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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】透析機械及び透析機械を作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61M1/16 161
A61M1/16 163
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020552741
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019057609
(87)【国際公開番号】W WO2019185638
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】102018107627.4
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】イルガング トビアス
(72)【発明者】
【氏名】シュテブライン ティルマン
(72)【発明者】
【氏名】ガゲル アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】クロッフェル ペーター
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-197956(JP,A)
【文献】特開平05-337167(JP,A)
【文献】特表平06-504708(JP,A)
【文献】特表平08-504116(JP,A)
【文献】特開2002-035113(JP,A)
【文献】特表2010-534541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な透析液又は新鮮な透析液の成分が透析機械の作動中に位置付けられる混合領域が設けられ、濃縮物ラインが該混合領域と流体連通し、前記濃縮物ラインを通して濃縮物を濃縮物容器から該混合領域の中に誘導することができる、透析器を備えるように構成された透析液システムを含む体外血液システムを備えるように構成された透析機械であって、
少なくとも2つの導電要素が、1又は複数の前記濃縮物ライン内で又は前記濃縮物ラインに互いから離間して配置され、
前記導電要素に電気的に接続され、前記導電要素の間の導電度又は前記導電要素の間の前記導電度と相関する値を測定するように構成された測定デバイスが設けられ、
前記測定値を望ましい値と、第1の限界値と、又は望ましい値範囲と比較するように構成された制御ユニットが設けられ、
前記制御ユニットは、前記測定値が前記望ましい値に一致せず、又は前記第1の限界値を超えるか又は前記第1の限界値よりも下になり、又は望ましい範囲にない時に、前記透析機械の特別作動モードを開始するように構成され、前記特別作動モードは、通常作動時の空気分離とは異なる特別空気分離、及び前記透析液システム又は前記透析液システムの一部の洗浄を含み、前記制御ユニットは、前記濃縮物ラインと流体連通している前記透析液システムの平衡チャンバの平衡チャンバ半体が前記平衡チャンバの高圧相にある時の前記透析機械の前記特別空気分離の作動状態で前記制御ユニットが、バルブを一回又は複数回開閉するように構成される、透析機械において、
前記制御ユニットは、前記透析液システム又は前記透析液システムの一部の洗浄を前記特別空気分離の後でのみ行うように構成される、
ことを特徴とする透析機械。
【請求項2】
前記混合領域は、混合チャンバである、請求項1に記載の透析機械。
【請求項3】
正確に1つの導電要素が、前記濃縮物ライン内に又は前記濃縮物ラインにそれぞれ配置され、及び/又は
1又は複数の前記濃縮物ラインが設けられ、複数の導電要素が前記濃縮物ライン内に又は前記濃縮物ラインに配置される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透析機械。
【請求項4】
前記導電要素は、ホース接続部によって形成され、及び/又は
前記導電要素は、金属から構成され、及び/又は
前記透析機械は複数の前記濃縮物ラインを備え、前記導電要素は、同じ前記濃縮物ライン内に又は前記濃縮物ラインに、又は異なる前記濃縮物ライン内に又は前記濃縮物ラインに配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項5】
前記導電要素は、ステンレス鋼及び/又はチタンから構成される、請求項4に記載の透析装置。
【請求項6】
濃縮物ポンプが、前記濃縮物ラインに位置付けられ、
前記導電要素は、前記濃縮物の流れの方向に前記濃縮物ポンプの上流又は下流に位置付けられる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記測定値が前記望ましい値に一致せず、前記第1の限界値を超えるか又は前記第1の限界値よりも下になり、又は望ましい値範囲にない時に、アラームを開始するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項8】
前記制御ユニットは、第2の限界値よりもより頻繁に、前記測定値が前記望ましい値に一致せず、前記第1の限界値を超えるか又は前記第1の限界値よりも下になり、又は望ましい値範囲にない時にのみ、前記透析機械の前記特別作動モードが開始されるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記特別作動モードが、前記透析液の流量の増加、及び/又は該透析液システムに配置された透析器のバイパス回路を含むように構成されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項10】
空気分離手段が、前記濃縮物ラインに位置付けられず、及び/又は空気分離手段が、前記混合領域の中への前記濃縮物ラインの開口部と前記透析液システムの平衡チャンバとの間に位置付けられないことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項11】
前記空気分離手段は、空気分離チャンバである、請求項10に記載の透析装置。
【請求項12】
前記バルブは、前記混合領域と流体連通している、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項13】
前記混合領域は、真水コネクタに接続される又は接続可能であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の透析機械。
【請求項14】
前記真水コネクタは、RO水コネクタである、請求項13に記載の透析機械。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の透析機械を作動させる方法であって、
前記測定デバイスが、前記導電度又は前記導電度と相関する値を、1又は複数の前記濃縮物ライン内の又は前記濃縮物ラインでの2つの導電性かつ相互に離間した要素で測定し、
前記制御ユニットが、前記測定値を、望ましい値、前記第1の限界値、又は望ましい値範囲と比較し、
前記制御ユニットは、前記測定値が前記望ましい値に一致せず、又は前記第1の限界値を超えるか又は前記第1の限界値よりも下になり、又は望ましい範囲にない時に、前記透析機械の特別作動モードを開始し、前記特別作動モードは、通常作動時の空気分離とは異なる特別空気分離、及び前記透析液システム又は前記透析液システムの一部の洗浄を含み、前記透析機械の前記特別空気分離の作動状態において、前記濃縮物ラインと流体連通している前記透析液システムの平衡チャンバの平衡チャンバ半体が前記平衡チャンバの高圧相にある時に、前記制御ユニットが、バルブを一回又は複数回開閉し、
前記透析液システム又は前記透析液システムの一部の洗浄が前記特別空気分離の後でのみ行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記特別作動モードは、前記制御ユニットが前記透析液の流量を増加させる、及び/又は該透析液システムに配置された透析器のバイパス回路を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記特別空気分離の作動状態が、前記測定値が望ましい値に対応し、又は望ましい値範囲にあり、又は前記第1の限界値を超えないか又は前記第1の限界値よりも下にならない時には、前記制御ユニットによって選択されず、
この場合に、バルブが前記透析液システムの平衡チャンバの不感時間に開かれる通常空気分離が、前記制御ユニットによって代わりに実施される、
ことを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記通常空気分離で、前記透析液システムの平衡チャンバの不感時間にのみ、前記制御ユニットが前記バルブを開く、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析器を備えるように構成された透析液システムを含む体外血液システムを備えるように構成された透析機械に関連し、混合領域、特に、新鮮な透析液又はその成分が透析機械の作動において位置付けられ、濃縮物ラインが混合領域と流体連通し、それを通して濃縮物ライン濃縮物を濃縮物容器から混合領域の中に誘導することができる混合チャンバが設けられる。
【0002】
本発明は、更に、そのような透析機械を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最初に命名された種類の透析機械は、従来技術から公知である。それらは、腎活動がない又は低下した患者の血液から尿素及び他の物質を除去する透析治療の行程内で使用される。透析機械の透析器は、半透膜によって互いに分離された血液チャンバと透析液チャンバとを有するフィルタユニットである。血液から除去される物質は、透析器内で半透膜を通過して血液チャンバから透析液チャンバに入る。
【0004】
いわゆる平衡チャンバは、透析器に供給されてそこから排出される透析液の量を平衡化する目的に典型的に使用される。この平衡チャンバは、入口及び出口を各々が有してそれぞれのバルブを通じて開閉することができる可動壁によって互いに分離された2つの平衡チャンバ半体を有する。平衡チャンバ半体の一方が、新鮮な透析液によって充填されながら、壁は、充填している平衡チャンバ半体から離れて移動し、このようにして他方の平衡チャンバ半体に位置付けられた消費された透析液を置換する。両方の平衡チャンバ半体は、固定壁を有する同じ平衡チャンバに位置付けられるので、新鮮な透析液の給送容積は、消費透析液の排出容積に対応する。
【0005】
本発明による透析機械は、そのような平衡チャンバシステムを有することができるが、必ずしもそうする必要はなく、それは、すなわち、好ましい特徴であるがそれにも関わらず任意的な特徴であることをこの時点で予め指摘しておく。この少なくとも1つの平衡チャンバは、すなわち、透析機械の任意的な構成要素である。1又は2以上の平衡チャンバの使用に代えて、例えば、本発明によって例えば同じく網羅される平衡化のためのポンプを有する流量センサの使用も可能である。
【0006】
例えば容器に又は供給ラインに提供されるすぐに使える透析液を透析機械に供給する可能性が一般的に存在する。
【0007】
典型的に複数の濃縮物が混合領域内でRO水と混合される透析機械自体でのすぐに使える透析液の調製が従来技術から等しく公知である。これらの濃縮物は、濃縮物ポンプを用いて濃縮物容器から好ましくは混合チャンバとして設計される混合領域に搬送される。この点に関して、典型的に2つの濃縮物容器が使用され、そのうちの一方は塩基濃縮物及び他方は酸濃縮物を含有する。このようにして得られる混合物は、すぐに使える透析液を表し、次に平衡チャンバに搬送され、そこから透析器に誘導される。
【0008】
請求項1の前文の特徴を有する公知の透析機械は、図1に概略的に示されている。
【0009】
患者Pは、半透膜Mによって互いに分離された血液側区画14及び透析物区画12を有する透析器10に体外血液回路Kを通じて接続される。患者の血液は、好ましくは、流れ方向を再現する矢印によって示すように透析器10を通して透析液に対する対向流で誘導される。
【0010】
透析機械の水圧システム、すなわち、透析液システムは、参照番号100によって全体的に指定されている。
【0011】
透析液は、ライン30を通って流入する流体、好ましくは、RO水(RO=逆浸透)から、及びライン40、50を通って混合チャンバ20に流入する2つの濃縮物から混合チャンバ20内で調製される。濃縮物の搬送は、濃縮物を濃縮物容器42、52から搬送するポンプ41、51を用いて行われる。
【0012】
混合チャンバ20に配置されたラインL5は、透析液の放出の役目をし、そしてバルブVによって閉鎖可能である。
【0013】
平衡チャンバ60は、透析液に対して透過性ではない可動壁Wによって分離された上記で指定された平衡チャンバ半体61及び62を有する。
【0014】
連続流れを保証するために、図1から見ることができるように、平行に接続された2つの平衡チャンバ60が設けられる。それらは、同一構造を有することができる。平衡チャンバは、それらの内壁が、壁Wがそれらの極限位置でそれらの場所に完全に位置することができるように好ましくは成形されるという点で、簡素化されて示されている。
【0015】
平衡チャンバ60の各平衡チャンバ半体61、62は、平衡チャンバ半体に出入りする流入及び流出を制御するために入口側及び出口側にバルブを有する。
【0016】
左側に示す平衡チャンバ60の2つの平衡チャンバ半体61は、ラインL1からの新鮮な透析液の受け入れ器の役目をする。透析液は、ラインL2を通じて平衡チャンバ半体61から透析器10の透析物側区画12の中に移動する。右側に示す平衡チャンバ60の2つの平衡チャンバ半体62は、ラインL3を通じて透析器10から平衡チャンバ半体62に移動して平衡チャンバの後でラインL4を通じて排液管(D)に至る消費透析液の受け入れ器の役目をする。
【0017】
濃縮物容器42、52の一方又は両方が空になる場合に、空気が平衡チャンバの中に又は別の平衡システムの中に移動する場合が発生する可能性があり、これは、影響を受けた平衡チャンバの平衡チャンバ半体又は溶液の平衡搬送のためのポンプが次に新鮮な透析液で完全には充填されず、むしろ一部は空気で充填され、すなわち、仮定するよりも少ない新鮮な透析液が透析器に搬送されるので平衡エラーをもたらす。これらの場合に、空気は、濃縮物ラインを通じて混合チャンバの中にそしてそこから平衡チャンバの中に又は別の平衡システムの中に搬送される又は同伴される。
【0018】
空気のこの同伴は、例えば、平衡チャンバの不感時間での放出バルブVの開放によって行われる。平衡チャンバの不感時間は、壁Wが極限位置に位置付けられ(右又は左への完全な偏向)、かつ平衡チャンバの全てのバルブが閉じられる期間として理解されるものとする。この状態は、例えば、100ms持続することができる。
【0019】
図2は、平衡チャンバサイクル中の経時的な圧力進展を示しており、時間t1は、指定された不感時間を示している。図2に矢印Vによって示すように、バルブVは、この時間t1で短く開かれる。バルブVは、それに続いて閉じられ、平衡チャンバの流入バルブが、充填している平衡チャンバ半体61内の圧力が増加するように開かれる。この充填相は、図2にT2によって示されている。それに続く状態T3では、平衡チャンバ半体は完全に充填され、これは、平衡チャンバの高圧相とも呼ばれる。
【0020】
参照記号BZは、全てのこれらの相又は時間を網羅する全平衡チャンバ半体サイクルを指定する。
【0021】
空気は、開放バルブV1を有するライン40、50内で上向きに上昇し、そして次に平衡チャンバ61がそれを用いて充填される充填流れによって平衡チャンバ又は平衡チャンバ半体61の中に同伴される。これは、不正確な均衡を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、透析液の中への又は透析機械の平衡システムの中への空気侵入の可能性が公知の透析機械に対して低下されるという程度まで請求項1の前文による透析機械を更に発展させることが本発明の基本的目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、請求項1の特徴を有する透析機械によって達成される。
【0024】
少なくとも2つの導電要素が1又は複数のライン内で互いから離間して配置され、導電要素に電気的に接続されてそれらの間の導電度又はそれと相関する値を測定するように構成された測定デバイスが設けられ、そして測定値を望ましい値と又は限界値と又は望ましい値範囲と比較するように構成された制御ユニットが設けられるという規定が相応に作られる。
【0025】
少なくとも2つの導電要素は、ここでは同じ濃縮物ライン内に又はラインに及び/又は異なる濃縮物ライン内に又はラインに配置することができる。
【0026】
正確に1つの導電要素が濃縮物ライン内に又はラインにそれぞれ配置されること、及び/又は複数の導電要素が内部に又はそこに配置される1又は2以上の濃縮物ラインが設けられることが想定可能である。1つ(又は2以上)の濃縮物ラインに少なくとも2つの導電要素が各々設けられる実施形態が従って想定可能である。これに代えて又はこれに加えて、合計2つ又はn(n>2)の導電性要素を有する2つ又はn(n>2)の濃縮物ラインが存在し、すなわち、1つの導電要素が濃縮物ライン毎に設けられるという規定を作ることができる。
【0027】
測定は、2つの導電要素の間でそれらが1つのそして同じ濃縮物ライン内であるか又は異なる濃縮物ライン内であるかに関わらず独立に行われる。
【0028】
導電要素は、電極として設計することができる。
【0029】
それぞれ1つの又は少なくとも1つの導電要素が2つの濃縮物ライン内に配置される配置、及び2つの濃縮物ラインが、混合チャンバ又は別の混合領域と共に、濃縮物ラインの導電要素から他方の濃縮物ラインの導電要素までそれを通じて信号(例えば、導電度又はそれと相関する値)を測定することができる導電経路を形成する配置が想定可能である。一方の濃縮物ラインは、例えば、酸濃縮物のためのラインとすることができ、他方の濃縮物ラインは、塩基濃縮物のためのラインとすることができる。この信号は、一方又は両方の濃縮物容器が空である時、又は空気又は空気-濃縮物混合物が濃縮物ラインを通って搬送される時に中断される。
【0030】
濃縮物ラインは、好ましくは、チューブとして構成される。
【0031】
導電度、すなわち、オーム抵抗の逆数、又は電圧、電流、オーム抵抗などのようなそれと相関する値が、従って測定され、測定は、2つの導電要素の間で行われる。
【0032】
濃縮物が濃縮物ライン内、すなわち、インフィード内にある場合に、電気回路は閉じられ、高い導電度が得られる。空気が濃縮物ラインを通過する場合に、導電度は低下する。導電度が限界値よりも低く落ちる場合、すなわち、それが望ましい値範囲から出る場合に、空気の存在を認識することができ、例えばアラームをトリガすることができる。
【0033】
導電要素は、例えば、濃縮物ラインの長手方向に互いから離間して配置されたホース接続部によって形成することができる。
【0034】
導電要素は、それらが濃縮物ラインの内容物と、すなわち、濃縮物、空気などと接触するように1又は複数のラインに又はライン内に配置される。
【0035】
導電要素は、好ましくは、金属から、好ましくは、ステンレス鋼及び/又はチタンから構成される。
【0036】
濃縮物ポンプは、好ましくは、濃縮物ライン内に又はラインに位置付けられ、導電要素は、好ましくは、濃縮物ポンプの下流に存在するような空気の認識の低下を回避するために濃縮物の流れの方向に濃縮物ポンプの上流に位置付けられる。導電要素が濃縮物の流れの方向に濃縮物ポンプの下流に位置付けられる場合も、一般的に本発明によって網羅される。
【0037】
制御ユニットは、好ましくは、測定値(導電度又はそれと相関する値)が望ましい値に一致せず、限界値を超える又はそれよりも下になり、又は望ましい値範囲にない時に透析機械のアラーム及び/又は特別作動モードを開始するように構成される。これは、特に、上述のように、空気又は空気-濃縮物混合物及び純粋な濃縮物ではないものが導電要素間の濃縮物ラインの領域に位置付けられた時の場合である。
【0038】
制御ユニット又はその認識論理部は、好ましくは、互いからの2つの導電要素の特定の距離に適応される。導電要素間の距離が変化する場合に、制御ユニットの認識論理部を相応に適応させることも必要である場合がある。
【0039】
本発明の更に別の実施形態では、制御ユニットは、透析機械のアラーム及び/又は特別作動モードが、各場合に閾値よりもより頻繁に測定値が望ましい値に一致せず、又は限界値を超える又はそれよりも下になり、又は望ましい値範囲にない時にのみ開始されるように構成される。
【0040】
透析機械が平衡チャンバシステムを有する場合に、カウンタが平衡チャンバサイクルで濃縮物ライン内に空気が認識される時に値1だけ増分され、平衡チャンバサイクルで濃縮物ライン内に空気が認識されない時に1だけ減分されることが想定可能である。値5(又は異なる値)が、例えば、このようにして超えられる又は到達する場合に、アラームがトリガされる及び/又は透析機械の特別作動モードが開始される。この手順は、小さい気泡又は不測のセンサ変動がアラームをトリガする及び/又は毎回透析機械の特別作動モードを開始することを防止する。
【0041】
このシステムは、平衡チャンバシステムの存在に制限されず、むしろ平衡チャンバシステムのないシステムも含む。
【0042】
特別作動モードは、通常作動とは異なる特別空気分離、及び/又は透析液システム又はその一部の洗浄、及び/又は透析液の流量の増加、及び/又は透析器のバイパス回路及び任意的に更に別の手段を含むことができる。
【0043】
本発明は、血液チューブセットのような体外血液システムを受け入れるように備えられ、そして透析器を受け入れるように備えられた透析機械に関する。体外血液システム及び/又は透析器は、従って、機械の必須の構成要素ではない。本発明は、それにも関わらず、体外血液システム及び/又は透析器が透析機械の中に挿入される透析機械も含む。
【0044】
透析器のバイパス回路は、透析液が透析器を通って流れず、むしろバイパスライン内で透析器を越して誘導されるように理解されるものとする。
【0045】
透析液システム又はその一部の洗浄は、好ましくは、特別空気分離の後にのみ行われる。洗浄は、患者が再度接続されて治療が続けられる時に正しい組成を有するすぐに使える透析液が透析液回路に存在することを保証する。
【0046】
空気分離手段、特に空気分離チャンバが濃縮物ライン内に及び/又は混合領域の中への濃縮物ラインの開口部と透析液システムの平衡チャンバ又は別の平衡システムとの間に位置付けられないという規定が好ましくは作られる。
【0047】
コスト低減をそれによって達成することができる。濃縮物が通常ポンプ活動によって吸い込まれるまで待つ必要があるように(新しい濃縮物容器の接続後に)、制御ユニットが濃縮物ポンプを更に作動するという規定が好ましくは作られる。それまでに吸い込まれた空気を除去するためにそして透析液システムから不正確に混合された透析液を除去するために、特別空気分離及び透析液システムの、すなわち、水圧系の又はその一部の洗浄が好ましくは行われる。
【0048】
制御ユニットは、好ましくは、それが、指定されたラインと流体連通する平衡チャンバの平衡チャンバ半体がその高圧相にある時に、透析機械の特別空気分離の作動状態でバルブを一回又は数回開閉するように構成される。平衡チャンバの全てのバルブは、そうする際に閉じられる。空気は、この特別空気分離によって混合領域から、1又は複数の濃縮物ラインから、及び平衡チャンバに至るラインから除去される。
【0049】
混合領域、特に混合チャンバは、真水コネクタに、特にRO水コネクタに接続することができる又は接続可能とすることができる。
【0050】
本発明は、更に、先行請求項のうちの1項による透析機械を作動させる方法に関連し、導電度又はそれと相関する値は、1又は複数の濃縮物ライン内で又はラインで2つの導電性かつ相互に離間した要素で測定され、測定値は、望ましい値、限界値、又は望ましい値範囲と比較される。透析機械に関する上述の記載は、導電要素の配置に相応に適用される。
【0051】
制御ユニットは、望ましい値、限界値、又は望ましい値範囲との測定値の比較、アラームの開始、及び/又は特別作動モードなどのような異なるタスクを引き継ぐ単一構成要素によって形成することができる。しかし、制御ユニットは、これらのタスクの異なるものを引き継ぐ複数の別々の構成要素によって形成することもでき、すなわち、制御ユニットは、必ずしも単一構成要素から構成される必要はない。
【0052】
測定値が、望ましい値に一致せず、又は望ましい値範囲になく、又は限界値を超える又はそれよりも下になる場合に、透析機械のアラーム及び/又は特別作動モードが開始されるという規定が好ましくは作られる。
【0053】
上述のように、特別作動モードは、通常作動とは異なる特別空気分離、及び/又は透析液システム又はその一部の洗浄、及び/又は透析液の流量の増加、及び/又は透析器のバイパス回路を含むことができる。
【0054】
透析機械の特別空気分離の作動状態では、混合領域から及びそれに接続されたラインシステムから空気を除去するためにラインと流体連通する平衡チャンバの平衡チャンバ半体がその高圧相にある時に、バルブが一回又は複数回開閉されることが想定可能である。空気は、平衡チャンバの次の充填で同伴することができると考えられる残留空気がより少なく混合チャンバに残るように、好ましくは複数回、例えば3回行われるバルブの開閉によって機械的に放出される。
【0055】
測定値が望ましい値に対応する又は望ましい値範囲にある又は特定の限界値を超えない又はそれよりも低くない時に特別空気分離の作動状態が選択されず、そしてこの場合にバルブが好ましくは平衡チャンバの不感時間にのみ開かれる通常空気分離が代わりに行われるという規定を更に作ることができる。
【0056】
混合チャンバ又は別の混合領域は、好ましくは、1又は2以上の濃縮物ラインに接続され、それを通して濃縮物は、濃縮物容器から混合チャンバの中に移動する。これらの濃縮物は、例えば、1つの酸濃縮物及び1つの塩基濃縮物とすることができる。混合チャンバは、1又は複数の濃縮物を望ましいレベルまで希釈することができるように、典型的に真水コネクタ、特にRO水コネクタに接続される。濃縮物ライン内の導電要素及び制御ユニットが図1に示されていない本発明の透析機械に対する非制限的実施例を示す図1による実施形態を参照されたい。
【0057】
本発明は、好ましくは、空気分離装置を持たない透析機械に使用される。
【0058】
用語「a」又は「one」の使用も、必ずしもそうではないが問題の要素の正確に1つが与えられることを意味するが、むしろ複数の要素も含むことも意味することをこの時点で指摘しておく。複数の使用は、一般的に問題の要素のうちの1つも含むことを等しく指摘しておかなければならない。
【0059】
本発明の更に別の詳細及び利点は、図面に示す実施形態を参照してより詳細に以下に解説する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】透析機械の水圧回路及び血液回路の簡易概略図である。
図2】通常空気分離による経時的な圧力の推移を示す図である。
図3】特別空気分離による経時的な圧力の推移を示す図である。
図4】本発明による透析機械の2つの濃縮物ラインの簡易概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、従来技術から公知の透析機械の水圧回路及び同じく体外血液回路を示している。この構造は、上述の記載が本発明にも適用されるように、本発明による透析機械に同一に又は修正された形態で存在することもできる。
【0062】
図4は、一方が容器42に位置付けられた酸濃縮物と流体連通し、他方が容器52に位置付けられた塩基濃縮物と流体連通する2つの濃縮物ライン40、50を示している。フィルタFが、容器42、52の下流の濃縮物ラインに位置付けられる。導電要素S1及びS2とS3及びS4の形態の2つのそれぞれのセンサが、それぞれの容器42、52と濃縮物を混合チャンバの中にポンピングする濃縮物ポンプ41、51との間でライン40、50の各々に位置付けられる。
【0063】
図示していない制御ユニットは、一方でセンサS1及びS2の間、他方でセンサS3及びS4の間で導電度を測定する。
【0064】
そうする際に閾値よりも低い導電度が一回又は複数回測定された場合に、アラームがトリガされ、それぞれのライン40、50内の空気の存在に関して結論が引き出される。導電度などがセンサS1又はS2とS3又はS4との間で、すなわち、混合チャンバを超えて測定されることも本発明によって一般的に網羅される。
【0065】
通常作動の一部として、すなわち、空気が濃縮物ラインに見出されない場合に、通常空気分離が上述のようにそして図2に示すように行われる。この空気分離は、バルブVを開くことにより、そして実際に新鮮な透析液で充填された平衡チャンバの又は平衡チャンバ半体の不感時間t1で行われ、その後は平衡チャンバサイクルBZ中にはもはや行われない。
【0066】
しかし、例えば濃縮物容器42、52の欠如に起因する又はその空の状態に起因する可能性がある過剰な吸気が行われていることが導電要素によって又はそれに接続された制御ユニットによって認識される場合に、これは、直ちに1又は2以上の対策を開始する制御ユニットによって検出される。
【0067】
実施形態では、制御ユニットは、以下の段階を開始する:
【0068】
透析液の流量が、通常透析作動に対して、例えば、500ml/minの値まで最初に増加される。
【0069】
平衡チャンバ半体は、次に、2つの平衡チャンバの又は1つの平衡チャンバのそれぞれの平衡チャンバ半体の間で短絡が生じ、すなわち、ラインL2の中への溶液の搬送が行われないように、バルブの開放によって相互接続される。
【0070】
更に、ユーザによって知覚可能であり、及び例えば酸濃縮物又は塩基濃縮物が使い尽くされたことを示すアラームがトリガされる。
【0071】
次に、図2による通常空気分離モードから図3による特別空気分離モードへの切換が行われる。これは、新鮮な透析液で充填された平衡チャンバ半体の高圧相(T3)で図1によるバルブVが1回又は好ましくは複数回、例えば3回開かれることを特徴とする。平衡チャンバ半体の高圧相では、平衡チャンバ半体は、完全に液体で充填される。これは、バルブVの開放が平衡チャンバの中への空気豊富液体の流れをもたらさないという結果を有する。通常作動モードの中に又は通常空気分離モードの中に戻る切換時に平衡チャンバの中に空気が全く又はごく僅かしか入らないように、空気は、バルブの開閉によって混合チャンバ20からむしろ除去される。不正確な平衡の発生する可能性は、それによって回避される又は少なくとも低減することができる。
【0072】
図3は、同じ時間及び同じ期間に同じ参照記号が与えられ、バルブVが高圧相T3で3回開閉することが示され、これが参照記号V’によって指定され、対応する圧力変動によってそれ自体が目立つようにされた、図2による配置での経時的な圧力の推移を示している。バルブVの開閉は、好ましくは、不感時間t1では行われない。
【0073】
図2及び3に示す圧力値及び本発明の一部として指定された全ての他の値は、例示的性質のものであり、制限的なものではない。
【0074】
濃縮物が濃縮物ラインに再度存在することが見出された場合に、図3による特別空気分離から図2による通常空気分離への切換が再度行われる。
【0075】
充填された濃縮物容器が濃縮物ラインに再度接続されたという点で濃縮物供給が再度確立された場合、及び空気が特定期間にわたって又は例えば5平衡チャンバサイクルの終了後に濃縮物ラインにもはや検出されない場合に、洗浄処理が開始される。
【0076】
洗浄処理では、水圧系統、すなわち、透析液回路又はその一部が洗浄される。この領域は、透析液回路の空気セパレータ、フィルタ、平衡チャンバ、バルブ、及び上述の要素を接続する全てのラインを含むことができる。洗浄処理は、例えば、水圧回路又はその一部がすぐに使える透析液によって2回流されるように行われる。
【0077】
患者は、好ましくは、洗浄処理中に透析機械から分離される。
【0078】
洗浄処理が終了した場合に、アラームメッセージが検出され、透析物流れは、望ましい値まで再度低減され、患者は、治療を続けることができるように再度接続される。
【符号の説明】
【0079】
40、50 濃縮物ライン
41、51 濃縮物ポンプ
42、52 容器
F フィルタ
S1、S2、S3、S4 導電要素
図1
図2
図3
図4