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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ボルト着脱治具
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20240805BHJP
   B23P 19/06 20060101ALN20240805BHJP
   B23P 19/00 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
F04C29/00 B
B23P19/06 E
B23P19/00 304Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021011909
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115352
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 茂和
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/102615(WO,A1)
【文献】特開平11-188536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/00
B23P 19/06
B23P 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面から浮いた底面に形成された凹部の上部においてボルトを着脱するためのボルト着脱治具であって、
前記ボルトの頭部を下方から回転可能に着脱する回転棒と、
前記凹部に嵌合し、前記回転棒が内部に挿通される筒部と、
前記筒部の軸方向の先端部に設けられ、前記ボルトの前記頭部が覗くように形成される第1孔を有する上部支持部と、
前記筒部の内部において軸方向の中途部に設けられ、前記上部支持部の前記第1孔と軸方向同位置に形成され、前記回転棒が挿通される第2孔を有する中途支持部と、
前記筒部の軸方向の基端部に設けられ、前記中途支持部の前記第2孔と軸方向同位置に形成され、前記回転棒が挿通される第3孔を有し、前記凹部の開口の径よりも大きい径を有する底面支持部と、
を備える、
ボルト着脱治具。
【請求項2】
請求項1に記載のボルト着脱治具であって、
前記回転棒は、前記中途支持部よりも上方に設けられる抜け止め部を有する、
ボルト着脱治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボルト着脱治具であって、
前記凹部は、ボルトによって固定されるゲートロータハウジング蓋によって塞がれており、
前記底面支持部は、前記ゲートロータハウジング蓋を固定するボルトによって固定される、
ボルト着脱治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面から浮いた底面に形成された凹部の上部においてボルトを着脱するための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
床面から浮いた底面に形成された凹部の上部においてボルトが締結される場合に、当該ボルトを着脱する作業は困難である。特に、床面と底面との隙間が小さい場合には、ボルトを目視することができないため、当該ボルトを着脱する作業はさらに困難である。
【0003】
例えば、特許文献1にはスクリュー圧縮機が開示されている。スクリュー圧縮機のオーバーホール作業においてゲートロータを取り外す際には、床面から浮いたハウジングの底面に凹部が形成され、当該凹部の上部においてゲートロータとゲートロータ主軸受け止め(ゲートロータに軸受けを固定する部材)とを締結するボルトを取り外し、ゲートロータを取り外す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/102615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したスクリュー圧縮機のオーバーホール作業において上記ボルトを取り外す作業では、床面とハウジングの底面との隙間が小さく、ボルトを目視することができないため、作業効率が低かった。
【0006】
本発明の目的は、床面から浮いた底面に形成された凹部の上部においてボルトを着脱する作業の作業効率を向上させることができるボルト着脱治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るボルト着脱治具は、床面から浮いた底面に形成された凹部の上部においてボルトを着脱するためのボルト着脱治具であって、ボルトの頭部を下方から回転可能に着脱する回転棒と、凹部に嵌合し、回転棒が内部に挿通される筒部と、筒部の軸方向の先端部に設けられ、ボルトの頭部が覗くように形成される第1孔を有する上部支持部と、筒部の内部において軸方向の中途部に設けられ、上部支持部の第1孔と同位置に形成され、回転棒が挿通される第2孔を有する中途支持部と、筒部の軸方向の基端部に設けられ、中途支持部の第2孔と同位置に形成され、回転棒が挿通される第3孔を有し、凹部の開口の径よりも大きい径を有する底面支持部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るボルト着脱治具において、回転棒は、中途支持部よりも上方に設けられる抜け止め部を有することが好ましい。
【0009】
本発明に係るボルト着脱治具において、凹部は、ボルトによって固定されるゲートロータハウジング蓋によって塞がれており、底面支持部は、ゲートロータハウジング蓋を固定するボルトによって固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るボルト着脱治具によれば、床面から浮いた底面に形成された凹部の上部においてボルトを着脱する作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るスクリュー圧縮機のゲートロータを示す断面図である。
図2】実施形態の一例であるボルト着脱治具を示す平面図である。
図3図2のAA断面図である。
図4】実施形態の一例であるボルト着脱治具を用いてボルトを取り外す手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0013】
図1を用いて、実施形態に係わるスクリュー圧縮機10について説明する。図1は、スクリュー圧縮機10を示す断面図である。
【0014】
スクリュー圧縮機10は、中型の冷凍サイクル装置の構成機器であって、例えばビル空調システムを構成する圧縮機として用いられ、ビルの地下に設置されている。スクリュー圧縮機10は、オーバーホール作業において、詳細は後述する本発明に係るボルト着脱治具30を用いて六角穴ボルト23が着脱される機器である。
【0015】
図1に示すように、スクリュー圧縮機10は、ケーシング11内にスクリューロータ12が収容され、スクリューロータ12の外周面に形成されたスクリュー溝12Aに、円板状の2つのゲートロータ13のそれぞれの歯部が噛み合わされることで、ケーシング11内に2つの圧縮室が形成される。
【0016】
ゲートロータ13は、ゲートロータサポート14(以下、GRサポート14)によって支持されている。GRサポート14は、GRサポート14の中心軸がスクリューロータ12の中心軸(紙面に垂直)と略垂直となるように配置されている。2つのゲートロータ13及びGRサポート14は、スクリューロータ12の中心軸を中心にして、互いに180°回転させて配置されている。
【0017】
以下では、2つのゲートロータ13のうちで、オーバーホール作業において後述するボルト着脱治具30を用いて取り外されるゲートロータ13(図1に向かって左側のゲートロータ13)について説明する。
【0018】
ゲートロータ13及びGRサポート14は、ゲートロータサポート室15(以下、GRサポート室15)に収容されている。GRサポート14の上端部は、ゲートロータサブハウジング16(以下、GRサブハウジング16)に固設された軸受17によって回転自在に支持されている。GRサブハウジング16は、ケーシング11の上部に固定されている。GRサポート室15の側面は、着脱可能な横蓋18によって塞がれている。
【0019】
GRサポート14の下端部は、ゲートロータメインハウジング19(以下、GRメインハウジング19)に固設された軸受20によって回転自在に支持されている。GRメインハウジング19は、ケーシング11の下部に固定されている。軸受20は、GRサポート14の下端部に形成された係合部に係合され、GRサポート14に固定されたゲートロータ主軸受け止め21(以下、GR主軸受け止め21)によって下方から押さえられている。
【0020】
GR主軸受け止め21は、GRハウジング蓋22を取り外したGRメインハウジング19の底面に形成された凹部19Aの上部に位置している。また、GR主軸受け止め21は、2本の六角穴ボルト23(以下、ボルト23)によってGRサポート14の下端面に締結されている。さらに、GRメインハウジング19の底面は、着脱可能なゲートロータハウジング蓋22(以下、GRハウジング蓋22)によって塞がれている。
【0021】
ここで、スクリュー圧縮機10のオーバーホール作業においてゲートロータ13を取り外す手順について説明する。
【0022】
スクリュー圧縮機10のオーバーホール作業では、上述したようにゲートロータ13を取り外す必要がある。ゲートロータ13を取り外す際には、まず、横蓋18を取り外し、リップ隙間(ケーシング11とゲートロータ13との隙間)を計測し、GRサポート14を手で支えながら、GR主軸受け止め21をGRサポート14から取り外す。GR主軸受け止め21をGRサポート14から取り外す際には、ボルト23を取り外す必要がある。
【0023】
以下では、GRメインハウジング19の底面に形成された凹部19Aの上部においてボルト23を着脱する本発明に係るボルト着脱治具30について説明する。
【0024】
図2及び図3を用いて、実施形態の一例であるボルト着脱治具30について説明する。図2は、ボルト着脱治具30を示す平面図である。図3は、図2のAA断面図である。以下では、ボルト23の差込方向を軸方向として説明する。
【0025】
ボルト着脱治具30は、床面から浮いたGRメインハウジング19の底面に形成された凹部19Aの上部においてボルト23を着脱する治具である。ボルト着脱治具30によれば、詳細は後述するが、ボルト23を着脱する作業の作業効率を向上させることができる。
【0026】
ボルト着脱治具30は、ボルト23の頭部を下方から回転可能に着脱する2つの回転棒31と、凹部19Aに嵌合し、回転棒31が内部に挿通される筒部32と、筒部32の軸方向の先端部に設けられる上部支持部33と、筒部32の内部において軸方向の中途部に設けられる中途支持部34と、筒部32の軸方向の基端部に設けられる底面支持部35とを備える。
【0027】
回転棒31は、上述したようにボルト23を下方から回転可能に着脱する棒状の部材である。回転棒31は、ボルト23の個数に合わせて2つ形成されている。
【0028】
回転棒31は、軸方向の先端部に設けられ、ボルト23の六角穴に適合するレンチ部31Aと、軸方向の中途部に設けられ、後述する中途支持部34の第2孔34Aよりも大きい径を有する円柱状の部材である抜け止め部31Bと、軸方向の基端部に設けられ、レンチ部31A及び抜け止め部31Bを下方から着脱する棒状の部材であるレンチ支持部31Cとを有する。
【0029】
レンチ部31Aは、本例では、ボルト23が六角穴ボルトであるため、六角レンチが好適に用いられる。レンチ部31Aは、ボルト着脱治具30の着脱対象となるボルトに適合して構成されればよく、例えばソケット等であってもよい。
【0030】
抜け止め部31Bは、中途支持部34よりも上方であって回転棒31の中途部に設けられる。抜け止め部31Bによれば、回転棒31が中途支持部34の第2孔34Aから抜け落ちることを防止することができる。
【0031】
レンチ支持部31Cは、上述したようにレンチ部31A及び抜け止め部31Bを下方から支持する棒状の部材である。レンチ支持部31Cの下端部は、ボルト頭部と同様に六角形に形成され、ソケットが当該頭部に嵌められてソケットレンチでレンチ支持部31Cが回転可能に構成される。
【0032】
筒部32は、凹部19Aに嵌合する筒状の部材である。筒部32の径は、凹部19Aの径よりも小さく形成される。筒部32を凹部19Aに嵌合した際に、筒部32と凹部19Aとは隙間があってもよい。筒部32の軸方向の長さは、上部支持部33がGR主軸受け止め21に届く長さとしている。
【0033】
上部支持部33は、上述したように筒部32の軸方向の先端部に設けられる円板状の部材である。上部支持部33は、ボルト23の頭部が覗くように形成される第1孔33Aを有する。第1孔33Aの径は、ボルト23の頭部の径よりも大きい径として形成される。本例では、第1孔33Aは、ボルト23の個数に合わせて2つ形成されている。上部支持部33における第1孔33Aの位置又は径は、ボルト着脱治具30の着脱対象となるボルトに適合して形成される。
【0034】
中途支持部34は、上述したように筒部32の軸方向の中途部に設けられる円板状の部材である。中途支持部34は、回転棒31が挿通される第2孔34Aを有する。第2孔34Aの径は、回転棒31の抜け止め部31Bの径よりも小さく、かつ、回転棒31のレンチ支持部31Cの径よりも大きい径として形成される。第2孔34Aは、軸方向に垂直な断面視において第1孔33Aと同じ軸方向位置に形成される。
【0035】
底面支持部35は、上述したように筒部32の基端部において円板状に形成される部材である。底面支持部35は、回転棒31が挿通される第3孔35Aを有する。第3孔35Aの径は、回転棒31のレンチ支持部31Cの径よりも大きい径として形成される。第3孔35Aは、軸方向に垂直な断面視において第1孔33A及び第2孔34Aと同じ軸方向位置に形成される。
【0036】
第2孔34A及び第3孔35Aによれば、挿通される回転棒31を軸方向と平行となるように配置することができる。これにより、回転棒31をボルト23に差し込んで効率良くボルト23を回転させることができる。
【0037】
底面支持部35の径は、凹部19Aの開口の径よりも大きく形成される。底面支持部35の筒部32よりも外側部分である鍔部35Bには、筒部32の外周に沿って長手方向が屈曲した長孔35Cが形成される。
【0038】
底面支持部35によれば、筒部32を凹部19Aに嵌合したときに、GRハウジング蓋22を取り付けるボルトによってGRメインハウジング19の底面に底面支持部35を取り付けることができる。また、長孔35Cの長手方向が屈曲して形成されているため、凹部19Aに対し軸周りの回転方向に自由度を有してGRメインハウジング19の底面に底面支持部35を固定することができる。
【0039】
図4を用いて、ボルト着脱治具30を用いてボルト23を取り外す手順について説明する。
【0040】
上述したように、スクリュー圧縮機10のオーバーホール作業においてゲートロータ13を取り外す際には、GRメインハウジング19の底面に形成された凹部19Aの上部においてボルト23を取り外す必要がある。
【0041】
図4(A)に示すように、凹部19Aの下方からボルト着脱治具30を差し込み、凹部19Aに筒部32を嵌合させる。このとき、上部支持部33の第1孔33Aからボルト23の頭部が覗くように、筒部32を軸周りに回動して位置決めする。
【0042】
図4(B)に示すように、上部支持部33の第1孔33Aからボルト23の頭部が覗く位置において、GRハウジング蓋22を取り付けるボルトによってGRメインハウジング19に底面支持部35を取り付ける。次に、回転棒31のレンチ部31Aをボルト23の頭部の六角穴に差し込み、回転棒31のレンチ支持部31Cの下端部をソケットに嵌めて、ソケットレンチで回転棒31を回転させて、ボルト23を取り外す。
【0043】
以下では、ボルト着脱治具を用いてボルト23を取り付ける手順について説明する。
【0044】
スクリュー圧縮機10のオーバーホール作業においてゲートロータ13を取り付ける際には、GRメインハウジング19の底面に形成された凹部19Aの上部においてボルト23を取り付ける必要がある。
【0045】
まず、手作業によってGR主軸受け止め21によってGRサポート14の下端面を押さえ、GRサポート14のボルト穴にボルト23を仮止めする。次に、凹部19Aの下方からボルト着脱治具30を差し込み、凹部19Aに筒部32を嵌合させる。このとき、上部支持部33の第1孔33Aからボルト23の頭部が覗くように、筒部32を軸周りに回動して位置決めする。
【0046】
上部支持部33の第1孔33Aからボルト23の頭部が覗く位置において、GRハウジング蓋22を取り付けるボルトによってGRメインハウジング19に底面支持部35を取り付ける。次に、回転棒31のレンチ部31Aをボルト23の頭部の六角穴に差し込み、回転棒31のレンチ支持部31Cの下端部をソケットに嵌めて、ソケットレンチで回転棒31を回転させて、ボルト23を取り付ける。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 スクリュー圧縮機、11 ケーシング、12 スクリューロータ、12A スクリュー溝、13 ゲートロータ、14 GRサポート(ゲートロータサポート)、15 GRサポート室(ゲートロータサポート室)、16 GRサブハウジング(ゲートロータサブハウジング)、17 軸受、18 横蓋、19 GRメインハウジング(ゲートロータメインハウジング)、19A 凹部、20 軸受、21 GR主軸受け止め21(ゲートロータ主軸受け止め21)、22 GRハウジング蓋(ゲートロータハウジング蓋)、23 ボルト(六角穴ボルト)、30 ボルト着脱治具、31 回転棒、31A レンチ部、31B 抜け止め部、31C レンチ支持部、32 筒部、33 上部支持部、33A 第1孔、34 中途支持部、34A 第2孔、35 底面支持部、35A 第3孔、35B 鍔部、35C 長孔
図1
図2
図3
図4