(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】高温計を備えるエアロゾル発生装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/02 20220101AFI20240805BHJP
A24F 40/57 20200101ALI20240805BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20240805BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20240805BHJP
【FI】
G01J5/02 J
A24F40/57
A24F47/00
A24F40/465
(21)【出願番号】P 2020518816
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2018076702
(87)【国際公開番号】W WO2019068664
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-30
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ベサント ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ロベール ジャック
(72)【発明者】
【氏名】リヴァ レッジョーリ リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】ルス アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ザイツ ペーター
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104305527(CN,A)
【文献】特開平04-249722(JP,A)
【文献】特開平07-120686(JP,A)
【文献】特表2011-503560(JP,A)
【文献】特開2008-060464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0262451(US,A1)
【文献】国際公開第2017/162687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01J 1/02 - G01J 1/04
G01K 13/00
G02B 3/00 - G02B 3/14
A24F 40/00 - A24F 40/95
A24F 47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体を加熱することによってエアロゾルを発生するように構成されたエアロゾル発生装置であって、前記装置が、前記エアロゾル形成基体を受容するための装置ハウジングと、前記装置ハウジング内の加熱される標的表面の温度を決定するための高温計と、を備え、
前記加熱される標的表面が、前記エアロゾル形成基体を加熱するために使用される発熱体の表面積であり、前記高温計が、少なくとも第一の波長帯および第二の波長帯で熱放射を測定するように構成された二重波長高温計または多波長高温計であり、前記第二の波長帯が前記第一の波長帯よりも広く、前記高温計が少なくとも第一および第二のセンサーを備える検出器を含み、
前記第一および前記第二のセンサーが、それぞれ前記第一の波長帯および第二の波長帯での熱放射を検出し、前記第一および前記第二のセンサーが相互に隣接して横並びに配置されており、
前記標的表面によって放射された前記熱放射のそれぞれの部分を独立して検出するように構成されており、前記高温計が前記加熱される標的表面から放射される熱放射を収集するための非撮像光学系を備え、前記非撮像光学系が、前記標的表面とは反対側にレンズ表面を有するレンズを備え、前記標的表面とは反対側の前記レンズ表面が散乱表面である、エアロゾル発生装置。
【請求項2】
周辺光から前記高温計を遮蔽するための光遮蔽をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第一の光バンドパスまたはロングパスまたはショートパスフィルターが前記第一のセンサーの前に配置されている、請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
第二の光バンドパスまたはロングパスまたはショートパスフィルターが前記第二のセンサーの前に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第一および第二のセンサーが、前記標的表面の平均温度を測定するよう構成され、前記検出器が
、前記加熱される標的表面上のホットスポットを測定するように構成された少なくとも第三のセンサーを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第三のセンサーのスペクトル感度が前記第一および第二のセンサーのスペクトル感度とは異なる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記検出器が
、前記加熱される標的表面上のホットスポットを測定するように構成された少なくとも第四のセンサーを備える、請求項5または6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第四のセンサーのスペクトル感度が前記第一および第二のセンサーのスペクトル感度とは異なる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
第三の光バンドパスフィルターが前記第三のセンサーの前に配置され、第四の光バンドパスフィルターが前記第四のセンサーの前に配置され、前記第三の光バンドパスフィルターの波長帯が前記第四の光バンドパスフィルターの波長帯とは異なる、請求項7または8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置と、エアロゾル形成基体を含み、前記装置と共に使用するためのエアロゾル発生物品と、を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項11】
前記装置が、前記エアロゾル発生物品の前記エアロゾル形成基体内に配置されているかまたは配置可能な発熱体に熱を発生させるためのヒーターを備え、前記発熱体が前記加熱される標的表面を備える、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を加熱することによって吸入可能なエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置に関する。本発明は、こうした装置を備えるエアロゾル発生システムにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形成基体を加熱することによって吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置は、先行技術から一般的に周知である。こうした装置内で、エアロゾル形成基体は、例えば発熱化学反応によって生成された熱エネルギーによって化学的に、または例えば抵抗ヒーターまたは誘導ヒーターによって電気的に加熱される。望ましいエアロゾル形成揮発性化合物のみが放出されることを確実にするために、エアロゾル形成基体は燃焼されるよりもむしろ加熱されることのみが意図されているため、加熱プロセスの正確な温度制御が重要である。正確な温度制御は、同様に正確な温度監視に依存する。抵抗装置については、発熱体の温度と比抵抗の間の既知の関係から、十分な範囲にわたる加熱温度を決定することができる。しかしそれでも誘導装置については、例えば感受性加熱材料の磁気特性が発熱材料のキュリー温度で強磁性から常磁性に変化する時、温度閾値のみを決定することができる。同様に、熱電対またはその他の温度センサーが温度監視に使用される。典型的に、こうしたセンサーは、測定される物体(例えば、エアロゾル形成基体内に配設された発熱体)との熱接触を必要とした。ところが、熱接触測定値は、例えば温度センサーが壊れた時、または温度センサーが基体とともにエアロゾル発生装置の中に挿入される際に発熱体と適切な熱接触をしない時に、失敗しやすい。
【0003】
従って、エアロゾル形成に使用される加熱プロセスの信頼できる、迅速で再現性のある温度監視を可能にするエアロゾル発生装置およびエアロゾル発生システムを有することが望ましいことになる。
【発明の概要】
【0004】
本発明によると、エアロゾル形成基体を加熱することによってエアロゾルを発生するために構成されているエアロゾル発生装置が提供されている。装置は、加熱されるエアロゾル形成基体を受容するための装置ハウジングを備える。本発明によると、装置は装置ハウジング内の加熱された標的表面の温度を決定するための高温計をさらに備える。
【0005】
エアロゾル発生装置内の温度監視のために高温計を使用することは、多くの側面に関して有利である。第一に、高温計は遠隔非接触温度測定を可能にする。それ故に、高温計は、不適切なまたは中断された熱接触に起因する機能不全が回避されるため、非常に信頼性が高く再現性の高い結果を提供する。第二に、遠隔測定の能力のため、高温計は加熱された標的表面と干渉しない。それ故に、標的表面から高温計への熱伝導のため、標的表面への望ましくない温度効果がない。これはまた、測定を信頼性の非常に高いものにする。同時に、エアロゾル発生装置のその他の構成要素(例えば電気回路など)への望ましくない熱伝達が低減される。第三に、非接触温度測定の能力は、加熱された標的表面の交換を容易にする。例えば、標的表面は、発熱体によって加熱されるエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品の一部である発熱体の表面積であってもよい。第四に、高温計は、ミリ秒範囲の速い温度測定を可能にし、それ故に標的表面の連続的な温度監視を可能にする。第五に、高温計は、高い温度(少なくとも、たばこ含有エアロゾル形成基体のエアロゾル形成のために典型的なそれらの温度)を測定する能力を有する。第六に、温度測定の非接触性のため、高温計は標的表面に対して機械的効果がない。それ故に、例えばサセプタホイルまたはサセプタメッシュなどの軟質または壊れやすい標的表面を、機械的損傷のリスクなしに測定することができる。第七に、測定の光学的性質に起因して、横方向分解能をマイクロメートルの範囲まで下げて、標的表面上の温度の局所的なスポット測定を行うことが可能である。同様に、撮像高温計の支援によって、二次元温度分布を測定することができる。
【0006】
高温計は、摂氏150度~摂氏400度、特に摂氏200度~摂氏350度の温度を監視するために構成されていることが好ましい。これらの温度は、エアロゾル発生装置の典型的な動作温度である。
【0007】
高温計では、加熱された標的表面の放射率、すなわち熱放射としてエネルギーを放射する標的表面の有効性を考慮し、プランクの法則またはウィーンの近似式を使用して、標的表面の測定されたスペクトル熱放射輝度から標的表面の温度を推定する。測定された放射輝度から温度を決定するためには、加熱された標的表面の放射率は既知である必要があるか、または決定される必要がある。原理的に、放射率は、例えばサーモパイルまたはボロメーターなどの熱放射検出器と併せてレスリー立方体を含む機器を使用して測定できる。機器は、試験される標的表面からの熱放射を、ほぼ理想的な黒い試料からの熱放射と比較する。
【0008】
小さい範囲(例えば10ケルビンほどの幅を有する範囲)の典型的動作温度のみを監視するために高温計が使用される場合、標的表面の放射率はこの範囲内で一定であると見なすことができる。その結果、標的表面の放射率を、この温度範囲に対して別個の測定で一度決定し、その結果として高温計の較正に使用することができる。
【0009】
加熱された標的表面によって放射された熱放射を測定するために、高温計は、受け取った熱放射を電気出力信号に変換するための検出器を備えうる。有利なことに、検出器は、対象の特定の温度または温度範囲での標的表面の熱放射スペクトルに対応するスペクトル感度範囲を備える。
【0010】
検出器は、光検出器(量子検出器と呼ばれることもある)でありうることが好ましい。光検出器または量子検出器は、熱放射の衝撃光子と直接相互作用し、電子対を生じさせ、それ故に電気出力信号をもたらす。光検出器は、一つ以上のフォトダイオードであってもよく、またはそれを備えうることが好ましい。例えば、一つ以上のフォトダイオードは、次のうち少なくとも一つから選択される感光性物質を含んでもよい:Si (シリコン)、Ge (ゲルマニウム)、InGaAs (砒化インジウムガリウム)、InAs (砒化インジウム)、InSb (アンチモン化インジウム)、InAsSb (砒化アンチモン化インジウム)、またはPbS (硫化鉛(II))。これらの物質のスペクトル感度範囲は、エアロゾル発生装置で使用される発熱体によって、典型的に摂氏200度~摂氏350度の温度で放射された熱放射のスペクトルに関して有利である。上記の物質のスペクトル感度範囲は次の通りである:Siは0.2マイクロメートル~1.1マイクロメートルの波長に対して感受性であり、GEは0.4マイクロメートル~1.7マイクロメートルの波長に対して感受性であり、InGaAsは0.9マイクロメートル~1.7マイクロメートルの波長に対して感受性であり、InAsは0.9マイクロメートル~3.5マイクロメートルの波長に対して感受性であり、InSbは1.2マイクロメートル~7マイクロメートルの波長に対して感受性であり、InAsSbは1.0~5.5マイクロンの波長に対して感受性であり、PbSは0.3マイクロメートル~3マイクロメートルの波長に対して感受性である。これらの範囲のそれぞれの上端、すなわちスペクトル感度範囲の長波長端は、それぞれの半導体材料のバンドギャップエネルギーによって基本的に決定される。
【0011】
InGaAsフォトダイオードは、Geなどの他の材料と比較して、同じセンサー領域に対してより速い応答時間、より高い量子効率およびより低い暗電流を有するので好ましい。
【0012】
フォトダイオードの代わりに、光検出器は例えばPbS(硫化鉛(II))を含むなど、少なくとも一つのフォトレジスタを含んでもよい。
【0013】
別の方法として、検出器は、例えばボロメーター、焦電形赤外線センサー、または複数の熱電対から成るサーモパイルなどの熱検出器であってもよい。熱検出器は衝撃熱放射に応じて温度変化を経験し、これが次に電気的出力電圧を生じさせる。
【0014】
高温計は、加熱された標的表面から放射された熱放射を収集するための、および熱放射を検出器に向けて方向付けるための光学システムを備えてもよい。特に、光学システムは、標的表面から高温計の検出器に熱放射を伝達するための少なくとも一つのレンズまたはレンズシステムを備えうる。光学システムは、1ミリメートル以下、特に100マイクロメートル以下の横方向分解能(標的表面上)を有することが好ましく、10マイクロメートル以下が好ましく、5マイクロメートル以下(例えば、約3マイクロメートルまたは約2マイクロメートル)が最も好ましい。
【0015】
光学システムは、少なくとも0.1ミリメートル、特に少なくとも1ミリメートルの全視野(標的表面上の物体の直径)を有しうることが好ましく、少なくとも3ミリメートルであることが好ましく、少なくとも5ミリメートルであることが最も好ましい。すなわち、光学システムは加熱された標的表面の領域から放射された熱放射を収集するように構成されていることが好ましく、領域は少なくとも0.1ミリメートル、特に少なくとも1ミリメートルの直径を有することが好ましく、少なくとも3ミリメートルの直径を有することが好ましく、少なくとも5ミリメートルの直径を有することが最も好ましい。
【0016】
高温計はまた、検出器によって感知された熱放射のスペクトル帯を制限するための手段を備えうる。その結果、高温計は少なくとも一つのフィルターを備えてもよい。特に、少なくとも一つのフィルターは、光バンドパスまたは光学ロングパスフィルターまたは光学的ショートパスフィルターであってもよい。高温計はまた、こうしたフィルターの組み合わせを備えてもよい。少なくとも一つのフィルターは、干渉フィルター、吸収フィルター、または回折光フィルターであってもよい。特に、フィルターは検出器の固有フィルターであってもよい。特定のフィルター構成のさらなる詳細は、以下で考察されている。
【0017】
高温計は、検出器の出力信号を標的表面の温度を示す信号に変換するための電気回路をさらに備えうる。同様に、電気回路は、装置の加熱プロセスを制御するために使用される全体的なエアロゾル発生装置のコントローラの一部であってもよい。特に、高温計、すなわち高温計によって決定される温度は、装置の加熱プロセスのフィードバック制御に使用されうる。
【0018】
電気回路は、電流電圧変換のためのトランスインピーダンスアンプ、反転信号アンプ、シングルエンドから差動信号への変換器、アナログデジタルコンバータ、およびマイクロコントローラのうちの少なくとも一つを備えうる。
【0019】
原則として、本発明による高温計は、単一波長高温計、二重波長高温計、または複数波長高温計であってもよい。
【0020】
単一波長高温計の場合、高温計は、単一波長帯で加熱された標的表面によって放射された熱放射を検出するように構成されている。単一波長高温計は、その単純かつ低コストの設計のため有利である。例えば、単一波長高温計は、単一のフォトダイオードおよび単一要素光学システム(例えば、フォトダイオードの前に配設された単一集光レンズ)を有する単一の光検出器を備えてもよい。さらに、単一波長高温計は、フィルター、特に検出器によって感知された放射のスペクトル帯を制限するために、検出器の前にあるバンドパスフィルターを備えうる。有利なことに、フィルターリングは、放射率のスペクトル変化に起因する望ましくない効果を低減させ、放射率は単一波長高温計を使用する時に既知であるか、または決定される必要がある。上述の通り、単一波長高温計は、小さい範囲の動作温度にわたって既知の放射率の標的表面を監視するのに特に適している。
【0021】
別の方法として、高温計は二重波長高温計であってもよい。二重波長高温計は、二つの波長帯で標的表面によって放射された熱放射を検出する。2つのスペクトル放射輝度の比は、規定の温度まで単調に(実際、ほぼ比例的に)変化し、それ故に正確な温度値に変換することができる。その結果、二重波長高温計を使用する時、温度測定は測定された二つの放射輝度の比にのみ依存し、絶対値には依存しない。より精密には、標的表面の温度は、二つの波長帯で測定された二つの放射輝度の比、および二つの波長帯でのそれぞれの放射率の比の両方の関数である。この理由から、二重波長高温計はまた、比高温計と呼ばれる。さらに、標的表面のサイズと検出器の視野(FOV)との比などの任意のパラメーターは、等しい割合で二つの波長または波長帯の放射輝度に影響を与え、温度測定には影響を与えない。従って、二重波長高温計を使用することは、標的表面のサイズと無関係の温度測定をもたらす。同様に、二つの測定放射輝度の比にのみ依存する測定温度に起因して、標的表面と検出器の間の測定経路における変化する透過率特性は同じように無くなる。これは、高温計の見通し内の発生エアロゾルまたは粉塵が、検出器によって感知された熱放射輝度の絶対値を低減しうる、エアロゾル発生装置内の温度監視に関して特に有利である。さらに、二つの波長帯での放射率が実質的に等しい時、二つの波長帯でのそれぞれの放射率の比はほぼ1である。その結果、放射率は、標的表面の温度を計算するために使用される温度機能において計算に入れられていない。その結果、二重波長高温計は、標的表面の放射率の実際の値が何であるかにかかわらず、標的表面の真の温度を示す。
【0022】
一般的に、二重波長高温計は、相互に別々で異なる少なくとも二つの波長帯で熱放射を測定するように構成されうる。すなわち、第一の波長帯および第二の波長帯は、相互に別々で異なりうる。この構成は、その伝統的意味で二重波長の高温計に対応する。別の方法として、二重波長高温計は、相互に部分的に重なる、または二つの波長帯の一つがもう一方の波長帯のサブセットである少なくとも二つの波長帯で熱放射を測定するように構成されてもよい。この構成は、時に二色高温計とも呼ばれる二重波長高温計に対応する。すなわち、第一の波長帯および第二の波長帯は、相互に部分的に重なってもよく、または第一の波長帯は第二の波長帯のサブセットであってもよい。
【0023】
二つの波長帯で実質的に等しい放射率を有するために、または放射率の波長依存性偏差を少なくとも最小限にするために、二つの波長帯は互いに近くにあるように選択されていることが好ましく、また狭帯域(灰色体の挙動の仮定)であることが好ましい。標的物体の放射率が両方の波長帯で同じ程度に変化する時でも、測定結果は変化しないことになる。二つの放射率の間の一定差または線形関係の結果としての真の温度からの偏差は、高温計で放射率比(いわゆるe勾配)を設定することによって修正することができる。
【0024】
二つの波長帯間を分離の増大することは、温度測定の不確実性を低減させるために使用されうる。しかし、分離の増大では、標的表面の灰色体の挙動の仮定の妥当性が低下する可能性がある。従って、二つの波長帯の選択は、グレーの体挙動と温度測定の不確実性との間の折衷案であるべきである。
【0025】
結論として、二重波長高温計は、標的表面と検出器の間の放射率の変動、部分的に充填された視野、および光学的障害を補うことを可能にするので、本質的に正確である。
【0026】
二つの波長帯は、同一の帯域幅または異なる帯域幅を有しうる。すなわち、二つの狭い波長帯で測定する代わりに、二重波長高温計は、第一の波長帯で、および第二の波長帯で熱放射を測定するように構成されてもよく、ここで第二の波長帯は第一の波長帯よりも広い。そのため、これらの波長帯で測定されるそれぞれの熱放射輝度の間の差が増大し、これは測定される信号レベルを有利に改善する。そうでなければ、二つの波長帯が互いに近くにある時に、これらの波長帯で測定されるそれぞれの熱放射輝度は相互にほとんど異ならない。それ故に、二つのほぼ同一の放射輝度値の比は、標的表面の温度に関してほんのわずかにしか異ならない。従って、電気回路は、こうした小さい信号変化を検出するために大きな増幅因子を提供するように構成されていることが好ましい。
【0027】
単波長で測定しないか、または狭い波長帯で測定しない場合、検出器は波長帯にわたる積分放射輝度を測定する。しかしそれでも、標的表面の温度を導き出すために使用される大半の式は、特定の波長での、または狭い波長帯内のスペクトル熱放射を参照する。温度を依然として導き出すために、積分放射輝度は、検出器のスペクトル応答、および検出器の前方にある可能なフィルターで重み付けをした、所与の放射輝度での平均放射輝度を表す、いわゆる有効波長での放射輝度を計算することによって得られる。有効波長の決定に関しては、例えば次の論文にさらなる言及がなされている:″Effective wavelength for multicolor/pyrometry″ by J. L. Gardner, Applied Optics, Vol. 19、Issue 18、pp. 3088-3091 (1980)。
【0028】
有効波長を決定する代わりに、高温計を波長帯にわたって、または全波長スペクトルにわたって較正してもよい。これによって、光学システムの透過率、または高温計の入口窓の透過率の変動可能性が、有利なことに自動的に考慮される。較正は、例えば黒体放射体を使用して、黒体の異なる既知の温度で行うことができる。高温計が較正されると、加熱された標的表面の放射率を知る必要はもうない。
【0029】
それぞれの第一および第二の波長帯での放射を検出するために、高温計は、少なくとも第一および第二のセンサーを含む検出器を備えうる。第一および第二のセンサーは、標的表面によって放射された熱放射輝度のそれぞれの部分を独立して検出するように配設および構成されている。例えば、光検出器は、相互に独立した少なくとも第一および第二のフォトダイオードを備えてもよい。同様に、光検出器は、放射された熱放射輝度のそれぞれの部分を独立して測定するために、少なくとも第一および第二のセンサー領域(第一および第二のセンサーとして働く)を有する単一のフォトダイオードを備えうる。第一および第二のセンサーは、特に単一の検出平面において、相互に隣接して配設されてもよい。別の方法として、第一および第二のセンサーは、サンドイッチ構成で一つがもう一方の前に配設されてもよい。後者の構成において、それぞれの前方センサーは有利なことに、それぞれの後部センサーのフィルターとなりうる。
【0030】
二つのそれぞれの波長帯を選択するために、二重波長高温計は第一のバンドパスまたはロングパスまたはショートパスフィルターを備えうる。追加的に、または別の方法として、二重波長高温計は、第二のバンドパスまたはロングパスまたはショートパスフィルターを備えうる。
【0031】
バンドパスフィルターの使用に関して、バンドパスは第一または第二の波長/波長帯のそれぞれに対応することが好ましい。第一のバンドパスフィルターの帯域幅は、第二のバンドパスフィルターの帯域幅より小さいかまたは大きくてもよい。第一および第二のバンドパスフィルターの少なくとも一つは、狭帯域であることが好ましい。すなわち、第一および第二のバンドパスフィルターの少なくとも一つは、最大で200ナノメートル、特に最大で150ナノメートル、好ましくは最大100ナノメートルの帯域幅を含みうる。
【0032】
ロングパスまたはショートパスフィルターの使用に関して、ロングパスフィルターのカットオフ波長は、特にそれぞれの第一または第二のセンサーにおいて、検出器のスペクトル感度範囲の長波長端より下になるように選択されうる。同様に、ショートパスフィルターのカットオフ波長は、特にそれぞれの第一または第二のセンサーの、検出器のスペクトル感度範囲の短波長端より上になるように選択されうる。ロングパスフィルターのカットオフ波長および検出器のスペクトル感度範囲の長波長端は、検出器波によって感知された熱放射のスペクトルを制限するために特定の波長帯を定義するように選択されうる。同様に、ショートパスフィルターのカットオフ波長、および検出器のスペクトル感度範囲の短波長端は、特定の波長帯を定義するように選択されうる。言い換えれば、ロングパスフィルターまたはショートパスフィルターと組み合わせた検出器は、バンドパスフィルターとして機能しうる。ロングパスフィルターのカットオフ波長は、検出器のスペクトル感度範囲の長波長端より、最大で200ナノメートル下、特に最大150ナノメートル下、好ましくは最大100ナノメートル下でありうる。同様に、ショートパスフィルターのカットオフ波長は、検出器のスペクトル感度範囲の短波長端より、最大で200ナノメートル上、特に最大150ナノメートル上、好ましくは最大100ナノメートル上でありうる。検出器がフォトダイオードを備える時、スペクトル感度範囲の長波長端は、フォトダイオードの感光性半導体材料のバンドギャップエネルギーによって基本的に決定される。その結果、フォトダイオードの材料は、監視される波長帯の上限を定義するように、そのスペクトル感度範囲の長波長端に関して選択されうる。例えば、監視される波長帯の上限が約1.7マイクロメートルである時、検出器は、0.9マイクロメートル~1.7マイクロメートルのスペクトル感度範囲を有するInGaAsフォトダイオードであるかまたはそれを備えることが好ましい。
【0033】
少なくとも第一および第二のセンサーを有する検出器の場合、第一のバンドパスフィルターまたは第一のロングパスフィルターまたは第一のショートパスフィルターは、第一のセンサーの前に配設されうる。別の方法として、または追加的に、第二のバンドパスフィルターまたは第二のロングパスフィルターまたは第二のショートパスフィルターは、第二のセンサーの前に配設されうる。
【0034】
一例によると、高温計は、検出器の第一および第二のセンサーの前にそれぞれ配設された第一および第二のバンドパスフィルターを備えうる。二重波長温度計を実現するために、第一のバンドパスフィルターの波長帯は第二のバンドパスフィルターの波長帯とは異なり、望ましい第一および第二の波長帯に対応する。第一および第二のバンドパスフィルターの少なくとも一つは、狭帯域であることが好ましい。
【0035】
単一波長または二重波長の高温計の代替として、高温計は多波長高温計であってもよい。多波長高温計は、波長とともに、特に非線形に変化する放射率を有する標的表面の温度を監視するために有利である。こうした標的表面は非灰色体と呼ばれる。多波長高温計は、非灰色体の物質の実際の温度および放射率の両方を正確に決定するために、測定された波長にわたって熱エネルギーおよび放射率を特徴付けるように構成されている。このために、多波長高温計は、二つを超えるセンサー、すなわち少なくとも三つのセンサーを有する検出器を備える。一般に、放射率の波長依存性がN個の不明なパラメーターを有する関数によって近似されうる時、多波長高温計は少なくともN個の検出器を備えることが好ましい。
【0036】
高温計は、少なくとも第一、第二および第三のセンサーを含む検出器を備えてもよく、また少なくとも第四のセンサーも含むことが好ましい。第一および第二のセンサーは、二重波長温度測定のために使用されてもよく、すなわち上述の通りの二重波長高温計として使用される。対照的に、第三および第四のセンサーは、特に第三のセンサーおよび任意選択の第四のセンサーの前方のそれぞれのフィルターと組み合わせて、追加的な機能を実施するために使用されうる。例えば、第三および任意選択の第四のセンサーは、非灰色体の放射率を決定するために使用してもよい。特に、第三および任意選択の第四のセンサーは、多波長高温計、例えば三波長高温計または四波長高温計を実現するために使用されうる。同様に、第三および任意選択の第四のセンサーは、第一および第二のセンサーによって決定された標的表面の平均温度とは異なる標的表面上のホットスポット温度を決定するために使用されうる。さらに、第三および任意選択の第四のセンサーは、エアロゾル発生装置によって生成された蒸気またはエアロゾルの量を決定するために使用されうる。
【0037】
第三および任意選択の第四のセンサーは、第一および第二のセンサーとは異なるセンサータイプのものとしうる。例えば、第一および第二のセンサーは、フォトダイオードなどの光検出器であってもよく、一方で第三および任意選択の第四のセンサーは、例えばサーモパイルなどの熱センサーであってもよい。同様に、第三および任意選択の第四のセンサーは、同一のセンサータイプであるが異なる感度のものであってもよい。例えば、第一および第二のセンサーはInGaAsフォトダイオードであってもよく、第三および任意選択の第四のセンサーは、Siフォトダイオードであってもよい。
【0038】
後者の構成は、ホットスポットを検出するために有利に使用されうる。こうした構成において、(それぞれのフィルターと組み合わせた)第一および第二のセンサーは、標的表面の平均温度を測定するための二重波長高温計の役割を果たす。第三および任意選択の第四のセンサー(フィルターなし)は、標的表面上のホットスポットを測定するように構成されている。本発明によるエアロゾル発生装置に関して、標的表面のホットスポットは、温度が望ましい最大加熱温度を超える(例えば、摂氏350度を超える)標的表面上のスポット様の領域である。
【0039】
もちろん、第三および第四のセンサーは第一および第二のセンサーと同一であってもよい。この構成において、検出器は、非灰色体標的表面(例えばアルミニウム標的表面)の実際の温度および放射率の両方を決定するための四重長波長高温計であってもよい。
【0040】
別の方法として、第三および第四のセンサーは、第三および第四のバンドパスフィルターと組み合わせられてもよく、すなわち第三のバンドパスフィルターは第三のセンサーの前に配設されていて、第四のバンドパスフィルターは第四のセンサーの前に配設されている。第三のバンドパスフィルターの波長帯は、第四のバンドパスフィルターの波長帯とは異なる。第三および第四のバンドパスフィルターの両方の波長帯は狭帯域であることが好ましく、例えば最大で200ナノメートル、特に最大で150ナノメートル、好ましくは最大100ナノメートル帯域幅を有する。第三のバンドパスフィルターの波長帯は、検出器の見通し線における気体媒体の吸収ピークに対応するかまたはカバーするように選択されうる。この構成において、第三および第四のセンサーは分光計として使用されうる。
【0041】
例えば、水はおよそ1.45マイクロメートルに顕著な吸収ピークを有する。標的表面によって放射された赤外線放射が、高温計の見通し内のエアロゾルに含まれる水蒸気/湯気によってどの程度吸収されるかを検出するために、検出器は、第三および第四のセンサーとしてのInGaAsフォトダイオードと、追加的に、およそ1.45マイクロメートルの波長帯を有する第三のセンサーの前の第三のバンドパスフィルターと、およそ1.45マイクロメートルの波長帯を有する第四のセンサーの前の第四のバンドパスフィルターとを備えうる。結果として、これは特定の温度でエアロゾル発生装置によって発生したエアロゾルの量を推定することを可能にする。標的表面の温度は、二重波長高温計の役割を果たす第一および第二のセンサーによって決定される。
【0042】
二重波長ならびに多波長高温計については、高温計の光学システムは、分割のために、特に標的表面によって高温計のセンサーに放射された熱放射を均等に分割するために、少なくとも一つのビームスプリッタを備えうる。有利なことに、ビームスプリッタはダイクロイックビームスプリッタである。ダイクロイックビームスプリッタは、衝突光の吸収または損失なしに二つのフィルターバンド(一つは反射中、および一つは透過中)を提供する。別の方法として、または追加的に、光学システムは、熱放射を高温計の検出器上に向けて分配するための少なくとも一つのレンズまたはレンズシステムを備えうる。
【0043】
二重波長および多波長高温計を使用する場合、高温計の検出器のそれぞれのセンサーに達する各波長の光子数がほぼ同じであることが、多くの用途において重要である。なおも、本発明によるエアロゾル発生装置において、エアロゾルは、加熱に伴いエアロゾル形成基体から揮発したエアロゾルに曝される光学システムの表面上に粒子および液滴を蓄積させうる。結果として、それぞれのセンサーに達する光子の数が変化し、測定精度が低下する可能性がある。この問題を克服するために、光学システムは有利なことに、少なくとも一つの散乱レンズ、すなわち少なくとも一つの散乱レンズ表面を有する少なくとも一つのレンズを備えてもよい。少なくとも一つの散乱レンズ表面は、標的表面の遠方側であることが好ましい。散乱表面は、滑らかなレンズ表面からのランダムな不規則性を有する滑らかでないレンズ表面である。散乱表面のため、散乱レンズは、標的表面によって放射された熱放射をすべての方向に散乱する。結果として、検出器のそれぞれのセンサーは、光学システムの表面の一部分が粒子または液滴の堆積物によって遮断されていても、すべての波長で実質的に等しい数の光子を受容する。
【0044】
散乱レンズに加えて、光学システムは、熱放射を検出器に向けて方向付けるための収束レンズを備えうる。このために、収束レンズは散乱レンズと検出器の間に配設されている。
【0045】
同じ目的で、光学システムはまた、少なくとも一つのフレネルレンズを備えてもよい。特に、光学システムは、相互に面する段付き表面を有する少なくとも二つのフレネルレンズを含むフレネルレンズシステムを備えうる。フレネルレンズは、その薄く軽いレンズ設計のため有利である。少なくとも一つのフレネルレンズは、球面フレネルレンズであることが好ましい。
【0046】
散乱レンズまたはフレネルレンズを使用する時、光学システムは非撮像光学システムであること、すなわち撮像形成のためではなく、標的表面から検出器への光放射伝達のために最適化された光学システムであることが好ましい。例えば、非撮像システム用のフレネルレンズを使用する時、レンズ表面上の汚れ蓄積の悪影響を軽減するために、その画像を再生するのではなく、標的から来る放射を混合するように設計されるべきである。
【0047】
光放射伝達を最適化するために、光学システムの透明要素(例えば、レンズ、ビームスプリッタ)の光学材料は特に、近赤外~中赤外スペクトルの波長に対して透過的である。適切な材料は、CaF2 (フッ化カルシウム)、PC(ポリカーボネート)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)またはCOC(環状オレフィン系共重合体)である。これらの材料は、最大1.6マイクロメートルの波長までの赤外線スペクトルにおいて少なくとも80パーセントの透過率を備える。特に、COCなどの射出成形プラスチックは、大量生産を可能にするので好ましい。
【0048】
光学システムは加熱に伴いエアロゾル形成基体から揮発したエアロゾルに曝されている少なくとも表面に疎水性被覆を備えうる。疎水性被覆は有利なことに、被覆された表面上の粉塵およびエアロゾル堆積を妨げるまたは防止する。さらに、疎水性被覆は、被覆された表面の簡単な洗浄を容易にする。
【0049】
高温計は、高温計の要素を封入するための、特に検出器および光学システムを封入するためのケーシング、および場合によっては高温計の電気回路も備えうる。ケーシングは不透明または非透過性である、すなわち遮光性である、または光を通さないことが好ましい。それ故に、ケーシングは、周辺光からの光の遮蔽を提供し、これは有利なことに高温計の感度を増大させ、それ故に精度を増大させる。さらに、ケーシングは有利なことに、エアロゾルの堆積から高温計の要素を保護する。ケーシングは、熱放射が高温計に入ることを可能にする入口開口部を備えうる。入口は、上述の通りの赤外線透過材料で作られることが好ましい透明入口窓によって覆われうる。別の方法として、光学システムの要素、特にレンズは、ケーシングの入口開口部を覆うかまたは封止しうる。
【0050】
現行の技術では、例えば光学作製のためにプラスチック射出成形と、検出器および電気回路のためにフリップチップ技術とを使用することによって、2×4×4立方ミリメートル以内でこうした高温計を構築することが可能である。
【0051】
ケーシングに加えて、または代替的に、エアロゾル発生装置は、周辺光から高温計を遮蔽するためのさらなる光学遮蔽を備えうる。
【0052】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、加熱によって、特に基体を電気加熱することによって、エアロゾル形成基体と相互作用して、エアロゾルを発生する装置を記述するために使用される。エアロゾル発生装置は、ユーザーの口を通してユーザーの肺の中に直接吸入可能なエアロゾルを発生するように構成されていることが好ましい。エアロゾル発生装置は、ハンドヘルド装置、特に従来の紙巻たばこの形状に似た装置であることが好ましい。
【0053】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品または喫煙物品の一部であってもよい。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は固体構成要素と液体構成要素の両方を備えてもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、高密度で安定したエアロゾルの形成を促進するエアロゾル形成体をさらに備えてもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0054】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾル発生装置と相互作用するための物品を指す。物品はエアロゾル形成基体を備える。例えば、エアロゾル発生物品は、固体エアロゾル形成基体または液体エアロゾル形成基体を含むカートリッジであってもよい。加えて、物品は、エアロゾル発生装置によって加熱可能な発熱体を備えうる。例えば、発熱体は、物品が装置のハウジングの中に挿入されている時に、装置の誘導源によって加熱可能なサセプタ素子であってもよい。特に、エアロゾル発生物品は、例えば単回使用のための消耗品であってもよい。固体のたばこ含有エアロゾル形成基体を含む物品は、たばこスティックと呼ばれうる。
【0055】
本発明によると、高温計は、装置ハウジング内の加熱された標的表面の温度を決定するように構成されている。すなわち、加熱された標的表面は、装置の(少なくとも)使用時には装置ハウジング内にある。
【0056】
装置の使用時に、加熱された標的表面は高温計の見通し線内にあることが好ましい。別の方法として、高温計は、標的表面から高温計の検出器に放射された熱放射を収集して方向付けるための光ファイバーを含む繊維系光学システムを備えてもよい。同様に、装置は、標的表面から高温計の検出器に放射された熱放射を方向付けるための少なくとも一つのミラーを備えうる。
【0057】
加熱された標的表面は、エアロゾル発生装置の一部であってもよく、すなわちエアロゾル発生装置は、加熱された標的表面を備えてもよい。また加熱された標的表面は、必ずしもエアロゾル発生装置の一部である必要はないが、装置の使用時のみ装置ハウジング内に配設されうる。
【0058】
加熱された標的表面は、エアロゾル形成基体を加熱するために使用される発熱体の表面積であることが好ましい。別の方法として、加熱された標的表面は、こうした発熱体と熱接触してもよい。
【0059】
発熱体は、エアロゾル発生装置の一部、特にエアロゾル発生装置のヒーターの一部でありうる。この構成において、発熱体は、エアロゾル発生装置の装置ハウジング内に固定して配設されていることが好ましい。もちろん、発熱体はまた、装置ハウジング内に取り外し可能なように配設されてもよく、または配設可能であってもよい。すなわち、発熱体は装置ハウジングから少なくとも部分的にまたは完全に置換可能であるように構成されうる。
【0060】
別の方法として、ヒーター要素は、加熱されるエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品の一部であってもよい。この構成において、発熱体はエアロゾル発生装置の一部ではなく、むしろ装置ハウジング内に取り外し可能なように配設可能である。すなわち、発熱体はエアロゾル形成基体とともにエアロゾル発生装置に挿入可能であり、取り外し可能である。後者の構成において、高温計を使用することは、温度測定の非接触的性質のため特に有利であり、発熱体への熱接触の必要性を回避する。
【0061】
発熱体は、電気的および/または化学的に発生した熱エネルギーによって加熱するように構成されている。それ故に、本発明によるエアロゾル発生装置は、電気的および/または化学的に加熱されるエアロゾル発生装置であってもよい。その結果、発熱体の加熱は、抵抗加熱、誘導加熱および/または発熱化学反応によって引き起こされる。
【0062】
抵抗加熱の場合、発熱体は導電性材料を含み、この導電性材料は電流がそれを通過すると加熱する。抵抗発熱体は、エアロゾル発生装置の一部、特にエアロゾル発生装置の抵抗ヒーターの一部であることが好ましい。抵抗ヒーターは、発熱体に加えて、電力供給源と、電源から発熱体への電力の供給を制御するように構成されたコントローラとを備えうる。
【0063】
誘導加熱の場合、発熱体はサセプタ素子であることが好ましい。本明細書で使用される「サセプタ素子」という用語は、交流電磁場内で誘導加熱される能力を有する材料を含む要素を指す。これは、サセプタ材料の電気的特性および磁性に依存して、サセプタ内で誘導されるヒステリシス損失または渦電流のうちの少なくとも一つの結果でありうる。ヒステリシス損失は、交流電磁場の影響下で切り替えられる材料内の磁区に起因して、強磁性またはフェリ磁性のサセプタ内で生じる。渦電流は、サセプタが導電性である場合に誘起される場合がある。導電性の強磁性サセプタまたは導電性フェリ磁性サセプタの場合において、渦電流およびヒステリシス損失の両方に起因して熱を発生させることができる。その結果、サセプタ素子は、導電性および/または強磁性もしくはフェリ磁性のいずれかである材料を含んでもよい。サセプタ素子は、エアロゾル発生装置の一部、特にエアロゾル発生装置のヒーターの一部でありうる。誘導ヒーターは、サセプタ素子に加えて、サセプタ素子中に熱発生渦電流またはヒステリシス損失のうちの少なくとも一つを誘発するように、装置ハウジング内の交流電磁場を発生するための誘導源を備える。別の方法として、サセプタ素子は、上述の通りのエアロゾル発生物品の一部であってもよい。この場合、サセプタ素子は、物品がエアロゾル発生装置のハウジングとともに受容されている時に、エアロゾル発生装置の誘導ヒーター、特に誘導源によって発生する交流電磁場と相互作用するように、物品内に配設されている。いずれの構成においても、誘導源は、誘導コイルと、相互に動作可能に接続された電源およびコントローラとを備えることが好ましく、ここでコントローラは誘導コイルを通過する交流電流を発生するように構成されている。
【0064】
発熱体は任意の形状または構成であってもよい。発熱体は、ロッド、ブレード、テープ、ストリップ、スリーブ、メッシュまたは芯のうちの少なくとも一つを備えてもよく、または粒子状の構成であってもよい。例えば、発熱体は、基体を装置ハウジングの中に挿入する際にエアロゾル形成基体を貫通するために構成された加熱ブレードまたは加熱ロッドを備えうる。同様に、発熱体は、加熱されるエアロゾル形成基体を受容するために、装置ハウジング内の受容くぼみの少なくとも一部分を形成してもよい。発熱体はまた、エアロゾル発生物品の少なくとも一部分、例えばカートリッジを形成してもよく、これはエアロゾル形成基体を含み、エアロゾル発生装置のハウジング内に受容されるように構成されている。別の方法として、特にエアロゾル発生物品の一部である時、発熱体は、エアロゾル発生物品に含まれるエアロゾル形成基体に極めて近接して配設されている加熱ブレード、加熱ストリップ、加熱ロッド、加熱テープまたは加熱スリーブを備えうる。発熱体は、エアロゾル発生装置の一部として、またはエアロゾル発生物品の一部としての、加熱メッシュまたは加熱芯であってもよい。メッシュまたは芯の構成は、液体エアロゾル形成基体との使用に特に適している。
【0065】
本発明によると、本発明による、および上述の通りのエアロゾル発生装置を備えるエアロゾル発生システムも提供されている。システムはさらに、加熱されるエアロゾル形成基体を備える装置で使用するためのエアロゾル発生物品を備える。特に、装置ハウジングは、物品を少なくとも部分的に受容するように構成されている。
【0066】
本発明の特定の態様によると、装置は、発熱体で熱を発生するために構成されたヒーターを備える。発熱体は、物品のエアロゾル形成基体内に配設されているかまたは配設可能であり、装置の高温計によって温度が監視される加熱された標的表面を備える。エアロゾル発生装置に関して上述した通り、発熱体、それ故に加熱された標的表面は、装置または物品の一部であってもよい。
【0067】
本発明によるエアロゾル発生システムのさらなる特徴および利点については、エアロゾル発生装置および物品に関して説明してきたため、繰り返さない。
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生装置の概略図である。
【
図2】
図2は、エアロゾル発生物品と組み合わせた、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生装置の概略図を示す。
【
図3】
図3は、
図2によるエアロゾル発生装置で使用されるエアロゾル発生物品の詳細図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第一の実施形態による高温計の概略図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第二の実施形態による高温計の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は、本発明によるエアロゾル発生装置1の第一の実施形態を概略的に図示する。装置1は、固体エアロゾル形成基体を誘導的に加熱することによって吸入可能なエアロゾルを発生するために構成されている。このために、基体は、装置1の細長いハウジング2の近位端3で形成された受容くぼみ4の中に交換可能なように配設されうる。基体は、受容くぼみ4の中に少なくとも部分的に受容されるように構成されているエアロゾル発生物品(図示せず)の一部としうる。本実施形態において、装置1は、基体を加熱するための誘導ヒーター30を備える。誘導ヒーター30は、受容くぼみ4内に交流電磁場を発生するために受容くぼみ4を囲むらせん誘導コイル31を備える。ヒーター30は感受性発熱体32をさらに備える。本実施形態において、発熱体32は、受容くぼみ4内に配設されている、かつエアロゾル発生物品を受容くぼみ4の中に挿入する際にエアロゾル形成基体を貫通するように構成されているステンレス鋼製の先細りしたサセプタブレード32である。誘導コイル31を通して交流駆動電流を通過させる時、交流電磁場はサセプタブレード32中にその電気的および磁気的材料特性に応じて、ヒステリシス損失および/または渦電流を誘発する。結果として、発熱体32が加熱し、それがサセプタブレード32と熱接触している時にエアロゾル形成基体を加熱する。交換および洗浄の目的で、サセプタブレード32は、受容くぼみ4の遠位端に取り外し可能なように配設されてもよい。別の方法として、サセプタブレードは、装置1の受容くぼみ4の中に挿入されるエアロゾル発生物品の一部であってもよい。
【0070】
もちろん、
図1による装置はまた、抵抗加熱用に構成されうる。例えば、サセプタブレードの代わりに、装置1は抵抗ヒーターブレードまたは抵抗加熱ヒーターブレードを備えてもよい。
【0071】
装置1は、とりわけ交流駆動電流を発生するように構成されている(電池10で動く)電気回路20をさらに備える。電気回路20は、加熱プロセスを制御するためのコントローラ(図示せず)を備える。
【0072】
加熱温度を制御するには、発熱体32の温度監視が必要となる。このために、
図1による装置1は、発熱体32上の標的表面33の絶対温度を測定するための二重波長高温計100を備える。本実施形態において、標的表面33は、高温計100の直接の見通し内にあるサセプタブレード32の後面の一部分である。
【0073】
図1からさらに分かる通り、高温計100は、装置の電気回路20と動作可能なように接続されている。本実施形態において、電気回路20はまた、標的表面33の絶対温度を決定するために、高温計100の出力信号を評価するように構成されている。電気回路は、電流電圧変換のためのトランスインピーダンスアンプ、反転信号アンプ、シングルエンドから差動信号への変換器、アナログデジタルコンバータ、およびマイクロコントローラのうちの少なくとも一つを備えうる。
【0074】
二重波長高温計100のさらなる詳細は、
図4および5に示す実施形態に関して以下に記述されている。
【0075】
図2は、本発明によるエアロゾル発生装置1の第二の実施形態を概略的に図示する。
図1による装置と同様に、
図2による装置は誘導加熱用に構成されている。従って、類似または同一の特徴は同一の参照番号で示されている。
図1に示す実施形態とは対照的に、感受性発熱体232は、装置1の一部ではなく、加熱される液体エアロゾル形成基体210を含むエアロゾル発生物品200の一部である。本実施形態において、感受性発熱体232は、カートリッジ様の物品200の遠位端に配設されているステンレス鋼製のメッシュサセプタ232である。装置ハウジング2内に形成された受容くぼみ4の中に物品200が定置されている時、メッシュサセプタ232は、メッシュの感受性材料を加熱させる装置(図示せず)の誘導源によって発生された交流電磁場を経験しうる。メッシュサセプタ232は、液体エアロゾル形成基体がメッシュサセプタ232の隙間にメニスカスを形成するように構成されている。メッシュサセプタ232が加熱されている時、液体エアロゾル形成基体は、メッシュサセプタ23から受容くぼみ4の中に連続的に気化される。そこで、気化された基体によってエアロゾルが形成され、装置1の近位端3でマウスピース5の方へとくぼみ4を通って延びる気流通路の中に引き出される。
【0076】
もちろん、
図2による装置は別の方法として、例えば装置1または物品200のいずれかの一部でありうる抵抗加熱メッシュまたは抵抗メッシュを使用することによって、抵抗加熱用に構成されうる。
【0077】
メッシュサセプタ232の絶対温度を測定するために、
図2による装置1はまた、二重波長高温計100を備える。高温計は、エアロゾル発生物品200が装置ハウジング2の中に定置されている時、メッシュサセプタ232に直接面するように、受容くぼみ4の遠位端に配設されている。
図3で分かる通り、高温計は、高温計100の直接の見通し内にあるメッシュサセプタ232の前面の一部分233のみを監視する。標的表面233は、約1ミリメートル×1ミリメートルである。
【0078】
図1および2による両方の実施形態において、高温計は、電気回路20および電池10が配設されている装置ハウジング2内の後部くぼみから受容くぼみ4を完全に分離するために使用されるプラスチック部品でオーバーモールドされている。この配設では、高温計100は、温度が測定される標的表面33、233と反対側の固定された見通し内に保持されうる。
図2による実施形態に関して、この解決策はまた、高価な高温計100を耐久性のある装置1とともにホストすることを可能にし、一方で衛生状態の改善のために安価なメッシュサセプタ232を物品と一緒にしたままにできる。
図2に関してさらに重要なことに、高温計100は非接触温度測定を可能にし、それ故に発熱体への熱接触の必要性を回避する。発熱体が物品の一部であり、それ故に装置から取り外し可能であるので、熱接触の必要性は技術的に非実用的であろう。
【0079】
図4は、それぞれの標的表面33、233の温度を決定するために、
図1および
図2によるエアロゾル形成装置1で使用しうる二重波長高温計100の第一の実施形態を概略的に示す。本実施形態において、二重波長高温計100は、横並びに配設された第一および第二のInGaAsフォトダイオード121、122を含む光検出器120を備える。InGaAsフォトダイオードは、Geなどの他の材料と比較して、同じセンサー領域に対してより速い応答時間、より高い量子効率およびより低い暗電流を有するので好ましい。
【0080】
二重波長高温測定では、標的表面によって放射された熱放射を二つの波長または波長帯で測定する必要がある。本実施形態において、これは、第一のセンサー121のみの前に配設されたロングパスフィルター131を使用することによって達成される。ロングパスフィルター131は、1.6マイクロメートルのカットオフ波長を有する。InGaAsは、0.9マイクロメートル~1.7マイクロメートルの波長に対して感受性がある。それ故に、ロングパスフィルター131のカットオフ波長およびInGaAsセンサー121のスペクトル感度範囲の長波長端は、第一のセンサー121によって感知された熱放射の有効なバンドパスフィルターリングを1.6マイクロメートル~1.7マイクロメートルの範囲に提供する。対照的に、第二のセンサー122は前にフィルターを有さず、それ故に0.9マイクロメートル~1.7マイクロメートルの範囲のInGaAsの感度によるフルスペクトル帯を監視する。よって、ロングパスフィルター131のカットオフ波長のため、第一および第二のセンサー121、122の出力信号の間の差異が達成され、これは合理的に測定可能であり、それ故に上述の通りの加熱された標的表面33、233の温度を決定するのによく適している。
【0081】
さらに上述の通り、少なくとも第二のセンサー122は、全波長スペクトルにわたって手動で較正される必要がある。これは、例えば黒体放射体を使用することによって、黒体の異なる既知の温度で行われることができる。第一のセンサー121もまた同様に較正されてもよい。原則として、初期較正が行われると、標的表面33、233の放射率は既知である必要はもうない(標的表面33、233が灰色体である場合)。標的表面が非灰色体である場合、放射率の変化を考慮して第二の較正を行うべきである。この較正は、特定のタイプの一つの装置に対してのみ行う必要がある。
【0082】
有利なことに、二重波長高温計100は、標的表面と高温計の検出器との間の放射率の変動だけでなく、部分的に充填された視野および光学的障害を補うことを可能にするので、本質的に正確である。
【0083】
加熱された標的表面33、233から放射された熱放射を収集するために、および熱放射を検出器120に向けて方向付けるために、二重波長高温計100は光学システム110を備える。本実施形態において、光学システム100は、収束レンズ114および半凸状レンズ111の二つのレンズを備える。光学システム100は、少なくとも1ミリメートルの直径を有する標的表面33、233上の視野を提供する。
【0084】
エアロゾル発生装置1の使用において、エアロゾル粒子および液滴300は、受容くぼみ4内のエアロゾルに曝されている光学システム120の前面上に蓄積しうる。結果として、第一および第二のセンサー121、122に達する各波長での光子の数は変化する可能性があり、これは次に測定精度を低下させる可能性がある。この問題を克服するために、レンズ111は、散乱後部レンズ表面112を有する散乱レンズとして構成されている。散乱表面112は、滑らかなレンズ表面からのランダムな不規則性を有する滑らかでないレンズ表面である。散乱表面112のため、散乱レンズ111は、標的表面33、233によって放射された熱放射をすべての方向に散乱する。結果として、第一および第二のセンサー121、122は、光学システムの表面の一部が粒子または液滴の堆積物300によって遮断されていても、すべての波長で実質的に等しい数の光子を受容する。
【0085】
図5は、光学システム120の代替的な実施形態を概略的に図示する。同じ目的で、光学システム120は、相互に面する段付き表面116、118を有する二つのフレネルレンズ115、117を含むフレネルレンズシステムを備える。フレネルレンズは、その薄く軽いレンズ設計のため有利である。フレネルレンズ115、117の両方は、球面フレネルレンズである。
【0086】
図4および
図5による両方の実施形態において、光学システム120は、標的表面33、233からセンサー121および122への放射伝達のために最適化された非撮像光学システムである。
【0087】
光放射伝達をさらに最適化するために、レンズ111、114、115、117の光学材料は、赤外線スペクトルの波長に対して透過性である。両方の実施形態において、COCなどの射出成形プラスチックが、大量生産を可能にするレンズ材料として使用されている。
【0088】
図4および
図5からさらに分かる通り、高温計100は、センサー121、122および光学システム120を封入するためのケーシング101を備える。ケーシングはまた、高温計100の電気回路150を封入しうる。ケーシング101は非透明であり、それ故に周辺光からの光の遮蔽を提供し、これは有利なことに高温計100の感度を増大させ、それ故に精度を増大させる。さらに、ケーシング101は有利なことに、エアロゾルの堆積物から高温計100の要素を保護する。
図4および
図5による両方の実施形態において、前方レンズ11、115は、ケーシング101の入口開口部を密封する。
【0089】
前方レンズ111、115上の粉塵およびエアロゾルの堆積物を妨げるまたは防止するために、これらのレンズの前面は疎水性被覆113を備える。疎水性被覆113はまた、前方レンズ111、115の簡単な洗浄を容易にする。