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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/26 20060101AFI20240805BHJP
   B29C 33/58 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 44/58 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20240805BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B29C39/26
B29C33/58
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/58
B29C44/36
B29K105:04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020197384
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085612
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
(72)【発明者】
【氏名】板橋 大一
(72)【発明者】
【氏名】望月 孝之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和寛
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-142349(JP,A)
【文献】特開平09-038750(JP,A)
【文献】特開平11-269505(JP,A)
【文献】特開2019-214142(JP,A)
【文献】特開2004-299090(JP,A)
【文献】特開2015-112764(JP,A)
【文献】特開2007-062106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/26
B29C 33/58
B29C 39/24
B29C 44/00
B29C 44/58
B29C 44/36
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いた、樹脂発泡体の製造方法であって、
前記金型は、
金型本体部と、
前記金型本体部に取り付けられたガス抜き具と、
を備えた、発泡体成形用の金型であって、
前記ガス抜き具は、多孔質金属から構成されており、
前記ガス抜き具における、前記金型のキャビティ側の面は、前記金型の成形面の一部を構成しており、
前記樹脂発泡体の製造方法は、前記金型のキャビティ内の所定配置場所に発泡樹脂材料を配置し、前記金型を型締めし、樹脂発泡体を発泡成形する、発泡成形ステップを含み、
前記発泡成形ステップでは、前記キャビティ内のガスが、前記ガス抜き具を介して、前記金型の外側へ放出され、
前記樹脂発泡体の製造方法は、前記発泡成形ステップの前に、前記金型の成形面に離型剤を付与する、離型剤付与ステップを、さらに含み、
前記離型剤付与ステップでは、前記離型剤を、前記金型の外側から前記ガス抜き具に浸透させて、前記ガス抜き具における前記キャビティ側の面に至らせる、樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記ガス抜き具は、鉄、アルミニウム、及びニッケルのいずれかを主成分とする金属から構成されている、請求項1に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記金型本体部を構成する金属の線膨張係数と前記ガス抜き具を構成する金属の線膨張係数との差が、15×10-6/K以下である、請求項1又は2に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記ガス抜き具は、前記金型の肉厚方向の全体にわたって延在している、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記金型は、
上型と、
前記上型に対する下側に配置される下型と、
を備え、
前記ガス抜き具は、前記上型の一部分を構成しており、
前記金型本体部は、前記上型のうち前記一部分以外の部分と前記下型とを構成している、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記ガス抜き具は、前記金型のキャビティ内の所定配置場所に配置された発泡樹脂材料が前記キャビティ内において最後に到達する場所に面している、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項7】
前記金型は、ポリウレタンフォームからなる樹脂発泡体を成形するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項8】
前記金型は、シートパッドを成形するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項9】
前記ガス抜き具は、前記金型のキャビティ内に配置される発泡樹脂材料は通さないが前記キャビティ内のガスは通すように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項10】
前記ガス抜き具は、3Dプリンタを用いて製造されたものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項11】
前記ガス抜き具は、格子状に構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項12】
前記ガス抜き具は、前記発泡成形ステップにおいて前記所定配置場所に配置された前記発泡樹脂材料が前記キャビティ内において最後に到達する場所に面している、請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型、ガス抜き具、及び、樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金具本体部とガス抜き具とを備えた、発泡体成形用の金型がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6622571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の金型においては、ガス抜き具のメンテナンスに手間が掛かるおそれがあった。
【0005】
本発明は、ガス抜き具のメンテナンスの手間を低減できる、金型、ガス抜き具、及び、樹脂発泡体の製造方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金型は、
金型本体部と、
前記金型本体部に取り付けられたガス抜き具と、
を備えた、発泡体成形用の金型であって、
前記ガス抜き具は、多孔質金属から構成されており、
前記ガス抜き具における、前記金型のキャビティ側の面は、前記金型の成形面の一部を構成している。
本発明の金型によれば、ガス抜き具のメンテナンスの手間を低減できる。
【0007】
本発明の金型において、
前記ガス抜き具は、鉄、アルミニウム、及びニッケルのいずれかを主成分とする金属から構成されていると、好適である。
【0008】
本発明の金型において、
前記金型本体部を構成する金属の線膨張係数と前記ガス抜き具を構成する金属の線膨張係数との差が、15×10-6/K以下であると、好適である。
これにより、発泡成形中において金型本体部とガス抜き具との間に隙間ができるのを抑制できる。
【0009】
本発明の金型において、
前記ガス抜き具は、前記金型の肉厚方向の全体にわたって延在していると、好適である。
これにより、ガス抜き具によって効果的にガスを金型の外側へ放出することができる。
【0010】
本発明の金型において、
上型と、
前記上型に対する下側に配置される下型と、
を備え、
前記ガス抜き具は、前記上型の一部分を構成しており、
前記金型本体部は、前記上型のうち前記一部分以外の部分と前記下型とを構成していると、好適である。
これにより、樹脂発泡体に余計な気泡が残るのを効果的に抑制できる。
【0011】
本発明の金型において、
前記ガス抜き具は、前記金型のキャビティ内の所定配置場所に配置された発泡樹脂材料が前記キャビティ内において最後に到達する場所に面していてもよい。
これにより、樹脂発泡体に余計な気泡が残るのを効果的に抑制できる。
【0012】
本発明の金型において、
前記金型は、ポリウレタンフォームからなる樹脂発泡体を成形するように構成されていると、好適である。
【0013】
本発明の金型において、
前記金型は、シートパッドを成形するように構成されていてもよい。
【0014】
本発明の金型において、
前記ガス抜き具は、前記金型のキャビティ内に配置される発泡樹脂材料は通さないが前記キャビティ内のガスは通すように構成されていると、好適である。
【0015】
本発明の金型において、
前記ガス抜き具は、3Dプリンタを用いて製造されたものであると、好適である。
【0016】
本発明の金型において、
前記ガス抜き具は、格子状に構成されていてもよい。
【0017】
本発明のガス抜き具は、
上記の金型に用いられるガス抜き具であって、
前記ガス抜き具は、多孔質金属から構成されており、
前記ガス抜き具における、前記金型のキャビティ側の面は、前記金型の成形面の一部を構成する。
本発明のガス抜き具によれば、ガス抜き具のメンテナンスの手間を低減できる。
【0018】
本発明の樹脂発泡体の製造方法は、
上記の金型を用いた、樹脂発泡体の製造方法であって、
前記金型のキャビティ内の所定配置場所に発泡樹脂材料を配置し、前記金型を型締めし、樹脂発泡体を発泡成形する、発泡成形ステップを含み、
前記発泡成形ステップでは、前記キャビティ内のガスが、前記ガス抜き具を介して、前記金型の外側へ放出される。
本発明の樹脂発泡体の製造方法によれば、ガス抜き具のメンテナンスの手間を低減できる
【0019】
本発明の樹脂発泡体の製造方法において、
前記ガス抜き具は、前記発泡成形ステップにおいて前記所定配置場所に配置された前記発泡樹脂材料が前記キャビティ内において最後に到達する場所に面していてもよい。
これにより、樹脂発泡体に余計な気泡が残るのを効果的に抑制できる。
【0020】
本発明の樹脂発泡体の製造方法において、
前記発泡成形ステップの前に、前記金型の成形面に離型剤を付与する、離型剤付与ステップを、さらに含み、
前記離型剤付与ステップでは、前記離型剤を、前記金型の外側から前記ガス抜き具に浸透させて、前記ガス抜き具における前記キャビティ側の面に至らせてもよい。
これにより、ガス抜き具におけるキャビティ側の面に離型剤を簡単に付与することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガス抜き具のメンテナンスの手間を低減できる、金型、ガス抜き具、及び、樹脂発泡体の製造方法を、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】シートパッドのバックパッドを成形するように構成された、本発明の第1実施形態に係る金型を、バックパッドの延在方向に沿った断面により示す断面図である。
図2図1の金型を、左右方向に沿った断面により示す断面図である。
図3図1のガス抜き具の一部を拡大して示す拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法における離型剤付与ステップを説明するための図面であり、図1の金型において、外側からガス抜き具に離型剤を付与した様子を示す図面である。
図5】本発明の一実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法における離型剤付与ステップを説明するための図面であり、図1の金型において、離型剤がガス抜き具におけるキャビティ側の面に至った様子を示す図面である。
図6】本発明の一実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法における発泡成形ステップを説明するための図面であり、図1の金型において、所定配置場所に発泡樹脂材料を配置して金型を型締めした直後の様子を示す図面である。
図7】本発明の一実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法における発泡成形ステップを説明するための図面であり、図1の金型において、発泡樹脂材料がキャビティ内に充填される途中の様子を示す図面である。
図8】本発明の一実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法における発泡成形ステップを説明するための図面であり、図1の金型において、発泡樹脂材料がキャビティ内に充填されたときの様子を示す図面である。
図9】シートパッドのクッションパッドを成形するように構成された、本発明の第2実施形態に係る金型を、クッションパッドの延在方向に沿った断面により示す断面図であり、所定配置場所に発泡樹脂材料を配置して金型を型締めした直後の様子を示す図面である。
図10図9の金型を、左右方向に沿った断面により示す断面図であり、所定配置場所に発泡樹脂材料を配置して金型を型締めした直後の様子を示す図面である。
図11図9の金型において、発泡樹脂材料がキャビティ内に充填されたときの様子を示す図面である。
図12】シートパッドを備えた車両用シートの一例を示す斜視図である。
図13図12のバックパッドを裏面側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の金型、ガス抜き具、及び、樹脂発泡体の製造方法は、任意の樹脂発泡体を成形するために用いると好適なものであり、可撓性のある樹脂からなる樹脂発泡体を成形するために用いるとより好適なものであり、例えば、シートパッド(特に、車両用シートパッド)を成形するために用いると好適なものである。ここで、「可撓性のある樹脂」とは、外力が加わると変形することができる樹脂を指しており、例えば、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適である。
【0024】
以下、本発明に係る金型、ガス抜き具、及び、樹脂発泡体の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0025】
図1図8は、本発明の第1実施形態に係る金型200及びガス抜き具270を示している。図9図11は、本発明の第2実施形態に係る金型200及びガス抜き具270を示している。以下、説明の便宜のため、これらの実施形態について、併せて説明する。
本明細書で説明する各実施形態において、金型200は、発泡体(例えば樹脂発泡体)を成形するように構成された、発泡体成形用の金型である。
【0026】
本明細書で説明する各実施形態において、金型200は、金型本体部260と、1つ又は複数のガス抜き具270とを、備えている。より具体的に、金型200は、金型本体部260と、1つ又は複数のガス抜き具270と、からなる。金型本体部260は、金型200のうち、1つ又は複数のガス抜き具270以外の部分である。
ガス抜き具270は、金型本体部260に取り付けられている。より具体的に、ガス抜き具270は、金型本体部260に設けられた穴に嵌め込まれている。ガス抜き具270の金型本体部260への取り付け方法としては、接着による固定、及び/又は、圧入が、好適である。
金型本体部260は、金属から構成されている。
ガス抜き具270は、多孔質金属から構成されている。すなわち、ガス抜き具270は、図3に拡大して示すように、多数のセル孔272と、これらのセル孔272を区画する骨格部271とを、有している。セル孔272は、空隙である。骨格部271は、金属から構成されている。ガス抜き具270は、セル孔272どうしが連通した連通気泡構造を有している。ガス抜き具270は、セル孔272を通じてガスを通すことができるように構成されており、それにより、キャビティCV内のガスを金型200の外側へ放出させることができるように構成されている。
金型200は、発泡体(例えば樹脂発泡体)を成形するように構成された成形面Sを有している。成形面Sは、キャビティCVを区画している。
ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aは、金型200の成形面Sの一部を構成しており、すなわち、キャビティCVに面している。
【0027】
金型200は、任意の樹脂発泡体を成形するように構成されてよく、可撓性のある樹脂からなる樹脂発泡体を成形するように構成されると好適であり、例えば、ポリウレタンフォームからなる樹脂発泡体を成形するように構成されていると、好適である。また、金型200は、任意の用途の発泡体を成形するように構成されてよく、例えば、シートパッドを成形するように構成されていてもよい。図1図8に示す第1実施形態の金型200は、図12に示すような車両用シート100に用いられるシートパッド(すなわち、車両用シートパッド)1におけるバックパッド20を成形するように構成された、バックパッド成形用金型220として構成されている。図9図11に示す第2実施形態の金型200は、図12に示すような車両用シート100に用いられるシートパッド(すなわち、車両用シートパッド)1におけるクッションパッド10を成形するように構成された、クッションパッド成形用金型210として構成されている。
【0028】
ここで、図12図13を参照しつつ、シートパッド1について説明する。
シートパッド1は、着座者が着座するためのクッションパッド10と、着座者の背中を支持するためのバックパッド20と、を備えている。図13は、バックパッド20を裏面BS側から見た様子を示している。クッションパッド10とバックパッド20とは、それぞれ、シートパッド1を構成している。以下では、クッションパッド10又はバックパッド20を、単に「シートパッド1」と呼ぶことがある。車両用シート100は、シートパッド1に加え、例えば、シートパッド1の表側(着座者側)を覆う表皮(図示せず)と、クッションパッド10を下から支持するフレーム(図示せず)と、バックパッド20の裏側に設置されるフレーム(図示せず)と、バックパッド20の上側に設置され、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト40と、を備える。表皮は、例えば、通気性のよい材料(布等)から構成される。図1の例において、クッションパッド10とバックパッド20とは、互いに別体に構成されているが、互いに一体に構成されてもよい。
また、図12の例において、ヘッドレスト40は、バックパッド20とは別体に構成されているが、ヘッドレスト40は、バックパッド20と一体に構成されてもよい。
【0029】
クッションパッド10は、図12に示すように、着座者の尻部及び大腿部を下から支持するように構成されたメインパッド部(「着座部」ともいう。)11と、メインパッド部11の左右両側に位置し、メインパッド部11よりも上側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部12と、メインパッド部11の後側に位置し、バックパッド20と上下方向に対向配置するように構成された、バックパッド対向部13と、を有している。メインパッド部11は、着座者の大腿部を下から支持するように構成された、腿下部11tと、腿下部11tに対し後側に位置し、着座者の尻部を下から支持するように構成された尻下部11hと、からなる。
【0030】
バックパッド20は、図12及び図13に示すように、着座者の背中を後側から支持するように構成されたメインパッド部21と、メインパッド部21の左右両側に位置し、メインパッド部21よりも前側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部22と、メインパッド部21の上端部から後側へ延在する上橋部23aと、上橋部23aの後端部から下側へ延在する上裏部23bと、一対のサイドパッド部22の左右方向外側端部から後側へそれぞれ延在する一対のサイド橋部24aと、一対のサイド橋部24aの後端部から左右方向内側へそれぞれ延在する一対のサイド裏部24bと、を有している。上裏部23bは、メインパッド部21に対して後側に離間している。上橋部23aは、メインパッド部21と上裏部23bとを連結している。一対のサイド裏部24bは、一対のサイドパッド部22に対して後側に離間している。一対のサイド橋部24aは、一対のサイドパッド部22と一対のサイド裏部24bとを連結している。メインパッド部21及び上裏部23bどうしの間、かつ、一対のサイドパッド部22及び一対のサイド裏部24bどうしの間には、図示しないフレームが嵌め込まれる。
【0031】
本明細書では、車両用シート100に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。
また、本明細書において、「シートパッド1の延在方向(LD)」(以下、単に「延在方向(LD)」ともいう。)とは、シートパッド1の左右方向及び厚さ方向(TD)に対して垂直な方向であり、図12に示すように、クッションパッド10の場合、前後方向を指しており、バックパッド20の場合、バックパッド20のメインパッド部21の下面から上面までにわたってメインパッド部21が延在する方向である。
また、「シートパッド1の厚さ方向(TD)」(以下、単に「厚さ方向(TD)」ともいう。)とは、図12に示すように、クッションパッド10の場合、上下方向を指しており、バックパッド20の場合、バックパッド20のメインパッド部21の着座者側の面(表面)FSから裏面BSまでにわたってメインパッド部21が延在する方向である。
また、シートパッド1の「着座者側の面(表面、FS)」は、クッションパッド10の場合、上面を指しており、バックパッド20の場合、前面を指す。シートパッド1の「裏面(BS)」は、クッションパッド10の場合、下面を指しており、バックパッド20の場合、後面を指す。
【0032】
つぎに、図1図2図8を参照しつつ、本発明の第1実施形態の金型200(すなわち、バックパッド成形用金型220)の構成について、より詳しく説明する。上述のように、第1実施形態の金型200は、バックパッド20(図12)を成形するように構成された、バックパッド成形用金型220として構成されている。便宜のため、図1図2図8では、金型200によって成形される樹脂発泡体50(図8)であるバックパッド20における延在方向LD、厚さ方向TD、及び左右方向を、矢印により示している。図1は、金型200を、バックパッド20の延在方向LDに沿った断面により示しており、図2は、金型200を、バックパッド20の左右方向に沿った断面により示している。
第1実施形態において、金型200は、上型200Uと、上型200Uに対する下側に配置される下型200Lと、を備えている。上型200Uは、上型本体部200UMと、中子200UIと、を有している。図8に示すように、上型200Uの成形面Sは、バックパッド20の表面のうち裏面BSを含む部分を成形するように構成されている。下型200Lの成形面Sは、バックパッド20の表面のうち着座者側の面FSを含む部分を成形するように構成されている。上型200Uと下型200Lとが合わせられることによって金型200が型締めされると、金型200の内部にキャビティCVが区画される。
第1実施形態において、キャビティCVは、メインパッド部21を成形するように構成されたメインパッド部成形用キャビティ21CV(図1図2図8)と、一対のサイドパッド部22を成形するように構成された一対のサイドパッド部成形用キャビティ22CV(図2)と、上橋部23aを成形するように構成された上橋部成形用キャビティ23aCV(図1図8)と、上裏部23bを成形するように構成された上裏部成形用キャビティ23bCV(図1図8)と、一対のサイド橋部24aを成形するように構成された一対のサイド橋部成形用キャビティ24aCV(図2)と、一対のサイド裏部24bを成形するように構成された一対のサイド裏部成形用キャビティ24bCV(図2)と、を有している。
第1実施形態において、ガス抜き具270は、上型200Uの一部分を構成している。金型本体部260は、上型200Uのうち当該一部分以外の部分と下型200Lとを構成している。より具体的に、図の例において、ガス抜き具270は、図1に示すように、上型200U(具体的には上型本体部200UM)のうち上裏部成形用キャビティ23bCVに面する部分の少なくとも一部分を構成している。ただし、ガス抜き具270は、金型200(上型200U及び/又は下型200L)における任意の部分を構成してよい。例えば、図示は省略するが、図1に示すガス抜き具270に加えて、他の一対のガス抜き具270が、上型200Uのうち一対のサイド裏部成形用キャビティ24bCVに面する部分の少なくとも一部分(特に、一対のサイド裏部成形用キャビティ24bCVのうち、サイド裏部24bの下端部24bb(図13)を成形するように構成された部分に面する部分)を構成していると、好適である。また、ガス抜き具270は、下型200Lの一部分を構成してもよい。
【0033】
つぎに、図9図11を参照しつつ、本発明の第2実施形態の金型200の構成について説明する。上述のように、第2実施形態において、金型200は、クッションパッド10(図12)を成形するように構成された、クッションパッド成形用金型210として構成されている。便宜のため、図9図11では、金型200によって成形される樹脂発泡体50(図11)であるクッションパッド10における延在方向LD、厚さ方向TD、及び左右方向を、矢印により示している。図9は、金型200を、クッションパッド10の延在方向LDに沿った断面により示しており、図10は、金型200を、クッションパッド10の左右方向に沿った断面により示している。
第2実施形態において、金型200は、上型200Uと、上型200Uに対する下側に配置される下型200Lと、を備えている。図11に示すように、上型200Uの成形面Sは、クッションパッド10の表面のうち裏面BSを含む部分を成形するように構成されている。下型200Lの成形面Sは、クッションパッド10の表面のうち着座者側の面FSを含む部分を成形するように構成されている。上型200Uと下型200Lとが合わせられることによって金型200が型締めされると、金型200の内部にキャビティCVが区画される。
第2実施形態において、キャビティCVは、メインパッド部11を成形するように構成されたメインパッド部成形用キャビティ11CV(図9図11)と、一対のサイドパッド部12を成形するように構成された一対のサイドパッド部成形用キャビティ12CV(図10)と、バックパッド対向部13を成形するように構成されたバックパッド対向部成形用キャビティ13CV(図10)と、を有している。メインパッド部成形用キャビティ11CVは、腿下部11tを成形するように構成された腿下部成形用キャビティ11tCV(図9図11)と、尻下部11hを成形するように構成された尻下部成形用キャビティ11hCV(図9図11)と、からなる。
第2実施形態において、ガス抜き具270は、上型200Uの一部分を構成している。金型本体部260は、上型200Uのうち当該一部分以外の部分と下型200Lとを構成している。より具体的に、図の例において、ガス抜き具270は、上型200Uのうち尻下部成形用キャビティ11hCVに面する部分の少なくとも一部分を構成している。ただし、ガス抜き具270は、金型200における任意の部分を構成してよい。例えば、ガス抜き具270は、下型200Lの一部分を構成してもよい。
【0034】
つぎに、図4図8を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法を説明する。図4図8では、上述した本発明の第1実施形態に係る金型200(ひいては、バックパッド成形用金型220)を用いる場合を示しているが、本実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法は、本発明の任意の実施形態に係る金型200を用いて、同様に行うことができる。
本実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法は、離型剤付与ステップと、発泡成形ステップとを、含む。
【0035】
まず、離型剤付与ステップにおいて、金型200の成形面Sに離型剤60を付与する。離型剤付与ステップは、発泡成形ステップの前に行う。
離型剤60は、金型200の成形面Sの全体に付与すると好適であるが、成形面Sの一部のみに付与してもよい。
離型剤付与ステップにおいては、成形面Sの一部を構成する、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aにも、離型剤60を付与すると好適である。この場合、図4図5に示すように、離型剤60を、金型200の外側からガス抜き具70に浸透させて、ガス抜き具70におけるキャビティCV側の面270aに至らせることで、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aに離型剤60を付与してもよい。これにより、仮に図4図5の例のようにガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aがキャビティCV側から離型剤60を付与しにくい場所にある場合であっても、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aに離型剤60を簡単に付与することができる。図4は、外側からガス抜き具に離型剤を付与した様子を示している。図5は、離型剤60がガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aに至った様子を示している。ただし、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aに、離型剤60を、キャビティCV側から付与してもよい。
ただし、離型剤付与ステップにおいて、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aに、離型剤60を付与しなくてもよい。
離型剤は、例えば溶剤系のものが挙げられる。
【0036】
つぎに、発泡成形ステップにおいて、金型200のキャビティCV内の所定配置場所280に発泡樹脂材料50’を配置し、金型200を型締めし、樹脂発泡体50を発泡成形する(図6図8)。発泡樹脂材料50’は液状である。
図6は、所定配置場所280に発泡樹脂材料50’を配置して金型200を型締めした直後の様子を示している。図7は、発泡樹脂材料50’がキャビティCV内に充填される途中の様子を示している。図8は、発泡樹脂材料50’がキャビティCV内に充填されたときの様子を示している。
所定配置場所280は、発泡樹脂材料50’を配置するように予め決められた場所である。図1図8の例において、所定配置場所280は、下型200Lの成形面Sのうち、メインパッド部成形用キャビティ21CVにおける左右方向の中央部分に面する部分と、下型200Lの成形面Sのうち、一対のサイドパッド部成形用キャビティ22CVの一部分に面する部分と、である(図2図6)。図9図11の例において、所定配置場所280は、下型200Lの成形面Sのうち、メインパッド部成形用キャビティ11CVにおける左右方向の中央部分に面する部分と、下型200Lの成形面Sのうち、一対のサイドパッド部成形用キャビティ12CVの一部分に面する部分と、である(図9図10)。ただし、所定配置場所280は、金型200のキャビティCV内の任意の場所に設定されてよい。また、所定配置場所280は、1つのみ存在してもよいし、複数存在してもよい。所定配置場所280は、下型200Lの成形面Sの少なくとも一部に設定されると、発泡樹脂材料50’を配置しやすいので、好適である。
所定配置場所280に配置された発泡樹脂材料50’は、徐々に膨らみながら、キャビティCV内に充填されていき、その後、キャビティCVに応じた形状に樹脂発泡体50が成形される(図7図8)。
発泡成形ステップでは、キャビティCV内のガス(キャビティCV内に存在するガスや発泡樹脂材料50’の反応により発生したガス)が、ガス抜き具270を介して、金型200の外側へ放出される(図8)。これにより、樹脂発泡体50に余計な気泡が残るのを抑制でき、ひいては、樹脂発泡体50に充填不足等の不具合が発生するのを抑制できる。
【0037】
発泡成形ステップの後、金型200を型開きして樹脂発泡体50を取り出すことにより、樹脂発泡体50を得ることができる。
【0038】
なお、離型剤付与ステップは行わなくてもよい。
【0039】
本明細書で説明する各実施形態では、上述のように、ガス抜き具270は、多孔質金属から構成されており、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aは、金型200の成形面Sの一部を構成している。このように、ガス抜き具270がシンプルな構造からなるので、仮に特許文献1のようにガス抜き具が複雑な構造からなる場合に比べて、発泡成形中において発泡樹脂材料50’がガス抜き具270に引っかかったり入り込んだりするおそれを低減でき、ひいては、ガス抜き具270のメンテナンスの手間を低減することができ、また、樹脂発泡体50の不良品率を低減することができる。
また、本明細書で説明する各実施形態によれば、ガス抜き具270は、多孔質金属から構成されているので、そのキャビティCV側の面270aの全体において、キャビティCV内のガスを金型200の外側へ放出する機能を有している。そのため、仮に特許文献1のようにガス抜き具の一部分のみでキャビティCV内のガスを金型200の外側へ放出する機能を発揮する場合に比べて、より確実に、樹脂発泡体50に余計な気泡が残るのを抑制でき、ひいては、樹脂発泡体50に充填不足等の不具合が発生するのを抑制できる。なお、特許文献1のガス抜き具においては、キャビティに面する開閉部の外周部分のみでキャビティ内のガスを金型の外側へ放出する機能を発揮するようにされており、開閉部の真下の部分ではキャビティ内のガスを金型の外側へ放出する機能を発揮しないため、そこで樹脂発泡体に余計な気泡が残るおそれがある。
また、本明細書で説明する各実施形態によれば、ガス抜き具270は、多孔質金属から構成されており、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aは、金型200の成形面Sの一部を構成しているため、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aは、任意の面形状(例えば曲面形状)に形成されることが可能であり、より滑らかに、所望の樹脂発泡体50の表面形状(意匠形状)に沿わせることができる。この点、特許文献1においては、ガス抜き具の開閉部が、平板形状を有しており、所望の樹脂発泡体の表面形状(意匠形状)に沿わせることが難しく、樹脂発泡体に開閉部の跡が残るおそれがある。
また、本明細書で説明する各実施形態によれば、ガス抜き具270は金属から構成されているので、仮にガス抜き具270が樹脂等から構成されている場合に比べて、例えば溶剤系からなる離型剤60によってガス抜き具270が侵食されて目詰まりや軟化等を起こすのを抑制できる。また、ガス抜き具270は金属から構成されているので、金型本体部260とガス抜き具270との熱膨張率の差を小さくすることができ、ひいては、発泡成形中において金型本体部260とガス抜き具270との間に隙間ができて発泡樹脂材料50’が当該隙間から金型200の外側へ漏れるおそれを低減できる。また、ガス抜き具270は金属から構成されているので、金型200の温度を均一に保ちやすく、ひいては、樹脂発泡体50の密度分布を均一にしやすくなる。また、ガス抜き具270は金属から構成されているので、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aによって成形される樹脂発泡体50の表面部分の表面状態(スキン。見た目の光沢や表面の通気度等。)と、金型本体部260の成形面Sによって成形される樹脂発泡体50の表面部分の表面状態とを、同等にすることができる。
【0040】
以下、金型200における好適な構成や変形例について説明する。以下に説明する構成のそれぞれについては、金型200が複数のガス抜き具270を備える場合、一部(1つ又は複数)のガス抜き具270のみがその構成を満たしていてもよいし、あるいは、すべてのガス抜き具270がその構成を満たしていてもよい。
【0041】
本明細書で説明する各実施形態においては、図1図9の各例のように、ガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aと、金型本体部260のうちガス抜き具270に隣接する部分との間には、段差が無いと好適である。これにより、樹脂発泡体50にガス抜き具270の跡が残るのを抑制できる。
【0042】
本明細書で説明する各実施形態において、ガス抜き具270(具体的に、ガス抜き具270のセル孔272)は、キャビティCV内に配置される発泡樹脂材料50’は通さないがキャビティCV内のガスは通すように構成されていると、好適である。これにより、発泡成形中において発泡樹脂材料50’がガス抜き具270のセル孔272に入り込むのを抑制でき、ひいては、ガス抜き具270のメンテナンスの手間を低減することができ、また、樹脂発泡体50の不良品率を低減することができる。
【0043】
本明細書で説明する各実施形態において、ガス抜き具270は、任意の金属から構成されてよく、例えば、鉄、アルミニウム、及びニッケルのいずれかを主成分とする金属から構成されていると、好適である。この場合、金型本体部260とガス抜き具270との熱膨張率の差をより小さくすることができ、ひいては、発泡成形中において金型本体部260とガス抜き具270との間に隙間ができるのをより効果的に抑制できる。
この場合、金型本体部260は、アルミニウム及び鉄のいずれかを主成分とする金属から構成されていると、好適である。
鉄を主成分とする金属としては、鉄、ステンレス、マレージング鋼等が挙げられる。アルミニウムを主成分とする金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。ニッケルを主成分とする金属としては、ニッケル、ニッケル合金等が挙げられる。
【0044】
本明細書で説明する各実施形態において、金型本体部260を構成する金属の線膨張係数とガス抜き具270を構成する金属の線膨張係数との差は、15×10-6/K以下であると好適であり、12×10-6/K以下であるとより好適である。
これにより、発泡成形中において金型本体部260とガス抜き具270との間に隙間ができるのをより効果的に抑制できる。
なお、上記金属の線膨張係数は、JIS Z 2285:2003に準拠して測定するものとする。
【0045】
本明細書で説明する各実施形態において、ガス抜き具270は、図1図9の各例のように、その少なくとも一部分が、金型200の肉厚方向の全体にわたって延在していると、好適である。これにより、ガス抜き具270によって効果的にキャビティCV内のガスを金型200の外側へ放出することができる。
ただし、ガス抜き具270は、そのキャビティCVとは反対側が、金型本体部260によって覆われていてもよい。その場合、金型本体部260のうちガス抜き具270を覆う部分には、当該部分を金型200の肉厚方向に貫通するベントホールが1つ又は複数設けられるとよい。この場合、キャビティCV内のガスは、ガス抜き具270を通った後、上記ベントホールを通って、金型200の外側に放出されることとなる。
なお、金型本体部260は、ガス抜き具270から離れた位置において、金型200の肉厚方向に貫通するベントホールを1つ又は複数有していてもよい。
【0046】
本明細書で説明する各実施形態においては、図1図11の各例のように、ガス抜き具270は、発泡樹脂材料50’の所定配置場所280から離間して配置されていると、好適である。発泡成形中において、発泡樹脂材料50’は、キャビティCV内で徐々に膨らみながら充填していくが、所定配置場所280から離れるに従って、充填に時間がかかり、多数の気泡を巻き込みやすくなる。そのような気泡が形成されやすい、所定配置場所280から離間した位置に、ガス抜き具270を配置することで、これらの余計な気泡を、ガス抜き具270によって効果的に除去することができる。よって、樹脂発泡体50に余計な気泡が残るのを効果的に抑制できる。
【0047】
本明細書で説明する各実施形態においては、図1図11の各例のように、金型200が上型200Uと下型200Lとを備える場合、ガス抜き具270は、上型200Uの一部分を構成していると、好適である。この場合、発泡樹脂材料50’の所定配置場所280は、下型200Lの成形面Sの少なくとも一部であると、好適である。この場合、発泡成形中において、発泡樹脂材料50’は、下型200Lの成形面Sから上側に向かって徐々に膨らみながら充填していくが、所定配置場所280から離れるに従って(ひいては上側に近づくに従って)、充填に時間がかかり、多数の気泡を巻き込みやすくなる。そのような気泡が形成されやすい上側の位置にガス抜き具270を配置することで、これらの余計な気泡を、ガス抜き具270によって効果的に除去することができる。よって、樹脂発泡体50に余計な気泡が残るのを効果的に抑制できる。
なお、図1図2の例のように上型200Uが上型本体部200UMと中子200UIとを有する場合には、ガス抜き具270は、上型本体部200UM及び/又は中子200UIの一部分を構成してよい。
ただし、上述のように、ガス抜き具270は、金型200における任意の部分を構成してよい。また、金型200は、上型200Uと下型200Lとを備える構成に限られず、任意の構成を有してよい。
【0048】
本明細書で説明する各実施形態においては、図1図8の例のように、ガス抜き具270は、キャビティCV内の所定配置場所280に配置された発泡樹脂材料50’がキャビティCV内において最後に到達する場所(図1図8の例では、上裏部成形用キャビティ23bCV)に面していると、好適である。このように、気泡が最も形成されやすい、所定配置場所280から最も遠い位置に、ガス抜き具270を配置することで、余計な気泡を、ガス抜き具270によって効果的に除去することができる。よって、樹脂発泡体50に余計な気泡が残るのを効果的に抑制できる。
【0049】
本明細書で説明する各実施形態において、ガス抜き具270は、3Dプリンタを用いて製造されたものであると、好適である。3Dプリンタによる造形方式としては、粉末焼結方式が好適であるが、その他の方式を採用してもよい。粉末焼結方式は、金属の粉末に対してレーザー光を照射することにより粉末どうしを焼結させるものである。
ガス抜き具270を3Dプリンタにより製造することにより、容易に、ガス抜き具270の多孔質構造を所期したとおりのものとすることができ、所期したとおりのガス抜き機能を実現できる。
【0050】
本明細書で説明する各実施形態において、ガス抜き具270のなす多孔質構造は、任意でよい。例えば、ガス抜き具270は、図3の例のように、格子状に構成されていてもよい。この場合、ガス抜き具270のセル孔272は、規則的に配列され、具体的には、互いに直交する2つの方向に沿って等間隔に配列される。あるいは、ガス抜き具270のセル孔272は、ランダムに配列されてもよい。
ガス抜き具270の各セル孔272は、直径が略均一であると好適である。ガス抜き具270の各セル孔272は、形状が略均一であると好適である。
【0051】
本明細書で説明する各実施形態において、ガス抜き機能を向上させる観点から、1つのガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aの面積は、9cm以上であると好適であり、25cm以上であると好適である。また、1つのガス抜き具270におけるキャビティCV側の面270aの面積は、150cm以下であると好適であり、110cm以下であると好適である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の金型、ガス抜き具、及び、樹脂発泡体の製造方法は、任意の樹脂発泡体を成形するために用いると好適なものであり、可撓性のある樹脂からなる樹脂発泡体を成形するために用いるとより好適なものであり、例えば、シートパッド(特に、車両用シートパッド)を成形するために用いると好適なものである。
【符号の説明】
【0053】
200:金型、
200L:下型、 LS:下型成形面、
200U:上型、 US:上型成形面、 200UM:上型本体部、 200UI:中子、
S:成形面、 CV:キャビティ、
210:クッションパッド成形用金型、 11CV:メインパッド部成形用キャビティ、 11tCV:腿下部成形用キャビティ、 11hCV:尻下部成形用キャビティ、 12CV:サイドパッド部成形用キャビティ、 13CV:バックパッド対向部成形用キャビティ、
220:バックパッド成形用金型、 21CV:メインパッド部成形用キャビティ、 22CV:サイドパッド部成形用キャビティ、 23aCV:上橋部成形用キャビティ、 23bCV:上裏部成形用キャビティ、 24aCV:サイド橋部成形用キャビティ、 24bCV:サイド裏部成形用キャビティ、
260:金型本体部、
270:ガス抜き具、 270a:キャビティ側の面、 271:骨格部、 272:セル孔、
280:所定配置場所、
50:樹脂発泡体、 50’:発泡樹脂材料、
60:離型剤、
1:シートパッド、
10:クッションパッド、 11:メインパッド部(着座部)、 11t:腿下部、 11h:尻下部、 12:サイドパッド部、 13:バックパッド対向部、
20:バックパッド、 21:メインパッド部、 22:サイドパッド部、 23a:上橋部、 23b:上裏部、 24a:サイド橋部、 24b:サイド裏部、 24bb:下端部、
40:ヘッドレスト、
100:車両用シート、
TD:厚さ方向、 LD:延在方向、
FS:着座者側の面(表面)、 BS:裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13