(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】洗濯システム
(51)【国際特許分類】
D06F 33/60 20200101AFI20240805BHJP
D06F 34/18 20200101ALI20240805BHJP
【FI】
D06F33/60
D06F34/18
(21)【出願番号】P 2020218129
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】堀田 宗佑
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009780(JP,A)
【文献】特開2013-180161(JP,A)
【文献】特開2019-042266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0016227(US,A1)
【文献】特開2004-113286(JP,A)
【文献】特許第2918920(JP,B2)
【文献】特開2005-177089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/60
D06F 33/40
D06F 34/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1脱水動作と、前記第1脱水動作よりも後に行われる第2脱水動作とを含む運転コースにおいて、前記第1脱水動作と前記第2脱水動作との間に洗濯物の布量検知動作を行う制御モードを実行可能な制御部、
を備え
、
前記制御部は、
前記第1脱水動作と前記第2脱水動作との間で、前記第1脱水動作よりも前に特定した前記洗濯物の布量がしきい値以上であるか否かを判定し、前記洗濯物の布量がしきい値以上であると判定した場合、前記布量検知動作を行い、その後前記第2脱水動作を行い、前記洗濯物の布量がしきい値未満であると判定した場合、前記布量検知動作を行わずに前記第2脱水動作を行う、
洗濯システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記布量検知動作の結果に基づき、乾燥運転の内容を決定する、
請求項1に記載の洗濯システム。
【請求項3】
前記洗濯物が収容される回転槽をさらに備え、
前記第2脱水動作は、前記第1脱水動作と比べて前記回転槽の最高回転速度が速い脱水動作である、
請求項1または請求項2に記載の洗濯システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記洗濯物に関する所定条件が満たされる場合、前記第1脱水動作と前記第2脱水動作との間に前記布量検知動作を行う第1制御モードを実行し、前記所定条件が満たされない場合、前記第2脱水動作よりも後に前記布量検知動作を行う第2制御モードを実行する、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の洗濯システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1脱水動作よりも前に取得される前記洗濯物に関する情報に基づき、前記所定条件が満たされるか否かを判定する、
請求項4に記載の洗濯システム。
【請求項6】
前記洗濯物に関する情報は、前記洗濯物に対する最初の注水前に行われる注水前布量検知動作に基づいて得られる情報を含む、
請求項5に記載の洗濯システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記注水前布量検知動作に基づいて得られる前記洗濯物の布量がしきい値以上である場合に前記所定条件を満たすと判定する、
請求項6に記載の洗濯システム。
【請求項8】
前記洗濯物に関する情報は、前記洗濯物に対する注水後のモータ負荷に基づいて得られる情報を含む、
請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載の洗濯システム。
【請求項9】
前記洗濯物に関する情報は、ユーザの入力に基づいて得られる情報を含む、
請求項5から請求項8のうちいずれか1項に記載の洗濯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機における洗濯物の重量の検出、特に、ドラム式の洗濯機における洗濯物の重量の検出は、一般的に、洗濯物の量が増えると検出精度が低下する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-009780号公報
【文献】特許第3962668号公報
【文献】特許第2918920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、洗濯機における洗濯物の重量を精度よく特定することのできる洗濯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の洗濯システムは、第1脱水動作と、前記第1脱水動作よりも後に行われる第2脱水動作とを含む運転コースにおいて、前記第1脱水動作と前記第2脱水動作との間に洗濯物の布量検知動作を行う制御モードを実行可能な制御部、を備え、前記制御部は、前記第1脱水動作と前記第2脱水動作との間で、前記第1脱水動作よりも前に特定した前記洗濯物の布量がしきい値以上であるか否かを判定し、前記洗濯物の布量がしきい値以上であると判定した場合、前記布量検知動作を行い、その後前記第2脱水動作を行い、前記洗濯物の布量がしきい値未満であると判定した場合、前記布量検知動作を行わずに前記第2脱水動作を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態の洗濯機の構成の一例を示す第1の図。
【
図2】一実施形態の洗濯機の構成の一例を示す第2の図。
【
図3】一実施形態の駆動回路の構成の一例を示す図。
【
図4】一実施形態の過電流比較回路の構成の一例を示す図。
【
図5】一実施形態におけるドラムモータを駆動する電流を生成する処理の概要を示す図。
【
図6】一実施形態の洗濯機の処理フローの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の洗濯システムを、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。また、「検出」とは、対象の物理量を直接感知する場合に限定されず、対象の物理量に関連する他の物理量を直接または間接的に取得し、取得した他の物理量から対象の物理量を推定したり特定したりする場合も含み得る。また、「取得」とは、対象物(情報を含む)そのものを直接受け取る場合に限定されず、直接受け取った物(情報を含む)を演算や加工などを行うことによって対象物となる場合も含み得る。
【0008】
以下では、いくつかの実施形態について説明する。実施形態の洗濯機は、乾燥運転前の洗濯物の重量を精度よく判定することのできる洗濯機である。洗濯機は、ドラム式の洗濯機、縦型の洗濯機などである。なお、洗濯機は、二槽式の洗濯機でもよい。
【0009】
<実施形態>
(洗濯機の全体構成)
一実施形態の洗濯機100の構成について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、一実施形態の洗濯機100の構成の一例を示す第1の図である。
図2は、一実施形態の洗濯機100の構成の一例を示す第2の図である。洗濯機100は、乾燥機能を有する。洗濯機100は、ドラム式の洗濯機である。洗濯機100は、例えば、外箱(筐体)1、貫通孔状の出入口2、扉3、水受槽4、ドラムモータ5、回転軸6、ドラム7(回転槽の一例)、貫通孔8、複数のバッフル9、給水弁10、給水弁モータ11(
図2に図示)、注水ケース12、注水口13、排水管14、排水弁15、メインダクト17、前ダクト18、ファンケーシング19、吸気口20、排気口21、回転軸23、ファン24、後ダクト25、循環ダクト26、コンプレッサ(圧縮機)27、コンデンサ(凝縮器)29、冷媒管30、加熱フィン31、駆動回路200(
図3に図示)、排水弁モータ47(
図2に図示)、水位センサ48(
図2に図示)、操作パネル49(
図2に図示)、ヒートポンプ300、および回転位置センサ82(
図3に図示)を備える。洗濯機100は、洗濯システムの一例である。
【0010】
ヒートポンプ300は、洗濯物を乾燥させる。ヒートポンプ300は、ファンモータ22、コンプレッサモータ28(
図2に図示)を有する。ヒートポンプ300は、乾燥機能の一例である。
【0011】
外箱1は、洗濯機100の外観を形成する。外箱1は、前板と後板と左側板と右側板と底板と天板とを有する中空状を成す。外箱1の前板には、貫通孔状の出入口2が形成される。外箱1の前板には、扉3が装着される。扉3は、閉鎖状態および開放状態のいずれかへユーザが前方から操作可能である。扉3の閉鎖状態では、出入口2が閉鎖される。また、扉3の開放状態では、出入口2が開放される。外箱1の内部には、水受槽4が固定される。水受槽4は、後面が閉鎖される円筒状を成す。水受槽4は、水受槽4の軸心線CLが前方から後方に向けて下降する傾斜状態に配置される。水受槽4の前面は、開口する。扉3は、閉鎖状態で水受槽4の前面を気密状態に閉鎖する。
【0012】
水受槽4の後板には、水受槽4の外部に位置してドラムモータ5が固定される。ドラムモータ5は、洗濯における洗い処理や脱水処理に使用されるモータである。ドラムモータ5は、例えば、速度制御可能なDC(Direct Current)ブラシレスモータである。ドラムモータ5の回転軸6は、水受槽4の内部に突出する。回転軸6は、水受槽4の軸心線CLに重ねて配置される。回転軸6には、水受槽4の内部に位置してドラム7が固定される。ドラム7は、後面が閉鎖される円筒状を成す。ドラム7は、ドラムモータ5の運転状態で回転軸6と一体的に回転する。ドラム7の前面は、水受槽4の前面を介して後方から出入口2に対向する。扉3の開放状態では、ドラム7の内部は、前方から出入口2と水受槽4の前面とドラム7の前面を通して、洗濯物が出し入れされる。
【0013】
ドラム7には、複数の貫通孔8が形成される。ドラム7の内部空間は、複数の貫通孔8のそれぞれを通して、水受槽4の内部空間に接続される。ドラム7には、複数のバッフル9が固定される。これら複数のバッフル9のそれぞれは、ドラム7が回転することに応じて、軸心線CLを中心に円周方向へ移動する。ドラム7内の洗濯物は、複数のバッフル9のそれぞれに引っ掛かりながら円周方向へ移動した後に重力で落下することにより、撹拌される。
【0014】
外箱1の内部には、給水弁10が固定される。給水弁10は、入口および出口を有する。給水弁10の入口は、水道の蛇口に接続される。給水弁10は、給水弁モータ11を駆動源とする。給水弁10の出口は、給水弁モータ11の回転量に応じて、開放状態および閉鎖状態との間で切り換えられる。給水弁10の出口は、注水ケース12に接続される。給水弁10の開放状態では、水道水が給水弁10を通して注水ケース12内に注入される。一方、給水弁10の閉鎖状態では、水道水が注水ケース12内に注入されない。注水ケース12は、外箱1の内部に水受槽4よりも高所に位置して固定される。注水ケース12は、筒状の注水口13を有する。注水口13は、水受槽4の内部に挿入される。給水弁10から注水ケース12内に注入される水道水は、注水口13から水受槽4の内部に注入される。
【0015】
水受槽4には、最底部に位置して排水管14の上端部が接続される。排水管14には、排水弁15が設けられる。排水弁15は、排水弁モータ47を駆動源とする。排水弁15は、排水弁モータ47の回転量に応じて、開放状態および閉鎖状態との間で切り換えられる。排水弁15の閉鎖状態では、注水口13から水受槽4内に注入される水道水が水受槽4内に貯留される。一方、排水弁15の開放状態では、水受槽4内の水道水が排水管14を通して水受槽4の外部に排出される。
【0016】
外箱1の底板には、水受槽4の下方に位置してメインダクト17が固定される。メインダクト17は、前後方向へ指向する筒状を成す。メインダクト17の前端部には、前ダクト18の下端部が接続される。前ダクト18は、上下方向へ指向する筒状を成す。前ダクト18の上端部は、水受槽4の前端部から水受槽4の内部空間に接続される。メインダクト17の後端部には、ファンケーシング19が固定される。ファンケーシング19は、貫通孔状の吸気口20および筒状の排気口21を有する。ファンケーシング19の内部空間は、吸気口20を介してメインダクト17の内部空間に接続される。
【0017】
ファンケーシング19には、ファンケーシング19の外部に位置してファンモータ22が固定される。ファンモータ22は、ファンケーシング19の内部に突出する回転軸23を有する。回転軸23には、ファンケーシング19の内部に位置してファン24が固定される。ファンモータ22は、ファン24を回転させる。ファン24は、遠心式のファンである。すなわち、ファン24は、回転することにより、軸方向から空気を吸い込んで径方向へ吐出する。ファンケーシング19の吸気口20は、ファン24の軸方向からファン24に対向する。また、ファンケーシング19の排気口21は、ファン24の径方向からファン24に対向する。
【0018】
ファンケーシング19の排気口21には、後ダクト25の下端部が接続される。後ダクト25は、上下方向へ指向する筒状を成す。後ダクト25の上端部は、水受槽4の後端部から水受槽4の内部空間に接続される。後ダクト25、ファンケーシング19、メインダクト17、前ダクト18、および水受槽4は、水受槽4の内部空間を始点および終点のそれぞれとする環状の循環ダクト26を構成する。扉3の閉鎖状態においてファンモータ22が運転される場合には、ファン24が一定方向へ回転することにより、水受槽4内の空気は、前ダクト18内からメインダクト17内を通してファンケーシング19内に吸引され、ファンケーシング19内から後ダクト25内を通して水受槽4内に戻される。
【0019】
外箱1の内部には、コンプレッサ(圧縮機)27が固定される。コンプレッサ27は、循環ダクト26の外部に配置される。コンプレッサ27は、冷媒を吐出する吐出口および冷媒を吸い込む吸込口を有する。コンプレッサ27は、コンプレッサモータ28を駆動源とする。コンプレッサモータ28は、例えば、速度制御可能なDCブラシレスモータである。
【0020】
メインダクト17の内部には、コンデンサ(凝縮器)29が固定される。コンデンサ29は、空気を加熱する。コンデンサ29は、蛇行状に曲折する1本の冷媒管30の外周面に板状を成す複数の加熱フィン31のそれぞれを接触状態で固定することにより構成される。コンデンサ29の冷媒管30は、コンプレッサ27の吐出口に接続される。コンプレッサモータ28の運転状態では、コンプレッサ27の吐出口から吐出される冷媒がコンデンサ29の冷媒管30内に進入する。
【0021】
水位センサ48は、水受槽4に設けられる。水位センサ48は、水受槽4内の水位を検出する。操作パネル49は、表示部49aおよび操作入力部49bを備える。例えば、表示部49aおよび操作入力部49bは、ユーザが押下可能なボタンとディスプレイ装置とを備えたパネル、またはユーザが操作可能なタッチパネルなどである。ユーザは、操作パネル49を操作することによって、洗濯の運転コースの選択や運転開始などの操作を行うことができる。洗濯の運転コースの例としては、標準コース、スピーディコース、おしゃれ着コース(丁寧洗いコース)、部屋干しコース、がんこ汚れコースなどが挙げられる。洗濯の運転コースごとに、洗い時に水受槽4に注水される水の量、すすぎ時の水受槽4における水流、洗濯行程の内容が異なる。また、操作パネル49には、洗濯行程や運転終了までの残り時間、設定水位などが表示される。
【0022】
図3は、ドラムモータ5の駆動回路200を示す図である。駆動回路200は、インバータ回路32、シャント抵抗35u、35v、35w、レベルシフト回路36、過電流比較回路38、駆動用電源回路39、交流電源40、第1電源回路43、駆動回路44、第2電源回路45、高圧ドライバ回路46、および制御回路50(制御部の一例)を備える。なお、
図3には、ドラムモータ5も記載されている。
【0023】
インバータ回路32は、6個のスイッチング素子33a~33fを備える。インバータ回路32では、6個のスイッチング素子が三相ブリッジを構成するように接続される。以下、6個のスイッチング素子33a~33fは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)33a~33fであるものとして説明する。IGBT33aのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオード34aが接続される。IGBT33bのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオード34bが接続される。IGBT33cのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオード34cが接続される。IGBT33dのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオード34dが接続される。IGBT33eのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオード34eが接続される。IGBT33fのコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオード34fが接続される。
【0024】
下アーム側のIGBT33dのエミッタは、シャント抵抗35uを介して、グラウンドに接続される。下アーム側のIGBT33eのエミッタは、シャント抵抗35vを介して、グラウンドに接続される。下アーム側のIGBT33fのエミッタは、シャント抵抗35wを介して、グラウンドに接続される。シャント抵抗35u、35v、35wのそれぞれは、電流検出手段の一例である。例えば、シャント抵抗の端子間電圧をその抵抗値で除算することにより電流を検出することができる。また、IGBT33dとシャント抵抗35uとの接点、IGBT33eとシャント抵抗35vとの接点、およびIGBT33fとシャント抵抗35wとの接点のそれぞれは、レベルシフト回路36を介して制御回路50に接続される。また、IGBT33dとシャント抵抗35uとの接点、IGBT33eとシャント抵抗35vとの接点、およびIGBT33fとシャント抵抗35wとの接点のそれぞれは、過電流比較回路38を介して制御回路50に接続される。
【0025】
レベルシフト回路36は、オペアンプなどを含んで構成される。レベルシフト回路36は、シャント抵抗35u~35wの端子間電圧を増幅すると共にその増幅した電圧(増幅信号)の出力範囲が正側(例えば、0~+3.3ボルト)に収まるように動作する。
【0026】
過電流比較回路38は、インバータ回路32の上アームと下アームとが短絡する場合などに生じるインバータ回路32における過電流を検出する。
図4は、過電流比較回路38の構成の一例を示す図である。過電流比較回路38は、コンパレータ66u、66v、66w、抵抗67、68、69を備える。コンパレータ66uは、インバータ回路32のu相に対応する電流の過電流を検出するためのコンパレータである。コンパレータ66vは、インバータ回路32のv相に対応する電流の過電流を検出するためのコンパレータである。コンパレータ66wは、インバータ回路32のw相に対応する電流の過電流を検出するためのコンパレータである。抵抗67、68は、インバータ回路32における電流を過電流と判定する判定しきい値を設定するための抵抗である。抵抗69は、コンパレータ66u、66v、66wの出力をプルアップするための抵抗である。コンパレータ66u、66v、66wの出力は、制御回路50に接続される。u相、v相、w相のいずれかの電流が過電流となった場合、コンパレータ回路66の出力電圧は、HighレベルからLowレベルへ変化する。
【0027】
インバータ回路32には、駆動用電源回路39が接続される。駆動用電源回路39は、全波整流回路41、およびキャパシタ(静電容量)42a、42bを備える。全波整流回路41は、例えば、ダイオードブリッジによって構成される。キャパシタ42aおよび42bは、直列接続される。例えば、交流電源40が、実効値が100ボルトの交流電圧を駆動用電源回路39に出力する場合、駆動用電源回路39は、全波整流回路41およびキャパシタ42a、42bにより、交流電源40が出力する実効値が100ボルトの交流電圧について昇圧と共に整流を行い、約280ボルトの直流電圧をインバータ回路32に出力する。インバータ回路32のu相に対応する出力端子は、ドラムモータ5のu相に対応する巻線5uに接続される。インバータ回路32のv相に対応する出力端子は、ドラムモータ5のv相に対応する巻線5vに接続される。インバータ回路32のw相に対応する出力端子は、ドラムモータ5のw相に対応する巻線5wに接続される。
【0028】
制御回路50は、洗濯機100全体の制御を行う。例えば、制御回路50は、コンパレータ回路66の出力電圧がHighレベルからLowレベルに変化した場合、過電流が発生したと判定する。制御回路50は、過電流が発生したと判定した場合、駆動回路44からドラムモータ5へ出力されるドラムモータ5を制御するためのPWM(Pulse Width Modulation)信号を停止させる。
【0029】
また、制御回路50は、レベルシフト回路36を介して、ドラムモータ5の巻線5uに流れる電流Iau、ドラムモータ5の巻線5vに流れる電流Iav、およびドラムモータ5の巻線5wに流れる電流Iawを検出する。具体的には、制御回路50は、過電流比較回路38を介して過電流を検出していない期間に、レベルシフト回路36を介して電流を検出する。過電流を検出していない期間に制御回路50がレベルシフト回路36を介して検出した電流が電流Iau、Iav、Iawである。制御回路50は、検出した電流Iau~Iawの電流値に基づいて、ドラムモータ5における回転磁界の位相θおよび回転角速度ωを推定すると共に、三相電流を直交座標変換およびdq(direct-quadrature)座標変換して、励磁電流成分Idおよびトルク電流成分Iqを得る。
【0030】
具体的には、制御回路50は、電流Iau、電流Iav、電流IawをClarke変換で、式(1)、式(2)のようにα、βの直交座標に変換する。
【0031】
【0032】
そして、制御回路50は、αβ軸の直交座標をPark変換で、式(3)、式(4)のようにdq軸に変換する。
【0033】
【0034】
なお、回転磁界の位相θおよび回転角速度ωについては、回転位置センサ82を用いて測定すればよい。ただし、回転位置センサ82を用いない場合であっても回転磁界の位相θおよび回転角速度ωは次のように推定可能である。d軸誘起電圧の推定値Edは、式(5)のように計算される。
【0035】
【0036】
ここで、制御回路50は、回転位置の誤差が無い場合にd軸誘起電圧の推定値Ed=0となることを利用して、計算によるd軸誘起電圧の推定値Edと0の差分に対するPI制御量(Ed_PI)を目標回転角速度ωcomに加えることで、式(6)のように回転角速度ωを推定する。
【0037】
【0038】
なお、式(6)により推定された回転角速度ωを積分することにより回転磁界の位相θを導出することができる。
【0039】
そして、制御回路50は、ドラムモータ5についての速度指令を受けると、推定した位相θ、推定した回転角速度ω、励磁電流成分Id、およびトルク電流成分Iqに基づいて、電流指令Idref、および電流指令Iqrefを生成する。具体的には、制御回路50は、モータの速度指令ωrefと、ドラムモータ5の検出された(または推定された)回転角速度ωとの差分量に基づいてPI制御を行い、q軸の電流指令値Iqrefとd軸電流指令値Idrefとを生成して出力する。洗いまたはすすぎ運転時におけるd軸の電流指令値Idrefは“0”に設定され、脱水運転時には、弱め界磁制御を行うためd軸の電流指令値Idrefは所定値に設定される。
【0040】
制御回路50は、生成した電流指令Idref、および電流指令Iqrefを、電圧指令Vd、Vqに変換する。具体的には、制御回路50は、電流指令Idref、Iqrefと、αβ/dq変換により出力されるq軸の電流値Iq、d軸の電流値Idとの減算結果に基づいてPI制御を行い、q軸の電流値Iqから電圧指令値Vqを生成し、また、d軸の電流値Idから電圧指令値Vdを生成する。
【0041】
そして、制御回路50は、電圧指令Vd、Vqについて直交座標変換および三相座標変換を行う。具体的には、制御回路50は、逆Park変換により、式(7)、式(8)のようにdq軸座標をαβ軸座標に変換する。
【0042】
【0043】
次に、制御回路50は、VαとVβの2相から逆Cleark変換、または空間ベクトル法などによりVu,Vv,Vwの3相に変換する。
【0044】
最終的には、インバータ回路32を駆動する駆動信号がPWM信号として生成される。具体的には、例えば、制御回路50が大元となるPWM信号を生成する。なお、そのPWM信号をインバータ回路32に直接出力しても電圧が小さいためインバータ回路32におけるIGBTをスイッチングさせることができない可能性がある。そのようにIGBTをスイッチングできない場合には,駆動回路44がPWM信号の振幅(すなわち電圧の大きさ)を調整してインバータ回路32にPWM信号を出力する。
【0045】
インバータ回路32は、生成されたPWM信号に応じて、ドラムモータ5を駆動する。すなわち、インバータ回路32は、ドラムモータ5を駆動する電流をドラムモータ5の巻線5u~5wに出力する。インバータ回路32が出力するこの電流に応じてドラムモータ5は動作する。
【0046】
図5は、上述の電流指令Idref、および電流指令Iqrefに基づいて、インバータ回路32がドラムモータ5を駆動する電流を生成する処理の概要を示す図である。制御回路50は、レベルシフト回路36を介して検出した電流Iu、電流Iv、および電流Iwについて、回転座標変換および二相座標変換を行う。これにより、電流Iu、電流Iv、および電流Iwは、電流Id*および電流Iq*に変換される。制御回路50は、電流指令Idrefから電流Id*を減算する。制御回路50は、その減算結果についてPI制御を行う。これにより、電圧指令Vdが生成される。また、制御回路50は、電流指令Iqrefから電流Iq*を減算する。制御回路50は、その減算結果についてPI制御を行う。これにより、電圧指令Vqが生成される。制御回路50は、電圧指令Vdおよび電圧指令Vqについて、直交座標変換および三相座標変換を行う。制御回路50は、変換結果を駆動回路44に出力する。この変換結果は、ドラムモータ5を駆動させるための電圧指令である。
【0047】
駆動回路44は、制御回路50が出力する電圧指令に応じたPWM信号を生成する。駆動回路44は、生成したPWM信号を高圧ドライバ回路46およびインバータ回路32に出力する。駆動回路44が高圧ドライバ回路46に出力するPWM信号は、インバータ回路32の上アーム側のIGBT33a~33cを駆動するための信号である。また、駆動回路44がインバータ回路32に出力するPWM信号は、インバータ回路32の下アーム側のIGBT33d~33fを駆動するための信号である。なお、駆動回路44が高圧ドライバ回路46に出力するPWM信号と、駆動回路44がインバータ回路32に出力するPWM信号とは、逆相の関係にある。
【0048】
高圧ドライバ回路46は、駆動回路44が出力するPWM信号から、インバータ回路32の上アーム側のIGBT33a~33cを駆動するためのPWM信号(具体的には、下アーム側のIGBT33d~33fを駆動するPWM信号よりも高電位のPWM信号を生成する。高圧ドライバ回路46は、生成したPWM信号をインバータ回路32に出力する。上述した高圧ドライバ回路46がインバータ回路32の上アーム側のIGBT33a~33cに出力するPWM信号と、駆動回路44がインバータ回路32の下アーム側のIGBT33d~33fに出力するPWM信号とにより、インバータ回路32は、ドラムモータ5を駆動する電流をドラムモータ5の巻線5u~5wに出力する。
【0049】
また、同様に、制御回路50は、外部からファンモータ22についての速度指令を受けると、電流指令を生成し、生成した電流指令を電圧指令に変換する。そして、制御回路50は、電圧指令について直交座標変換および三相座標変換を行う。最終的には、ファンモータ22を駆動するためのインバータ回路(図示せず)を駆動する駆動信号がPWM信号として生成される。そのインバータ回路は、ファンモータ22を駆動する電流をファンモータ22の巻線に出力する。ファンモータ22は、インバータ回路が出力するこの電流に応じて動作する。なお、ファンモータ22についても、駆動回路201が別途存在する。
【0050】
また、同様に、制御回路50は、外部からコンプレッサモータ28についての速度指令を受けると、電流指令を生成し、生成した電流指令を電圧指令に変換する。そして、制御回路50は、電圧指令について直交座標変換および三相座標変換を行う。最終的には、コンプレッサモータ28を駆動するためのインバータ回路(図示せず)を駆動する駆動信号がPWM信号として生成される。そのインバータ回路は、コンプレッサモータ28を駆動する電流をコンプレッサモータ28の巻線に出力する。コンプレッサモータ28は、インバータ回路が出力するこの電流に応じて動作する。なお、コンプレッサモータ28についても、駆動回路202が別途存在する。
【0051】
また、制御回路50は、給水弁モータ11の回転量を制御することにより、給水弁10の出口を開放状態または閉鎖状態に制御する。また、制御回路50は、排水弁モータ47の回転量を制御することにより、排水弁15の出口を開放状態または閉鎖状態に制御する。なお、給水弁モータ11および排水弁モータ47それぞれについても、駆動回路203、204が別途存在する。
【0052】
制御回路50は、第1脱水動作と、その第1脱水動作よりも後に行われる第2脱水動作とを含む運転コースにおいて、第1脱水動作と第2脱水動作との間に洗濯物の布量検知動作を行う制御モードを実行する。例えば、制御回路50は、洗濯物に関する所定条件が満たされる場合、第1脱水動作と第2脱水動作との間に布量検知動作を行う第1制御モードを実行する。また、制御回路50は、その所定条件が満たされない場合、第2脱水動作よりも後に布量検知動作を行う第2制御モードを実行する。例えば、制御回路50は、第1脱水動作よりも前に取得される洗濯物に関する情報に基づき、その所定条件が満たされるか否かを判定する。なお、第1脱水動作よりも前に取得される洗濯物に関する情報は、洗濯物に対する最初の注水前に行われる注水前布量検知動作に基づいて得られる情報を含むものであってよい。具体的には、制御回路50は、注水前布量検知動作に基づいて得られる洗濯物の布量がしきい値以上である場合に所定条件を満たしたと判定するものであってもよい。また、制御回路50は、注水前布量検知動作に基づいて得られる洗濯物の布量がしきい値未満である場合に所定条件を満たさないと判定するものであってもよい。また、洗濯物に関する情報は、洗濯物に対する注水後のドラムモータ5の負荷(モータ負荷の一例)に基づいて得られる情報を含むものであってもよい。洗濯物に対する注水後のドラムモータ5の負荷に基づいて得られる情報の例としては、洗濯物の布質などが挙げられる。ドラムモータ5の負荷は、洗濯物の布量を特定する場合のドラム7と共に回転する洗濯物の慣性モーメントと相関関係がある。また、洗濯物に関する情報は、ユーザの入力に基づいて得られる情報を含むものであってもよい。ユーザの入力に基づいて得られる情報の例としては、ユーザが操作パネル49を介して入力する布量情報などが挙げられる。
【0053】
また、制御回路50は、第1脱水動作と第2脱水動作との間に行う洗濯物の布量検知動作の結果に基づき、乾燥運転の内容を決定する。なお、第2脱水動作は、第1脱水動作よりも洗濯物の脱水効果が大きい動作である。つまり、例えば、第2脱水動作は、第1脱水動作に比べて水受槽4の最高回転速度が速い脱水動作であり、同一の洗濯物に対して脱水動作を行った場合、第1脱水動作を行うよりも第2脱水動作を行った方が、洗濯物から水分が抜ける。
【0054】
なお、制御回路50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなハードウェアプロセッサを含み、プログラム(ソフトウェア)を実行することにより上記制御を実現するものであってもよい。ただし、上記制御の一部またはすべては、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)を含み実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0055】
第1電源回路43は、インバータ回路32に供給される駆動用電圧を降圧して生成した電圧を、制御回路50、および駆動回路44に供給する。インバータ回路32に供給される駆動用電圧は、例えば、約280ボルトである。また、駆動用電圧を降圧して生成した電圧は、例えば、15ボルトである。また、第2電源回路45は、インバータ回路32に供給される駆動用電圧を降圧することにより、制御回路50に供給される制御用電圧を生成する。第2電源回路45は、例えば、三端子レギュレータである。制御用電圧は、例えば、3.3ボルトである。高圧ドライバ回路46は、インバータ回路32における上アーム側のIGBT33a~33cを駆動する。
【0056】
また、ドラムモータ5のロータには、起動時に使用するロータの位置を検出するための回転位置センサ82が設けられる。回転位置センサ82が出力するロータの位置を示す位置信号は、制御回路50に出力される。すなわち、ドラムモータ5の起動時には、ロータの位置の推定が可能な回転速度(例えば、約30rpm)までは、回転位置センサ82を使用してベクトル制御を行う。また、ロータの位置の推定が可能な回転速度に達した以降は、回転位置センサ82を使用しないセンサレスベクトル制御に切り換える。
【0057】
次に、洗濯システム100の処理について説明する。
図6は、洗濯システム100の処理フローを示す図である。ここでは、ユーザが、操作パネル49を介して、洗い、すすぎ、脱水、乾燥を含む洗濯行程が行われる運転コースを選択した場合に、洗濯システム100が行う処理について説明する。
【0058】
ユーザが、洗濯物を洗濯機100に投入し、洗濯を開始する操作を行う。洗濯機100が決定された運転コースを開始すると、制御回路50は、洗濯物の布量を特定する(ステップS1)。この布量の特定は、注水前に行われる。例えば、制御回路50は、注水前布量検知動作として、PWM信号を生成することによって、特許文献2などに記載されているように、インバータ回路32を介してドラムモータ5を回転させ、洗濯物をドラム7内で回転させた場合のドラムモータ5に流れるトルクに寄与するq軸の電流Iqから、布量を特定する。また、例えば、洗濯機100が、各注水量と各注水量に対応する洗濯物の布量とを関連づけて記憶し、制御回路50は、注水前布量検知動作として、ユーザが運転コースの決定時に設定した注水量に相当する注水量を、洗濯機100が記憶する各注水量の中から特定し、特定した注水量に関連づけて記憶されている洗濯物をこの場合の布量と特定するものであってもよい。なお、ここでの布量の特定の精度は、後述する注水後に行う布量の特定の精度に比べて低い。そして、洗剤が投入される。この洗剤の投入は、ユーザによって行われるものであってもよい。また、洗濯機100が洗剤の自動投入装置を備える場合には、洗濯機100が洗剤を投入するものであってもよい。
【0059】
制御回路50は、排水弁モータ47を制御して、排水弁15を閉鎖状態にし、給水弁モータ11を制御することにより、ドラム7に注水する給水行程を実行する(ステップS2)。給水行程が終わると、制御回路50は、PWM信号を生成することによって、インバータ回路32を介してドラムモータ5を回転させることにより、洗い行程を実行する(ステップS3)。具体的には、制御回路50による制御の下、ドラムモータ5が正転と反転とを繰り返すことにより、ドラム7内の洗濯物と洗剤が水に溶けた洗剤水とが攪拌され、洗濯物についた汚れが落とされる。このとき、制御回路50は、ドラムモータ5に流れる電流Iqの変動を特定することにより、布質を判定する(ステップS4)。これは、洗濯物が化学繊維である場合には、綿などの天然繊維である非化学繊維に比べて吸水性が低く、ドラムモータ5の負荷が非化学繊維に比べて軽くなるため、電流Iqの変動が比較的小さい場合には化学繊維と判定でき、電流Iqの変動が比較的大きい場合には非化学繊維と判定できるという考えに基づくものである。なお、布質の判定結果は、第1脱水動作よりも前に取得される洗濯物に関する情報の一例である。
【0060】
洗い行程が終わると、制御回路50は、排水弁モータ47を制御し、排水弁15を開放状態にすることにより、ドラム7から水を排水する排水行程を実行する(ステップS5)。排水行程が終わると、制御回路50は、PWM信号を生成することによって、インバータ回路32を介してドラムモータ5を回転させることにより、脱水を行う第1回目の脱水行程を実行する(ステップS6)。第1回目の脱水行程におけるドラムモータ5の回転速度は、例えば、600rpmである。脱水行程が終わると、制御回路50は、排水弁モータ47を制御して、排水弁15を閉鎖状態にし、給水弁モータ11を制御することにより、ドラム7に注水する給水行程を実行する(ステップS7)。
【0061】
給水行程が終わると、制御回路50は、PWM信号を生成することによって、インバータ回路32を介してドラムモータ5を回転させることにより、洗剤のすすぎを行うすすぎ行程を実行する(ステップS8)。すすぎ行程が終わると、制御回路50は、排水弁モータ47を制御し、排水弁15を開放状態にすることにより、ドラム7から水を排水する排水行程を実行する(ステップS9)。
【0062】
排水行程が終わると、制御回路50は、PWM信号を生成することによって、インバータ回路32を介してドラムモータ5を回転させることにより、脱水を行う第2回目の脱水行程(第1脱水動作の一例)を実行する(ステップS10)。脱水行程では、遠心力によりドラム7の貫通孔から洗濯物の水分が排出される。第2回目の脱水行程におけるドラムモータ5の回転速度は、後述する第3回目の脱水行程(第2脱水動作の一例)におけるドラムモータ5の回転速度よりも遅く、例えば、900rpmである。つまり、第2回目の脱水行程における脱水は、第3回目の脱水行程における脱水に比べて脱水効果が薄い。
【0063】
制御回路50は、第2回目の脱水行程よりも前に取得される洗濯物に関する情報に基づき、その所定条件が満たされるか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、制御回路50は、ステップS1の処理である注水前布量検知動作に基づいて得られる洗濯物の布量がしきい値以上である場合に所定条件を満たしたと判定する。また、制御回路50は、その注水前布量検知動作に基づいて得られる洗濯物の布量がしきい値未満である場合に所定条件を満たさないと判定する。なお、洗濯物に関する情報は、洗濯物に対する注水後のドラムモータ5の負荷(モータ負荷の一例)に基づいて得られる情報を含むものであってもよい。洗濯物に対する注水後のドラムモータ5の負荷に基づいて得られる情報の例としては、洗濯物の布質などが挙げられる。また、洗濯物に関する情報は、ユーザの入力に基づいて得られる情報を含むものであってもよい。ユーザの入力に基づいて得られる情報の例としては、ユーザが操作パネル49を介して入力する布量の情報や布質の情報などが挙げられる。
【0064】
制御回路50は、所定条件を満たした(すなわち、ステップS1の処理により特定した布量がしきい値以上である)と判定した場合(ステップS11においてYES)、布量を特定する(ステップS12)。なお、ここでの布量の特定もステップS1の処理と同様に、電流Iqに基づいて特定するものであってよい。布量の特定は、電流Iqを用いた、すなわちドラム7の回転時の慣性モーメントを用いた、例えば、特許文献2などに記載の方法を用いるものであってよいが、洗濯物が乾いた状態では布量が大きくなるほどドラム内部を占める体積が大きくなり,洗濯物の布量の違いによる慣性モーメントの差が出にくくなり、布量の特定の精度が低下する。そのため、ステップS12の洗濯物の布質を特定する処理では、洗濯物の含水量を大きくして洗濯物の密度を大きくすることにより、ドラム7の径方向外側に重量が偏りやすくし、慣性モーメントを大きくして、布量の特定の精度を上げている。なお、給水量が示す水量から水位センサ48が検出した水量を減じたものが洗濯物が吸収した水量となるため、洗濯物の実際の重量は、例えば、布量検出動作によって検出した布量から給水量と水位センサ48の検出量との差の水量を減算して求めればよい。
【0065】
また、制御回路50は、所定条件を満たしていない(すなわち、ステップS1の処理により特定した布量がしきい値未満である)と判定した場合(ステップS11においてNO)、ステップS12の処理を行わずに、脱水行程を実行する(ステップS13)。第3回目の脱水行程におけるドラムモータ5の回転速度は、第2回目の脱水行程におけるドラムモータ5の回転速度よりも速く、例えば、1500rpmである。
【0066】
次に、制御回路50は、ステップS11の処理を実行したか否かを判定する(ステップS14)。制御回路50は、ステップS11の処理を実行していないと判定した場合(ステップS14においてNO)、布量を特定する(ステップS15)。なお、ここでの布量の特定もステップS1の処理と同様に、電流Iqに基づいて特定するものであってよい。そして、制御回路50は、ステップS15の布量の特定結果に基づいて、乾燥運転の内容を決定する(ステップS16)。乾燥運転の内容の例としては、ヒートポンプ300の運転時間などが挙げられる。すなわち、制御回路50は、特定した布量が増加するにつれて乾燥運転の時間を長くする。なお、運転時間の決定は、第2回目の脱水行程におけるドラム7の回転速度、回転継続時間、洗濯物のアンバランスの度合いなどによって補正するものであってもよい。
【0067】
また、制御回路50は、ステップS11の処理を実行したと判定した場合(ステップS14においてYES)、第2回目の脱水行程(第1脱水動作の一例)と第3回目の脱水行程(第2脱水動作の一例)との間に行う洗濯物の布量検知動作(すなわち、ステップS12の処理)の結果に基づき、乾燥運転の内容を決定する(ステップS16)。
【0068】
制御回路50は、決定した乾燥運転の内容で乾燥工程を実行する(ステップS17)。制御回路50は、処理を終了する。
【0069】
(利点)
以上、一実施形態の洗濯機100(洗濯システムの一例)について説明した。制御回路50は、第1脱水動作と、前記第1脱水動作よりも後に行われる第2脱水動作とを含む運転コースにおいて、前記第1脱水動作と前記第2脱水動作との間に洗濯物の布量検知動作を行う。すなわち、制御回路50は、布量検知動作を行う制御モードを実行可能な回路である。
【0070】
こうすることにより、洗濯機100は、布量検知動作において洗濯物が水を含むことにより、洗濯物の重量の検出精度を向上させることができる。
【0071】
(実施形態の第1変形例)
実施形態の第1変形例では、精度よく布量を特定する布量を特定する処理を行うタイミングは、上述のタイミングに限定せず、運転コース中に行われる脱水後であればいずれのタイミングであってもよい。また、脱水行程の回数は3回である必要はない。また、必ずしもステップS1の処理により特定した布量に応じて、精度よく布量を特定する処理を行うタイミングを決定する必要はない。
【0072】
(実施形態の第2変形例)
なお、上記布量の特定は、例えば、給水量、水位センサ48の検出した水量、電流Iqを入力データとし、布量(洗濯物の重量)を出力データとする教師データを用いてパラメータを決定した学習済みモデルを用いて推定するものであってもよい。給水量、水位センサ48の検出した水量、電流Iqと、それらに対応する布量とが1組のデータとなる。
【0073】
例えば、10000組のデータから成る教師データを用いて学習モデルにおけるパラメータを決定する場合を考える。この場合、教師データは、例えば、訓練データと、評価データと、テストデータとに分けられる。訓練データと、評価データと、テストデータとの割合の例としては、70%、15%、15%や95%、2.5%、2.5%などが挙げられる。例えば、データ#1~#10000の教師データが、訓練データとしてデータ#1~#7000、評価データとしてデータ#7001~#8500、テストデータ15%としてデータ#8501~#10000に分けられたとする。この場合、訓練データであるデータ#1を学習モデルであるニューラルネットワークに入力する。ニューラルネットワークは、布量を出力する。訓練データの入力データがニューラルネットワークに入力され、布量がニューラルネットワークから出力される度に(この場合、データ#1~#7000のそれぞれのデータがニューラルネットワークに入力される度に)、その出力に応じて例えばバックプロパゲーションを行うことにより、ノード間のデータの結合の重み付けを示すパラメータを変更する(すなわち、ニューラルネットワークのモデルを変更する)。このように、訓練データをニューラルネットワークに入力してパラメータを調整する。
【0074】
次に、訓練データによってパラメータが変更されたニューラルネットワークに、評価データの入力データ(データ#7001~#8500)を順に入力する。ニューラルネットワークは、入力された評価データに応じた布量を出力する。ここで、ニューラルネットワークが出力するデータが、入力データに関連付けられている出力データと異なる場合、ニューラルネットワークの出力が入力データに関連付けられている出力データとなるようにパラメータを変更する。このように、パラメータが決定されたニューラルネットワーク(すなわち、学習モデル)が、学習済みモデルである。
【0075】
次に、最終確認として、学習済みモデルのニューラルネットワークに、テストデータ(データ#8501~#10000)の入力データを順に入力する。学習済みモデルのニューラルネットワークは、入力されたテストデータに応じた布量を出力する。すべてのテストデータに対して、学習済みモデルのニューラルネットワークが出力する布量が、入力データに関連付けられている布量と一致する場合、学習済みモデルのニューラルネットワークが所望のモデルである。また、テストデータのうちの1つでも、学習済みモデルのニューラルネットワークが出力する布量が、入力データに関連付けられている布量と一致しない場合、新たな教師データを用いて学習モデルのパラメータを決定する。上述の学習モデルのパラメータの決定は、所望のパラメータを有する学習済みモデルが得られるまで繰り返される。所望のパラメータを有する学習済みモデルが得られた場合、その学習済みモデルが記憶部に記録される。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
1…外箱(筐体)、2…貫通孔状の出入口、3…扉、4…水受槽、5…ドラムモータ、6…回転軸、7…ドラム、8…貫通孔、9…複数のバッフル、10…給水弁、11…給水弁モータ、12…注水ケース、13…注水口、14…排水管、15…排水弁、17…メインダクト、18…前ダクト、19…ファンケーシング、20…吸気口、21…排気口、22…ファンモータ、23…回転軸、24…ファン、25…後ダクト、26…循環ダクト、27…コンプレッサ、28…コンプレッサモータ、29…コンデンサ(凝縮器)、30…
冷媒管、31…加熱フィン、32…インバータ回路、33a~33f…スイッチング素子、35u、35v、35w…シャント抵抗、36…レベルシフト回路、38…過電流比較回路、39…駆動用電源回路、40…交流電源、43…第1電源回路、44…駆動回路、45…第2電源回路、46…高圧ドライバ回路、47…排水弁モータ、48…水位センサ、49…操作パネル、82…回転位置センサ、200…駆動回路、201…駆動回路、202…駆動回路、203…駆動回路、204…駆動回路、300…ヒートポンプ。