(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】運転制御支援装置及び運転制御支援方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20240805BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G05B13/04
G05B23/02 H
(21)【出願番号】P 2021002818
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】三宮 豊
(72)【発明者】
【氏名】日高 政隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 信幸
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168618(JP,A)
【文献】特開平7-132293(JP,A)
【文献】特開2000-52010(JP,A)
【文献】特開昭63-101902(JP,A)
【文献】特開2009-282804(JP,A)
【文献】特開2020-154825(JP,A)
【文献】特開2019-193916(JP,A)
【文献】特開2002-318604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0170639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象プラントの機器から過去に収集した実績計測値と、前記機器から過去に収集した、前記機器を制御するための実績制御値とを基に、前記機器を制御するための制御値の予測値である予測制御値を算出するための第1のモデルを生成する第1のモデル生成部と、
生成された前記第1のモデルに、計測値を入力することで前記予測制御値を算出する予測制御値算出部と、
前記機器において、前記予測制御値の入力から、前記機器による制御結果である実績結果値が得られるまでの応答時間が存在する場合において、前記実績計測値の時刻情報を前記応答時間だけシフトすることで応答時間補正済み計測値を生成するとともに、前記実績制御値及び前記予測制御値の時刻情報を前記応答時間だけシフトすることで応答時間補正済み制御値を生成し、前記応答時間補正済み計測値及び前記応答時間補正済み制御値を出力する応答時間補正部と、
前記
応答時間補正済み計測値と、前記実績制御値
の時刻情報を前記応答時間だけシフトした前記応答時間補正済み制御値と、前
記実績結果値とを基に、結果値の予測値である予測結果値を算出するための第2のモデルを生成する第2のモデル生成部と、
生成された前記第2のモデルに、前記
応答時間補正済み計測値及び前記予測制御値
の時刻情報を前記応答時間だけシフトした前記応答時間補正済み制御値を入力することで前記予測結果値を算出する予測結果値算出部と、
算出された前記予測結果値を基に、前記予測制御値を補正することで補正済み予測制御値を算出し、前記補正済み予測制御値を前記機器へ出力する補正部と、
を有することを特徴とする運転制御支援装置。
【請求項2】
前記補正部は、
前記予測結果値と、予め設定されている前記
予測結果値の目標値との差分を算出し、
前記差分が所定の閾値以上である場合、前記差分を基に前記予測制御値の補正量を算出し、
前記予測制御値に前記補正量を加算することで、前記補正済み予測制御値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御支援装置。
【請求項3】
少なくとも、前記予測結果値と、前記補正量と、前記補正済み予測制御値を表示部に表示する表示処理部
を有することを特徴とする請求項2に記載の運転制御支援装置。
【請求項4】
前記補正部は、
予め設定されている目標値と、前記予測
結果値との差分を算出し、当該差分が所定の閾値より大きい場合、前記予測制御値の補正を推奨する旨を表示部に表示し、
前記差分が前記所定の閾値より小さい場合、前記予測制御値の補正が不要である旨を前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御支援装置。
【請求項5】
前記応答時間補正部は、
前記応答時間が所定の幅で変動し、前記所定の幅の内における、それぞれの前記応答時間毎に、前記実績計測値の時刻情報をシフトさせることで、それぞれの前記応答時間に応じた、複数の応答時間補正済み計測値を生成するとともに、
前記所定の幅の内における、それぞれの前記応答時間毎に、前記実績制御値及び前記予測制御値の時刻情報をシフトさせることで、それぞれの前記応答時間に応じた、複数の応答時間補正済み制御値を生成し、
前記複数の応答時間補正済み計測値及び前記複数の応答時間補正済み制御値を前記第2のモデル生成部及び前記予測結果値算出部のそれぞれへ出力する
ことを特徴とする請求項
1に記載の運転制御支援装置。
【請求項6】
前記応答時間補正部によって、N個の前記複数の応答時間補正済み計測値と、M個の前記複数の応答時間補正済み制御値とが出力された場合、N個の前記複数の応答時間補正済み計測値をK個(N>K)の前記複数の応答時間補正済み計測値に集約するとともに、M個の前記複数の応答時間補正済み制御値をL個(M>L)の前記複数の応答時間補正済み制御値に集約し、
集約されたK個の前記複数の応答時間補正済み計測値、及び、集約されたL個の前記複数の応答時間補正済み制御値を前記第2のモデル生成部及び前記予測結果値算出部へ出力するデータ集約部
を有することを特徴とする請求項
5に記載の運転制御支援装置。
【請求項7】
前記第1のモデルとして、回帰式、ニューラルネットワーク、決定木、及び、クラスタリングのうち、少なくとも1つが用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御支援装置。
【請求項8】
前記第2のモデルとして、回帰式、ニューラルネットワーク、決定木、クラスタリング、及び、物理式のうち、少なくとも1つが用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御支援装置。
【請求項9】
前記予測制御値は、薬剤の注入率、薬剤の注入量、風量、原料の投入量、弁の開度のうち、少なくとも1つが用いられ、
前記予測結果値は、処理水の水質、任意の成分の残留率、任意の成分の濃度、任意の生成物の生成量、反応効率のうち、少なくとも1つが用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御支援装置。
【請求項10】
前記補正部は、
予め設定されている目標値と、前記予測
結果値との差分に基づいて、前記予測制御値の補正量を算出し、
前記予測制御値と、前記補正量とを加算することで前記補正済み予測制御値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御支援装置。
【請求項11】
制御対象プラントの機器の制御を支援する運転制御支援装置が、
前記機器から過去に収集した実績計測値と、前記機器から過去に収集した、前記機器を制御するための実績制御値とを基に、前記機器を制御するための制御値の予測値である予測制御値を算出するための第1のモデルを生成する第1のモデル生成ステップと、
生成された前記第1のモデルに、計測値を入力することで前記予測制御値を算出する予測制御値算出ステップと、
前記機器において、前記予測制御値の入力から、前記機器による制御結果である実績結果値が得られるまでの応答時間が存在する場合において、前記実績計測値の時刻情報を前記応答時間だけシフトすることで応答時間補正済み計測値を生成するとともに、前記実績制御値及び前記予測制御値の時刻情報を前記応答時間だけシフトすることで応答時間補正済み制御値を生成し、前記応答時間補正済み計測値及び前記応答時間補正済み制御値を出力する応答時間補正ステップと、
前記
応答時間補正済み計測値と、前記実績制御値
の時刻情報を前記応答時間だけシフトした前記応答時間補正済み制御値と、前
記実績結果値とを基に、結果値の予測値である予測結果値を算出するための第2のモデルを生成する第2のモデル生成ステップと、
生成された前記第2のモデルに、前記
応答時間補正済み計測値及び前記予測制御値
の時刻情報を前記応答時間だけシフトした前記応答時間補正済み制御値を入力することで前記予測結果値を算出する予測結果値算出ステップと、
算出された前記予測結果値を基に、前記予測制御値を補正することで補正済み予測制御値を算出し、前記補正済み予測制御値を前記機器へ出力する補正ステップと、
を実行することを特徴とする運転制御支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントなどの制御対象機器の制御を支援する運転制御支援装置及び運転制御支援方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
計測値に基づいて制御値を設定する運転管理を行う際、予測制御値を導くことが行われる。予測制御値を導く手法として、一般的に、物理現象を模擬したシミュレーションモデルを利用する手法や、実績データを基に統計や機械学習を活用して予測制御値を導く手法等が用いられる。
【0003】
一方、プラントにおける反応や移動等の現象は複雑であり、一般にシミュレーションモデルによる模擬が困難である。そのため、近年は、実績データを基に統計や機械学習を活用した予測制御値の導出が広く行われている。この手法では、実績データの計測値及び制御値の関係を統計や機械学習で再現したモデルが作成される。なお、制御値とはプラントの機器を制御するための値である。そして、新しく得られた計測値をモデルに入力することで適切な予測制御値が出力される。
【0004】
実績データを基に統計や機械学習を活用して予測制御値が導出される場合、導出される予測制御値は使用する実績データの質に影響を受ける。例えば、実績データを取得した時と異なる条件でプラントを運転している際の計測値がモデルに入力される場合がある。このような場合、実績データを基に作成したモデルから算出される予測制御値は現在の運転条件では不適切な値となることがある。また、実績データを取得した時の運転結果が最適でない場合、このような最適ではないデータが含まれている実績データを基に作成したモデルによる予測制御値が不適切な値となることがある。これらの場合、予測制御値を用いてプラントを制御した際に、望ましくない結果に至る可能性がある。
【0005】
運転結果が予測制御値に反映される場合、フィードバック制御が用いられるが、時定数の大きい系を扱うプラントでは応答遅れが大きくなる懸念がある。そのため、予測制御値を算出後、早期に運転結果が予測できることが好ましい。
【0006】
特許文献1では、予測モデルによる予測値をそのまま用いてプラントの監視や制御を行うと、予測値が誤差の分だけ安全ではない側へずれることがあり、望ましくない結果に至る可能性が課題として挙げられている。このような課題を解決する手段として、特許文献1には、「予測装置は、装置のプロセスデータを収集するデータ収集部と、データ収集部が収集した第1のプロセスデータに基づいて、第1のプロセスデータのうち所定の入力変数を入力値、所定の出力変数を出力値とする予測モデルと、予測モデルの予測誤差を算出する誤差算出モデルとを構築する予測モデル構築部と、データ収集部が収集した第2のプロセスデータのうち入力変数と予測モデルと誤差算出モデルと基づいて予測した第2のプロセスデータに対する出力変数の予測値と、出力変数の予測値に対する予測誤差と、に基づいて補正された予測値を出力する予測部と、を備える」予測装置、予測方法、及びプログラムが開示されている(要約参照)。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、処理水の水質を目標値に制御しつつ凝集攪拌処理に要するコストを削減可能な水処理制御方法及び水処理制御装置の提供を目的としている。この目的を達成するため、特許文献2には「制御装置が、複数の注入率条件で凝集剤を注入して急速攪拌処理を行った際の沈殿処理水の水質を予測し、予測された沈殿処理水の水質を用いて、複数の注入率条件について、凝集攪拌処理のコストと沈殿処理水の水質の目標値に対する予測値の偏差とをパラメータとして含む評価関数を用いて評価値を算出し、評価値に基づいて、凝集剤の最適な注入率条件を決定し、決定された注入率で凝集剤注入装置に凝集剤を注入させる」水処理制御方法及び水処理制御装置が開示されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-30686号公報
【文献】特開2014-65030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、予測モデルによる誤差を補正する手段を提供しているが、運転結果が最適でない実績データが混在する場合に予測モデルによる予測値を補正する手段が提供されていない。また、特許文献2では、運転結果を予測し複数の入力データから評価値を基に制御値が決定されるが、複数の入力データを決定する必要がある。
【0010】
このように、これまでの技術では、統計や機械学習を活用して予測制御値を算出した際には、実績データを取得した際の運転結果の相違による予測制御値への影響を考慮することができない。
【0011】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、制御対象プラントの機器に対する制御精度を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するため、本発明は、制御対象プラントの機器から過去に収集した実績計測値と、前記機器から過去に収集した、前記機器を制御するための実績制御値とを基に、前記機器を制御するための制御値の予測値である予測制御値を算出するための第1のモデルを生成する第1のモデル生成部と、生成された前記第1のモデルに、計測値を入力することで前記予測制御値を算出する予測制御値算出部と、前記機器において、前記予測制御値の入力から、前記機器による制御結果である実績結果値が得られるまでの応答時間が存在する場合において、前記実績計測値の時刻情報を前記応答時間だけシフトすることで応答時間補正済み計測値を生成するとともに、前記実績制御値及び前記予測制御値の時刻情報を前記応答時間だけシフトすることで応答時間補正済み制御値を生成し、前記応答時間補正済み計測値及び前記応答時間補正済み制御値を出力する応答時間補正部と、前記応答時間補正済み計測値と、前記実績制御値の時刻情報を前記応答時間だけシフトした前記応答時間補正済み制御値と、前記実績結果値とを基に、結果値の予測値である予測結果値を算出するための第2のモデルを生成する第2のモデル生成部と、生成された前記第2のモデルに、前記応答時間補正済み計測値及び前記予測制御値の時刻情報を前記応答時間だけシフトした前記応答時間補正済み制御値を入力することで前記予測結果値を算出する予測結果値算出部と、算出された前記予測結果値を基に、前記予測制御値を補正することで補正済み予測制御値を算出し、前記補正済み予測制御値を前記機器へ出力する補正部と、を有することを特徴とする。
その他の解決手段は実施形態中において適宜記載する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制御対象プラントの機器に対する制御精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る運転管理支援システムの構成を説明する説明図である
【
図2】第1実施形態に係る運転管理支援システムが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】補正部が行う補正処理、表示処理及び出力処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る運転管理支援システムの構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る運転管理支援システムが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る応答時間補正処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】第3実施形態に係る運転管理支援システムの構成を説明する説明図である。
【
図8】第3実施形態に係る運転管理支援システムが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】第3実施形態に係る応答時間補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】第4実施形態に係る運転管理支援システムの構成を説明する説明図である。
【
図11】第4実施形態に係る運転管理支援システムが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】本実施形態における運転管理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を使用して説明する。なお、各図において同一又は類似の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【0016】
[第1実施形態]
(システム)
図1は第1実施形態に係る運転管理支援システム1の構成を説明する説明図である。
なお、本実施形態は、制御対象としてのプラントP、特に水プラントや化学プラントにおける機器を対象として記載しているが、本実施形態の適用にあたって対象を限定するものではない。なお、水プラントは、例えば、浄水場や下水処理場を想定しているが、上記に限定されるものではない。詳細は後記するが、第1実施形態では、
図1に示すように予測制御値222を算出する制御値予測モデル221と、予測結果値232を算出する結果値予測モデル231を使用する。本実施形態において予測制御値222は、プラントPの制御用に設定する値であり、予測結果値232は、予測制御値222をプラントPに設定した結果、プラントPから出力される応答結果を示す値である。
【0017】
運転管理支援システム1は、実績DB110(Database)、第1モデル処理部120、第2モデル処理部130、補正部141、表示処理部142、表示モニタ143を有している。
実績DB110は、実績計測DB111、実績制御DB112、実績結果DB113を有している。
まず、プラントPから収集済の過去の計測値、制御値、結果値が予め実績DB110に格納されている。ここで、プラントPから収集された過去の計測値を実績計測データ211と称する。そして、実績計測データ211は実績計測DB111に格納されている。計測値は、例えば、管理対象となるプラントPが水プラントであれば、実績計測データ211は、A地点における温度、B地点における水の流量、C地点における水質等である。また、プラントPが化学プラントであれば、A地点における温度、B地点における流量、C地点における流量、原料中の成分の濃度等である。
【0018】
また、本実施形態では、プラントPから収集された過去の制御値を実績制御データ212と称する。そして、実績制御データ212は、実績制御DB112に格納されている。実績制御データ212は、プラントPの各機器の制御量等である。例えば、プラントPが水プラントであれば、実績制御データ212は薬剤の注入率、薬剤の注入量、風量等である。プラントPが化学プラントであれば、実績制御データ212は原料の投入量、弁の開度、薬剤の添加率(濃度)等である。
【0019】
さらに、プラントPから収集された過去の結果値を実績結果データ213と称する。そして、実績結果データ213は実績結果DB113に格納されている。ここで、実績結果データ213は、プラントPによる制御結果である。例えば、プラントPが水プラントであれば、実績結果データ213は、処理水の水質、化学プラントであれば任意の生成物の生成量、反応効率、任意の成分の残留率、任意の成分の濃度等である。
【0020】
なお、実績計測データ211や、実績制御データ212や、実績結果データ213にはプラントPから出力された時刻が時刻情報として格納されている。また、予測制御値222にも、プラントPに設定される時刻が予測制御値222の時刻情報として格納されている。
【0021】
第1モデル処理部120は、制御値予測モデル構築部121と、予測制御値算出部122とを有する。
制御値予測モデル構築部121は、実績計測DB111から取得した実績計測データ211と、実績制御DB112から取得した実績制御データ212とを基に、制御値予測モデル221を生成する。ここで、制御値予測モデル221とは、予測制御値222を算出するためのモデルである。また、制御値予測モデル221は帰納法で定められるモデルである。帰納法で定められるモデルとは、例えば、回帰式や、決定木、クラスタリング(ランダムフォレスト等)、ニューラルネットワークの構造を有するモデル等である。ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークや、再起型ニューラルネットワーク等が含まれる。制御値予測モデル構築部121はこれらのモデルのうち、少なくとも1つを用いて制御値予測モデル221を生成する。
【0022】
予測制御値算出部122は、制御値予測モデル構築部121で生成された制御値予測モデル221に、プラントPから取得した計測値201(現在の計測値)を入力することで、予測制御値222を算出する。
なお、実績計測データ211、実績制御データ212、実績結果データ213、計測値201等をデータと総称することがある。
【0023】
第2モデル処理部130は、結果値予測モデル構築部131と、予測結果値算出部132とを有する。
結果値予測モデル構築部131は、実績計測データ211と、実績制御データ212と、実績結果データ213とを基に、結果値予測モデル231を生成する。ここで、結果値予測モデル231とは、予測結果値232を算出するためのモデルである。また、帰納法又は演繹法で定められるモデルである。帰納法で定められるモデルは前記したように、例えば、回帰式や、決定木、クラスタリング(ランダムフォレスト等)、ニューラルネットワークの構造を有するモデル等である。演繹法で定められるモデルは、例えば、物理式が利用可能である。結果値予測モデル構築部131は、これらのモデルのうち、少なくとも1つを用いて結果値予測モデル231を生成する。
【0024】
予測結果値算出部132は、結果値予測モデル構築部131で生成された結果値予測モデル231に、予測制御値222と、計測値201(現在の計測値)を入力することで、予測結果値232を算出する。
【0025】
補正部141は予測結果値232と、予め設定されている目標値241との差分が所定の閾値T以上である場合、予測制御値222の補正を行う。予測制御値222の補正については後記する。そして、補正部141は、出力制御値202をプラントPへ出力する。出力制御値202とは、補正した予測制御値222(補正済み予測制御値251)、あるいは、補正が不要である場合では、補正しない予測制御値222を含むものである。
【0026】
さらに、補正部141は、補正済み予測制御値251、補正量252等を表示処理部142へ出力する。表示処理部142は、予測制御値222や、予測結果値232、補正済み予測制御値251、補正量252等を表示モニタ143に表示する。
【0027】
このように、第1実施形態に係る運転管理支援システム1は、はじめに、予測制御値算出部122において、管理対象となるプラントPから取得した計測値201(現在の計測値)を制御値予測モデル221に入力し、予測制御値222を得る。次に、運転管理支援システム1は、予測結果値算出部132において、管理対象となるプラントPから取得した計測値201と、制御値予測モデル221に基づいて算出された予測制御値222とを結果値予測モデル231に入力し、予測結果値232を得る。さらに、運転管理支援システム1は、予測制御値222と予測結果値232を補正部141に入力する。その結果、補正部141は補正済み予測制御値251を出力する。
【0028】
以下において、第1実施形態に係る運転管理支援システム1の主な処理について
図2に従って説明する。
【0029】
(全体処理)
図2は、第1実施形態に係る運転管理支援システム1が行う処理の手順を示すフローチャートである。
第1モデル処理部120において、実績DB110に格納されている実績計測データ211及び実績制御データ212それぞれの一部又は全部が制御値予測モデル構築部121に入力される。制御値予測モデル構築部121は、入力された実績計測データ211及び実績制御データ212の一部又は全部を基に制御値予測モデル221を生成し、出力する制御値予測モデル構築処理を行う(S1)。
【0030】
ここで、制御値予測モデル構築部121に入力する入力項目は、実績計測データ211の計測値がそのまま使用されてもよいし、実績計測データ211の実績計測値から選別した項目が使用されてもよい。他にも、実績計測データ211のうち、2つの項目の差分や合算値、1つの項目の一定期間の積算値や平均値が、実績計測データ211として入力されてもよい。あるいは、1つの項目について、積算値がある項目で入力され、同じ項目の平均値が積算値とは別の項目として入力されてもよい。制御値予測モデル構築部121で出力される制御値予測モデル221とは、モデルの構造及び最適化されたモデル中の各変数の組み合わせを意味する。例えば、制御値予測モデル221として、回帰式が用いられる場合、回帰式の構造及び回帰式の係数が制御値予測モデル構築部121から出力される。このようにして制御値予測モデル221が生成される。
【0031】
次に、予測制御値算出部122に、制御値予測モデル構築部121で生成された制御値予測モデル221と、プラントPから取得された計測値201とが入力される。計測値201は、前記したように現在の計測値である。予測制御値算出部122は、制御値予測モデル221に、計測値201、即ち、現在の計測値を入力することで、現在の計測値に対応する予測制御値222を算出する予測制御値算出処理を行う(S2)。
【0032】
また、第2モデル処理部130の結果値予測モデル構築部131に、実績DB110に格納されている実績計測データ211、実績制御データ212、実績結果データ213が入力される。結果値予測モデル構築部131は、実績計測データ211、実績制御データ212、実績結果データ213を基に結果値予測モデル231を生成し、出力する結果値予測モデル構築処理を行う(S5)。結果値予測モデル231は、計測値201と、予測制御値222とを基に、予測制御値222がプラントPに設定された結果、プラントPから出力される結果値(予測結果値232)を算出するためのモデルである。前記したように計測値201は現在の計測値である。ステップS5によって、結果値予測モデル231が生成される。
【0033】
そして、結果値予測モデル構築部131に入力される入力項目は、実績計測データ211の計測値がそのまま入力されてもよいし、実績計測データ211の計測値から選別された項目が入力してもよい。また、結果値予測モデル構築部131に入力される入力項目は、制御値予測モデル構築部121に入力される入力項目と重複してもよい。他にも、2つの項目の差分や合算値、1つの項目の一定期間の積算値や平均値を、実績計測データ211の計測値の代替項目としてもよい。あるいは、実績計測データ211について、1つの項目について、積算値がある項目で入力され、同じ項目の平均値が積算値とは別の項目として入力されてもよい。
【0034】
また、制御値予測モデル221と、結果値予測モデル231とで、同種のモデルが用いられてもよいし、別種のモデルが用いられてもよい。例えば、制御値予測モデル221及び結果値予測モデル231の双方で畳み込みニューラルネットワークが用いられてもよい。あるいは、制御値予測モデル221で回帰式が用いられ、結果値予測モデル231で畳み込みニューラルネットワークが用いられてもよいし、その逆でもよい。
【0035】
そして、予測結果値算出部132に結果値予測モデル231、計測値201、予測制御値222が入力される。予測制御値222は、予測制御値算出部122から出力されたものである。その後、予測結果値算出部132は、入力される結果値予測モデル231に、計測値201及び予測制御値222を入力し、予測結果値232を算出する予測結果値算出処理を行う(S6)。
【0036】
また、補正部141に、予測制御値222と予測結果値232が入力される。その後、補正部141は、入力された予測制御値222及び予測結果値232を基に補正量252を算出する。そして、補正部141は、予測制御値222に補正量252を合算することで補正済み予測制御値251を出力する補正処理を行う(S7)。補正処理については後記して説明する。補正部141は、算出した補正済み予測制御値251や、補正量252を表示処理部142へ出力する。
【0037】
その後、表示処理部142は、予測制御値222、予測結果値232、補正済み予測制御値251、補正量252等を表示モニタ143に表示する表示処理を行う(S8)。表示モニタ143に表示される表示モニタ画面500(
図12参照)については後記する。
また、補正部141は補正済み予測制御値251又は予測制御値222を出力制御値202として、制御対象であるプラントPへ出力する出力処理を行う(S9)。プラントPは、出力された出力制御値202を用いた制御を行う。
【0038】
図3は、補正部141が行う補正処理(
図2のS7)、表示処理(
図2のS8)及び出力処理(
図2のS9)の手順を示すフローチャートである。
まず、補正部141は、予測結果値232と、目標値241との差分Δyを算出する(S701)。目標値241は、予測結果値232の目標値241であり、本実施形態では、予め運転員によって設定されている値である。
次に、補正部141は、差分の絶対値|Δy|が閾値Tより大きいか否か(|Δy|>閾値T)を判定する(S702)。閾値Tは、本実施形態では、予め運転員によって予め設定されている値である。ステップS702によって、予測制御値222の補正が推奨されるか否かが判断される。
【0039】
|Δy|≦閾値Tである場合(S702→No)、表示処理部142は、表示モニタ143に「補正不要」の旨を表示し(S811)、予測制御値222及び予測結果値232を表示モニタ143に表示する(S812)。そして、補正部141は、予測制御値222を出力制御値202としてプラントPへ出力する(S911)。
【0040】
|Δy|>閾値Tである場合(S702→Yes)、表示処理部142は、表示モニタ143に「補正推奨」の旨を表示する(S821)。ステップS811,S821によって、補正が推奨されるか否かの判定結果が、表示モニタ143を通じて運転員に伝達される。
【0041】
続いて、補正部141は補正量252を算出する(S721)。ここで、補正部141は、予測結果値232と目標値241との差分Δyから補正量252を算出する。補正量252の算出には、例えば、以下の式(1)~(3)のいずれかが用いられる。なお、式(1)~(3)は一例であり、補正量252の算出式は、式(1)~(3)に限らない。
【0042】
【0043】
ここで、式(1)~(3)において、y:予測結果値232、Δy:予測結果値232と目標値241との差分、C1及びC2:係数、D:補正量252を示す。なお、C1,C2は、例えば、予め設定されている値である。
【0044】
続いて、補正部141は予測制御値222に補正量252を加算することで補正済み予測制御値251を算出する(S722)。
また、表示処理部142は、算出された予測制御値222、予測結果値232、補正要否、補正量252、補正済み予測制御値251等を表示モニタ143に表示する(S822)。これにより、運転員は、予測制御値222と予測制御値222とを採用した場合の予測結果値232、補正量252等を確認して、補正要否を決定することができる。なお、ステップS822で表示される画面について後記する。
【0045】
その後、運転員は入力装置14(
図13参照)を介して、補正を実施するか否かを入力する(S723)。
補正を行わない旨が入力された場合(S723→No)、補正部141は、補正されていない予測制御値222をプラントPへ出力する(S911)。
補正を行う旨が入力された場合(S723→Yes)、補正部141は、補正部141は算出した補正済み予測制御値251をプラントPへ出力する(S912)。
ステップS723によって、運転員は、予測制御値222と、補正済み予測制御値251のどちらを出力制御値202としてプラントPへ出力するかを決定することができる。
【0046】
なお、
図3においてステップS701、S702,S721,S722,S723は
図2のステップS7に相当する。また、ステップS811,S812,S821,S822は
図2のステップS8に相当する。そして、ステップS911,S912は
図2のステップS9に相当する。その他の処理は、
図2のステップS7に相当する。
【0047】
第1実施形態における運転管理支援システム1は、まず、制御値予測モデル221から予測制御値222を算出する。そして、運転管理支援システム1は予測制御値222を基に、結果値予測モデル231から予測結果値232を算出する。その後、運転管理支援システム1は、予測結果値232を基に予測制御値222を補正することで補正済み予測制御値251を算出し、補正済み予測制御値251を出力制御値202としてプラントPへ出力する。このように、第1実施形態では予測制御値222でプラントPを制御した場合の予測結果値232まで算出し、その予測結果値232を基に予測制御値222が補正される。このようにすることで、実績計測DB111や、実績制御DB112に不適切なデータが格納されていても、プラントPの制御精度や、予測精度を向上させることができる。
【0048】
また、第1実施形態によれば、過去に収集されたデータを基に作成された制御値予測モデル221、結果値予測モデル231によってプラントPに出力する出力制御値202を生成することができる。これにより、熟練度の低い運転員でもプラントPの運転管理が可能となる。
【0049】
そして、第1実施形態によれば、制御値予測モデル221、結果値予測モデル231を用いて出力制御値202を得ることができる。これにより、フィードバック制御よりも早い応答が可能となる。
【0050】
さらに、第1実施形態では、
図3のステップS702で予測制御値222の適否を判定し、不適である場合に予測制御値222が補正される。このようにすることで、実績計測データ211や、実績制御データ212に適切ではないデータが含まれていても適切な出力制御値202をプラントPへ出力することができる。これにより、プラントPの制御精度をさらに向上させることができる。
【0051】
また、式(1)~(3)に示すように、目標値241と予測結果値232との差分Δyを基に補正量252が算出される。これにより、予測結果値232を用いた予測制御値222の適切な補正が可能となる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、
図4~
図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態に係る運転管理支援システム1aの構成を示す図である。なお、
図4において、
図1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図4に示す運転管理支援システム1aは、第2モデル処理部130の前段に、応答時間261の遅れに対処するための応答時間補正部151が設けられている点が
図1に示す運転管理支援システム1と異なっている。
応答時間補正部151には、応答時間261が入力される。ここで、本実施形態では、応答時間261は予め設定されている。そして、応答時間補正部151は、実績計測データ211の時刻情報を応答時間261だけ前にシフトさせた(ずらした)応答時間補正済み計測データ271を生成する。その後、応答時間補正部151は生成した応答時間補正済み計測データ271を結果値予測モデル構築部131及び予測結果値算出部132へ出力する。なお、第2~第4実施形態では、第1実施形態における計測値201は実績計測データ211に含まれている。同様に、応答時間補正部151は、実績制御データ212及び予測制御値222の時刻情報を応答時間261だけ前にシフトさせた(ずらした)応答時間補正済み制御データ272を生成する。その後、応答時間補正部151は生成した応答時間補正済み制御データ272を結果値予測モデル構築部131及び予測結果値算出部132へ出力する。
【0053】
(全体処理)
図5は、第2実施形態に係る運転管理支援システム1aが行う処理の手順を示すフローチャートである。
図5において、
図2と同様の処理については同一のステップ番号を付して説明を省略する。
図5に示すフローチャートにおいて、
図2と異なる点は、結果値予測モデル構築処理の前に応答時間補正部151による応答時間補正処理が行われている(S3)点である。応答時間261補正処理については後記して説明する。
【0054】
(応答時間補正処理)
図6は、第2実施形態に係る応答時間補正処理(
図5のS3)の手順を示すフローチャートである。
応答時間補正部151が、応答時間261と実績計測データ211の履歴とを取得する(S301)。さらに、応答時間補正部151が、実績制御データ212の履歴を取得する(S302)。ここで、応答時間261は、前記のようにあらかじめ設定されているが、応答時間261は、運転員が入力装置14を介して、明示的に予め入力してもよいし、反応時間、流量と反応装置の体積、滞留時間等から運転管理支援システム1が自動的に計算してもよい。具体的には、運転員がプラントPの応答時間261を計測し、計測した応答時間261が入力装置14を介して応答時間補正部151に入力されてもよい。あるいは、運転管理支援システム1aがプラントPの応答時間261を計測し、計測された応答時間261が入力装置14を介して応答時間補正部151に入力されてもよい。
【0055】
応答時間補正部151は応答時間補正済み計測データ271を生成する(S303)。ステップS303において、応答時間補正部151は、実績計測データ211が有する時刻情報を応答時間261の分だけ前にシフトさせる。これにより、応答時間補正部151は、応答時間補正済み計測データ271を生成する。
【0056】
同様に、応答時間補正部151は応答時間補正済み制御データ272を生成する(S304)。ステップS304において、応答時間補正部151は、実績制御データ212及び予測制御値222が有する時刻情報を応答時間261の分だけ前にシフトさせる。これにより、応答時間補正部151は、応答時間補正済み制御データ272を生成する。
【0057】
応答時間補正部151は、応答時間補正済み計測データ271及び応答時間補正済み制御データ272を結果値予測モデル構築部131に出力する。また、応答時間補正部151は、応答時間補正済み計測データ271及び応答時間補正済み制御データ272を予測結果値算出部132へ出力する。
【0058】
例として、応答時間261をt1分とした場合の応答時間補正部151の処理について説明する。応答時間261がt1分であるということは、予測制御値222がプラントPに入力された時刻から、プラントPから入力された予測制御値222に対応する結果値が出力される時刻までt1分かかるという意味である。
そこで、ステップS303において、応答時間補正部151は、実績計測データ211が有する時刻情報を応答時間261(t1分)の分だけ前にシフトさせる処理を行う。同様に、ステップS304において、応答時間補正部151は、実績制御データ212及び予測制御値222が有する時刻情報を応答時間261(t1分)の分だけ前にシフトさせる処理を行う。
【0059】
結果値予測モデル構築部131は、応答時間補正部151から出力された応答時間補正済み計測データ271、応答時間補正済み制御データ272及び実績結果データ213を基に結果値予測モデル231を生成・出力する(
図5のS5)。なお、実績結果データ213は、応答時間補正部151による補正をうけない。応答時間261は、結果値の出力時刻と、制御値の入力時刻との差分を示すものであるためである。
【0060】
その後、予測結果値算出部132は、結果値予測モデル231に、応答時間補正済み計測データ271と、応答時間補正済み制御データ272とを取得する。そして、予測結果値算出部132は、応答時間補正済み計測データ271、及び、応答時間補正済み制御データ272を基に予測結果値232を算出・出力する(
図5のS6)。このとき、予測結果値算出部132に入力される応答時間補正済み計測データ271は、予測する時刻を現在からt0分後とし、応答時間261をt1とすると、t0-t1分前の応答時間補正済み計測データ271となる。応答時間補正済み制御データ272も同様である。このように、予測結果値算出部132に入力されるデータは、応答時間補正済み計測データ271及び応答時間補正済み制御データ272のうち、予測結果値232の算出に必要なデータである。
【0061】
つまり、結果値予測モデル構築部131の処理において、第1実施形態における実績計測データ211が応答時間補正済み計測データ271となる。また、第1実施形態における実績制御データ212及び予測制御値222が応答時間補正済み制御データ272となる。それ以外は第1実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。また、予測結果値算出部132の処理において、第1実施形態における計測値201が応答時間補正済み計測データ271となる。また、予測制御値222が応答時間補正済み制御データ272となる。それ以外は第1実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。さらに、補正部141及び表示処理部142の処理は第1実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0062】
ここで、前記したように、応答時間261とは、予測制御値222をプラントPに設定してから、結果値がプラントPから出力されるまでの時間遅れである。一方、制御値予測モデル221では応答時間261が考慮されていない。また、制御値予測モデル221では、実績計測データ211と、実績制御データ212とが使用されるため、応答時間261が考慮される必要もない。しかし、そのまま、予測制御値222が予測結果値232の算出に使用されると、予測結果値算出部132が使用する予測制御値222、実績結果データ213との間で応答時間261のずれが生じてしまう。
【0063】
第2実施形態では、出力制御値202がプラントPに入力されてから応答結果が得られるまでの間に時間遅れがある場合において、制御値予測モデル221と結果値予測モデル231の時間遅れに対応することができる。このように、第2実施形態によれば、制御値予測モデル221及び結果値予測モデル231に対して、応答時間261の遅れを考慮することができる。この結果、運転管理支援システム1aは、予測結果値232ならびに補正量252の精度を向上することができる。
【0064】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態に係る運転管理支援システム1bの構成を説明する説明図である。
図7に示す運転管理支援システム1bにおいて、
図4と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示す運転管理支援システム1bは、結果値予測モデル231に複数の応答時間261を入力する応答時間補正部151bが設けられている点が
図4に示す運転管理支援システム1aと異なる。複数の応答時間261とは、応答時間261に変動が生じており、複数の応答時間261が存在することをいう。応答時間261の変動については後記する。
【0065】
応答時間補正部151bには、応答時間範囲262が入力される。応答時間範囲262とは、応答時間261の変動幅である。
そして、応答時間補正部151bは、応答時間範囲262のうちにおけるそれぞれの応答時間261で時刻情報をシフトした応答時間補正済み計測データ271を応答時間補正済み計測データ群273に格納する。同様に、応答時間補正部151bは応答時間範囲262のうちにおけるそれぞれの応答時間261で時刻情報をシフトした実績制御データ212及び予測制御値222(応答時間補正済み制御データ272)を応答時間補正済み制御データ群274に格納する。応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274については後記する。
【0066】
応答時間補正部151bは、応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274を結果値予測モデル構築部131に出力する。同様に、応答時間補正部151bは、応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274を予測結果値算出部132に出力する。この際、結果値予測モデル構築部131に出力されるデータは、応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274のうち、結果値予測モデル231を生成するために必要なデータである。また、予測結果値算出部132に出力されるデータは、応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274のうち、予測結果値232を算出するために必要なデータである。
【0067】
(全体処理)
図8は、第3実施形態に係る運転管理支援システム1bが行う処理の手順を示すフローチャートである。
図8において、
図5と同様の処理については同一のステップ番号を付して説明を省略する。
図8に示すフローチャートにおいて、
図5と異なる点は、結果値予測モデル構築処理の前に応答時間補正部151bによる応答時間補正処理が行われている(S3b)点である。応答時間補正処理(S3b)については後記して説明する。
【0068】
(応答時間補正処理)
図9は、第3実施形態に係る応答時間補正処理(
図8のS3b)の処理手順を示すフローチャートである。
以下、
図9を参照して、第3実施形態において、第2実施形態と相違のある部分のみを説明する。
応答時間補正部151bは、応答時間範囲262(t1~tn,t1<tn)、及び、応答時間261の間隔Δtを取得する(S311)。応答時間範囲262(t1~tn,t1<tn)は、応答時間261がt1~tnの範囲で変動することを示している。つまり、応答時間261は、ある時刻ではt1であり、また、ある時刻ではt3であり、・・・と、時刻によって変動する。また、応答時間261の間隔は、運転員が設定する応答時間261の間隔である。応答時間261の間隔をΔtとすると、t2-t1=t3-t2=・・・=tn―tn-1=Δtである。
【0069】
次に、応答時間補正部151bは、応答時間261の最大値tnを取得する(S312)。応答時間261の最大値も、運転員が入力装置14(
図13参照)を介して応答時間補正部151bに入力してもよいし、プラントPの特性から予め設定されてもよい。
その後、応答時間補正部151bは、i=0を代入する(S313)。
そして、応答時間補正部151bは、時刻情報がtn-(Δt×i)前の実績計測データ211の履歴を取得する(S321)。そして、応答時間補正部151bはtn-(Δt×i)前に時刻情報をシフトした実績計測データ211(応答時間補正済み計測データ271)を応答時間補正済み計測データ群273に格納する(S322)。
【0070】
こうして生成される応答時間補正済み計測データ群273には、それぞれの応答時間261(tm(m=1,2,・・・,n))だけ時刻情報が前にシフトした実績計測データ211が格納される。例えば、応答時間261がt1~tnの間で変動する場合、応答時間補正部151bは、実績計測データ211の時刻情報をt1、t2、…、tn分前にシフトした応答時間補正済み計測データ271のそれぞれを応答時間補正済み計測データ群273に格納する。つまり、応答時間補正済み計測データ群273には、それぞれのデータについて応答時間261としてt1だけ前に時刻情報がシフトされた実績計測データ211が格納される。同様に、応答時間261としてt2だけ前に時刻情報がシフトされた実績計測データ211、t3だけ前に時刻情報がシフトされた実績計測データ211、・・・、tnだけ前に時刻情報がシフトされた実績計測データ211のそれぞれが応答時間補正済み計測データ群273に格納される。
【0071】
また、応答時間補正部151bは、時刻情報がtn-(Δt×i)前の実績制御データ212及び予測制御値222(制御データ)を取得する(S323)。
そして、応答時間補正部151bは、取得した実績制御データ212及び予測制御値222をtn-(Δt×i)前に時刻情報をシフトした応答時間補正済み制御データ272を応答時間補正済み制御データ群274に格納する(S324)。
【0072】
こうして生成される応答時間補正済み制御データ群274には、それぞれの応答時間261(tm(m=1,2,・・・,n))だけ時刻情報が前にシフトした実績制御データ212や、予測制御値222が格納される。このように、応答時間補正部151bは、実績制御データ212や、予測制御値222の時刻情報をt1、t2、…、tn分前にシフトしたデータのそれぞれを応答時間補正済み制御データ群274に格納する。つまり、応答時間補正済み制御データ群274には、それぞれのデータについて応答時間261としてt1だけ前に時刻情報がシフトされた実績制御データ212や、予測制御値222が格納される。同様に、応答時間261としてt2だけ前に時刻情報がシフトされた実績制御データ212が応答時間補正済み制御データ群274に格納される。加えて、予測制御値222、t3だけ前に時刻情報がシフトされた実績制御データ212が応答時間補正済み制御データ群274に格納される。同様に、tnだけ前に時刻情報がシフトされた実績制御データ212や、予測制御値222が応答時間補正済み制御データ群274に格納される。
【0073】
応答時間補正部151bは、iに1を加算する(i=i+1;S331)。
そして、補正部141は、tn-(Δt×i)>t1であるか否かを判定する(S332)。
tn-(Δt×i)≦t1である場合(S332→No)、応答時間補正部151bはステップS321へ処理を戻す。
tn-(Δt×i)>t1である場合(S332→Yes)、応答時間補正部151bは応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274を第2モデル処理部130出力する。前記したように、結果値予測モデル構築部131に出力されるデータは、応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274のうち、結果値予測モデル231を生成するために必要なデータである。また、予測結果値算出部132に出力されるデータは、応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274のうち、予測結果値232を算出するために必要なデータである。
【0074】
ここで、応答時間補正済み制御データ272には、実績制御データ212及び予測制御値222の両方が混在してもよい。例えば、応答時間範囲262が60分から120分の場合、60~120分前までは実績制御データ212が応答時間補正済み制御データ272に格納される。そして、91~120分前までは予測制御値222が、応答時間補正済み制御データ272に格納されるようにしてもよい。ちなみに、91~120分前の予測制御値22は、過去に算出されていた予測制御値22である。
【0075】
このとき、応答時間範囲262と、応答時間261の間隔Δtは、運転員が入力装置14(
図13参照)を介して明示的に入力してもよい。あるいは、プラントPにおける反応時間、流量、反応装置の体積、滞留時間等から応答時間補正部151bが自動的に計算してもよい。例えば、1分毎に実績計測データ211がプラントPから取得されているものとする。また、応答時間261が60分~120分に設定されているものとする。このような場合において、応答時間補正部151bは、応答時間261の間隔Δtを1分として、60分前、61分前、…、120分前に時刻情報をシフトした実績計測データ211を取得してもよい。あるいは、応答時間補正部151bは、応答時間261の間隔Δtを10分単位として60分前、70分前、…、120分前に時刻情報をシフトした実績計測データ211を取得してもよい。また、応答時間261の間隔Δtが最小のデータ取得単位でない場合、取得する値は、平均値、移動平均値、加重平均値、代表値、中央値、最小値、最大値としてもよい。最小のデータ取得単位とは、プラントPからデータの取得間隔である。つまり、1分毎に実績計測データ211がプラントPから取得されている場合、1分が最小のデータ取得単位である。
【0076】
ここで、例えば、応答時間範囲262が60分~120分であるとし、最小のデータ取得単位が1分であるとする。そして、応答時間261の間隔Δtが10分単位である場合、70分前の実績計測データ211が61~70分前の実績計測データ211の代表値として使用されてもよい。あるいは、69分前、68分前、・・・、70分前の実績計測データ211の平均値が61~70分前の実績計測データ211として使用されてもよい。ここで、「t分前の」とは「t分前に時刻情報をシフトした」という意味である。
【0077】
なお、これらの処理は、実績制御データ212、予測制御値222に対しても適用可能である。
【0078】
結果値予測モデル構築部131は、応答時間補正部151bから出力された応答時間補正済み計測データ群273、及び、応答時間補正済み制御データ群274を基に結果値予測モデル231を生成する(
図8のS5)。また、予測結果値算出部132は、結果値予測モデル231に応答時間補正済み計測データ群273、及び、応答時間補正済み制御データ群274を入力する。これによって、予測結果値算出部132は予測結果値232を算出する(
図8のS6)。
【0079】
ここで、結果値予測モデル231には複数の時刻に紐づく応答時間補正済み計測データ群273及び応答時間補正済み制御データ群274が入力される。即ち、応答時間範囲262は60~120分で応答時間261の間隔Δtが10分である場合、結果値予測モデル231には、応答時間261が60分の場合、70分の場合、・・・の応答時間補正済み計測データ271が入力される。応答時間補正済み制御データ群274についても同様である。
【0080】
なお、結果値予測モデル231は、複数の応答時間261に対する応答時間補正済み計測データ271や、応答時間補正済み制御データ272を扱えるモデルが用いられる。例えば、水や反応液の流量が大きければ大きいほど、応答時間261の大きいデータが用いられる結果値予測モデル231等が適用される。
【0081】
また、結果値予測モデル231の入力項目の一部が応答時間補正済み計測データ群273であり、その他の入力項目は応答時間補正済み計測データ271としてもよい。応答時間補正済み制御データ群274の場合も同様である。入力項目とは、入力データの種類であり、任意の生成物の生成量、反応効率等である。つまり、任意の生成物の生成量に応答時間補正済み計測データ群273が使用され、反応効率に応答時間補正済み計測データ271が使用されてもよい。
【0082】
第3実施形態によれば、応答時間261が変動する場合においても、応答時間261の変動による複数の応答時間261の分をシフトした実績計測データ211が結果値予測モデル231に入力される。これにより、応答時間261の変動を考慮した予測結果値232ならびに補正量252の算出が可能となる。
【0083】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態に係る運転管理支援システム1cの構成を説明する説明図である。
図10に示す運転管理支援システム1cにおいて、
図7と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示す運転管理支援システム1cは、応答時間補正部151bと、第2モデル処理部130との間にデータ集約部152を有している点が
図7に示す運転管理支援システム1bと異なっている。
データ集約部152は、応答時間補正部151bから出力された応答時間補正済み計測データ群273や、応答時間補正済み制御データ群274の各データを集約する。データ集約部152におけるデータの集約については後記する。データ集約部152によって集約された応答時間補正済み計測データ群273のデータを集約計測データ281と称する。また、データ集約部152によって集約された応答時間補正済み制御データ群274のデータを集約制御データ282と称する。前記したように、データ集約部152は、集約計測データ281及び集約制御データ282を結果値予測モデル構築部131へ出力する。また、データ集約部152は、集約計測データ281及び集約制御データ282を予測結果値算出部132へ出力する。この際、結果値予測モデル構築部131へ出力されるデータは、集約計測データ281及び集約制御データ282のうち、結果値予測モデル231の生成に必要なデータである。同様に、予測結果値算出部132へ出力されるデータは、集約計測データ281及び集約制御データ282のうち、予測結果値232の算出に必要なデータである。
【0084】
(全体処理)
図11は、第4実施形態に係る運転管理支援システム1cが行う処理の手順を示すフローチャートである。
図11において、
図8に示す処理と同様の処理については同一の符号を付して説明を省略する。
図11に示す処理において、
図8に示す処理と異なる点は、ステップS3bの応答時間補正処理の後、データ集約部152がデータ集約処理を行う(S4)。
データ集約処理では、データ集約部152が、応答時間補正済み計測データ群273におけるN個の応答時間補正済み計測データ271をK(N>K)個のデータに集約する。これによって、集約計測データ281が生成される。データ集約部152は、応答時間補正済み制御データ群274に対しても同様の処理を行い、集約制御データ282を生成する。前記したように、データ集約部152は、集約計測データ281及び集約制御データ282を結果値予測モデル構築部131へ出力する。また、データ集約部152は、集約計測データ281及び集約制御データ282を予測結果値算出部132へ出力する。
【0085】
集約は平均値、移動平均値、加重平均値、代表値、中央値、最小値、最大値等が計算されることによって行われる。ただし、データの集約は、応答時間補正済み計測データ群273毎、応答時間補正済み制御データ群274毎に行われる。平均値、加重平均値、代表値、中央値、最小値、最大値は、応答時間261毎に算出されてもよい。例えば、応答時間261がt1の応答時間補正済み計測データ271で平均値が算出され、応答時間261がt2の応答時間補正済み計測データ271で平均値が算出されてもよい。あるいは、応答時間補正済み計測データ群273の全体、応答時間補正済み制御データ群274の全体に対してデータの集約が行われてもよい。つまり、例えば、応答時間補正済み計測データ群273に含まれる実績計測データ211のすべてに対して平均値が算出されてもよい。応答時間補正済み制御データ群274についても同様である。
【0086】
第4実施形態によれば、データの集約が行われることで、ノイズの影響を除去することができる。また、データ集約の手段として平均値、加重平均値、代表値、中央値、最小値、最大値が用いられる場合、結果値予測モデル構築部131や、予測結果値算出部132が扱うデータの量を減らすことができる。これにより、結果値予測モデル構築部131や、予測結果値算出部132の処理負荷を軽減することができる。
【0087】
[表示モニタ画面500の例]
図12は、運転管理支援システム1cの表示モニタ画面500を説明する説明図である。なお、
図12に示す表示モニタ画面500は一例であり、画面上のレイアウトは
図12に示すものに限らない。
図12では、表示モニタ143において、運転管理支援システム1cを操作する際の操作画面(表示モニタ画面500)を説明する。
図12に示すように、表示モニタ画面500には、管理対象表示部501、計測値表示部510、制御値表示部520、結果値表示部530、が表示されている。また、表示モニタ画面500は、入力項目選択部540、応答時間設定部550、補正関係表示部560が表示されている。
【0088】
管理対象表示部601には、運転管理支援システム1cの管理対象が示されている。
図12の例では管理対象が「プラントA」であることが示されている。また、
図12の表示モニタ画面500の例における管理対象表示部601では、「制御値B」が表示対象であることが示されている。つまり、
図12に示す例において示される予測制御値222、補正量252、補正済み予測制御値251は、「制御値B」に関するものである。
【0089】
入力項目選択部540では、実績計測データ211として入力する入力項目が選択される。
図12の例では、「項目α」、「項目β」、「項目γ」の3つが選択可能であり、「項目α」、「項目β」が入力項目として選択されている。このように、入力項目選択部540は、全部あるいは選択した入力項目が選択可能である。なお、入力項目選択部540は省略可能である。この入力項目は制御値予測モデル221の生成や、結果値予測モデル231の生成等に用いられる実績計測データ211の項目である。
【0090】
応答時間設定部550は、応答時間設定入力部551、算出方法選択部552、集約方法選択部553を有する。応答時間設定入力部551には、応答時間261が入力・表示されている。
図12に示す例では、応答時間261として60~120分が入力されている。即ち、
図12に示す例では、応答時間261が60~120分で変動する例(第3、第4実施形態)が示されている。応答時間261として、例えば、60分と、単一の応答時間261が応答時間設定入力部551に入力されると、第2実施形態が実行される。
【0091】
算出方法選択部552は自動計算とするか否かが選択可能である。自動計算が選択されない場合、応答時間261はマニュアル入力となり、運転員が入力装置14(
図13参照)を介して応答時間261を応答時間設定入力部551に入力する。算出方法選択部552で自動計算が選択されている場合、オート入力として反応時間、流量、体積、滞留時間等から、応答時間補正部151bが推定し、推定された応答時間261(あるいは応答時間範囲262)が応答時間設定入力部551に表示される。なお、算出方法選択部552は、省略可能であり、マニュアル入力のみ、あるいは、オート入力のみが可能であってもよい。
【0092】
集約方法選択部553は、例えば、
図12に示すように、プルダウンメニューとなっている。運転員が、プルダウンメニューをマウス(不図示)でクリックすることにより、平均値、移動平均値、加重平均値、代表値、中央値、最小値、最大値等が選択可能である。選択された集約方法は、第4実施形態におけるデータ集約部152におけるデータ集約処理(
図11のS4)で使用される。なお、第4実施形態の運転管理支援システム1cが使用されない場合、集約方法選択部553は省略されてもよい。
【0093】
補正関係表示部560では、補正要否表示部561、補正実施選択部563、補正量表示部565、補正済み予測制御値表示部566を有する。補正要否表示部561には、
図3のステップS702において補正部141が行う、補正が推奨されるか否かの判定を基に「補正推奨」又は「補正不要」が強調表示される。つまり、
図3のステップS811が実行されれば補正要否表示部561において「補正不要」が強調表示される。また、
図3のステップS821が実行されれば補正要否表示部561において「補正推奨」が強調表示される。
図12に示す例では、「補正推奨」が強調表示されている。
【0094】
また、補正実施選択部563では、運転員が補正を実施するか否かの情報が入力装置14(
図13参照)を介して入力される。補正実施選択部563で入力された情報は、
図3
のステップS723の判定に用いられる。補正実施選択部563は省略可能である。
【0095】
補正量表示部565には、補正部141によって算出される補正量252が表示される。そして、補正済み予測制御値表示部566には補正部141によって算出される補正済み予測制御値251が表示される。なお、「補正不要」あるいは「補正実施なし」である場合、補正済み予測制御値表示部566は空欄となる。なお、
図12の例において補正量252、補正済み予測制御値251には薬剤の注入量が表示されているが、これに限らない。前記したように、例えば、プラントPが水プラントであれば、薬剤の注入率、風量等が補正量表示部565に表示される。また、プラントPが化学プラントであれば、実績制御データ212は原料の投入量、弁の開度、薬剤の添加率(濃度)等が補正量表示部565に表示される。
【0096】
計測値表示部510には、入力項目選択部540で選択された入力項目に該当する実績計測データ211(計測値)の時系列グラフが表示されている。ここで、プロット512は入力項目選択部540で選択されている「項目α」の実績データ211を示している。また、プロット513は入力項目選択部540で選択されている「項目β」の実績データ211を示している。
【0097】
また、入力項目表示部511には入力項目選択部540で選択されている、つまり、計測値表示部510に表示されている実績計測データ211の項目名称と、その最新値が入力項目表示部511に表示されている。ちなみに、「項目α」、「項目β」は、同一地点での異なる成分(α、β)の濃度を示しているが、これに限らない。プラントPが水プラントであれば、計測値表示部510には、A地点における温度、B地点における水の流量、C地点における水質等が表示されてもよい。また、プラントPが化学プラントであれば、計測値表示部510には、A地点における温度、B地点における流量、C地点における流量、原料中の成分の濃度等が表示されてもよい。
【0098】
図12の例では、計測値表示部510において実績計測データ211の値が時系列グラフの形式で表示されているが、これに限らない。計測値表示部510において、実績計測データ211(入力項目)の値が、数値として表示されてもよい。あるいは、計測値表示部510において、実績計測データ211(入力項目)の値が、n時刻前までの値を含めたトレンドグラフとして表示されてもよい。また、計測値表示部50において、実績計測データ211(入力項目)の値が、数値とトレンドグラフとが合わせて表示されてもよい。計測値表示部510において、実績計測データ211(入力項目)の値がトレンドグラフとして表示される場合、横軸の時刻情報を応答時間261の分だけシフトした表示としてもよい。その場合、応答時間261のシフトを行っていない実績計測データ211の表示と、応答時間261のシフトを行った実績計測データ211の表示とが切り替え可能であってもよい。
【0099】
制御値表示部520には、実績制御データ212や、予測制御値算出部122で算出された予測制御値222が表示される。ここで、符号522に示すプロットが予測制御値222を示し、その他のプロットは実績制御データ212、即ち、過去の制御値を示している。ちなみに、符号522で示される予測制御値222は予測制御値算出部122で算出されたものであり、補正が行われていない予測制御値222である。
ここで、実績制御データ212や、予測制御値222は、数値として表示されてもよいし、n時刻前までの実績制御データ212と予測制御値222を含めたトレンドグラフとして表示されてもよい。また、実績制御データ212や、予測制御値222は、数値とトレンドグラフとが合わされて表示されてもよい。なお、
図6の例において実績制御データ212や、予測制御値222には薬剤の注入量が表示されているが、これに限らない。前記したように、例えば、プラントPが水プラントであれば、薬剤の注入率、風量等が補正量表示部565に表示される。また、プラントPが化学プラントであれば、実績制御データ212は原料の投入量、弁の開度、薬剤の添加率(濃度)等が補正量表示部565に表示される。
【0100】
結果値表示部530には、実績結果データ213や、予測結果値算出部132で算出された予測結果値232が表示される。結果値表示部530において、符号532で示すプロットは予測結果値232を示しており、その他のプロットは実績結果データ213、即ち、過去の結果値を示している。また、結果値表示部530には目標値241が線533として示されている。このとき、実績結果データ213や、予測結果値232は数値として表示されてもよいし、n時刻前までの実績結果データ213と予測結果値232を含めたトレンドグラフとして表示されてもよい。また、数値とトレンドグラフとが合わされて表示されてもよい。なお、
図12の例において実績結果データ213や、予測結果値232には処理水中の任意の成分の濃度が表示されているが、これに限らない。前記したように、プラントPが水プラントであれば、処理水の水質等が結果値表示部530に表示されてもよい。また、化学プラントであれば任意の生成物の生成量、反応効率、任意の成分の残留率、任意の成分の濃度等が結果値表示部530に表示されてもよい。
【0101】
なお、第1実施形態に係る運転管理支援システム1が用いられる場合、応答時間設定部550が省略されてもよい。
【0102】
図12に示すように、少なくとも予測結果値232、補正済み予測制御値251、補正量252が表示モニタ143に表示される。ちなみに、前記したように、
図12において予測結果値232はプロット532として示されている。また、補正済み予測制御値251は補正済み予測制御値表示部566に示されている。さらに、補正量252は補正量表示部565に示されている。
これにより、運転員は、これらの値を目視して確認することができる。つまり、補正済み予測制御値251、補正量252が表示モニタ143に表示されることによって、運転員は各値が好適/過剰/過小であるかを判断することができる。これによって、運転員が補正要否を判断する際の材料を提供することができ、運転員の判断を支援することができる。
【0103】
なお、
図1、
図4、
図7、
図10では示していないが、表示処理部142は実績計測DB111、実績制御DB112、実績結果DB113のそれぞれから実績計測データ211、実績制御データ212、実績結果データ213を取得し、適宜、表示モニタ画面500に表示する。
【0104】
また、補正要否表示部561において「補正推奨」、「補正不要」に表示が行われる。これによって、熟練度の低い運転員に対して予測制御値222の補正を行うべきか否かの判断材料を提供することができる。
【0105】
[ハードウェア構成]
図13は、本実施形態における運転管理装置10のハードウェア構成を示す図である。
運転管理装置10はメモリ11、CPU(Central Processing Unit)12、HD(Hard Disk)等の記憶装置13、入力装置14、通信装置15を有する。
なお、運転管理装置10は、
図1、
図4、
図7、
図10の実績DB110、第1モデル処理部120、第2モデル処理部130、補正部141、応答時間補正部151,151b、データ集約部152、表示処理部142含むものである。
記憶装置13に格納されているプログラムがメモリ11にロードされる。そして、ロードされたプログラムがCPU12によって実行される。これにより、第1モデル処理部120(制御値予測モデル構築部121、予測制御値算出部122)、第2モデル処理部130(結果値予測モデル構築部131、予測結果値算出部132)が具現化する。また、補正部141、表示処理部142、応答時間補正部151(151b)、データ集約部152が具現化する。
また、
図13の記憶装置13は、
図1、
図4、
図7、
図10の実績DB110に相当する。
【0106】
第2~第4実施形態において、応答時間261に対処するため、実績計測データ211、予測制御値222、実績制御データ212の時刻情報が応答時間261の分だけシフトするとしているが、これに限らない。実績計測データ211、予測制御値222、実績制御データ212の各データと、実績結果データ213とが応答時間261だけずれて対応付けられればよい。
【0107】
なお、本実施形態では各部111~113、120~122、130~132、141~142、151,151b,152を有している。しかし、各部111~113、120~122、130~132、141~142、151,151b,152のうち、1つ部がその他の部の機能を有していてもよい。
【0108】
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0109】
また、本実施形態では、実績DB110(実績計測DB111、実績制御DB112,実績結果DB113)が運転管理支援システム1、1a~1cに備えられている。しかし、これに限らず、実績DB110(実績計測DB111、実績制御DB112,実績結果DB113)が図示しないクラウド等に備えられていてもよい。このような場合、各部121,122,131,132,151,151bは、クラウドに備えられている実績DB110(実績計測DB111、実績制御DB112,実績結果DB113)から各種データを取得する。
【0110】
また、前記した各構成、機能、各部120(121,122),130(131,132),141,142,151,151b,152、DB110(111~113)等は、それらの一部又はすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、
図13に示すように、前記した各構成、機能等は、CPU12等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HD(Hard Disk)に格納すること以外に、メモリ11や、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
また、各実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0111】
1,1a~1c 運転管理支援システム(運転制御支援装置)
110 実績DB
111 実績計測DB
112 実績制御DB
113 実績結果DB
120 第1モデル処理部
121 制御値予測モデル構築部(第1のモデル生成部)
122 予測制御値算出部
130 第2モデル処理部
131 結果値予測モデル構築部(第2のモデル生成部)
132 予測結果値算出部
141 補正部
142 表示処理部
143 表示モニタ(表示部)
151,151b 応答時間補正部
152 データ集約部
201 計測値
202 出力制御値
211 実績計測データ(実績計測値)
212 実績制御データ(実績制御値)
213 実績結果データ(計測値)
221 制御値予測モデル(第1のモデル)
222 予測制御値
231 結果値予測モデル(第2のモデル)
232 予測結果値
241 目標値(結果値の目標値)
251 補正済み予測制御値
252 補正量
261 応答時間
262 応答時間範囲(所定の幅)
271 応答時間補正済み計測データ(応答時間補正済み計測値)
272 応答時間補正済み制御データ(応答時間補正済み制御値)
273 応答時間補正済み計測データ群(複数の応答時間補正済み計測値)
274 応答時間補正済み制御データ群(複数の応答時間補正済み制御値)
281 集約計測データ(集約された複数の応答時間補正済み計測値)
282 集約制御データ(集約された応答時間補正済み制御値)
500 表示モニタ画面
501 管理対象表示部
510 計測値表示部
511 入力項目表示部
520 制御値表示部
530 結果値表示部
540 入力項目選択部
550 応答時間設定部
551 応答時間設定入力部
552 算出方法選択部
553 集約方法選択部
560 補正関係表示部
561 補正要否表示部
563 補正実施選択部
565 補正量表示部
566 補正済み予測制御値表示部
P プラント(制御対象プラントの機器)
T 閾値(所定の閾値)
S1 制御値予測モデル構築処理(第1のモデル生成ステップ)
S2 予測制御値算出処理(予測制御値算出ステップ)
S3 応答時間補正処理(応答時間補正ステップ)
S5 結果値予測モデル構築処理(第2のモデル生成ステップ)
S6 予測結果値算出処理(予測結果値算出ステップ)
S7 補正処理(補正ステップ)
S9 出力処理(補正ステップ)