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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240805BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240805BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20240805BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C21/34
B60W30/08
B60W30/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020210254
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096953
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 寛之
(72)【発明者】
【氏名】田家 智
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120963(JP,A)
【文献】特開2014-186516(JP,A)
【文献】特開2018-197964(JP,A)
【文献】特開2019-200464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行支援装置のプロセッサが、
自車両の走行経路を生成し、
前記走行経路と、前記自車両が走行する自車線と進行方向が異なる他車線とが交差する交差場面を検出し、
前記交差場面における前記走行経路上で、前記自車両が、前記自車線と前記他車線との境界線を通過する前に停止する目標停止位置を設定する走行支援方法であって、
前記交差場面における前記走行経路上で、前記走行経路と前記境界線との交点を抽出し、
前記走行経路上の位置で前記走行経路に対して垂直に交わる所定の長さの法線を設定し、
前記境界線と交差する前記法線を除いた前記法線の中で、前記交点に最も近い前記法線を特定し、
特定された前記法線における前記走行経路上の位置を特定し、
前記特定された位置に前記自車両の前記目標停止位置を設定し、
前記特定された位置は、前記走行経路上の位置の中で、前記他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域に含まれず、前記位置における前記走行経路の方向が前記境界線に対して角度のある位置であって、
前記法線の前記所定の長さは、前記交差場面の走行環境に関する走行環境情報に基づいて設定される走行支援方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記交差場面の走行環境に関する走行環境情報として、少なくとも前記他車両の車速、前記他車線の車線数及び前記他車線上の駐車車両の有無に関する情報のうちのいずれかひとつを取得する請求項に記載の走行支援方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記交差場面における前記走行経路上に、前記自車線側の境界線と前記他車線側の境界線とにより形成される導流帯が存在する場合には、
前記他車線側の境界線を前記境界線として設定する請求項1又は2に記載の走行支援方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記自車線の対向車線である前記他車線と前記走行経路とが交差する場面、又は、非優先道路である前記自車線を通る前記走行経路が優先道路である前記他車線に合流する場面を、前記交差場面として検出する請求項1~のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項5】
自車両の走行経路を生成する経路生成部と、
前記走行経路と、前記自車両が走行する自車線と進行方向が異なる他車線とが交差する交差場面を検出する検出部と、
前記交差場面における前記走行経路上で、自車両が、前記自車線と前記他車線との境界線を通過する前に停止する目標停止位置を設定する位置設定部と、を備える走行支援装置であって、
前記位置設定部は、
前記交差場面における前記走行経路上で、前記走行経路と前記境界線との交点を抽出し、
前記走行経路上の位置で前記走行経路に対して垂直に交わる所定の長さの法線を設定し、
前記境界線と交差する前記法線を除いた前記法線の中で、前記交点に最も近い前記法線を特定し、
特定された前記法線における前記走行経路上の位置を特定し、
前記特定された位置に前記自車両の前記目標停止位置を設定し、
前記特定された位置は、前記走行経路上の位置の中で、前記他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域に含まれず、前記位置における前記走行経路の方向が前記境界線に対して角度のある位置であって、
前記法線の前記所定の長さは、前記交差場面の走行環境に関する走行環境情報に基づいて設定される走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法及び走行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自車両の目標経路を生成し、目標経路上に存在する所定状況における前方停車位置を検出し、前方停車位置から、自車両が所定状況に適合した車両姿勢となる目標停車位置に自車両の停車位置を補正する技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の技術は、例えば、自車両が対向車線を横断するために停車位置を設定する場合に、目標経路と、自車線と対向車線との境界線との交点を前方停車位置として検出し、目標経路上において、前方停車位置よりも手前で、自車両が境界線に対して平行な姿勢となる位置を目標停車位置に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/189649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自車両が対向車線を横断する場面において、目標経路は前方停車位置に向かってカーブするため、目標経路に沿って走行する自車両の姿勢が境界線に対して平行となる位置は、カーブしている区間がある分、前方停車位置から離れた位置になる。そのため、特許文献1の技術では、目標停車位置が前方停車位置からカーブ区間分離れた位置に設定されてしまい、自車両が目標停車位置から対向車線を横断するまでの時間が長くなるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、自車両が停車位置から対向車線を横断するまでの時間を短縮できる走行支援方法及び走行支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自車両の走行経路を生成し、走行経路と、自車両が走行する自車線と進行方向が異なる他車線とが交差する交差場面を検出し、当該交差場面における走行経路上で、自車両が、自車線と他車線との境界線を通過する前に停止する目標停止位置を設定する走行支援方法であって、走行経路上の位置の中で、他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域に含まれず、前記位置における前記走行経路の方向が前記境界線に対して角度のある位置に自車両の目標停止位置を設定することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車両が停車位置から対向車線を横断するまでの時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る走行支援装置及び方法を適用した車両のハードウェア構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る走行支援装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る目標停止位置設定の方法の一例を説明する図である。
図4】本実施形態に係る目標停止位置設定の方法の一例を説明する図である。
図5】本実施形態に係る目標停止位置設定の方法の一例を説明する図である。
図6】本実施形態に係る目標停止位置設定の方法の一例を説明する図である。
図7】本実施形態に係る目標停止位置設定の制御手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態に係る車両の走行支援装置は、走行経路にしたがって自車両を自動運転又は運転支援する車両走行制御において、特に車両の停車位置を設定するものである。本実施形態の車両の自動運転又は運転支援は、ドライバの入力にしたがって制御が開始され、ドライバのアクセル操作、ブレーキ操作及びハンドル操作がなくても走行経路にしたがって車両を走行させる。ただし、ドライバのアクセル操作、ブレーキ操作又はハンドル操作がされると、当該自動運転制御又は運転支援制御が停止又は一時的に中断され、ドライバによる各種操作が優先される。
【0011】
図1は、本形態に係る走行支援装置100を適用した自車両1のハードウェア構成を示す平面図である。図1に示すように、自車両1は、GPS(Global Positioning System)受信機2と、ナビゲーションユニット3と、車速センサ4と、走行支援装置100と、パワートレインコントローラ6と、エンジン・駆動系7と、ブレーキコントローラ8と、ブレーキユニット9と、ヨーレートセンサ10と、加速度センサ11と、カメラ12と、操舵モータコントローラ13とを備えている。
【0012】
GPS受信機2は、自車両1の絶対位置座標(緯度・経度)に係るGPS信号を受信して受信信号をナビゲーションユニット3及び走行支援装置100へ送信する。ナビゲーションユニット3は、地図データベース5(図2参照)、情報処理装置及び表示装置を備える。地図データベース5には、地図上の道路の道路構造に関する情報も含まれている。道路構造は、車線の形状と、車線数と、車線の幅と、車線上の導流帯、いわゆるゼブラゾーンの有無とを含む。ナビゲーションユニット3では、乗員により目的地が設定されると、情報処理装置が、現在地から目的地までの走行ルートを設定して表示装置に表示させる。また、情報処理装置は、走行ルート情報を走行支援装置100へ送信する。
【0013】
車速センサ4は、自車両1の車速を計測して計測信号を走行支援装置100へ送信する。車速センサ4としては、ホイールに取り付けられたロータリーエンコーダ等が利用可能である。ロータリーエンコーダは、ホイールの回転数に比例して発生するパルス信号に基づいて車速を計測する。
【0014】
走行支援装置100は、マイクロプロセッサ等の集積回路であり、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置(CPU、Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Read Access Memory)等を備える。走行支援装置100は、アクセルペダルセンサやブレーキペダルセンサ等のセンサから入力された情報を、ROMに格納されたプログラムに従って処理して目標車速を算出し、目標車速に応じた要求駆動力をパワートレインコントローラ6に送信するとともに、目標車速に応じた要求制動力をブレーキコントローラ8に送信する。また、走行支援装置100は、操舵角センサから入力された操舵角情報を、ROMに格納されたプログラムに従って処理して目標操舵角を算出し、目標操舵角に応じた操舵量を操舵モータコントローラ13へ送信する。
【0015】
パワートレインコントローラ6は、走行支援装置100から送信された要求駆動力を実現するようにエンジン・駆動系7を制御する。なお、エンジン(内燃機関)のみを走行駆動源として備える車両を例に挙げたが、電動モータのみを走行駆動源とする電気自動車(燃料電池車を含む)や、エンジンと電動モータとの組み合わせを走行駆動源とするハイブリッド車等に適用してもよい。
【0016】
ブレーキコントローラ8は、走行支援装置100から送信された要求制動力を実現するように車輪に設けられたブレーキユニット9を制御する。操舵モータコントローラ13は、走行支援装置100から送信された目標操舵角を実現するように操舵機構の操舵モータ(図示省略)を制御する。操舵モータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられたステアリングアクチュエータである。
【0017】
ヨーレートセンサ10は、自車両1のヨーレートを計測して計測信号を走行支援装置100へ出力する。加速度センサ11は、自車両1の加速度を計測して計測信号を走行支援装置100へ出力する。
【0018】
カメラ12は、例えばCCD等の撮像素子を備える撮像装置であり、自車両1の前部に設置され、自車両1の前方を撮像して画像データを取得する。外部情報認識部14は、カメラ12で取得された画像データから、自車両1の前方の他車両や縁石等の物体の位置、道路の車線境界線や道路標示の有無及び位置や、他車両等の移動体の速度等を、画像処理により算出して走行支援装置100へ出力する。
【0019】
図2は、走行支援装置100の機能ブロック図である。図2に示すように、プロセッサ110は、経路等生成部101と、検出部105と、位置設定部106とを備える。経路等生成部101は、走行経路生成部102と、目標速度生成部103と、操舵目標生成部104とを備える。位置設定部106は、交点抽出部107と、法線設定部108と、位置判定部109とを備える。
【0020】
経路等生成部101は、ナビゲーションユニット3から走行ルート情報が入力され、地図データベース5から地図情報が入力される。また、経路等生成部101は、GPS2から自車両1の絶対位置情報が入力され、外部情報認識部14から自車両の前方の他車両等の物体の位置や速度等の情報が入力される。経路等生成部101は、入力された情報に基づいて、走行経路生成部102により、自車両1の走行経路を生成する。具体的には、走行経路生成部102は、地図上の自車両の位置から走行ルートに沿って車線上の中央を通る走行経路を生成する。また、走行経路生成部102は、走行ルート上に障害物が存在する場合には、障害物を回避する走行経路を生成する。また、経路等生成部101は、車速センサ4から自車両1の車速情報が入力され、ヨーレートセンサ10から自車両のヨーレート情報が入力され、加速度センサ11から自車両の加速度情報が入力される。また、目標速度生成部103は、走行経路に沿って走行する車両の目標速度を生成する。例えば、目標速度生成部103は、位置設定部106により目標停止位置が設定された場合には、目標停止位置で自車両が停止できるように目標速度を生成する。具体的には、目標速度生成部103は、自車両を所定の減速度で減速させた場合に、目標停止位置で目標速度が0m/sになるようなプロファイルを作成する。目標速度生成部103は、目標速度をパワートレインコントローラ6とブレーキコントローラ8とに送信する。また、操舵目標生成部104は、生成された走行経路に自車両1を追従させるための操舵目標を演算し、操舵モータコントローラ13へ出力する。
【0021】
検出部105は、自車両1の進行方向の前方に位置する、走行経路と他車線とが交差する交差場面を検出する。他車線は、自車両1が走行する自車線と進行方向が異なる車線である。他車線は、例えば、自車線に隣接する対向車線である。また、他車線は、自車線が優先道路に合流する非優先道路である場合には、優先道路である。交差場面としては、例えば、走行経路と、対向車線である他車線とが交差する場面と、非優先道路である自車線を通る走行経路がT字路で優先道路である他車線に合流する場面とが挙げられる。走行経路と対向車線とが交差する場面は、例えば、自車線を走行する自車両1が右折して、隣接する対向車線を横断する場合の走行経路と、当該対向車線とが交差する場面である。これらの場面は、自車両1が他車線に進入する必要がある場面であって、他車線を走行している他車両に干渉しないように他車線に進入する前に一時停止する必要がある場面である。検出部105は、まず、地図データベース5を照会して、自車両1から進行方向の前方に所定距離の範囲内の走行経路上の地図情報を取得する。所定距離としては、数百メートル程度の距離を設定すればよく、自車両1の速度が高くなるほど長くなるように可変にしてもよい。
【0022】
次に、検出部105は、地図データベース5から取得した地図情報に基づいて、自車両から所定距離の範囲内の走行経路上に存在する交差場面を検出する。例えば、検出部105は、地図情報として、走行経路と交差する他車線の情報を取得して、走行経路と他車線とが交差する場面を交差場面として検出する。また、検出部105は、外部情報認識部14により認識された自車両1周囲の走行環境の情報に基づいて、走行経路と交差する他車線の情報を取得し、走行経路と他車線とが交差する場面を交差場面として検出してもよい。また、検出部105は、走行経路が他車線を横断する場面や走行経路が優先道路に合流する場面等、交差場面に該当する場面を記憶した場面データベースを参照して、地図情報により取得された場面が場面データベースに記憶された場面に該当するか否かにより、交差場面を検出してもよい。本実施形態では、自車両1が目的地に向けて走行している間、検出部105による交差場面の検出が繰り返し実行される。そして、交差場面が検出される場合には、後述の停止位置設定制御が実行される。一方で、交差場面が検出されない場合には、自動運転制御又は運転支援制御にしたがって走行制御が実行される。
【0023】
位置設定部106は、交差場面における走行経路上で、自車両が、自車線と他車線との車線境界線を通過する前に停止する目標停止位置を設定する。具体的には、位置設定部106は、自車両1が車線境界線をはみ出すことなく、かつ、なるべく走行経路と車線境界線との交点に近い位置に自車両を停止させることができるよう目標停止位置を設定する。すなわち、位置設定部106は、走行経路上の位置の中で、他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域に含まれず、当該位置における走行経路の方向が車線境界線に対して角度のある位置に目標停止位置を設定する。当該位置における走行経路の方向が車線境界線に対して角度のある位置は、走行経路の方向と車線境界線とが平行ではない位置である。具体的には、目標停止位置は、走行経路上の位置における走行経路の接線方向と、走行経路上の当該位置から最短距離となる車線境界線上の位置における車線境界線の方向とが交わる位置に設定される。まず、位置設定部106は、交点抽出部107により、交差場面における走行経路上で、走行経路と車線境界線とが交わる交点を抽出する。具体的には、位置設定部106は、交差場面において、走行経路と車線境界線とが交差する位置の地図データ上の座標を交点として取得する。また、位置設定部106は、自車両1から所定距離の範囲内に存在する交差場面が複数存在する場合には、自車両から最も近い交差場面において走行経路と車線境界線とが交差する位置を交点として抽出する。
【0024】
次に、位置設定部106は、所定の長さの法線を用いて目標停車位置を設定する。具体的には、位置設定部106は、法線設定部108により、走行経路上の起点を基準として、起点において走行経路と垂直に交わる法線を設定する。法線の所定の長さは、自車両1の車幅と同じか、又は、自車両の幅以上の長さに設定される。ただし、法線の所定の長さは、自車両1が走行している自車線の車線幅よりも短い長さである。法線は、自車両1が停止する時に自車両1の前端部の位置になる線である。すなわち、自車両1は、自車両1の前端部が法線に沿うように停止する。これにより、本実施形態では、位置設定部106は、車線境界線をはみ出さないように、自車両1が停止する目標停止位置を設定する。位置設定部106は、まず、交点抽出部107により抽出された交点を起点に設定して、起点において走行経路と垂直に交わる法線を設定する。次に、位置設定部106は、位置判定部109により、法線が車線境界線と交差するか否かを判定する。本実施形態では、走行経路上の位置の中で、車線境界線と交差する法線の起点となる位置を含む領域を、他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域として特定する。法線が車線境界線と交差すると判定される場合、位置設定部106は、交点から走行経路に沿って後方に所定距離D(例えば1m)だけ移動させた位置を起点として再設定する。ここで、所定距離Dは、GPS2や地図データの精度や演算処置の負荷を考慮して可能な限り小さく設定すればよい。
【0025】
次に、位置設定部106は、再設定された起点を基準として、起点において走行経路と垂直に交わる法線を設定する。そして、位置設定部106は、再設定された法線が車線境界線と交差するか否かを判定する。また、法線が車線境界線と交差しないと判定される場合、位置設定部106は、法線が車線境界線と交差しないと判定された時点の法線の位置に目標停止位置を設定する。すなわち、本実施形態では、位置設定部106が、法線が車線境界線と交差しないと判定されるまで、上述の起点と法線の設定を繰り返し実行し、車線境界線と交差しない法線が設定された時点で、その時点における法線の位置に目標停止位置を設定する。これにより、位置設定部106は、車線境界線と交差する法線を除いた法線の中で、交点に最も近い法線を特定し、特定された法線の位置を特定し、特定された位置に目標停止位置を設定する。すなわち、位置設定部106は、車線境界線と交差する法線を除いた法線の中で、目標停止位置を設定することで、他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域外の位置に目標停止位置を設定できる。また、本実施形態では、法線の所定の長さは、自車線の車線幅よりも短い長さである。そのため、走行経路に沿って、車線境界線と交差しない法線の位置が探索されることにより、目標停止位置は、走行経路の方向が境界線に対して平行になる位置よりも交点に近い位置、すなわち、走行経路の方向が車線境界線に対して角度のある位置に設定される。
【0026】
図3は、交差場面における目標停止位置の設定の一例を示す図である。図3は、自車両1が、走行経路Rに沿って、自車線に隣接する対向車線を横断して私有地の道路に進入する場面である。位置設定部106は、まず、走行経路Rと、自車線と対向車線との境界線との交点を起点P1として設定する。次に、位置設定部106は、起点P1である交点において走行経路Rと垂直に交わる法線L1を設定し、法線L1と境界線とが交差するか否かを判定する。法線L1は境界線と交差しているため、位置設定部106は、起点P1から走行経路に沿って後方に所定距離D離れた位置を起点P2に設定する。そして、位置設定部106は、起点P2において走行経路Rと垂直に交わる法線L2を設定し、法線L2と境界線とが交差するか否かを判定する。法線L2も境界線と交差しているため、位置設定部106は、さらに、起点P2から走行経路に沿って後方に所定距離D離れた位置を起点P3に設定する。そして、位置設定部106は、起点P3において走行経路Rと垂直に交わる法線L3を設定し、法線L3と境界線とが交差するか否かを判定する。法線L3は境界線と交差していないため、位置設定部106は、法線L3における走行経路上の位置である起点P3に自車両1の目標停止位置を設定する。
【0027】
また、位置設定部106は、走行経路上に沿って前後方向に目標停止位置を調整してもよい。具体的には、位置設定部106は、目標停止位置を、他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域外の走行経路上の位置に設定する。他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域は、他車線上の領域だけでなく、自車線上の領域をも含む。例えば、対向車線を走行する他車両は、狭い他車線上に駐車車両が存在する場合には、駐車車両を回避するために車体の一部が車線境界線を越えるように走行することがある。このような場合でも目標停止位置に停止する自車両1が他車両の走行を妨げないように、位置設定部106は、他車両が車線境界線を超えて走行する可能性がある領域外に目標停止位置を設定する。具体的には、位置設定部106は、法線の所定の長さを変更することにより、車線境界線と交差しない法線の位置を補正する。これにより、位置設定部106は、法線の所定の長さを変更することにより、走行経路上に沿って前後方向に目標停止位置を調整する。例えば、法線の所定の長さが長いほど、車線境界線と交差しない法線の位置は、走行経路と車線境界線との交点から離れた位置に設定される。
【0028】
本実施形態では、法線の所定の長さは、交差場面の走行環境に応じて設定される。走行環境は、他車線の車線数と車線の幅、自車線の車線数と車線の幅、及び、交差場面の導流帯を含む道路構造、及び他車線と自車線上の駐車車両の有無を含む。例えば、他車線の車線数が1車線で、車線の幅が車両2台分の車幅よりも短い場合で、他車線上に駐車車両が存在するときには、他車線を走行する他車両は、駐車車両を回避するために、自車両1が走行する自車線側に車体の一部をはみ出して走行する可能性がある。一方で、例えば、他車線の車線数が2車線以上である場合には、駐車車両が他車線上に存在するときでも、他車両は隣接車線を走行することで、自車線側に車体の一部をはみ出して走行する可能性がない。また、例えば、自車線と他車線との間に、導流帯が存在する場合には、他車両が導流帯上を通過する可能性があるため、導流帯が存在する場合には、他車両が通過する可能性がある領域内に目標停止位置を設定しないように、法線の所定の長さを設定する。また、自車線の走行環境によっては、自車両が目標停止位置に停止することで、自車線上を走行する後続車両の走行を妨げる可能性があるため、後続車両の走行を妨げないように目標停止位置をより走行経路と車線境界線との交点になるべく近い位置に設定する。法線の所定の長さは、走行環境として、周囲の他車両の車速に応じて設定されることとしてもよい。例えば、他車線を走行する他車両の車速が所定閾値以上である場合には、位置設定部106は、他車両の車速が所定閾値未満である場合よりも、法線の所定の長さを長く設定する。
【0029】
本実施形態では、法線の所定の長さは、例えば、下記式(1)で示すように設定される。
【数1】
ここで、Lが法線の長さであり、Aは、自車両1の車幅である。また、Kz、Ke、及びKcは重みである。ただし、Kz:Ke=2:1、Ke:Kc=1:1である。X(Xz、Xe、Xc)は、各条件に応じて設定される値であり、0か1の値が設定される。Xzは、交差場面における導流帯の有無に応じて設定される値であり、導流帯がある場合には、1が設定され、導流帯がない場合には、0が設定される。また、Xeは、自車線の走行環境に応じて設定される値であり、自車線の走行環境に基づいて、0か1の値が設定される。また、Xcは、他車線の走行環境に応じて設定される値であり、他車線の走行環境に基づいて、0か1の値が設定される。Xeの値は、自車線の走行環境ごとに予め設定されている値である。例えば、表1に示されるように、Xeの値は、自車線の走行環境に応じた値が設定されている。また、本実施形態では、位置設定部106は、上述の走行環境に係る各条件全てを用いて、法線の長さを設定することに限らず、走行環境に係る条件のうちいずれかひとつあるいは複数の組み合わせを用いて、法線の長さを設定することとしてもよい。
【表1】
表1において、Xeの値は、自車線における車線数と車線幅と駐車車両の有無に応じて設定されている。車線幅は、所定の閾値以上であれば、「大」として特定され、所定の閾値未満であれば、「小」として特定される。例えば、所定の閾値は、一般的な車両2台分の車幅と同じ幅である。表1では、例えば、自車線の車線数が1車線で、自車線の車線幅が「大」で、自車線に駐車車両が存在する場合には、Xeの値は、0であることを示している。表1の車線幅が「大/小」となっているのは、車線幅の「大」「小」がいずれの場合でも含まれるということを意味し、駐車車両の有無が「有/無」となっているのは、駐車車両が存在する場合も、存在しない場合も含まれるということを意味する。
【0030】
また、Xcは、他車線の走行環境に応じて設定される値であり、他車線の走行環境に基づいて、0か1の値が設定される。Xcの値は、他車線の走行環境ごとに予め設定されている値である。例えば、表2に示されるように、Xcの値は、他車線の走行環境に応じた値が設定されている。
【表2】
表2において、Xcの値は、他車線の車線数と車線幅と駐車車両の有無に応じて設定されている。車線幅は、所定の閾値以上であれば、「大」として特定され、所定の閾値未満であれば、「小」として特定される。例えば、所定の閾値は、一般的な車両2台分の車幅と同じ幅である。表2では、例えば、他車線の車線数が1車線で、自車線の車線幅が「小」で、自車線に駐車車両が存在する場合には、Xeの値は、1であることを示している。また、表2の車線幅が「大/小」となっているのは、車線幅の「大」「小」がいずれの場合でも含まれるということを意味し、駐車車両の有無が「有/無」となっているのは、駐車車両が存在する場合も、存在しない場合も含まれるということを意味する。
【0031】
本実施形態では、位置設定部106は、外部情報認識部14及び/又は地図データベース5から、交差場面における走行環境として、交差場面における自車線及び他車線の車線数と、車幅と、駐車車両の有無と、導流帯の有無の情報を取得し、表1及び2を参照し、走行環境に対応するX(Xz、Xe、Xc)の値をそれぞれ算出する。次に、位置設定部106は、上記式(1)に基づいて、法線の所定の長さLを算出し、走行経路上の位置を起点として、算出された所定の長さLの法線を設定する。そして、位置設定部106は、車線境界線と交差しない法線の位置を特定し、特定された法線の位置に目標停止位置を設定する。
【0032】
図4は、交差場面において導流帯が存在する場合の一例を示す図である。図4では、自車線と、自車線に隣接する他車線との間に導流帯が設置されている。導流帯が存在する場合には、他車線を走行する他車両が導流帯上を通過する可能性があるため、位置設定部106は、他車両が通過する可能性がある領域外に目標停車位置を設定する。導流帯が存在する場合には、交差場面において、位置設定部106は、導流帯を形成する自車線側の境界線と他車線側の境界線のうち、他車線側の境界線と、走行経路とが交差する交点を起点P1として抽出する。そして、位置設定部106は、抽出された交点を起点P1として、起点P1で走行経路に垂直に交わる法線L1を設定する。このとき、法線の所定の長さは、導流帯が存在しない場合における法線の所定の長さよりも長く設定される。これにより、車線境界線と交差しない法線の位置が、導流帯が存在しない場合における法線の位置よりも走行経路に沿って後方に設定される。図4に示されるように、導流帯が存在する場合には、車線境界線と交差しない法線が法線L2の位置に設定される。
【0033】
図5は、交差場面において、車線の幅が狭く、他車線上に駐車車両が存在する場合の一例を示す図である。他車線上に駐車車両が存在する場合には、他車両が駐車車両を回避して走行するために境界線を越えて走行する可能性があるため、位置設定部106は、他車両が通過する可能性がある領域外に自車両1の目標停止位置を設定する必要がある。このとき、法線の所定の長さは、駐車車両が存在しない場合における法線の長さよりも長く設定される。これにより、境界線と交差しない法線の位置が、駐車車両が存在しない場合における法線の位置よりも走行経路に沿って後方に設定される。図5では、駐車車両が存在する場合における法線L2の所定の長さが、駐車車両が存在しない場合における法線L1よりも長く設定されていて、法線L2の位置も走行経路に沿って法線L1の位置よりも後方に設定されている。
【0034】
図6は、優先道路である他車線に合流する非優先道路である自車線を自車両が走行している場合の目標停止位置の設定の一例を示す図である。位置設定部106は、まず、走行経路Rと、自車線と対向車線との境界線との交点を起点P1として設定する。次に、位置設定部106は、起点P1である交点において走行経路Rと垂直に交わる法線L1を設定し、法線が境界線と交差するか否かを判定する。法線L1が境界線と交差していると判定されるため、位置設定部106は、起点P1から走行経路に沿って後方に所定距離D離れた位置を起点P2に設定する。そして、位置設定部106は、起点P2において走行経路Rと垂直に交わる法線L2を設定し、法線L2が境界線と交差するか否かを判定する。法線L2は境界線と交差していないと判定されるため、位置設定部106は、法線L2における走行経路上の位置である起点P2を自車両の目標停止位置に設定する。
【0035】
次に、図7を用いて、本実施形態に係る走行支援方法の制御手順を説明する。図7は、本実施形態に係る走行支援方法の制御フローを示す図である。本実施形態では、自車両1が走行を開始すると、プロセッサ110は、ステップS101から制御フローを開始する。まず、ステップS101では、プロセッサ110は、自車両の走行経路を生成する。ステップS102では、プロセッサ110は、走行経路において、自車両から進行方向に所定距離以内の範囲の地図情報及び/又は外部認識情報を取得する。例えば、プロセッサ110は、自車線と他車線との車線境界線を含む道路構造を取得する。ステップS103では、プロセッサ110は、走行経路と車線境界線とが交差する交差場面を検出する。交差場面は、例えば、自車両1が自車線と他車線との車線境界線を越えて他車線を横断する場面を含む。ステップS104では、プロセッサ110は、交差場面の走行環境を取得する。走行環境は、例えば、自車線と他車線の車線数や車幅、自車線と他車線上に存在する駐車車両の有無、及び、導流帯の有無を含む。
【0036】
ステップS105では、プロセッサ110は、法線の所定の長さを自車両1の車幅又は車幅以上の長さに設定する。具体的には、プロセッサ110は、ステップS104で取得された走行環境の情報に基づいて、法線の長さを設定する。ステップS106では、プロセッサ110は、走行経路と車線境界線との交点を起点に設定する。具体的には、プロセッサ110は、走行経路と車線境界線とが交わる位置の座標を交点として抽出し、抽出された交点を起点に設定する。ステップS107では、プロセッサ110は、起点における法線を設定する。具体的には、プロセッサ110は、設定された所定の長さの法線が起点で走行経路と垂直に交わるように法線を設定する。ステップS108では、プロセッサ110は、法線が車線境界線と交差するか否かを判定する。法線が車線境界線と交差する場合、ステップS109に進む。法線が車線境界線と交差しない場合、ステップS110に進む。
【0037】
ステップS109では、プロセッサ110は、起点を、走行経路に沿って後方に所定距離D離れた位置に再設定する。再設定後、プロセッサ110は、ステップS107に戻り、以下、フローを繰り返す。ステップS110では、プロセッサ110は、ステップS108で車線境界線と交差しないと判定された法線の位置に自車両1の目標停止位置を設定する。ステップS111では、プロセッサ110は、目標停止位置に自車両1を停止させる停止制御を実行する。具体的には、プロセッサ110は、目標停止位置において、自車両1の目標車速が0m/sになるように車速プロファイルを生成し、当該車速プロファイルに沿って車速を制御するよう目標車速をブレーキコントローラ8に出力する。そして、ブレーキコントローラ8は、目標車速により自車両1を目標停止位置に停止させるように制御する。ステップS112では、プロセッサ110は、目標停止位置に自車両1を停止させた後、外部情報認識部14により取得された他車両の位置及び車速を取得し、他車線を横断することが可能か否かを判断し、横断することが可能と判断された場合には、他車線を横断するよう走行制御を実行する。
【0038】
以上のように、本実施形態では、自車両の走行経路を生成し、走行経路と、自車両が走行する自車線と進行方向が異なる他車線とが交差する交差場面を検出し、交差場面における走行経路上で、自車両が、自車線と他車線との境界線を通過する前に停止する目標停止位置を設定する走行支援方法であって、走行経路上の位置の中で、他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域に含まれず、位置における走行経路の方向が境界線に対して角度のある位置に自車両の目標停止位置を設定する。これにより、自車両が停車位置から対向車線を横断するまでの時間を短縮できる。
【0039】
また、本実施形態では、交差場面における走行経路上で、走行経路と境界線との交点を抽出し、走行経路上の位置で走行経路に対して垂直に交わる所定の長さの法線を設定し、境界線と交差する法線を除いた法線の中で、交点に最も近い法線を特定し、特定された法線における走行経路上の位置を特定し、特定された位置に自車両の目標停止位置を設定する。これにより、他車線を走行する他車両が通過する可能性のある領域を除いた走行経路上の位置に目標停車位置を設定することができる。
【0040】
また、本実施形態では、法線の所定の長さを、自車両の車幅又は車幅以上の長さに設定する。これにより、自車両が車線境界線をはみ出すことなく停止することができる。
【0041】
また、本実施形態では、交差場面の走行環境に関する走行環境情報として、少なくとも他車両の車速、他車線の車線数及び他車線上の駐車車両の有無に関する情報のうちのいずれかひとつを取得し、取得された走行環境情報に基づいて、法線の所定の長さを設定する。これにより、自車両は、目標停止位置として自車線及び他車線の走行環境に適した位置に停止することができる。
【0042】
また、本実施形態では、交差場面における走行経路上に、自車線側の境界線と他車線側の境界線とにより形成される導流帯が存在する場合には、他車線側の境界線を境界線として設定する。これにより、交差場面に導流帯が存在する場合であっても、他車線側の境界線に基づいて、目標停止位置を設定することができる。
【0043】
また、本実施形態では、自車線の対向車線である他車線と走行経路とが交差する場面、又は、非優先道路である自車線を通る走行経路が優先道路である他車線に合流する場面を、交差場面として検出する。これにより、他車線を走行する他車両と干渉する可能性がある場面で、適切な目標停止位置を設定することができる。
【0044】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0045】
1…自車両
100…走行支援装置
110…プロセッサ
101…経路等生成部
102…走行経路生成部
103…目標速度生成部
104…操舵目標生成部
105…検出部
106…位置設定部
107…交点抽出部
108…法線設定部
109…位置判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7