】
ティビアパッド10は、図4及び図5に示された成形金型50を使用して製造される。その成形金型50は、所謂、プレス成形金型であって、下型52に対して上型51が昇降するようになっている。
【0026】
下型52は、例えば、平面形状が四角形の凹部53Aを有する固定ベース53と、凹部53Aに収容されて昇降可能に支持された可動ベース60とを有する。また、可動ベース60は、固定ベース53に備えた第1と第2のストッパ53S1,53S2との当接によって可動範囲の上端位置と下端位置とに位置決めされ、固定ベース53と可動ベース60とに間に設けられた圧縮コイルバネ55にて可動範囲の上端位置に付勢されている。
【0027】
なお、圧縮コイルバネ55は、特許請求の範囲の「付勢部材」に相当する。付勢部材は、圧縮コイルバネ55に限定されるものではなく、例えば、油圧シリンダやガスを密閉した空気バネであってもよい。
【0028】
可動ベース60の上面には、芯材11が丁度収容される角溝構造の成形凹部61が形成され、成形凹部61の底面が、芯材11が載置される載置面61Aになっている。載置面61Aには、芯材11の複数の芯材突部20に対向する角溝状の複数の載置面凹部62が形成されている。なお、成形凹部61及び複数の載置面凹部62の長手方向の両端部は、固定ベース53の1対の内側面によって閉塞されている。
【0029】
各載置面凹部62内には、底板54がそれぞれ受容されている。底板54は、特許請求の範囲の「底面形成部材」に相当し、載置面凹部62と同一幅の帯板状をなして載置面凹部62に嵌合している。底板54は、載置面凹部62の底面に設けられた貫通孔63を通る支柱56に支持されて、固定ベース53の凹部53Aの底面に固定されている。そして、可動ベース60が可動範囲の上端位置に配置されたときには、載置面凹部62内の底面に重なり(図4(A)参照)、可動ベース60が下端位置に配置されたときには、底板54の上面と載置面61Aとが面一に配置される(図5(B)参照)。また、載置面凹部62内の体積は、芯材突部20の内側の空間の体積より大きくなっている。
【0030】
上型51は、成形凹部61全体を覆う平板の下面から成形凹部61内に丁度嵌合される平面形状が四角形の段付突部51Aを備えた構造をなしている。
【0031】
ティビアパッド10の製造方法は、以下の通りである。先ずは、予め成形された芯材11と、発泡ウレタンチップとバインダーとを含んだチップ材40を用意する。そして、図4(A)に示すように、成形金型50を加熱してから型開きし、可動ベース60が可動範囲の上端位置に配置された状態にして、図4(B)に示すように、複数の載置面凹部62にチップ材40を満杯に充填する(第1充填工程)。
【0032】
次いで、芯材11を載置面61Aに載置し(載置工程)、その芯材11の上にチップ材40を成形凹部61に対して満杯になるように充填する(第2充填工程)。この状態で、図5(A)に示すように、上型51を降下させて成形金型50を型閉じし、その上型51により可動ベース60を圧縮コイルバネ55に抗して下端位置まで押し下げ、底板54を載置面凹部62内で相対的に上昇させてチップ材40を芯材突部20内に押し込む。そして、上型51と可動ベース60と複数の底板54とによりチップ材40を加熱プレスする(プレス工程)。そして、型開きをしてティビアパッド10を取り出す。以上により、図2に示したティビアパッド10が完成する。
【0033】
本実施形態に係るティビアパッド10の構成及びその製造方法に関する説明は以上である。次に、ティビアパッド10及びその製造方法の作用効果について説明する。
【0034】
本実施形態のティビアパッド10の緩衝材30は、予め発泡させた発泡ウレタンチップを含んだチップ材40の結合体であるので、緩衝材30の成形時には発泡させずに製造することができる。即ち、本実施形態のティビアパッド10は、上述した製造方法のように、成形金型50の内部に芯材11を配置すると共に発泡ウレタンチップを含んだチップ材40を充填して加熱プレスすることで製造することができる。これにより、従来問題になっていた緩衝材30の外面の異形凹部の発生が抑えられ、ティビアパッド10の外観品質が安定する。それでいて、緩衝材30は、従来のティビアパッド10の緩衝材30と同様に発泡構造をなしているので、緩衝効果と共に吸音効果も奏する。また、成形金型50を上述の通り、可動ベース60を備えた構造にすることで、成形金型50の1度の型閉じ動作で、芯材11の芯材突部20の内部と外側の両側を緩衝材30で覆うことができる。
【0035】
また、図1に示すように、ティビアパッド10は、車両90の床面に敷設されて乗員Jの脚部の下に配置される。そして、車両90が衝突して乗員Jの脚部(特に踵)が車両90の床面に押し付けられたとき、その負荷を受け止める。その際、本実施形態のティビアパッド10では、複数の芯材突部20の先端が緩衝材層31で覆われているので、芯材突部20の先端が露出しているものに比べて、乗員Jの脚部が受ける初期の衝撃が緩和される。そして、脚部からの押圧力によりティビアパッド10の芯材突部20及び緩衝材30の両方が圧縮変形又は圧縮破壊されて衝撃を吸収し、脚部への衝撃が緩和される。
【0036】
[第2実施形態]
以下、本開示の第2実施形態を図6図11を参照して説明する。図6に示すように、本実施形態のティビアパッド10Vの芯材11Vは、四角形の板状のプレート部14に複数の角形開口15を備えている。複数の角形開口15は、正方形をなして、プレート部14の縦横に等間隔に行列状に並べられている。その結果、プレート部14全体は格子状になっている。そして、各角形開口15を上方から覆うように複数のブリッジ構造の芯材突部16が備えられている。
【0037】
具体的には、芯材突部16は、角形開口15の対向する1対の対向辺の間に差し渡されるように形成されて、角形開口15の残りの1対の対向辺の対向方向に開口する側面開口16Aを備える。そして、隣合う芯材突部16の側面開口16A同士が対向しないように交互にブリッジ構造の向きを90度変えて並んでいる。詳細には、図8に示すように、芯材突部16を構成する壁部は、プレート部14と略同一の厚さをなしている。また、芯材突部16を側面開口16A側から見ると、左右対称の斜辺と上壁17とを有した台形の上側両角部をR面取りした形状をなしている。さらには、芯材突部16を構成する壁部の幅は、両下端部が角形開口15の各辺と同じになっていて、上端部に向かうに従って徐々に幅狭になっている。そして、図6に示すように、芯材11V全体は、縦横の何れの方向から見ても同じ形状をなしている。
【0038】
図7に示すように、芯材11Vのうちプレート部14より上側は、プレート部14と同一の平面形状を有する直方体状の緩衝材30に埋設されている。また、緩衝材30は各芯材突部16の内部にも充填され、芯材突部16の内側の緩衝材30の下面とプレート部14の下面とが面一に配置されている。また、この緩衝材30は、前記第1実施形態のティビアパッド10の緩衝材30と同様に、発泡ウレタンチップを含むチップ材40の結合体になっている。
【0039】
図9図11には、本実施形態のティビアパッド10Vを製造するための成形金型50Vが示されている。この成形金型50Vは、第1実施形態の成形金型50に対し、下型52Vの構成が異なる。以下、成形金型50Vのうち前記第1実施形態の成形金型50と異なる構成についてのみ説明する。
【0040】
図11に示すように、この成形金型50Vの載置面61Aには、芯材11Vの複数の角形開口15と重なるように断面四角形の複数の載置面凹部62Vが行列状に並べられて可動ベース60Vを上下に貫通している。また、図9(A)に示すように、各載置面凹部62Vには、丁度嵌合される四角形の柱状体54V(特許請求の範囲の「底面形成部材」に相当する)が嵌合され、固定ベース53の凹部53Aの底面から起立している。そして、図9(A)に示すように、可動ベース60Vが可動範囲の上端位置に配置されたときには、各柱状体54Vが各載置面凹部62Vの下端に位置し、図10(B)に示すように、可動ベース60Vが可動範囲の下端位置に配置されたときには、各柱状体54Vが各載置面凹部62Vの上端に位置して柱状体54Vの上面と載置面61Aとが面一になる。なお、図11においては第1と第2のストッパ53S1,53S2は省略されている。
【0041】
本実施形態のティビアパッド10Vの製造方法も、第1実施形態のティビアパッド10の製造方法と同様に、先ずは、図9(A)に示す成形金型50Vの複数の載置面凹部62Vにチップ材40を満杯に充填してから(第1充填工程)、図9(B)に示すように、芯材11Vを載置面61Aに載置する(載置工程)。そして、図10(A)に示すように、芯材11Vの上にチップ材40を成形凹部61に対して満杯になるように充填し(第2充填工程)、図10(B)に示すように、上型51を降下させて成形金型50Vを型閉じて可動ベース60を可動範囲の下端位置まで押し下げ、チップ材40を加熱プレスする(プレス工程)。そして、成形金型50Vを型開きし、ティビアパッド10Vを取り出す。以上により、図7に示したティビアパッド10Vが完成する。
【0042】
本実施形態に係るティビアパッド10Vの構成及び製造方法に関する説明は以上である。本実施形態のティビアパッド10Vによれば、ブリッジ構造の芯材突部16が交互に向きを変えて並んでいるので、ティビアパッド10Vを押圧する方向が、ティビアパッド10Vの厚さ方向に対して任意の方向に傾斜していても安定して押圧によるエネルギーを吸収することができ、乗員Jの脚部への負荷を抑えることができる。
【0043】
[確認実験]
上記実施形態のティビアパッド10,10Vについて、ティビアパッドの構成、緩衝材30の材料を適宜変更して、試験サンプル(実験例1,2、及び比較実験例1~4)を作成し、衝撃吸収性、吸音性、成形性の評価実験を行った。具体的には、図12に示すように、実験例1,2の試験サンプルは、芯材を備え、緩衝材として発泡ウレタンチップを含むチップ材の結合体を備えると共に、芯材突部の先端に緩衝材のみからなる緩衝材層を備える構成とした。実験例1,2の試験サンプルの芯材の形状は、それぞれ、連続2本ビード(上記第1実施形態の芯材11の形状)、不連続組合せビード(上記第2実施形態の芯材11Vの形状)とした。また、比較実験例1の試験サンプルは、実験例1の試験サンプルと同じ材料から構成されるが、芯材突部の先端に緩衝材層を備えない構成とした。比較実験例2~4の試験サンプルは、芯材を備えない構成とし、緩衝材をそれぞれ、発泡ウレタンチップを含むチップ材の結合体、硬質ウレタンフォーム、ビーズ発泡ポリプロピレン(EPP)とした。
【0044】
各実験例に使用される芯材はポリプロピレンを材料とし、板厚は0.6[mm]とした。また、発泡ウレタンチップは、密度22[kg/m]の半硬質チップウレタンを使用し、加熱プレス成形により緩衝材の密度を53[kg/m]とした。芯材のうち、連続2本ビードの芯材突部の高さは37[mm]、芯材突部の開口幅と芯材突部同士の間隔は30[mm]、上壁の幅は、16.1[mm]のものを使用した。また、不連続組合せビードの芯材突部の高さは37[mm]、芯材突部の開口幅は30[mm]、芯材突部同士の間隔は10[mm]、上壁の幅は、16.1[mm]のものを使用した。
【0045】
衝撃吸収性の評価は、以下の手順で行った。 各試験サンプルを150[mm]×150[mm]に切り出し、図13(A)に示すような圧縮試験装置70で圧縮を行った。具体的には、試験片80を保持台72に載置し、試験片80の上にフロアカーペット93を想定したマット材81を載せて、想定される平均的な体格の乗員Jの踵の大きさを想定し、図13(B)に示すような形の圧縮治具71を用いて、圧縮速度15mm/分で、圧縮される変位量とその時の圧縮荷重を読み取り、荷重対変位量のエネルギー吸収特性を求めた。
【0046】
図14には、各実験例の荷重対変位量のエネルギー吸収特性が示されている。発泡ウレタンチップの緩衝材のみで構成される比較実験例2の試験サンプルでは、荷重対変位量における荷重の立ち上がりが緩やかである。これでは、大きな衝撃荷重を吸収するには、大きな変位量が必要となり、狭い間隔に配置されるティビアパッドでは、脚部への衝撃を十分に緩和できない虞があり、不適であるといえる。
【0047】
これに対して、実験例1,2、及び比較実験例1,3の試験サンプルは、初期に荷重が急激に立ち上がった後に一定荷重を維持しつつ変形している。これは、狭い間隔内においても初期段階で衝突荷重の吸収量の増加率が大きくなり、その後の荷重が安定することから、ティビアパッドに適しているといえる。但し、比較実験例1の試験サンプルでは、初期の荷重の立ち上がり時の振幅が大きく、ピーク値が非常に大きくなっている。これでは、初期の脚部への衝撃が大きくなってしまう。以上のことから、評価結果は、実験例1,2、及び比較実験例3の試験サンプルを良好(「〇」)とし、比較実験例2の試験サンプルは不良(「×」)とし、比較実験例1の試験サンプルは好適でない(「△」)とした。
【0048】
吸音性の評価は、緩衝材の材料そのものの吸音性で評価を行うこととし、芯材が備えられていない比較実験例2~4の試験サンプルを用いて、JIS A 1405-2(ISO 10534-2)に準拠して垂直入射吸音率を測定した。図15には、その測定結果が示されている。評価は、一般的に吸音性が良好であると評価されている硬質ウレタンフォームと同等の吸音性能があるものを良好(「〇」)とし、硬質ウレタンフォームよりも吸音性能が劣るものを不良(「×」)とした。なお、この結果を元に、芯材が備えられている試験サンプルに対して、同じ材料の緩衝材が使用されているものを同じ結果とみなして図12に示している。
【0049】
成形性の評価は、各試験サンプルの外観形状を目視で確認した。結果は、図12に示され、緩衝材の外面に異形凹部が生じているものを不良(「×」)とし、異形凹部が生じていないものを良好(「〇」)とした。
【0050】
図12には、総合評価も示されている。総合評価は、衝撃吸収性、吸音性、成形性の評価が全て良好(「〇」)のものを、良好(「〇」)とし、衝撃吸収性、吸音性、成形性の評価のうち1つでも不良(「×」)であるものを、不良(「×」)とした。以上のことから、ティビアパッドの構成は、芯材と発泡ウレタンチップを含むチップ材の結合体からなる緩衝材とからなり、かつ緩衝材層を備えるものが良好であることが確認できた。
【0051】
[他の実施形態]
(1)上記第1実施形態において、芯材11には、複数の芯材突部20が設けられた構成であったが、芯材突部20が1つ設けられた構成であってもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、芯材突部16,20の先端側に緩衝材層31が形成されていたが、プレート部12,14の裏面側にも緩衝材層31が配置されていてもよい。
【0053】
また、芯材突部16,20の全体が緩衝材30で埋設されていてもよく、緩衝材30が、プレート部12,14の平面形状より大きくてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態の芯材突部16,20は断面が台形形状をなすブリッジ構造であったが、断面が曲線形状をなすアーチ構造であってもよい。また、芯材突部16,20のうち上壁17,22だけが曲線形状をなしていてもよい。
【0055】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0056】
10 ティビアパッド
11,11V 芯材
12,14 プレート部
15 角形開口
16,20 芯材突部
30 緩衝材
40 チップ材
50,50V 成形金型
51 上型
52,52V 下型
53 固定ベース
54 底板(底面形成部材)
54V 柱状体(底面形成部材)
60,60V 可動ベース
61 成形凹部
61A 載置面
62,62V 載置面凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15