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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】検出方法および検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20240805BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01N35/04 H
G01N35/10 C
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020198870
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086706
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】小篠 正継
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】三田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 孝明
(72)【発明者】
【氏名】平山 英樹
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-018158(JP,B2)
【文献】特開昭56-142460(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176296(WO,A1)
【文献】特開昭58-088661(JP,A)
【文献】特表2021-522483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0287523(US,A1)
【文献】国際公開第1999/046601(WO,A1)
【文献】特開2015-110199(JP,A)
【文献】特開2013-205090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体分注位置に向けて、複数の反応容器を保持したラックを第1軸に沿って搬送する工程と、
前記第1軸と上面視で交差する第2軸に沿って、検体分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記検体分注位置に位置付けられた第1の反応容器へ第1の検体を分注する工程と、
前記検体分注ピペットを前記第2軸に沿って直線移動させ、前記検体分注位置とは別の検体分注位置に位置付けられた第2の反応容器へ第2の検体を分注する工程と、
試薬分注位置に向けて、前記ラックを前記第1軸に沿って搬送する工程と、
前記第1軸と上面視で交差する第3軸に沿って、試薬分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記試薬分注位置に位置付けられた前記第1の反応容器へ試薬を分注する工程と、
前記試薬分注ピペットを前記第3軸に沿って直線移動させ、前記試薬分注位置とは別の試薬分注位置に位置付けられた前記第2の反応容器へ前記試薬を分注する工程と、
前記検体と前記試薬とから調製された試料中の検出対象物を検出する工程と、を備え
前記第1の検体を分注する工程と、前記第1の反応容器へ前記試薬を分注する工程とが実行された後、前記第2の検体を分注する工程と、前記第2の反応容器へ前記試薬を分注する工程が実行され、その後、前記第1の検体と前記試薬とから調製された前記試料中の検出対象物を検出する工程が実行される、検出方法。
【請求項2】
前記第2軸および前記第3軸は、互いに平行である、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記第1軸と、前記第2軸および前記第3軸の少なくとも一方と、が互いに直交する、請求項1または2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記検体および前記試薬が分注された前記反応容器から前記試料を吸引する吸引位置に向けて前記ラックを前記第1軸に沿って搬送する工程と、
前記第1軸と交差する第4軸に沿って、吸引ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記吸引位置に位置付けられた前記反応容器から前記試料を吸引する工程と、をさらに備え、
前記検出する工程において、前記吸引ピペットにより前記反応容器から吸引された前記試料中の検出対象物が検出される、請求項1~のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項5】
前記吸引ピペットにより前記反応容器から前記試料が吸引された後に、当該反応容器に洗浄液を分注し、分注された前記洗浄液を吸引する工程をさらに備える、請求項に記載の検出方法。
【請求項6】
前記試薬とは異なる第2の試薬を分注する第2試薬分注位置に向けて前記ラックを前記第1軸に沿って搬送する工程と、
前記第1軸と交差する第5軸に沿って、前記試薬分注ピペットとは異なる第2の試薬分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記第2試薬分注位置に位置付けられた前記反応容器へ前記第2の試薬を分注する工程と、をさらに備える、請求項4または5に記載の検出方法。
【請求項7】
前記第2軸、前記第3軸、前記第4軸および前記第5軸は、互いに平行である、請求項に記載の検出方法。
【請求項8】
前記検体が収容された検体容器を検知し、
前記検体容器が検知されると、前記ラックを、前記検体分注位置に搬送する、請求項1~のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項9】
前記検出する工程は、フローセルを通過する前記試料中の検出対象物を検出する工程を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項10】
前記試薬は、抗体を含む試薬であり、
前記検体は細胞を含み、
前記検出対象物は、前記抗体に反応した前記細胞表面の抗原を含む、請求項に記載の検出方法。
【請求項11】
複数の反応容器を保持したラックを第1軸に沿って搬送する搬送部と、
第1の反応容器に第1の検体を分注し、第2の反応容器に第2の検体を分注する検体分注ピペットと、
前記第1の反応容器に試薬を分注し、前記第2の反応容器に前記試薬を分注する試薬分注ピペットと、
前記第1軸と上面視で交差する第2軸に沿って、前記検体分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記第1軸と上面視で交差する第3軸に沿って、前記試薬分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させるピペット移動部と、
前記第1の検体と前記試薬とから調製された試料中の検出対象物を検出する検出部と、
制御部と、を備え
前記制御部は、前記検体分注ピペットによって前記第1の反応容器に前記第1の検体を分注し、前記試薬分注ピペットによって前記第1の反応容器に前記試薬を分注した後、前記検体分注ピペットによって前記第2の反応容器に前記第2の検体を分注し、前記試薬分注ピペットによって前記第2の反応容器に前記試薬を分注し、その後、前記検出部によって前記検出対象物を検出するように制御する、検出装置。
【請求項12】
前記ピペット移動部は、前記検体分注ピペットと前記試薬分注ピペットとを個別に直線移動させる、請求項11に記載の検出装置。
【請求項13】
前記ピペット移動部は、前記検体分注ピペットを水平方向に直線移動させる検体分注ピペット移動部と、前記試薬分注ピペットを前記検体分注ピペットの水平方向の移動方向と平行に直線移動させる試薬分注ピペット移動部と、を含み、
前記搬送部は、前記ラックを、前記検体分注ピペットおよび前記試薬分注ピペットの水平方向の移動方向と交差する方向に水平移動させ、前記反応容器を検体分注位置および試薬分注位置のそれぞれに位置付ける、請求項11または12に記載の検出装置。
【請求項14】
前記ラックは、前記反応容器を前記第1軸および前記第2軸と平行に格子状に複数保持し、
前記搬送部は、前記ラックを前記第1軸に沿って搬送することで分注対象の一の反応容器を含む一列の反応容器を前記検体分注ピペットの移動経路の下方に位置付けることが可能であり、
前記検体分注ピペット移動部は、前記移動経路の下方にある一列の反応容器のうち、分注対象の一つの反応容器に対して前記検体分注ピペットがアクセスできるように、前記検体分注ピペットを前記第2軸に沿って直線移動させることが可能である、請求項13に記載の検出装置。
【請求項15】
前記試薬分注ピペットは、抗体を前記反応容器に分注する抗体分注ピペットである、請求項11~14のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項16】
前記搬送部および前記ピペット移動部を収容する筐体と、抗体試薬を収容した抗体試薬容器が前記第3軸に沿った前記筐体の前面側に設置される抗体セット部と、を更に備え、
前記ピペット移動部は、前記抗体分注ピペットを、前記抗体試薬の吸引位置に位置付けるように前記第3軸に沿って直線移動させる、請求項15に記載の検出装置。
【請求項17】
前記反応容器を、前記検体を分注するための検体分注位置に搬送させるように前記搬送部を制御し、前記検体分注ピペットを、前記検体分注位置に移動させるように前記ピペット移動部を制御する制御部、を更に備える、請求項11~16のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項18】
前記試薬分注ピペットは、抗体を前記反応容器に分注する抗体分注ピペットであり、
前記制御部は、前記反応容器に前記検体が分注される前に、前記反応容器を、前記抗体を分注するための抗体分注位置に搬送させるように前記搬送部を制御し、前記抗体分注ピペットを、前記抗体分注位置に移動させるように前記ピペット移動部を制御する、請求項17に記載の検出装置。
【請求項19】
前記検体分注ピペットに対応づけて配置され、前記検体分注ピペットを洗浄する第1洗浄部と、
前記試薬分注ピペットに対応づけて配置され、前記試薬分注ピペットを洗浄する第2洗浄部と、を更に備える、請求項11~18のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項20】
前記搬送部および前記ピペット移動部を収容する筐体をさらに備え、
前記第1洗浄部は、前記第2軸に沿った前記筐体の前面側に配置されており、
前記第2洗浄部は、前記第3軸に沿った前記筐体の前面側に配置されている、請求項19に記載の検出装置。
【請求項21】
前記検出部は、前記試料が通過するフローセルを有し、
前記試料を前記反応容器から前記フローセルに吸引する吸引ピペットを更に備える、請求項11~20のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項22】
前記吸引ピペットと一体的に移動し、前記試料が吸引された前記反応容器に洗浄液を分注し、分注された前記洗浄液を吸引する洗浄ピペットを更に備える、請求項21に記載の検出装置。
【請求項23】
前記第2軸および前記第3軸は、互いに平行である、請求項11~22のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項24】
前記第1軸と、前記第2軸および前記第3軸の少なくとも一方と、が互いに直交する、請求項11~23のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項25】
前記搬送部は、前記ラックを、前記検体および前記試薬が分注された前記反応容器から前記試料を吸引する吸引位置に向けて前記第1軸に沿ってさらに搬送し、
前記ピペット移動部は、前記第1軸と交差する第4軸に沿って、吸引ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、
前記検出部は、前記吸引ピペットにより前記反応容器から吸引された前記試料中の検出対象物を検出する、請求項11~24のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項26】
前記搬送部は、前記ラックを、前記試薬とは異なる第2の試薬を分注する第2試薬分注位置に向けて前記第1軸に沿ってさらに搬送し、
前記ピペット移動部は、前記第1軸と交差する第5軸に沿って、前記試薬分注ピペットとは異なる第2の試薬分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させる、請求項25に記載の検出装置。
【請求項27】
前記第2軸、前記第3軸、前記第4軸および前記第5軸は、互いに平行である、請求項26に記載の検出装置。
【請求項28】
検体分注位置に向けて、複数の反応容器を保持したラックを第1軸に沿って搬送する工程と、
前記第1軸と上面視で交差する第2軸に沿って、検体分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記検体分注位置に位置付けられた前記反応容器へ検体を分注する工程と、
試薬分注位置に向けて、前記ラックを前記第1軸に沿って搬送する工程と、
前記第1軸と上面視で交差する第3軸に沿って、試薬分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記試薬分注位置に位置付けられた前記反応容器へ試薬を分注する工程と、
前記ラックを揺動し、前記検体と前記試薬とから調製された試料を攪拌する工程と、
前記試料中の検出対象物を検出する工程と、を備える、検出方法。
【請求項29】
複数の反応容器を保持したラックを第1軸に沿って搬送する搬送部と、
前記反応容器に検体を分注する検体分注ピペットと、
前記反応容器に試薬を分注する試薬分注ピペットと、
前記第1軸と上面視で交差する第2軸に沿って、前記検体分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させ、前記第1軸と上面視で交差する第3軸に沿って、前記試薬分注ピペットを前記ラックの上方において直線移動させるピペット移動部と、
前記検体と前記試薬とから調製された試料を攪拌するために前記ラックを揺動させる揺動機構と、
前記試料中の検出対象物を検出する検出部と、を備える、検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の検出対象物を検出する検出方法および検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検体と抗体試薬とを混合して試料を調製し、調製された試料中の細胞を検出する細胞分析機器が記載されている。特許文献1の細胞分析機器は、プローブを用いて、検体管の中の検体と、試薬容器内に配置される試薬と、を微量滴定プレートからなる封入領域に分注する。細胞分析機器は、調製された検体/試薬の組み合わせを封入領域から吸引し、フローサイトメーターを介して検体を分析する。細胞分析機器は、検体及び試薬のサンプリング中及びサンプリング後に、プローブをワッシャーステーションにおいて洗浄する。プローブは、微量滴定プレート上に縦横に設けられた複数のウェルに検体または試薬を分注できるように、前後、左右、垂直の3軸方向に移動可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-525816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された装置では、ワッシャーステーションにおいてプローブの洗浄を行った場合でも、1つのプローブにより検体の分注と試薬の分注とが繰り返し行われるため、コンタミネーションのリスクが伴う。コンタミネーションのリスクを低減するために、複数のプローブを用いて検体の分注と試薬の分注とを個別に行うことが考えられる。その場合、検体分注プローブおよび試薬分注プローブの夫々の3軸方向の移動範囲を確保しつつ、検体分注プローブと試薬分注プローブとが干渉しないように各プローブの移動範囲に余裕を持たせる必要があるため、装置が大型化してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、装置の小型化に寄与し、且つ、コンタミネーションのリスクを低減することが可能な検出方法および検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る検出方法は、図1に示すように、検体分注位置(61)に向けて、反応容器(51)を保持したラック(50)を第1軸(41)に沿って搬送する工程と、第1軸(41)と上面視で交差する第2軸(42)に沿って、検体分注ピペット(10)をラック(50)の上方において直線移動させ、検体分注位置(61)に位置付けられた反応容器(51)へ検体を分注する工程と、試薬分注位置(62)に向けて、反応容器(51)を保持したラック(50)を第1軸(41)に沿って搬送する工程と、第1軸(41)と上面視で交差する第3軸(43)に沿って、試薬分注ピペット(11)をラック(50)の上方において直線移動させ、試薬分注位置(62)に位置付けられた反応容器(51)へ試薬を分注する工程と、検体と試薬とから調製された試料中の検出対象物を検出する工程と、を備える。
【0007】
本発明の第一態様の検出方法は、検体分注位置(61)に向けて、反応容器(51)を保持したラック(50)を第1軸(41)に沿って搬送する工程と、第1軸(41)と上面視で交差する第2軸(42)に沿って、検体分注ピペット(10)をラック(50)の上方において直線移動させ、検体分注位置(61)に位置付けられた反応容器(51)へ検体を分注する工程と、試薬分注位置(62)に向けて、反応容器(51)を保持したラック(50)を第1軸(41)に沿って搬送する工程と、第1軸(41)と上面視で交差する第3軸(43)に沿って、試薬分注ピペット(11)をラック(50)の上方において直線移動させ、試薬分注位置(62)に位置付けられた反応容器(51)へ試薬を分注する工程と、を備えている。これにより、検体分注ピペット(10)と試薬分注ピペット(11)とを用いて検体分注と試薬分注とを異なる分注ピペットで別々に行うことができ、コンタミネーションのリスクを低減できる。また、第1軸(41)に沿ってラック(50)を搬送することにより、検体分注ピペット(10)と試薬分注ピペット(11)の移動範囲を制限した装置構成で検体分注と試薬分注とを行えるので、装置を小型化することができる。
【0008】
本発明の第二態様に係る検出装置の一例であるフローサイトメーター(100)は、図1に示すように、反応容器(51)を保持したラック(50)を第1軸(41)に沿って搬送する搬送部(20)と、反応容器(51)に検体を分注する検体分注ピペット(10)と、反応容器(51)に試薬を分注する試薬分注ピペット(11)と、第1軸(41)と交差する第2軸(42)に沿って、検体分注ピペット(10)をラック(50)の上方において直線移動させ、第1軸(41)と交差する第3軸(43)に沿って、試薬分注ピペット(11)をラック(50)の上方において直線移動させるピペット移動部(70)と、検体と試薬とから調製された試料中の検出対象物を検出する検出部(30)と、を備える。
【0009】
本発明の第二態様のフローサイトメーター(100)によれば、反応容器(51)を保持したラック(50)を第1軸(41)に沿って搬送する搬送部(20)と、反応容器(51)に検体を分注する検体分注ピペット(10)と、反応容器(51)に試薬を分注する試薬分注ピペット(11)と、第1軸(41)と交差する第2軸(42)に沿って、検体分注ピペット(10)をラック(50)の上方において直線移動させ、第1軸(41)と交差する第3軸(43)に沿って、試薬分注ピペット(11)をラック(50)の上方において直線移動させるピペット移動部(70)と、を備えている。これにより、検体分注ピペット(10)と試薬分注ピペット(11)とを用いて検体分注と試薬分注とを異なる分注ピペットで別々に行うことができ、コンタミネーションのリスクを低減できる。また、第1軸(41)に沿ってラック(50)を搬送することにより、検体分注ピペット(10)と試薬分注ピペット(11)の移動範囲を制限した装置構成で検体分注と試薬分注とを行えるので、装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の小型化に寄与し、且つ、コンタミネーションのリスクを低減することが可能な検出方法および検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】フローサイトメーターの概要を示した模式図である。
図2】フローサイトメーターの構成例を示す斜視図である。
図3】フローサイトメーターの検出部および制御部を示した斜視図である。
図4】読取部および容器移送部を示した模式的な平面図である。
図5】ピペット移動部の構成例を示した模式的な側面図である。
図6】ピペットおよび反応容器ラックの移動を説明するための模式図である。
図7】検出部が備える光学系の構成例を示した模式図である。
図8】フローサイトメーターの制御処理に関わる構成を示したブロック図である。
図9】フローサイトメーターの分析動作を説明するためのフロー図である。
図10】検体容器を検体取出位置へ搬送する動作を示した図である。
図11】攪拌ユニットにより検体容器を把持する動作を示した図である。
図12】検体容器を容器移送部に設置する動作を示した図である。
図13】容器移送部を読取位置に移動させる動作を示した図である。
図14】読取部による検体情報の読み取り動作を示した図である。
図15】容器移送部を検体吸引位置に移動させる動作を示した図である。
図16図9の抗体分注処理を説明するためのフロー図である。
図17】抗体分注ピペットによる抗体の吸引動作を示した図である。
図18】抗体分注ピペットを分注/吸引位置へ移動させた状態を示した図である。
図19】抗体分注ピペットによる抗体の吐出動作を示した図である。
図20図9の検体分注処理を説明するためのフロー図である。
図21】検体分注ピペットによる検体の吸引動作を示した図である。
図22】検体分注ピペットによる検体の吐出動作を示した図である。
図23図9の試薬分注処理を説明するためのフロー図である。
図24】試薬分注ピペットによる試薬の吐出動作を示した図である。
図25図9の吸引洗浄処理を説明するためのフロー図である。
図26】吸引ピペットによる試料の吸引動作を示した図である。
図27図9の検出処理を説明するためのフロー図である。
図28】複数の検体に対する検体処理の流れを示したタイミングチャートである。
図29】変形例による分注/吸引ユニットの配置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[フローサイトメーターの概要]
まず、図1および図2を参照して、本実施形態の一の態様によるフローサイトメーター100の概要について説明する。フローサイトメーター100は試料中の検出対象物を検出する検出装置の一例である。
【0014】
図1に示すように、フローサイトメーター100は、粒子を分散させた流体をライン状に流して、流体中の個々の粒子を光学的に検出するフローサイトメトリー法による測定を行うための測定装置である。本実施形態のフローサイトメーター100は、検体と試薬とを混合することにより測定用試料を調製する前処理を行うように構成されている。
【0015】
フローサイトメーター100は、搬送部20と、検体分注ピペット10と、試薬分注ピペット11と、ピペット移動部70と、検出部30と、を備える。
【0016】
搬送部20は、反応容器51を保持した反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って搬送させるように構成されている。
【0017】
反応容器51は、液体(検体、試薬)を内部に収容可能な容器である。反応容器51は、たとえば、上部が開放され、底部が塞がれた筒状形状を有する。反応容器51の上部開口から、後述する検体分注ピペット10や試薬分注ピペット11による液体の分注、液体の吸引が可能である。ラック50(以下、反応容器ラック50とも呼ぶ)は、検体分注ピペット10や試薬分注ピペット11が反応容器51にアクセス可能な状態で、反応容器51を保持している。反応容器ラック50が保持可能な反応容器51の数は、複数(例えば、24)でもよい。この場合、反応容器ラック50は、搬送部20上に設置された状態で、複数の反応容器51をたとえば第1水平軸41および第2水平軸42と平行に格子状に並ぶように保持している(図2参照)。
【0018】
搬送部20は、反応容器51が検体分注ピペット10および試薬分注ピペット11よりも下方となる位置で、反応容器ラック50を支持している。搬送部20は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って移動させるための後述する移動機構を含む。
【0019】
搬送部20は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って移動させることにより、検体分注ピペット10および試薬分注ピペット11の各々の分注位置(61、62)へ反応容器51を位置付ける。検体分注位置61は、第1水平軸41と第2水平軸42とが上面視で交差する位置である。試薬分注位置62は、第1水平軸41と第3水平軸43とが上面視で交差する位置である。ピペット移動部70は、検体分注ピペット10を第2水平軸42に沿って検体分注位置61にある反応容器51の直上まで移動させ、下降させる。これにより、検体分注ピペット10の一端が反応容器51の内部に進入し、反応容器51内に液体を分注する。分注後、ピペット移動部70は、検体分注ピペット10を上昇させることにより、検体分注ピペット10の一端が反応容器51の内部から退出する。ピペット移動部70は、試薬分注ピペット11を第3水平軸43に沿って試薬分注位置62にある反応容器51の直上まで移動させ、下降させる。これにより、試薬分注ピペット11の一端が反応容器51の内部に進入し、反応容器51内に液体を分注する。分注後、ピペット移動部70は、試薬分注ピペット11を上昇させることにより、試薬分注ピペット11の一端を反応容器51の内部から退出させる。
【0020】
ピペット移動部70は、検体分注ピペット10を第2水平軸42に沿って直線移動させるように構成されている。検体分注ピペット10は、中空の管状形状を有し、内部に液体を吸引できる。検体分注ピペット10は、一端(下端)が開口し、他端(上端)が流路を通じて吸引圧力(陰圧)および吐出圧力(陽圧)を供給するための流体回路と接続される。これにより、検体分注ピペット10は、吸引圧力により一端から液体を吸引し、吸引した液体を、吐出圧力によって一端から吐出することが可能である。
【0021】
ピペット移動部70は、試薬分注ピペット11を第3水平軸43に沿って直線移動させるように構成されている。試薬分注ピペット11は、中空の管状形状を有し、内部に液体を吸引できる。試薬分注ピペット11は、一端(下端)が開口し、他端(上端)が流路を通じて吸引圧力(陰圧)および吐出圧力(陽圧)を供給するための流体回路と接続される。これにより、試薬分注ピペット11は、吸引圧力により一端から液体を吸引し、吸引した液体を、吐出圧力によって一端から吐出することが可能である。
【0022】
検体分注ピペット10は、検体を反応容器51に分注するように構成されている。またた、試薬分注ピペット11は、試薬を反応容器51に分注するように構成されている。すなわち、搬送部20が、検体分注位置61および試薬分注位置62のそれぞれに向けて、反応容器51を保持した反応容器ラック50を、第1水平軸41に沿って搬送する。検体分注ピペット10は、ピペット移動部70により、第2水平軸42に沿って直線移動され、検体分注位置61に位置付けられた反応容器51へ検体を分注する。試薬分注ピペット11は、ピペット移動部70により、第3水平軸43に沿って直線移動され、試薬分注位置62に位置付けられた反応容器51へ試薬を分注する。反応容器51中で検体と試薬とを反応させることにより、測定用試料が調製される。
【0023】
検出部30は、検体と試薬とから調製された試料中の粒子を光学的に検出するように構成されている。検出部30は、調製された試料をライン状に流して、流体中の個々の粒子を光学的に検出する。後述するが、検出部30は、粒子を含んだ試料を流すフローセルと、粒子を光学的に検出するための光源および受光部とを含む。
【0024】
図1の例では、試薬分注ピペット11が、試薬分注位置62に位置付けられ、かつ検体と試薬とから調製された試料を収容した反応容器51から、試料を吸引する。試薬分注ピペット11により吸引された試料が検出部30へ供給される。検出部30は、供給された試料の光学的検出を実行する。
【0025】
検体は、たとえば血液である。血液はたとえば全血である。試薬は、たとえば検体中の細胞表面や細胞内に存在する抗原を標識する抗体試薬である。抗原は、たとえばT細胞の表面抗原であるCD3とCD4である。試薬は、たとえば赤血球の溶血処理を行うための溶血剤が追加分注されてもよい。これにより、検体中から、抗体試薬に含まれる抗体に反応した細胞表面の抗原が検出される。
【0026】
(フローサイトメーターの効果)
本実施形態の一の態様によるフローサイトメーター100は、上記のように、反応容器ラック50に保持された反応容器51を第1水平軸41に沿って搬送させる搬送部20と、第1水平軸41と交差する第2水平軸42に沿って、検体を反応容器51に分注する検体分注ピペット10を反応容器ラック50の上方において直線移動させ、第1水平軸41と交差する第3水平軸43に沿って、試薬を反応容器51に分注する試薬分注ピペット11を反応容器ラック50の上方において直線移動させるピペット移動部70と、を備えている。これにより、検体分注ピペット10と試薬分注ピペット11とを用いて検体分注と試薬分注とを異なる分注ピペットで別々に行うことができ、コンタミネーションのリスクを低減できる。また、第1水平軸41に沿って反応容器ラック50を搬送することにより、検体分注ピペット10と試薬分注ピペット11の水平面における移動範囲を単一の直線上に制限した状態で検体分注と試薬分注とを行うことができるので、装置を小型化することができる。
【0027】
[フローサイトメーターの構成例]
図2図6を参照して、一実施形態に係るフローサイトメーターの構成例を詳細に説明する。
【0028】
図2図6において、水平面内で直交する2つの軸をX軸およびY軸とし、鉛直軸をZ軸とする。
【0029】
図2および図3の構成例では、フローサイトメーター100は、複数のピペット111、121、131、141、143と、搬送部20と、検出部30(図3参照)とを備える。フローサイトメーター100は、図1に示した複数のピペットの一例として、抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141、洗浄ピペット143を備える。なお、図2の構成例では、試薬分注ピペットとして、抗体分注ピペット111と、試薬分注ピペット131とが設けられている。
【0030】
フローサイトメーター100は、反応容器51に抗体を分注する抗体分注ユニット110と、反応容器51に検体を分注する検体分注ユニット120と、反応容器51に試薬を分注する試薬分注ユニット130と、反応容器51に分注された検体と試薬とから調製された試料を吸引し、試料が吸引された反応容器51を洗浄する吸引洗浄ユニット140と、を備えている。それぞれのユニットに、ピペットが設けられている。また、フローサイトメーター100は、検体ラック151を搬送する検体搬送部150と、検体ラック151から検体容器152をピックアップし、検体容器152に収容された検体の攪拌を実施する攪拌ユニット160とを備える。ユニットは、フローサイトメーター100において所定の機能を果たすように構成された装置のまとまりを意味する。また、フローサイトメーター100は、搬送部20およびピペット移動部70を収容する筐体103(図3参照)を備える。
【0031】
抗体分注ユニット110は、抗体分注ピペット111を含む。抗体分注ピペット111は、抗体試薬を反応容器51に分注するように構成されている。抗体分注ユニット110は、抗体分注ピペット111を移動させる抗体分注ピペット移動部112を含む。抗体分注ピペット移動部112は、X軸に平行な第3水平軸112a、およびZ軸に平行な垂直軸112bに沿って抗体分注ピペット111を直線移動させることが可能であり、Y軸方向には移動しないように構成されている。フローサイトメーター100は、抗体試薬を収容した抗体試薬容器114が第3水平軸112aに沿った筐体103(図3参照)の前面側に設置される抗体セット部113と、を備える。抗体分注ピペット移動部112は、抗体分注ピペット111を、抗体試薬の吸引位置に位置付けるように第3水平軸112aに沿って直線移動させる。抗体分注ピペット111は、抗体分注ピペット111の第3水平軸112a上の位置に配置された抗体セット部113に設置された抗体試薬容器114から、抗体試薬を吸引して、吸引した抗体試薬を反応容器51に分注できる。なお、筐体103の前面側は、検体搬送部150が設けられる側である。
【0032】
検体分注ユニット120は、検体分注ピペット121を含む。検体分注ピペット121は、検体を反応容器51に分注するように構成されている。検体分注ユニット120は、検体分注ピペット121を移動させる検体分注ピペット移動部122を含む。検体分注ピペット移動部122は、X軸に平行な第2水平軸122aおよびZ軸に平行な垂直軸122bに沿って検体分注ピペット121を移動させることが可能であり、Y軸方向には移動しないように構成されている。検体分注ピペット121は、後述する検体吸引位置X12(図4図6参照)に配置された検体容器152から検体を吸引して、吸引した検体を反応容器51に分注できる。
【0033】
試薬分注ユニット130は、試薬分注ピペット131を含む。試薬分注ピペット131は、試薬を反応容器51に分注するように構成されている。試薬分注ユニット130は、試薬分注ピペット131を移動させる試薬分注ピペット移動部132を含む。試薬分注ピペット移動部132は、X軸に平行な第5水平軸132aおよびZ軸に平行な垂直軸132bに沿って試薬分注ピペット131を移動させることが可能であり、Y軸方向には移動しないように構成されている。試薬分注ピペット131は、試薬を収容した試薬容器と流体的に接続されており、試薬を反応容器51に分注できる。
【0034】
吸引洗浄ユニット140は、吸引ピペット141を含む。吸引ピペット141は、試料を反応容器51から、検出部30の試料が通過するフローセル201(図7参照)に吸引するように構成されている。これにより、検体や試薬を分注するピペットとは別個の吸引ピペット141によって、反応容器51から吸引した試料を検出部30に送液できるので、コンタミネーションを抑制できる。
【0035】
また、吸引洗浄ユニット140は、洗浄ピペット143を含む。洗浄ピペット143は、吸引ピペット141と一体的に移動し、試料が吸引された反応容器51に洗浄液を分注し、分注された洗浄液を吸引するように構成されている。洗浄ピペット143によって反応容器51を洗浄できるので、反応容器51を使用するたびに廃棄することなく、反応容器51を反復して使用できる。
【0036】
吸引洗浄ユニット140は、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を移動させる吸引ピペット移動部142を含む。吸引ピペット移動部142は、X軸に平行な第4水平軸142aおよびZ軸に平行な垂直軸142bに沿って吸引ピペット141および洗浄ピペット143を移動させることが可能であり、Y軸方向には移動しないように構成されている。洗浄ピペット143と吸引ピペット141とは、2本1組で束ねるようにして吸引ピペット移動部142に保持されている。
【0037】
抗体分注ユニット110、検体分注ユニット120、試薬分注ユニット130および吸引洗浄ユニット140は、搬送部20による反応容器ラック50の搬送方向である第1水平軸41(Y軸)に沿って並んで設けられている。ピペット移動部70は、各分注ユニットにそれぞれ設けられたピペット移動部を含んで構成されている。つまり、ピペット移動部70は、抗体分注ピペット移動部112、検体分注ピペット移動部122、試薬分注ピペット移動部132および吸引ピペット移動部142を含み、これらのピペット移動部によって、個々のピペット(抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141)を移動させる。第2水平軸122a、第3水平軸112a、第4水平軸142a、第5水平軸132aは、互いに平行な軸である。
【0038】
フローサイトメーター100は、検体分注ピペット121を洗浄する第1洗浄部125と、抗体分注ピペット111を洗浄する第2洗浄部115と、を備える。フローサイトメーター100は、試薬分注ピペット131を洗浄する第3洗浄部135と、吸引ピペット141を洗浄する第4洗浄部145と、をさらに備える。
【0039】
第1洗浄部125は、検体分注ピペット121に対応づけて配置されている。第2洗浄部115は、抗体分注ピペット111に対応づけて配置されている。第3洗浄部135は、試薬分注ピペット131に対応付けて配置されている。第4洗浄部145は、吸引ピペット141に対応付けて配置されている。すなわち、第2洗浄部115、第1洗浄部125、第3洗浄部135および第4洗浄部145が、それぞれ、抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131および吸引ピペット141に対してX軸に沿った軌道上の位置に配置されている。このように各ピペットに対して、各ピペットを洗浄する洗浄部を対応づけて配置することによって、各ピペットを個別に洗浄することが可能である。また、一のピペットが洗浄されている間に、他のピペットを使用することが可能となり、フローサイトメーター100の一連の処理を円滑に実行することができる。第2洗浄部115、第1洗浄部125、第3洗浄部135および第4洗浄部145は、それぞれ、筐体103(図3参照)の前面側に配置されている。
【0040】
各洗浄部(第2洗浄部115、第1洗浄部125、第3洗浄部135および第4洗浄部145)は、実質的に同一構成を有する。各洗浄部は、各ピペットを洗浄可能なように各ピペットの各ユニットにおける下部に配置され、上部が開口した容器形状を有する。各洗浄部は、ピペットを洗浄するための洗浄液を貯留および排出できる。洗浄部内にピペットを挿入することにより、ピペットの外面を洗浄でき、ピペットが洗浄液を吸引することにより、ピペットの内部および流路の洗浄ができる。
【0041】
搬送部20は、抗体分注ユニット110、検体分注ユニット120、試薬分注ユニット130および吸引洗浄ユニット140の下方(すなわち、Z軸の下側)に配置されている。搬送部20は、反応容器ラック50を支持する支持部21と、支持部21をY軸と平行な第1水平軸41に沿って移動する横送り機構22とを含む。横送り機構22は、モーター22aと、モーター22aの駆動力を支持部21に伝達する伝達機構と、Y軸に沿ったガイドレール22bと、を含んで構成される。伝達機構は、たとえばベルト-プーリ機構である。
【0042】
搬送部20は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って一直線状に搬送するように構成されている。これにより、反応容器ラック50を多方向に移動させたり、曲線軌道(たとえば円弧軌道や蛇行軌道)で移動させたりする場合に比べて、搬送部20の移動範囲を制限できるので、装置を小型化することができる。
【0043】
このように、図2図6の構成例では、第1水平軸41は、Y軸に平行である。第2水平軸122a、第3水平軸112a、第4水平軸142a、第5水平軸132aは、第1水平軸41と直交し、X軸に平行である。従って、第2水平軸122a、第3水平軸112a、第4水平軸142a、および第5水平軸132aは、互いに平行である。搬送部20は、反応容器51を、各ピペット(抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141)の水平方向の移動方向(X軸方向)と交差する方向(Y軸方向)に水平移動させ、反応容器51を検体分注位置および試薬分注位置のそれぞれに位置付けるように構成されている。
【0044】
搬送部20は、反応容器ラック50を揺動させる揺動機構23を有する。揺動機構23は、支持部21に収容されており、揺動機構23の上面上に反応容器ラック50が設置される。揺動機構23は、偏心回転機構をモーターで駆動することにより、反応容器ラック50を水平面内(すなわち、XY面内)で揺動させる。揺動により、検体および試薬が分注された反応容器51内の試料を攪拌できる。
【0045】
検体搬送部150は、検体容器152を保持する検体ラック151の設置場所を提供する。検体搬送部150は、ユーザにより設置された検体ラック151を搬送する。検体搬送部150は、検体ラック151を移動させることにより、検体ラック151に保持された検体容器152を、検体取出位置P1へ搬送する。検体容器152は、上端が開口し、底部が塞がれた円筒状の容器である。
【0046】
攪拌ユニット160は、検体取出位置P1へ搬送された検体容器152を把持して検体ラック151から取り出し、検体容器152内の検体を攪拌する機能を有する。攪拌ユニット160は、検体容器152の側面を挟んで把持する一対の把持部161と、一対の把持部161を動作させる駆動機構162とを含む。駆動機構162は、一対の把持部161を軸163に沿って開閉させる動作と、一対の把持部161を上下に移動させる動作と、一対の把持部161を軸163周りに回動させる動作とを行うように構成されている。攪拌ユニット160は、検体取出位置P1の検体容器152を一対の把持部161によって把持し、一対の把持部161を上方へ移動させることにより検体容器152を検体ラック151から抜き取る。攪拌ユニット160は、検体容器152を把持した状態で一対の把持部161を回動させることにより検体容器152を傾け、検体の転倒攪拌を行う。攪拌ユニット160は、攪拌後の検体容器152を、容器移送部165(図4参照)にセットして検体容器152の把持を解除する。また、攪拌ユニット160は、検体吸引後の検体容器152を、検体ラック151に戻す動作を行う。
【0047】
図4に示すように、容器移送部165は、1本の検体容器152を受け容れ保持可能に構成されている。容器移送部165は、保持した検体容器152を、検体取出位置P1の上方位置と、読取位置P2と、検体吸引位置X12とに搬送できる。
【0048】
フローサイトメーター100は、検体が収容された検体容器152から検体情報を読み取る読取部180を備える。読取部180は、読取位置P2に搬送された検体容器152に付与された情報記録媒体から検体情報を読み取る。検体情報が取得されることにより、検体容器152が検知される。情報記録媒体は、たとえばバーコードであり、個々の検体容器152の側面に貼付されている。記録された検体情報は、検体IDを含む。
【0049】
図4に示す例では、読取部180は、ローラ状の3つの回転支持部182により検体容器152を軸周りに回転させ、検体容器152の外壁に貼付されるバーコードを読み取るバーコードリーダーにより構成されている。読取部180は、検体が収容された検体容器を検知する検知部として機能する。
【0050】
図3に示すように、検出部30および制御部170は、フローサイトメーター100において、抗体分注ユニット110、検体分注ユニット120、試薬分注ユニット130および吸引洗浄ユニット140や搬送部20が設置された測定機構収容部101の上部に設置されている。検出部30および制御部170は、測定機構収容部101に設置された各ユニットに対してZ軸に沿って並ぶ(重なる)位置に配置されている。これにより、装置の設置面積を小さくできる。
【0051】
(分注ユニット)
図5を参照して、抗体分注ピペット移動部112、検体分注ピペット移動部122、試薬分注ピペット移動部132、吸引ピペット移動部142の構成を説明する。各ピペット移動部(112、122、132、142)は、各軸に沿った移動範囲が異なる点を除いて実質的に同一構成を有する。図5では、各ピペット移動部を代表して、抗体分注ピペット移動部112を例示している。
【0052】
抗体分注ピペット移動部112は、X軸(水平軸)に沿う直動機構191と、Z軸(垂直軸)に沿う直動機構192と、を含む。直動機構191および直動機構192は、直線方向に往復移動可能な移動機構である。
【0053】
直動機構191は、モーター191aと、伝達機構191bと、リニアガイド191cと、を含む。伝達機構191bは、モーター191aにより回転駆動される主動プーリ196a、従動プーリ196b、および、主動プーリ196aと従動プーリ196bとに掛け渡された環状のベルト196cを含む、ベルト-プーリ機構である。モーター191aの回転によりベルト196cがX軸(水平軸112a)に沿って循環駆動される。ベルト196cに固定された直動機構192がリニアガイド191cに案内されてX軸(水平軸112a)に沿って移動される。
【0054】
同様に、直動機構192は、モーター192aと、伝達機構192bと、リニアガイド192cと、を含む。伝達機構192bは、モーター192aにより回転駆動される主動プーリ197a、従動プーリ197b、および、主動プーリ197aと従動プーリ197bとに掛け渡された環状のベルト197cを含む、ベルト-プーリ機構である。主動プーリ197aは、モーター192aの回転軸に連結されたシャフト197dに対してX軸(水平軸112a)へ摺動可能、かつ、シャフト197dと一体回転するように設けられている。シャフト197dは、多角形断面を有し、主動プーリ197aのX軸(水平軸112a)に沿った移動を許容しつつ、主動プーリ197aと回転方向に噛み合っている。モーター192aの回転によりベルト197cがZ軸(垂直軸112b)に沿って循環駆動される。ベルト197cに固定された保持部材193がリニアガイド192cに案内されてZ軸(垂直軸112b)に沿って移動される。保持部材193に、ピペット(抗体分注ピペット111)が設けられている。保持部材193は、Z軸の下方向に向けてピペットを保持している。
【0055】
このような構成により、各分注/吸引ユニットの各ピペット(抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141および洗浄ピペット143)が、X軸およびZ軸に沿って移動される。モーター191aおよびモーター192aは、たとえばステッピングモーターである。
【0056】
抗体分注ピペット移動部112、検体分注ピペット移動部122、試薬分注ピペット移動部132、吸引ピペット移動部142は、各ピペット(抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141)を個別に直線移動させる。抗体分注ピペット移動部112、検体分注ピペット移動部122、試薬分注ピペット移動部132、吸引ピペット移動部142は、制御部170により個別に制御される。図5の例では、ピペットの各水平軸(112a、122a、132a、142a)に沿った原点位置を検出する原点センサ194と、ピペットの垂直軸(112b、122b、132b、142b)に沿った原点位置を検出する原点センサ195と、が設けられている。原点センサ194は、水平軸に沿った移動範囲の端部(すなわち、移動限度)に配置されている。原点センサ195は垂直軸における移動範囲の上端部に配置されている。ピペットの各軸方向の位置は、原点位置からの移動量によって制御される。
【0057】
なお、各ピペット(抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141および洗浄ピペット143)は、上端部が空圧源102と接続されている。空圧源102から供給される陰圧、陽圧により、各ピペットの先端から液体が吸引、吐出される。
【0058】
(ピペットおよび反応容器の移動)
図6は、抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141および洗浄ピペット143の各位置と、反応容器ラック50による反応容器51の保持位置とを示した模式的な平面図である。
【0059】
反応容器ラック50は、反応容器51を保持する保持孔50aが複数形成されている。複数の保持孔50aは、格子状に並ぶように形成されている。これにより、多数の反応容器51をコンパクトに保持できる。
【0060】
反応容器51は、反応容器ラック50の1つの保持孔50aに1つずつ挿入される。反応容器ラック50は、複数の保持孔50aがX軸およびY軸に平行な格子状に並ぶように搬送部20に設置される。なお、図6では、反応容器ラック50のうち、図6中の右上隅の保持孔50aだけ反応容器51を取り外した状態を示している。
【0061】
X軸に平行な方向に並んだ複数の保持孔50aの間隔(保持孔の中心位置間隔)d1は一定であり、Y軸に平行な方向に並んだ複数の保持孔50aの間隔(保持孔の中心位置間隔)d2は一定である。図6の構成例では、反応容器ラック50には、X軸に平行な方向に6行、Y軸に平行な方向に4列の保持孔50aが形成され、合計24個の反応容器51が保持可能である。
【0062】
各ピペットは、各水平軸(112a、122a、132a、142a)に沿った6つの分注/吸引位置X1~X6と、1つの洗浄位置(X7、X8、X9またはX10)と、に移動可能である。具体的には、ピペットの分注/吸引位置X1~X6への移動は、制御部170が、原点位置(Q1、Q2、Q3、Q4)から分注/吸引位置X1~X6までの各水平軸に沿った距離と、モーターの1パルス当たりの送り量とに基づいて制御する。
【0063】
搬送部20は、第1水平軸41に沿った4つの位置Y1~Y4に向けて、ラック50を移動させるように制御される。位置Y1~Y4は、第1水平軸41が各ピペットの水平軸(112a、122a、132a、または142a)と交差する位置である。具体的には、制御部170が、原点位置Y0における基準となる保持孔50aから各ピペット位置までの第1水平軸41に沿った距離と、複数の保持孔50aの間隔d2と、モーターの1パルス当たりの送り量とに基づいて、筐体103の前面側の4つの保持孔50aに保持された反応容器51を、第1水平軸41上の各位置Y1~Y4に位置付けるよう搬送部20を制御する。例えば、筐体103の前面側の4つの保持孔50aに保持された反応容器51のいずれかが、位置Y1に位置付けられたとき、位置Y1に位置付けられた反応容器51に対してX軸方向に並んでいる5つの反応容器51は、それぞれ位置X2からX6に位置付けられる。原点位置Y0は、原点センサ25によって検知される。位置Y1は、抗体分注ピペット111による抗体分注位置である。位置Y2は、検体分注ピペット121による検体分注位置である。位置Y3は、試薬分注ピペット131による第2試薬分注位置である。位置Y4は、吸引ピペット141および洗浄ピペット143による吸引洗浄位置である。
【0064】
これにより、第1水平軸41に沿う4列の各保持孔50aのいずれかが、分注を行うピペットの水平軸(112a、122a、132a、または142a)上の位置へ移動され、ピペットが6つの分注/吸引位置X1~X6のいずれかの位置へ移動されることにより、任意の保持孔50aに保持された反応容器51に対する分注動作、吸引動作が行われる。このように、搬送部20は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って搬送することで、分注対象の一の反応容器51を含む一列の反応容器51を抗体分注ピペット111の移動経路の下方に位置付けることが可能である。抗体分注ピペット移動部112は、移動経路の下方にある一列の反応容器51のうち、分注対象の一つの反応容器51に対して抗体分注ピペット111がアクセスできるように、抗体分注ピペット111を第3水平軸112aに沿って直線移動させることが可能である。抗体分注ピペット111以外の分注ピペット、ピペット移動部についても同様である。
【0065】
個別のピペットの移動範囲について見ると、抗体分注ピペット111は、第3水平軸112aに沿って、原点位置Q1、分注/吸引位置X1~X6、第2洗浄部115の洗浄位置X7、抗体試薬容器114からの抗体吸引位置X11に移動される。検体分注ピペット121は、第2水平軸122aに沿って、原点位置Q2、分注/吸引位置X21~X26、第1洗浄部125の洗浄位置X8、検体容器152からの検体吸引位置X12に移動される。試薬分注ピペット131は、第5水平軸132aに沿って、原点位置Q3、分注/吸引位置X31~X36、および第3洗浄部135の洗浄位置X9に移動される。吸引ピペット141および洗浄ピペット143は、第4水平軸142aに沿って、原点位置Q4、分注/吸引位置X41~X46、および第4洗浄部145の洗浄位置X10に移動される。
【0066】
なお、図6では模式的に、各ピペットの原点位置Q1~Q4を、X軸において同じ位置(Y軸に沿って並ぶ位置)として図示しているが、実際には各ピペットの原点位置は異なりうる。そのため、たとえば各ピペットを分注/吸引位置X1に移動させるとき、原点位置からの移動距離はピペット毎に異なる。同様に、洗浄位置X7~X10を、X軸において同じ位置(Y軸に沿って並ぶ位置)として図示しているが、各ピペットの洗浄位置は異なる。
【0067】
(検出部の詳細構造)
図7を参照して、検出部30の構成例を説明する。図7に示す例では、検出部30は、試料中の粒子を含む粒子含有液が通過するフローセル201と、フローセル201を通過する粒子に光を照射する光源202a、202bと、粒子に由来する光を受光して電気信号に変換された検出信号を出力する受光素子208、214、215、219及び220と、を備えている。光源202aは、たとえば488nmの波長のレーザダイオードであり、光源202bは、たとえば638nmの波長のレーザダイオードである。
【0068】
本実施形態では、光が照射された際に粒子から発せられる光を、粒子に由来する光と総称する。粒子に由来する光には散乱光および蛍光が含まれる。粒子に由来する光は、どのような波長の光であってもよいが、400nm~850nmの範囲にピーク波長を有する光であることが好ましい。また、粒子に由来する光は、測定項目毎にピーク波長が異なることが好ましい。
【0069】
図7の例では、光源202aから出射された光は、コリメートレンズ203、ダイクロイックミラー204、レンズ系205を経てフローセル201に照射される。フローセル201を通過する粒子に由来する前方散乱光は、レンズ系206により集光され、バンドパスフィルタ207を経て受光素子208に入射する。
【0070】
フローセル201を通過する粒子に由来する側方散乱光及び側方蛍光は、レンズ系209を経てミラー210aで反射する。ミラー210aは、たとえば470nm以上850nm以下の波長の光を反射する。ミラー210aを反射した488nmの側方散乱光は、レンズ系211、ミラー212、レンズ系213を経て、受光素子214に入射する。たとえば、620nm以下の側方蛍光は、565nm以上630nm以下の波長の光を反射するミラー212で反射し、受光素子215に入射する。
【0071】
光源202bから出射された光は、コリメートレンズ216、ダイクロイックミラー204、レンズ系205を経てフローセル201に照射される。フローセル201を通過する粒子に由来する光の側方蛍光は、レンズ系209を経てミラー210bで反射する。ミラー210bは、たとえば470nm以上645nm以下の波長の光を透過し、665nm以上850nm以下の波長の光を反射する。ミラー210aを反射した側方蛍光は、レンズ系217で集光されミラー218に入射する。ミラー218は、たとえば470nm以上730nm以下の波長の光を透過し、750nm以上850nm以下の波長の光を反射する。例えば、レンズ系217で集光された750nm以上、850nm以下の側方蛍光はミラー218で反射され、受光素子219に入射する。また、レンズ系217で集光された波長が665nm以上、730nm以下の側方蛍光は、ミラー218を透過して受光素子220に入射する。
【0072】
本実施形態では、フローセル201は、シースフローセルである。また、前方散乱光を受光する受光素子208は、フォトダイオードを用い、側方散乱光を受光する受光素子214は、アバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode:APD)である。側方蛍光を受光する受光素子215、219及び220は、フォトマルチプライアチューブ(PhotoMultiplier Tube:PMT)である。本実施形態では、検出部30が5つの受光素子208、214、215、219及び220を備える。3つの受光素子215、219及び220は、試料中の粒子に結合した色素に由来し異なるピーク波長を有する3つの光の光学的情報をそれぞれ検出するものである。
【0073】
各受光素子208、214、215、219及び220が出力する検出信号は、増幅およびA/D変換されて制御部170(図3参照)に入力される。
【0074】
(制御部の詳細)
図8は、フローサイトメーター100の構成例を示すブロック図である。制御部170は、フローサイトメーター100の各部に対して制御信号を送受信することによって、各種制御を行う。図8に示すように、フローサイトメーター100は、制御部170と、表示装置250と、攪拌ユニット160と、検体搬送部150と、容器移送部165と、読取部180と、搬送部20と、抗体分注ピペット移動部112および抗体分注ピペット111を備える抗体分注ユニット110と、検体分注ピペット移動部122および検体分注ピペット121を備える検体分注ユニット120と、試薬分注ピペット移動部132および試薬分注ピペット131を備える試薬分注ユニット130と、吸引ピペット移動部142、吸引ピペット141、および洗浄ピペット143を備える吸引洗浄ユニット140と、検出部30と、を備える。
【0075】
制御部170は、CPUであるプロセッサ171と、記憶部172と、センサドライバ173と、駆動部ドライバ174とを含んでいる。記憶部172は、フローサイトメーター100の各部を制御するための制御プログラムなどを格納するROM、および、RAMなどからなる。プロセッサ171は、記憶部172に格納されたプログラムを実行することによって、制御部170として機能するための演算処理を実行する。制御部170は、表示装置250と接続され、表示装置250に解析結果などの各種情報を表示させることができる。表示装置250は、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどである。
【0076】
制御部170のプロセッサ171は、センサドライバ173または駆動部ドライバ174を介して、フローサイトメーター100の各部のセンサおよび駆動モーターと接続されている。プロセッサ171は、センサからの検知信号に基づいて駆動モーターの動作を制御する。
【0077】
制御部170は、検体ラック151に保持された検体容器152を順次検体取出位置P1に搬送するように、検体搬送部150を制御する。制御部170は、攪拌ユニット160が保持する検体容器152に収容された検体を攪拌させ、容器移送部165に設置するように、攪拌ユニット160を制御する。制御部170は、検体取出位置P1の上方位置と、読取位置P2と、検体吸引位置X12と移動するように容器移送部165を制御する。制御部170は、検体が収容された検体容器152を検知するように読取部180を制御する。制御部170は、読取部180により情報記録媒体から読み取られた検体情報を取得する。
【0078】
制御部170は、反応容器ラック50を搬送するように搬送部20を制御する。制御部170は、抗体分注ピペット111が反応容器51に抗体を分注するように、抗体分注ユニット110を制御する。制御部170は、検体分注ピペット121が反応容器51に検体を分注するように、検体分注ユニット120を制御する。制御部170は、試薬分注ピペット131が反応容器51に試薬を分注するように、試薬分注ユニット130を制御する。制御部170は、吸引ピペット141が、反応容器51に分注された検体と試薬とから調製された試料を吸引するように、吸引洗浄ユニット140を制御する。制御部170は、洗浄ピペット143が、試料が吸引された反応容器51を洗浄するように、吸引洗浄ユニット140を制御する。
【0079】
(フローサイトメーターの動作)
図9は、フローサイトメーター100により検出方法を実行する一連の処理を示すフローチャートである。図8に示す制御部170が、抗体分注ユニット110、検体分注ユニット120、試薬分注ユニット130、吸引洗浄ユニット140、搬送部20、検出部30、検体搬送部150、攪拌ユニット160、容器移送部165及び読取部180を制御することによって、一連の処理が実行される。以下、フローサイトメーター100の各部については、図2図8を参照するものとする。
【0080】
フローサイトメーター100の一連の処理に先立つ準備作業として、ユーザは、検体を収容した検体容器152を保持する検体ラック151を、検体搬送部150上に設置する。測定処理は、ユーザからの測定開始指示を制御部170が受け付けることにより開始される。
【0081】
図9のステップS11において、制御部170は、検体ラック151に保持された検体容器152を検体取出位置P1(図10参照)へ搬送するように検体搬送部150を制御する。制御部170は、ステップS12において、一対の把持部161により検体容器152を把持して検体ラック151から取り上げる(図11参照)ように、攪拌ユニット160を制御する。制御部170は、ステップS13において、検体容器152を把持した状態で一対の把持部161を軸163(図2参照)周りに回動させることにより、検体容器152に収容された検体を攪拌するように、攪拌ユニット160を制御する。
【0082】
制御部170は、ステップS14において、検体容器152の検体情報を読み取るように読取部180および容器移送部165を制御する。すなわち、制御部170は、容器移送部165を検体取出位置P1の上方へ移動(図12参照)させ、検体容器152を容器移送部165に設置するように、容器移送部165および攪拌ユニット160を制御する。制御部170は、検体容器152を保持した容器移送部165を読取位置P2へ移動(図13参照)させ、読取位置P2に搬送された検体容器152に付与された情報記録媒体から検体情報を読み取る(図14参照)ように、容器移送部165および読取部180を制御する。制御部170は、読取部180から、読み取られた検体情報を取得する。検体情報の読み取り後、制御部170は、検体容器152を検体吸引位置X12(図15参照)へ移動させるように容器移送部165を制御する。なお、後述する検体分注処理において、検体吸引位置X12に位置付けられた検体容器152から検体が吸引される。
【0083】
制御部170は、ステップS15において、抗体分注処理を実行するように、抗体分注ユニット110と搬送部20とを制御する。抗体分注処理において、いずれかの反応容器51に抗体試薬が分注される。抗体は、たとえば細胞(白血球)が有する抗原と特異的に結合する抗体であって、蛍光物質を標識した蛍光標識抗体である。ステップS16において、制御部170は、検体分注処理を実行するように、検体分注ユニット120と搬送部20と攪拌ユニット160と読取部180とを制御する。検体分注処理において、抗体が分注された反応容器51へ検体容器152内の検体が分注される。検体は、たとえば全血の血液検体である。ステップS17において、制御部170は、試薬分注処理を実行するように、試薬分注ユニット130と搬送部20とを制御する。試薬分注処理において、抗体および検体が分注された反応容器51へ、試薬が分注される。分注される試薬は、たとえば溶血剤である。ステップS18において、制御部170は、吸引洗浄処理を実行するように、吸引洗浄ユニット140と搬送部20とを制御する。吸引洗浄処理において、抗体、検体および試薬が分注された反応容器51内から試料が吸引されて検出部30へ送液される。そして、試料吸引後の反応容器51が洗浄液により洗浄される。ステップS19において、制御部170は、検出処理を実行するように、検出部30を制御する。検出処理において、検出部30により試料中の細胞に対する光学的情報が取得され、制御部170が光学的情報の分析を行う。
【0084】
〈抗体分注処理〉
図16図19を参照して、図9のステップS15の抗体分注処理の一例を説明する。
【0085】
抗体分注処理において、制御部170は、反応容器51に検体が分注される前に、反応容器51を、抗体を分注するための抗体分注位置Y1に搬送させるように搬送部20を制御し、抗体分注ピペット111を、抗体分注位置(X1~X6のいずれか)に移動させるように抗体分注ピペット移動部112を制御する。これにより、抗体分注ピペット111が検体と接触することを回避できるので、抗体分注ピペット111のコンタミネーションを防止できる。
【0086】
具体的には、図16のステップS21において、制御部170は、抗体分注ピペット111により、抗体セット部113の抗体試薬容器114から抗体を吸引するように抗体分注ユニット110を制御する。制御部170は、抗体吸引位置X11へ抗体分注ピペット111を第3水平軸112aに沿って移動させ、垂直軸112bに沿って抗体試薬容器114内へ抗体分注ピペット111を進入させるように、抗体分注ピペット移動部112を制御する(図17参照)。制御部170は、抗体分注ピペット111により、抗体試薬容器114から抗体を吸引させた後、垂直軸112bに沿って抗体試薬容器114外の上方へ抗体分注ピペット111を退避させるように、抗体分注ユニット110を制御する。
【0087】
このとき、制御部170は、ステップS22において、搬送部20による反応容器ラック50の第1水平軸41に沿った移動と、抗体分注ピペット111の第3水平軸112aに沿った移動とを実行させる。すなわち、制御部170は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って移動させることにより、分注される対象となる反応容器51が抗体分注ピペット111の第3水平軸112a上となる抗体分注位置Y1に配置されるように、搬送部20を制御する。制御部170は、分注先である反応容器51が配置された位置まで抗体分注ピペット111を移動させるように抗体分注ピペット移動部112を制御する。制御部170は、第3水平軸112a上の分注/吸引位置X1~X6のうち、分注対象の反応容器51がある位置(ここでは、分注/吸引位置X1として説明する)へ、抗体分注ピペット111を位置付けるように抗体分注ピペット移動部112を制御する(図18参照)。
【0088】
制御部170は、ステップS23において、抗体分注ピペット111を垂直軸112bに沿って下降させ、反応容器51に挿入して抗体を反応容器51に吐出するように、抗体分注ユニット110を制御する(図19参照)。分注後、制御部170は、垂直軸112bに沿って反応容器51外の上方へ抗体分注ピペット111を退避させるように、抗体分注ピペット移動部112を制御する。
【0089】
制御部170は、ステップS24において、抗体分注ピペット111を洗浄するように抗体分注ユニット110を制御する。制御部170は、第2洗浄部115の洗浄位置X7(図19参照)へ抗体分注ピペット111を移動させ、抗体分注ピペット111を垂直軸112bに沿って下降させ、第2洗浄部115内に挿入するように、抗体分注ピペット移動部112を制御する。制御部170は、第2洗浄部115内に洗浄液を供給させ、抗体分注ピペット111を洗浄させる制御を行う。洗浄後、制御部170は、垂直軸112bに沿って第2洗浄部115外の上方へ抗体分注ピペット111を退避させるように、抗体分注ピペット移動部112を制御する。
【0090】
制御部170は、ステップS25において、抗体分注ピペット111を原点位置Q1に戻すように、抗体分注ピペット移動部112を制御する。
【0091】
〈検体分注処理〉
図20から図22を参照して、図9のステップS16の検体分注処理の一例を説明する。
【0092】
検体分注処理において、制御部170は、反応容器51を、検体を分注するための検体分注位置Y2に搬送させるように搬送部20を制御し、検体分注ピペット121を、検体分注位置(X1~X6のいずれか)に移動させるように検体分注ピペット移動部122を制御する。これにより、検体容器152が検知される度に順次検体を反応容器51へ分注できる。
【0093】
この際、制御部170は、検体容器152が検知される(すなわち、読取部180により検体情報が読み取られる)と、反応容器ラック50を検体分注位置Y2へ搬送するように搬送部20を制御する。
【0094】
制御部170は、ステップS31において、検体吸引位置X12へ検体分注ピペット121を第2水平軸122aに沿って移動させるように、検体分注ピペット移動部122を制御する(図21参照)。
【0095】
制御部170は、ステップS32において、検体分注ピペット121により、検体容器152内から検体を吸引させるように検体分注ユニット120を制御する。制御部170は、検体吸引位置X12の検体容器152の内部へ検体分注ピペット121を垂直軸122bに沿って下方移動させるように検体分注ピペット移動部122を制御する。制御部170は、検体分注ピペット121により検体を吸引させるように、検体分注ユニット120を制御する。吸引後、制御部170は、検体吸引位置X12の検体容器152の外部へ検体分注ピペット121を垂直軸122bに沿って上方移動させるように、検体分注ピペット移動部122を制御する。
【0096】
また、制御部170は、ステップS33において、搬送部20による反応容器ラック50の第1水平軸41に沿った移動と、検体分注ピペット121の第2水平軸122aに沿った移動とを実行させる。すなわち、制御部170は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って移動させることにより、抗体を収容した反応容器51が検体分注ピペット121の第2水平軸122a上となる検体分注位置Y2に配置されるように、搬送部20を制御する。制御部170は、第2水平軸122a上の分注/吸引位置X1~X6のうち、分注対象の反応容器51がある位置(分注/吸引位置X1)に検体分注ピペット121を位置付けるように検体分注ピペット移動部122を制御する(図22参照)。
【0097】
制御部170は、ステップS34において、検体分注ピペット121を反応容器51に挿入するように垂直軸122bに沿って下方移動させ、検体を反応容器51に吐出するように、検体分注ユニット120を制御する。分注後、制御部170は、垂直軸122bに沿って反応容器51外の上方へ検体分注ピペット121を退避させるように、検体分注ピペット移動部122を制御する。制御部170は、ステップS35において、反応容器ラック50を偏心揺動させるように、搬送部20の揺動機構23を制御する。揺動により、反応容器51内の抗体と検体とが攪拌される。
【0098】
制御部170は、ステップS36において、検体分注ピペット121を洗浄するように検体分注ユニット120を制御する。制御部170は、第1洗浄部125の洗浄位置X8(図22参照)へ検体分注ピペット121を移動させ、検体分注ピペット121を垂直軸122bに沿って下方移動させ、第1洗浄部125内に挿入するように、検体分注ピペット移動部122を制御する。制御部170は、第1洗浄部125内に洗浄液を供給させ、検体分注ピペット121を洗浄させる制御を行う。洗浄後、制御部170は、垂直軸122bに沿って第1洗浄部125外の上方へ検体分注ピペット121を退避させるように、検体分注ピペット移動部122を制御する。
【0099】
制御部170は、ステップS37において、検体分注ピペット121を原点位置Q2に戻すように、検体分注ピペット移動部122を制御する。
【0100】
〈試薬分注処理〉
図23および図24を参照して、図9のステップS17の試薬分注処理の一例を説明する。
【0101】
試薬分注処理において、制御部170は、反応容器ラック50を、試薬を分注するための試薬分注位置Y3に搬送するように搬送部20を制御し、検体が分注された反応容器51に試薬を分注するように試薬分注ピペット131を第5水平軸132aに沿って移動させるように試薬分注ピペット移動部132を制御する。これにより、検体分注ピペット121とは異なる試薬分注ピペット131によって試薬分注を行えるので、コンタミネーションの発生を抑制できる。
【0102】
具体的には、制御部170は、図23のステップS51において、搬送部20による反応容器ラック50の第1水平軸41に沿った移動と、試薬分注ピペット131の第5水平軸132aに沿った移動とを実行させる。すなわち、制御部170は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って移動させることにより、分注される対象となる反応容器51が試薬分注ピペット131の第5水平軸132a上の試薬分注位置Y3に配置されるように、搬送部20を制御する(図24参照)。制御部170は、抗体および検体を収容した反応容器51に対する分注位置まで試薬分注ピペット131を移動させるように試薬分注ピペット移動部132を制御する。制御部170は、第5水平軸132a上の分注/吸引位置X1~X6のうち、分注対象の反応容器51がある位置(分注/吸引位置X1)へ、試薬分注ピペット131を位置付けるように試薬分注ピペット移動部132を制御する。
【0103】
制御部170は、ステップS52において、試薬分注ピペット131を垂直軸132bに沿って下降させ、反応容器51に挿入して試薬を反応容器51に吐出するように、試薬分注ユニット130を制御する。分注後、制御部170は、垂直軸132bに沿って反応容器51外の上方へ試薬分注ピペット131を退避させるように、試薬分注ピペット移動部132を制御する。
【0104】
制御部170は、ステップS53において、反応容器ラック50を偏心揺動させるように、搬送部20の揺動機構23を制御する。揺動により、反応容器51内の抗体と検体と試薬とが攪拌される。
【0105】
制御部170は、ステップS54において、試薬分注ピペット131を洗浄するように試薬分注ユニット130を制御する。制御部170は、第3洗浄部135の洗浄位置X9(図24参照)へ試薬分注ピペット131を移動させ、試薬分注ピペット131を垂直軸132bに沿って下降させ、第3洗浄部135内に挿入するように、試薬分注ピペット移動部132を制御する。制御部170は、第3洗浄部135内に洗浄液を供給させ、試薬分注ピペット131を洗浄させる制御を行う。洗浄後、制御部170は、垂直軸132bに沿って第3洗浄部135外の上方へ試薬分注ピペット131を退避させるように、試薬分注ピペット移動部132を制御する。
【0106】
制御部170は、ステップS55において、試薬分注ピペット131を原点位置Q3に戻すように、試薬分注ピペット移動部132を制御する。
【0107】
〈吸引洗浄処理〉
図25および図26を参照して、図9のステップS18の吸引洗浄処理の一例を説明する。
【0108】
制御部170は、図25のステップS61において、搬送部20による反応容器ラック50の第1水平軸41に沿った移動と、吸引ピペット141および洗浄ピペット143の第4水平軸142aに沿った移動とを実行させる。すなわち、制御部170は、反応容器ラック50を第1水平軸41に沿って移動させることにより、分注される対象となる反応容器51が吸引ピペット141および洗浄ピペット143の第4水平軸142a上の吸引洗浄位置Y4に配置されるように、搬送部20を制御する(図26参照)。制御部170は、第4水平軸142a上の分注/吸引位置X1~X6のうち、分注対象の反応容器51がある位置(分注/吸引位置X1)へ、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を位置付けるように吸引ピペット移動部142を制御する。これにより、抗体、検体および試薬を収容した反応容器51に対する吸引位置へ吸引ピペット141および洗浄ピペット143が位置付けられる。
【0109】
制御部170は、ステップS62において、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を垂直軸142bに沿って下降させ、吸引ピペット141により試料を反応容器51から吸引するように、吸引洗浄ユニット140を制御する。制御部170は、吸引ピペット141に吸引された試料を、検出部30へ送液するように吸引洗浄ユニット140を制御する。
【0110】
制御部170は、ステップS63において、洗浄ピペット143から反応容器51内に洗浄液を吐出するように、吸引洗浄ユニット140を制御する。制御部170は、ステップS64において、洗浄ピペット143により反応容器51内の洗浄液を吸引するように、吸引洗浄ユニット140を制御する。洗浄液の吸引後、制御部170は、垂直軸142bに沿って反応容器51外の上方へ吸引ピペット141および洗浄ピペット143を退避させるように、吸引ピペット移動部142を制御する。
【0111】
制御部170は、ステップS65において、反応容器ラック50を原点位置Y0(図6参照)に戻すように、搬送部20を制御する。
【0112】
制御部170は、ステップS66において、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を洗浄するように吸引洗浄ユニット140を制御する。制御部170は、第4洗浄部145の洗浄位置X10(図26参照)へ吸引ピペット141および洗浄ピペット143を第4水平軸142aに沿って移動させ、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を垂直軸142bに沿って下方移動させて第4洗浄部145内に挿入するように、吸引ピペット移動部142を制御する。制御部170は、第4洗浄部145内に洗浄液を供給させ、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を洗浄させる制御を行う。洗浄後、制御部170は、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を垂直軸142bに沿って第4洗浄部145外の上方へ退避させるように、吸引ピペット移動部142を制御する。
【0113】
制御部170は、ステップS67において、吸引ピペット141および洗浄ピペット143を原点位置Q4に戻すように、吸引ピペット移動部142を制御する。
【0114】
〈検出処理〉
図27を参照して、図9のステップS19の検出処理の一例を説明する。
【0115】
制御部170は、ステップS71において、試料中の検出対象物(細胞および抗体試薬に含まれる抗体に反応した細胞表面抗原)を光学的に検出するように検出部30を制御する。制御部170は、検出部30から、前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光に基づく測定データを取得する。測定データは、たとえば細胞の大きさを反映する散乱光強度、細胞表面の抗原と抗体との結合の有無を反映する蛍光強度の情報を含む。
【0116】
制御部170は、ステップS72において、制御部170から受信した測定データの解析を行う。制御部170は、は、個々の細胞の測定データから、たとえば試料中の総細胞数、抗体と結合した陽性細胞数、抗体と結合しない陰性細胞数、などを算出する。制御部170は、は、ステップS73において、測定データの解析結果を表示装置250に出力し、画面表示させる。
【0117】
以上により、フローサイトメーター100の分析処理(粒子分析方法)が完了する。
【0118】
ここでは、検体ラック151(図2参照)に保持された1つの検体容器152中の検体に対する分析処理の流れを説明した。フローサイトメーター100は、検体ラック151に保持された複数の検体容器152について、1つずつ順次、分析処理を行う。
【0119】
そして、本実施形態では、搬送する工程において、反応容器ラック50が、検体分注位置Y2および試薬分注位置(Y1、Y3)のそれぞれに順次搬送される。検体を分注する工程において、検体分注ピペット121を各検体分注位置(X1~X6)に移動させ、各検体分注位置に位置付けられた反応容器51に検体が分注される。試薬を分注する工程において、試薬分注ピペット(抗体分注ピペット111、試薬分注ピペット131)を各試薬分注位置(X1~X6)に移動させ、各試薬分注位置に位置付けられた反応容器51に試薬が分注される。
【0120】
制御部170は、測定対象の検体が複数存在する場合、各検体の反応時間を考慮して、各検体の分析処理動作を並行して実行する制御を行う。すなわち、制御部170は、ピペットによる分注/吸引動作のタイミングおよび反応容器ラック50の搬送タイミングが重複しないように、複数の検体に対する処理タイミングを制御する。
【0121】
図28を参照して、例えば3つの検体(検体A、検体Bおよび検体C)に対して各処理を実行する場合の処理タイミングの一例を説明する。
【0122】
制御部170(図8参照)は、時間T1において、第1の反応容器51aに抗体分注処理を実行する。次に、制御部170は、例えば時間T1から所定期間(例えば75秒)経過後の時間T2において、最初の検体Aを第1の反応容器51aに分注する検体分注処理を実行する。時間T1および時間T2では、最初の検体Aについての抗体分注処理および検体分注処理を実行するように、抗体分注ユニット110、検体分注ユニット120および搬送部20が制御される。
【0123】
制御部170は、時間T2から所定期間(例えば15分)経過後の時間T7まで、第1の反応容器51aに収容された抗体及び検体Aを反応させる。この間、各分注ユニットおよび搬送部20は、別の検体の処理動作を行える。制御部170は、第1の反応容器51aに収容された抗体及び検体Aを反応させる時間、すなわち、時間T2から時間T7までの間に、検体B及び検体Cについての分析処理動作の制御を開始する。
【0124】
制御部170は、時間T3において、第2の反応容器51bに抗体分注処理を実行する。次に、制御部170は、時間T4において、検体Bを第2の反応容器51bに分注する検体分注処理を実行する。時間T3および時間T4では、検体Bについての抗体分注処理および検体分注処理を実行するように、抗体分注ユニット110、検体分注ユニット120および搬送部20が制御される。制御部170は、時間T4から所定期間(例えば15分)経過後の時間T8まで、第2の反応容器51bに収容された抗体及び検体Bを反応させる。
【0125】
制御部170は、時間T5において、第3の反応容器51cに抗体分注処理を実行する。次に、制御部170は、時間T6において、検体Cを第3の反応容器51cに分注する検体分注処理を実行する。制御部170は、時間T6から所定期間(例えば15分)経過後の時間T9まで、第3の反応容器51cに収容された抗体及び検体Cを反応させる。
【0126】
制御部170は、第1の反応容器51aに収容された抗体及び検体Aの反応が完了した時間T7において、第1の反応容器51aに対する試薬分注処理を実行する。制御部170は、時間T7から所定期間(たとえば15分)の間、第1の反応容器51aに収容された検体Aと試薬を反応させる。その後、吸引ピペット141により第1の反応容器51aに収容された試料を吸引し、検出部30に送液する。検出部30は、送液された試料中の検出対象物を検出する。同様に、制御部170は、第2の反応容器51bに収容された抗体及び検体Bの反応が完了した時間T8において、第2の反応容器51bに対する試薬分注処理を実行する。制御部170は、時間T8から所定期間の間、第2の反応容器51bに収容された検体Bと試薬を反応させる。その後、吸引ピペット141により第2の反応容器51bに収容された試料を吸引し、検出部30に送液する。検出部30は、送液された試料中の検出対象物を検出する。制御部170は、第3の反応容器51cに収容された抗体及び検体Cの反応が完了した時間T9において、第3の反応容器51cに対する試薬分注処理を実行する。制御部170は、時間T9から所定期間の間、第3の反応容器51cに収容された検体と試薬を反応させる。その後、吸引ピペット141により第3の反応容器51cに収容された試料を吸引し、検出部30に送液する。検出部30は、送液された試料中の検出対象物を検出する。
【0127】
制御部170は、このように、各検体の分析処理における分注/吸引処理以外の反応時間を利用して、複数の検体についての分注/吸引処理動作を実行する制御を行う。制御部170は、各検体A、BおよびCについての後続する吸引洗浄処理についても、同様にタイミングをずらして実行する。これにより、測定対象の検体が複数存在する場合でも、各検体に対する分析処理動作を並行実施することが可能であり、その結果、検体分析装置の処理効率を向上させることができる。
【0128】
上記実施形態は、検体と試薬を混合する前処理工程と、検出部30による検出工程と、を一体で行う装置において好適である。すなわち、汎用の前処理装置と検出装置とを組み合わせていた従前の装置であれば小型化を実現しにくいのに対し、本実施形態では前処理装置と検出装置とを一体的な装置としたうえで小型化を実現しやすい。また、前処理工程と検出工程とを一連の処理として実施できるので、処理効率が向上する。
【0129】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0130】
たとえば、各ユニット(例えば、抗体分注ユニット110、検体分注ユニット120、試薬分注ユニット130、及び、吸引洗浄ユニット140)は、第1水平軸41に沿って配置されていればよく、各ユニットの並びは、図2に示した並びに限定されない。
【0131】
たとえば図29に示すように、図29中の左側から、抗体分注ユニット110(抗体分注ピペット111)、検体分注ユニット120(検体分注ピペット121)、試薬分注ユニット130(試薬分注ピペット131)、吸引洗浄ユニット140(吸引ピペット141及び洗浄ピペット143)、の順で配置されてもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、「第1軸」、「第2軸」および「第3軸」の一例として、第1水平軸41、第2水平軸42(122a)、第3水平軸43(112a)を示したが、本発明はこれに限られない。第1軸は、水平軸であればよい。第2軸と第3軸とは、いずれも水平軸でなくてもよく、上下方向に傾斜した軸でもよい。同様に、「第4軸」および「第5軸」の一例として、第4水平軸142aおよび第5水平軸132aを示したが、第4軸と第5軸とは、いずれも水平軸でなくてもよく、上下方向に傾斜した軸でもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、第1水平軸41は、Y軸に平行な軸であるとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限られない。例えば、第1水平軸41は、X軸に平行な軸であってもよい。この場合、第2水平軸、第3水平軸は、Y軸に平行な軸であってよい。第1水平軸41と第2水平軸および第3水平軸とは、直交しなくてもよく、一定の角度で交差してもよい。第2水平軸と第3水平軸とは、平行でなくてもよく、第2水平軸の延長線と第3水平軸の延長線とが交差してもよい。また、第2水平軸と第3水平軸とが交差していてもよく、その場合、検体分注ピペットおよび試薬分注ピペットの一方が交差点を通過する際に他方が交差点から退避するようにピペット移動部が制御されればよい。
【0134】
上記実施形態では、フローサイトメーター100は、各ピペットに個別の洗浄部を備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フローサイトメーター100は、各ピペットの洗浄に兼用される洗浄部を備えてもよい。すなわち、フローサイトメーター100は、抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、及び吸引ピペット141の全てを洗浄可能な単一の洗浄部を備えてもよい。また、フローサイトメーター100は、一のピペットに使用される洗浄部と、他の複数のピペットに兼用される洗浄部とを備えてもよい。例えば、フローサイトメーター100は、検体分注ピペット121を洗浄する洗浄部と、抗体分注ピペット111、試薬分注ピペット131、及び吸引ピペット141を洗浄する洗浄部と、を備えてもよい。フローサイトメーター100は、分析対象となる検体の分注を行う検体分注ピペット121を洗浄するための検体専用洗浄部を備えることで、分析結果に直接的に影響を与える検体のコンタミネーションを効果的に抑制できる。
【0135】
上記実施形態では、所定の光が照射された際に粒子から発せられる光(散乱光、蛍光)を、粒子に由来する光と総称するが、本発明はこれに限定されない。例えば、粒子に由来する光は、粒子に含まれる物質自体が発する光であってもよい。
【0136】
上記実施形態では、図7に示した検出部30が、565nm以上630nm以下の側方蛍光を検出するための単一のミラー212及び受光素子215を備えるが、本発明はこれに限定されない。例えば、検出部30は、ミラー212及び受光素子215のそれぞれを複数備えてもよい。例えば、検出部30は、波長が512nm以上、570nm以下の側方蛍光を反射するミラーと、当該ミラーから反射した当該側方蛍光が入射する受光素子をさらに備えてもよい。
【0137】
上記実施形態では、検出部30は、側方蛍光を検出するための3つの受光素子215、219及び220を備えるが、本発明はこれに限定されない。検出部30は、蛍光検出用に1つ、2つまたは4つ以上の受光素子を備えていてもよい。検出部30は、3以上の受光素子を備え、3以上の受光素子のうち少なくとも2以上の受光素子は、異なるピーク波長を有する少なくとも2つの色素に由来する光の光学的情報をそれぞれ検出するものであることが好ましい。
【0138】
上記実施形態では、検出部30は、2つの光源202a及び202bを備えるが、本発明はこれに限定されない。例えば、光源は、1つまたは3つ以上であってもよい。光源は、粒子に結合した色素に由来する光の波長領域に応じて選択される。光源が2以上である場合には、これらの光源は異なるピーク波長を有する光を発することが好ましい。光源が2以上である場合には、光源が1つである場合に比べて、精度良く複数の蛍光を分離して検出できるため好ましい。また、各光源からの光のピーク波長に適した色素を用いることで、複数の蛍光のそれぞれの波長領域の重複部分を減らすこともできる。
【0139】
上記実施形態では、制御部170は、例えばプロセッサが実行するソフトウェアプログラムによって実装されるが、本発明はこれに限定されない。制御部170は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して、フローサイトメーター100の外部からダウンロードされて提供されてもよいし、又は、半導体メモリ、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の情報記録媒体によって提供されてもよい。
【0140】
上記実施形態では、制御部170が、フローサイトメーター100が備える各ユニットの動作制御を行う機能と、検出部30の光学的情報に基づいてデータ解析を行う機能と、を有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。制御部170が、フローサイトメーター100が備える各ユニットの動作制御を行う機能のみを有し、フローサイトメーター100が、データ解析を行うデータ処理部を制御部170とは別個に備えていてもよい。この場合、データ処理部は、検出部30の光学的情報に基づく測定データを制御部170から取得し、図27のステップS72で示したデータ解析処理を行う。また、フローサイトメーター100はデータ処理部を備えなくてもよい。この場合、フローサイトメーター100の制御部170は、データ処理を行う外部のデータ処理装置と接続され、データ処理装置に測定データを送信する構成であってもよい。データ処理部およびデータ処理装置は、いずれも、プロセッサなどの演算装置、揮発性および不揮発性の各記憶装置を備えたコンピュータにより構成され、測定データの解析用のソフトウェアプログラムを演算装置が実行することにより、データ解析処理を行う。
【0141】
上記実施形態では、図2に示すように、吸引洗浄ユニット140は、吸引ピペット141及び洗浄ピペット143を備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、吸引洗浄ユニット140は、試料の吸引機能及び反応容器51の洗浄機能の両機能を備える単一のピペットを備えてもよい。また、単一の吸引ピペットを備える吸引ユニットと、単一の洗浄ピペットを備える洗浄ユニットとを、別々に設けてもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、反応容器ラック50が反応容器51を格子状(行列状)に保持する例(図6参照)を示したが、本発明はこれに限定されない。反応容器ラック50が反応容器51を格子状以外の配列態様で保持してもよく、反応容器51の配列は任意である。反応容器ラック50は、反応容器51を非等間隔で保持してもよいし、一部の行または一部の列だけ、反応容器51の本数を多く保持できるようにしてもよい。反応容器ラック50は、反応容器51を第2水平軸および第3水平軸に沿って並べて保持することが好ましい。反応容器ラック50を1箇所に位置付けた状態で、ピペットが第2水平軸および第3水平軸に沿って移動するだけで複数の反応容器51への分注/吸引動作を行えるので、処理効率が向上する。
【0143】
また、上記実施形態では、反応容器ラック50が合計24個の反応容器51を保持可能な例を示したが、本発明はこれに限定されない。反応容器ラック50は、複数の反応容器51を保持可能であればよく、2個~23個または25個以上の反応容器51を保持可能であってよい。
【0144】
また、上記実施形態では、原点センサ194、195により検出される原点位置と、モーター191aおよびモーター192aの1パルス当たりの送り量とにより各ピペット(抗体分注ピペット111、検体分注ピペット121、試薬分注ピペット131、吸引ピペット141および洗浄ピペット143)の位置制御が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。ピペットの位置制御は、リニアエンコーダーにより検出されるピペットの各軸方向の位置に基づいて行われてもよいし、ロータリーエンコーダーにより検出されるモーターの回転角度に基づいて行われてもよい。
【0145】
また、上記実施形態では、検体が血液である例を示したが、本発明はこれに限定されない。検体は、たとえば、血液以外の、尿や被検体の組織液、被検体から採取された細胞の懸濁液などであってもよい。被検体は、主としてヒトであるが、ヒト以外の他の動物であってもよい。
【0146】
また、上記実施形態では、ピペットが分注する試薬として、抗体と溶血剤とを例示したが、本発明はこれに限られない。試薬は、抗体および溶血剤以外の試薬であってもよい。試薬はたとえば細胞核を染色するための染色液などでもよい。
【0147】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0148】
10:ピペット、20:搬送部、30:検出部、41:第1水平軸、42、122a:第2水平軸、43、112a:第3水平軸、50:反応容器ラック、50a:保持孔、51(51a、51b、51c):反応容器、70:ピペット移動部、100:フローサイトメーター、111:抗体分注ピペット、112:抗体分注ピペット移動部、115:第1洗浄部、121:検体分注ピペット、122:検体分注ピペット移動部、115:第2洗浄部、131:試薬分注ピペット、132:試薬分注ピペット移動部、132a:第5水平軸、135:第3洗浄部、141:吸引ピペット、142a:第4水平軸、143:洗浄ピペット、152:検体容器、170:制御部、180:読取部、201:フローセル、Y1:抗体分注位置、Y2:検体分注位置、Y3:試薬分注位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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図29