IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マキタの特許一覧

<>
  • 特許-往復動工具 図1
  • 特許-往復動工具 図2
  • 特許-往復動工具 図3
  • 特許-往復動工具 図4
  • 特許-往復動工具 図5
  • 特許-往復動工具 図6
  • 特許-往復動工具 図7
  • 特許-往復動工具 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】往復動工具
(51)【国際特許分類】
   B23D 51/10 20060101AFI20240805BHJP
   B23D 49/16 20060101ALI20240805BHJP
   B27B 19/09 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B23D51/10
B23D49/16
B27B19/09
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020196609
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085106
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇太
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 智大
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0381586(US,A1)
【文献】米国特許第08230607(US,B2)
【文献】国際公開第2018/221105(WO,A1)
【文献】特開2002-210612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 51/08-51/10
B23D 49/00-49/16
B27B 3/00、19/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動工具であって、
ハウジングと、
前記往復動工具の前後方向を規定する第1の軸周りに、第1位置と第2位置との間で回動可能に前記ハウジングに支持された第1筒状部材であって、前記ハウジングの外部で手動操作可能な操作部と、前記第1筒状部材の径方向内側に突出する単一の第1突起とを有する第1筒状部材と、
第2の軸を有する長尺のスライダであって、ブレードを取り外し可能に装着可能な第1端部を有し、前記第2の軸に沿って概ね前記前後方向に往復動可能に前記ハウジングによって支持されたスライダと、
前記第2の軸周りに、係合位置と係合解除位置との間で回動可能に前記第1端部に連結され、且つ、前記第1筒状部材の内部に配置された第2筒状部材であって、前記第2筒状部材の径方向外側に突出する単一の第2突起を有する第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の内部に配置され、前記第2筒状部材の前記係合位置と前記係合解除位置との間の回動に応じて、前記ブレードに係合可能なロック位置と、前記ブレードと係合不能なアンロック位置との間で前記第2筒状部材の径方向に移動可能なロック部材とを備え、
前記第2の軸周りの周方向において、前記第2筒状部材の一部分は、残りの部分よりも径方向外側に突出する突出部を形成し、前記突出部は、前記ロック部材が前記アンロック位置へ移動することを許容するように構成されており、
前記第1突起は、前記操作部に対する手動操作に応じて前記第1筒状部材が前記第1位置から前記第2位置に回動する過程で、前記第2突起に係合して、前記第2筒状部材を前記係合位置から前記係合解除位置へ回動させ、且つ、前記第1筒状部材が前記第1位置にあるときには、前記第2突起に係合することなく前記第2筒状部材の回動を許容するように構成されており、
前記スライダは、前記第2の軸に沿って概ね前記前後方向に往復動する間に、前記第1の軸に直交する上下方向に揺動することで、前記ブレードにオービタル運動を行わせるように構成されており、
前記第2突起は、前記第2筒状部材のうち、前記突出部とは異なる部分に設けられており、前記第2筒状部材の位置にかかわらず、前記第2筒状部材が前記係合位置と前記係合解除位置との間で回動するのに応じて、前記第1の軸を含んで前記上下方向に延びる第1平面と重ならない範囲内で移動するように構成されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項2】
請求項に記載の往復動工具であって、
前記突出部と前記第2突起とは、前記第2筒状部材が前記係合位置と前記係合解除位置の間のどの位置にあるときでも、前記第1平面に対して互いに反対側に配置されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の往復動工具であって、
前記第2筒状部材が前記係合位置に配置されているときには、前記第2突起は、前記第1筒状部材が前記第1位置から前記第2位置に回動するときの前記第1突起の移動経路の中間部に配置されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項4】
請求項1~の何れか1つに記載の往復動工具であって、
前記操作部は、前記第1筒状部材の径方向外側に突出しており、
前記第1突起は、前記第1筒状部材の周方向において、前記操作部と概ね同じ位置に配置されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項5】
請求項に記載の往復動工具であって、
前記ハウジングは、前記第1の軸に直交する上下方向に延在し、且つ、前記操作部を前記ハウジングの外部に露出させる開口を有し、
前記操作部は、手動操作に応じて、前記開口の下端部と上端部との間で移動可能であって、
前記第2筒状部材が前記係合位置に配置されているときには、前記第2突起は、前記上下方向における前記開口の中央部に概ね対応する位置に配置されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項6】
請求項1~の何れか1つに記載の往復動工具であって、
前記第1突起は、前記スライダが前記前後方向のどの位置にあるときでも、前記第1筒状部材の前記第1位置から前記第2位置への回動に応じて、前記第2突起と係合するように構成されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項7】
往復動工具であって、
ハウジングと、
前記往復動工具の前後方向を規定する第1の軸周りに、第1位置と第2位置との間で回動可能に前記ハウジングに支持された第1筒状部材であって、前記ハウジングの外部で手動操作可能な操作部と、前記第1筒状部材の径方向内側に突出する単一の第1突起とを有する第1筒状部材と、
第2の軸を有する長尺のスライダであって、ブレードを取り外し可能に装着可能な第1端部を有し、前記第2の軸に沿って概ね前記前後方向に往復動可能に前記ハウジングによって支持されたスライダと、
前記第2の軸周りに、係合位置と係合解除位置との間で回動可能に前記第1端部に連結され、且つ、前記第1筒状部材の内部に配置された第2筒状部材であって、前記第2筒状部材の径方向外側に突出する単一の第2突起を有する第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の内部に配置され、前記第2筒状部材の前記係合位置と前記係合解除位置との間の回動に応じて、前記ブレードに係合可能なロック位置と、前記ブレードと係合不能なアンロック位置との間で前記第2筒状部材の径方向に移動可能なロック部材とを備え、
前記第2の軸周りの周方向において、前記第2筒状部材の一部分は、残りの部分よりも径方向外側に突出する突出部を形成し、前記突出部は、前記ロック部材が前記アンロック位置へ移動することを許容するように構成されており、
前記ハウジングは、前記第1の軸に直交する上下方向に延在し、且つ、前記操作部を前記ハウジングの外部に露出させる開口を有し、
前記操作部は、前記第1筒状部材の径方向外側に突出しており、手動操作に応じて、前記開口の下端部と上端部との間で移動可能であって、
前記第1突起は、前記第1筒状部材の周方向において、前記操作部と概ね同じ位置に配置されており、前記操作部に対する手動操作に応じて前記第1筒状部材が前記第1位置から前記第2位置に回動する過程で、前記第2突起に係合して、前記第2筒状部材を前記係合位置から前記係合解除位置へ回動させ、且つ、前記第1筒状部材が前記第1位置にあるときには、前記第2突起に係合することなく前記第2筒状部材の回動を許容するように構成されており、
前記第2突起は、前記第2筒状部材のうち、前記突出部とは異なる部分に設けられており、前記第2筒状部材が前記係合位置に配置されているときには、前記上下方向における前記開口の中央部に概ね対応する位置に配置されていることを特徴とする往復動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレードを往復動させるように構成された往復動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの動力によって、ブレードを往復動させることで、加工材を切断するように構成された往復動工具(例えば、レシプロソー)が知られている。一般的に、使用者は、作業に応じて、あるいは、ブレードが摩耗した場合に、往復動工具に装着されたブレードを交換する必要がある。そこで、例えば特許文献1には、特別な器具を用いることなくブレードの装着及び取り外しを行うことを可能とするクランプ機構を備えた往復動工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8230607号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のクランプ機構は、ハウジングの外部からレバーを手動操作するだけで、ブレードの装着及び取り外しを行うことを可能とする。一方で、このようなクランプ機構には、更なる改良の余地がある。
【0005】
本開示は、往復動工具のブレードの着脱構造の改良に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、ハウジングと、第1筒状部材と、スライダと、第2筒状部材と、ロック部材とを備えた往復動工具が提供される。第1筒状部材は、第1の軸周りに、第1位置と第2位置との間で回動可能にハウジングに支持されている。第1の軸は、往復動工具の前後方向を規定する。第1筒状部材は、操作部と、単一の第1突起とを有する。操作部は、ハウジングの外部で手動操作可能に構成されている。第1突起は、第1筒状部材の径方向内側に突出する。スライダは、長尺であって、第2の軸を有する。スライダは、ブレードを取り外し可能に装着可能な第1端部を有する。スライダは、第2の軸の延在方向に往復動可能にハウジングによって支持されている。第2筒状部材は、第2の軸周りに、係合位置と係合解除位置との間で回動可能に第1端部に連結されている。第2筒状部材は記第1筒状部材の内部に配置されている。第2突起は、第2筒状部材の径方向外側に突出する。ロック部材は、第2筒状部材の内部に配置されている。ロック部材は、第2筒状部材の係合位置と係合解除位置との間の回動に応じて、ブレードに係合可能なロック位置と、ブレードと係合不能なアンロック位置との間で第2筒状部材の径方向に移動可能である。
【0007】
第2の軸周りの周方向において、第2筒状部材の一部分は、残りの部分よりも径方向外側に突出する突出部を形成している。突出部は、ロック部材がアンロック位置へ移動することを許容するように構成されている。第1突起は、操作部に対する手動操作に応じて第1筒状部材が第1位置から前記第2位置に回動する過程で、第2突起に係合して、第2筒状部材を係合位置から前記係合解除位置へ回動させるように構成されている。また、第1突起は、第1筒状部材が第1位置にあるときには、第2突起に係合することなく第2筒状部材の回動を許容するように構成されている。第2突起は、第2筒状部材のうち、突出部とは異なる部分に設けられている。
【0008】
本態様の往復動工具では、操作部に対する手動操作に応じて第1筒状部材が第1位置から第2位置へ回動すると、第2筒状部材が係合位置から係合解除位置へ回動し、ロック部材がアンロック位置へ移動可能となる。第2筒状部材には、ロック部材のアンロック位置への移動を許容する突出部が設けられている。また、第1筒状部材の第1突起に係合可能な第2突起は、第2筒状部材のうち、突出部とは異なる部分に設けられている。このような構成により、第1突起と係合する第2突起の突出長さを十分に確保しつつ、第2突起を含む第2筒状部材全体が径方向に大型化するのを抑制することができる。また、第1突起及び第2突起の数を夫々1つのみとすることで、夫々に最適な位置を選定することができ、また、第1筒状部材及び第2筒状部材の構成を簡素化することができる。
【0009】
本開示の一態様において、スライダは、第2の軸に沿って概ね前後方向に往復動する間に、第1の軸に直交する上下方向に揺動することで、ブレードにオービタル運動を行わせるように構成されていてもよい。なお、オービタル運動とは、典型的には、楕円状の軌道経路に沿った移動をいう。第2突起は、第2筒状部材の位置にかかわらず、第2筒状部材が係合位置と係合解除位置との間で回動するのに応じて、第1の軸を含んで上下方向に延びる第1平面と重ならない範囲内で移動するように構成されていてもよい。第1平面は、第1の軸を含んで上下方向に延びる平面である。
【0010】
本態様によれば、ブレードのオービタル運動により、切断効率を高めることができる。一方、スライダの往復動及び揺動に応じて、第1の軸に対する第2の軸の位置は上下方向において変化する。つまり、第1筒状部材と第2筒状部材の位置関係も上下方向に変化しうる。このため、第1突起と第2突起が夫々複数設けられている場合、第1筒状部材と第2筒状部材との上下方向のズレによって、複数の第1突起の少なくとも1つと複数の第2突起の少なくとも1つの係合が不適切になる可能性がある。また、第2突起が、第1平面と重なる位置、つまり、第1の軸の真上又は真下に配置されている場合、他の位置にある場合と比べて、第1突起と第2突起との位置関係が大きく変化しやすい。本態様によれば、第1突起及び第2突起の数が夫々1つのみであり、また、第1筒状部材に対する第2筒状部材の位置、及び、第2筒状部材の回動位置にかかわらず、第2突起が第1平面と重ならないため、第1突起と第2突起の係合不良が生じる可能性を低減することができる。
【0011】
本開示の一態様において、突出部と第2突起とは、第2筒状部材が係合位置と前記係合解除位置の間のどの位置にあるときにも第1平面に対して互いに反対側に配置されていてもよい。本態様によれば、突出部と第2突起の合理的な配置が実現される。
【0012】
本開示の一態様において、第2筒状部材が係合位置に配置されているときには、第2突起は、第1筒状部材が第1位置から第2位置に回動するときの第1突起の移動経路の中間部に配置されていてもよい。言い換えると、第1突起は、第1筒状部材が第1位置から第2位置に回動する過程の中間段階で、第2突起に係合するように構成されていてもよい。本態様によれば、第1筒状部材が第1位置にあるときに、第1突起が第2突起に干渉する可能性を低減することができる。なお、本態様でいう「中間部」は、移動経路の厳密な中間位置に限定されるものではなく、中間位置の前及び後のある程度の範囲を含みうる。
【0013】
本開示の一態様において、操作部は、第1筒状部材の径方向外側に突出していてもよい。第1突起は、第1筒状部材の周方向において、操作部と概ね同じ位置に配置されていてもよい。本態様によれば、操作部と第1突起の強度を確保しやすい合理的な配置が実現される。
【0014】
本開示の一態様において、ハウジングは、開口を有してもよい。開口は、第1の軸に直交する上下方向に延在し、且つ、操作部をハウジングの外部に露出させてもよい。操作部は、手動操作に応じて、開口の下端部と上端部との間で移動可能であってもよい。第2筒状部材が係合位置に配置されているときには、第2突起は、上下方向における開口の中央部に対応する位置に配置されていてもよい。本態様によれば、操作部が手動操作される前に第1突起が第2突起に干渉する可能性を低減することができる。
【0015】
本開示の一態様において、第1突起は、スライダが前後方向のどの位置にあるときでも、第1筒状部材の第1位置から第2位置への回動に応じて、第2突起と係合するように構成されていてもよい。本態様によれば、使用者は、第2筒状部材の前後方向の位置にかかわらず、操作部を介して第1筒状部材を第1位置から第2位置へ回動させるだけで、第2筒状部材を係合位置から係合解除位置へ回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】クランク板が第1回動位置にあるときのレシプロソーの断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】スライダ、クランプ機構、リリース機構及びブレードの分解斜視図である。
図4図2のIV-IV線における断面図に対応する断面図である(但し、スライダが移動可能範囲内における最後方位置に配置された状態を示す)。
図5図2に対応する断面図であって、クランク板が第2回動位置にある状態を示す図である。
図6図4のVI-VI線における断面図である。
図7図4に対応する断面図であって、ブレードが装着された状態を示す図である。
図8図7のVIII-VIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係るレシプロソー1について説明する。図1に示すレシプロソー1は、手持ち式の往復動工具の一例である。レシプロソー1は、取り外し可能に装着された薄板状のブレード91を往復動することで、被加工材(木材、プラスチック材、鋼材等)を切断するように構成されている。なお、レシプロソーは、セーバーソーとも称されうる。
【0018】
まず、レシプロソー1の概略構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、レシプロソー1の外郭は、主として、本体ハウジング11と、ハンドル18とによって形成されている。
【0020】
本体ハウジング11は、所定の長軸A1に沿って延在する長尺の中空体である。本体ハウジング11には、モータ31と、ブレード91を装着可能なスライダ5と、スライダ5の駆動機構4等が収容されている。本体ハウジング11の長軸A1の延在方向(以下、単に長軸方向ともいう)における一端部には、開口111が設けられている。開口111は、長軸A1上に配置されており、スライダ5に装着されたブレード91は、開口111を通じて本体ハウジング11の外側に延びる。開口111の近傍には、作業時に被加工材に当接されるシュー113が、取り外し可能に装着されている。
【0021】
ハンドル18は、略C字状に形成された中空体である。ハンドル18は、本体ハウジング11の長軸方向における他端部に連結されて、本体ハウジング11の後端部とともにループを形成している。ハンドル18は、使用者によって把持される把持部181を含む。把持部181は、本体ハウジング11の長軸A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に延在する。把持部181には、モータ31の起動用のトリガ182が設けられている。把持部181内には、スイッチ183が収容されている。また、ハンドル18には、バッテリハウジング187が設けられている。バッテリハウジング187には、レシプロソー1の電源である充電式のバッテリ(バッテリパックともいう)93を着脱可能である。なお、詳細な図示及び説明は省略するが、バッテリハウジング187は、ハンドル18とは別個の部材であって、弾性体を介してハンドル18に連結されている。但し、バッテリハウジング187に代えて、ハンドル18の下端部に、バッテリ93を着脱可能なバッテリ装着部が設けられていてもよい。また、ハンドル18内には、コントローラ30が収容されている。
【0022】
使用者がトリガ182を押圧操作すると、スイッチ183がオンとされ、モータ31が通電されて、駆動機構4によって、ブレード91が概ね本体ハウジング11の長軸方向に往復動される。
【0023】
以下、レシプロソー1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、本体ハウジング11の長軸A1の延在方向を、レシプロソー1の前後方向と規定する。前後方向において、開口111が設けられている側をレシプロソー1の前側と規定し、反対側(ハンドル18側)を後側と規定する。長軸A1に直交し、且つ、スライダ5に装着されたブレード91の板面911に略平行な方向(あるいは、長軸A1に直交し、且つ、把持部181の延在方向に概ね対応する方向)を、レシプロソー1の上下方向と規定する。上下方向において、通常使用時にブレード91の刃先913が向く方向を下方向と規定し、反対方向を上方向と規定する。更に、前後方向及び上下方向に直交する方向を、レシプロソー1の左右方向と規定する。
【0024】
まず、本体ハウジング11の内部構造について説明する。
【0025】
図1に示すように、本体ハウジング11の内部には、主に、モータ31と、駆動機構4と、支持体13と、スライダ5と、オービタル機構6と、クランプ機構7と、リリース機構8とが収容されている。
【0026】
モータ31は、本体ハウジング11の後端部に収容されている。本実施形態のモータ31は、ブラシレスDCモータである。モータ31は、ステータ及びロータを含む本体部311と、ロータと一体的に回転可能なモータシャフト315とを有する。モータ31は、モータシャフト315の回転軸が本体ハウジング11の長軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在するように配置されている。モータシャフト315の前端部には、ピニオン316が設けられている。ピニオン316は、ベベルギヤである。ピニオン316は、モータシャフト315と一体的に形成されており、モータシャフト315と共に回転軸周りに回転する。
【0027】
なお、本実施形態では、モータ31の駆動は、コントローラ30によって制御される。詳細な図示は省略するが、コントローラ30は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータを備えている。コントローラ30は、スイッチ183がオンとされると、モータ31を駆動する。
【0028】
本実施形態では、駆動機構4及びスライダ5は、本体ハウジング11内で、モータ31の前側に収容されている。本実施形態では、駆動機構4とスライダ5は、ギヤハウジング12に収容されている。なお、ギヤハウジング12は、本体ハウジング11内に固定状に保持されている。このことから、ギヤハウジング12は、本体ハウジング11と一体的な単一のハウジングとしてとらえることもできる。ギヤハウジング12は、全体としては長尺状の中空体であって、前端に開口121を有する。スライダ5は、ギヤハウジング12内で、支持体13によって支持されている。スライダ5に装着されたブレード91は、開口121を通じてギヤハウジング12の外側に延びる。
【0029】
以下、駆動機構4について説明する。駆動機構4は、モータシャフト315の回転動力をスライダ5に伝達し、スライダ5を駆動するように構成されている。図2に示すように、本実施形態の駆動機構4は、中間シャフト41と、ベベルギヤ43と、クランク板45とを含む。
【0030】
中間シャフト41は、モータシャフト315の前端部よりも前側で、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)の下端部内に配置されている。中間シャフト41は、2つの軸受によって回転可能に支持されている。中間シャフト41の回転軸は、上下方向に延在する。
【0031】
ベベルギヤ43は、中間シャフト41に同軸状に取り付けられており、中間シャフト41の回転軸周りに、中間シャフト41と一体的に回転可能である。ベベルギヤ43は、モータシャフト315の下側に配置されており、ピニオン316に噛合している。よって、ベベルギヤ43は、モータ31の駆動に伴い、中間シャフト41と共に回転する。
【0032】
クランク板45は、平面視円形の板状部材であって、中間シャフト41と同軸状に配置され、中間シャフト41の上側に固定されている。よって、クランク板45は、回転軸周りに、中間シャフト41と一体的に回転可能である。クランク板45は、クランクピン451を有する。クランクピン451は、回転軸に対して偏心した位置でクランク板45に固定され、クランク板45の上面から上方に突出している。クランクピン451の周囲には、概ね円筒状の連結部材455が配置されている。連結部材455は、クランクピン451に対し、クランクピン451の軸周りに回転可能である。
【0033】
以下、支持体13について説明する。支持体13は、長尺部材であって、ギヤハウジング12内で概ね前後方向に延在するように支持されている。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、支持体13は、上壁と、左壁と、右壁とを有する。
【0034】
支持体13の前端部と後端部には、夫々、滑り軸受(プレーンベアリングともいう)131、132が固定されている。滑り軸受131、132は同軸状に配置されており、滑り軸受131、132の軸は、支持体13の長軸を規定する。スライダ5は、滑り軸受131、132に同軸状に挿通されて、滑り軸受131、132によって、支持体13の長軸に沿って摺動可能に支持されている。つまり、支持体13の長軸(滑り軸受131、132の軸)は、スライダ5の駆動軸を規定する。
【0035】
また、支持体13は、ギヤハウジング12に対して上下方向に揺動可能に支持されている。より詳細には、支持体13は、ピン141を介してギヤハウジング12に連結されている。ピン141は、ギヤハウジング12内で左右方向に延在し、両端部がギヤハウジング12に支持されている。ピン141は、支持体13の左壁及び右壁の下前端部に夫々設けられた支持孔130に挿通されている。このような構成により、支持体13は、ピン141を支点として、ピン141の軸周りに上下方向に揺動可能である。
【0036】
以下、スライダ5について説明する。図2及び図3に示すように、スライダ5は、全体としては、直線状に延びる長尺の部材である。スライダ5は、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)内に概ね前後方向に延在するように配置されている。本実施形態では、スライダ5は、本体51と、ピン連結部55とを含む。
【0037】
本体51は、概ね均一の径を有する円筒状に形成されており、長軸A2を有する。本体51は、支持体13の滑り軸受131、132によって支持され、概ね前後方向に延在する。なお、左右方向においては、長軸A2は、本体ハウジング11の長軸A1と同じ位置にある。つまり、上又は下からみると、長軸A1と長軸A2は重なる位置にある(図4参照)。本体51の前端部は、ブレード91を装着可能に構成されている。より詳細には、本体51の前端部には、ブレード91を取り外し可能に受け入れ可能なスロット520が設けられている。スロット520は、本体51の上端から下端まで上下方向に延び、且つ、本体51の前端に開口している。以下、本体51の前端部を、ブレード装着部52ともいう。
【0038】
図4に示すように、ブレード装着部52には、第1の孔521と、第2の孔522とが形成されている。第1の孔521は、ブレード装着部52の左側面からスロット520まで、スロット520に直交するように、本体51の径方向に延びている。第1の孔521は、円形の断面を有する段付き孔である。第1の孔521のうち、本体51の長軸A2(駆動軸)に近い側の部分(以下、小径部という)の径は、開口側(左側)の部分(以下、大径部という)の径よりも小さい。第2の孔522は、ブレード装着部52の右側面からスロット520まで、スロット520に直交するように、本体51の径方向に延びている。第2の孔522は、第1の孔521よりも小径の孔である。第1の孔521と第2の孔522とは、一直線上に配置されている。
【0039】
更に、本体51のうち、スロット520の左端を規定する壁面には、溝523が形成されている。溝523は、スロット520の上下方向の中央部で、スロット520の前端から後端まで、本体51の長軸と平行に延在する。溝523は、断面半円状の溝である。
【0040】
ブレード装着部52には、クランプ機構7が動作可能に連結されている。クランプ機構7は、スロット520に挿入されたブレード91をスライダ5に固定するように構成されている。上述の第1の孔521、第2の孔522、溝523はすべて、クランプ機構7の構成部品を保持するために設けられている。なお、クランプ機構7については、後で詳述する。
【0041】
図2及び図3に示すように、ピン連結部55は、本体51の前後方向における中央部よりもやや後側の部分に、本体51と一体的に設けられている。ピン連結部55は、本体51の軸(つまり、駆動軸)に直交するように、左右方向に延在する。ピン連結部55の左右方向の幅は、本体51の径よりも大きく、ピン連結部55の左端部及び右端部は、夫々、本体51よりも左方及び右方に突出している。ピン連結部55の下部には、上方に凹むガイド凹部551が形成されている。ガイド凹部551は、ピン連結部55の左右方向の全長に亘って延びている。
【0042】
ピン連結部55は、クランクピン451と動作可能に連結されている。より詳細には、ガイド凹部551内には、連結部材455が装着された状態のクランクピン451の上部が挿入されている。ガイド凹部551の前後方向の幅は、連結部材455の最大径と概ね等しい。一方、ガイド凹部551の左右方向の長さは、回転軸を中心とする連結部材455の周回軌道の径よりも若干大きく設定されている。
【0043】
このような構成により、クランクピン451は、ガイド凹部551に対する前後方向の移動が規制された状態で、ガイド凹部551内を左右方向に移動可能である。クランク板45が中間シャフト41と共に回転すると、クランクピン451は、回転軸を中心として周回する。このとき、クランクピン451の周回運動における前後方向成分のみがピン連結部55に伝達され、スライダ5は、支持体13に対し、駆動軸沿って概ね前後方向に往復動される。このように、クランクピン451を有するクランク板45、及び、スライダ5のピン連結部55は、モータシャフト315の回転運動をスライダ5の直線状の往復動に変換する運動変換機構を構成している。
【0044】
以下、オービタル機構6について説明する。オービタル機構6とは、スライダ5の往復動中にスライダ5を上下方向に揺動させることで、ブレード91を楕円状の軌道経路に沿って移動させるように構成された機構である。なお、以下では、ブレード91の楕円状の軌道経路に沿った移動を、オービタル運動又はオービタル動作ともいう。
【0045】
本実施形態では、オービタル機構6は、スライダ5の前後方向の移動に伴って支持体13を上下方向に揺動させることで、ブレード91のオービタル運動を生じさせる。図2及び図5に示すように、本実施形態では、オービタル機構6は、カム部61と、付勢部材63とを含む。
【0046】
カム部61は、上述のクランク板45に設けられている。カム部61は、クランク板45の上面から上方に突出するように、クランク板45の外縁に沿って設けられた円環状の部分である。クランク板45の上面からのカム部61の突出量(つまり、上下方向におけるカム部61の厚み)は、周方向において変化する。より詳細には、カム部61の上端面(カム面)は、図2に示すように、カム部61のうち最も厚い部分が最後方位置にあるとき、中間シャフト41の回転軸に直交する仮想的な平面に対して前方に傾斜するように構成されている。
【0047】
以下、図2に示すように、カム部61のうち最も厚い部分が最後方位置にあるときのクランク板45の回動位置を、第1回動位置という。また、図5に示すように、カム部61のうち最も薄い部分が最後方位置にあるときのクランク板45の回動位置を、第2回動位置という。なお、クランク板45が第1回動位置にあるとき、スライダ5は、移動可能範囲における最後方位置よりも若干前方に位置する。また、クランク板45が第2回動位置にあるとき、スライダ5は、移動可能範囲における最前方位置よりも若干後方に位置する。
【0048】
付勢部材63は、ギヤハウジング12の上壁と、支持体13の上壁との間に配置されている。本実施形態では、付勢部材63には圧縮コイルバネが採用されている。付勢部材63は、ギヤハウジング12の後端部と支持体13の後端部の間に圧縮状態で配置されており、支持体13の後端部を、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)に対して常に下方に付勢している。つまり、付勢部材63は、支持体13の前端部(ブレード91)が上方に揺動する方向に支持体13を付勢している。なお、詳細な図示は省略するが、本実施形態では、付勢部材63は、支持体13の左端部と右端部に対応して、2つ設けられている。
【0049】
また、支持体13に取り付けられた後側の滑り軸受132の前端部の外周には、軸受145が嵌め込まれている。なお、軸受145は玉軸受であって、軸受145の内輪が滑り軸受132に圧入固定されている。軸受145の外輪は、支持体13に対して駆動軸周りに回転可能である。上下方向において、軸受145の真下には、クランク板45の後端部(カム部61の一部)が配置されている。上述のように、支持体13の後端部は、付勢部材63によって下方(つまり、軸受145がカム部61に近づく方向)に付勢されている。このため、軸受145は、クランク板45のカム部61に上方から当接した状態で保持される。
【0050】
軸受145がカム部61に当接する状態でモータ31が駆動されると、クランク板45の回転に伴って、軸受145は、カム部61の上端面(カム面)上を回転しながら移動する。クランク板45の回転に伴って、カム部61のうち、軸受145に当接する部分の厚みは変化する。このため、軸受145は上下方向に移動する。より詳細には、図2に示すように、クランク板45が第1回動位置に配置されると、軸受145は、カム部61のうち最も厚い部分に当接する。このとき、軸受145は、カム部61に当接して上下動する範囲内において最上方位置に配置される。一方、図5に示すように、クランク板45が第2回動位置まで回転されると、軸受145は、カム部61のうち最も薄い部分に当接する。このとき、軸受145は、カム部61に当接して上下動する範囲内において最下方位置に配置される。
【0051】
このような構成により、支持体13は、クランク板45の回転(つまり、スライダ5の往復動)に応じて、ピン141を支点として、上下方向に揺動することができる。ブレード91は、前方へ移動しつつ上方に揺動し、後方へ移動しつつ下方に揺動するオービタル運動を行う。よって、本体ハウジング11の長軸A1とスライダ5(本体51)の長軸A2との上下方向における位置関係は、スライダ5の往復動に伴って変化する。
【0052】
以下、クランプ機構7について説明する。
【0053】
図2図4に示すように、クランプ機構7は、スライダ5の前端部(ブレード装着部52)に、動作可能に連結されている。本実施形態では、クランプ機構7は、主に、ロックピン71と、ガイドスリーブ72と、ドライビングスリーブ73と、連結スリーブ74と、付勢バネ75とを含む。
【0054】
図3図4及び図6に示すように、ロックピン71は、全体としては円柱状の部材である。ロックピン71の軸方向の2つの端部以外の部分は、均一の径を有する。ロックピン71の軸方向の一端部は、先端に向けて細くなるテーパ状に形成されている。ロックピン71の軸方向の他端部は、他の部分よりも大径に形成されている。以下、ロックピン71のテーパ状の端部を先端部711、大径の端部をヘッド部712という。先端部711は、ブレード91の基端部915(ブレード装着部52に装着される端部)に形成された係合孔916に係合可能に構成されている。ヘッド部712の端面は、中央部が若干膨らむ湾曲面とされている。本実施形態では、ロックピン71は、スライダ5の本体51と、本体51に取り付けられたガイドスリーブ72とによって、本体51に対して径方向に移動可能に保持されている。
【0055】
ガイドスリーブ72は、円筒状部材であって、ブレード装着部52の周囲(径方向外側)に配置されている。より詳細には、ガイドスリーブ72は、ブレード装着部52の径と概ね等しい内径を有する。ガイドスリーブ72は、ブレード装着部52に同軸状に嵌め込まれ、ブレード装着部52に固定されている。なお、ブレード装着部52の先端は、ガイドスリーブ72の前端よりも前方に延びている。
【0056】
図4に示すように、ガイドスリーブ72は、第1の孔721と、第2の孔722とを有する。第1の孔721と第2の孔722とは、ガイドスリーブ72の軸を挟んで対向する位置に形成されている。つまり、第1の孔721と第2の孔722とは、ガイドスリーブ72の径方向に延在する一直線上に配置されている。第1の孔721の径は、ブレード装着部52の第1の孔521の径と略等しいか、あるいは僅かに大きい。第2の孔722の径は、ブレード装着部52の第2の孔522の径と略等しい。
【0057】
ガイドスリーブ72は、第2の孔722とブレード装着部52の第2の孔522とに嵌め込まれたピン723によって位置決めされ、スライダ5に対して移動不能な状態で、ブレード装着部52に連結されている。ガイドスリーブ72の第1の孔721は、ブレード装着部52の第1の孔521の径方向外側に配置され、第1の孔521と連通している。以下、第1の孔521及び第1の孔721が連通して形成される孔を、ピン保持孔70ともいう。
【0058】
ロックピン71は、ヘッド部712が径方向外側に配置される向きで、ピン保持孔70に挿入され、保持されている。なお、ロックピン71の径は、ブレード装着部52の第1の孔521の小径部の径と略同一に設定されている。よって、ロックピン71は、小径部に沿って、ピン保持孔70内を径方向に摺動可能である。ロックピン71の長さは、少なくとも、ロックピン71の先端(先端部711の先端)がスロット520から退避したとき(径方向外側に配置されたとき)に、ヘッド部712の端面がガイドスリーブ72の外周面から径方向外側に突出するように設定されている。
【0059】
また、ピン保持孔70には、付勢バネ714が配置されている。付勢バネ714は、圧縮コイルバネである。付勢バネ714は、ロックピン71に外装されており、付勢バネ714の2つの端部は、夫々、第1の孔521のショルダ部(小径部と大径部との段差部)と、ロックピン71のヘッド部712に当接している。付勢バネ714は、ロックピン71を、径方向外側(つまり、スロット520から離れる方向)に付勢する。
【0060】
図3図4及び図6に示すように、ドライビングスリーブ73は、筒状部材であって、ガイドスリーブ72及びロックピン71の周囲(径方向外側)に、スライダ5の本体51と同軸状に配置されている。ドライビングスリーブ73は、筒壁730と、1つの突起735とを有する。
【0061】
筒壁730は、ガイドスリーブ72及びロックピン71を取り巻く壁部である。筒壁730は、全周に亘って概ね均一の厚みを有する。筒壁730の大部分(周方向において概ね四分の三を占める部分)は、本体51の長軸A2(駆動軸)を中心とする円筒の一部に相当する(長軸A2を中心とする円の円周の一部に沿って配置された)壁部である。以下、この壁部を、ベース部731という。
【0062】
一方、筒壁730のうち残りの一部(周方向において概ね四分の一を占める部分)は、長軸A2を中心とする円の円周から径方向外側にある。つまり、筒壁730のうち、周方向の一部は、他の部分(ベース部731)よりも径方向外側に突出している。この突出部分の内周面は、ロックピン71のヘッド部712の端面と協働して、ドライビングスリーブ73の回動に応じてロックピン71を径方向に移動させるように構成されている。よって、以下では、筒壁730のうち、この突出部分をカム部732といい、カム部732の内周面をカム面733ともいう。カム部732は、ドライビングスリーブ73の軸(つまり、本体51の長軸A2)とカム面733との間の距離(半径)が、前方からみて反時計回り方向(図6の矢印D1方向)に漸増するように構成されている。
【0063】
突起735は、筒壁730のうち、カム部732とは異なる部分(つまり、ベース部731)から径方向外側に突出している。なお、ドライビングスリーブ73の軸(長軸A2)から突起735の先端までの距離は、ドライビングスリーブ73の軸(長軸A2)からカム部732のうち最も径方向外側に突出している部分の外面までの距離よりも長い。つまり、ドライビングスリーブ73の軸(長軸A2)を基準としたときの突起735の突出長さは、カム部732の最大突出長さよりも大きい。本実施形態では、突起735は、ドライビングスリーブ73の前端から後端まで、前後方向に直線状に延びている。
【0064】
本実施形態では、ドライビングスリーブ73は、連結スリーブ74及び付勢バネ75を介して本体51に連結されている。
【0065】
連結スリーブ74は、ドライビングスリーブ73を本体51に動作可能に連結するように構成されている。連結スリーブ74は、円筒状部材であって、ブレード装着部52の周囲(径方向外側)に、スライダ5の本体51と同軸状に配置されている。より詳細には、連結スリーブ74は、有底の円筒状部材であって、ブレード装着部52の径と略同径の貫通孔を有する底壁と、底壁の外縁から突出する周壁とを有する。連結スリーブ74は、底壁が後側に配置され、周壁が前方へ突出する向きで、ガイドスリーブ72の後側でブレード装着部52に嵌め込まれている。ブレード装着部52と周壁との間に形成される円筒状の空間には、ガイドスリーブ72の後端部が配置されている。
【0066】
詳細な図示は省略するが、連結スリーブ74の前端部の外周部には、矩形状の凹部が複数形成されている。一方、ドライビングスリーブ73の後端部の内周部には、この凹部に整合する形状の凸部が複数設けられている。ドライビングスリーブ73は、凸部が連結スリーブ74の凹部と係合するように、前方から連結スリーブ74に嵌め込まれている。ガイドスリーブ72の前端部(第1の孔721よりも前方の部分)は、ドライビングスリーブ73の前端よりも前方に突出している。ドライビングスリーブ73は、ドライビングスリーブ73の前側でガイドスリーブ72に固定された止め輪737によって、前後方向に位置決めされている。このような連結構造によって、ドライビングスリーブ73と連結スリーブ74とは、本体51の長軸A2周りの回転に関して一体化されている。
【0067】
図2図3及び図4に示すように、付勢バネ75は、捩りコイルバネである。付勢バネ75の一端部は、コイルの直径方向に延在している。この一端部は、ブレード装着部52のスロット520に嵌め込まれて係止され、スロット520の後端を規定する壁面に当接する位置に配置されている。付勢バネ75の他端部は、連結スリーブ74に設けられた係止孔に嵌め込まれ、係止されている。付勢バネ75は、連結スリーブ74と、連結スリーブ74に一体化されたドライビングスリーブ73とを、スライダ5、ガイドスリーブ72及びロックピン71に対して、前方からみて反時計回り方向(図6の矢印D1方向)に付勢している。
【0068】
つまり、付勢バネ75は、ドライビングスリーブ73を、ロックピン71のヘッド部712に対して、カム面733のうち、長軸A2との距離がより短い部分が当接する方向に回動付勢している。このため、カム面733は、ヘッド部712の端面(湾曲面)に当接して、ロックピン71を径方向内側(つまり、ロックピン71の先端部711がスロット520内に突出する方向、ロックピン71がブレード91に係合する方向)に押圧する。よって、以下では、前方からみて反時計回り方向を、係合方向ともいう。
【0069】
本実施形態では、図7及び図8に示すように、ロックピン71は、スロット520内に挿入されたブレード91の係合孔916に先端部711が係合する位置(つまり、スロット520内に先端部711が突出する位置)でブレード91と係合する。このとき、図8に示すように、カム面733のうち、長軸A2からの距離がより短い端部(つまり、カム面733のうち、前方からみて時計回り方向側にある端部)がヘッド部712の端面に当接する位置にドライビングスリーブ73が配置される。以下、このときのロックピン71の位置(ブレード91に係合可能なロックピン71の位置)をロック位置という。また、ロックピン71をロック位置に配置させるドライビングスリーブ73の位置を、係合位置という。
【0070】
一方、図6に示すように、カム面733のうち、駆動軸からの距離がより長い端部(つまり、カム面733のうち、前方からみて反時計回り方向側にある端部)がヘッド部712の端面に当接する位置にドライビングスリーブ73が配置されると、ロックピン71は、スロット520から退避可能となる。このとき、ロックピン71の先端部711は、スロット520の径方向外側(左方)に配置される。よって、ロックピン71は、ブレード91と係合不能である。以下、このときのロックピン71の位置(ブレード91に係合不能なロックピン71の位置)をアンロック位置という。また、ロックピン71がアンロック位置まで径方向外側に移動する(スロット520から退避する)ことを許容するドライビングスリーブ73の位置を、係合解除位置という。
【0071】
図3図4及び図6に示すように、本実施形態では、クランプ機構7は、更に、プッシュプレート771と、付勢バネ775とを備えている。
【0072】
プッシュプレート771は、溝523に沿って前後方向に摺動可能な状態で、スロット520及び溝523に係合している。プッシュプレート771の後半部分は、溝523に係合するように、断面略D字状に形成されている。一方、プッシュプレート771の前半部分は、左右方向において、スロット520と概ね同じ幅を有する直方体状に形成されており、スロット520内にのみ配置されている。付勢バネ775は、圧縮コイルバネである。付勢バネ775は、プッシュプレート771の後側に配置されている。付勢バネ775の一端部は、スロット520の後端部に配置された付勢バネ75の一端部に当接し、他端部はプッシュプレート771の後端に当接している。詳細は後述するが、プッシュプレート771は、ロックピン71の移動に応じて前後方向に移動する。
【0073】
以下、リリース機構8について説明する。リリース機構8は、クランプ機構7によるブレード91のクランプ(固定)を解除するように構成されている。図3図4及び図6に示すように、本実施形態のリリース機構8は、リリースドラム81と、付勢バネ85とを含む。
【0074】
リリースドラム81は、円筒状部材であって、クランプ機構7の周囲に配置されている。本実施形態では、リリースドラム81は、筒壁810と、突起811と、レバー83とを含む。
【0075】
筒壁810は、概ね均一径を有する円筒状の壁部である。筒壁810は、ギヤハウジング12の前端部内(開口121からギヤハウジング12内に延びる空隙)に、筒壁810の軸と本体ハウジング11の長軸A1とが一致するように配置され、ギヤハウジング12によって、長軸A1周りに回動可能に支持されている。つまり、本体ハウジング11の長軸A1は、リリースドラム81の回動軸である。なお、詳細な図示は省略するが、筒壁810(リリースドラム81)の軸方向(前後方向)及び径方向の移動は、ギヤハウジング12の内部に設けられたリブによって規制されている。筒壁810の前後方向の長さ及び配置は、スライダ5が最後方位置にあるときにも、スライダ5が最前方位置にあるときにも、筒壁810がドライビングスリーブ73の周囲にあるように設定されている。つまり、筒壁810の前後方向の長さ及び配置は、ドライビングスリーブ73の前後方向の移動可能範囲をすべてカバーするように設定されている。
【0076】
突起811は、筒壁810の内周面から径方向内側に突出している。突起811は、ドライビングスリーブ73の突起735に係合(当接)可能に構成されている。詳細は後述するが、突起811は、リリースドラム81の回動に応じて、突起735を介してドライビングスリーブ73を回動させる。本実施形態では、突起811は、径方向において、ドライビングスリーブ73の筒壁730の外周面とリリースドラム81の内周面との概ね中間の位置まで延びている。一方、突起735は、ドライビングスリーブ73の筒壁730の外周面と筒壁810の内周面との中間位置よりも径方向外側まで延びている。つまり、筒壁730の外周面からの突起735の突出長さの方が、筒壁810の内周面からの突起811の突出長さよりも大きい。
【0077】
また、突起811は、筒壁810の前端から後端まで、筒壁810(リリースドラム81)の軸(長軸A1)に平行に(前後方向に)、直線状に延びている。上述のように、ドライビングスリーブ73は、スライダ5の往復動に応じて概ね前後方向に移動する。これに対し、筒壁810の全長に亘って突起811が設けられることで、ドライビングスリーブ73の前後方向の位置にかかわらず、突起811と突起735との係合が可能となる。なお、突起811は、ドライビングスリーブ73が移動可能範囲内でどんな位置にあるときでも突起735と係合可能な長さを有する限り、筒壁810の前後方向の全長より短くてもよい。
【0078】
レバー83は、使用者による手動操作が可能に構成されている。レバー83は、筒壁810の外周面から径方向外側に突出している。本実施形態では、レバー83は、矩形板状に形成されているが、他のいかなる形状を有してもよい。また、レバー83は、筒壁810と一体的に形成されているが、筒壁810とは別個に形成されて、筒壁810に連結されていてもよい。本実施形態では、筒壁810の周方向において、レバー83と突起811とは、概ね同じ位置にある。言い換えると、レバー83の一部及び突起811の一部は、筒壁810の径方向に延びる一直線上にある。これにより、レバー83と突起811の強度を確保しやすい合理的な配置が実現されている。
【0079】
本体ハウジング11の前端部の右壁及びギヤハウジング12の前端部の右壁には、夫々、レバー83を挿通可能な開口が形成されている。本体ハウジング11の開口及びギヤハウジング12の開口は、互いに連通して、レバー83を外部に露出させる開口(以下、レバー挿通孔115という)を形成している。レバー挿通孔115は、上下方向に長い略矩形状の開口である。レバー挿通孔115の前後方向の長さは、レバー83の前後方向の長さより僅かに大きい。レバー83の一部は、レバー挿通孔115から、本体ハウジング11の右方に突出している。よって、使用者は、本体ハウジング11の外部で容易にレバー83を操作することができる。レバー83は、レバー挿通孔115の下端部と、レバー挿通孔115の上端部との間で移動可能である。
【0080】
付勢バネ85は、引っ張りコイルバネである。詳細な図示は省略するが、付勢バネ85の一端部は、リリースドラム81の外周面に設けられた係止部813に係止されており、他端部は、ギヤハウジング12に係止されている。
【0081】
リリースドラム81は、付勢バネ85によって、前方からみて反時計回り方向(図6の矢印D1方向)に付勢され、常時には、レバー83がレバー挿通孔115の下端に当接する位置(図6に点線で示す位置)で保持されている。以下、このときのリリースドラム81及びレバー83の位置を、初期位置という。レバー83が、使用者による手動操作に応じて上方に移動されると、リリースドラム81は、付勢バネ85の付勢力に抗して、前方からみて時計回り(図6の矢印D2方向)に回動する。
【0082】
以下、クランプ機構7及びリリース機構8の動作について説明する。
【0083】
まず、クランプ機構7によってブレード91がスライダ5に固定されている状態について説明する。
【0084】
図7及び図8に示すように、クランプ機構7によってブレード91がスライダ5に固定されている状態では、上述のように、ロックピン71は、ロック位置でブレード91に係合し、ドライビングスリーブ73が係合位置でロックピン71をブレード91に押し付けている。プッシュプレート771は、ブレード91の後端に当接する位置で保持されている。リリースドラム81及びレバー83は、レバー83がレバー挿通孔115の下端に当接する初期位置で保持されている。
【0085】
なお、本実施形態では、図7及び図8に示すように、スライダ5が最後方位置に配置されているときには、本体ハウジング11の長軸A1に直交し、且つ、ロックピン71の軸を含む平面上において、本体ハウジング11の長軸A1と本体51の長軸A2とは概ね一致するか、あるいは僅かにずれた位置にある。この位置では、ドライビングスリーブ73の突起735は、ロックピン71の軸に沿って左右方向に延びる直線の近傍(詳細には、直線の僅かに上方)に配置されている。つまり、突起735とロックピン71とは、概ね、左右方向に延びる一直線上にある。また、突起735は、上下方向において、レバー挿通孔115の概ね中央、つまり、レバー83及び突起811の上下方向の可動範囲の概ね中央に対応する位置に配置されている。突起811は、突起735とは係合せず、ドライビングスリーブ73の突起735から下方に離間した位置に配置されている。
【0086】
ブレード91をスライダ5から取り外すときのクランプ機構7及びリリース機構8の動作について説明する。
【0087】
使用者は、初期位置(図8に示す位置)に配置されているレバー83を上方に移動させ、リリースドラム81を、付勢バネ85の付勢力に抗して、前方からみて時計回り方向(矢印D2方向)に回動させる。これに伴って、突起811も移動する。リリースドラム81は、突起811がドライビングスリーブ73の突起735に下方から当接する位置(図8に点線で示す位置)に到達する。突起811が突起735に当接する状態で、リリースドラム81が更に回動されると、リリースドラム81の回動に伴って、ドライビングスリーブ73も前方からみて時計回り方向に回動する。つまり、ドライビングスリーブ73は、係合位置から係合解除位置に向けて回動する。これに伴い、ロックピン71は、付勢バネ714によって付勢され、カム面733に当接しつつ、ロック位置から徐々に径方向外側(レシプロソー1の左方(図8における右方))に移動する。
【0088】
使用者が、図6に示す位置までレバー83を上方に移動させ、リリースドラム81を回動させると、ドライビングスリーブ73は係合解除位置に到達する。以下、このときのリリースドラム81及びレバー83の位置を、リリース位置という。ロックピン71は、アンロック位置に到達し、先端部711はブレード91の係合孔916から抜けて、スロット520の外側に配置される。
【0089】
ロックピン71とブレード91の係合が解除されるのに応じて、プッシュプレート771は、付勢バネ775によって付勢され、ブレード91の後端に当接しつつ前方へ移動する。プッシュプレート771は、ブレード91を前方へ押し出し、ブレード91の取り外しを容易とする。また、図4及び図6に示すように、プッシュプレート771は、アンロック位置に配置されたロックピン71のうち、溝523内に突出している先端部711に後方から当接する。プッシュプレート771の前半部分は、ロックピン71の先端部711の右側で、スロット520内に配置される。ロックピン71は、係合方向(矢印D1方向)に付勢されたドライビングスリーブ73のカム面733によって、径方向内側に押圧されるが、プッシュプレート771の前半部分は、ロックピン71の先端に当接し、ロックピン71の移動を阻止する。よって、ドライビングスリーブ73は、係合解除位置に保持される。
【0090】
本実施形態では、ドライビングスリーブ73の係合位置から係合解除位置まで回動角度は、概ね45度である。よって、ドライビングスリーブ73が係合解除位置に配置されても、突起735は、長軸A1(リリースドラム81の回動軸)及び長軸A2の真上に配置されることはない。つまり、突起735は、ドライビングスリーブ73が係合位置と係合解除位置との間のどの位置にあるときにも、長軸A1及び長軸A2を含み、上下方向に延びる仮想的な平面P(図6参照)とは重ならない。より詳細には、突起735は、常に平面Pの右側に位置する。また、カム部732は、ドライビングスリーブ73が係合位置と係合解除位置との間のどの位置にあるときにも、平面Pに対して突起735と反対側の位置にある(常に平面Pの左側に位置する)。また、ドライビングスリーブ73の回動角度は、リリースドラム81の回動角度の概ね半分であって、ドライビングスリーブ73は、リリースドラム81の回動過程の概ね後半に対応して回動する。
【0091】
なお、本実施形態では、上述のように、オービタル機構6によって、スライダ5が往復動中に上下方向に揺動される。このため、スライダ5の前後方向の位置に応じて、本体ハウジング11の長軸A1(つまり、リリースドラム81の回動軸)と本体51の長軸A2との間の上下方向における位置関係、ひいては、リリースドラム81に対するドライビングスリーブ73(突起735)の上下方向の位置が変化する。しかしながら、本実施形態では、スライダ5の位置にかかわらず、つまり、リリースドラム81に対するドライビングスリーブ73の上下方向の位置にかかわらず、突起735と平面Pとの間、及び、突起735とカム部732と平面Pとの間には、上述の関係が成立する。
【0092】
使用者がレバー83の操作を解除すると(レバー83から手を離すと)、リリースドラム81は、付勢バネ85(図3参照)に付勢され、前方からみて反時計回り方向(矢印D2方向)に回動する。ドライビングスリーブ73が係合解除位置に保持された状態で、突起811は、ドライビングスリーブ73の突起735に係合することなく、突起735から離間する方向に移動し、初期位置(図6に点線で示す位置)に戻る。つまり、リリースドラム81は、ドライビングスリーブ73に作用することなく、リリース位置から初期位置まで回動する。
【0093】
ブレード91を装着するときのクランプ機構7及びリリース機構8の動作について説明する。
【0094】
ブレード91が後方に向けてスロット520に挿入されると、ブレード91の後端に押圧され、プッシュプレート771は、付勢バネ775の付勢力に抗して後方に移動する。図7及び図8に示すように、ブレード91の係合孔916がロックピン71の先端部711に対向する位置に到達すると、付勢バネ75の付勢力によって、ドライビングスリーブ73が係合方向(矢印D1方向)に回動し、ロックピン71をロック位置へ移動させる。ロックピン71は、係合位置に配置されたドライビングスリーブ73によって、ロック位置で保持される。このように、本実施形態では、クランプ機構7は、スロット520へのブレード91の挿入に応じて作動し、ブレード91をブレード装着部52に固定する。この間、リリースドラム81は初期位置に保持されており、突起811は突起735に係合することなく、ドライビングスリーブ73の回動を許容する。
【0095】
以上に説明したように、本実施形態のレシプロソー1では、レバー83の手動操作に応じてリリースドラム81が初期位置からリリース位置へ回動すると、ドライビングスリーブ73が係合位置から係合解除位置へ回動し、ロックピン71がアンロック位置へ移動可能となる。ドライビングスリーブ73は、ロックピン71のアンロック位置への移動を許容するカム部732を有する。また、リリースドラム81の突起811に係合可能な突起735は、ドライビングスリーブ73のうち、カム部732とは異なるベース部731に設けられている。このような構成により、突起811と係合するのに十分な突起735の突出長さを確保しつつ、突起735を含むドライビングスリーブ73全体が径方向に大型化するのを抑制することができる。また、突起811及び突起735の数を夫々1つのみとすることで、夫々に最適な位置を選定することができ、また、リリースドラム81及びドライビングスリーブ73の構成を簡素化することができる。
【0096】
また、本実施形態では、オービタル機構6がブレード91のオービタル運動を生じさせることで、切断効率を高めることができる。一方で、オービタル機構6によって、スライダ5が往復動中に上下方向に揺動されると、上述のように、リリースドラム81とドライビングスリーブ73の上下方向における位置関係が変化する。
【0097】
このため、突起811及び突起735が夫々複数設けられている場合、リリースドラム81とドライビングスリーブ73との上下方向のズレによって、複数の突起811の少なくとも1つと複数の突起735の少なくとも1つの係合が不適切になる可能性がある。また、突起735が長軸A1の真上又は真下に配置されている場合、他の位置にある場合と比べて、突起811と突起735との位置関係が大きく変化しやすい。本態様によれば、突起811と突起735の数が夫々1つのみであり、また、ドライビングスリーブ73が係合位置と係合解除位置の間でどんな位置に配置されていても、突起735が長軸A1の真上又は真下に配置されないため、突起811と突起735の係合不良が生じる可能性を低減することができる。
【0098】
また、本実施形態では、突起811は、リリースドラム81の周方向において、レバー挿通孔115の下端部と上端部との間で移動可能なレバー83と概ね同じ位置に設けられている。そして、スライダ5の位置にかかわらず、つまり、リリースドラム81に対するドライビングスリーブ73の上下方向の位置にかかわらず、ドライビングスリーブ73が係合位置に配置されているときには、突起735は、上下方向におけるレバー挿通孔115の中央部に概ね対応する位置、つまり、突起811の移動経路の中間部に配置されている。なお、ここでいう「中間部」は、移動経路の厳密な中間位置に限定されるものではなく、中間位置の前及び後のある程度の範囲を含みうる。
【0099】
このため、突起811は、リリースドラム81が初期位置からブレード取り外し位置に回動する過程の中間段階で、突起735に係合する。よって、リリースドラム81が初期位置にあるとき(つまり、レバー83が手動操作される前)に、突起811と突起735とが互いに干渉する可能性を低減することができる。このような構成は、特に、本実施形態のように、リリースドラム81とドライビングスリーブ73との上下方向のズレが生じうる場合に好適である。
【0100】
本実施形態の各構成要素と、本開示又は本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の各構成要素を限定するものではない。
【0101】
レシプロソー1は、「往復動工具」の一例である。本体ハウジング11は、「ハウジング」の一例である。リリースドラム81は、「第1筒状部材」の一例である。レバー83及び突起811は、夫々、「操作部」及び「第1突起」の一例である。長軸A1は、「第1の軸」の一例である。リリースドラム81の初期位置及びリリース位置は、夫々、「第1位置」及び「第2位置」の一例である。スライダ5は、「スライダ」の一例である。スライダ5の前端部(ブレード装着部52)は、「第1端部」の一例である。長軸A2は、「第2の軸」の一例である。ブレード91は、「ブレード」の一例である。ドライビングスリーブ73は、「第2筒状部材」の一例である。突起735は、「第2の突起」の一例である。ドライビングスリーブ73の係合位置及び係合解除位置は、夫々、「係合位置」及び「係合解除位置」の一例である。ロックピン71は、「ロック部材」の一例である。ロック位置及びアンロック位置は、夫々、「ロック位置」及び「アンロック位置」の一例である。カム部732は、「突出部」の一例である。平面Pは、「第1平面」の一例である。レバー挿通孔115は、「開口」の一例である。
【0102】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本開示に係る往復動工具は、例示されたレシプロソー1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうち少なくとも1つが、実施形態に示すレシプロソー1、あるいは各請求項に記載された特徴と組み合わされて採用されうる。
【0103】
例えば、本開示に係る往復動工具は、ジグソーとして構成されてもよい。レシプロソー1は、バッテリ93ではなく、電源ケーブルを介して外部の交流電源から供給される電力によって動作してもよい。モータ31には、交流モータが採用されてもよい。また、モータ31には、ブラシを有するモータが採用されてもよい。
【0104】
ブレード91を往復動させる機構は、駆動機構4に限られない。モータシャフト315の回転運動を直線状の往復動に変換してブレード91に伝達可能であれば、いかなる公知の機構が採用されてもよい。例えば、運動変換には、回転体の回転に伴って揺動する揺動部材(いわゆるスワッシュベアリング)が採用されてもよい。また、クランク板のクランクピンが、コネクティングロッドを介してスライダ5と連結されていてもよい。各種シャフトやギヤの組み合わせ及び配置も、適宜変更されうる。
【0105】
同様に、ブレード91にオービタル運動を行わせる機構は、オービタル機構6に限られない。支持体13又はスライダ5に作用して、ブレード91にオービタル運動を行わせることが可能であれば、いかなる公知の機構が採用されてもよい。例えば、クランク板45と別個に、支持体13に動作可能に連結され、支持体13を揺動させる部材が設けられてもよい。また、オービタル機構6の動作を変化させる切替機構(複数の動作モードを選択的に切り替える機構)が設けられてもよい。「オービタル機構の動作を変化させる」とは、例えば、オービタル機構の動作を不能とすること、及び、オービタル機構によるスライダの揺動量を変化させること(つまり、ブレードのオービタル運動の軌道経路を変化させること)を含む。このような切替機構には、いかなる公知の機構が採用されてもよい。更には、オービタル機構6は省略されてもよい。つまり、スライダ5は、駆動機構4によって、本体ハウジング11の長軸A1に沿って前後方向に往復動されるのみであってもよい。
【0106】
また、本体ハウジング11内におけるモータ31、駆動機構4、スライダ5の配置は、上記実施形態の例に限られない。例えば、モータ31は、モータシャフト315の回転軸が本体ハウジング11の長軸A1と交差するように配置されていてもよい。クランク板45が左右方向に延在する回転軸周りに回転可能に配置され、スライダ5は、クランク板45の右側又は左側に配置されていてもよい。
【0107】
本体ハウジング11及びハンドル18の形状、構成部材、連結態様等は特に限定されるものではなく、適宜変更されうる。同様に、本体ハウジング11内部に配置されるギヤハウジング12についても、ギヤハウジング12内部に配置される駆動機構4、スライダ5等の変更に応じて、あるいは変更にかかわらず、適宜変更可能である。また、ギヤハウジング12が外部に露出する構造のハウジングが採用されてもよい。
【0108】
スライダ5の形状、構成部材、駆動機構4との連結態様等は、特に限定されるものではなく、適宜変更されうる。例えば、スライダ5は、円筒状ではなく、例えば、角柱状であってもよい。スライダ5は、複数の部材が連結されることで形成されていてもよい。また、スライダ5の支持構造は、支持体13によるものに限られない。例えば、オービタル機構6が省略される場合、スライダ5は、ギヤハウジング12(又はギヤハウジング12内に配置された部材)によって、前後方向にのみ移動可能に支持されればよい。
【0109】
クランプ機構7及びリリース機構8の構成は、適宜、変更されうる。以下に、採用可能な変形例について例示する。
【0110】
例えば、クランプ機構7は、少なくとも、長軸A2周りに回動可能にスライダ5の前端部に連結されたドライビングスリーブ73と、ドライビングスリーブ73の係合位置と係合解除位置との間の回動に応じて、ブレード91に係合可能なロック位置と、ブレード91に係合不能なアンロック位置との間で移動可能なロックピン71とを含めばよい。つまり、他の部材(付勢バネ714、ガイドスリーブ72、連結スリーブ74、付勢バネ75、プッシュプレート771等)は、適宜、省略されてもよいし、別の部材に置き換えられてもよい。また、クランプ機構7の構成部材の各々の形状、配置、他の部材との連結態様等は、適宜、変更されうる。
【0111】
例えば、ロックピン71は、円柱状でなく、角柱状であってもよい。ロックピン71に代えて、例えば、ボールが採用されてもよい。ドライビングスリーブ73のカム部732は、変更されたロックピン71あるいはボールに対応する形状に変更されうる。ドライビングスリーブ73は、連結スリーブ74を介さず、直接、付勢バネ75によって付勢されていてもよい。クランプ機構7で採用される付勢バネ714、75、775は、夫々、例示されたのとは異なる種類のバネであってもよい。例えば、付勢バネ75には、捩りコイルバネに代えて、例えば、圧縮コイルバネ、引張コイルバネ、あるいは板バネが採用されてもよい。付勢バネ714、75、775の配置位置及び係止態様は、かかる変更に応じて、あるいは変更にかかわらず適宜変更されうる。
【0112】
リリースドラム81は、必ずしも、ドライビングスリーブ73の前後方向の移動可能範囲をすべてカバーするように構成される必要はない。例えば、筒壁810は、スライダ5が前後方向の移動可能範囲内の特定の位置(例えば、最後方位置、最前方位置)に配置されているときにのみ、ドライビングスリーブ73の周囲を覆うように構成されていてもよい。付勢バネ85には、引っ張りコイルバネに代えて、例えば、捩りコイルバネ、圧縮コイルバネ、あるいは板バネが採用されてもよい。付勢バネ85の配置位置及び係止態様は、かかる変更に応じて、あるいは変更にかかわらず適宜変更されうる。
【0113】
ドライビングスリーブ73の突起735は、カム部732とは異なる部分(ベース部731)に設けられていればよく、前方からみて、実施形態の例示の位置よりも時計回り方向又は反時計回り方向にずれていてもよい。但し、レシプロソー1が、オービタル機構6を備える場合(ブレード91のオービタル運動を生じる動作モードを有する場合)には、突起735は、ドライビングスリーブ73の位置にかかわらず、常に上述の平面Pと重ならない位置にあることが好ましい。
【0114】
また、ドライビングスリーブ73の突起735及びリリースドラム81の突起811の構成(形状、長さ、太さ等)及び配置は、リリースドラム81の初期位置からリリース位置への回動過程で突起735と突起811とが互いに係合可能であって、且つ、リリースドラム81が初期位置にあるときに、突起811がドライビングスリーブ73の回動を妨げない範囲内で、適宜、変更されうる。例えば、上記実施形態の例とは逆に、突起811の方が突起735よりも長く形成されてもよい。また、レシプロソー1が、オービタル機構6を備える場合(ブレード91のオービタル運動を生じる動作モードを有する場合)には、ドライビングスリーブ73が係合位置に配置され、且つ、リリースドラム81が初期位置に配置されているときに、突起735と突起811とが離間していることが好ましい。
【0115】
リリースドラム81におけるレバー83と突起811の位置関係は、上記実施形態の例に限られない。例えば、レバー83と突起811とは、筒壁810の周方向において異なる位置に(つまり、周方向に離間して)配置されていてもよい。また、レバー挿通孔115の位置及び形状は、適宜変更されるる。レバー挿通孔115の変更に応じて、レバー83の移動可能範囲(つまり、リリースドラム81の回動角度)、並びに、レバー83及び突起811の配置も変更されうる。
【0116】
更に、本発明、上記実施形態及びその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、上述の実施形態及びその変形例、ならびに各請求項に記載された発明の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記第2突起の先端は、前記第1筒状部材の内周面と前記第2筒状部材の外周面との中間位置よりも径方向外側に延びる。
[態様2]
前記第2の軸から前記第2突起の先端までの距離は、前記第2の軸から前記突出部のうち最も径方向外側に突出している部分の外面までの距離よりも長い。
[態様3]
前記第2筒状部材は、略均一の厚みを有し、前記第2の軸を取り巻く筒壁を有し、
前記突出部は、前記筒壁の一部である。
[態様4]
前記第2筒状部材のうち、前記突出部以外の前記残りの部分は、前記第2の軸を中心とする円筒の一部を形成する。
[態様5]
前記往復動工具は、前記第1筒状部材を前記第1位置に向けて付勢する第1バネを更に備える。
[態様6]
前記往復動工具は、前記第2筒状部材を前記係合位置に向けて付勢する第2バネを更に備える。
[態様7]
前記往復動工具は、前記ロック部材を前記アンロック位置に向けて付勢する第3バネを更に備える。
【符号の説明】
【0117】
1:レシプロソー、11:本体ハウジング、111:開口、113:シュー、115:レバー挿通孔、12:ギヤハウジング、121:開口、13:支持体、130:支持孔、131:滑り軸受、132:滑り軸受、141:ピン、145:軸受、18:ハンドル、181:把持部、182:トリガ、183:スイッチ、187:バッテリハウジング、30:コントローラ、31:モータ、311:本体部、315:モータシャフト、316:ピニオン、4:駆動機構、41:中間シャフト、43:ベベルギヤ、45:クランク板、451:クランクピン、455:連結部材、5:スライダ、51:本体、52:ブレード装着部、520:スロット、521:第1の孔、522:第2の孔、523:溝、55:ピン連結部、551:ガイド凹部、6:オービタル機構、61:カム部、63:付勢部材、7:クランプ機構、70:ピン保持孔、71:ロックピン、711:先端部、712:ヘッド部、714:付勢バネ、72:ガイドスリーブ、721:第1の孔、722:第2の孔、723:ピン、73:ドライビングスリーブ、730:筒壁、731:ベース、732:カム部、733:カム面、735:突起、737:止め輪、74:連結スリーブ、75:付勢バネ、771:プッシュプレート、775:付勢バネ、8:リリース機構、81:リリースドラム、810:筒壁、811:突起、813:係止部、83:レバー、85:付勢バネ、91:ブレード、911:板面、913:刃先、915:基端部、916:係合孔、93:バッテリ、A1:長軸、A2:長軸、P:平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8